古村治彦(ふるむらはるひこ)の政治情報紹介・分析ブログ

SNSI研究員・愛知大学国際問題研究所客員研究員の古村治彦(ふるむらはるひこ)のブログです。翻訳と評論の分野で活動しています。日常、考えたことを文章にして発表していきたいと思います。古村治彦の経歴などについては、お手数ですが、twitter accountかamazonの著者ページをご覧ください 連絡先は、harryfurumura@gmail.com です。twitter accountは、@Harryfurumura です。よろしくお願いします。

タグ:激戦州

 古村治彦です。
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※2024年10月29日に佐藤優先生との対談『世界覇権国 交代劇の真相 インテリジェンス、宗教、政治学で読む』(←この部分をクリックするとアマゾンのページに飛びます)が発売になります。予約受付中です。よろしくお願いいたします。donaldtrumpkamalaharrisdebate001
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 2024年11月5日(日本時間では6日)の米大統領選挙が近づいてきた。今週末が最後の週末と言うことになる。共和党のドナルド・トランプ前大統領、民主党のカマラ・ハリス副大統領は共に激戦州を訪問する予定となっている。今回の大統領選挙での激戦州は、ペンシルヴァニア州(選挙人19人)、ミシガン州(15人)、ウィスコンシン州(10人)、ノースカロライナ州(16人)、ジョージア州(16人)、ネヴァダ州(6人)、アリゾナ州(11人)だ。
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 重要なのは、前回ジョー・バイデンが奪還した「青い壁(Blue Wall)」のペンシルヴァニア州、ミシガン州、ウィスコンシン州の五大湖周辺州をカマラ・ハリスが守れるかどうかだ。現在のところ、ペンシルヴァニア州ではトランプ、ミシガン州、ウィスコンシン州ではハリスが僅差でリードとなっている。ペンシルヴァニア州をハリスが取れば青い壁を死守できる可能性が高まり、ハリスの勝利が近づく。逆に、トランプが取ればトランプの勝利はほぼ確定的となる。ペンシルヴァニア州はアメリカ東部標準時のエリアに入っており、日本時間6日の早い段階で結果が出ることが予想される(順調であれば)。ペンシルヴァニア州の結果で大勢が分かることになる。もちろん、一応の結果が出た後に、異議が出て、数え直しということになって正式な結果が出るまでに時間がかかることが予想される。また、選挙関連の暴力事件も多く起こるだろう。
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 今回の選挙ではやはり人々の生活の苦しさが最大のテーマとなるだろう。アメリカの給料が高いこと、しかし、その分、物価が高いことは日本でも報じられている。アメリカの大都市での住居費が平均で100万円近くに達して、住んでいられないということで、きちんと仕事を持っているのに、ホームレスになっている人たちも多い。経済問題が選挙の代々のテーマとなるだろう。その点では、トランプに一日の長があり、現政権の副大統領であるカマラ・ハリスには不利になるだろう。

 しかし、これだけの大接戦となると、選挙は平穏には終わらない。トランプ、ハリス両候補者の支持者の中には、結果に納得のいかない人々が数え直し、再集計を求めて抗議活動を活発に展開する人たちが多く出るだろう。また、暴力事件が頻発するだろう。米大統領選挙のために社会不安が増大し、治安が悪化し、状況は不安定化するだろう。

 国連は選挙監視団を派遣し、暴力事件を抑止するようにすべきではないか。また、集計に関しては、日本の優秀な係員を派遣して、集計してあげるのが良いのではないか。もちろん、これらは冗談で、皮肉であるが、それほど、「デモクラシーの総本山」であるアメリカが揺らいでいる。

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それで、一体誰が勝つのか?-米大統領選最後の週末を迎えるにあたって分かっていること(So, who’s going to win? — What we know going into the final weekend of the presidential race

ナイオール・スタンジ筆

2024年11月2日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/homenews/campaign/4966970-trump-harris-election-race-close/

アメリカ大統領選挙は、世論調査が歴史的な大接戦を示す中、大詰めを迎えている。

各種世論調査でこれほど多くの州が接戦になったことはかつてない。

『ザ・ヒル』誌とディシジョン・デスクHQDDHQ)が管理する世論調査の平均によれば、金曜日夜の時点で、激戦州7州のいずれにおいてもドナルド・トランプ、カマラ・ハリス両候補とも2ポイント以上の差はなかった。

ミシガン州、ペンシルヴァニア州、ウィスコンシン州のいわゆる「青い壁(Blue Wall)」と呼ばれる3つの州では、その差は1ポイント以下だった。

政治の専門家たちは、最終的な結果を占う手がかりを求め、早期投票数のデータを探し回っている。既に6000万票以上が期日前に投じられた。

しかし、どのような選挙でも、早期投票数から最終結果を推定するのは、あまりにも未知数が多いため、信憑性が低いことで知られている。

トランプ、ハリス両候補の側近たちは支持者の確信を強めようとしている。

トランプ候補のスティーヴン・ミラー顧問は「期日前投票の数字は引き続き素晴らしい。カマラは崩れている」と金曜日にソーシャルメディアで熱弁をふるった。

ハリスのアドバイザーであるデイヴィッド・プルーフもX上で「決選投票の後半に投票した人が二桁の差でハリス有利に崩れている」と主張している。

以下に大統領選挙レースがどのような状況にあるのかについて分かることを列挙していく。

●トランプがわずかに優勢(Trump has a tiny edge

各種世論調査によれば、レースはほぼデッドヒートになっている。しかし、どちらの候補者がほんのわずかでも優位に立っているのかということであれば、それはトランプだ。

DDHQFiveThirtyEight、ネイト・シルヴァーの「Silver Bulletin」、『ニューヨーク・タイムズ』紙が管理する各種世論調査の平均では、トランプ前大統領はハリス副大統領よりも多くの激戦州で優勢となっている。

DDHQの平均では、トランプは6州でリードしている。他のサイトでは5州でリードしている。この違いはウィスコンシン州の扱いで生じており、他の3サイトではハリスが優勢、DDHQではトランプが優勢となっている。

ハリスは全米規模の各種世論調査で僅差でのリードを保っている。

DDHQ平均では、ハリスのリードはわずか0.3ポイントだ。2016年、ヒラリー・クリントンは選挙に敗れたが、2ポイント以上の差をつけて全米規模での世論調査でリードした。

それでも、トランプ優位は決定的とは言い難い。DDHQFiveThirtyEightの予想では、トランプの勝利の確率はそれぞれ54%と51%で、コイントスで裏表を決めるのとほとんど変わらない。

●サンベルトとブルーウォールとの間に明確な分裂がある(There’s now a clear split between the Sun Belt and the Blue Wall

ここ数週間、重要な分裂が深まっている。それは、一方ではサンベルト・南部の激戦州、他方ではブルーウォール(青い壁)州の分裂である。

大雑把に言えば、トランプは前者で健闘し、ハリスは後者で競争力を発揮する。

DDHQ平均で2ポイント差をつけているアリゾナ州では、トランプがどの激戦区よりも大きくリードしている。1.9ポイント差のジョージア州、1.4ポイント差のノースカロライナ州もそう大きな差ではない。

DDHQの予測モデルでは、ジョージア州でトランプが勝利する確率は65%だが、「青い壁」3州のいずれでも勝利する確率は53%以下とされている。

ここで、選挙人団の計算を強調しておくことが重要だ。

ハリスが「青い壁」の3州で勝利すれば、たとえトランプが他の4州で勝利したとしても、ハリスがホワイトハウスを獲得することになる。

そのシナリオでは、ハリスはトランプの268人に対して、270人という、可能な限り僅差で勝利することになる。

●2つの重要な未知数(Two key unknowns

2つのオクトーバーサプライズは、先週の日曜日に行われたトランプ前大統領のマディソン・スクエア・ガーデンでの大集会で、コメディアンのトニー・ヒンチクリフが人種差別的なジョークを言ったことと、火曜日にジョー・バイデン大統領がトランプ支持者を「ゴミ(garbage)」と表現したことだ。

ヒンチクリフの愚弄はプエルトリコを標的としたものであったため、選挙において重要であった。いくつかの激戦州にはかなりの数のプエルトリコ人が住んでおり、その中にはペンシルヴァニア州だけでも40万人以上が居住している。

ハリス陣営はこの騒動を最大限に利用しようと、この騒動に関する新しい広告を掲載し、バッド・バニーやジェニファー・ロペスといった著名人からの支持を強調した。

一方、トランプはバイデンの「ゴミ」発言に焦点を当て、支持者を増やそうとした。この発言は、火曜日の夜、ホワイトハウスに隣接するエリプスでのハリスの大演説にも影を落とした、

