古村治彦(ふるむらはるひこ)の政治情報紹介・分析ブログ

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タグ:習近平

 古村治彦です。

 アメリカはイラン戦争でイスラエルという負債を抱え、ウクライナ戦争でウクライナという負債を抱え、実際には起きていない台湾有事に関して日本という負債を抱えている。アメリカはイスラエルに使嗾されたイラン戦争を戦い、ウクライナ戦争ではロシアを弱体化させるためにウクライナ支援を続け、台湾有事では日本を中国への嫌がらせのために使っている(日本全体が政治家と国民の大多数が馬鹿なので本気で武力衝突をしたがるようになって慌てている)。

 イラン戦争ではイスラエルに唆されて、「アメリカ軍が出れば鎧袖一触、イランはすぐに降参して、体制転換ができる」「これが中東地域での最後の戦争となり、トランプ大統領は歴史に残る偉大な大統領になる」とおだてられ(「豚もおだてりゃ木に登る」という言葉通りに)、ほいほいとアメリカ軍を出してイランを攻撃して、人的、経済的に大きな被害を出した。イラン側はイスラエルやペルシア湾岸諸国のアメリカ軍基地に対して反撃を行い、一定の成果を上げた。さらに、ホルムズ海峡を封鎖してその力を示した。アメリカ軍はイランのホルムズ海峡封鎖を実力で阻止することができず、実力の欠如を露呈した。

 ウクライナ戦争やイラン戦争という世界にとって深刻な、しかも重要な出来事に関して、中国は目立った動きを見せていない。しかし、国際関係や世界政治を注意深く見ている人たちにとっては中国の動きは明らかだ。それが漏れ伝わって、マスコミでも報道されることがある。アメリカとイランの間を取り持っているのは中国である。今年の5月にはアッバス・アラグチ外相が訪中し、記憶に新しいが5月中旬にはドナルド・トランプ大統領が訪中し、更にその後にロシアのウラジーミル・プーティン大統領が訪中している。中国が国際関係、世界政治のキープレイヤーであることは明白だ。アメリカが対外政策で失策を重ねている間に、中国は慎重な動きをすることで、相対的に評価が高まるということになった。

 しかし、中国はそのことを誇らない。目立たないというのは中国の長期戦略である。経済の分野では黙っていても目立つようになっており、他国からの反感を買うこともある訳で、目立つようなことをして失敗することは望ましいことではない。鄧小平が唱えた「韜光養晦(とうこうようかい)」である。中国は実力を蓄え、アメリカが衰退していく中で、それに巻き込まれないようにしながら、完全に追い越すまでじっと待つということになる。熟した柿が自然と落ちるのを待つ、木に登るという危険(落ちて怪我をするかもしれない)を避けて、長期的に待つという「熟柿作戦」とも言える。この時間の幅の取り方は中国人独特と言えるだろう。せっかちな日本人にはできないことだ。

(貼り付けはじめ)

アメリカの不安定さが中国の長期戦略を加速させている(U.S. Volatility Is Advancing China’s Long Game

-北京はワシントンの混乱に対し、勝ち誇った態度(triumphalism)ではなく、未来を勝ち取るための忍耐強い動き(a patient campaign to win the future)で対応している。

ファリード・ザカリア筆

2026年4月20日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2026/04/20/united-states-china-economic-industrial-great-power-competition/

世界の舞台で不思議な事態が起きている。アメリカは無謀で予測不能、そして法を無視した行動で世界の多くの国々を激怒させている。一方的な軍事行動を仕掛け、世界経済を混乱させ、同盟関係を覆し、長年守られてきた規範を不都合なものとして扱っているのだ。にもかかわらず、台頭する超大国である中国は、アメリカを激しく非難したり、信頼できないアメリカに代わる責任ある選択肢を自ら宣言したりしていない。その理由を理解することで、北京の長期的な戦略をより深く理解できるだろう。

私はこの1週間中国に滞在したが、今回のアメリカの中東戦争に対する人々の反応が、前回の大規模な戦争とは全く異なっていることに驚いた。イラク戦争の際、中国の戦略家たちは、アメリカが砂漠で泥沼にはまる様子を喜​​んでいるかのように見えた。しかし今回は、政府関係者、シンクタンクの研究者、そしてビジネスリーダーたちは、アメリカの混乱した政策に困惑し、懸念を抱き、ドナルド・トランプ大統領が次に何をするのかについて、深い不安を抱いていた。

こうした動きには、ある程度の自国の利益も関係している。中国はホルムズ海峡を通過する石油と天然ガスを必要としている。より広く言えば、中国はロシアと同様のならず者国家(a rogue state)ではない。自国の成長は、開かれた航路(open sea lanes)、機能する市場(functioning markets)、そして、堅固なゲームのルール(steady rules of the game)にかかっていることを理解している。中国政府当局者は、習近平国家主席の発言を引用しながら、繰り返し、アメリカが世界を「弱肉強食の時代(law of the jungle)」に逆戻りさせていると私に語った。これは道徳的な批判(a moral critique)というより、戦略的な不安(a strategic anxiety)の表れと言えるだろう。グローバル化した世界において、覇権国が全く予測不可能な存在になれば、それは誰にとっても不利益となる。

中国政府当局者たちは、中国がアメリカに取って代わろうとしているのではないと主張する。中国のビジネスリーダーたちは、アメリカは依然としてより革新的な経済国であると断言する。アメリカが中国に対して冷淡な態度をとっているにもかかわらず、これらのリーダーたちはシリコンヴァレー、アメリカの大学、そしてアメリカ市場の規模と洗練度を依然として高く評価している。

​​中国の戦略は、この危機を利用して経済力と世界的な影響力を強化することにある。中国は、次世代の成長を決定づけると信じる最先端技術、すなわちグリーンエネルギー、ロボット工学、製造業などの産業への人工知能の応用、高度な製造業、そしてサーヴィス業に注力している。これらの分野における中国の支配力は既に驚異的だ。世界の太陽光パネルの80%、風力タービンの約60%、バッテリーの75%を生産している。また、世界の電気自動車の70%を供給している。

中国は過去3度の経済危機を巧みに利用し、その支配力をさらに強固なものにしてきた。パンデミックの間、中国企業は医療機器を世界各地に供給するべく躍進した。AIブームが拡大するにつれ、中国はデータセンターに必要な金属、電気機器、バッテリー、冷却システム、産業部品といったインフラ整備の中心的存在となった。そして今、イラン戦争は新たなエネルギー源をめぐる世界的な争奪戦を引き起こしている。ここでも中国は不可欠な存在であり、各国が石油・ガス輸入への依存度を低減するために必要となる太陽光発電、風力発電、バッテリー、電気自動車といったグリーンテクノロジーを支配している。

北京はこうした産業の強さを影響力へと転換させている。資金、インフラ、サプライチェインを提供し、各国を中国製システムに縛り付けている。アメリカは不安定性をもたらす一方、中国は設備、信用、そして安定供給をもたらすと各国政府に示している。2000年から2025年にかけて、北京は世界90カ国の港湾プロジェクトに資金を提供した。先月、北京は台湾に対し、平和的統一を受け入れれば中国本土がエネルギー安全保障を保証するという一種の取引を持ちかけた。

中国による今後の影響力拡大は極めて重要だ。習近平国家主席は最近、人民元を世界的な準備通貨(a global reserve currency)にするという北京の野心を明言した。ある元中国政府高官は、投資家がアメリカをリスクの高い市場と見なすようになった場合に備え、中国が債券市場と金融インフラを着実に拡大していく方針を説明した。ここ数週間、目立たないが不吉な兆候が見られている。世界銀行やヨーロッパ投資銀行といった機関が、実質的に安麗華国債と同等の低金利で債券を発行できるようになった。

こうした状況は、これまで世界の基軸通貨(the world’s reserve currency)というアメリカの「特権(exorbitant privilege)」と呼ばれてきた地位を脅かすものだ。もしこの地位が揺らげば​​、アメリカ政府や家計がこれほど低金利で多額の資金を借り入れることができなくなり、アメリカは大きな痛手を被ることになるだろう。

中国はこの機会を利用して自国の評判を高めようとしているが、何よりもその目的は国力の増強にある。勢力相関(correlation of forces)が着実に中国に有利な方向に進み、アメリカが世界的な影響力を浪費し続けるならば、いつの日か中国はやはり世界の覇権を握ろうと決意するかもしれない。そしてその時、ワシントンにできることは何も残っていないだろう。

※ファリード・ザカリア:CNNの番組「ファリード・ザカリアGPS」の司会者であり、近著に『革命の時代(Age of Revolutions)』がある。彼は『ワシントン・ポスト』紙に週刊コラムを執筆しており、そのコラムは『フォーリン・ポリシー』誌にも配信されている。Xアカウント:@FareedZakaria

