古村治彦(ふるむらはるひこ)の政治情報紹介・分析ブログ

SNSI研究員・愛知大学国際問題研究所客員研究員の古村治彦(ふるむらはるひこ)のブログです。翻訳と評論の分野で活動しています。日常、考えたことを文章にして発表していきたいと思います。古村治彦の経歴などについては、お手数ですが、twitter accountかamazonの著者ページをご覧ください 連絡先は、harryfurumura@gmail.com です。twitter accountは、@Harryfurumura です。よろしくお願いします。

タグ:結の党






アメリカ政治の秘密
古村 治彦
PHP研究所
2012-05-12


野望の中国近現代史
オーヴィル・シェル
ビジネス社
2014-05-23

 

 古村治彦です。

 

 このところ、アメリカ政治物の翻訳が忙しく、国内政局に関して見落としていたり、考えたことをかけなかったりでフラストレーションが溜まっています。

 

 今回は、維新の党(Japan Innovation Party)について書いてみたいと思います。維新の党は2014年9月21日、日本維新の会と結の党が合併し、誕生しました。国会議員数50名以上を誇る政党です。維新という名前が付き、共同代表に橋下徹大阪市長、幹事長には松井一郎大阪府知事、代表代行に松野頼久氏が就任したことで、日本維新の会が優位な合併だと思われています。

 

 橋下氏は大阪維新の会と、石原慎太郎氏が率いていた太陽の党の合併で日本維新の会を設立しました。しかし、結の党との統一会派づくりから合併に関して、意見を異にし、石原氏らが次世代の党を結党して、党を出ていきました。そして、江田氏らを迎え入れました。

 

 思えば、橋下氏は、国政政治家に利用され続けている、そんな感じです。石原氏とヴェテラン政治家は太陽の党を作りましたが、選挙互助会にもならないような状況で、どうしようもない時に、うまく橋下氏を抱き込んで、日本維新の会を設立し、うまく選挙を乗り越え、ゾンビのように復活し、利用し終わったとばかりに、出ていきました。

 

 江田氏ら結の党の面々も同じように、ある種の「維新」ブランドを利用しようとしているのは、確かです。合併は日本維新の会優位と見えますが、共同代表には江田憲司氏、総務会長には片山虎之助氏、政調会長には、柿沢未途氏がそれぞれ就任しました。実際に党の政策を決定していく実務権力は結の党側が押さえています。松野氏は日本維新の会途中参加組ですし、そこまで日本維新の会大阪ウィングに忠誠心があると思えません。「利用してやろう」という感じなのだと思います。

 

 片山虎之助氏は、太陽の党から日本維新の会に合流し、次世代の党には行かずに、維新の党に入りました。ですから結の党系ではないように思われますが、江田氏とは岡山県出身、東大法学部の先輩後輩、キャリア官僚の先輩後輩という共通点があります。また、江田氏は故橋本龍太郎元首相の秘書官を務めましたが、片山氏へ政界進出を勧めたのが橋本氏であり、片山氏は長く橋本派(旧竹下派)に所属しました。こうして見ると、片山氏は江田氏に近い人物です。

 

 維新の党は、日本維新の党の時もあった、大阪ウィングと東京ウィング(国会議員団)に分かれ、主導権がどちらにあるのか分からない状況から、やがて結の党側に移っていくことが考えられます。

 

 民主党代表の海江田万里氏と江田氏の階段で、海江田氏が「国会のことは江田氏と話していく」と語ったことに触れ、橋下氏が「江田氏には殴り返して欲しい」と言ったという記事が出ました。これは、海江田氏の失言ではありますが、中央政界では、橋下氏はもうそれくらい気を遣わなくてもよい存在になってしまったということを意味しています。また、昔の橋下氏であれば「殴り返して欲しい」なんてまどろっこしいことなど言わなかったでしょう。それほどに存在感と影響力を失っているのです。

 

 江田氏は共同代表なのですから、国会議員50名を実際に率いて国会にいる訳です。その存在感は大きくなっていくでしょう。そして、民主党の海江田代表と生活の党野沢一郎代表らと手を携えて、野党再建に動いていくでしょう。私が拙著『ハーヴァード大学の秘密』(PHP研究所、2014年)で書きましたように、江田憲司氏はハーヴァード大学での研究員としての体験があり、アメリカには幅広い人脈があります。そして、細野豪志、松野頼久と共に野党再建に向けたキーマンです。これから維新の党に注目していきたいと思います。

