古村治彦(ふるむらはるひこ)の政治情報紹介・分析ブログ

SNSI研究員・愛知大学国際問題研究所客員研究員の古村治彦(ふるむらはるひこ)のブログです。翻訳と評論の分野で活動しています。日常、考えたことを文章にして発表していきたいと思います。古村治彦の経歴などについては、お手数ですが、twitter accountかamazonの著者ページをご覧ください 連絡先は、harryfurumura@gmail.com です。twitter accountは、@Harryfurumura です。よろしくお願いします。

タグ:河野太郎

 古村治彦です。
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※2024年10月29日に佐藤優先生との対談『世界覇権国 交代劇の真相 インテリジェンス、宗教、政治学で読む』(←この部分をクリックするとアマゾンのページに飛びます)が発売になります。予約受付中です。よろしくお願いいたします。

 2024年9月27日午後、自民党総裁選挙が実施された。9名の候補者が出馬して、選挙運動が行われ、投開票が実施された。1回目の投票は議員票(367票)と党員票(367票)で行われた。1回目の選挙の結果は以下の通りだ。
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(1)高市早苗181票(議員票72票;党員票109)

(2)石破茂154票(議員票46票;党員票108票)

(3)小泉進次郎136票(議員票75票;党員票61票)

(4)林芳正65票(議員票38票;党員票27票)

(5)小林鷹之60票(議員票41票;党員票19票)

(6)茂木敏光47票(議員票34票;党員票13票)

(7)上川陽子40票(議員票23票;党員票17票)

(8)河野太郎30票(議員票22票;党員票7票)

(9)加藤勝信22票(議員票16票;党員票6票)

 有力と見られていた、小泉進次郎議員が3位に沈んだ。過半数を獲得した候補者が出なかったために、1位の高市早苗議員と2位の石破茂議員による決選投票が実施された。決選投票は議員票(367票)と都道府県連票(47票)と、議員票の割合が高くなる。決選投票の結果は以下の通りだ。

(1)石破茂215票(議員票189票;都道府県連票26票)

(2)高市早苗194票(議員票173票;都道府県連票21)

無効票:5票
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 選挙の結果、石破茂議員が自民党の新総裁に選出された。そして、首相に指名されることが確実になった。私は、小泉進次郎議員選出が確実という見立てが政治のプロの間でなされていることを知り、絶望していた。更に、最近になって高市早苗議員の人気が急上昇していると報道されて、ますます嫌になっていた。「前門の小泉、後門の高市」で困ったことだなと思っていた。更に、麻生太郎元首相・副総裁が自身の率いる麻生派に1回目の投票で、自派の河野太郎議員ではなく、高市早苗議員に投票せよと促したという報道を見て、ますます嫌になっていた。麻生議員は高市議員が「勝ち馬」になると見ているのだと考え、なんてことだと諦めの気持ちになっていた。

 そうした絶望や諦めの気持ちが大きかった分、決選投票で石破議員が選出された時には、安堵感を持った。もちろん、石破氏が最善の選択肢ではない。しかし、最悪の選択肢を避けることができたというのは日本国にとって何よりのことだった。安倍晋三政治の清算ということがそのまま進められるな、自民党保守本流政治の復活が期待できるなと感じている。しかし、もちろん、石破氏に対する自民党内の反感、拒否感は大きい、党内運営は厳しいものとなるだろう。何か小さな失敗でも倒閣運動も起きるだろう。

 こうして見ると、立憲民主党の野田佳彦新代表選出は何とも悪い選択となった。野田代表は中道から少し右の有権者の支持を狙うと発言した。自民党総裁に、その層にアピール力を持つ石破新総裁が選ばれた。石破氏対野田氏でどちらに勝ち目があるか、と言えば、残念ながら石破氏だろう。野田氏は民主党の介錯人を務めた。最悪の場合、二度目の介錯人を務めることになるだろう。

 麻生太郎議員は晩節を汚す大きな判断ミスを行った。高市議員が勝利していれば、キングメイカーとして存在感を増していただろうが、自派の河野議員を見捨て、勝ち馬にも乗れずという最悪の結果となった。もっと早くに引退しておれば、晩節を汚すこともなかっただろうに、最後の最後でこのようなことになった。麻生派は派内で麻生太郎議員に対する引退勧告を出すべきだろう。84歳という年齢を考えればもう引退してもおかしくない。麻生派の跡目争いということが起きて、麻生派は分裂するだろうが、河野氏にどれだけの議員がついていくだろうか。今回の選挙で人望のなさが露呈した。これからの政治生命も脅かされてしまうだろう。小林鷹之議員は福田達夫議員と中曽根康隆議員の、安倍派と二階派の若手たちの支援を受けてある程度は戦えただろうが、それ以上のことはない。最初から最後まで不思議だったのは、そして今でも不思議なのは、上川陽子議員の人気が上がっていると言われ続けたことだ。一体何だったのか、一種の陽動、当て馬だったのだろうかと考えざるを得ない。

 今回の自民党総裁選挙では、最悪の選択肢を回避することになった。それが何よりの収穫である。自民党が大きく変わることはないし、議員たちがルールを守るということが一番実現困難なことだろう。しかし、最悪の事態を免れた。そのことが大きい。

(貼り付けはじめ)

●「自民新総裁の石破茂氏 元銀行員、安全保障や農政の論客」

9/27() 15:30配信 毎日新聞

https://news.yahoo.co.jp/articles/c6f78ed348ffd0f8d69bda571f1537bcf9847ed4

 5回目の挑戦にして初めて自民党総裁に選ばれた石破茂氏とはどんな人物なのか。

 父は、自治相や鳥取県知事を務めた石破二朗氏。慶応大を卒業後、三井銀行(現三井住友銀行)に勤めていたが、父の死後に田中角栄元首相の勧めで1986年衆院選に自民党公認で出馬して初当選した。

 リクルート事件後につくられた若手議員のグループで中心的役割を担い、選挙制度改革を訴えた。非自民の細川護熙連立政権が誕生した93年に自民党を離党。新生党や新進党に所属し、97年に自民党へ復党した。安全保障や農政の論客として知られ、防衛相や農相を歴任している。

 歴代最長政権を築いた安倍晋三元首相とは距離があったとされ、安倍政権に批判的な発言を繰り返してきた。各種世論調査では「次の首相にふさわしい人」でトップに顔を出す一方、党内の国会議員の人気は高くなく、総裁選では敗退を繰り返していた。

 今回の総裁選は「38年間の政治生活の総決算。最後の戦いに挑む」との思いで臨んでいた。

=====

<独自>自民・麻生副総裁が高市氏支持へ、麻生派議員にも指示 1回目から

9/26() 22:44配信 産経新聞

https://news.yahoo.co.jp/articles/385a69f027f45a2b77afa8d7d1186ce7c2c9e95f

自民党の麻生太郎副総裁が、総裁選(27日投開票)で高市早苗経済安全保障担当相を支持する意向を固め、岸田文雄首相(党総裁)らに伝えたことが分かった。26日、複数の党幹部が明らかにした。麻生氏はこれまで麻生派(志公会)の河野太郎デジタル相を支援する考えを示していた。麻生派は河野氏や上川陽子外相らに推薦人を出していたが、麻生氏は1回目の投票から高市氏を支援するよう同派議員に指示を出した。

総裁選は高市氏のほか、石破茂元幹事長と小泉進次郎元環境相の3人が激しく競り合う混戦となっている。麻生氏はこのうち、首相在任中に自らに退陣要求を突きつけた石破氏や、関係が良好ではない菅義偉前首相と近い小泉氏支持には難色を示していた。

ただ、党として派閥解消を掲げる中、麻生氏の派閥単位での指示が同派議員に徹底されるかは不透明だ。

(貼り付け終わり)

(終わり)

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 古村治彦です。

 9月27日の自民党総裁選挙に向けて、既に複数の自民党政治家たちが出馬表明し、もしくは出馬を模索している。小林鷹之、石破茂、河野太郎は既に出馬表明を行っており、その他にも、林芳正、茂木敏光、小泉進次郎、高市早苗といった人々も出馬表明貴社会計をセットしていたり、出馬のための準備を行ったりしている。今回の自民党総裁選挙は、これまでにない大人数の立候補者による選挙ということになりそうだ。

 ここに来て、小泉進次郎元環境相の人気が上がっているとされている。下に掲載した記事にあるように、7月の段階では中位グループにいたのが、8月には石破茂代議士とトップを争うという結果が出ている。SNSでは、小林鷹之元経済安保相と統一教会との関係、河野太郎元外相のパワハラ気質、批判を許さないツイッター(X)での大量ブロックが取り上げられ、厳しく批判されている一方で、小泉進次郎については、そのような厳しい批判は見受けられない。どうも、小泉進次郎を押し上げる空気づくりが着々と進められているようだ。

 小泉進次郎の最大の後ろ盾は、菅義偉前首相だ。菅義偉は、小泉進次郎を全面的にバックアップしているという報道が出ている。また、安倍派や岸田派の若手たちが動いている。菅義偉、小泉進次郎、河野太郎の共通点は、神奈川県内に選挙区を持つということで、「神奈川連合」を形成していると言われている。その神奈川連合から、今回、河野太郎と小泉進次郎が総裁選に出馬するということになった。菅義偉は小泉を支持するということになり、河野太郎は支持を望めないということになるが、既に、総裁選挙後には協力することを公言している。これは、対米従属神奈川連合の枠組みを崩さないということを示している。
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 菅義偉は日本の対米従属の大きな柱と言えるだろう。菅義偉は2019年の官房長官時代に訪米を果たしている。当時のマイク・ペンス副大統領、マイク・ポンぺオ国務長官と会談を行った。また、アーリントン墓地訪問を行っている。官房長官は政権の扇のかなめとして、総理大臣の女房役として補佐役を務め、外遊を行うということはほぼない。それでも、菅義偉は当時のポスト安倍晋三の一番手、最有力候補として、アメリカが首実検を行い、テストにパスしたということになる。アメリカ軍、特にアメリカ海軍の重要な拠点基地を持つ神奈川県選出の議員でもある。また、日本維新の会との緊密な関係を持ち、カジノを推進させている。どうも、ポスト岸田の自民党総裁、日本の首相に関しては、より露骨な対米従属型をアメリカ側も、日本側も推進しているようだ。アメリカ側では、ラーム・エマニュエルがカマラ・ハリス政権成立を見越して、ワシントンに引き上げる。エマニュエルのお眼鏡にかなっているのが、アホの小泉進次郎である。他の候補者たちはまだ思考力もあり、対米従属の度合いに疑問が残るが、小泉はその点で完璧な存在である。
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 小泉のジャパンハンドラーズとしての養育係だったのが、マイケル・グリーンだ。マイケル・グリーンは現在、シドニー大学におり、ワシントンから左遷されている形である。しかし、小泉進次郎が首相になれば、ワシントンに戻る可能性が高まる。ラーム・エマニュエルと動きを同調させるだろう。