(貼り付け終わり)

(終わり)



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シリコンヴァレーから世界支配を狙う新・軍産複合体の正体 
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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める

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 古村治彦です。

 下記論考は、現在の世界には4つの大国(昔は「列強と呼んでいた」)があり、大国に分類されるのは、アメリカ、中国、イギリス、ロシアであると主張している。下記論考の著者のケンブリッジ大学教授ブレンダン・シムズは、大国の条件として、(1)資源(resources)、(2)影響力(reach)、(3)名声(reputation)、(4)回復力(resilience)を挙げている。軍事力や経済力だけではなく、諸外国からの評価や歴史的な経緯を総合的に判断して、大国仮想ではないかということを決めている。ドイツや日本、インド、インドネシア、ブラジルなどは大国には認定されていない。

下記論考では、国連安保理常任理事国であるフランスを大国としては分類していない。しかし、私から見れば、イギリスもフランスもすでに昔日のような軍事力や経済力、世界への影響力を失っている。そうした点では似たり寄ったりであり、フランスどころか、イギリスも大国の分類から外れるのではないかと考える。国連安保理常任理事国、つまり第二次世界大戦の戦勝国側である、連合国(Allied Powers)が戦後世界の大国ということになっていたが、現在はそこから英仏が外れ、準大国[quasi great powers]ということになる。

そうなると、米中露が大国であり、この3カ国が「ヤルタ2.0(Yalta 2.0)」体制を構築しているのが現状ということになる。ヤルタ2.0体制の中心は中国である。20世紀の冷戦期に超大国であったアメリカとロシア(旧ソ連)は、現在、それぞれがイランとウクライナで戦争状態となっている。それぞれが停戦を模索する中で、その仲介役を引き受けられるのは21世紀の超大国である中国だ。中国は21世紀型の超大国、世界覇権国として新たな型を模索している。こうした動きを象徴しているのが、2026年に実施された、米中首脳会談、中露首脳会談である。
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 米中露の「ヤルタ2.0」体制は相互に戦争をしないようにということを取り決めている枠組みである。米中露が直接戦争をすることは世界に甚大な被害を与え、人類の文明に計り知れない影響を与える。そして、この枠組みは、21世紀における世界覇権国交代を平和裏に進めるための枠組みということも言える。「覇権戦争(hegemonic war)」を起こさないことが米中露の共通の目標であり、利益ということになる。

(貼り付けはじめ)

大国は4つのみ存在する(There Are Only Four Great Powers

-大国間の競争の時代が始まった―しかし、全ての競争相手が資格を満たしてはいない。

ブレンダン・シムズ筆

2026年6月2日
『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2026/06/02/great-powers-four-united-states-china-russia-great-britain-france-germany/

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大国間競争(great-power competition)の新たな時代において、競争相手を特定することは重要だ。しかし、大国について語ることは、それを定義するよりも常に容易だった。大国の地位、特にどの国が「最も偉大な(greatest)」国であるかについての意見の相違は、過去と同様に、今日の国際システムの特徴となっている。大国を構成する要素についての共通の定義はなく、大国がいくつ存在するかといった基本的な問題についても合意は存在しない。

それにもかかわらず、大国を共通の特徴によって区別することは可能だ。これらの特徴から、今日存在する大国は4つしかないことが明らかだ。そして、それらは必ずしも予想通りの国家ではない。

第一に、大国には共通の行動様式(a set of behaviors in common)がある。彼らは常に、その時々の主要な国際問題について、自らが影響力を行使するか、少なくとも意見を求められることを期待する。彼らは自らの存在感を強く示し、彼らの不在は埋めるべき空白を生み出す。多くの場合、大国は自らの絶対的な主権(absolute sovereignty)を主張する一方で、特に近隣の小国には限定的な主権(the qualified sovereignty)しか認めない。大国は、極限状況下では、自らを脅かしたり不快にさせたりする政権を転覆させる権利を留保する一方で、自国に対してはそのような権利を一切認めない。

大国は時に国際法を超越した存在(to be above international law)であると主張する。またある時は、国際法を擁護することを美徳とし(make a virtue of vindicating that law)、国際規範を守ると主張する。言い換えれば、大国はルールを作る力と破る力の両方を持ち、決してルールに従うだけの国ではない。彼らは秩序を与える側であり、秩序を与えられる側ではない。

大国がこのような振る舞いをできるのは、中堅国や小国(the middling and smaller states)に比べて圧倒的に優れた能力を持っているからである。その第一の能力は資源(resources)である。この国家は、自国の意思を押し付けたり、他国の意思に抵抗したりするだけの軍事力を持っているだろうか? 軍事力を完全に満足のいく形で評価する方法はないが、軍事費の額とその効果は、防衛能力を大まかに測る指標となる。

配備可能な核兵器(deployable nuclear weapons)もまた、今日の大国としての地位に不可欠な要素である。原子爆弾を運搬する確実な能力、ひいては核攻撃を抑止する能力を持つことは、国家に世界における特別な地位を与える。だからこそ、大国はこれらの兵器に関連する計画、研究、維持、保管、訓練、そして安全保障といった膨大な負担を担うのである。全ての核保有国が大国であるとは限らないが、すべての大国は核保有国である。

次に経済の問題がある。国家は地政学的競の経済的逆風(the financial headwinds of geopolitical competition)を乗り越え、大規模な軍事活動を維持できるだけの強さを持っているだろうか? 通常、経済力はGDPで測定される。GDPは国家の国境内で生産される全てのものを網羅している。購買力平価(purchasing power parity)という代替指標は、国内経済において一定額の資金がどれだけの価値を持つかを考慮に入れている。購買力平価は、生活水準や生産コストが低い非西洋諸国が高く出る傾向がある。

非常に重要でありながら評価が難しいのは、これらの資源がどれほど国家固有のものであるかという問題だ。平時のGDP、紛争時のGDP、そして戦時のGDPは、全く異なる。関税、制裁、あるいは封鎖によって国家を市場、信用源、原材料、食料供給から切り離せば、その経済はたちまち全く異なる様相を呈するだろう。だからこそ、特定の国家の管轄外にあるグローバル・コモンズ、特に世界の海上交通路を支配することが、大国の地位、あるいは少なくとも大国間の序列を決定する上で非常に重要だ。

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左:メリーランド州アナポリスで行われた卒業式と任官式(a graduation and commissioning ceremony)で、ブルーエンジェルスによる祝賀飛行(a flyover salute)を見守るアメリカ海軍兵学校の卒業生たち(2026年5月22日)、右:北京で行われた軍事パレードのリハーサルで、人民解放軍の兵士たちを指導した後、持ち場に戻る士官(2025年8月20日)

経済力は重要ではあるが、大国としての地位を決定づける唯一の要素ではない。過去20年間の軍事力と軍事費で測ると、世界最強の軍隊は、圧倒的なリードを誇るアメリカと中国であり、イギリスとロシアがそれに続く。上位3カ国は、世界経済大国ランキングでも5位、もしくは6位に入る。経済的に弱いロシアは、世界最大の核兵器保有量を誇ることで、大国としての地位を確立している。

大国としての地位を決定づける2つ目の基準は影響力(reach)である。その国家は世界的大国(global power)なのか、それとも単なる地域大国(regional power)なのか。また、本国から遠く離れた地域に武力を行使する意思と能力はどの程度あるのか? 地理的に認められた勢力圏を有しているのか。世界的な基地ネットワークを活用できるのか? 主要な輸送拠点やチョークポイントを支配しているのか? 情報・諜報機関は、世界のほとんどの地域、そしてサイバー空間や宇宙空間に関する質の高い情報を提供できるのか? 大規模で高度な外交組織を有しているのか? 多額の海外援助予算を有しているのか?

