古村治彦です。

 2023年12月27日に『バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる』(徳間書店)を刊行しました。『週刊現代』2024年4月20日号「名著、再び」(佐藤優先生の書評コーナー)に拙著が紹介されました。是非手に取ってお読みください。よろしくお願いいたします。

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

 2022年2月のロシアによるウクライナ侵攻が起きて以来、人々の不安を煽る主張が多く出ている。「ロシアはウクライナの次として●●(バルト三国や隣接している国々の名前が入る)を狙っている、攻める」とか、「ウクライナの次は台湾だ(中国がロシアの成功を見て台湾侵攻を行う)」といった主張がなされてきた。「ロシアのプーティンも中国の習近平も共に独裁者で、自分たちの思うとおりに軍隊を動かして、他国を攻める」「ロシアも中国も膨張主義(expansionism)だ」という粗雑な、浅はかな考えが基本になっている。プーティンも習近平も、こうした浅はかな主張をする人間たちよりも、はるかに頭が良く、自分の欲望だけで何かをするという次元の人間ではない。また、ロシアも中国も国土に関して野心を持っていない。

 プーティンのウクライナ侵攻の原因をきちんと精査し、分析し、合理的な判断もしないで、粗雑な前提で、「攻めてくる、攻めてくる」と騒ぎ立てるのは、人々の不安を煽って、自分の金儲けに使おう、商売にしようというさもしい根性から出ている。独裁者だから連続してどんどん侵略するということはない。ヒトラーやナポレオンがいるではないか、という声も出るだろうが、独裁者が全員、ヒトラーやナポレオンのような行動を取った訳ではない。

 プーティンが独裁者だから必ず、ウクライナ以外にも侵略戦争を仕掛けるというのは粗雑な考えであり、プーティンがどうしてウクライナに侵攻したのか(2014年の時も含めて)を考えるならば、NATOの拡大が理由として挙げられる。NATOとは対ソ連、今では対ロシア軍事同盟だ。ロシアの側か見れば、それがどんどん東側に拡大して、自国に迫ってくる。東欧諸国やバルト三国が加盟してNATOと隣接することになる。それでもロシアは自制した。しかし、ウクライナはロシアにとっては喉首のような場所であり、NATO拡大は看過できない(EU加盟には賛成している)。こうして考えると、西側諸国がロシアの意向を無視して、ロシアを煽ったということになる。ロシアは乾坤一擲、ウクライナを抑えた。それ以上のことをする意図はない。

 これは中国にも言えることで、台湾が現状のままならば、わざわざ侵攻することはない。既に両岸関係は緊密に絡まり合って、経済的には一蓮托生の状態になっている。アメリカをはじめとする西側諸国が余計なことをしなければ、そのままの状態で、経済が発展していく。西側諸国という存在が世界にとって大いなる邪魔者になっているということを私たちは良く考えねばならない。そして、過度に単純化された、不安を煽る言説に惑わされてはいけない。

(貼り付けはじめ)

ロシアが次に何をするかを実際のところは誰も知らない(Nobody Actually Knows What Russia Does Next

-ウラジーミル・プーティンの将来に関する計画に対して西側諸国の警告はますます大きくなっているが、説得力は増していない。

The West’s warnings about Vladimir Putin’s future plans are getting louder—but not any more convincing.

スティーヴン・M・ウォルト筆

2024年4月2日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2024/04/02/russia-putin-nato-warning-war-west/?tpcc=recirc062921

どうやら、西側諸国の外交政策エリートの主要メンバーたちは読心術者(mind readers)であるようだ。彼らは、ロシアのウラジーミル・プーティン大統領の意図が何であるかを正確に知っていると主張している。著名な当局者や政治評論家たちは、プーティンの野心は無限であり、ウクライナは単なる最初の標的に過ぎないとの意見で一致している。

ロイド・オースティン米国防長官は、「プーティンはウクライナに止まらないだろう」と述べた。デイヴィッド・ペトレイアス元CIA長官は、CNNのクリスティアン・アマンプール記者に「プーティンはウクライナに止まらないだろう」と語った。ウクライナのヴォロディミール・ゼレンスキー大統領は、「次はリトアニア、ラトビア、エストニア、モルドバになるかもしれない」と警告し、ジェーン・ハートリー駐英米大使は、「ロシアがこの後止まるかもしれないと考える人は誰でも間違っている」と述べた。リトアニアのガブリエリウス・ランズベルギス外相も同じ考えだ。「ロシアは止まらないだろう。プーティンは、明らかに更なる計画を持っている」と述べている。ジョー・バイデン米大統領も2023年12月に同じ警告を発し、NATOのイェンス・ストルテンベルグ事務総長も同じ警告を発した。西側諸国の政府関係者たちは、ロシアがいつNATOを狙うのか定かではないが、モスクワを断固として打ち負かさなければ、より広範な戦争は避けられないと考える声が高まっているようだ。