 対米従属神奈川連合・小泉進次郎政権は、ジョージ・W・ブッシュ政権と同じような形になるだろう。父親のジョージ・HW・ブッシュは偉かったが、息子のジョージ・W・ブッシュはアホだった。ブッシュ(子)政権を実質的に取り仕切ったのは、ディック・チェイニー副大統領だった。それと同様に、菅義偉が副総裁や副総理として政権入りして、実施的に采配を振るうということが考えられる。対米従属の度合いが増して、露骨な神奈川連合・小泉政権は、防衛費をさらに増額し、国民に増税を強いていくだろう。その行きつく先は、中国との衝突である。カマラ・ハリス政権が成立して、ラーム・エマニュエルが外交関係の重職に就くことになれば、その可能性が高まる。今回、小泉進次郎政権の可能性が高まっているのは、そうしたアメリカの動きに連動してのことである。日本の属国としての哀しさはここに極まれり、である。

(貼り付けはじめ)

「小泉進次郎首相」誕生に向け、安倍チルドレンが大はしゃぎ! 自民党若手議員の間で囁かれる決選投票「極秘シナリオ」とは

デイリー新潮 20240829

https://www.dailyshincho.jp/article/2024/08291100/?all=1

https://www.dailyshincho.jp/article/2024/08291100/?all=1&page=2

 自民党総裁選が混迷を深めつつある。10名以上が出馬に意欲を示すなか、新たな「対立軸」の出現で、各陣営は戦略の練り直しや支持者の囲い込みに躍起に――。そんななか安倍チルドレンを中心とした若手議員の間で、早くも決選投票に向けた「極秘シナリオ」が囁かれているという。

 ***

826日に出馬表明した河野太郎・デジタル相(61)の爆弾発言が、党内に動揺を走らせているという。全国紙政治部記者が解説する。

「自民党派閥の政治資金パーティーをめぐる裏金事件で、政治資金収支報告書への不記載が発覚した議員に対し、河野氏が不記載額を国庫に全額返納させる考えを表明。それを受け、総裁選にのぞむ他の候補らも事件への対応を明らかにする必要に迫られ、総裁選の新たな争点に浮上しつつあります」

 河野氏の「返納」発言に対し、石破茂・元幹事長(67)が「(議員の処分に関して)1回決めたものを覆すのはあるべきと思わない」と話すと、茂木敏充・幹事長(68)も「過去に遡及することはなかなか難しい」と否定的な考えを示した。

「また“コバホーク”こと小林鷹之・前経済安全保障担当相も『どのような根拠に基づいて、どういう形でどこに返還されるのか、確認していく必要がある』と河野発言に疑問を呈しましたが、その真意について様々な憶測が飛び交っています。というのも、小林氏の推薦人には裏金事件で不記載の誹りを受けた議員も名を連ねる予定とされ、河野発言の影響いかんによっては自身の出馬戦略に影を落としかねないと噂されているのです。河野氏はソレを見越した上で乱立する候補者に向け、新たな“対立軸”をあえて打ち出したと指摘されています」(同)

 裏金事件では最大派閥・安倍派に所属する議員の大半がキックバックを受けていたことが明らかになっており、同派全体では5年間で6億円を超えるパーティー収入の「不記載」が判明。同派所属のアベチルドレン池田佳隆議員の逮捕にまで発展した経緯がある。

 自民党関係者の話。

「そのアベチルドレンを中心とした若手議員の間でいま、河野氏の発言に対する反発が広がっています。(当選回数)34回生以下の議員の多くは小泉進次郎とコバホークを推していて、河野氏の発言はその盛り上がりに『水を差しかねない』と不評を買っている」

 その背景には、こんな呆れた事情があるという。

「安倍元総理という『看板』の力で当選したアベチルドレンや選挙基盤が脆弱な若手にとって、新たにすがる看板がないと“次の選挙で勝てない”との危機感は広く共有されている。その時、〈刷新〉や〈世代交代〉をアピールできる進次郎やコバホークは格好の『選挙の顔』となり得る一方で、河野のいう“裏金事件のケジメ”は、彼らにとって『若手の台頭を妨げ、自分ひとり“清廉さ”をアピールする計略に過ぎない』と映っているようだ」(同)

■「副総裁」候補はアノ人…

現時点で、河野氏の発言に反応を見せていない進次郎氏の動向に注目が集まるなか、

「すでに党の若手の間では『決選投票は進次郎とコバホークになる』と期待含みの予測がひとり歩きを始めている。その熱気に押され、これまで『カラッポの進次郎に首相など務まるはずがない』と否定的な見方をしてきたベテラン議員の間からも『国民が刷新を望むなら、それもアリか……』といった声が出始めている始末だ」(同)

 ただし「懸念もある」と話すのは、前出の政治部記者である。

「進次郎氏に“政策論など何もない”との評は根強く、小林氏にしても“政治家としての実績はないに等しい”との声は多い。つまり仮に進次郎氏と小林氏が決選投票に進めば、『史上稀にみる、空虚で中身のない総裁選になる』と不安視する声が燻っている。そのため進次郎氏が勝ち上がった際は、『副総裁に菅義偉・前首相を据える』ことで、政権の安定化と党内融和を図るとのシナリオがまことしやかに囁かれています」

 これは「悪夢」か、新生・自民の青写真か。出馬に向けた“駆け引き”は今後、ますます激しくなると予想されている。

=====

●「小泉進次郎氏、96日に立候補を正式表明すると発表 自民党総裁選」

朝日新聞 2024828 1204

https://www.asahi.com/articles/ASS8X0TY4S8XUTFK00CM.html

 自民党の小泉進次郎元環境相(43=衆院神奈川11区、無派閥=28日、総裁選(912日告示、27日投開票)への立候補を96日に正式に表明すると発表した。

 小泉氏は当初、自身が初当選した2009年衆院選の投開票日と同じ830日に表明する方向で調整を進めていた。だが台風10号が日本列島を縦断する予報となっていることから、延期を検討していた。

 同じ神奈川選出の菅義偉前首相(75=無派閥=が全面支援するほか、菅氏に近い議員や岸田派、二階派の中堅・若手議員が支持に動いている。

 朝日新聞が82425日に実施した世論調査では、「次の自民党総裁に誰がふさわしいか」の質問で小泉氏は21%に上り、石破茂元幹事長(67)と並んでトップだった。(藤原慎一)

●「河野氏「総裁選終わればワンチーム」 小泉氏、菅前首相との連携再開に期待」

神奈川新聞 | 2024826() 15:07

https://www.kanaloco.jp/news/government/article-1105168.html

 自民党総裁選を巡り、河野太郎デジタル相(衆院神奈川15区)は26日の出馬会見で、2021年の前回総裁選で連携した菅義偉前首相(2区)と小泉進次郎元環境相(11区)について、菅氏が今回出馬する見通しの小泉氏の支援に回る方針であることを問われ「総裁選が終わればワンチーム」と述べた。決選投票を見据えて選挙協力を進める可能性も含め、今後の連携再開への期待をにじませた。

 前回総裁選は各種世論調査で「ポスト岸田」候補として上位常連の小泉氏と石破茂元幹事長の支援による「小石河連合」で挑んだ。3度目の挑戦となることを踏まえ、「戦いの構図は毎回違う」と強調。「菅さんも進次郎さんも同じ神奈川。今回もお二人とはここまでいろいろと話をしてきたし、総裁選のさなかは積極的に議論していきたい」と語った。(三木崇、有吉敏)

●「小泉進次郎・元環境相、福島の水産物の安全性PR…総裁選への質問には「今は何も考えられない」」

読売新聞オンライン 2024/07/07 15:00

https://www.yomiuri.co.jp/politics/20240707-OYT1T50055/

 自民党の小泉進次郎・元環境相は6日、自民派閥の政治資金規正法違反事件に関し、「地方の不満が相当寄せられている。払拭(ふっしょく)するためにすべきことをしっかりと考えたい」と述べ、信頼回復に取り組む姿勢を強調した。福島県南相馬市で記者団の質問に答えた。

 小泉氏はこの日、ラーム・エマニュエル駐日米大使と地元で水揚げされたヒラメの刺し身などを味わい、東京電力福島第一原発の処理水の安全性をアピールした。中国による日本産水産物の輸入禁止措置について「非科学的な福島や日本への攻撃に日米ともに立ち向かう」と強調し、総裁選への対応を問われると「今は(福島以外のことは)何も考えられない」と語った。

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●「次の自民総裁、小泉氏23%・石破氏18% 日経世論調査」

日本経済新聞 2024822 22:00 (2024823 10:07更新)

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA1973O0Z10C24A8000000/

日本経済新聞社とテレビ東京は岸田文雄首相の退陣表明を受けて2122日に緊急世論調査をした。事実上の首相となる次の自民党総裁にふさわしい人を聞くと小泉進次郎元環境相が23%で首位だった。2位は石破茂元幹事長の18%7月の世論調査から1位と2位が入れ替わった。

高市早苗経済安全保障相が11%と続いた。調査は出馬が取り沙汰される議員11人から1人だけを選んでもらう形で聞いた。

=====

●「「次の自民総裁」石破氏トップ 小泉・菅氏続く、岸田首相は6位―時事世論調査」

時事通信 編集局202407111732分配信

https://www.jiji.com/jc/article?k=2024071100754&g=pol

 時事通信が5~8日に実施した7月の世論調査で、次の自民党総裁にふさわしい同党国会議員を尋ねたところ、石破茂元幹事長が22.1%で首位だった。小泉進次郎元環境相の10.9%、菅義偉前首相5.2%と続き、「非主流派」が上位3位を占めた。