影響力は地理的な(geographic)ものと仮想的な(virtual)ものの両方を含む。大国は自国地域をはるかに超えて存在感を示す能力を持つだけでなく、国連、市場、その他の国際機関といった国際機関に影響を与え、場合によっては取り込む能力も持つ。

今日、影響力は各国間で非常に不均等に分布している。アメリカは、広大な軍事基地ネットワークによって際立っている。イギリスはかつてのような世界的な地位を享受してはいないが、ジブラルタル、キプロス、フォークランド諸島など、世界各地に重要な主権拠点を維持している。また、インド洋に面したオマーンのドゥクムなどにも拠点を置いている。ロシアは近隣諸国に勢力圏(a sphere of influence)を主張しているが、近年アフリカや中東では勢力を失っている。ロシアはまた、プロパガンダ、偽情報、破壊的なデジタル活動の分野で世界的な影響力を誇っている。

中国は、ジブチに基地を構え、世界各地のインフラプロジェクトを保護する大規模な準軍事組織を擁し、いずれは世界的な軍事大国となる可能性を秘めている。しかし、その真のグローバルな影響力は、世界のサプライチェインと、技術革命やグリーン革命を支える重要な鉱物資源(リチウムなど)を部分的に支配している点にある。

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3日間の国賓訪問中、ロンドンのザ・モールを馬車に乗ったチャールズ3世国王と日本の徳仁天皇が騎馬警官隊の先導で進んでいる(2024年6月25日)

3つ目の基準は、国家としての評判(reputation)である。その国は、他国、特に他の大国から大国とみなされているか? そして、ほぼ同じくらい重要なのは、その国自身が自らを大国と認識しているかだ。今日、アメリカと中国が大国であることに疑いを持つ者はほとんどおらず、ロシアも、世界秩序を形成、あるいは少なくとも混乱させる軍事力を持つ国として、多くの人が大国とみなしている。イギリスの地位については議論の余地があるものの、ほとんどのヨーロッパ人は依然として英国を主要大国とみなしている。

例えば、フィンランドとスウェーデンは、NATOの安全保障体制が発動する前の2022年に、英国から二国間安全保障の保証を求めた。イギリス主導の統合遠征軍は、バルト海と北極圏の安全保障に大きく貢献している。イギリスはまた、日本をはじめとするアジアの重要国、そしてレヴァントやペルシャ湾岸諸国からも同盟国として高く評価されている。さらに、アメリカがヨーロッパとアジアから撤退すれば、イギリスの限られた軍事力は重要性を増すだろう。

加えて、大国は常に武力以上のものを象徴している。その偉大さは、文化的、イデオロギー的なものだ。今日、イギリスをはじめとする西側諸国は、民主政治体制の原則と自由貿易に基づく自由主義的な国際秩序(a liberal international order)を支持している。イギリスは、ドナルド・トランプ米大統領によるイラン攻撃への参加を拒否することで、アメリカに追従する「プードル(poodle)」ではないことを証明し、そのイメージを強化した。他の国々は、より文明的な観点から自らの立場を表明している。

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ロシア国営通信社スプートニクが配信した写真で、モスクワでヴィデオリンクを通じて核訓練を視察するウラジーミル・プーティン大統領の姿が写っている(2023年10月25日)

例えば、中国の習近平国家主席は、中国は「巨大国家(major country)」として、「際立った中国らしさと中国のヴィジョン(salient Chinese feature and a Chinese vision)」を特徴とする「独自の(distinctive)」外交を展開すべきだと述べている。大国の中でも最も残忍な国の1つであり、軍事力と核兵器の威力を常に誇示するロシアでさえ、「魂のない(soulless)」西側諸国に対抗し、キリスト教的価値観と家族の価値観(Christian and family values)を世界的に代表していると主張している。かつてルールに基づく国際秩序の要であったアメリカが、トランプ政権再選後、一体何を象徴するのかはまだ明らかではない。

国家の評判は、グローバル・ガヴァナンスの構造におけるその国の立場によって左右される部分が大きい。アメリカは、国際通貨基金(IMF)や世界銀行といった経済機関において、主要な役割を担っており、支配的であると言う人もいる。ロシア、中国、イギリス、フランスとともに、国連安全保障理事会の常任理事国(a permanent member of the United Nations Security Council)でもある。これら5カ国は国際システムにおいて大きな特権を享受しており、その特権はしばしば批判にさらされるが、国連改革は依然として実現の可能性は低い。

大国としての地位を決定づける4つ目の基準である「回復力(resilience、レジリエンス)」は、社会と経済がどれだけの苦痛に耐えられるかを示す。歴史的な実績は重要な役割を果たす。過去において、勝利は必ずしも最も大きな損害を与えられる者にもたらされるとは限らず、時には最も大きな苦痛に耐えられる者にもたらされることもあった。ハプスブルク帝国のような過去の大国は、逆境の中で驚異的な粘り強さ(enormous staying power in adversity)を示した。敗北とそこからの回復は、勝利と同じくらい重要である。国家が豊富な資源を保有し、目覚ましい影響力と名声を誇っていたとしても、回復力を欠いていれば大国とは言えない。

長年にわたり最も回復力の高い国は、イギリスとアメリカだ。米英両国は長期にわたる戦いを戦い抜き、アメリカ植民地の喪失やヴェトナム戦争といった深刻な敗北から立ち直る能力を証明してきた。米英両国とも現在、それぞれ異なる形で国内危機に直面しているものの、比較的速やかに回復することが期待される。一方、ロシアと中国は、現在の形では比較的若い大国であり、中露両国とも政治的な混乱と分裂を経験したばかりである。他の多くの事柄と同様に、回復力は歴史、特に長期にわたる社会的な結束の発展に根ざしている。

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南アフリカのヨハネスブルグで開催されたG20サミットで、イタリアのジョルジア・メローニ首相(左)が日本の高市早苗首相と挨拶を交わす。傍らにはフランスのエマニュエル・マクロン大統領が立っている(2025年11月22日)

これらの基準に基づくと、大国候補として挙げられる国々のいくつかは除外される。ドイツや日本といった経済的に重要な国々は、大国となるための軍事力、特に核兵器を欠いている。

影響力という点では、ドイツ、日本、ブラジル、インドネシアは主に地域的な軍事力を有している。これらの国々の中には、外交活動や海外援助政策を通じて相当な国際的影響力を持つ国もある。ドイツと日本は大きなソフトパワーを持っているが、ブラジルとインドネシアはそうではない。これら4カ国は過去に脆弱な面を見せており、必要な回復力を欠いている。

多くの支持を得ているにもかかわらず、インドもほとんどの基準を満たしていない。インドは核兵器を保有し、世界第5位または第6位の経済規模を誇るが、ニューデリーの軍事力は主に地域的な範囲にとどまっている。インドは「世界の教師(world teacher)」としての評判を自負しているが、その役割を大国としての役割とは異なる視点から捉えている。近代国家としてのインドの歴史は比較的浅いため、その回復さを測るのは難しい。しかし、テロや民族間の暴力に悩まされやすく、貧困が根強く残っていることは、脆弱性(vulnerabilities)を示唆している。

フランスは評価することが難しい。巨大な経済規模を持ち、イギリスよりも独立した核兵器を保有しているが、国境管理や通貨管理といった主権の重要な部分をヨーロッパ連合に譲り渡している。パリは依然としてアフリカで大きな影響力を持ち、インド太平洋地域にも重要な存在感を示しているが、アフリカでは後退傾向にあり、インド太平洋地域では反植民地運動の脅威にさらされている。また、フランスはアングロサクソン諸国、中国、ロシアとは異なる独自のグローバルブランドを確立している。

しかし、回復力という点では、フランスは19世紀と20世紀に幾度となく国家崩壊を経験しており、中でも1940年にドイツに占領され、戦後英米連合(the Anglo-Americans after the war)によって再建されたことは特筆すべきである。フランスはイギリスよりもはるかに脆弱(brittle)である。

明らかなのは、大国が持つ資源(resources)、影響力(reach)、名声(reputation)、そして回復力(resilience)の程度、そしてこれらの能力のバランスは、国によって大きく異なるということである。どの大国も全く同じ構造ではなく、能力と脆弱性(capacity and vulnerabilities)において大きな違いがある。これは常にそうであった。過去には、どの大国も他の大国と全く同じ強さではなく、中には著しく弱い国もあった。例えば、18世紀のプロイセンや19世紀末のオーストリア=ハンガリー帝国などが挙げられる。

同様に、今日の大国も、個々の強みと総合的な強さの両面において、互いに大きく異なっている。アメリカと中国は経済力と軍事力においてロシアとイギリスをはるかに凌駕しているものの、これら4カ国はいずれも、世界の舞台における主要国の中でも、他の国々とは一線を画す特徴を持っている。また、フランスという、大国としての地位が明確でない国も存在する。

このリスト―含まれる国と含まれない国―は、一部の人々を驚かせるかもしれない。しかし、歴史的に見ると、その一貫性は驚くべきものだ。各国間の力関係は大きく変化してきたものの、この大国構成は、私たちの祖父母だけでなく、曽祖父母の世代にも馴染み深いものだっただろう。そしておそらく、私たちの子供や孫の世代にも、この構成は変わらないだろう。