ウォルター・リップマンが警告したように、「全ての人が同じように考えるとき、誰もあまり考えない」。ウクライナ戦争が終結し、ロシアが2022年以前のウクライナの領土の一部を支配することになる場合、プーティンやロシアがどのような行動に出るかは、これらの人々の誰も、何も分からないというのが明白な事実である。私もそうだし、プーティン自身(そしてプーティン自身もはっきりとは知らないかもしれない)を除いて、他の誰も分からない。プーティンが大きな野心を持っていて、ウクライナでの高価な成功に続いて、どこか別の場所で新たな攻撃を試みる可能性はある。しかし、プーティンの野望が、ロシアが莫大な犠牲を払って勝ち取った以上のものには及ばず、それ以上のギャンブルをする必要も欲望もないという可能性も十分にある。例えば、プーティンは最近、ロシアはNATOを攻撃するつもりはないと宣言したが、ウクライナに供与されるF-16やその他の航空機がウクライナに配備されれば、合法的な標的になるとも指摘した(当たり前だ)。プーティンの保証を額面通りに受け取るべき人はいないが、彼の言うことは何でも全て嘘だと決めつけるべきではない。

もちろん、プーティンの将来的な行動について、薄気味悪い警告を発している西側の専門家たちは、西側諸国の人々(そしてアメリカ連邦議会)を説得して、ウクライナへの援助を増やし、ヨーロッパの防衛費を増額させようとしている。はっきり言って、私もウクライナへの援助を継続することには賛成だし、NATOの加盟国であるヨーロッパ各国が通常戦力を増強することで抑止力(deterrence)を強化することを望んでいる。私が気になるのは、このような宣言に触発される反射的な脅威を危険視する不安感の急速な膨張であり、このような暗い予測をあたかも確立された真実であるかのように扱い、それに疑問を呈する者を考えが甘い人間、親ロシアでロシアの手先、あるいはその両方と決めつける傾向があることだ。

プーティンに無限の野望があるという、偏った、信仰に近い考えは、全ての独裁者は生来攻撃的で抑止が難しいという、おなじみのリベラル派の主張にもとづいている。その論理は単純だ。「全ての独裁者は拡大を求める。プーティンは独裁者だ。だからプーティンはウクライナで止まらない。証明終わり」。この三段論法(syllogism)はリベラルなエリートたちの間では信条(article of faith)になっているが、この主張を裏付ける証拠はほとんどない。確かに、ナポレオンやアドルフ・ヒトラーのように危険な連続侵略者だった独裁者もいる。だから、現在私たちが偶然対峙することになっている独裁者は誰でも、必然的に「もう1人のヒトラー(another Hitler)」というレッテルを貼られる。しかし、他の独裁者たちは、国内での行いがいかに酷いものであったとしても、国際舞台ではむしろ品行方正(well-behaved)であった。毛沢東は誰がどう見ても暴君であり、彼の政策は何百万人もの同胞を死に至らしめたが、毛沢東の征服戦争(war of conquest)は1950年のチベット占領だけだった。オットー・フォン・ビスマルク率いるプロイセンは、8年間に3度にわたって戦争を繰り返したが、1871年に誕生した統一ドイツは、それから19世紀が終わるまで、断固として現状維持(status quo)に努めた。スタニスラフ・アンドレスキーが何年も前に論じたように、多くの軍事独裁政権は平和的な姿勢を取る傾向がある。プーティンが国内のライヴァルを投獄したり殺害したりする冷酷な独裁者であり、その他の卑劣な行為を行っているという事実は、彼がロシアの近隣諸国を征服したいと思っているかどうか、あるいはそうできると信じているかどうかについては、ほとんど何も語っていない。そして、いわれのない違法で破壊的な戦争を仕掛けるのに、独裁者である必要はほぼないのである。

第二に、ウクライナでの戦争が最終的に終わったとき、ロシアは新たな侵略戦争(new wars of aggression)を仕掛けることができる状態にはないだろう。アメリカの情報諜報機関は、ロシアがウクライナで死傷した兵力は30万人を超え、数千台の装甲車や数十隻の船舶・航空機も失ったと考えている。プーティンは、(「再選[reelection]」が終わった今、そうするかもしれないが)追加出動(additional troop mobilizations)を命じることに消極的だ。そのような措置はロシア経済をさらに弱体化させ、民衆の不満を煽る危険があるからだ。西側の制裁措置(sanctions)は、アメリカとその同盟諸国が期待したほどにはロシア経済に打撃を与えなかったが、ロシアにとって長期的な経済的影響は依然として深刻なものになるだろう。長い通常戦争(conventional wars)を戦うにはコストがかかる。現在の戦争が終わるたびに次の戦争を始めるのは、プーティンが簡単だと信じていた「特別軍事作戦(special military operation)」を開始するという当初の決断以上に無謀なことだ。ウクライナでのロシアの困難は、たとえプーティンの軍隊が最終的にピュロスのような勝利を収めたとしても、プーティンを今後はるかに慎重にさせる可能性が高いのではないだろうか?