 岸田文雄首相の党総裁任期は9月末まで。総裁選出馬に意欲を示す河野太郎デジタル相は5.1%、高市早苗経済安全保障担当相は4.0%。再選を目指す首相は3.2%で6位だった。上川陽子外相は3.1%、茂木敏充幹事長と野田聖子元総務相はいずれも1.1%だった。

 自民支持層に限ってみても石破氏は26.2%でトップ。小泉氏10.7%、河野氏9.6%、首相9.1%の順だった。

 調査は全国18歳以上の2000人を対象に個別面接方式で実施。有効回収率は58.4%。

◇自民総裁にふさわしい議員

(1)石破茂      22.1

(2)小泉進次郎    10.9

(3)菅義偉       5.2

(4)河野太郎      5.1

(5)高市早苗      4.0

(6)岸田文雄      3.2

(7)上川陽子      3.1

(8)茂木敏充      1.1

 野田聖子      1.1

(10)林芳正       0.6

(11)小渕優子      0.4

(12)小林鷹之      0.3

(13)斎藤健       0.2

(14)加藤勝信      0.1

※この中にはいない 18.3

(敬称略、数字は%)。

(貼り付け終わり)

(終わり)

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 古村治彦です。

 2023年12月27日に最新刊『バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる』(徳間書店)を刊行しました。アメリカ政治と世界政治について詳しく分析しました。是非手に取ってお読みください。このブログを継続するため、本をご購読いただければ大変助かります。よろしくお願いいたします。

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

 昨年からの自民党各派閥のパーティー券販売キックバック問題(裏金作り)は、複数の政治家と安倍派、二階派、岸田派の会計責任者の立件でひと段落となった。安倍派、二階派、岸田派、森山派、石破グループ(政策集団・勉強会として存続していた)は派閥解散、麻生派と茂木派は存続ということになった。菅義偉前首相を中心とする、無派閥という議員グループが大きな勢力となっている。現状は、旧派閥と新派閥の対立構造という形で捉えることができる。

 また、茂木派からは、小渕優子衆議院議員と青木一男参議院議員が退会を表明し、その後も参議院議員数名が退会した。田中角栄から竹下登、小渕恵三、橋本龍太郎と続く派閥において、「茂木敏充ではなく、小渕優子を首相にする」という意図を持った動きである。麻生派は今のところ大きな動きはないが、80歳を超えて失言も続く麻生太郎に引退してもらい、河野太郎を領袖とするという動きと、それに反対する動きが派内にはあるだろう。河野は菅義偉とも同じ神奈川県を地盤としている点で関係が良好であり、同じ神奈川県を地盤としている小泉進次郎も、以前の総裁選挙で河野太郎を支持したこともあり、河野太郎は、麻生派を継承もしくは分裂して、河野派となり、菅・小泉の神奈川グループの支援を受けるということも考えられる。

 安倍派に関しては、幹部の責任論がくすぶり続け、座長の塩谷立議員や五人衆と言われる幹部たちの離党や議員辞職についても語られている。自民党内部にそのような声がある。これは極めて重要な動きである。この議員たちは、自分たちが離党をしたり、議員を辞めたりする必要があるのかと憤慨しているだろうし、そもそも自分たちは派閥の慣例に従っただけのことで、それを作ったのは森喜朗元首相だと声に出して反論したいだろう。こうした安倍派の凋落の中で、福田達夫議員は新しい集団作りを目指すと発言した。福田派の結成ということになる。

 今回の派閥パーティー券販売をめぐる特捜検察の捜査にはアメリカの意図があっただろうということを推察し、そのことをこのブログでも書いた。そしうて、これまでの動きも合わせて考えると、私は、今回の派閥潰しの最終目標は森喜朗元首相の失脚であっただろうと考える。そして、合わせて、現在の自民党執行部の古い幹部たちの力を失わせ、新しい、若手たちの東洋を進めるということであっただろうと考えている。

 森喜朗という人物については、全くとらえどころがない、理解しがたい、日本の典型的な政治家として、アメリカは捉えていただろう。ロシアとの関係が深く(父親の代から)、清濁併せ呑むということで、アメリカ側としては御しにくいタイプの典型的な日本の政治家であった。今回、二階派も解散ということになり、二階俊博元幹事長も力を失い、引退を迫られることになるだろう。二階議員は中国との太いパイプを持つことで知られているが、アメリカにしてみれば、邪魔な存在ということで、森喜朗と二階俊博はまとめて失脚させられることになった。

 自民党の新しい実力者として、菅義偉がその地位に就くことになった。菅義偉議員は、安倍晋三政権の官房長官時代にアメリカを単独で訪問し、アメリカ側が首実検を済ませている。日本維新の会とも関係が深く、カジノ推進ということでアメリカの利益を推進する政治家である。アメリカとしては、森や二階に代わって、菅を実力者として据えるということにしたようだ。そして、派閥はご破算になって、新たに、河野派、福田派、小渕派、無派閥の小泉進次郎議員という、新しいリーダーたちを育成し、より直接的に、アメリカの意向が伝わり、実行されるような体制を構築しようとしていることになる。

 今回の動きは、アメリカ国内のジャパンハンドラーズの勢力変動の影響もあったと言えるだろう。安倍晋三を支持してきた、マイケル・グリーンがシドニー大学に移籍したことは、彼が左遷され、都落ちさせられたということである。そして、グリーンの後ろ盾を失った安倍晋三は首相の座を追われ、最終的には暗殺された。誰に暗殺されたか、このことは私の先生である副島隆彦先生の『愛子天皇待望論』(弓立社)に詳しいので、そちらを読んでもらいたい。

安倍晋三元首相と彼を取り巻く勢力は、統一教会に影響を受け、日本の歴史守勢主義を推し進め、核武装まで進めようとしていた。アメリカとしては、アメリカ軍にとって役立つ日本の防衛力強化は歓迎であるが、安倍晋三元首相はそれ以上のことをしようとした。彼はアメリカにべったりで、アメリカ従属路線の人物だと日本人である私たちは評価するが、アメリカ側からすれば、「靖国神社に参拝し、太平洋戦争での日本は正しかったと主張するカルト・オブ・ヤスクニであり、核武装まで主張する危なっかしい人物」となる。アメリカにとっては使い捨ての駒であり、どんなに栄耀栄華を誇っていても最後はポイッと捨てられる。

こうした動きを冷静にかつ冷酷に見てきたのが岸田文雄という人物の怖さである。岸田首相に関しては世間の評価は低いが、その粘り強さや下手(したて)に出ながら、いつの間にか相手を逆に締めているような動きには、政治家としての強さを感じる。岸田首相の対米レッドライン(最終防衛線)は、「金で済むことならば金を出す(防衛費の倍増のために増税はする)が、中国とぶつけられることはなんとしても回避する」ということだろう。国民生活の苦しさは日本の政治家であれば分かっているはずだが、「戦争をさせられるよりはずっと良い、何とか耐えてもらいたい」ということだと思う。書き散らしになって申し訳ないが、私の今に日本政治に関する考えを書いた。

(終わり)

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 古村治彦です。

 以下の論稿は、10月31日の総選挙の前に、アメリカの外交専門誌『フォーリン・ポリシー』誌に掲載された日本政治分析の記事を紹介する。この記事では、安倍政権の功績を称え、岸田政権の行き先を不安視する内容だったが、結局、岸田文雄首相は政権基盤を固め、邪魔者だった甘利明には選挙で負けた責任を取らせて幹事長を辞任させることに成功した。また、これまでの人事では巧妙に麻生太郎と安倍晋三を外す動きを少しずつ進めている。

 下に紹介する記事は、日本政治の実態を捉えているとは言い難い。しかし、「アメリカ側から見た日本政治の姿」という側面からは良く書けているということになる。安倍政権下での対米従属の深化は、アメリカ側からすれば、日本の手駒としての能力が上がったということである。将棋で言えば、「歩」程度だったが、「飛車」「角行」とまではいかないが、「香車」程度にはなったということである。これで「日本の使い勝手」が良くなったということになる。

 岸田文雄に首相が交代したことでアメリカは警戒感を持っていることだろうが、そこに、ともにハーヴァード大学ケネディ行政大学院で修士号を取得した、茂木敏光を自民党幹事長に配し、林芳正を外相に起用したことで、「アメリカには逆らいません」という姿勢を示すことで、アメリカの警戒感を和らげようとしている。また、ジョージタウン大学卒業の河野太郎も首相候補であることから、これからしばらくは、アメリカで教育を受けた人物たちが首相を務めることになるだろうということをアメリカにシグナルとして送っている。

 この論稿の筆者はアメリカで日本政治を研究する立派な学者であろうが、やはり日本にいないことで、日本分析は隔靴掻痒の感を否めない。安倍首相は偉かった、岸田首相は心配という単純な話では済まないのである。

(貼り付けはじめ)

日本の総選挙は岸田の運命を決めることになるだろう(Japan’s Lower House Elections Will Decide Kishida’s Fate

-「回転ドア」首相は国内と国外に影響を与えることだろう

ナオコ・アオキ筆

『フォーリン・ポリシー』誌

2021年10月29日

https://foreignpolicy.com/2021/10/29/japan-kishida-ldp-prime-minister-revolving-door-lower-house-elections/

日本の下院に当たる衆議院議員選挙が10月31日に実施される。これは新たに首相に就任した岸田文雄首相にとっては最初の大きなテストとなるだろう。彼は前任者である菅義偉が就任後1年で辞職したことを受けて今月初めに首相に就任したばかりだ。今回の首相交代によって首相交代のサイクルがとても早いように見えるかもしれないが、2012年12月から2020年9月までの約8年間、日本を率いた安倍晋三元首相の時代までは、ほぼ毎年、新しい首相が誕生するのが当たり前だった。

菅首相の辞任が、日本の首相の「回転ドア」の連鎖の始まりとなるのか、はたまた、岸田首相も同じ運命をたどるのか、判断するのは時期尚早だ。過去には、政治的な戦いやスキャンダルで辞任する首相もいたし、個人の健康上の理由で辞任する首相もいた。しかし、選挙の敗北の結果として辞任ということが多かった。日曜日の選挙は、岸田首相が権力の座に座り続けられるかどうかを測るリトマス試験紙ということになるだろう。

