古村治彦(ふるむらはるひこ)の政治情報紹介・分析ブログ

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タグ:経済戦争

 古村治彦です。

 2023年12月27日に最新刊『バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる』(徳間書店)が発売になりました。米中関係についても書いておりますので、是非手に取ってお読みください。よろしくお願いいたします。

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

 米中貿易戦争はドナルド・トランプ前政権から始まった。制裁的な関税をかける競争を行ったが、こうした状況はジョー・バイデン政権でも変更がない。バイデン政権は対中強硬姿勢という点ではトランプ前政権を踏襲しているということになる。

アメリカ連邦議会は、米中経済安全保障評価委員会という委員会を設置し、中国の経済や貿易に関する評価を依頼したそうだ。そして、委員会は勧告書を発表し、更なる制裁的な対応を行うように勧告している。アメリカ経済は中国経済に依存し、結果として中国をここまで大きくした。そして今頃になって、中国経済や貿易の慣習はおかしいとして、制裁を加えようとしている。

 一方、中国はアメリカ依存からの脱却を目指している。中国は基本的に、アメリカにとっての「工場」として機能してきたが、重要な部品は中国国内で開発できず、「組み立て工場」の地位に甘んじてきた。それでは先はないということを分かっていた。そこで、重要な部品の研究開発を2010年代から始め、その成果が出つつある。そのことを最新刊『バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる』(徳間書店)で書いた。是非お読みいただきたい。

 アメリカは逆に国内での工業生産を復活させようとしているが、それはうまくいっていない。アウトソーシングしつくしたアメリカ国内に工業生産を復活させる力は残っていない。ウクライナ戦争において、アメリカは大量の武器や装備をウクライナに支援してきたが、そのために、アメリカ軍自体が武器や装備不足に落ちっているが、その回復の見込みは立っていない。厳しい状況だ。

 アメリカは中国に依存すべきではなかった、「アメリカと経済的に接近すれば中国は変化する」という理由付けは間違っていたということになるが、それは今更の話である。それではアメリカはどうすべきなのかということで、アメリカは解決策を見いだせないでいる。中国が一枚上手だったのである。

(貼り付けはじめ)

米中貿易戦争はヒートアップする可能性が高い(U.S.-China Trade War Could Heat Up

-米連邦議会委員会はバイデンに対して中国との貿易関係を再考するように望んでいる。

ジャック・ディッチ筆

2022年11月15日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2022/11/15/u-s-china-trade-war-wto-sanctions-xi-jinping-biden-trump/?tpcc=recirc_latest062921

米連邦議会が委任した委員会は、バイデン政権に対し、中国が略奪的な貿易慣行に従事しているかどうかを評価するよう求めており、この評価が、最終的に、アメリカが中国との通常貿易関係を永久に停止させることにつながる可能性がある。

もしこの勧告の内容が採用されれば、米中経済安全保障評価委員会(U.S.-China Economic and Security Review Commission)が火曜日に発表した連邦議会への年次報告書は、20年にわたる貿易関係をひっくり返し、2つの超大国の間の既に乱れた力学をさらに揺るがすことになるだろう。中国が世界貿易機関(World Trade OrganizationWTO)への加盟を推進する中、2000年に連邦議会が承認したいわゆる恒久的な通常貿易関係を撤回することで、アメリカは中国の輸入品に対する関税を更に引き上げるための舞台を整えることができる。トランプ政権は2019年、様々な中国製品に25%の関税をかけた。

超党派の委員会は、基本的にトランプ時代の中国との経済対決をさらに推奨しており、ワシントンの多くの人々は、ここ数十年のアメリカ国内の製造業の雇用喪失と、アメリカの経済競争力の浸食の原因を中国に求めているのだ。

米中経済安全保障評価委員会委員長で、トランプ政権時代の国務省元高官であるアレックス・ウォンは次のように語った。「これはバイデン政権にも連邦議会にも権限を与え、連邦議会にも、うまくいかない、アメリカの利益に役立たない貿易関係を再調整するためのものだ。この委員会は、米中関係に影響を与えるだろうか? もちろんそうなるだろう。しかし、そこが重要だ。私たちは、対中貿易関係を評価し、適切に再均衡するために、連邦議会とバイデン政権がこの仕組みを検討することを推奨している」。