トランプは水曜日、ウィスコンシン州での集会の前にゴミ収集車の運転席に登場し、バイデンのつまずきをニュースにし続けた。

●どちらの候補、敗北の可能性を過小評価してはいけない(Don’t underestimate the chances of a rout — for either candidate

評判の良い各世論調査機関にはある重要な疑問がつきまとう。それは、誰が実際に投票に来るのかというモデルが外れている可能性があるのかということだ。

世論調査のこの部分には、本質的に経験則に基づく推測(educated guess)が含まれる。また、システム由来の誤差が生じる可能性もある。

もっともらしいシナリオとしては、米連邦最高裁がロウ対ウェイド法を破棄して以来、初めての大統領選挙となる今年、リプロダクティブ・ライツ(性と生殖に関する権利)を守りたいという願望に突き動かされた有権者たちが、ハリス候補への投票率を高めるというものが挙げられる。

そのような急増が実際に起きて、ハリスが世論調査の数字をわずか2ポイントでも上回れば、彼女は全ての激戦区で勝利するだろう。

しかし、こうしたシナリオは決して一方的ではない。トランプは過去にも世論調査を上回る結果を出している。例えば、2020年のウィスコンシン州では、トランプの得票率はRealClearPoliticsの世論調査平均の最終数字を5ポイント近く上回った。

それでもバイデンはウィスコンシン州で勝利をもぎ取った。しかし、今年のハリスには誤差はない。

激戦州でトランプがわずかでも優れたパフォーマンスを見せれば、比較的容易にトランプがホワイトハウスに復帰することになるだろう。

●トランプ大統領の最後の旅は疑問を持たれている(Trump’s final travel raises eyebrows

この数日間、候補者たちの一挙手一投足は、何か深い意味があるのではないかということで詳しく分析される。

特に、ハリスとトランプの選挙運動最後の訪問についてはそうだ。

訪問の詳細について疑念が出ている。

トランプは土曜日、日曜日、月曜日の3日間、ノースカロライナ州で4回のイヴェントを行う予定だ。
ノースカロライナ州はトランプが得意とする戦場の1つであるはずなのに、これは奇妙な決定だ。

この決定が示しているのは、トランプ陣営が公に認めている以上に、ノースカロライナ州での自分たちの立ち位置を気にしているということなのだろうか?

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる
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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める

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 古村治彦です。
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※2024年10月29日に佐藤優先生との対談『世界覇権国 交代劇の真相 インテリジェンス、宗教、政治学で読む』(←この部分をクリックするとアマゾンのページに飛びます)が発売になります。予約受付中です。よろしくお願いいたします。

 アメリカ大統領選挙投開票日まで約2週間となった。現状では、ドナルド・トランプ前大統領支持が増えており、ハリスは厳しい状況になっている。ジョー・バイデン大統領撤退によって、カマラ・ハリス副大統領待望論が醸成され、激戦州が多い中西部の代表的な男性像を示しているミネソタ州知事ティム・ウォルツを副大統領候補として選ばれた8月から9月にかけて、ハリスが支持率でトランプを逆転し、激戦州でも軒並みハリスが優位な立場に立った。
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それが、メディアに出てのハリスの受け答えなどが放送されると、「当意即妙さがない(頭が良くない)」ということがばれ始め、支持を減らしていった。「あの人がアメリカ合衆国初めての女性大統領で良いのか、大丈夫なのか」という否定的な疑問が有権者の中で芽生えている。そこに「経験不足」が加わっている。経験不足という点では、ビル・クリントンも、ジョージ・W・ブッシュも、バラク・オバマもワシントン政治の経験はほとんどなかった。ハリスに対してだけ経験不足を理由にするのは間違っているが、ハリスはそれを言わせてしまう能力の欠如が明らかにされつつある。

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『ザ・ヒル』誌の勝利可能性のグラフ(青:ハリス、赤:トランプ)

 下に紹介した記事は1カ月前の記事で、まだハリスの勢いがあった頃のものだ。それでも、選挙結果予測で有名になったネイト・シルヴァーは、自身がハリス支持であるにもかかわらず、トランプ当選の可能性が高いと危惧し、トランプ当選に備えよと述べている。シルヴァーは有能な選挙予測のプロとして、ハリスの人気が落ちていること、トランプの人気が上昇していることを掴んでいるのだろう。

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「FIveThirtyEight」での予測(赤:トランプ、青:ハリス)

 五大湖周辺州のウィスコンシン州、ミシガン州、ペンシルヴァニア州での支持率の数字は接戦となっているが、8月と9月にハリスに遭った勢いは落ちている。トランプが追い上げて逆転している。民主党のジョー・バイデン政権がハリスの援護射撃のために、オクトーバーサプライズを仕掛けることが考えられるが、経済政策では投開票日までに効果が出る施策は難しい。また、ウクライナ戦争や中東紛争で停戦ということも考えにくい。このままの状況で進むとなると、トランプが勝利を収めるということになりそうだ。また、現状から逆転してハリスが勝利ということになれば、選挙後に不満を持った有権者たちが暴力に訴えるということも起きる可能性がある。目を離せない展開となるだろう。

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「人々は今すぐに不測の事態の発生に備えるべき」:トランプ勝利の可能性について、アメリカ有数の予測者がそのように語っている

-ネイト・シルヴァーの選挙モデルは、何百万人もの有権者に再び注目されている。ギャンブラーから統計学者に転身したシルヴァーが、ホワイトハウス争奪戦、我々の文化を再定義するリスクを取る冒険者たち、そして神の確率について語っている。

デイヴィッド・シャリアトマダリ筆

2024年9月21日

『ザ・ガーディアン』紙

https://www.theguardian.com/us-news/2024/sep/21/people-should-be-making-their-contingency-plans-like-right-away-americas-leading-forecaster-on-the-chances-of-a-trump-win

ロンドンはネイト・シルヴァーにとって少し穏やかな場所だろうか? 多大な影響力を持つアメリカの選挙モデルで知られる統計の専門家は、リスクに関する新しい本の宣伝のためにロンドンを訪問しており、大西洋のこちら側で安全策を講じるあらゆる方法に注目せずにはいられない。シルヴァーは「ロンドンの地下鉄に行くと、ガードドアがあるが、ニューヨークの地下鉄には何もない」と述べている。彼は明らかにエリザベス線に乗ったようだ。あるいは、「ウーバーで呼んだ車に乗っているのに、後部座席でシートベルトをしていないと、イギリス式の非常に礼儀正しいビープ音が鳴り響く」と、彼は不安をかき立てるような高速の笑い声で言う。シルヴァーはそれほど気にしている訳ではない。彼が学生時代に1年間過ごしたこの街が気に入っているという印象を受けるが、そしていずれにせよ「両国は異なるトレードオフを行っている」と述べている。つまり、アメリカは規制が少なく、より高い成長を遂げている。しかし平均余命は低い。まさに生き急いで若くして死ぬということだ。

しかし、シルヴァーが最もくつろげる場所はロンドンであることは明らかだ。「この本を書いている間、カジノで多くの時間を過ごした」と彼は著書『魅了されて(On the Edge、オン・ザ・エッヂ)』の冒頭で告白し、「200のゲームテーブル、1275の客室、3000台のスロットマシン、そして20000フィート上空からネオンブルーの光を放つギターの形をしたきらびやかなホテル」を誇るフロリダのカジノについて述べている。王立芸術協会(Royal Society of Arts)の落ち着いた魅力からかけ離れた彼は、野球帽にTシャツという出で立ちで、広報が持ってきたチョコレートをムシャムシャと食べながら、必要な血糖値を上げている(「今日は8時間ぶっ通しで働きづめだ」)。彼の新しい現代パワーの分類法によれば、私たちはまさに「ザ・ヴィレッジ(The Village)」にいる。これは、彼が説明したあのドーパミンまみれのカジノは「ザ・リヴァー(The River)」の一部だ。

リヴァーは自由に流れ、バラバラで、エキサイティングな急流や激流に満ちている。ヴォーカー・トーナメント、ヴァガス、ヴェンチャー・キャピタル、シリコンバレーを網羅し、そこに住む人々(彼は彼らを「リベリアンズ(Riverians)」と呼ぶ)は、匿名のブラックジャック・プレイヤーからイーロン・マスク、暗号通貨詐欺師のサム・バンクマン・フリードまで、少なくとも後者がカリフォルニアの矯正施設に居を構えるまでは多岐にわたる。その考え方は高度に分析的で、やや逆張りで、スリルを求めることが多い。しかし、シルヴァーによれば、それは先進資本主義の奇妙な産物以上のものであり、猛烈な技術革新の時代において、社会の形、そして私たちの集団の未来を決定する上で、非常に大きな役割を果たすことになるということだ。