岸田首相がどれだけ続けられるかが問題ではないという人たちもいるだろう。血胸のところ、日本は法の支配(rule of law)を尊重し、自由で公正な選挙(free and fair elections)が実施され、人々の諸権利(civil rights)が守られている安定した民主政治体制(stable democracy)である。近年、欧米で大きな広がりを見せているポピュリズム(populism)の陥穽も、この国では回避されている。また、政策の策定や効果的な実施に大きな役割を果たす強力な官僚組織があることでも知られている。

しかし、日本の首相の在任期間が日本にとっても世界にとっても重要である複数の理由がある。

1994年以降、日本の政治改革によって、首相の権力は拡大している。同年の選挙改革によって、議会の選挙システムは中選挙区制(multi-seat constituencies)から小選挙区制(single-seat districts)と比例代表制(proportional representation)に代わった。これによって、一つの選挙区の中で、一つの政党が複数の候補者を出して勝利を収めることができなくなった。

これにより、過去70年間、日本の政治を支配してきた自民党内の力学が変化し、かつては選挙区で候補者を出し合っていた自民党の派閥(factions)の間の競争が緩和された。その結果、自民党内の派閥の領袖たちの影響力は低下し、首相が派閥の領袖たちの意向に左右されなくなり、少なくとも理論的には、総理総裁がより個人的な力を発揮できるようになった。

また、1990年代後半から始まった一連の行政改革により、官僚に頼らずに政策を始め、展開できる首相の法的権限が強化された。2001年には政策設計機能と内閣府の創設によって官房長官(Cabinet Secretariat)の力が強化された。内閣府は政策形成の点で首相を直接支援する機能を持っている。安倍政権は2013年に国家安全保障会議(National Security Council)を創設し、外交政策に関する首相の力を強化した。これは、政治の最高指導者の手に安全保障政策形成の力を集中させるものだ。

つまり、現在の日本の首相は、20年前の首相に比べて、国の方向性を決め、政策の優先順位を決定し、改革を実行できるより強い立場にある。

権限は強化されているが、短期でどんどん交代していく首相では、中期的もしくは長期的なヴィジョンを実現するのに十分な時間を持つことはできない。短い在任期間では、首相が国内政治システムの重要な利害関係者から支持を得て、法案を起草して可決し、優先順位の高い政策を実行することはできない。この現象は、遠くない過去に多くの例が存在する。

最近の日本の首相は就任後に自分自身の経済成長戦略をスタートさせてきた。2007年9月から2008年9月まで首相を務めた福田康夫はテクノロジー部門の技術革新を通じて成長を促進する計画を立てた。福田の後任麻生太郎の在任期間は1年弱だった。麻生派自身の「成長イニシアティヴ」を策定した。アジア全体の経済規模を2倍にするために、輸出主導型モデル(export-oriented model)から需要主導型モデル(demand-driven one)に転換することを目指した。しかし、世界的な金融危機に見舞われ、福田も麻生もともに大きな成果は得られなかった。

2009年から2012年にかけて、自民党は野党だった。この時期に出た民主党の首相3人もまた自身の経済プログラムを推進した。たとえば、2011年9月から2012年12月まで482日間在任した野田佳彦は、8カ年経済成長戦略をスタートさせた。この戦略の目的は、「日本再生(rebirth of Japan)」を達成することだった。この計画は、2011年3月に発生した福島第一原発事故の後に導入され、その目的は、医療や再生可能エネルギーのような分野で新しい産業と雇用を生み出すことであった。多くの目標の一つは、2020年までに、ガソリンと電気のハイブリッド、電気、天然ガスなど高燃費効率車が日本の全自動車の50%を占めるようにすることだった。しかし、その計画は頓挫してしまった。2020年の日本の新車販売台数のうち、これらの車の販売台数は36.2%にとどまった。この36.2%の内訳は、環境に優しい完全な電気自動車ではなく、ガソリンと電気のハイブリッド車が大半を占めている。

同じパターンが外交政策でも繰り返されている。福田はこれから30年間のヴィジョンとして、太平洋に面した、環太平洋(Pacific Rim)の諸国のネットワーク化を進め、「太平洋を内海(inland sea)にする」ことを提唱した。このヴィジョンにおいて日本にとって重要政策とされたのは、インド洋において対テロ作戦に従事しているアメリカと外国の艦船に対する燃料補給業務を海上自衛隊に行わせることで、アメリカ主導のテロリズムの戦いに貢献することだった。皮肉なことに、皮肉なことに、福田は自民党が過半数を失った参議院で海上自衛隊の燃料補給業務の再可決法案を可決させることができずに辞任した。一方、麻生は「自由と繁栄の弧(arc of freedom and prosperity)」を議論した。これは、日本が同様の価値観を持つ国々と協力するというものだった。その基本概念は、現在の日本の外交政策にも生きているが、麻生の構想の名前で覚えている人はほぼいない。

安倍首相は約8年首相に在任し、強化された立場を完全に活用することで、これらの常識を覆した。最も注目すべきは、大規模な金融緩和、財政出動、構造改革を組み合わせた「アベノミクス」と呼ばれる経済成長プログラムである。アベノミクスは、日本経済の将来の軌道を根本的に変えるには至らなかったものの、デフレ脱却、失業率の低下、企業収益の向上を実現した。また、マーケティング的にも成功した。日本の首相の名前が、日本の専門家たちの少数グループだけに知られているだけでなく、世界中に知られている政策プログラムに付いているのは珍しいことだ。

経済に加えて、安倍派安全保障分野で成果を残した。日本の自衛隊の使命を拡大することで成果を残した。これらのステップをめぐっては論争が起きた。日本国憲法第9条は戦争を放棄している。これまでの数十年間、自衛隊の役割は増大しているが、安倍の改革は、特定の条件下での集団的自衛権の行使を日本に与えることで、重要な成果を上げた。

安倍首相が長期にわたり首相に在任したことで、日本の外交政策にも貢献した。安倍首相は、外交的そして概念的な構想を推進するために必要な諸外国の指導者との関係を構築する時間を得ることができた。この努力の成果の一つは、自由で開かれたインド太平洋というヴィジョンである。この考えは安倍首相が元々提唱したものだったが、トランプ政権によって採用され、2017年には完全なアメリカの戦略となった。

安倍政権下、2017年にアメリカが協議から脱退した後も、日本は地域の自由貿易協定である環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定(Comprehensive and Progressive Agreement for Trans-Pacific Partnership)を主導した。アメリカが関与しない多極的な枠組みで日本が指導力を示したレアケースだった。

もちろん、安倍元首相の長期にわたった在任期間は、彼の政策目標が全て達成されたということを意味しない。とりわけ、また、1970年代から1980年代にかけて北朝鮮に拉致された日本人に関する問題や、北朝鮮の核・ミサイルの脅威の抑制について、北朝鮮との間で進展させることはできなかった。安倍首相はまた千島列島日本では北方領土と知られる千島列島をめぐるロシアとの領土問題についても何の進展もなかった。

また、首相の政治力を決める要因は、在任期間だけではない。国民からの支持もまた重要だ。安倍元首相は在任期間のほとんどで国民からの支持を享受した。安倍首相の外交・安全保障政策に対しては、中国をはじめとする地域の新たな課題に対処する必要性についての国内のコンセンサスが高まっていたことも追い風となった。

ここで2021年10月31日の選挙の話が出てくる。自民党の選挙結果によって、自民党が岸田を総裁に選んだことと岸田が挙げた公約に対する国民の支持の程度を測定することになるだろう。

現時点では、自民党が議席を増やすかどうかではなく、どれくらい議席を減らすかが問題となっている。最近の世論調査では、自民党の支持率が低下している。岸田首相は自民党の連立相手である公明党との間で衆議院の過半数を維持するという控えめな目標を掲げている。2021年10月14日に国会を解散する(dissolution)前、日本の下院にあたる衆議院465議席のうち、自民党は276議席を占め、公明党は29議席を占めている。岸田の掲げた目標を達成するためには、自民党は72議席を減らすことができる。最近の世論調査では、自公連立政権が過半数を維持する可能性が高いと言われているが、自民党が単独で過半数を維持できるかどうかは不確実である。

日曜日に自民党が予想以上の結果を出せば、党内での岸田首相の影響力が高まり、岸田首相が希望する政策を実行するための時間と場所が確保される可能性が高まる。良くない結果になれば、その可能性は低くなり、公明党の影響力は大きくなる。良くない結果となれば、来年夏の参議院選挙に向けて、自民党はまた新たな総理総裁選出を検討するきっかけにもなるだろう。どちらの結果になるにしても、岸田の仕事はより複雑になっていくだろう。

※ナオコ・アオキ:メリーランド大学国際・安全保障研究センター研究員、アメリカン大学の準教授を務めている。

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日本の選挙:岸田文雄首相は与党自民党の勝利を宣言(Japan election: PM Fumio Kishida declares victory for ruling LDP

BBC

2021年11月1日

https://www.bbc.com/news/world-asia-59110828

日本の岸田文雄首相は彼が率いる与党自由民主党(Liberal Democratic PartyLDP)の勝利を宣言した。

1カ月前に首相に就任したばかりの岸田氏にとって大勝利となった。彼が率いる自民党は衆議院(lower house)で233議席以上の議席を確保した。これは連立のパートナーである公明党の存在がなくても議会の過半数を占める数字だ。

自民党はこれまで数十年にわたり日本政治を支配してきたが、新型コロナウイルス感染拡大対策では批判を浴びた。

岸田首相の前任者菅義偉は就任1年で辞職することになった。

新型コロナウイルス感染者数拡大についての人々の懸念がありながらも東京オリンピック開催を推進し続けたことで自民党の支持率は低下し続けていた。そうした中で、菅首相の辞職が発表された。

64歳の岸田氏は長年にわたり首相の座を狙い続け、2012年から2017年まで外相を務めた。

自民党は465議席中276議席を占める形で総選挙を迎えた。

選挙戦序盤の世論調査では、自民党は過半数を占めるためには連立パートナーの公明党に頼らねばならないという結果が示されていたが、その予測は覆された。

自民党は261議席を獲得し、過半数の233議席を大きく上回った。公明党は32議席を獲得し、連立与党の議席数は合計で293議席となった。

日本の議会は、国会(National Diet)として知られている。国会は下院(lower)に当たる衆議院(House of Representatives)と上院(upper)に当たる参議院(House of Councillors)で構成される。

日曜日の投票はより優位な衆議院に関するものであり、参議院議員選挙は来年実施される。

月曜日、日経225は2.6%の上昇で終えた。投資家たちは自民党が過半数を大きく超えて議席を獲得したことについて、岸田首相の経済刺激策が議会をスムーズに通過するだろうということに賭けた。株価上昇はこのことを意味している。

選挙前、岸田首相は新型コロナウイルス感染拡大をきっかけにして、世界第三位の経済を支援するために数十兆円規模の支出を行うことを約束した。

日曜日、岸田首相は公営放送であるNHKに出演し、その際、今年の終わりまでに更なる追加予算を策定する計画だと述べた。

●岸田文雄とはどんな人物?