 そして、橋下氏が如何に国政政治家とアメリカに利用されて、政治家としての力を抽出させられて捨てられていくのかという姿を見ていきたいと思います。 

 

(新聞記事転載貼り付けはじめ)

 

●「維新の党:結党大会…53人スタート、野党再編目指す」

 

毎日新聞 20140921日 2153分(最終更新 0921日 2209分)

http://mainichi.jp/select/news/20140922k0000m010064000c.html

 

 日本維新の会と結いの党は21日、新党「維新の党」の結党大会を東京都内のホテルで開いた。維新の橋下徹代表(大阪市長)と結いの江田憲司代表がともに共同代表に就任。衆院42人、参院11人の国会議員計53人が参加し、民主党に次ぐ野党第2党となる。党綱領で「政権担当可能な一大勢力の形成」をうたい、民主党やみんなの党の一部を巻き込んだ野党再編を目指す。【葛西大博、熊谷豪】

 

 橋下氏は結党大会で「安倍政権に緊張感を持ってもらうには、きちんとした野党をつくる必要がある」と強調。江田氏も「民主党、みんなの党、どこの政党でも基本政策の一致を前提にどんどん糾合していかなければならない」と述べた。

 

 新党の主要幹部は日本維新側が占め、幹事長に同党幹事長の松井一郎・大阪府知事が就いたほか、代表代行に松野頼久氏、総務会長には片山虎之助氏が就いた。

 

 結い側からは、柿沢未途氏を政調会長に起用。みんなの党に離党届を提出した大熊利昭衆院議員の入党も承認され、計53人でのスタートになる。

 

 結党大会で発表した党綱領では、統治機構改革で「この国のかたち」を変える▽「保守VSリベラル」を超えて改革勢力を結集する−−などと明記。道州制導入など65項目の基本政策を発表したが、消費税率10%への引き上げや、原発再稼働の是非に関する意見集約は間に合わなかった。

 

 法的には結いを解散し、日本維新を残す形を取る。新党の名称など総務相への届け出は22日に行う。

 

●「「海江田氏に殴られたから、殴り返して」橋下氏」

 

20141010 0729

http://www.yomiuri.co.jp/politics/20141010-OYT1T50027.html

 

 維新の党の橋下共同代表は9日、民主、維新両党の共闘をめぐり、民主党の海江田代表から「大阪軽視」の侮辱的な発言を受けたとして、大阪市役所で記者団に怒りをあらわにした。

 

 8日夜の維新の党執行役員会では、橋下氏が江田共同代表に「海江田氏に大阪サイドは殴られたのだから、殴り返してほしい」と伝えたことも明らかにした。

 

 橋下氏が問題視したのは、海江田氏の「国会のことは江田氏と話をすればいい」という記者会見での発言。橋下氏は「公党の代表と幹事長をないがしろにする発言。海江田氏が政治というものを心得ているのか疑問だ」とまくし立てた。

 

 橋下氏は、次期衆院選での民主党との選挙協力に否定的で、国会議員主導で進む「民維共闘」をけん制したとの見方もある。

 

(新聞記事転載貼り付け終わり)








 

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アメリカ政治の秘密
古村 治彦
PHP研究所
2012-05-12



 古村治彦です。

 

 2014年に入ってからの日本政治における大きなニュースの一つが、みんなの党代表である渡辺喜美代議士(栃木三区、当選6回)のDHC社会長からの8億円の借り入れ問題です。この借りたお金がみんなの党の選挙資金として、政治資金として使われたのに、政治資金収支報告書に記載されていなかったということが問題視されています。最新のニュースでは、渡辺氏は、違法性はなく、国会議員やみんなの党の代表を辞任する考えはないと主張しています。

 

(新聞記事転載貼り付けはじめ)

 

●「「法的に問題なし」渡辺氏、説明文を役員会で配布 本人は欠席」

 

2014年4月1日 MSN産経ニュース

http://sankei.jp.msn.com/politics/news/140401/stt14040112470002-n1.htm

 

 化粧品販売会社会長からの8億円借入金問題を抱えるみんなの党の渡辺喜美代表は1日、定例の党役員会を体調不良を理由に欠席した。代わりに「あくまで個人的に借りたものだ」と従来の主張を繰り返す説明文を配布した。党幹部から代表辞任論が出る中、「法的には何の問題もない」とも記し、理解を求めた。

 

 渡辺氏は説明文で「借入分を含む私の個人財産から党にお貸しし、選挙費用を含む党の活動費用とした分は、党の収支報告書にきちんと出ている」として、党を経由することで一部を選挙費用に充てたことを認めた。残りは個人の政治活動や議員活動の費用で、「公職選挙法及び政治資金規正法に報告の制度はない」と違法性を否定した。具体的な使途については言及しなかった。