「ザ・ヴィレッジ」の方が理解しやすい。堅苦しく、動きが鈍く、規範や正統性、古いメディア、大学、政府省庁の本拠地である。ヴィレッジャーたちは、『ガーディアン』紙や『ニューヨーク・タイムズ』紙を読む。シルヴァーは、経済学を学んだ後、プロのポーカー・プレーヤーになり、その後政治評論家になった。彼は自分は両方の陣営に足を踏み入れていると考えている。『魅了されて』は、そんな彼のガイドであり、溝を埋めようとする試みでもある。「私はヴィレッジとリヴァーがお互いをもっと理解し合えるようにさせたいと思っている」と彼は取材に答えて述べた。

しかし、彼とヴィレッジの関係は複雑だ。シルヴァーは2008年の大統領選挙で、彼の選挙モデルが50州中49州で勝敗を的中させたことで注目を集めた。2010年にはニューヨーク・タイムズ紙が彼を起用し、2012年のオバマとミット・ロムニーの戦いでは、彼は50点満点を獲得した(統計的思考に関するありそうでなかったベストセラー『シグナルとノイズ』も執筆)。2016年になると、彼のウェブサイト「FiveThirtyEight.com」はスポーツネットワークESPNに買収され、絶望的な不安の中で、予言的な力を持つものとして扱われるようになった。実際、心配性のリベラル派が彼の選挙人団地図を常に更新したおかげで、「人気が出すぎた」とシルヴァーは書いており、分析会社のチャートビートが彼の予測を「英語圏のインターネットで文字通り最も魅力的なコンテンツ」と評価したことを指摘している(2位はBBCの「Brexit Liveblog」)。彼のモデルは、ヒラリー・クリントンが勝利する確率を71%と、他の誰よりもずっと低い確率で予想したが、クリントンが勝利しなかったとき、「政界の多くの人々の反応は『ネイト・シルヴァーはくそったれの馬鹿野郎だ』というものだった」。ネイト・シルヴァーからすれば、彼のやっていることが理解できなかっただけなのだ。確率で言えば、トランプの勝利は青天の霹靂という訳ではなかった。

私たちは今、非常に不透明な選挙の真っただ中にいることに気づき、政治ジャンキーたちは再びシルヴァーに政治情報を求めている。今回は彼のサブスタックである「Silver Bulletin」であるが。(FiveThirtyEight」ブランドは現在ABCの所有だが、シルヴァーは彼のモデルの権利を保持している。「私はニュースレターで他のものよりはるかに多くの収入を得ている」と述べている。 私たちのインタヴューの数日後、ドナルド・トランプ大統領は記者会見を開き、「ネイト・シルヴァーはとても尊敬できる人物だが、私は彼を知らない。しかし、彼は私を大いに助けてくれた」と述べた。

今回、人々が自分の予測を誤用したり誤解したりしているのではないかとシルヴァーは心配しているのだろうか? 「いいえ」と彼は躊躇なく答えた。シルヴァーは次のように述べている。「いいえ。つまり、人々はこれらの世論調査をどのようにでも解釈するつもりだが、私たちはそれを行うための経験的に適切な方法を持っており、16年以上の実績を持っている。私は強権的な態度ではないと思っているがどうだろうか? 私は有益な情報をお届けしている。私たちはそれについて多くのコンテキストを提供する。私は昔ながらの伝統主義者で、人々に良い情報を提供し、それによって人々がより良い意思決定を行えるようになると確信している」。

大統領選の討論会を1週間後に控えた今朝、予測モデルはトランプが選挙人投票で勝つ確率を58%、ハリスが一般投票で勝つ確率を60%としている。しかし、ここまで来ると、実質的には五分五分(toss-up)だ。統計オタクはロボットのような博識者という一般的なイメージを考えると、驚くべきことかもしれないが、『魅了されて』で、シルヴァーは直感を重視している。「私は、直感や感情的な判断は、ただ押し返さなければならないものではなく、むしろ実際に付加価値を与えるものだと考えている」と彼は私に述べた。これは『シグナルとノイズ』からの転換であり、『シグナルとノイズ』では「データをもっと活用すれば問題は解決するという、ある種ナイーブな考え方をしていた」とシルヴァーは述べた。

では、彼は誰が勝つか直感(gut feeling)を持っているのだろうか? 「そうかもしれない」と彼は言うが、その前に、「選挙キャンペーン中は、誰もが脳が非常に政治的になる」ので、この文脈ではあまり信頼できないだろうとハリス支持者である彼らしい込み入った説明を始めた。彼はハリス支持者である。おそらく彼は、自分のモデルを否定するような発言はしたくないのだろう。シルヴァーは「もし私に強い直感があれば、そうだろうと言うだろう。しかし、今のところはそうではない」と述べた。

今回のような大接戦の選挙(knife-edge election)において、予想がどれほど役に立つだろうか? どちらに転ぶかわからないという洞察でさえ役に立つとシルヴァーは主張する。シルヴァーは次のように述べている。「五分五分だという予測があることの潜在的な利点の1つは、人々がすぐにでも不測の事態に備えた計画を立てるべきだということだ。弾薬やピーナツバターの備蓄が必要だということではない。あるいは、2028年(あるいは2032年)には、トランプのような共和党が、もしかしたらトランプよりも効果的かもしれない。例えば、私がリベラル派の献金者なら、必要以上の資金を持っているカマラ・ハリスにまた10万ドルを献金するのではなく、そのような事態に備え、制度を守るために今、資金提供を始めたいと思うだろう」。

そして、シルヴァーはトランプの勝利を恐れているが、「前回は完全かつ完全な惨事を防ぐために多くのガードレールが設置されていたが、そのガードレールは弱体化したということだろうか?」と述べている。シルヴァーは、それを民主政治体制に対する実存的脅威として、少なくとも政治戦略として描くことに対して警告している。シルヴァーは次のように述べている。「その意味で基本的に有権者を人質に取るという考えは非常に魅力的ではない。バイデンはこう言った、『分かった、確かに、私は86歳まで大統領をするために立候補しており、現状ではかろうじて完ぺきな文章を書けるくらいかもしれない。しかし、もし私に投票しなければ、それがやってくる』。これは有権者に投票してもらうには非常に魅力のないアピールだった。一方、ハリスはより多くの喜びをもたらし、明らかに非常に才能のある女性だ」。しかし、シルヴァーは、ハリスが「バイデンを続投させるのが得策だと考えるバイデン派の人々をあまりにも多く引き留めてしまった」ことを懸念している。「彼女はそうする必要があったのだと思う」とシルヴァーは述べている。

全てのリベラル派がハリスの立候補に熱狂している訳ではない。そのなかにはイーロン・マスクもいる。彼は、トランプが支出や規制を削減するための「政府効率化委員会」という彼のアイデアを採用したことについてコメントし、フォロワーに「機会があればアメリカに貢献することを楽しみにしている」と語った。シルヴァーの見解では、ツイッター、そして現在のXを買収したことが、彼の頭をよぎったようだ。「経済的にはかなり悪い賭けだったと思う。しかし、文化的な影響力という点では、エリートの間でアメリカの言説をかなり右傾化させた。イーロン・マスクがリベリアンとして最も分かりやすい人物でなければよかったのだが。イーロンは 「ああ、僕はただの穏健派なんだ 」と言えた時代だ。彼は右翼のミーム(中には彼自身が作り出したものもある)にとても騙されている。知らないかもしれないが、「Pilled」とは極めてオンライン的な専門用語で、ここでは「改宗した(converted)」というような意味である)。

このサイトの利用頻度が非常に高いユーザーとして、シルヴァーはこのサイトの変化についてどう感じているのだろうか? 彼は「パンデミック時代のヴァージョンに比べれば、それほど酷いものではないと思う。反対意見を取り締まるために、ヴィレッジによって利用され、非常に合理的な立場を持つ人々を本当に批判していた」と述べている。新型コロナウイルスに対する彼のスタンスは、ワクチン推進派であり、ロックダウン懐疑派であった。「イーロンの前の時代には、集団思考(group thinking)が蔓延していた。そのために絶対に非難された。今は少なくとも、より多元的だった」と述べた。彼はまた、「政治的に不都合な考えを誤報(misinformation)だとレッテルを貼る」人が多すぎることから、「誤報というのは、少なくとも第一近似値ではでたらめだ」とも考えている。彼は、「ジョー・バイデンの年齢に関する懸念に誤報や深いフェイクであるというレッテルを貼る」試みと同様に、新型コロナウイルスの研究室リーク説に対しては冷ややかに却下している。