アメリカはWTOの最恵国待遇貿易規則(WTO’s most-favored-nation trade rules)を広く適用しており、この規則は加盟諸国に対し、他のすべての加盟国に同じ条件を適用するよう求めている。ヨーロッパ連合(EU)やアメリカ・メキシコ・カナダ協定など、自由貿易協定には例外もあるが、アメリカはキューバと北朝鮮を除くほとんどの国に自由な地位を与えている。WTOの規則によれば、アメリカは国家安全保障の例外として、中国の最恵国待遇を取り消すことができる。これはまた、中国が20年来の貿易関係において、その取り決めを守っていないことを認めることにもなる。具体的には、委員会は中国がWTOの誓約に違反し、産業補助金(industrial subsidies)を制定し、知的財産を盗み、保護主義的な政策を実施し、アメリカ企業に損害を与えていることを指摘した。

特恵貿易ステータスの取り消しが決定されれば、連邦議会は貿易関係の再評価を迫られることになる。これまでのところ、バイデン政権はドナルド・トランプ前大統領が最初に導入し、中国政府からの数十億ドルの報復関税につながった一連の関税をほぼ維持している。中国の略奪的な貿易慣行を見直す動きは、この問題への対応が遅れているアメリカの官僚機構を混乱させる可能性もある。『フォーリン・ポリシー』誌は9月、キャサリン・タイ米通商代表部が中国からの輸入品に関する4年間にわたる見直しを来年まとめる予定だと報じた。

しかし、たとえバイデン政権と連邦議会が、ホワイトハウス部局の設置からアメリカのサプライチェーンの強化、対中エネルギー封鎖の実現可能性まで、すべてを網羅する報告書の、39点の広範な勧告の実施を決定しなかったとしても、この報告書は、ワシントンが政治的通路の両側で中国に対してよりタカ派的なスタンスを採用することに拍車をかけている。

2022年10月、ジェイク・サリヴァン国家安全保障問題担当大統領補佐官は、バイデン政権の国家安全保障戦略を発表したジョージタウン大学でのスピーチで、冷戦後の時代は「最終的に終わった(definitively over)」と宣言した。中国のWTO加盟後、議会法に基づいて設置された委員会は、北京の貿易慣行に対して、より厳しい姿勢を取り、中国が組織的に自国通貨を過小評価し、不公正な貿易慣行に関与することでアメリカの貿易赤字を膨らませてきたという主張を20年近く続けてきた。

一方、中国もアメリカへの経済依存(economic dependence)からの脱却に向けた動きを見せている。 2022年9月の第20回中国共産党大会で歴史的な3期目の任期を与えられた中国の指導者である習近平は、アメリカおよび西側諸国からの輸​​入、特に重要技術に対する中国の依存度を減らすことを目的とした「二重循環(dual circulation)」戦略を推し進めてきた。バイデン政権は、ウクライナへの本格的な侵攻に対抗して、ロシア国内のコンピューターチップを減少させようとしており、半導体生産をアメリカに戻すことを目指すCHIPS法など、最近のアメリカの法律は中国のハイテク分野を脅かしている。報告書はまた、台湾に対する中国の軍事行動に対抗するための制裁やその他の経済措置を検討する常設のアメリカ政府委員会の設置を議会に求めている。

WTOが中国の貿易慣行を取り締まることができない中で、トランプ政権がWTOを意地でも中途半端にしていることもあり、米中経済安全保障評価委員会はワシントンの政策立案者たちに立ち上がるよう働きかけている。

ウォンは、「1999年の投票にさかのぼれば、それは本質的に、このステータスを付与することが私たちの貿易関係を繁栄させるだけでなく、中国との関係全般の改善につながり、中国を国際システムに引き入れ、より大きな安定を生み出すという、アメリカ側の情報に基づいた賭けだった。そして20年後、私たちの賭けがうまくいったのか、それともそれによって私たちが傷ついたのかが強く問われている」と述べている。

※ジャック・ディッチ:『』誌米国防総省・安全保障分野担当記者。ツイッターアカウント:@JackDetsch
(貼り付け終わり)
(終わり)

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ビッグテック5社を解体せよ

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める
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 古村治彦です。