※ブレンダン・シムズ:ケンブリッジ大学地政学センター部長。著書に『大国の復活(The Return of the Great Powers)』がある。

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 古村治彦です。

 アメリカや日本で中国脅威論が盛んに主張されるようになって久しい。その派生で、中国崩壊論、中国経済失速論、米中戦争論、日中戦争論なども多く語られている。これらの主張は人々の耳目を引きやすく、本にしても売り上げが良いので、「麻薬」のようになっている。「麻薬」は出版社にとっては、出版不況の中で、売り上げが良いとなるとどうしてもそういう極端な、派手な主張の本が多くなるということを意味する。そして、生活が苦しく、その不平不満を政治に向けるのではなく、外国に向けることで解消する人々にとってはこれらの本を読むことは娯楽の一種となっている。出版社と国民にとっての「麻薬」「アヘン」ということになる。

 第一次ドナルド・トランプ政権、ジョー・バイデン政権、第二次ドナルド・トランプ政権で継続されているのは、中国に対する敵内的な通商政策である。中国に対して高関税を課すことで、中国製品の流入を止め、アメリカ国内の製造業を復活させるということは第一次トランプ政権から行われている。米中間では、米中貿易戦争、関税戦争という状態になっている。中国はアメリカに対抗し、レアアースの規制で対抗し、トランプ大統領は中国への攻撃を止めるということになった。アメリカは製造業の復活もできず、重要な資源の管理もできていないという点で、既に旗色は悪くなっている。

それでも下記論考のように、アメリカが西側諸国を取り込んで、対中包囲網を構築すれば、中国は恐れる必要はないという「お勇ましい」主張は出てくる。西側諸国というのは、具体的にはドイツと日本ということになるだろうが、両国にとって最大の貿易相手国は中国である。日本の貿易総額の約20%を中国が占めている。ヨーロッパにとっても中国は最大の貿易相手国であり、貿易総額の約15%を中国が占めている。中国に敵対するようなことをすれば経済に悪影響が出る。現在の日本を見てみれば明らかだが、レアアースを止められてしまえば干上がってしまう。

世界の貿易全体で見ても、最大のシェアを占めるのは中国で約14%、アメリカは約8%、ドイツは約6%となっている。日本は2%ほどとなっている。世界各国にとって中国の存在感と影響力は大きくなっている。前述したように、アメリカは中国に貿易戦争を仕掛けたが、目論見通りにはいかず、結局、関税率を引き下げざるを得なかった。

 このように考えるならば、「中国経済恐るるに足らず」などと勇ましいことを言うのではなく、いかにして中国を利用して利益を上げるかということを考えることが得策だ。いたずらに敵視して、うっかり失言をして、関係が冷え切って、改善することもできないというような下の下の策を取らないようにすべきであるが、日本以外の諸外国の指導者はそのことが分かっているから、馬鹿なことはしない。残念なのは日本ということになる。

(貼り付けはじめ)

中国経済を恐れる必要はない(There’s No Need to Fear China’s Economy

-ワシントンとの経済闘争を容易にエスカレートさせる余裕を北京は持っていない。

セオドア・ブンゼル筆

2026年5月13日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2026/05/13/china-economy-us-trade-negotiations-trump-visit/

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上海の金融街を背景に黄浦江沿いで女性が龍の飾りを振っている(2025年4月14日)

アメリカは中国との貿易交渉で窮地に立たされているように見える。ドナルド・トランプ政権は就任後、北京に対し強硬な姿勢を示し、2025年4月には一時的に145%の関税を課し、過去1年間は対中実効関税率を40%前後と2倍以上に引き上げた。ワシントンの狙いは、中国からアメリカ市場を取り上げることで、北京に市場アクセスと二国間貿易赤字の削減について譲歩させることだった。スコット・ベセント財務長官は、2024年に約5000億ドルに達した対米輸出への依存度の高さを指摘し、中国は「不利な状況で戦っている(2のペアで遊んでいる、playing with a pair of twos)」と豪語したほどだ。

しかしながら、トランプ大統領の貿易戦争の犠牲となった多くの国々とは異なり、北京は猛烈な反撃に出た。中国は同等のレヴェルまで関税障壁を引き上げ、レアアース鉱物の生産における中国の圧倒的な優位性を利用して、これらの重要な産業資材の供給を遮断し、自動車から航空機、兵器に至るまで、あらゆる製品のアメリカでの生産に脅威を与えた。アメリカは事実上白旗を挙げ、最も厳しい関税措置を撤回した。今週、ワシントンは5月14日、北京との貿易協議に嫌々ながら臨み、中国のレアアース輸出規制の延長と、アメリカ産農産物およびエネルギーの購入拡大という大々的な約束を求めた。

その見返りとして、トランプ政権は先端技術に関する一部の輸出規制の撤廃、あるいは台湾への支援の縮小さえも譲歩せざるを得ないかもしれない。アメリカのドナルド政権関係者たちは、おそらく小声でではあるが、今のところ中国が経済的なエスカレーションにおいて優位に立っていることを認めているかもしれない。

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『分断された時代:地政学の再燃が世界経済をどのように分裂させるか(The Fractured Age: How the Return of Geopolitics Will Splinter the Global Economy)』(ニール・シアリング著)

もし米中競争が21世紀における最も重要な地政経済の展開であるならば、この事態はワシントンにとって決して良い兆候とは言えないだろう。経済学者のニール・シアリングが著書『分断された時代』で厳しく論じているように、世界経済は必然的に、とはいえ徐々に、そして不均等に、2つの陣営に分裂しつつある。1つはアメリカを中心とする陣営、もう1つは中国を中心とする陣営である。この分断の兆候は、国際通貨基金(IMF)が指摘するように、地政学的に連携する国々の間で資金がますます流れるようになっている世界貿易や海外直接投資のパターンに見て取れる。そして、より競争の激しい環境下では、経済戦争(economic warfare)は両陣営間の主要な戦線となるだろう。両ブロックともに自陣の政策利益を追求し、もう1つの陣営からの圧力に抵抗するために、互いに影響力を行使しようとするからだ。

この新しい、分断された世界において、中国は優位に立っているのだろうか? 昨年の対立を見れば、そう思えるかもしれない。しかし、数字は異なる事実を示している。元米財務省高官のベン・A・ヴェイグルとダートマス大学教授のスティーヴン・G・ブルックスは、示唆に富む分析書『商業の支配』の中で、アメリカが優位に立っていると主張している。世界で最も重要で、収益性が高く、高度な技術を持つ企業は、主にアメリカと西側諸国に集中しており、中国の輸出産業自体もこれらの国々の投資に依存している。彼らの研究によれば、中国と西側諸国が突然全面的にデカップリングした場合、短期的には中国経済への打撃はアメリカよりも5倍から11倍も大きくなり、長期的には中国経済はより深刻な経済的ダメージを受けることになるだろう。

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『商業の支配:アメリカの中国に対する永続的な経済力の優位性(Command of Commerce: America’s Enduring Economic Power Advantage Over China)』(ベン・A・ヴァーグル、スティーヴン・G・ブルックス著)

それでは、なぜアメリカは中国を恐れているのだろうか? その理由の1つは、中国がレアアース規制という完璧な非対称兵器を見出したことだ。これは自国経済への負担はわずかである一方、アメリカ産業に大きな打撃を与えることになる。ワシントンの最も強力な経済兵器、例えば金融制裁などは、たとえ北京に不均衡な損害を与えたとしても、アメリカ企業や消費者に大きな負担を強いることになる。

もう1つの理由は、アメリカは中国よりも本質的に痛みに弱い、あるいは長年にわたる(大部分は的外れな)経済衰退への不安から自信を失っている可能性があるということだ。

しかし、大きな理由は、現政権が中国との経済戦争を仕掛けてきた方法だ。特に効果の低い手段である、一方的な関税を用い、統一戦線を築くどころか、同盟諸国を疎外してきた。アメリカは経済的圧力に対抗し、北京がアメリカの政策に拒否権(a veto)を行使するのを阻止するのに十分な影響力を持っているが、西側諸国の支持を維持できれば、その任務ははるかに容易になるだろう。

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ジョージア州ローマにあるクーサ・スティール社の工場を視察するドナルド・トランプ米大統領。(2月19日)

「超グローバル化(hyperglobalization)の時代は終わった」というのはもはや陳腐な表現だ。1989年から2010年にかけて輸出が世界GDPの20~30%に急増した後、世界金融危機以降、貿易は世界GDPに占める割合としてほぼ停滞している。世界の総資本フローは2007年のピーク時の世界GDPの20%から現在では約5%にまで減少しており、世界貿易機関(WTO)のような、国際貿易のルールを定め、自由な国際貿易を促進するために設立された多国間機関はまさに風前の灯火と言える。

この「グローバル化の減速(slowbalization)」の背景にあるものを問うと、批評家たちは、世界的な紛争の増加、ポピュリズムの台頭、格差の拡大、そしてトランプ大統領の2期目による衝撃など、様々な理由を挙げるだろう。