しかし、これは本当にヴィレッジなのだろうか? それとも単なるソーシャルメディア上の接近戦なのか? 私は、研究所のリーク説は主流派の学者たちによって堂々と調査されたことを指摘する。FBI(リヴァーの前哨基地とは言い難い)は、それが最も可能性の高い説明であると結論づけた。「彼らは12年後には修正する」と彼はヴィレッジの機関について言い、民主党も最終的にはバイデンを交代させたと指摘する。シルヴァーは「しかし、ある種の機敏さが欠けていると彼は明らかに感じている」と述べている。

そして、誤報に関しては、最近のイギリスで暴動事件が起きた際にマスクが『デイリー・テレグラフ』紙の扇動的な(そして偽造された)見出しをツイートしたことについてはどうだろうか? シルヴァーは「だからこそ、政治的党派性を理解し、強権ではなく、自分自身にレンズを向けることのできる人々が必要なのではないか?」と述べた。何かを否定する閾値(threshold)を高く保つことは、実際に信頼を高めると彼は主張する。「暴動に関する嘘の映像、アメリカの選挙陰謀説、QAnonやワクチン陰謀説、これらは誤報として適切に分類されるものだと思う。完全にもっともらしい、研究室からのリーク説を否定したり、『ああ、ハンター・バイデンのラップトップだ』と言ったりするのは、ヴィレッジの信頼性を非常に損なうものだ」。(当初はロシアのフェイクとして却下されたが、ハンター・バイデンの放置されたノートパソコンから発見された証拠となる電子メールは、後に本物であることが判明した)。

シルヴァーは特にXに対して辛辣で、彼のモデルや実践を軽視する人々に対して攻撃的になる。スタンフォード大学のジャスティン・グリマー教授が、政治予測(political forecasting)についてよくある批判を行った時、選挙の頻度が低すぎるため、いかなる精度で確率を計算することもできない(あるいは、彼の言葉を借りれば、「結果データが不足しているということは、選挙予測者が予測をしなければならないことを意味している統計モデルを構築する方法についての知識に基づいた推測」)、シルヴァーはグリマーを「たわごとのモデルを作成できない退屈な学者」の1人として非難した。私たちが会った時、彼は攻撃の言葉を少し変えて、「統計的推論の実際のスキルを全然持たない退屈な学者」と呼んだ。

このようなことは人間関係を腐らせるのではないだろうか? シルヴァーは次のようになっている。「人々がツイッターをあまり深刻にとらえなければ、もっと良くなると思う。私たちはただふざけて楽しんでいるだけのことだから。これは、いかにもアメリカ的で、イギリス的ではないのではないか? 私は、このような怠惰な悪意のある批判をする人々に対して偽の善意で行動することを信じていない。80%の場合は無視するが、20%の場合は反撃する」。

いかにもイギリス人らしいと言われるかもしれないが、多くの人々が、そしてシルヴァーもその1人かもしれないが、X上で見るよりも実際に会った方が80%ほど素敵に見えるという事実は、私たちを立ち止まらせるべきだと思う。ソーシャルメディアが、人類が直面する最大の問題でないことは明らかだが、イーロン・マスクの指導は、リヴァーの権力に内在する問題を物語っている。投獄された起業家サム・バンクマン・フリードについて、シルヴァーは何度もインタヴューしている(「彼は奇妙な人物で、リスクに対する考え方が 『非合理的で、ある種狂っている』」)。SBFとして知られるバンクマン=フリードは、彼の暗号通貨取引プラットフォーム「FTX」を利用した投資家から数十億ドルを盗んだ罪で、最終的に投獄された。シルヴァーは検察側証人の証言を引用する。SBFは、「コインが裏になって世界が破滅しても、表が出れば世界が2倍以上良くなるのであれば、喜んでコインをはじくだろう」と証言している。

結果的には、この強引な態度がSBF自身の破滅を招いただけだった。しかし、その影響はもっと広範囲に及んでいた可能性がある。シルヴァーは、SBFが人工知能企業Anthropicに多額の投資をしていたことを指摘している。この技術が社会を一変させ、破壊する可能性さえあるのではないかという懸念が真剣に議論されている今、彼が大手AI企業のCEOになっていた可能性も考えられる。「シリコンバレーは、非常に自信過剰な創業者、つまり、本質的に成功する確率の低い逆張りのアイデアに大きな賭けに出ようとする人を選ぶ」と、シルヴァーは『魅了されて』の最後に書いている。それは技術革新にとってはいいことかもしれない。ヴェンチャー・キャピタルにとっても、賭けたものがうまくいったときにはいいことだ。しかし、私たちにとっては必ずしも良いことではないかもしれない。「SBの運は、ある時点でほぼ必然的に尽きることになる。しかし、その運がすぐに尽きてしまったことは、我々全員にとって幸運だった」とシルヴァーは述べている。

シルヴァーの内なる「ヴィレッジャー」たる所以は、このリスクの高さにある。彼はAIの危険性がかつてほど 「無視(neglected)」されていないことを喜んでいるが、それでもリヴァーの覇権がもたらす結果があまりにも悲惨で、規制の必要性を否定できない分野であることに変わりはない。彼は他の危険な技術に例えて言う。「自宅の裏庭に原子炉は建てられないだろう? 政府の役割は必要だと思う」。

このような実存的な疑問について考えることが、シルヴァーをヴィレッジの緑を越え、比喩的な教会へと導いたのかもしれない。このように尋ねると、シルヴァーは「私は無神論者(atheist)よりも不可知論者(agnostic)に近いかもしれない」と答えた。そのことを話すのが少し恥ずかしいのか、彼はくすくす笑い出した。しかし、彼が少しウジウジしてきたと思っていたが、統計学者の面がすぐに戻ってきた。「ベイズ的な見地から言えば、宇宙の起源や性質についての疑問に対する良い答えを持っていないと思うんだ。明らかに、キリスト教神学やそのようなものに低い確率を置くと思うんだ。でも、人々はもっと心を開くべきだと思う」。

「今回の本は3冊目の本になるかもしれない」と彼はつぶやいている。ネイト・シルヴァーは神の存在にオッズをつけることになるかもしれない? それに賭けてはいけない。

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める

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 古村治彦です。

 アメリカ大統領選挙は、民主党がイリノイ州シカゴで全国大会を開催している。ここで、カマラ・ハリス副大統領が大統領選挙候補者に指名される。ハリスは既に、ミネソタ州知事ティム・ウォルツを伴走者(副大統領候補)に指名している。ウォルツの指名は党内バランスを考え、かつ、アメリカ大統領選挙の主戦場となる五大湖周辺の激戦州を見据えた人選ということになる。
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 ウォルツは極めて一般的な背景を持つ人物である。家業の農業に従事し、大学に進んで、高校の先生となり、アメリカンフットボールのヘッドコーチとしてティームを州チャンピオンに導いたこともあった。州兵に参加して軍務に就いた。カマラ・ハリスのエリート然としたたたずまいと経歴とは対照的な、叩き上げの中西部人である。ウォルツは州知事になる前に、6期12年にわたってミネソタ州選出の連邦下院議員を務めた。ワシントンでの経験と知識も持っている。ハリスに欠けている部分を持っている人物ということになる。

 私は、民主党の副大統領候補について五大湖周辺州の最大の激戦州であるペンシルヴァニア州知事ジョシュ・シャピロ、ケンタッキー州知事アンディ・ベシア、アリゾナ州選出の連邦上院議員マーク・ケリーが有力候補だと考えていた。しかし、シャピロはユダヤ系アメリカ人で配偶者もユダヤ系となり、大統領選挙候補者のカマラ・ハリスの配偶者もユダヤ系となると、3名がユダヤ系で、誰もWASP出身にならないということはある意味で偏りが起きると考えた。また、マーク・ケリーについて経歴は申し分ないが、カリフォルニア州の隣州のアリゾナ州を地盤としているので、西側に偏ってしまうと考えた。

 ティム・ウォルツは党内左派からも歓迎の声が出ている。しかし、カマラ・ハリスがカリフォルニア流のリベラルということで、大統領候補、副大統領候補がともにリベラルに偏ってしまうという欠点が出てしまう。共和党側は既にウォルツについて、「過度にリベラル」と批判している。この点を民主党側は全国大会で払拭していくことになるだろう。アメリカ大統領選挙もいよいよ最終ターンに向かって進んでいく。

(貼り付けはじめ)

ハリスがウォルツを副大統領候補に選ぶ(Harris picks Walz for vice president

エイミー・パーネス、ブレット・サミュエルズ、ブランドン・コンラディス筆

2024年8月6日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/homenews/campaign/4789021-kamala-harris-vp-tim-walz-minnesota/