 米中両国の貿易戦争という言葉は、ドナルド・トランプ大統領時代から使われている。お互いの輸出入に対して高関税をかけるということをやり合った。今回ご紹介するのは、米中経済戦争(economic war)についての記事だ。経済戦争とは、多くの産業分野で、敵対国に勝つ、市場のシェアを奪い、技術で優位に立つために戦いを仕掛けるということだ。現在、米中間では経済戦争が起きており、中国側が有利だというのが下の記事の筆者の分析だ。中国は経済戦争に勝つために、産業政策(Industrial Policy)を実施し、成功している。産業政策の本家本元は日本である。産業政策を世に知らしめたのは故チャルマーズ・ジョンソンの著書『通産省と日本の奇跡』である。日本はアメリカの属国であったため、日米間の戦いは、最初からアメリカの勝利と決まっていたが、中国は大胆に勝負を仕掛け、状況を有利に動かしている。

以下の記事で重要なのは、次の記述だ。

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中国はアメリカの技術や産業能力に対して大規模な正面攻撃を仕掛けてきている。2006年に発表された「科学技術発展のための国家中・長期計画(National Medium- and Long-Term Plan for the Development of Science and Technology)」は、この対立における最初の攻撃と考えることができ、2015年には習近平の「メイド・イン・チャイナ2025(Made in China 2025、中国製造2025)」戦略がそれに続く。どちらも中国が自給自足(self-sufficiency)を目指す重要技術を特定し、主要産業における外国企業の市場参入制限、広範な知的財産の盗用、技術移転の強制、中国企業への巨額の補助金などを背景としている。後者の文書では、主要産業における中国の市場占有率の数値目標も追加された。
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 しかし、通信機器、高速鉄道、建設機械、航空宇宙、半導体、バイオテクノロジー、クリーンエネルギー、自動車、コンピュータ、人工知能など、中国の国内先端産業の育成に用いられる巨額の補助金やその他の不公正な慣行は、比較優位とは無関係だ。自国企業を強化し、外国企業の競争力を削ぐという、産業分野における破壊的侵略(industrial predation)による支配欲が反映されているのである。1995年から2018年にかけて、中国とアメリカが先進産業で占める世界生産のそれぞれのシェアの変化には強い負の相関があるのはこのためだ。言い換えると、アメリカがシェアを失った産業で、中国がシェアを獲得したということだ。
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アメリカの産業戦略が首尾一貫していない主な理由の一つは、戦略を策定し、全ての政府機関がそれに沿うようにすることを仕事とする主体が存在しないことである。このような戦略は、中央集権化され(centralized)、大統領の権限に裏打ちされたものでなければならない。そして適切な資金を提供する必要がある。共和制の擁護者が軍事防衛予算の増額を求めるのは当然だが、アメリカは経済防衛予算の増額も必要としている。

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 簡単に言うならば、中国は特定の産業分野に資源、資金、人材を集中させるための産業政策を実行した。その分野とは、「通信機器、高速鉄道、建設機械、航空宇宙、半導体、バイオテクノロジー、クリーンエネルギー、自動車、コンピュータ、人工知能」といった最先端産業である。これらの産業分野でアメリカに勝つために、官民協調、一丸となって戦う、そのために政府は目標を設定し、それに誘導するために関税や補助金などを利用するという、「産業政策」を実施している。そして、それが成功しつつある。

中国は、電気自動車やスマートフォンの分野で国産化に成功し、市場シェアを拡大させている。「国産化」が重要なのは、重要な部品を外国に頼っている場合、経済制裁などが行われると、その製品が作れなくなるが、国産化はその危険を回避できるということになる。米中間に当てはめると、スマートフォンの重要なチップをアメリカ製に頼っていては、中国は経済制裁などの不安を抱えたままになる。また、アメリカはチップの供給を止めることができるという優位な立場に立つ。しかし、中国が国産化に成功すれば、アメリカはその優位を失う。これは経済戦争において重要な要素となる。

バイデン政権は遅ればせながら、産業政策を実施しようとしている。しかし、状況を好転させるのはなかなかに難しい。

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米中経済戦争を如何にして勝つか(How to Win the U.S.-China Economic War

-最初のステップは経済戦争をきちんと定義することだ

ロバート・D・アトキンソン筆

2022年11月8日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2022/11/08/us-china-economic-war-trade-industry-innovation-production-competition-biden/?tpcc=recirc062921

中国が単なる軍事的敵対者ではなく、経済的敵対者であることが、アメリカに明らかになりつつある。中国が先端産業において得た経済的利益の多くは、アメリカが失ったものであり、その逆もまた然りで、両国は技術革新と生産能力の両方において優位性を求めて争っている。この傾向は今後も続くと思われる。中国の習近平国家主席は昨年(2021年)、「技術革新が世界の主戦場となり、技術優位の競争はかつてないほど激しくなるだろう」と述べ、このことを認めている。