しかし、シアリングは最も強力な要因を正確に指摘している。それは、数十年にわたるグローバル統合を崩壊させつつある米中間の緊張(U.S.-China tensions)だ。「21世紀初頭の世界経済を特徴づけた超グローバル化の時代はもはや終わった」とシアリングは書いており、その理由として「非現実的な期待に応えられなかったこと、そして新世代のポピュリスト政治家にとって都合の良いスケープゴートとなったこと」を挙げている。しかし、最大の理由は「中国がアメリカにとって戦略的ライヴァル(a strategic rival)として台頭したこと」だと主張している。

このライヴァル関係は、今後どのように世界経済を歪めていくのだろうか? シアリングは、世界は徐々にアメリカ主導のブロックと中国主導のブロックに分裂し、アメリカ主導ブロックにはヨーロッパ、日本、インド、メキシコ、その他の西側諸国が含まれるだろうと主張する。しかし、ブロック間のデカップリングは戦略産業(strategic industries)にとどまり、世界貿易の約15%がリスクにさらされることになるだろう(シアリング氏の包括的なタイトルを考えると、比較的軽微な分裂と言える)。

シアリングの『分断された時代』が執筆されたと思われるバイデン政権時代、これが最も現実的な道筋のように思われた。アメリカは、ヨーロッパ諸国を中国関連の規制に、ためらいながらも着実に引き込むことに成功していた。インドはアメリカとの連携を強化し、ジョー・バイデン大統領の国家安全保障問題担当大統領補佐官ジェイク・サリヴァンは、対中規制は「小さな庭に高い塀を(small yard, high fence)」という形をとるべきだと主張していた。

しかし、歴史は思いもよらない形で前提を覆すものだ。トランプ政権は、玩具から電子機器に至るまであらゆる中国製品への関税を引き上げ、サリヴァンの提唱した「塀(fence)」を破壊した。その結果、2025年には中国からアメリカへの輸出が20%減少すると予測され、より広範なデカップリングがますます現実味を帯びてきた。大西洋を挟んだ激しい貿易戦争や、グリーンランドとイランをめぐる争いを経て、ヨーロッパとの経済同盟関係は今や疑問視されている。ブリュッセルはより多くの「戦略的自律性(strategic autonomy)」を求め、アメリカへの技術的依存度を減らそうとしているからだ。

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中国東部山東省煙台港でメキシコ行きの天然ガスバスを積んだ船が停泊している(2月6日)

トランプ大統領の任期がさらに2年半延長され、2029年にトランプに近い共和党政権が再び誕生すれば、たとえ大西洋を挟んだ経済関係がアメリカとヨーロッパにとって依然として最も重要な関係であったとしても、アメリカとヨーロッパの間にはより深刻で恒久的な亀裂が生じる可能性がある。

これは非常に残念なことだ。シアリングは著書『分断された時代』の中で、ヨーロッパとその他の西側諸国を含むアメリカ主導の経済圏の経済規模を算出し、中国経済圏と比較するという、非常に示唆に富む分析を行っている。その結果は圧倒的な差だ。アメリカ経済圏のGDPは中国経済圏の2.5倍以上であり、中国はアメリカ経済圏全体の経済生産高の実に3分の2を占めている。

おそらく同様に重要なのは、アメリカ圏には商品輸出入国、発展途上国と先進国など、はるかに多様な経済圏が存在し、それがさらなる強みとなっている点だ。この多様性によってアメリカは独自の経済エコシステムを構築できる一方、中国圏は依然として北京への依存度が高く、商品と製造品の輸出を西側諸国に大きく依存している。そして、シアリングが指摘するように、中国の10兆ドル(しかも増加中)に上る対外資産は、中国がドルからの脱却にどれほど努力しても、アメリカの金融制裁に対して脆弱なままであることを意味する。

ヴァーグルとブルックスは著書『商業の支配』の中で、この重要な洞察(insight)をさらに展開している。彼らは、従来の経済分析は、アメリカとの経済覇権争いにおける中国の能力と影響力を過大評価していると主張する。

この主張を裏付けるために、彼らはまず中国の真のGDPを算出することに焦点を当てている。中国のGDP統計が誇張されていることは周知の事実であり、中国は毎年、公式目標を驚くほど正確に達成しているにもかかわらず、ほとんどの国際的な経済分析では依然としてこれらの数値が絶対的な真実として扱われている。一流の経済調査会社であるロジウム・グループは、商業データと公式データに対するボトムアップ分析を用いて、2025年の中国の真のGDP成長率は、報告されている5.2%に対し、2.5%から3%の間であると推定している。

ブルックスとヴァーグルは、経済生産高と正確に相関することが示されている夜間の輝度に関する衛星画像に基づき、中国のGDPが約3分の1も過大評価されていると主張する。このデータに基づくと、中国のGDPは2022年のアメリカのGDPの52%(購買力平価ではなく名目為替レートを使用)となり、公式統計で算出された72%をはるかに下回る。参考までに、これは1975年のソ連のGDPピーク時における対アメリカGDP比58%よりも低い。中国がアメリカを置き去りにしているという主張は、これで完全に覆されるだろう。

しかし、彼らの説得力のある分析はさらに進んでいる。著者たちは、ほぼ全てのセクターにおいて、世界の利益シェアが欧米企業によって独占されていると算出している。中国の産業政策が構造的に利益率を低下させる激しい競争を促しているのは事実だが、それでもなお、その結果は驚くべきものだ。ブルックスとヴァーグルの研究によると、アメリカと同盟諸国の企業はそれぞれ世界の利益の38%と35%を占めているのに対し、中国と香港を合わせた利益はわずか16%にとどまっている。ハイテク産業においては、この差はさらに顕著で、アメリカが55%、同盟諸国を合わせた利益は83.8%を占める一方、中国のシェアはわずか6.1%である。ハイテク産業における付加価値についても同様だ。世界の製造業全体の付加価値に占める中国の割合は29%で、アメリカは16%、同盟諸国は33%だが、ハイテク産業における付加価値に限ると、中国は18%にとどまり、アメリカは29%、同盟諸国は37%となっている。

付加価値と利益は重要な指標である。なぜなら、電子機器などの中国の主要輸出産業においても、中国企業ではなく欧米企業が、かけがえのない経済的価値の大部分を提供していることを示しているからだ。実際、ヴァーグルとブルックスは、中国が世界のテクノロジーハードウェア付加価値の31%を占めているにもかかわらず、中国企業がこの分野で世界売上高のわずか13%しか生み出していないと指摘している。つまり、ノートパソコンから携帯電話に至るまで、中国の付加価値の大部分は、主に輸出目的で中国に進出している外国企業によるものだということだ。

欧米企業にとって、製造エコシステムの効率が低い他の発展途上国にサプライチェインを移転することは、苦痛とコストを伴うだろう。しかし、中国にとって、欧米のサプライチェインが撤退すれば、輸出産業は長期的に深刻な打撃を受けることになる。

それでは、BYDやファウェイといった高度な技術を持つ中国企業、あるいはCATLのような中国のクリーンエネルギー分野のリーディングカンパニーはどうだろうか? 国家補助金に支えられ、中国は多くの戦略産業で急速にヴァリューチェインを上昇させており、電気自動車やバッテリーなどの分野では、世界をリードする企業や製品を擁している。

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左:中国江蘇省連雲港市の玩具工場で従業員が輸出用のぬいぐるみを製造している(2月28日)右:中国東部浙江省義烏市にある太陽光発電式プラスチック製品専門工場でトランプのプラスチック製玩具の部品が見られる(2025年4月11日)

しかし、これらは中国経済全体のごく一部に過ぎない。著者たちは、中国の付加価値の高い製造業の約60%が、金属、プラスチック、玩具といった低技術分野に集中していると指摘している。太陽光発電システムのようなクリーンエネルギー製品でさえ、特に高度な技術を要するものではなく、他国でも(コストは高くなるものの)同様の製品を製造することが可能である。

ヴァーグルとブルックスは、これらの洞察の深遠さ(the profundity of these insights)を分かりやすくモデル化している。台湾を巡る西側諸国と中国の急激なデカップリングをシミュレーションした6つの異なるシナリオにおいて、中国の短期的なGDP損失は米国の4.7倍から11.1倍に達し、損失率は15.4%から50.8%に達するのに対し、アメリカは2.8%から7.6%にとどまる。デカップリングは双方にとって極めて大きな痛手となることは間違いない。アメリカのGDPが短期的に約5%減少するという事態は決して軽視できるものではない。しかし、米中両国が全面戦争に突入した場合、中国はアメリカよりもはるかに大きな損失を被ることになる。

