古村治彦です。
アメリカはイラン戦争でイスラエルという負債を抱え、ウクライナ戦争でウクライナという負債を抱え、実際には起きていない台湾有事に関して日本という負債を抱えている。アメリカはイスラエルに使嗾されたイラン戦争を戦い、ウクライナ戦争ではロシアを弱体化させるためにウクライナ支援を続け、台湾有事では日本を中国への嫌がらせのために使っている(日本全体が政治家と国民の大多数が馬鹿なので本気で武力衝突をしたがるようになって慌てている)。
イラン戦争ではイスラエルに唆されて、「アメリカ軍が出れば鎧袖一触、イランはすぐに降参して、体制転換ができる」「これが中東地域での最後の戦争となり、トランプ大統領は歴史に残る偉大な大統領になる」とおだてられ(「豚もおだてりゃ木に登る」という言葉通りに)、ほいほいとアメリカ軍を出してイランを攻撃して、人的、経済的に大きな被害を出した。イラン側はイスラエルやペルシア湾岸諸国のアメリカ軍基地に対して反撃を行い、一定の成果を上げた。さらに、ホルムズ海峡を封鎖してその力を示した。アメリカ軍はイランのホルムズ海峡封鎖を実力で阻止することができず、実力の欠如を露呈した。
ウクライナ戦争やイラン戦争という世界にとって深刻な、しかも重要な出来事に関して、中国は目立った動きを見せていない。しかし、国際関係や世界政治を注意深く見ている人たちにとっては中国の動きは明らかだ。それが漏れ伝わって、マスコミでも報道されることがある。アメリカとイランの間を取り持っているのは中国である。今年の5月にはアッバス・アラグチ外相が訪中し、記憶に新しいが5月中旬にはドナルド・トランプ大統領が訪中し、更にその後にロシアのウラジーミル・プーティン大統領が訪中している。中国が国際関係、世界政治のキープレイヤーであることは明白だ。アメリカが対外政策で失策を重ねている間に、中国は慎重な動きをすることで、相対的に評価が高まるということになった。
しかし、中国はそのことを誇らない。目立たないというのは中国の長期戦略である。経済の分野では黙っていても目立つようになっており、他国からの反感を買うこともある訳で、目立つようなことをして失敗することは望ましいことではない。鄧小平が唱えた「韜光養晦(とうこうようかい)」である。中国は実力を蓄え、アメリカが衰退していく中で、それに巻き込まれないようにしながら、完全に追い越すまでじっと待つということになる。熟した柿が自然と落ちるのを待つ、木に登るという危険(落ちて怪我をするかもしれない)を避けて、長期的に待つという「熟柿作戦」とも言える。この時間の幅の取り方は中国人独特と言えるだろう。せっかちな日本人にはできないことだ。
(貼り付けはじめ)
アメリカの不安定さが中国の長期戦略を加速させている(U.S. Volatility
Is Advancing China’s Long Game)
-北京はワシントンの混乱に対し、勝ち誇った態度(triumphalism)ではなく、未来を勝ち取るための忍耐強い動き(a patient campaign to win the future)で対応している。
ファリード・ザカリア筆
2026年4月20日
『フォーリン・ポリシー』誌
https://foreignpolicy.com/2026/04/20/united-states-china-economic-industrial-great-power-competition/
世界の舞台で不思議な事態が起きている。アメリカは無謀で予測不能、そして法を無視した行動で世界の多くの国々を激怒させている。一方的な軍事行動を仕掛け、世界経済を混乱させ、同盟関係を覆し、長年守られてきた規範を不都合なものとして扱っているのだ。にもかかわらず、台頭する超大国である中国は、アメリカを激しく非難したり、信頼できないアメリカに代わる責任ある選択肢を自ら宣言したりしていない。その理由を理解することで、北京の長期的な戦略をより深く理解できるだろう。
私はこの1週間中国に滞在したが、今回のアメリカの中東戦争に対する人々の反応が、前回の大規模な戦争とは全く異なっていることに驚いた。イラク戦争の際、中国の戦略家たちは、アメリカが砂漠で泥沼にはまる様子を喜んでいるかのように見えた。しかし今回は、政府関係者、シンクタンクの研究者、そしてビジネスリーダーたちは、アメリカの混乱した政策に困惑し、懸念を抱き、ドナルド・トランプ大統領が次に何をするのかについて、深い不安を抱いていた。
こうした動きには、ある程度の自国の利益も関係している。中国はホルムズ海峡を通過する石油と天然ガスを必要としている。より広く言えば、中国はロシアと同様のならず者国家(a rogue state)ではない。自国の成長は、開かれた航路(open sea