(1)岸田氏は政治家一族の出身であり、彼の父親と祖父も政府に関与した。

(2)彼は1993年に議員に初当選した。2012年から2017年まで外相を務めたがこれは最長記録だ。

(3)2016年のバラク・オバマ大統領の広島(岸田氏の地元)訪問を調整した。広島は核爆弾による攻撃を受けた都市の一つだ。現職のアメリカ大統領による初訪問となった。

(4)名門の東京大学の入学試験に失敗した。これは多くが東京大学で学んだ彼の一族からは「恥(embarrassment)」と見られた。

(5)彼はお酒を飲むのを好む。外相時代にロシアのセルゲイ・ラブロフ外相に飲み比べを挑んだというエピソードは有名だ。

(貼り付け終わり)

(終わり)
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ビッグテック5社を解体せよ

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める

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 古村治彦です。

 昨日2021年9月29日に、自民党総裁選挙の投開票が実施され、岸田文雄衆議院議員が総裁に選出された。現在、地味党と公明党で連立与党を組んでおり、岸田氏が菅義偉首相の次の首相ということになる。

 選挙は9月17日に告示され、立候補者の受付が行われ、河野太郎ワクチン担当大臣、岸田文雄元外相・元総務会長、高市早苗元総務相、野田聖子幹事長代行が立候補した。野田氏は推薦人20名を集めるのに苦労していると報道されていたが

 菅首相が9月3日に総裁選不出馬を表明して以来、総裁選挙の状況は一気に流動化した。岸田氏は菅首相府出馬表明前から、いち早く総裁選挙立候補を表明し、高市氏は、安倍晋三前首相の再登板を求めたが断られたことを受け、「私が出たるわ(関西の出身)」と啖呵を切り、安倍氏の支援も受けて、立候補となった。河野氏は、菅政権を支える現職閣僚、ワクチン担当ということもあり、すぐに出馬を決断という訳にはいかなかったが、若手の議員たちや、小泉進次郎環境相や石破茂元幹事長の支援を受け、「小石河連合」と呼ばれる協力体制を確立し、立候補となった。野田氏はこれまでも何度か総裁選挙立候補を模索したが、推薦人集めができずに断念してきた。今回は二階幹事長率いる二階派から推薦人を「借りる」ことができたという報道もあるが、立候補にこぎつけることができた。

 今回は各派閥が対応に苦慮し、自主投票、ただし決選投票の際にはまとまって行動を同じ候補者に投票するという対応になったところが多かった。自民党の派閥は、「8個師団」時代から、三角大福中時代、ニューリーダー時代を経て、小選挙区制度導入もあり、構造を変化させつつも残っている。現在は、細田派(96名)、麻生派(55名)、竹下派(51名)、二階派(47名)、岸田派(46名)、石破派(16名)、石原派(10名)、無派閥63名という状況だ。派閥とはトップ(領袖)を総裁にするためのものとして始まったが(中間派と呼ばれた小派閥もあったが)、現在はトップが総裁を目指すということも少なくなった。今回も岸田氏のみが派閥を率いる領袖だった。

 河野氏は麻生派のプリンス(次に領袖になると見られている人)だったが、今回の総裁選挙では麻生は全体を率いて戦うということではなく、現在の領袖である麻生氏から立候補の了承は得たが、麻生は全体で河野氏を支えるという雰囲気はなかった。高市氏は、元々は細田派に属していたが既に退会しており、無派閥であり、細田は全体からの支援ということも難しかったが、実質的なオーナーである安倍晋三前首相が高市氏を全面支援した。野田氏は独自の戦いを展開した訳だが、自民党にとっては良い効果もあったと思う。

 総裁選挙の結果は次のようなものとなった。簡単にまとめたので見ていただきたい。

(貼り付けはじめ)

■党員算定票(382票、有効投票数:760075票)は

・河野太郎(335046票、44.08%):地元神奈川県を含む37都道府県で1位

・岸田文雄(219338票、28.86%):地元広島県を含む8県で1位

・高市早苗(147764票、19.44%):地元奈良県で1位(2位は河野)

・野田聖子(57927票、7.62%):地元岐阜県で1位(2位は河野)

↓ドント方式で計算して

・河野太郎:169票、岸田文雄:110票、高市早苗:74票、野田聖子:29票

■国会議員票(380票:本来は382票だが病欠などがあった)は

・河野太郎:86票、岸田文雄:146票、高市早苗:114票、野田聖子:34票

■1回目の投票では

・河野太郎:255票、岸田文雄:256票、高市早苗:188票、野田聖子:63票

■岸田文雄、河野太郎の上位2名による決選投票

・河野太郎:131票(議員票)+39票(党員算定票)=170票

・岸田文雄:249票(議員票)+8票(党員算定表)=257票

(貼り付け終わり)

 全体の印象としては、メディアで騒がれたほどには、河野氏は党員党友票が取れていなかったこと、高市氏は議員票も党員党友票が取れていなかったことだ。インターネットで調査をすれば、支持率で言えば河野氏が断然トップだったし、高市氏を応援するインターネット世論も大きく、「高市氏が2位になるのではないか」という勢いもあった。しかし、インターネットとは曲者だ。私は2000年の「加藤の乱」を思い出す。加藤紘一氏は、自身に寄せられたEメールの束を手にして、小渕恵三首相に戦いを挑み、一敗地にまみれた。インターネットは実像をより大きく見せる効果があるように思う。

 党員党友票の大幅リードで河野氏が1回目の投票で1位になると見られていて、岸田氏、高市氏が2位と3位になると見られ、決選投票になったら「2・3位連合」という話も出ていたが、接戦で岸田氏が1位、河野氏が2位となった。河野氏の敗北が決定的となった。

 河野氏の敗因は、国会議員票の獲得数の少なさに尽きる。また、党員党友票がもっと獲得できるのではないかとも陣営は考えていたのではないか。空中戦の失敗だ。小泉純一郎出現の時のような熱狂がなければ、河野氏の当選は困難だった。そして、人々は、あの時の熱狂を苦々しい記憶として持っている。河野氏のあのドライな、冷たい態度は政治家としては致命的な欠点ということになる。それでこれまで8回も当選してきたのだから、直すことはできないだろうからそのままで進むしかない。

 今回の総裁選挙で私が考えるキーワードは「通産省」と「産業政策」だ。この2つの言葉が並ぶと、チャルマーズ・ジョンソン著『通産省と日本の奇跡: 産業政策の発展1925-1975 (ポリティカル・サイエンス・クラシックス)』(1982年)を思い出す方も多くおられると思う。私がどうしてそのように考えるに至ったかについて書いていきたい。まず以下の記事をお読みいただきたい。

(貼り付けはじめ)

●「「ガッカリ河野を見切って高市に乗り換え」議員たちの驚きの打算」

9/28() 10:32配信 FRIDAY

https://news.yahoo.co.jp/articles/e5b643d655ed9193bb1c197206c5f7131bf26261

 

予想外の大混戦となった自民党総裁選は、いよいよ929日に「決戦」を迎える。一挙手一投足を追うメディアの世論調査では、発信力の高さに定評がある河野太郎ワクチン担当相のトップは不動だが、「決選投票になれば河野氏ピンチ」というのもコンセンサスである。熾烈さを増す権力闘争の中で、勝敗を分けるとされる態度未定の議員たちの心理は複雑なようで

【画像】今井絵理子議員が「期待の美人秘書」と国会でツーショット!

◆着信に「安倍前総理」

「本人からの電話に驚いた。ここまで力を入れているなんて…」

携帯電話の着信履歴を見返しながら自民党の若手議員が首をひねるのも無理はない。「本人」とは、総裁選の立候補者ではない。河野氏を猛追する高市早苗前総務相を全面支援する安倍晋三前首相からの応援依頼だったからだ。議員間ではしきりに情報交換がされ、態度を決めかねているとされる約2割の議員の元には各方面からの電話が続いている。

情報戦もヒートアップする一方だ。

「もしも裏切り行為があれば、安倍さんが許すことはない」

「岸田文雄前政調会長が決戦投票で勝つのは明白。いま力を貸しておけば、新政権で活用してくれるはず」

前首相から直で電話が来る時代。この時ばかりは若手議員たちは通信手段の発達を恨んだことだろう。

いまも態度を決めかねている議員らの頭の中にあるのは、11月に予定される総選挙だ。安倍前首相からの揺さぶりも効果はあるが、その一方で、

「河野さんが首相になるのを後押しすれば、石破茂元幹事長や小泉進次郎環境相が選挙の時に必ず応援にくる」

「逆に保守色の強い高市氏では、公明党がついていけなくなるから、選挙では不利ではないか」

との算段が頭の中をメリーゴーランドのように駆け巡っているのだ。国民の人気が高い「小石河連合」に加えて、河野氏を支持する菅義偉首相からのにらみは、選挙に弱い態度未定の議員心理を揺さぶる。