著者たちは、2つの警告的かつ不吉な予言とも言える注意点を指摘している。アメリカが同盟諸国を伴わずに単独で中国からデカップリングした場合、短期的なGDP損失は中国の70%と、アメリカとほぼ同等になるという。また、レアアースなどの重要鉱物の生産における中国の優位性を、交渉材料として活用できる可能性も指摘している。しかし、ヴァーグルとブルックスの見解はやや楽観的すぎるかもしれない。彼らは、レアアース産業は低価値で比較的小規模(60億ドル)な産業であり、中国国外で再構築できる可能性があり、これらの鉱物を備蓄することが効果的な緩和策であると正しく主張している。

しかし、彼らは供給体制の再構築にかかる時間(ほとんどの鉱山は生産開始までに少なくとも10年はかかる)と、このチョークポイント(choke point)が持つ特異な効果を軽視している。中国は自国への損失を最小限に抑えつつアメリカへの輸出を遮断することができ、同時に、産業生産ラインに必要な供給が枯渇することで、短期的にはアメリカに甚大な損害を与えることができる。

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二国間会談のために会場へ向かうトランプ大統領と中国の習近平国家主席(2025年10月30日、韓国釜山)

しかし、これはまさにトランプ政権が2025年に実行した実験である。中国との包括的な貿易戦争を仕掛け、同盟諸国を敵に回した。西側諸国が中国以外の代替サプライチェインを再構築したり、十分な備蓄を確保したりする時間もないまま、中国は非対称的なレアアース兵器を発動した。一方的な関税は、中国が輸出先を他国市場に転換し、過去最高の1兆2000億ドルの貿易黒字を計上することで容易に回避できる、弱い手段であることが証明された。経済力の均衡が明らかにアメリカと同盟諸国にある経済競争において、ワシントンは準備不足のまま単独行動に出るという、極めて不利な戦略を選択し、予想通りの結果を招いた。

しかし、アメリカには、絶望の中で過ちを繰り返し学ぶのではなく、そこから学び、適応する機会がある。アメリカと中国が長期的な競争関係に突入するならば、経済的影響力は、西側諸国が自国の利益に反すると考える中国の行動に対抗するための重要な手段となるだろう。逆に、経済的抑止力を維持することで、西側諸国は、中国の過剰生産能力を阻止するための貿易障壁の設置など、自国の利益になると考える政策を、中国からの報復を恐れることなく追求できる。ヴァーグルとブルックスが正しく指摘しているように、戦略的あるいは経済的な緊張がエスカレートし、報復合戦に発展した場合、アメリカは中国に対してより多くの切り札を持っている。中国がレアアース問題で強硬な措置を取った場合、アメリカは厳しい金融制裁、あるいは中国の輸出を支える重要な技術や投資の流れを遮断することで対抗できる可能性がある。

そうした措置は短期的には自国に経済的苦痛を与えることになるだろう。しかし、アメリカが経済的抑止力(economic deterrence)を回復し、中国の経済的圧力によってアメリカの政策が左右されるのを阻止することに真剣に取り組むのであれば、反撃に際して何らかのコストを負担する覚悟が必要であり、その代償として消費者や企業に補償を行い、痛みを和らげる必要があるかもしれない。

同盟諸国との連携もまた極めて重要である。短期的な交流であれ、分裂しつつある世界経済において長期的にアメリカ陣営を強化することであれ、同盟諸国はアメリカに圧倒的な経済力をもたらす。西側諸国にとって最大の課題は調整(coordination)にある。その優位性を真に活かすためには、ワシントンは西側パートナー諸国と経済安全保障同盟(an economic security alliance)を構築すべきだ。この同盟において、中国によるいかなる経済的圧力に対しても互いに支援し合い、対抗策、輸出規制、さらには相互経済援助を共同で計画することを誓約すべきだ。西側諸国は、ロシアによるウクライナへの本格的な侵攻に先立ち、まさにこのような協調的な制裁政策を効果的に実施した。

将来の政権はこれを教訓とすべきだ。アメリカがパートナー諸国の協力を得て断固として反撃し、企業や経済面での反発をある程度受け入れる覚悟があれば、実際には中国に対して経済的なエスカレーションにおいて優位に立つことができる。ワシントンが自らの同盟関係を分裂させることでその優位性を無駄にしてはならない。

※セオドア・ブンゼル:ラザード・ジオポリティカル・アドバイザリーのマネージングディレクター兼責任者。在モスクワ国大使館政治部と米財務省に勤務した経験を持つ。2008年から2010年までは、ズビグニュー・ブレジンスキーの研究助手を務めた。

(貼り付け終わり)

(終わり)



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シリコンヴァレーから世界支配を狙う新・軍産複合体の正体 
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『トランプの電撃作戦』
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世界覇権国 交代劇の真相 インテリジェンス、宗教、政治学で読む

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める

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 古村治彦です。

 「ストロングマン(Strongman)」と呼ばれるタイプの政治指導者が世界各国で生まれている。これは「強権的指導者」と訳すことができる。こうした指導者たちは、権力やカリスマ性、時には暴力を行使して、統治を行う。ストロングマンの中には、決断力や指導力に長けており、生活に不安や不満を持つ人々の支持を集めることができる。既存の政治に対する異議申し立て、ポピュリズムがストロングマンを生み出すことがある。アメリカのドナルド・トランプ大統領はその代表例ということになる。下記論考の著者スティーヴン・M・ウォルトは以下の通りに書いている。

「強権政治の魅力は、過去数十年にわたって主流派民主政体指導者たちが犯してきた様々な過ちに対する、ある意味当然の反応だった。アメリカは幾度となく愚かな戦争を戦い、敗北し、金融危機に見舞われたが、責任のある当事者を誰も追及せず、権力を新世代に譲ろうとしない高齢政治家たちに支配され続けた」。

 現在、世界各地でストロングマン指導者たちが出現している。ストロングマン指導者の出現には2種類のタイプがあると考えられる。発展途上諸国で見れば、経済運営や社会運営にかけた有能な政治指導者たちが出現している傾向がある。人々の支持を背景にして、強権的な手腕で、効率的な経済政策を実施し、経済発展に導き、人々の生活を向上させ、改善することでさらに支持を得るという形になっている。西側先進諸国で見れば、人々の不平不満、不安をうまく煽り、救い上げ、自身の救世主のように見せることに長けた人物たちが祭り上げられる。残念なことだが、西我が先進諸国全体で衰退の流れは大きく、逆転させる方策はない。しかし、ストロングマン指導者(に見える人々)は自身が問題を解決し、人々の生活が改善しているということを宣伝し、熱狂的な支持者たちが支持をするという形になっている。日本の高市早苗首相は完全に先進国タイプのストロングマン指導者、力を持っている、有能だと見せかけることに長けている政治家である。

 こうしたストロングマン指導者の出現には批判も大きい。それは、独裁的な政治手法が取られ、反対派に対する攻撃や弾圧が起きることがあるからだ。しかし、多くの場合、こうした政治指導者たちは人々の絶大な支持受けて誕生する。そして、既存の政治が解決できなかった諸問題を解決し、人々の不平不満に対処することで支持を拡大することになる。しかし、政治をはじめとする人間社会は振り子のように揺れ動く。ストロングマン指導者の下でもやはり様々な問題が発生する。そうした問題のために人々は不平不満を持ち、指導者たちを支持しなくなり、引きずり下ろす。こうして歴史は動いていく。「生者必滅会者定離」こそは人類の共通の真理となるだろう。

(貼り付けはじめ)

強権的指導者の時代はピークに達しつつある(The Strongman Era Has Peaked

-世界規模での権威主義的統治の時代はぜ終焉を迎えつつあるのか。

スティーヴン・M・ウォルト筆

2026年4月21日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2026/04/21/strongman-era-trump-orban-putin-xi-peaked/

つい最近まで、独裁的な指導者、いわゆる「ストロングマン(strongman)」支配者たちが隆盛を極めていた。ウラジーミル・プーティン、ヴィクトル・オルバン、レジェップ・タイイップ・エルドアン、習近平、ムハンマド・ビン・サルマン、ジャイル・ボルソナーロといった指導者たちは、その存在感と権力を増し、ドナルド・トランプ米大統領のような野心的な独裁者志望者たちの羨望の的となっていた。世界中で民主政治体制と自由は後退しつつあった。アメリカでさえ、憲法に明記された権力分立の原則は時代遅れに見え、いわゆる保守派は「一体的な行政部(unitary executive)」の美徳を声高に主張していた。批評家や学者たちは、『ストロングマンの時代(The Age of the Strongman)』や『ストロングマン:ムッソリーニから現代まで(Strongmen: Mussolini to the Present)』といった書籍を執筆し、民主政治体制の死因を解説し、「黒幕たちの協奏曲(concert of kingpins)」の可能性について考察していた。