経済戦争(economic war)は、経済競争(economic competition)とは別物だ。例えば、カナダとアメリカは経済的に競争しているが、両国とも貿易は互いに有益な比較優位(comparative advantage)に基づいて行われることを理解している。これとは対照的に、中国はアメリカの技術や産業能力に対して大規模な正面攻撃を仕掛けてきている。2006年に発表された「科学技術発展のための国家中・長期計画(National Medium- and Long-Term Plan for the Development of Science and Technology)」は、この対立における最初の攻撃と考えることができ、2015年には習近平の「メイド・イン・チャイナ2025(Made in China 2025、中国製造2025)」戦略がそれに続く。どちらも中国が自給自足(self-sufficiency)を目指す重要技術を特定し、主要産業における外国企業の市場参入制限、広範な知的財産の盗用、技術移転の強制、中国企業への巨額の補助金などを背景としている。後者の文書では、主要産業における中国の市場占有率の数値目標も追加された。

経済戦争は前例がないということではない。1900年から1945年まで、ドイツは様々な不公正な貿易慣行を用いて世界的に経済的、政治的な力を獲得し、最終的には軍事力のために利用した。しかし、北京は経済戦争を別の次元に引き上げた。中国の長年にわたる、そして増大する攻撃は、競争相手を潰し、アメリカを経済的な属国(economic vassal state)とすることを目的としている。

ドナルド・トランプ前米大統領の貿易戦争は、アメリカの産業・技術力に対する中国の長年の攻撃に対する反応であった(不十分な表現ではあったが)。当時、ワシントンの専門家たちの多くは、アメリカが本格的な経済戦争に突入したという認識ではなく、トランプの保護主義的な傾向によるものと考えていた。中国の経済侵略の意図と程度が広く理解されるようになったのは、ここ数年のことだ。ジョー・バイデン米大統領が中国への先端チップや半導体装置の輸出を新たに禁止したのは、バイデンと政権内の一部の人々がそれに気づいた証拠だ。

バイデンの禁止令にもかかわらず、アメリカは中国との長期的な経済戦争への備えがほとんどないままである。北京の技術革新重商主義施策(innovation-mercantilist practices)は、世界貿易機関(World Trade OrganizationWTO)が違法と見なす戦術を用いて、先端産業の生産高の大きなシェアを獲得しようとするもので、他国の産業政策(industrial policies)をはるかに超えるものである。それを無視して、中国が軌道修正すると信じたり、アメリカの多くの政策立案者たちのように、中国は民主的で自由な市場でない、あるいは高齢化が進んでいるため成功できないと思い込んだりするのは、砂の中に頭を突っ込んで最善の結果を望むのと同じことだ。賭け金は大きい。戦争に勝てば、国内の賃金や競争力を高め、経済や国家の安全保障を向上させることができる。しかし、負ければその反対となる。

アメリカの国家安全保障分野のエリートたちは、軍事戦争に対する計画を真剣に捉えている。戦争ゲームの演習や米国防総省の支援に多大な資源を費やしている。戦闘を研究するために、数多くの戦争専門大学を設立している。戦争のあらゆる側面について助言するために、数え切れないほどのコンサルタントたちを雇っている。過去の紛争から学ぶために歴史学者を雇う。そして、連邦政府内の各機関と連携する。このような動きをしている。

このようなシステムは、経済戦争にはほとんど存在しない。計画もない。評価もない。戦略もない。経済安全保障システムもない。せいぜい、個々のプログラムやイニシアチヴがあるだけで、政府全体の戦略やシステムを構成することはできない。台湾への侵攻がないこともあり、ワシントンを眠りから覚ますような、中国の大規模な経済攻撃はないだろうと人々は考えている。

ワシントンの政界関係者のほとんどは、少なくともまだ、北京との経済関係を勝ち負けで考えてはいない。政策立案者たちは、外国の敵がアメリカの国家安全保障上の重要な利益を攻撃する可能性があることは理解しているが、アメリカの経済上の重要な利益に関しても同じことが言えるということはあまり認めたくないようだ。実際、経済アドバイザーのほとんどは、貿易が相互に利益をもたらすという比較優位(comparative advantage)の概念をいまだに提唱している。例えば、アメリカは旅客機の製造が得意で、中国は5G機器の製造に長けているといった具合だ。