だが、当選ムードを漂わせる河野陣営を横目に「ガッカリした」と距離を置き始めたのは自民党中堅議員の1人だ。その理由は、河野氏が総裁選への出馬表明を2日後に控えた98日に経団連を訪れていたことにある。「脱原発」を唱えていた河野氏は、十倉雅和会長と会談し「安全と認められた必要な原発は再稼働させていく」などと、自らの主張を修正したと受け止められたからだ。10日の記者会見でも「安全が確認された原発を当面は再稼働させるのが現実的だ」と明言した。

◆河野包囲網

歯に衣着せぬ発言や突破力が最大のアピールポイントだったはずの河野氏は牙を抜かれつつあるようにも映る。「一部の政治家からは『すべてを電気自動車にすれば良いんだ』とか、『製造業は時代遅れだ』という声を聞くこともあるが、それは違うと思う」。日本自動車工業会の豊田章男会長は9日、踏み込んだ発言で周囲を驚かせたが、河野氏やその周辺が念頭にあるというのがもっぱらの見方だ。

さらに日本貿易会の小林健会長(三菱商事会長)も15日、原発に関して「検討もしないで『イエス・オア・ノー』ということはありえない」として、新増設の検討が必要との見解を示した。対立陣営からは「河野氏が新しい首相になれば、企業とうまくいかないのではないか」との声が伝わる。

河野氏の周辺は、財界をはじめ企業に「河野包囲網」のメッセージを送っているのは、安倍政権時代に首相秘書官を務めた今井尚哉氏であると見ている。岸田氏の勝利に向け指南しているとも報じられる今井氏は、経済産業省時代のネットワークに加えて、安倍氏が勝利してきた過去の総裁選で原動力となった支持団体の重要性を最も知る人物だ。「『職域』がどんどん剥がされているようだ」と河野氏のブレーンに不安はつきない。

今回の総裁選は、議員票382と党員票382の計764票で争われる。約110万人に上る党員が「国民感覚」に近いのは間違いないが、その内訳を考えれば、総裁選での投票行動は必ずしも「国民感覚に近い」とは言い切れない。

その理由は、業界団体に属している「職域党員」が党員票全体の4割近くに上るためだ。「職域」は全国単位で動くことが可能で、安倍氏の総裁選で党員票の積み増しに大きく貢献したとされる。さらに、この支持団体からの支援を受ける議員たちも、その動向を気にしないわけにはいかなくなる。

世論調査の数字からは「最も総理大臣に近い男」であることは間違いない河野氏だが、総裁選終盤では焦りも見え始めている。26日のフジテレビ番組で「河野氏の陣営が1回目の投票で一部の票を高市氏に回す動きもある」との解説に対して、「ひどいフェイクニュースですよ」「するわけないですよ!冗談はよしてください」と激高する一幕も。

加えて、ジャーナリストの田原総一朗氏からは「河野太郎が出馬会見で『脱原発』も、『女系天皇』も外して、どうしようもなかった。河野に言ったのよ、ガッカリしたと。なんであんなことを言ったのかといえば、そういわなければ麻生さんが出馬を認めなかったんだと」などと、ウッカリ“暴露”されてしまう始末である。

権力闘争よりも新型コロナウイルス対策の方をシッカリしてほしいというのが国民の願いであるが、自民党の若手議員からは、総選挙での応援だけは「シッカリきてくださいよ」との声が漏れる。なんとも空しいものである。

取材・文:小倉健一

イトモス研究所所長

(貼り付け終わり)

 私はこの記事を読みながら、次の文章に目が留まった。引用する。「河野氏の周辺は、財界をはじめ企業に「河野包囲網」のメッセージを送っているのは、安倍政権時代に首相秘書官を務めた今井尚哉氏であると見ている。岸田氏の勝利に向け指南しているとも報じられる今井氏は、経済産業省時代のネットワークに加えて、安倍氏が勝利してきた過去の総裁選で原動力となった支持団体の重要性を最も知る人物だ」。今回の総裁選挙で岸田氏の陣営の指南役として入り、経済界における「河野包囲網」を作り上げたのが、「今井尚哉(いまいたかや、1958年-、63歳)」氏だったというのだ。今井氏は第二次安倍政権時代に政策担当秘書官・内閣総理大臣補佐官(秘書官と兼任)を務めた人物だ。その今井氏が今回、岸田陣営の指南役となったということは違和感があった。これまでの関係で言えば、安倍氏の許で、高市氏の応援に回るのが自然ではないかと私は考えた。それなのに、今井氏が岸田氏支援に回ったのはどうしてか、ということを私は不思議に思った。そこで出てくるキーワードが「通産省(通商産業省、現在の経済産業省、戦前は商工省)」だ。岸田氏と今井氏の周辺は通産省だらけなのだ。

 まず、岸田氏の父親である岸田文武氏(きしだふみたけ、1926-1992年、65歳で没)は1978年(1949年入省)に退官するまで、通産官僚だった。貿易局長、中小企業庁長官を務めた。1963年からはニューヨークに在勤し、息子である文雄は小学校時代の3年間をニューヨークで過ごした。

 今井尚哉氏の叔父には、通産事務次官(1937年商工省入省)を務め、城山三郎の小説『官僚たちの夏(新潮文庫)』(1980年刊行、数年前に渡辺謙主演でドラマ化された)の主人公今井善衛(いまいぜんえい、1913-1996年、83歳で没)、新日鉄社長・経団連会長を務めた今井敬(いまいたかし、1929年-、92歳)がいる。安倍晋三前首相の祖父・岸信介(1896-1987年、90歳で没)元首相は1920年に農商務省に入省し、1925年の分割の際に商工省に所属した。1939年に商工省次官となった。その間には満州国に赴任した。

 上記のように、岸田氏は通産官僚の息子であり、今井氏は叔父が通産官僚で最高位の事務次官を務め、自身も通産省に入省したという経歴を持つ。岸田氏は、東京大学の入学試験で不合格となり、2年の浪人を経て、早稲田大学法学部に入学し、卒業後は日本長期信用銀行に入行した。その頃には父親が既に政治家であったが、政治家を目指してはいなかったそうだ。確かに、これまで歴代の早稲田大学出身の総理大臣は雄弁会出身者が殆どだ。雄弁会は政治家を目指す学生の登竜門であるが(最近はそうでもないようだが)、岸田氏は参加しなかったようだ。早稲田大学にはどうしても早稲田に行きたいという学生ばかりではなく、東大や京大などに不合格になって仕方なく入学してきた学生も多く、雰囲気が違う。愛校心(周囲の迷惑を考えずに早稲田の校歌を歌いまくるのはそうとは言い難いが、これが愛校心溢れる行動とされる)は早稲田大学には薄いようだ。岸田氏のよりどころは、東京の名門・開成高校にある。以下の記事を貼り付ける。

(貼り付けはじめ)

●「岸田新総裁は開成高、早稲田大卒 総裁選を争った4人の出身校と華麗なる同窓生たち 〈dot.〉」

9/29() 15:05配信 AERA dot.

https://news.yahoo.co.jp/articles/65b9672b1bce0cb0f2b91906bd3cfc06ba9043f6

https://news.yahoo.co.jp/articles/65b9672b1bce0cb0f2b91906bd3cfc06ba9043f6?page=2

https://news.yahoo.co.jp/articles/65b9672b1bce0cb0f2b91906bd3cfc06ba9043f6?page=3

 929日、第27代自民党総裁に岸田文雄議員が決定した。

 これで事実上、岸田首相が誕生することになる。9月上旬、菅義偉首相が不出馬を表明してから自民党総裁選挙がはじまり、岸田文雄、河野太郎、野田聖子、高市早苗の4人が立候補。自民党国会議員と党員・党友によって投票が行われ、新しい日本のリーダーが誕生したわけだ。総裁選を争った4人について、出身校とその特徴、同窓生をみてみよう。

【ランキング】国会議員の出身大学ランキング<政党別/女性議員/238ページ>

■岸田文雄氏

 岸田文雄は1957年生まれ。開成高校を卒業して東京大を目指したがかなわず、早稲田大に進んだ。

 開成には永田町・霞が関開成会(永霞会)という同窓会組織がある。同校OBの国会議員、省庁職員が集まる親睦会だ。現在、議員は9人、国家公務員は112省庁で約600人にのぼり、事務次官クラスが10人近くいるといわれている。

 開成OBの国会議員には東京大、官僚経由が多い(カッコ内は出身省庁)。

 上野宏史(経済産業省)

 小林鷹之(財務省)

 鈴木馨祐(財務省)

 城内実(外務省)

 鈴木憲和(農林水産省)

 永霞会事務局長の井上信治議員に「永霞会が開成OBを総理に、と盛り上がることはありますか」とたずねたところ、こう答えてくれた。

「開成から総理が生まれるのはうれしいけど、そのために永霞会を発足させたわけではありません。OBの政治家と官僚が国のために折に触れて協力し合えばいいと考えています」(「週刊朝日」202142日号)

 昨年の総裁選では菅義偉と岸田が争ったが、永霞会の開成OB議員は菅に投票しているという。これは同校OB議員が所属する派閥の事情によるものだった。

■河野太郎氏

 河野太郎は1963年生まれ。慶應義塾中等部、慶應高校から慶應義塾大経済学部に進む。総裁選でタッグを組んだ石破茂は高校から慶應に進み、慶應義塾大法学部というコースをたどった。

 慶應高校出身の国会議員はおよそ30人いるが、2世、3世が多い。父や祖父が大臣経験のある大物議員が並ぶ。(*は首相経験者)

 竹下亘 異母兄は竹下登*(17日に死去)

 福田達夫 祖父は福田赳夫*、父は福田康夫*

 岸信夫 父は安倍晋太郎、祖父は岸信介*で、岸家と養子縁組。兄は安倍晋三*

 石原伸晃、石原宏高 父は石原慎太郎 

 奥野信亮 父は奥野誠亮

 高村正大 父は高村正彦

 中曽根康隆 父は中曽根弘文、祖父は中曽根康弘*

 慶應高校出身の国会議員は「華麗なる一族」を持つ。このうち中曽根康隆の祖父、福田達夫の父と祖父、岸信夫の祖父と兄、竹下の異母兄は首相となった。逆に言えば、首相は親族を慶應高校に入れたがる傾向にあるということか。河野太郎の父、河野洋平、そして祖父・河野一郎も派閥、小グループの領袖であり、首相候補だった。