カマラ・ハリス副大統領は、11月のドナルド・トランプ前大統領との対決に向けて、ミネソタ州のティム・ウォルツ知事(民主党)を副大統領候補に選んだと火曜日に発表した。

ハリスはインスタグラムへの投稿と支持者へのテキストメッセージで、ウォルツを選んだことを発表し、中産階級家族への支持や州兵として勤務し、教師として働いていたウォルツの経歴を称賛した。

ハリスはインスタグラムへの投稿で、「私が彼の背景を共有するのは、それ自体が印象的であることと、それが彼の記録にどのような影響を与えているかがはっきりと分かるからだ」と書いた。

ハリスは続けて、ウォルツの妻と子供たちについて言及し、「しかし、私がティムについて最も感銘を受けたのは、彼の家族、グウェン、ガス、ホープに対する深い献身だ。ダグと私は、彼とグウェンと協力して、私たちの共通の価値観を反映した政権を構築することを楽しみにしている」と述べた。

ハリスは「私たちは、素晴らしいパートナーシップを築いていく。私たちは素晴らしいティームを作り上げていくつもりだ。私たちはこの選挙に勝つつもりだ」と書いている。

60歳のウォルツは、ペンシルヴァニア州知事ジョシュ・シャピロ(民主党)やアリゾナ州選出連邦上院議員マーク・ケリー(民主党)など、知名度の高い候補者の名前が噂される中、ダークホース的な二番手候補として浮上した。

しかし、ミネソタ州知事の知名度はこの1週間で大幅に上昇した。特に、ケーブルニュースのインタヴューで一部の共和党連邦議員を「変人(weird)」と揶揄し、後に全米の民主党議員がこの攻撃方法を採用した。

バイデン大統領が再選を断念し、ハリスが党内の支持を固めて推定候補者となり、副大統領ティームが11月の選挙で、ハリス候補に加わる候補者を急ピッチで吟味した、この2週間の激動の時期を締めくくる人選となった。

この人選は、進歩主義的な民主党員と穏健な民主党員の双方から賞賛を浴びた。

アレクサンドリア・オカシオ=コルテス連邦下院議員(ニューヨーク州選出、民主党)は、ソーシャル・プラットフォーム「X」に「ハリス副大統領は、ウォルツ州知事を伴走者に選ぶという素晴らしい決断を下した。ヘルスケアから学校給食まで、厳しい状況下でも一歩も引き下がらないだろう」と書いた。

バイデンに撤退を求めた最初の民主党連邦下院議員であるロイド・ドゲット連邦下院議員(テキサス州選出、民主党)は、ウォルツを「堅実でまともな元同僚議員で、ユーモアもあり、元教師で退役軍人だ。通常は共和党が代表している、ミネソタ州の選挙区を代表していた」と評した。

ドゲット議員はXに、「真面目なティムと仲良くできない訳がない。彼は、知事として、率直で思いやりのあるリーダーとして私たちに必要な進歩をもたらしてくれる」と投稿した。

ハリスは月曜夜の時点では伴走者を決めておらず、最後の数時間まで決断を迷っていた。

ウォルツはまた、彼のリベラルで誠実な姿勢と、他の候補者の一部が左翼の一部から攻撃を受けていたという事実のおかげで、ハリスにとってより安全な選択であると多くの人が考えるようになっていた。シャピロは最近、イスラエル・ハマス戦争後に生じた親パレスティナ抗議デモへの対応をめぐって厳しい追及を受けており、シャピロとケリーはともに労働組合指導者の怒りを買った。

ウォルツの魅力を更に高めているのは、トランプがますます逆転の狙いを定めている中西部州出身という事実だ。2020年のミネソタ州ではバイデンが7ポイント差で勝利し、ミネソタ州の大統領選では50年以上共和党員が勝利したことはないが、トランプと副大統領候補のオハイオ州選出連邦上院議員JD・ヴァンス(共和党)はミネソタ州での選挙活動を強化している。

しかし、ウォルツにも弱点がないということではない。共和党は、ハリスと同様に、中絶やLGBTQ問題に関する、ウォルツの政策的立場の一部を利用して、ウォルツを急進的なリベラル派として描く可能性が高い。

ウォルツはミネアポリスでのジョージ・フロイド殺害後の暴動の最中、ミネソタ州知事を務めており、共和党は激動の時代の映像を強調するのは確実だ。トランプ陣営は以前、フロイドの死後ミネソタ州で逮捕されたデモ参加者への保釈基金を推進したとしてハリスを攻撃していた。

トランプ陣営報道官のキャロライン・リービットは、「サンフランシスコを拠点とするリベラル派のカマラ・ハリスが、西海岸志向のティム・ウォルツを副大統領候補に望んでいることは驚くべきことではない。ウォルツはミネソタ州をカリフォルニア州のイメージに再構築することに知事職の大部分の期間を費やしてきた」と声明で述べた。

リービットは続けて次のように述べている。「ウォルツは、自身の脱炭素政策の提案から、ガソリン車の排ガス基準の厳格化の提案、有罪判決を受けた重犯罪者に投票を許可する政策の採用に至るまで、カリフォルニア州の危険な、リベラルな政策を広範囲に広めることに夢中だ。ウォルツが有権者に真実を語らないなら、私たちはそうするだろう。カマラ・ハリスと同じように、ティム・ウォルツも危険なほどリベラルな過激派であり、ハリス・ワルツのカリフォルニア・ドリームは、全てのアメリカ人にとっての悪夢だ」

ハリスとウォルツは今週、火曜日の夜からフィラデルフィアで激戦州を訪問する。2人は今週後半にウィスコンシン州、ミシガン州、アリゾナ州、ネヴァダ州を訪れる予定だ。ハリケーン「デビー」が南東部に上陸したため、予定されていたノースカロライナ州とジョージア州への訪問は延期されたと伝えられている。

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ウォルツがハリスの副大統領候補としてコンビを完成させる方法(How Walz Completes the Harris Ticket

-カマラ・ハリス副大統領の指名はそれを選ぶ人物について多くを物語っている。

ジュリアン・E・ゼリズナー筆

2024年8月6日

『フォーリン・ポリー』誌

https://foreignpolicy.com/2024/08/06/walz-vp-pick-kamala-harris-us-election/

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ミネソタ州ブルーミントンの市役所で行われた新しい銃規制に関する記者会見に出席し、講演するミネソタ州のティム・ウォルツ知事(8月1日)

民主党大統領候補で現職の副大統領のカマラ・ハリスは、短縮大統領選挙キャンペーンのパートナーについての数週間にわたる熱狂的な憶測を経て、ついに今日、副大統領候補として、ミネソタ州知事ティム・ウォルツを発表した。

彼女の決断について詳しく知るにつれて、その政治的な影響が明らかになり始めるだろう。副大統領候補の決定は、有権者が見ることのできる、候補者が下す最初の大きな決断である、これは政治の世界における決まり文句だ。しかし、それは本当のことだ。そして、展開が行われるにつれて、その決定の知恵がキャンペーンの過程における主要なストーリーラインになる可能性がある。歴史が示すように、結果は異なる場合がある。

大統領候補者の決定の最も重要な短期的な効果は、彼らが統治パートナーとして誰を側に置きたいのか、そして彼らがその職を果たせなくなった場合に誰に代わってもらいたいのかを私たちに伝えることである。

一部の副大統領選出により、大統領候補がどのように統治するつもりなのかについての認識が高まった。これは、数量が不明な部外者の候補者によく当てはまる。元ジョージア州知事のジミー・カーターは1976年、グレート・ソサエティの重鎮で国会議事堂のインサイダーであるミネソタ州選出連邦上院議員ウォルター・モンデールに頼ってその原型を築いた。カーターは、自分がワシントンの部外者であるという事実、つまりリチャード・ニクソン元大統領のウォーターゲート事件の影響で有権者が信頼できる人物であるという事実を中心に選挙戦全体を構築した後、民主党の政治家や利益団体に対して、自分も信頼できるというシグナルを送る必要があった。連邦議事堂で最も尊敬され、有能なリベラル議員の1人として、カーターがモンデールを選んだことは、彼が党の周囲だけでなく、党内で働く必要性を理解していることを示した。ニューヨーク・タイムズのチャールズ・モール記者は、この選出は「ジョージア州からの部外者を不安な目で見ていたワシントンの政界の多くにとって非常に受け入れられるものだった」と述べた。「ジミー・フー?」と各新聞はこの無名の候補者カーターについて冗談を言ったが、カーターがいつものように政治を非難している一方で、物事を成し遂げることに関しては愚か者ではないという強いシグナルを送っていた。