しかし、通信機器、高速鉄道、建設機械、航空宇宙、半導体、バイオテクノロジー、クリーンエネルギー、自動車、コンピュータ、人工知能など、中国の国内先端産業の育成に用いられる巨額の補助金やその他の不公正な慣行は、比較優位とは無関係だ。自国企業を強化し、外国企業の競争力を削ぐという、産業分野における破壊的侵略(industrial predation)による支配欲が反映されているのである。1995年から2018年にかけて、中国とアメリカが先進産業で占める世界生産のそれぞれのシェアの変化には強い負の相関があるのはこのためだ。言い換えると、アメリカがシェアを失った産業で、中国がシェアを獲得したということだ。

ワシントンはまた、政府の援助や戦略的指示がなくても、企業が自らの利益のために行動すれば経済厚生(economic welfare)が最大化するという自由市場の教義に固執している。しかし、経済学者アダム・スミスやフリードリヒ・ハイエクの最も熱心な信奉者でさえも、市場の力だけでは国家に必要な軍事力を生み出すことはできないと信じている。だからこそ政府が介入し、計画を立てなければならない。しかし、ワシントンの専門家の多くは、その論理を経済戦争の能力にまで広げようとしない。

確かに、経済戦争(economic war)と軍事戦争(military war)は異なる。経済戦争では直接的な死傷者はほとんど出ないが、戦闘ははるかに長期にわたって行われる。しかし、どちらの戦争も最終的には国家の自律的な存続能力(the ability of the state to exist autonomously)を脅かすことになる。

必要な戦争に対する戦略を持たないことより悪いのは、まったく戦わないことだ。ワシントンは、北京がほとんどの先端産業で世界的な主導権を獲得するのを阻止し、中国の経済的なアメリカ(および緊密な同盟諸国)への依存度を大幅に高めること(その逆ではなく)を確実にするという包括的な目標を掲げて、経済戦争を戦うことに関与する必要がある。

問題は、そのような戦略をどのように策定し、運用するかである。これまでのところ、米連邦政府は真のアメリカの経済競争力戦略を生み出すことに失敗している。アメリカの歴代政権がこのテーマについて何かを発表してきたが、それは大抵の場合、実績や有利な政策、あるいは将来の政策意図のリストでしかなかった。最近ホワイトハウスが打ち出したバイオエコノミー構想は、アメリカのバイオテクノロジー産業をいかに成長させるかを提案したものだが、競争力のある産業分析に基づいたものではなかった。また、このプログラムは、ホワイトハウス科学技術政策局が主導する、内容が狭いものだ。効果的なバイオ産業戦略、特に中国に対する戦略には、貿易政策、税制政策、規制政策、その他様々な要素を盛り込む必要がある。

アメリカの産業戦略が首尾一貫していない主な理由の一つは、戦略を策定し、全ての政府機関がそれに沿うようにすることを仕事とする主体が存在しないことである。このような戦略は、中央集権化され(centralized)、大統領の権限に裏打ちされたものでなければならない。そして適切な資金を提供する必要がある。共和制の擁護者が軍事防衛予算の増額を求めるのは当然だが、アメリカは経済防衛予算の増額も必要としている。

ワシントンが、経済戦争戦略が必要だと判断した場合、誰が経済戦争戦略を主導すべきかを最初に決めなければならない。軍事戦略を主導するのは米国防総省である。なぜなら米国防総省は軍事戦争を戦うための機関だからだ。しかし、経済戦争は多面的であるため、米商務省が単独で経済安全保障戦略を主導することはできない。

この戦線における米政府機関間の効果的な連携は、自動的に行われるとは期待できない。中国との経済戦争に勝利することがアメリカの国際経済政策の第一目標であるというコンセンサスはまだ得られておらず、様々な機関がそれぞれの狭い範囲での、時には相反する利益を推進するために行動することが多い。例えば、財務省や国務省が対中強硬策に反対し、商務省や米国防総省がそれを支持するというのはよくあることで、通常は膠着状態(stalemate)に陥る。財務省と国務省が国際協調と世界金融の調和を求めるのに対し、商務省と米国防総省は中国を弱体化させ、アメリカ企業を後押ししたいと考えているのだ。