強権政治の魅力は、過去数十年にわたって主流派民主政体指導者たちが犯してきた様々な過ちに対する、ある意味当然の反応だった。アメリカは幾度となく愚かな戦争を戦い、敗北し、金融危機に見舞われたが、責任のある当事者を誰も追及せず、権力を新世代に譲ろうとしない高齢政治家たちに支配され続けた。イギリスは、コメディアンや風刺作家の格好のネタを提供すること以外に何の功績もない無能な首相が次々と交代する混乱に苦しんだ。フランスはニコラ・サルコジ大統領の時代を耐え忍び、イタリアはシルヴィオ・ベルルスコーニ首相のオペラ・ブッフのような時代を生き延びなければならず、ドイツのアンゲラ・メルケル首相のような有能な指導者でさえ、最終的にはつまずいた。経済停滞、難民や移民の増加、テロへの過剰な懸念、その他の不安が渦巻く時代において、不確かな未来から一般市民を守ると約束する「強力な指導者(strong leader)」に頼る誘惑は、多くの人々にとって抗いがたいものだった。

しかし、ハンガリーのヴィクトル・オルバン首相の衝撃的な選挙敗北は、「独裁的な強権指導者の需要はピークに達したのか?」という疑問を投げかける。ハンガリーは人口がニューヨーク市よりわずかに多い程度の小国であり、どの国にも独自の政治力学があるため、この出来事を孤立した事例と捉えることもできるだろう。しかし、オルバンの敗北は、彼の統治の結果に対する深い不満から生じたものであり、今日の強権指導者たち(そう、彼らは皆男性である)も、ほぼ同じ理由で、より困難な未来に直面していると考える理由がある。彼らのほとんどは統治能力に乏しく、その理由は、一人の強力な指導者に国家政策を委ねることの限界を浮き彫りにしている。

オルバンから見ていこう。彼は明らかに非常に有能な政治家で、ハンガリーの諸制度を巧みに操り、権力を維持しながら、自分自身と側近の私腹を肥やすことに長けていた。しかし、オルバンが得意としていなかった、あるいはあまり関心がなかったのは、一般のハンガリー国民の生活向上だった。そして、この失敗が最終的に彼に跳ね返ってきた。低迷する経済実績、隠しきれないほどの汚職、そして国民の感覚からかけ離れたおべっか使いの側近たちへの依存の高まりが、彼の失脚への道を開いた。もし彼が(自己利益追求ではなく)より優れた統治を行っていたら、おそらく今も首相の座に留まっていた。

それでは、ロシアのプーティン大統領について考えてみよう。オルバンと同様、プーティンは権力を維持し、莫大な富を蓄積し、潜在的な挑戦者を排除することに非常に長けていることが証明されている。それは、故アレクセイ・ナワリヌイのような改革派政治家であろうと、プーティンと対立し、不審な飛行機事故で亡くなる前にワグネル・グループを率いていたエフゲニー・プリゴジンのような反抗的な内部関係者であろうと関係ない。そして数年前まで、プーティンは弱い外交政策をうまく乗り切ってきた。西側の多くの観察者とは異なり、私は彼がNATOの拡大やその他の西側政策を深刻かつ増大する脅威と見なす正当な理由を持っていたと考えている。しかし、この状況に対する彼の対応、特に2022年2月のウクライナ侵攻という運命的な決定は、ロシア国民が今後何十年にもわたって後悔することになるだろう失策だった。ロシアにとっての代償は莫大であり、より豊かでよりダイナミックなパートナーである中国への依存度は急速に高まり、将来の権力の基盤となる科学技術分野で世界の他の国々にますます遅れるようになっている。スウェーデンとフィンランドはNATOに加盟し、ヨーロッパは再軍備(rearmament)を進めている。ウクライナに対する決定的な勝利(これは既定路線ではない)があったとしても、ロシアの列強における地位低下を覆すことはできないだろう。プーティン大統領はおそらく生涯権力を維持するだろうが、ロシアは別の指導者の下で築かれたであろう繁栄と安全保障よりも劣るだろうし、彼の残忍な統治スタイルは多くの模倣者を引きつける可能性は低い。

トルコのレジェップ・タイイップ・エルドアン大統領はどうだろうか? 他の強権的な指導者たちと同様に、彼は度重なる失策にもかかわらず、権力の強化と維持において卓越した手腕と冷酷さを兼ね備えている。また、トルコの地政学的な立場を巧みに利用し、トルコとの協力を望む他国から利益や譲歩を引き出すことにも長けている。とはいえ、20年以上にわたる彼の政権を成功物語と捉えるのは難しいだろう。トルコの経済実績は、汚職とエルドアン大統領の軽率な介入が主な原因で期待外れに終わり、かつて「近隣諸国との問題ゼロ(zero problems with neighbors)」を目指した外交政策は、多くの国との対立を招く結果となった。こうした実績を踏まえれば、エルドアン大統領が権力維持のためにますます強硬な手段に訴えざるを得ないのも当然と言えるだろう。

そして、サウジアラビアのムハンマド・ビン・サルマン王太子も忘れてはならない。国内における彼の権威は揺るぎないように見えるが、サウジアラビアの事実上の指導者としての年月は、彼にとって謙虚さを強いるものとなっている。はっきり言って、王国の経済を近代化し、石油と天然ガスへの依存を減らし、宗教警察の権力を打破し、スポーツウォッシングやその他の注目度の高いイヴェントを通じて国の国際的なイメージを高めようとする試みは、理にかなっていた。しかし、この壮大なビジョンの実現は、不手際が多く、衝動的だった。イエメンへの高額な軍事介入や、レバノンの内政を支配しようとする誤った試みなど、彼の初期の外交政策は大きく裏目に出て、反体制派ジャーナリストだったジャマル・カショギの残忍な暗殺は事態をさらに悪化させた。ムハンマド・ビン・サルマンの「ビジョン2030」プロジェクトの壮大な野望何もないところから巨大な未来都市を建設することなどは、現実的かつ経済的な現実によって頓挫し、これらの取り組みに資金を提供していた政府系ファンドは最近、計画の大幅な縮小を発表した。これはまさに、指導者の判断に誰も疑問を呈したり、彼らの考えに現実味を持たせたりできない体制において予想されるような大失敗である。

次に、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相について考えてみよう。彼は公正な選挙で民主的に選出され、国内の制約(例えば、分裂しがちな連立政権の運営)に直面しているため、真の独裁者とは言える。それでも、彼は逃げ道分野の素晴らしい芸術家(a brilliant escape artist)であり、幾度となく権力の座にしがみついてきた。その一因は、アメリカが彼の行動の結果からイスラエルを守ろうとする姿勢にある。しかし、彼の長期政権の結果、イスラエルはかつてないほど深く分裂し、国際社会ではますます孤立し、アメリカ国内での支持率は急落し、度重なる残忍な爆撃作戦にもかかわらず、様々な敵対勢力を排除できていない。自国を戦争状態に維持することによってのみ権力を維持できるとしたら、それは決して指導者としての資質を示すものではない。

あるいは、中国の習近平国家主席を取り上げよう。習近平は、中国共産党が独裁体制を阻むために様々な障害を設けようとしたにもかかわらず、権力の集中化に非常に長けており、グリーンテクノロジーの急速な発展など、大きな成果を上げ、将来さらに価値を高めることになる賢明な賭けもいくつか行ってきた。また、無益な戦争に何兆ドルもの資金を浪費したり、長年のパートナー国に対して略奪的な覇権主義的な振る舞いをしたりといった、アメリカの指導者たちの過ちからも恩恵を受けてきた。しかし、習近平は中国経済の均衡を取り戻し、深刻な人口問題に対処し、台湾を支配下に置き、慢性的な若年失業の問題を​​解決できていない。そして、軍の最高司令官を含む高官の粛清が際限なく続いているように見えることは、強さの表れであると同時に弱さの表れでもあるかもしれない。彼は他の強権的な指導者たちよりはより良い成果を上げているが、独裁的指導力の優位性を証明するほどではない。

ここからトランプの話に移る。彼は本物の独裁者ではないが、そうなりたいと思っていることは疑う余地がないほどだ。考えてみて欲しい。彼は「自分だけが重要だ(only one that matters)」と考えている大統領であり、ワシントンのあらゆる建物に自分の名前を掲げたがり、側近や閣僚、外国の指導者から恥ずべき忠誠心を示すことを期待し、そして、読者の皆さんも想像できる通り、自分自身を称える巨大な凱旋門(a giant triumphal arch)を建てたがっている。民主政体の中で暮らすことを好む私たちにとって朗報なのは、トランプの2期目の業績が惨憺たるもので、世論調査の結果がそれを示していることだ。彼の経済政策は製造業を助けるどころか害を与え、インフレを煽り、連邦財政赤字を増大させた。彼の外交政策は、何の益にもならずにアメリカの伝統的な同盟諸国を疎外し、2カ月前のイラン攻撃の決定は戦略的に大失敗だった。MAGAMake America Great Again)の基盤に亀裂が生じ始めている。トランプがオルバン首相を支持したこと(副大統領のJD・ヴァンスをオルバンの応援演説に送り込んだことを含む)は、ピーター・マジャールがオルバンに勝利する一因となった可能性が高い。また、イギリスのナイジェル・ファラージやイタリアのジョルジア・メローニ首相など、トランプの他の海外の友人たちも距離を置き始めている。トランプ一人で、何千もの法律論文よりもはるかに多くの、単一行政権の危険性を浮き彫りにしたと言えるだろう。