lanes)、機能する市場(functioning markets)、そして、堅固なゲームのルール(steady rules of the game)にかかっていることを理解している。中国政府当局者は、習近平国家主席の発言を引用しながら、繰り返し、アメリカが世界を「弱肉強食の時代(law of the jungle)」に逆戻りさせていると私に語った。これは道徳的な批判(a moral critique)というより、戦略的な不安(a strategic
anxiety)の表れと言えるだろう。グローバル化した世界において、覇権国が全く予測不可能な存在になれば、それは誰にとっても不利益となる。
中国政府当局者たちは、中国がアメリカに取って代わろうとしているのではないと主張する。中国のビジネスリーダーたちは、アメリカは依然としてより革新的な経済国であると断言する。アメリカが中国に対して冷淡な態度をとっているにもかかわらず、これらのリーダーたちはシリコンヴァレー、アメリカの大学、そしてアメリカ市場の規模と洗練度を依然として高く評価している。
中国の戦略は、この危機を利用して経済力と世界的な影響力を強化することにある。中国は、次世代の成長を決定づけると信じる最先端技術、すなわちグリーンエネルギー、ロボット工学、製造業などの産業への人工知能の応用、高度な製造業、そしてサーヴィス業に注力している。これらの分野における中国の支配力は既に驚異的だ。世界の太陽光パネルの80%、風力タービンの約60%、バッテリーの75%を生産している。また、世界の電気自動車の70%を供給している。
中国は過去3度の経済危機を巧みに利用し、その支配力をさらに強固なものにしてきた。パンデミックの間、中国企業は医療機器を世界各地に供給するべく躍進した。AIブームが拡大するにつれ、中国はデータセンターに必要な金属、電気機器、バッテリー、冷却システム、産業部品といったインフラ整備の中心的存在となった。そして今、イラン戦争は新たなエネルギー源をめぐる世界的な争奪戦を引き起こしている。ここでも中国は不可欠な存在であり、各国が石油・ガス輸入への依存度を低減するために必要となる太陽光発電、風力発電、バッテリー、電気自動車といったグリーンテクノロジーを支配している。
北京はこうした産業の強さを影響力へと転換させている。資金、インフラ、サプライチェインを提供し、各国を中国製システムに縛り付けている。アメリカは不安定性をもたらす一方、中国は設備、信用、そして安定供給をもたらすと各国政府に示している。2000年から2025年にかけて、北京は世界90カ国の港湾プロジェクトに資金を提供した。先月、北京は台湾に対し、平和的統一を受け入れれば中国本土がエネルギー安全保障を保証するという一種の取引を持ちかけた。
中国による今後の影響力拡大は極めて重要だ。習近平国家主席は最近、人民元を世界的な準備通貨(a global reserve currency)にするという北京の野心を明言した。ある元中国政府高官は、投資家がアメリカをリスクの高い市場と見なすようになった場合に備え、中国が債券市場と金融インフラを着実に拡大していく方針を説明した。ここ数週間、目立たないが不吉な兆候が見られている。世界銀行やヨーロッパ投資銀行といった機関が、実質的に安麗華国債と同等の低金利で債券を発行できるようになった。
こうした状況は、これまで世界の基軸通貨(the world’s reserve
currency)というアメリカの「特権(exorbitant privilege)」と呼ばれてきた地位を脅かすものだ。もしこの地位が揺らげば、アメリカ政府や家計がこれほど低金利で多額の資金を借り入れることができなくなり、アメリカは大きな痛手を被ることになるだろう。
中国はこの機会を利用して自国の評判を高めようとしているが、何よりもその目的は国力の増強にある。勢力相関(correlation of forces)が着実に中国に有利な方向に進み、アメリカが世界的な影響力を浪費し続けるならば、いつの日か中国はやはり世界の覇権を握ろうと決意するかもしれない。そしてその時、ワシントンにできることは何も残っていないだろう。
※ファリード・ザカリア:CNNの番組「ファリード・ザカリアGPS」の司会者であり、近著に『革命の時代(Age of Revolutions)』がある。彼は『ワシントン・ポスト』紙に週刊コラムを執筆しており、そのコラムは『フォーリン・ポリシー』誌にも配信されている。Xアカウント:@FareedZakaria
(貼り付け終わり)
(終わり)

シリコンヴァレーから世界支配を狙う新・軍産複合体の正体

『トランプの電撃作戦』

『世界覇権国 交代劇の真相 インテリジェンス、宗教、政治学で読む』