4年後、共和党員の間でも元カリフォルニア州知事ロナルド・レーガンについて同様の懸念が広がった。レーガン大統領はカリスマ性と大胆なアイデアで保守活動家を興奮させたが、ワシントンの回廊においては、レーガンが効果を発揮できないのではないかという深刻な懸念があった。更に、ワシントンの一部の退役軍人は、レーガンが共和党のエスタブリッシュメントや、財政保守主義や国際的な同盟へのアメリカの関与など、共和党の多くのメンバーが抱いている伝統的な考えを無視するのではないかと懸念した。レーガンの主要な対立候補であった元CIA長官ジョージ・HW・ブッシュは、共和党のエスタブリッシュメントの典型であった。レーガンがブッシュに寝返ると発表したのは、ジェラルド・フォード元大統領の起用交渉が決裂したことを受けての土壇場でのことだったが、この人選によって党員たちは、偉大なコミュニケーターが真面目な政治家でもあるという安心感を得ることができ、党全体がまとまった。

1992年、46歳のアーカンソー州知事ビル・クリントンは型破りな道を選んだ。多くの専門家が、党の権力基盤が沿岸部に移っていることを考えると、クリントンは年配で南部以外の出身者を探さなければならないと予測していた中、クリントンは代わりにその考えを捨てた。クリントンは、もう一人、若くて中道派で、テレビに詳しく、聡明な南部出身者である、テネシー州選出のアル・ゴア連邦上院議員を副大統領候補に選んだ。地域的なバランスよりも、レーガン時代の影から抜け出した民主党を中心に選挙戦を展開しようとした。クリントンの最初の大きな決断は、彼が、国民がいかに新世代のリーダーシップを渇望しているかを本当に理解していることを有権者に示した。

2008年に、イリノイ州選出の連邦上院議員バラク・オバマが有権者に送ったメッセージは、伝統的な白人男性労働者階級の選挙区(traditional white male working-class constituencies)に好意を示し、外交政策における自身の限られた経験を補う必要性を理解しているというものだった。このため、オバマは、デラウェア州選出のジョー・バイデン連邦上院議員に頼った。オバマは、若い有権者、大卒の郊外住民、黒人とラテン系の有権者からの支持を集める中、バイデンの選択で労働者階級の白人有権者への理解と敬意を示し、自分も支持を得るために必要なことはするつもりだと示した。民主党の立法府。オバマ大統領はまた、外交政策の専門知識を強化する必要性を理解していることを示唆した。共和党候補のアリゾナ州選出連邦上院議員ジョン・マケインは、この問題に関する知識で広く尊敬されており、オバマ大統領は自分が知らないことを知っていることを示す必要があった。2008年8月にバイデンが副大統領候補になると発表した際、オバマ大統領は「ジョー・バイデンは理解していると言える。彼は、シーダーラピッズのバーでも、国会議事堂の廊下でも、コンコードのVFWホールでも、国際危機の中心でも、くつろげるユニークな公僕だ」と述べた。この決定は、オバマ氏が単なる扇動者ではなく、選挙に勝つために必要な連立政権について洗練された感覚を持っていることを示唆しており、実際に彼はそれを実行した。

そして、ドナルド・トランプは2016年にも効果的な選択をした。インディアナ州知事マイク・ペンスを選んだことで、トランプは党の保守層が本当に彼を信頼できるのかという懸念を和らげた。トランプは、予測可能で、ありきたりで、信頼できる右派保守派を選ぶことで、一部の神経を落ち着かせた。「クラブ・フォ・グロース」のデビッド・マッキントッシュ会長は、この人選は「マイク・ペンスが共和党の選挙券を経済保守主義と制限された政府の方向へ引っ張るのに効果的であるという希望を与えるものだ」と称賛した。当時、トランプ大統領の任期がどの程度激動することになるかは明らかではなかったが、2016年夏、彼の人選は、舞台裏では、トランプ大統領が権力を手にした後は、保守連合(behind the curtains)、特に福音派(evangelicals)から大きく逸脱することはないだろうという証拠を示していると受け止められた。

そして、候補者擁立に水を差す、あるいは水差されそうになるような人選もあった。現代政治における最初の大失策は、1972年に始まった。サウスダコタ州選出の民主党連邦上院議員ジョージ・マクガヴァンは、連邦上院議員トーマス・イーグルトンを選んだ。イーグルトンは強力な信任を得ていた。しかし、報道陣は彼がうつ病を患い、ショック療法を受けていたことを知った。このニューズが流れると、マクガヴァンの選挙キャンペーンは大混乱に陥り、結果としてイーグルトンは選挙戦から撤退することになった。当時、精神的な問題はタブー視され、対立候補は、彼がいつか「ボタンに指をかける(finger on the button)」ことができるような信頼できる人物なのかという不安をかき立てていた。生き残りをかけた戦いの末、イーグルトンは結局辞退した。それは、マクガヴァンがホワイトハウスにもたらすリーダーシップだったのだろうか? 実際、1976年にカーターがじっくりと時間をかけて選んだとき、マスコミは彼の意思決定スタイルをマクガヴァンのそれと対比させた。

ジョージ・HW・ブッシュ副大統領が1988年にスペル間違いが問題になるとはほとんどの人が考えていなかった。ブッシュ大統領は、若くて人気のあるインディアナ州選出連邦上院議員ダン・クエールを副大統領候補にすると発表した。当初、保守派はこの決定を賞賛した。クエールは共和党の将来の指導者と見なされてきた。しかし、彼の副大統領選はそれほどうまくいかなかった。1988年、クエールの学歴や、コネを利用して州兵への任命によりヴェトナムへの徴兵を避けたという疑惑が浮上した。8月下旬、当時のテネシー州共和党委員長ジェームズ・ヘンリーは次のように述べた。「既にマイナスのようになっている。問題は、どれだけマイナスになるかだ」。

この質問によって、ブッシュの勝利が阻止されることはなかったが、1992年のブッシュの再選キャンペーン中にクエールは再び問題を起こした。ニュージャージー州で開催されたスペリング大会での記念撮影の際、彼はウィリアム・フィゲロアという12歳の少年の 「potato」のスペルを正した。クエールは最後に「e」をつけるべきだと言った。フィゲロアは報道陣に「副大統領に関する噂は本当だ。彼はバカだ」と語って事態を悪化させた。マクガヴァンと同様、1988年と1992年、クエールは、ブッシュが自分の周囲に誰を置くべきかを考える能力がなく、大統領になる準備ができていない若い破天荒な人物に屈服することを厭わないという証拠となった。

2008年を振り返ると、マケインも同じ罠にはまった。高齢のマケインは、共和党の次世代を代表すると考える人もいる、アラスカ州知事サラ・ペイリンと協力することで、オバマが選挙運動にもたらした興奮を少しでも打ち消したいと考えていた。しかし、状況はすぐに悪化した。メディアでの彼女の失敗したパフォーマンスは、マケインがホワイトハウスにはるかに多くの経験と知恵をもたらすことができるという主張を続けていることへの疑問を引き起こした。それが本当なら、どうしてマケインは、ペイリンのような人物を選んだのだろうか、そして彼女が権力の座に就いたら彼の側にいるということは何を意味するのだろうか? こうした疑問が出てくる。更に言えば、ペイリンは集会中、党の極右、周縁分子に訴えた。かつて、マケインが将来を見据えていたことを示唆していた人選は、最終的には共和党の要素を持ち込むことになり、レーガンの型に沿った合理的で立派で穏健な保守派としてのマケインの評判を損なうことになった。

トランプ大統領がオハイオ州選出連邦上院議員JDヴァンスが、重要な瞬間にトランプ大統領がどのように考えるかについて全く間違ったメッセージを送ったと主張する人が出ている。暗殺未遂事件の直後、共和党員の中には、ヴァンスがやや中道寄りに傾くこと、あるいは少なくとも連立を拡大して穏健に行動する意向を示してくれることを期待する者もいた。その代わり、トランプは、共和党全国大会でヴァンスを指名することで、自分が混乱と急進主義(radicalism)に更に深く陥っていることを示した。トランプ大統領の決定は、批判者たちや一部の支持者たちに、核心的な問題に関して大多数の有権者がどのような立場にあるのかを理解する人々をトランプ大統領の周囲に置くことが信頼できないという証拠を提示した。ヴァンスの「プロジェクト2025」への接近や、強権的な統治に関するコメントは、独裁的な統治方法に対するトランプの関心を軽減するどころか、むしろ増幅させた。