第三に、プーティンが侵攻を決意した大きな理由が、ウクライナが西側の軌道に乗り、いつの日かNATOに加盟するということを阻止するためだったとすれば、その後の和平協定でその可能性が封じられれば、プーティンは満足するかもしれない。国家はしばしば、貪欲さ(greed)よりも恐怖(fear)から戦争に踏み切るものであり、ロシアが持つ安全保障上の恐怖が弱まれば、ヨーロッパ地域の他国を狙うインセンティヴ(誘因)もおそらく低下するだろう。もちろん、NATO加盟諸国はこの可能性を当然と考えるべきではないが、プーティンの狙いに際限がないという仮定と同程度には、説得力を持つ話だ。

ヨーロッパの専門家たちの一部は、ロシアのウクライナ侵攻に、NATOの拡大は関係ないと主張し、プーティンが侵略したのは、ウクライナ人とロシア人は文化的・歴史的に深いルーツを共有しており、形式的には統一されていなくても、政治的には同盟を結ばなければならないと考えているからだと主張している。この見解では、NATOの拡大は開戦の決断とは無関係であり、古き良きロシアの文化的帝国主義(cultural imperialism)の一例に過ぎない。しかし、もしそうだとすれば、プーティンの思考においてウクライナは特別な存在であり、プーティンが侵攻した理由(そして侵攻が容易だと考えた理由)は他の国には当てはまらないということになる。興味深いことに、この結論は、2008年にウィリアム・バーンズ駐ロシア米大使(当時)がワシントンに警告した「ウクライナのNATO加盟は(プーティンだけでなく)ロシアのエリートにとって最も明白なレッドラインだ」という指摘と一致している。ロシアはそれ以前のNATO拡大についてはしぶしぶ容認していたが、ウクライナはまったく異なるカテゴリーだった。プーティンの「ロシア人とウクライナ人の歴史的一体性(historical unity of Russians and Ukrainians)」についての錯綜した主張をどう考えるかにしても、プーティンはフィンランドやスウェーデンやポーランドや他の誰をも同じようには見ていない。バルト三国におけるロシア語を話す少数民族の地位は、その後のロシアの干渉の口実になるかもしれないが、プーティンは、国民のほとんどがロシア人ではなく、再統合されることを断固として反対して、ロシアを敵視している国々をめぐって、NATOと直接武力で衝突する危険を冒すだろうか?

私が指摘したいのは、プーティンがロシア人とウクライナ人を「ひとつの民族(one people)」だと考えているから侵略したと考えるのであれば、プーティンの野望はこの特殊なケースに限定されると結論づけるのが合理的だということになる。

最後に、プーティンは完全敗北させなければ新たな戦争を仕掛ける、容赦のない連続侵略者だという主張は、戦争を終結させ、ウクライナのさらなる被害を免れる努力を妨げている。プーティンが新たな戦争を始めるのを防ぐには、完全な敗北しかないと考えるのであれば、ウクライナが全ての領土を取り戻すまで現在の戦闘を続けなければならないということになる。私はウクライナが領土を回復して欲しいと考えているが、西側欧米諸国の追加支援があったとしても、その可能性はますます低くなっているようだ。昨夏のウクライナの反転攻勢(Ukraine’s counteroffensive last summer)が成功すると誤って予測した、考えの足りない楽観主義者たちは、その誤りを謝罪し、なぜ間違っていたのかを説明しただろうか?

繰り返す。私はプーティンが何をするか知っていると言っていない。また、ウクライナでの戦争が終われば、プーティンの意図は良性となり、ヨーロッパの現状を確実に維持するだろうと単純に考えるべきだとも思わない。私が反対しているのは、彼が何をするか正確に知っていると主張し、単なる推量(mere guesswork)に基づいて非現実的な目標を追求し続ける影響力のある声全てに対してだ。

ウクライナでの戦争がウクライナの完全勝利に満たないもので終わるのであれば、適切な対応とは、将来的に他の国がウクライナのような運命をたどる可能性を低くすることだ。プーティンが何をしでかすかは誰にも分からないのだから、NATOのヨーロッパ加盟諸国は防衛能力を高め、明らかな脆弱性(vulnerabilities)について是正すべきだ。しかし同時に、アメリカとNATOの同盟諸国は、ロシアの正当な安全保障上の懸念(全ての国がそうであるように、ロシアにも実際に懸念はある)を認め、それを和らげるために何ができるかを検討すべきである。そのような努力は、ロシアが行ったことに対して「代償を払わせる(make Russia pay)」という願望が残っていることを考えれば、物議を醸すだろうし、こんなことになるだろう。しかし、賢明な国家運営とは将来を見据えたものであり、将来の戦争を防ぐことが優先されるべきだ。そのためには、信頼できる抑止力と信頼できる保証を組み合わせる必要がある。そうすれば、プーティンやその後継者たちが持つ、武力行使を考える必要性も、武力行使をすればロシアが有利になるという確信も減るだろう。

※スティーヴン・M・ウォルト:『フォーリン・ポリシー』誌コラムニスト、ハーヴァード大学ロバート・アンド・レニー・ベルファー記念国際関係論教授。ツイッターアカウント:@stephenwalt

(貼り付け終わり)

(終わり)
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