そのため、連邦議会は、敵対者、特に中国との経済競争を管理するために、ホワイトハウス国家経済安全保障会議(White House National Economic Security Council)を設立すべきである。これは、「人工知能に関する国家安全保障委員会(National Security Commission on Artificial Intelligence)」が提案し、超党派の連邦議員グループによって連邦議会に提出された、「技術競争力評議会(Technology Competitiveness Council)」創設のアイデアと似ている。技術競争力評議会の役割は、アメリカがどのようにして中国に経済的に勝つことができるかに関する政府全体の戦略を確立し、調整し、アメリカの主要な活動全てがこの目標の達成に向けて連携できるようにすることになる。連邦議会はまた、米中経済戦争における連邦議会自身の様々な取り組みに一貫性を与えるために、「統合経済競争力委員会(Joint Economic Competitiveness Committee)」を設立すべきである。連邦議会は現在、様々な委員会や小委員会が存在しているが、これらはまったく連携していない。

一旦、政策立案者たちが、アメリカが中国と経済戦争状態にあることを受け入れ、アメリカの取り組みを指導する組織を設立することになれば、次の問題は、「それでは、戦争に勝つために一体何をすべきか」ということになる。

いかなる経済戦争戦略も、軍事戦争戦略と同様に、2つの重要な課題を包含しなければならない。1つは、敵よりも速く行動すること(running faster than the adversary)だ。この場合、主要産業におけるアメリカの競争力を高める国内政策を通じて、迅速に行動するということになる。もう1つは、アメリカの主要産業における競争力を高めることにより、敵である中国の速度を低下させることである。そのために、アメリカから得ている経済投入と、不公平な貿易慣行から利益を得ている中国企業によるアメリカ市場へのアクセスを妨げることが必要だ。

これは、税金、貿易、独占禁止法、外交と海外援助、諜報、科学技術、製造など、多くの分野で政策を見直し、修正することを意味する。言い換えれば、中国との経済戦争に勝つためには、アメリカの経済政策と外交政策のほぼ全ての部分が連携する必要があるということだ。確かに、各政府機関はそれぞれの優先政策を持っている。それらを調整するのが大統領の仕事ということになる。

例えば、アメリカの対外援助は、受け入れ国が中国側につくかどうかという点と、明らかに関係しているだろう。財務省は人民元に対するドルの価値を下げるよう促すだろう。税制政策は、貿易部門、特に先進産業の減税に重点を置くことになる。通商政策ではアメリカの先進産業の公平な扱いが優先されるだろう。独占禁止法規制当局は大企業を解体するという取り組みを放棄するだろう。科学政策は応用研究に焦点を当てることになるだろう。国務省は、中国の経済侵略に対する行動を調整するために、私が以前から主張してきた貿易のためのNATOの組織化を主導するだろう。そして諜報機関と国内法執行機関は商業諜報活動と対諜報活動を優先するだろう。

そのためには、ワシントンは人材を必要としている。国防、情報、外交政策に携わる公務員や政治任用者(political appointees)のほとんどは、これらの分野を専門とする一流大学を卒業している。しかし、現在アメリカの大学で経済戦争について教えているところはない。ワシントンは、この新興分野に特化した大学や職業訓練プログラムに資金を提供する必要がある。また、超党派の連邦上院議員グループが提案した「グローバル競争分析室(Office of Global Competition Analysis)」のような、米中両国の先端産業の強み、弱み、機会、脅威を評価する分析能力を大幅に向上させる必要がある。

最後に、政治的分裂(political divisions)を克服しなければならない。これまで連邦政府が経済戦争のために動員してきた範囲は限られているが、二大政党が優先してきた武器は異なっている。民主党は財政支出を行い、共和党は減税と規制緩和を行っている。もしアメリカの軍事政策が、一方の政党は海軍を、もう一方の政党は空軍を支持するというように二分されていたとしたらどうだろう。しかし、経済戦争に関しては、それがアメリカの現状なのだ。共和党と民主党がそれぞれの違いを脇に置き、同じ目標を抱くことで、アメリカを中国より優位に立たせることになるのだ。

※ロバート・D・アトキンソン:情報技術・革新財団創設者兼会長、ジョージタウン大学エドマンド・A・ウォルシュ記念外交学部非常勤教授。クリントン、ジョージ・W・ブッシュ、オバマ、トランプ、バイデン各政権で助言役を務め、最新刊『技術革新経済:国際的な優位のための戦い(Innovation Economics: The Race for Global Advantage)』を含む4冊の著書がある。ツイッターアカウント:@RobAtkinsonITIF

(貼り付け終わり)

(終わり)

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