副大統領候補を選ぶ過程で、ハリスは自分がどのように統治するかについていくつかのヒントを提供した。この高度に精査された意思決定期間中に重大な漏洩はなかったが、これはハリスが情報を管理しながら厳密に運営することを望んでおり、また実行できることを示唆している。これはスタッフ間の混乱について浮上した話とは対照的である。ハリスはまた、メディアに精通しており、短縮されたキャンペーン期間の中で、1週間以上貴重な注目を集める方法で展開を実施した。彼女はリアリティゲームショーの戦略もプレイできる。マスコミの注目をこれほど効果的に扱うことは、報道を独占することで繁栄するトランプ大統領の前でクリプトナイト(訳者註:スーパーマンの力を吸い取る架空物質)を振るようなものだ。ハリスは、激しいスポットライトの下で、大きな決断を迅速に下す必要に直面しても、疲れ果てることはない。

ハリスはウォルツを選ぶことで、真剣さと安定性のメッセージを送りたいと考えている。ウォルツは知事および米国下院議員としての経験がある。彼は60歳で、他の人々よりも年上だが、そこまで高齢ではない。ウォルツは無愛想な性格にもかかわらず、政策に関しては真剣な指揮を執っている。彼が側にいるということは、ハリスが自分を統治したい経験豊富なパートナーに囲まれたいと思っていることを示している。彼は政府内だけでなく、政府外でも公立学校の教師として経験を積んでいる。

ウォルツの指名は、ハリスが連立政権の幅広さを尊重した決定を下したいと考えていることも示している。ミネソタ州知事ウォルツは誇り高き進歩主義者であり、社会権を擁護し、政府を擁護することに躊躇しない。彼は、既に活性化している基地を活性化するのに役立つ。しかし、ウォルツはこうした価値観を受け入れながら、共和党優勢州に住むアメリカの田舎の人々にも訴えかけているという点で、民主党員としては異例だ。ウォルツはミネソタ州内で、ヴァンスが好んで代表する有権者層の一つである共和党選挙区で好成績を収めてきた経歴がある。重要なのは、ウォルツが自分の政治原則を売り渡すことなく、そのような有権者に訴えていることだ。彼は共和党と対決することを恐れておらず、社会主義に対する標準的な攻撃に直面しても自分の信念を後退させない。彼は、コストと不安に苦しむ働くアメリカ人のために存在する代替手段、つまり現代の共和党にとって必須となっている反動的政治なしで前進する道を体現した人物である。

そして、ウォルツが民主党内で火をつけたレトリックでトランプとヴァンスをフレームワークにしてトップに躍り出た、「変人(weird)」コメントもある。メディアに精通した人材を倍増させることで、展開を補完できる。ハリスは報道陣に対応し、トランプ大統領の攻撃に対抗できるティームを構築する計画だ。民主党は長い間、メッセージングが下手だと不満を抱いてきた。ハリスはこの問題を修正し、人々が自分のやってきたことを評価してくれるだろうと考えるのではなく、大衆に売り込める大胆な政策を可決したいと考えている。

※ジュリアン・E・ゼリズナー:プリンストン大学歴史学・公共政策教授。1月14日に、コロンビア・グローバル・レポーツから新著『党派性の擁護(In Defense of Partisanship)』を出版予定。ツイッターアカウント:@julianzelizer

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ハリスが副大統領候補としてミネソタ州知事ティム・ウォルツを選択(Harris Picks Minnesota Gov. Tim Walz as Running Mate

-この人選は中西部の激戦州で民主党を助けることになるだろう。

ロビー・グラマー筆

2024年8月6日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2024/08/06/harris-tim-walz-presidential-election-minnesota-running-mate-views-israel/

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ウィスコンシン州ミルウォーキーでジョー・バイデン米大統領とカマラ・ハリス副大統領の選挙運動記者会見で話すミネソタ州知事ティム・ウォルツ(7月17日)

副大統領で民主党大統領選挙候補のカマラ・ハリスは、接戦となっている11月の大統領選挙に先立ち、中西部激戦州における民主党の進歩主義派基盤を活性化することを目的として、ミネソタ州知事のティム・ウォルツを副大統領候補に選んだと報じられている。

60歳のウォルツは2期目の知事であり、元高校教師で元連邦下院議員だ。ジョー・バイデン米大統領が突然大統領選挙から撤退し、7月21日にハリスを後継者として支持するまでは、全国の舞台では比較的無名だった。

それ以来、ウォルツは共和党に対する民主党の攻撃路線の主導権を握る存在となり、ドナルド・トランプ元大統領と副大統領候補のオハイオ州選出連邦上院議員JD・ヴァンスを繰り返し「変人(weird)」と呼んだ。

ウォルツは現在、投票日まで100日を切った、始まったばかりの大統領選挙活動において、全米での知名度を高めるという困難な戦いに直面している。対立する民主党と共和党の候補者たちは、世界におけるアメリカの役割についての大きく異なる見解を反映しているが、次期選挙で外交政策が有権者にとってどれだけの要素となるかは不明だ。

トランプとヴァンスは、アメリカの同盟体制に懐疑的な姿勢を表明しており、ヴァンスは特に、対ロシア戦争を戦うウクライナに対するアメリカの援助継続を声高に批判するようになり、アメリカはむしろ中国への対抗に軍事資源を振り向けるべきだと主張している。ハリスはバイデン政権のウクライナ支援政策を継続すると見られる。しかし、中東に関しては、ハリスは、ミシガン州のような激戦州で、アラブ系アメリカ人の投票権を持つ有権者にとって重要な問題である、物議を醸しているガザ地区での戦争を遂行するイスラエルとアメリカの関係を見直すよう、民主党の進歩主義派から高まる圧力に直面している。

進歩主義派団体の一部は、ハリスも副大統領候補として検討していたペンシルヴァニア州知事ジョシュ・シャピロのイスラエル支持に反対したため、シャピロを民主党の副大統領候補から遠ざけるよう積極的に運動した。

ウォルツは、イスラエルを支持するという民主党主流派の立場を堅持しているが、ガザ戦争へのイスラエルの対応を批判し、3月にはアメリカに停戦(cease-fire)を促すよう求めた。 ウォルツは、その当時にミネソタ公共ラジオに出演し、「私は人々を避難させるために人道的一時停止を要請した。このことは終わりにしたい。停戦が1週間とかその程度続くことは望まない。私たちには恒久的な解決策が必要だ」と語った。

ウォルツはネブラスカ州で育ち、最初は中国で、次にネブラスカ州で、最後はミネソタ州で教師として働いた。また、アメリカ陸軍州兵として24年間勤務し、上級曹長まで昇進した。2007年から2019年までの連邦下院議員時代、ウォルツは連邦下院軍事委員会の委員を務め、アメリカの軍事政策と国防費を監督した。軍事委員会で、所属当初から、イラク戦争を痛烈に批判し、アメリカ軍の追加派遣に反対していた。

2009年、ウォルツはシリアを訪問し、当時ミネソタ州兵が派遣されていたイラクの過激派組織への武器流入を止めるようシリアに圧力をかけようとして失敗した、連邦議会代表団の一員として、シリアの指導者バッシャール・アル=アサドと会談した。

その後、アサドによる化学兵器の使用を受けて、2013年にシリアへの軍事攻撃を命じたバラク・オバマ大統領(当時)の計画には、中東での紛争にアメリカ軍をこれ以上関与させることへの有権者の反対を理由に反対した。「この男(アサド)は怪物であり、状況は恐ろしいが、よく練られておらず、この国にとって最善の利益にならない計画を打ち出すほど説得力はない」と当時のウォルツは語った。

ウォルツは、2018年のミネソタ州知事選挙に出馬するために退任するまで、さらに5回議席を獲得した。

複数の政府高官によると、先週、国務次官(広報外交[pubic diplomacy]担当)を突然辞任したエリザベス・M・アレンは、ウォルツが選挙キャンペーンに移行する際に、首席補佐官になる見込みだという。

※ロビー・グラマー:『フォーリン・ポリシー』誌外交・国家安全保障担当特派員。ツイッターアカウント:@RobbieGramer

(貼り付け終わり)

(終わり)

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 古村治彦です。

 アメリカ大統領選挙本選挙投開票日まで100日を切った。アメリカや日本の主要メディアでは、「民主党のカマラ・ハリス副大統領が急速に追い上げている」「共和党のドナルド・トランプ前大統領は、副大統領候補のJ・D・ヴァンス連邦上院議員の失言問題もあり苦戦している」という報道がなされている。それは一面では正しいが、一面では正しくない。

 アメリカ大統領選挙は有権者の投票数の合計ではなく、各州の選挙人獲得数で争われる。各州の選挙人は勝者総取り形式で配分される。例えば、カリフォルニア州でA候補が100万1票、B候補が100万票を獲得した場合には、A候補が54人の選挙人全員を獲得する。