 だが、不思議なことに慶應高校出身の首相は生まれていない。慶應義塾大からは橋本龍太郎、小泉純一郎などの宰相が輩出したのだが、塾高出身は縁がない。

■野田聖子氏

 野田聖子は1960年生まれ。田園調布雙葉高校を中退してアメリカのハイスクールで学ぶ。田園調布雙葉の3学年下には雅子皇后がいた。同校には各界著名人の子女が通っていることでも知られる。長嶋茂雄の次女でスポーツキャスターの長島三奈、佐田啓二の長女で俳優の中井貴惠などだ。

 野田は帰国して上智大学外国語学部比較文化学科に入学する。現在の国際教養学部である。もともと上智大国際部と称していた。同学科は芸能人を多く送り出している。范文雀、ジュディ・オング、南沙織、アグネス・チャン、早見優、西田ひかる、リサ・ステッグマイヤー、クリスタル・ケイ、青山テルマ、はな、川平慈英、デーブ・スペクターなど。キャスターには安藤優子、山口美江、小牧ユカなどもいた。

 なお上智大出身の国会議員には平井卓也、西銘恒三郎、小林史明(以上、自民)、玄葉光一郎、山崎誠、松平浩一、今井雅人(以上、立憲民主)などがいる。同大学からは細川護熙元首相が輩出した。

 野田は1993年に初当選し、1998年には当時、戦後最年少の3710カ月で郵政大臣に就任する。このとき近い将来、初の女性首相誕生かと注目された。それから20年以上経ったが、今回も国のトップにはなれなかった。

■高市早苗氏

 高市早苗は1961年生まれ。野田と学年は一緒である。奈良県立畝傍高校の出身。うねびと読む。その由来について、学校史にこう記載されている。

「『畝傍』(うねび)という校名については、創立以来今日にまで続き、幾多の卒業生にとって無限の郷愁もたらす名称であるが、その由来を示す確かな記録は見当たらない」(畝高七十年史、1967年)

 そっけない。近くに畝傍山、畝傍御陵という古くからの地名があり、ここからとられたのではないかといわれている。

 同校卒業生はなかなかおもしろい。日本郵政初代社長で、三井住友フィナンシャルグループ社長をつとめた西川善文、舞踏家で大森南朋の父である麿赤兒、『試験にでる英単語』で受験界を一世風靡した元日比谷高校教諭の森一郎、中央公論社の社長だった嶋中雄作、元文部科学事務次官の前川喜平の祖父で和敬塾創始者の前川喜作など。多士済々だ。

 高市は大学入試で早稲田大、慶應義塾大に合格したが、親のすすめで神戸大経営学部に入学した。同大学出身の国会議員には山田賢司、繁本護(以上、自民)、吉川元(立憲民主)がいる。

 なお、神戸大経営学部の前身である神戸商業大出身には、宇野宗佑元首相がいた。

 198963日の宇野内閣発足後まもなく参議院選挙が行われるが、リクルート事件、消費税導入、宇野の女性問題報道で支持が得られず、自民党は大敗し、投票日翌日の724日に退陣を表明した。宇野の首相在任期間は69日、日本政治史上4番目の短さだった。

 このころ、高市は松下政経塾を卒塾したばかりで、国政選挙に出る準備をしていた1992年、参議院選挙で落選、1993年、衆議院選挙で初当選した。

 出身高校、大学のカラーと政治家は直接関係ない。だが、高校、大学をどのように過ごしたか、そこで、どのようなことを考え、何を目指したかは、その政治家の国家観を知るうえでヒントになる。そこで受けた教育、出会った恩師や先輩、築き上げた友人の力は大きいからだ。高校や大学で社会と向き合うようになったときのこと、やがて政治家になろうと思ったときのことなど、自身を振り返って語ってもらいたい。

<文中敬称略>(教育ジャーナリスト・小林哲夫)

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上記の記事にあるように、開成高校出身者たちで、政治家や官僚になっている人たちは、「永田町・霞が関開成会(永霞会)」を結成しているそうだ。岸田氏は東大出身でもなく、官僚出身でもないが、霞が関には強力な人脈を持っていると言えるだろうし、経歴は「党人派」であるが、「官僚派」に近い肌合いを持っているようだ。こうして見ると、今回、今井氏が指南役となって、岸田氏当選に尽力したということもうなずける。

 岸田氏の考えているであろう日本の姿とは、戦後高度経済成長期の「日本型」資本主義での成功例であろう。1960年代から70年代にかけて、日本は毎年10パーセント程度の経済成長率を維持した。このような経済成長が続くと、国内での経済格差が生じ、社会不安が起きるが、それを起こさず、「一億総中流社会」を実現した。英語では、「economic miracle without inequality」ということになる。以下の記事を読んでいただきたい。

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●「ポストコロナ政策で岸田氏が議連、安倍・麻生・甘利氏ら参加」

ワールド

2021611日 ロイター編集

https://jp.reuters.com/article/japan-kishida-idJPKCN2DN0GM

 6月11日、自民党の岸田文雄前政調会長が中心となり、ポストコロナ時代の政策を議論する「新たな資本主義を創る議員連盟」が、設立された。写真は東京都で2020年9月撮影(2021年 ロイター/Issei Kato

[東京 11日 ロイター] - 自民党の岸田文雄前政調会長が中心となり、ポストコロナ時代の政策を議論する「新たな資本主義を創る議員連盟」が11日、設立された。安倍晋三前首相と麻生太郎財務相、甘利明党税調会長らも参加した。

安倍前政権発足時に政権の中枢を担った「3A」と称される安倍・麻生・甘利氏は、半導体議連など多数の議連を立ち上げている。

あいさつした麻生氏は、会場を見渡し、「政策を勉強している経済記者でなく、政局記者の顔が見える」と述べた上で、3Aによる議連設立が政局的に受け止められていることに触れ、「そういった話があるから人が集まるんだろうが、いま資本主義について議論するのは良いこと」と指摘した。

岸田氏は「コロナで格差が拡大しており、格差、分配の議論が重要になると確信している」と強調した。安倍氏は「ウォール街の強欲な資本主義でない、資本主義を考えていきたい」と語った。

初回の今回は、渋沢栄一氏の玄孫にあたる渋沢健氏(コモンズ投信会長)が講演した。

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 安倍晋三や麻生太郎、甘利明の三悪人の「3A」が岸田氏の議連に参加したという内容だが、岸田氏は2021年6月に立ちあげたこの議連の名前は、「新たな資本主義を創る議員連盟」だ。そして、岸田氏は「コロナで格差が拡大しており、格差、分配の議論が重要になると確信している」と発言している。しかし、分配するにも何をするにも必要なのはお金だ。その「お金の稼ぎ方」として、出てくるのが、「産業政策」だ。

 2021年6月4日、岸田氏が議連を立ち上げる1週間前、経産省は、「経済産業政策の新機軸~新たな産業政策への挑戦~」という資料を発表した。資料の内容は、いかのPDFを参照していただきたい。新時代の産業政策を打ち上げたものだ。

※資料は以下のアドレスからどうぞ↓

https://www.meti.go.jp/shingikai/sankoshin/sokai/pdf/028_02_00.pdf

 

●「コロナ禍の今、経済産業省が「大きな政府」に大転換した“切実な理由”」

室伏謙一:室伏政策研究室代表・政策コンサルタント

2021.6.19 4:05 ダイアモンド誌

https://diamond.jp/articles/-/274042

https://diamond.jp/articles/-/274042?page=2

https://diamond.jp/articles/-/274042?page=3

経済産業省の産業構造審議会が、「経済産業政策の新機軸」という画期的な方針を打ち出した。新型コロナウィルスの感染拡大による社会経済の世界的な変化を受け、日本が採用すべき「経済産業政策の新規軸」をまとめたものだ。主要国がすでに転換し始めたように、「小さな政府」から「大きな政府」に転換する必要性を訴えている。特に注目されるのが、産業政策における「大規模・長期・計画的」な財政出動を求めていることだ。この「新規軸」が実現しなければ、日本の貧国化は免れないだろう。(室伏政策研究室代表・政策コンサルタント 室伏謙一)

●ウィズコロナ時代において、「政府の役割」は根本的に変わった

 64日、第28回産業構造審議会総会が開催された。

 産業構造審議会は、経済産業省設置法第6条第1項に基づき設置され、第7条第1項各号に掲げる事務をつかさどり、とりわけ「経済産業大臣の諮問に応じて産業構造の改善に関する重要事項その他の民間の経済活力の向上及び対外経済関係の円滑な発展を中心とする経済及び産業の発展に関する重要事項」を調査審議する、経済産業省の重要な審議会の一つである。

 同審議会の総会は、これまでの実績ベースで、概ね年に12回開催され、各年度の経済産業政策の重点事項や今後の経済産業政策の新たな方向性について議論・検討が行われてきており、いわば我が国の経済産業政策の重要な方向性や方向転換がここで決まっていると言ってもいい。

 さて、その重要審議会で今回の議論の対象となったのは、新型コロナウィルスの感染拡大による社会経済の世界的な変化を受けた、今後の経済産業政策の在り方、「経済産業政策の新機軸」である。

 まず、基本的な問題意識として、新型コロナウィルスの感染が世界的に拡大したこの1年間を「ウィズコロナ」と位置付け、ワクチンが行き渡り始めたが、変異株の発生などにより、ウィルスへの対応は継続中であること等から、その後の十数年間をその延長線上とし、昨年1年間の変化も踏まえた、いわゆる「アフターコロナ」ではない目指したい「日常」と、それに向けた経済産業政策の望ましい在り方について議論することとしている。

 同審議会提出資料においては、「ウィズコロナ」の1年の変化や、それ以前からの構造的変化についての多角的な視点からの分析が行われているが、とりわけ重要なのが、政府の役割の変化であろう。その役割とは、経済産業政策と財政政策という二つの点における役割である。

 新型コロナへの対応の中で、世界中で政府の役割が増大し、これまでで最大規模の財政支出をするにまで至っており、米国を筆頭に各国は大規模な財政支出を続けているし、EU諸国も債務残高の対GDPという財政規律を一時停止しているが、そもそもこの十数年における国家と企業の関係を見ていくと、補完関係が強まっているのではないかとしている。