 

 一方、8億円の借入問題が会長による週刊誌での「告発」で発覚した経緯について、結いの党の江田憲司代表の名前を挙げ、野党再編を目指す勢力による「馴染みの週刊誌を利用した策略」と指摘し、徹底抗戦の姿勢を明確にした。

 

 

●「8億円、渡辺氏「法的問題ない」 党役員会に文書、続投意欲」

 

2014年4月1日 47ニュース

http://www.47news.jp/CN/201404/CN2014040101001673.html

 

 みんなの党の渡辺喜美代表は1日午前、国会内で開かれた党役員会を欠席し、その代わりに8億円借り入れ問題をめぐり「法的には何の問題もない」とする文書を提出し続投に意欲を示した。文書を託された浅尾慶一郎幹事長が各役員に配布し、欠席理由について「声が出ないため欠席すると電話で連絡があった」と述べた。

 

 渡辺氏は文書で、8億円を個人的な借金と重ねて説明。「借り入れ分を含む財産を個人の政治活動に支出しても報告の制度はない。法律違反のような報道は大変遺憾だ」と主張。「ここで負けたら国を動かすムーブメントはついえる。今後も党の主張を展開し政策の実現に努める」と表明した。

 

(新聞記事転載貼り付け終わり)

 

 渡辺氏は今回の事件について、みんなの党から分裂した、結の党の代表である江田憲司氏を名指しで批判し、また、日本維新の会に対しても批判的な厳を述べているということです。「野党再編に慎重な自分がいなくなれば、みんなの党も含めて野党再編が進むから、そういう動きを進めたい結の党や日本維新の会が仕掛けた謀略だ」というのが渡辺氏の主張です。

 

 事件の当事者である渡辺氏の感触はそれを尊重するとして、外部から見ているとそれとは違った考えもまた起こります。事件の当事者は以外と事件の全貌は見えないものです。そこで差し出がましいとは思いますが、私の考えをここで述べたいと思います。

 

 私は、渡辺氏は身内に刺されたのだろうと思います。身内というのは、みんなの党に残っている議員たちです。具体的に誰がということは分かりません。これは一種のクーデターだと思います。

 

 そして、それはどうして起きたかというと、安倍晋三首相がみんなの党に対して使った「責任野党」という言葉がヒントになると思います。渡辺氏は安倍晋三首相が前回首相を務めた時に、金融担当、規制改革担当の国務大臣を務めています。頑迷な官僚組織に立ち向かう改革者というイメージもあって、大変な人気でした。しかし、その後、離党しました。

 

 安倍晋三首相が再登板となった昨年以降、みんなの党の立場は、安倍晋三首相が「責任野党」という言葉で表現するものとなりました。審議に応じ、最後には自民党や内閣の意向に沿う形で賛成する、というのが彼らの立場でした。「閣外協力」に近い立場と言えるでしょう。

 

 しかし、この「責任野党」という言葉は曲者です。なぜなら、「責任」を果たしても何の「報酬」も得られないからです。公明党のように与党となれば、大臣や副大臣、大臣政務官のポストや国会での委員会のポスト、予算における自党の主張の反映といったことが期待できます。

 

 しかし、「責任」だけは背負わされて、野党の立場ということになると、そういった旨味はありません。実態は与党と同じなのに、建前は野党となれば、与党としての旨味はなく、野党としては、反自民勢力の受け皿になることもできません。言ってみれば、「埋没」するしかないのです。

 

 それでは、みんなの党が自民党と連立を組めるのか、最終的には自民党と合流できるのかということになると、その最大の障害は渡辺喜美氏ということになるでしょう。渡辺氏としては、自民党、特に安倍首相にすり寄っておこうということだったと思いますが、安倍氏や自民党側は、連立を組んでいる訳ではないのですから利用するだけのことです。

 

 私は、昨年(2013年)12月にみんなの党と結の党の分裂の時に、みんなの党に残った人々は、おそらく「連立与党入り」、もしくは「自民党との合流」を希望として持っていたのだろうと思います。しかし、渡辺氏が代表でいて世話になる限り、そうした希望がいつ叶うか分かりません。

 

 そこえ、身内からのクーデターが起きたのだと思います。これは私の建てた仮説ですから間違っているかもしれませんし、また当たっているかもしれません。こうした考えもできますよということで書きました。「信じるか、信じないか、貴方次第です」。

 

(終わり)



 

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