 全米50州と首都ワシントン・コロンビア特別区のうち、40以上は既に結果が見えている。分かっている。民主、共和両党のイメージカラーから、民主党優勢州は「ブルーステイト(Blue State、青い州)、共和党優勢州は「レッドステイト(Red State、赤い州)」」と呼ばれている。40以上の州とワシントンDCはきれいに色分けされている。そして、残りの約10州は激戦州(Battleground State)とか、「パープルステイト(紫の州)」などと呼ばれる。大統領選挙の結果を決めるのはこれらの激戦州だ。今回の選挙では、激戦州(Toss-up)は、以下の地図にあるおうど色の州だ。赤と青はそれぞれ、共和党のトランプと民主党のハリスが「固めた」州と言えるだろう。基礎票はトランプ235対ハリス226となる。ここからスタートとなる。

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 おうど色の州で重要なのは、ペンシルヴァニア州とジョージア州だ。この2州をトランプが制すれば、270となって、選挙人538名の過半数を獲得することになり、大統領に当選ということになる。この2州は、2016年の選挙ではトランプが勝利し、2020年の選挙ではバイデンが勝利した。目まぐるしく勝者が変わる州である。この2州が非常に重要ということになる。トランプ銃撃事件が起きたのが、ペンシルヴァニア州バトラーだったことを考えると、トランプ陣営としては、ペンシルヴァニア州を是が非でも取りたい。ウィスコンシン州やアリゾナ州でも勝利できれば、より盤石な勝利ということになる。

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 ハリス陣営としては、この2つの州を明け渡す訳には行かない。何とかどちらか1つの州を取りたいところだ。ネヴァダ州は2016年も、2020年も民主党が取っているので、ここは激戦州だが大丈夫という計算をしているだろう。アリゾナ州選出のマーク・ケリー連邦上院議員を副大統領候補にすれば、アリゾナ州も民主党が取れる可能性が高まる。しかし、そうなると、大統領候補のハリスがカリフォルニア州出身、副大統領候補のケリーがアリゾナ州出身となって、ロッキー山脈より西の西部に偏り、五大湖周辺州や南部にはなじみがない顔ぶれとなってしまう。やはり重要なのは、五大湖周辺州、ペンシルヴァニア州だ。そして、アフリカ系アメリカ人有権者の多いジョージア州だ。ジョー・バイデンはアフリカ系アメリカ人の政治家やコミュニティリーダーと長年にわたり、深い関係を築いていた。ハリスは、父親がジャマイカからのアフリカ系アメリカ人移民ということで何とかアピールしたいところだ。

 激戦州の戦いでは、現在、トランプがやや有利となっている。各州を細かく見ていくと、アメリカや日本の報道とはまた違う姿が見えてくる。

(終わり)

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 古村治彦です。

 五大湖は東側からオンタリオ湖、エリー湖、ヒューロン湖、ミシガン湖、スペリオル湖から成り立っている。この五大湖周辺に接しているのは、東側からニューヨーク州、ペンシルヴァニア州、オハイオ州、ミシガン州、インディアナ州、イリノイ州、ウィスコンシン州、ミネソタ州である。これらの州はアメリカの勃興期に製鉄業や石油採掘業、自動車製造業で大きく発展した。シカゴ、デトロイト、クリーヴランドなどの工業で発達した大都市が存在する。
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 これまでの歴史では、五大湖周辺州は工業地帯ということもあり、労働組合の活動が盛んで、民主党が優位であった。2016年の大統領選挙ではそのこともあり、民主党候補のヒラリー・クリントンが勝利すると見られていたが、僅差で共和党候補のドナルド・トランプが勝利した。このことが大番狂わせの原因となった。

 労働組合に参加していた白人労働者たちが、一向に良くならない生活と雇用環境に業を煮やし、民主党支持を止め、「雇用を取り戻すために保護貿易を行う」と訴えたトランプに投票したという分析がなされている。保護貿易といえば、1980年代に日米間の貿易摩擦で、民主党所属のリチャード・ゲッパート連邦下院議員の激しい日本叩きが思い出される。2010年代以降、その亡霊が姿を現したのだ。ちなみに、現在のトランプは共和党所属だが、2010年代半ばまでずっと民主党員であった。

 共和党候補であるトランプが、民主党が主張していた保護貿易を訴えて当選したというところから、共和党内部にはトランプ大統領への嫌悪感がある。また、大統領選挙と合わせて実施される連邦上院議員選挙と連邦下院議員選挙では現在のところ、民主党が有利である。大統領選挙と同時に実施される連邦議員選挙の場合には、大統領選挙の情勢が大きく影響すると言われ(これをdown ballotと言う)、トランプが大統領に再選されても、共和党の連邦議員数が減れば、トランプの責任ということになり、彼の影響力は大きく減退する。

 トランプがフロリダ州とテキサス州で勝利をすればの話だが、五大湖周辺州は今回の大統領選挙の最終決戦場となる。現在のところ、各種世論調査の結果では、五大湖周辺州ではバイデンが有利という結果が出ている。ミシガン州とウィスコンシン州ではバイデンのリード差が広がっているが、オハイオ州とペンシルヴァニア州では両者の差は小さい。オハイオ州とペンシルヴァニア州でトランプが勝利ということになれば結果は大接戦ということになる。オハイオ州とペンシルヴァニア州の選挙人数は38名であり、ここをトランプが取ればトランプ大統領の再選が近づく。

(貼り付けはじめ)

世論調査:トランプがミシガン州。ペンシルヴァニア州、ウィスコンシン州で追いかける展開に(Trump trailing in Michigan, Pennsylvania and Wisconsin: poll

ジョセフ・チョイ筆

2020年10月11日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/homenews/campaign/520534-great-lakes-poll-shows-trump-trailing-in-michigan-pennsylvania-and

最新の世論調査によると、トランプ大統領は3つの激戦州(スイング・ステイト)であるミシガン州、ペンシルヴァニア州、ウィスコンシン州で民主党の大統領選挙候補者ジョー・バイデンを追う展開になっている。

ボールドウィン大学がオークランド大学とオハイオ・ノーザン大学と共同して行った世論調査の結果を金曜日に発表した。それによると、ミシガン州ではバイデンの支持率が50%、トランプの支持率が43%で7ポイントのリード、ペンシルヴァニア州ではバイデンの支持率が50%、トランプの支持率が45%で5ポイントのリード、ウィスコンシン州ではバイデンの支持率が49%、トランプの支持率が43%で約7ポイントのリードとなっている。

トランプ大統領はオハイオ州では僅差でリードしている。支持率はトランプ大統領が47%、バイデンが45%だった。しかしその差は誤差の範囲内であった。

2016年の大統領選挙ではトランプがこれら4州全てで勝利した。

最新の世論調査では、調査に応じた人々の過半数が1回目の大統領選挙候補者討論会を視聴し、バイデンがより良いパフォーマンスを行ったと答えた。51%がバイデン前副大統領の方がより良いパフォーマンスをしたと答え、32%が勝利者だったと答えた。

有権者の多くは、1回目の討論会では頻繁に繰り返される割り込みと個人攻撃によって酷くイラついたと答えた。しかし、トランプ支持の有権者たちのほとんどは討論会を見たことを理由にトランプへ投票する気持ちが「全く変わらない」と答えた。

世論調査担当者たちは、有権者たちは勝利が発表されるまでに全ての投票が集計されるようにすべきだと答えた。全ての投票が集計される前にトランプ大統領が勝利を主張しても、投票集計の正確性について信頼を持てないと有権者の過半数が述べている。トランプ大統領は来月の選挙で負けて平和的な政権移行に協力することを拒絶し続けている。

今回の世論調査の結果は、『ワシントン・ポスト』紙とABCニュースによる全国規模の世論調査の結果が出る数日前に発表された。ワシントン・ポスト紙とABCニュースの世論調査の結果では、バイデンがトランプに12ポイントのリードをしている。有権者の53%がバイデンを支持し、41%がトランプを支持した。

今回の五大湖周辺州での各種世論調査は9月30日から10月8日にかけて4166名を対象に実施された。これら4つの州での世論調査の誤差は約3ポイントである。

最新の世論調査のデータを見て、共和党の最高幹部たちは連邦上院で共和党が過半数を維持できるかどうか懸念を持っている。幹部たちはトランプ大統領の支持率を見て、これが各州レベルの選挙にマイナスの影響を与えることになるだろうと恐怖感を持っている。カンザス州やサウスカロライナ州のような伝統的に共和党優位の各州で民主党の候補者たちが大きなリードをつけている。共和党側は現在、連邦上院の23の議席を防衛しようとしている。

(貼り付け終わり)

(終わり)

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