「重要産業」や「戦略産業」を国が守り育てる時代へ

 しかも、持続可能な社会を志向し、安全保障、環境、健康、雇用、人権等の社会的課題の解決を重視した投資(財政支出)へ変化するとともに、重要産業や戦略産業を国が守り育てる方向にシフトしてきているとしている。

 具体的には、再エネや充電インフラ等のグリーンインフラや関連研究開発への大規模投資であるが、それのみならず、特に米中の技術覇権対立を背景として、半導体については国産化や輸出管理等の強化へとシフトしている。

また、そうした覇権対立と呼応するかのように、企業の事業活動に関し、人権・奴隷労働の有無、環境への影響等について明らかにすることを法的に義務付ける、人権デュー・デリジェンスの導入が進んできていることにも言及している。

 その趣旨は、一義的には人権侵害や奴隷労働等を行っている事業者と取引をしないようにし、そうしたものを根絶させることであるが、グローバル企業は人権侵害、奴隷同然の労働、環境破壊を公然と行う事業によってコストを大幅に圧縮して莫大な利益を上げているところ、そうしたビジネスモデルを改めさせよう、それによって社会的公正を取り戻し、格差問題の解決にも繋げていこうということであろう。

 つまり、規制の強化によって公正な社会を実現しようということであり、市場重視、民間の自由な経済活動尊重の政策的思考とは隔世の感がある。

 また、同趣旨の事項として、G7蔵相・中央銀行総裁会議の共同声明にも盛り込まれ、議長国のイギリスのスナク蔵相が誇らしげに語っていた、「グローバル企業に対する国際課税の公正性の確保」についても触れられている。

 加えて、「自由貿易のアップグレード」として、これまでのグローバル企業のための、放埒な自由貿易の是正により、公正性や持続可能性、格差是正の確保を目指すことについても言及されている。

●市場原理を克服する「政策の新規軸」が不可欠である

 そして、今後に向けて、政策は何がどう変わるべきかについて次のように提言している。

「既存の市場原理だけでは社会課題解決を実現する産業はなかなか成立しない中で、『価値』を巡る国家間の競争や正統性の再定義があることも鑑み、野心的で共感を呼ぶ『目標』を設定したうえで、緩和だけでなく強化も視野に入れた規制改革や、国内外の情勢変化を踏まえた、大規模・長期・計画的な財政政策を実行し、デジタルを前提に、全く新しい行政手法のあり方を模索しながら取り組み、有志国と連携しつつ、内外一体での産業政策の展開を図る」

 そのうえで、今後に向けた大きな方向性の三本柱として、

1)「経済」×「環境」の好循環~グリーン成長戦略~

2)「経済」×「安保」の同時実現~経済安全保障/レジリエンス~重要技術・産業・インフラを「知る」・「守る」・「育てる」政策

3)「経済」×「分配」=包摂的成長~「人」への投資・「地域」の持続発展~

を掲げている。

 少々総花的であり、大風呂敷を広げた感は否めないが、こうしたことを踏まえて、「『経済産業政策の新機軸』~新たな産業政策への挑戦」と題する資料が提示された。

 その中では、まず、中国や欧米において「大規模な財政支出を伴う強力な産業政策」が展開されていることや、かつては政府が主導的な役割を果たす産業政策が強く批判されていた米国においても、産業政策を支持する「産業政策論」が台頭してきていることを挙げている。

 そして、そうした産業政策を次のように総括した。

「伝統的な産業振興・保護とも、相対的に政府の関与を狭める構造改革アプローチとも異なり、気候変動対策、経済安保、格差是正など、将来の社会・経済課題解決に向けて鍵となる技術分野、戦略的な重要物資、規制・制度などに着目し(ミッション志向)、ガバメントリーチを拡張するというもの」

 そのうえで、日本においても、これまでの産業政策を検証したうえで、「産業政策の新機軸」を確立・実行していくことが求められているのではないか、経産省のみならず、政府全体として、政府の人的資源・政策資源を質と量の両面から精査した上で、速やかに実行に移していくべきなのではないか、としている。

●ようやく日の目を見たスティグリッツの提言

 こうした変化のあり方が、同資料に体系的に一覧表でまとめられている(図1参照)。

 ここで特に注目したいのは、「新機軸」における政策のフレームワークとして、「ミクロ経済政策とマクロ経済政策の一体化(需要と供給の両サイド)」が記載され、これまでの「構造改革アプローチ」においては、供給サイド、サプライサイド向けの政策が中心だったが、その転換を図るべしとしていることだ。

 実はこうした指摘は、平成28年に、伊勢サミットを前に官邸で開かれた国際金融経済分析会合において、経済学者のジョセフ・スティグリッツ氏が具体的かつ簡潔に行っていた。

それは、およそ次のような内容だった。

「有効需要が欠如している状況でのサプライサイドの改革は失業を増大させる等、有害であるのみならず成長にはつながらないし、供給はそれ自身の需要を創出するわけではないのであるし、実際、需要を弱め、GDPを減らすことになる。サプララサイドの政策は需要と一体で機能するのであり、例えば、技術開発投資、人材育成投資、働きやすい環境の整備(公共交通の充実、育児休暇や傷病休暇等)」

 といった政策が有効といったものである。

 その際には、安倍官邸にはまともに受け入れられなかったようであるが(そもそも理解出来なかったのではないかとの疑いもあるが)、やっとそうした主張・考え方が日の目をみるようになったということであろう。

「大規模・長期・計画的」な財政出動が不可欠

 そして、ここが最も重要であるが、「新機軸」における財政出動を、「大規模・長期・計画的」としている。

 その背景・根拠として、同資料の「マクロ経済政策の新たな見方」において、次の3点を指摘している。

1)低インフレ、低金利においては、財政政策の役割も重要

2)コロナ禍による総需要の急減は、低成長を恒久化する恐れがある(履歴効果)。財政政策によって総需要不足を解消し、マイルドなインフレ(高圧経済)を実現することは、民間投資を促し、長期の成長を実現するためにも必要

3)コロナ対策やマイルドなインフレを実現するための財政支出の拡大は、財政収支を悪化させるが、超低金利下では、そのコストは小さい

 実際、10年ものの日本国債の利回りはずっと低下してきており、近年ではほぼ横ばい状態であり、緊縮財政派がさんざん脅かしてきた「金利の急騰」などは起きていないし、起こる兆しもない。

 つまり、「民間任せ」「市場任せ」ではなく、政府が主体的かつ大きな役割を果たすべく、長期的な視点に立って、大規模な財政支出によって経済産業政策を運営していくべきであるということであり、これまでの「小さな政府」的な発想に基づく政策の否定であり、そこからの大転換である。

 もちろん、この経産省の打ち出した「新規軸」には、強い抵抗も予想される。例えば、直近で閣議決定されることが予定されている「経済財政運営と改革の基本方針」、いわゆる「骨太の方針」では、昨年は記載されなかったプライマリーバランス(基礎的財政収支)の黒字化目標が、年限は示されないものの、記載される方向であり、「経済産業政策の新機軸」において示された方向性とは相反することになりそうである。

●日本が「成長するか、貧国化するか」の瀬戸際

 しかし、世界的な潮流を見ても、また新型コロナショックという危機への対応という観点に立っても、大規模な財政出動と国の役割の増大・強化への転換は当然のことである。そもそもプライマリーバランスの黒字化などという財政規律や目標を掲げている主要国は日本だけである。

 主要各国が大規模な財政支出と、国が前面に出た経済産業政策を着々と進めていく中で、日本だけがそうしたものに背を向けていれば、日本は成長しないどころか、貧国化への道を着実に進むことになるだけである。

 先にも示したとおり、財政拡大を続けても我が国は何ら問題がないのであるから、日本が先進国だったという話が遠い昔の話として語られることがないよう、政治家を筆頭に、官僚、地方公務員、専門家、事業者、そして国民全体が、財政政策と経済産業政策の両面における国の役割の重要性と拡大について、それを是とし、それを当然とする方向へ早急に転換していくことが求められよう。

 今後の議論のさらなる進展に期待するとともに、「緊縮財政」や「小さな政府」といった、ある種時代遅れな考え方に囚われて、それを狂信的に固守する勢力に足を引っ張られたりすることがないよう、関係各位の尽力を強く希望したい。

(貼り付け終わり)

 日本は政治改革と経済改革で大きく傷ついた。日本国民は、市場原理主義を持ち込めばななんでも解決という単純な議論に熱狂させられ、馬鹿を見た。小泉・竹中路線は誤りだったということだ。「アメリカみたいな国になればよい」で実際になってみたが、悲惨な状況になっている。

 経産省の資料の中に、重要な名前が掲載されている。それは、アメリカのジョー・バイデン大統領の国家安全保障問題担当大統領補佐官ジェイク・サリヴァンの名前だ。ジェイク・サリヴァンについては、拙著『アメリカ政治の秘密 日本人が知らない世界支配の構造』『悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める』で詳しく取り上げてきた。サリヴァンは補佐官就任前に、産業政策の重要性を主張する論文を書いている。アメリカにおいても、産業政策の重要性が増している。

 加えて、現在、世界で最も経済的に成功している中国が採用しているのが産業政策なのである。その源流をたどれば、日本に行きつく訳だが、世界で産業政策の重要性が増している。本家の日本でもそこに戻ろうという動きが出ている。1990年代には、産業政策なんて効果はない、そもそもなかったのだ、という議論があった。日本にそうしたことを紹介し、日本国内で主導したのは竹中平蔵だ。例えば、1993年に出版された、ローラ・タイソン著『誰が誰を叩いているのか―戦略的管理貿易は、アメリカの正しい選択?』の監訳者は竹中平蔵だ。

 「アメリカは中国を模倣して産業政策をやるべきだ」という主張もアメリカも区内で出ているような中で、「日本型」資本主義に戻ろうという岸田氏の当選はその流れに沿ったものであると言える。

 ここまで長々と書いてきたが、岸田氏当選のキーワードは「通産省」と「産業政策」であり、「日本型」資本主義へ返るという動きなのだろうということが私の結論だ。

(終わり)

akumanocybersensouwobidenseikengahajimeru001

 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める

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