一方で、一部の民主政治体制と指導者たちは、希望の兆しを見せている。カナダのマーク・カーニー首相は議会で圧倒的多数を獲得し、トランプ主義に代わる、明らかに理性的で、今のところ成功を収めている選択肢として地位を確立した。ニューヨーク市長ゾーラン・マムダニは、強い信念、ユーモアのセンス、ソーシャルメディアの巧みな活用、そして相手側との対話を惜しまない姿勢が、選挙で報われることを証明した。韓国とブラジルはクーデター未遂を乗り越え、責任者を迅速に追及した。これは、トランプが2020年の大統領選挙結果を覆そうとした後、アメリカができなかったことである。そしてハンガリーの有権者はオルバンの縁故主義(cronyism)と脅迫戦術(scare tactics)を断固として拒否し、次期首相に指名されたマジャールは、オルバンが築き上げた非自由主義的な政治機構を解体する計画を立てている。

この傾向を過大評価したり、楽観的すぎる見方をしたりなどしたくない。多くの国は今後も独裁的な指導者によって率いられ続けるだろうし、上で述べた強権的な指導者の中には、自ら辞任したり、他者によって排除されたりするよりも、終身権力を握る可能性の方が高い者もいるだろう。トランプやエルドアン(あるいはインドのナレンドラ・モディ)のような非自由主義的な「民主政体支持者(democrats)」が世界の舞台から消え去ることはないだろう。そして、世界有数の民主政体国家、特にアメリカ合衆国は、分極化(polarization)、膠着状態(gridlock)、過度の不平等(excess inequality)、民主的規範の衰退(the erosion of democratic norms)といった根深い問題に直面している。しかし、数年前に強権的な指導者たちが享受していた威勢の良さは薄れつつあり、彼らの政策の失敗は、一人の人間の判断に頼ることの限界を示している。彼らの失敗がより明らかになるにつれ、ウィンストン・チャーチルの有名な皮肉の言葉である「民主政体は最悪の政治形態である。過去の他の全ての政治形態を除いては(democracy is the worst form of government, except for all the others)」という言葉が改めて思い起こされる。

※スティーヴン・M・ウォルト:『フォーリン・ポリシー』誌コラムニスト。ハーヴァード大学ロバート・アンド・レニー・ベルファー記念国際関係論教授。Blueskyアカウント:@stephenwalt.bsky.socialXアカウント:@stephenwalt

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 古村治彦です。

 5月に米中首脳会談、中露首脳会談が北京で実施された。その後、習近平中国国家主席の7年ぶりの北朝鮮訪問、平壌(ピョンヤン)での北朝鮮の最高指導者である金正恩委員長との首脳会談が実施されるという報道が出た。その後、本日8日から習主席による訪朝が実施されると発表された。習近平訪朝の報道が出た後、中国が北朝鮮を自分の陣営、影響圏にとどめておくことを重要視しているという分析が多く出た。それについてはこのブログでもすでにご紹介した。北朝鮮は国際政治の中で、独自の立場を築きつつある。ロシアにはウクライナ戦争への派兵と戦死傷者を出すということで、朝露関係は「血の盟約」に格上げとなった。ロシアからは石油や技術支援を得ることが可能になった。中国への依存度を減らすことに成功した。中国としてこれは困る。北朝鮮が行動の自由を得て勝手な行動を行うことは、予測不可能性が高まり、東アジア地域の安全環境にとってマイナスだ。先日の中露首脳会談で、中国の習近平国家主席はロシアのウラジーミル・プーティン大統領に、北朝鮮との関係について一種の「警告」を発しただろうと私は考えている。

 重要なことは、中朝首脳会談は、習近平国家主席が北朝鮮を訪問する形になるということだ。米中首脳会談、中露首脳会談はドナルド・トランプ大統領、ウラジーミル・プーティン大統領が北京を訪問するという形になった。それに対して、習近平国家主席が北朝鮮までわざわざ足を運ぶという形を取ることで、北朝鮮側の字損信を満足させるということになる。しかし、その代償としては、北朝鮮に対しては厳しい「警告」もあるだろうと私は考えている。もちろん、自分の陣営にとどめるために、支援の約束もするだろうが、「誰が北朝鮮をこれまで支えてきて、国家として存続することを助けてきたのか」ということを金正恩委員長にしっかりと理解させることが最優先事項となるだろう。

中国が見放してしまえば、北朝鮮は国家として存続することができない、もちろんそんなことになれば、北朝鮮は自暴自棄になって何をするか分からないのではあるが、最終的には中国人民解放軍が北朝鮮の人民を「解放」するために国境を越えて侵攻し、現体制の転換、金王朝の打倒を強引に行うということも示唆するだろう。そういうことはしたくないから、核兵器保有までは認めてやるが、それ以上、暴れるようなことはするな、分かっているなということを確認するための中朝首脳会談となるだろう。金正恩委員長も馬鹿ではない。外交に関して軌道修正を行うということになるだろう。

(貼り付けはじめ)

中国は北朝鮮を自分の陣営にとどめる必要がある(China Needs North Korea on Its Side

-もう筋実施されると見られる習近平国家主席の平壌訪問は7年ぶりとなる。

デン・イーウェン筆

2026年5月27日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2026/05/27/xi-jinping-kim-jong-un-china-north-korea-visit/

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北京の天安門広場で、ロシアのウラジーミル・プーティン大統領、中国の習近平国家主席、北朝鮮の金正恩委員長が並んで歩いている(2025年9月3日)

韓国メディアは最近、中国の警備・儀典担当者が既に平壌入りして、準備を進めていると報じ、習近平国家主席が5月下旬か6月上旬に北朝鮮を訪問する可能性があると伝えた。

中国は訪問を正式に発表していないが、今回の訪問は長らく待たれており、習主席の視点からすれば必要不可欠だ。北京と平壌は、表向きは緊密な関係にあるものの、水面下では両国関係はしばしば緊張状態にある。中国は北朝鮮の核保有国としての地位を完全には認めておらず、北朝鮮における影響力をロシアに奪われることを懸念している。

習主席が最後に平壌を公式訪問したのは2019年6月で、7年近く前のことだ。パンデミックによる3年間を除いても、これは長い空白期間であり、その間、習主席は韓国を含む多くの国を訪問している。キューバやヴェネズエラの首脳をはじめ、ここ数週間でドナルド・トランプ米大統領やウラジーミル・プーティン露大統領など、多くの外国首脳が中国を訪問している。平壌にもプーティン大統領やヴェトナムのト・ラム大統領など、多くの賓客が訪れている。

外交儀礼の空白自体が政治的なシグナルとなる。そして、北朝鮮が世界から極めて閉鎖的であるため、中国と北朝鮮の外交は本質的に異例である。中朝両国は共産主義国家であり、相互支援の歴史を持ち、北朝鮮は中国にとって唯一の正式な条約同盟国であるものの、「血で結ばれた(forged in blood)」友情は見た目以上に脆い(fragile)。

習近平国家主席の訪朝が長らく遅れていることは、北朝鮮が事実上の核保有国(a de facto nuclear-armed state)となったという現実を北京がまだ完全に受け入れていないことを反映しており、これが中朝関係の深化を阻む大きな障害となっている。

北朝鮮は既に核兵器を保有しており、一方、中国の長年の外交政策は朝鮮半島の非核化(the denuclearization of the Korean Peninsula)である。北朝鮮の金正恩委員長にとって、核兵器は体制の安全保障を究極的に保証するものであり、小国としての運命を免れ、アメリカと交渉するための唯一の切り札(nuclear weapons are the ultimate guarantee of regime security and North Korea’s only bargaining chip to escape the fate of a small state and negotiate with the United States)である。金委員長に核兵器放棄を求めることは、体制の安全保障を放棄させることに等しい。北京にとって、北朝鮮を核保有国として公然と認めることは、中国が長年堅持してきた核不拡散の立場を損ない、韓国、日本、その他諸国からの連鎖反応を引き起こす可能性がある。

北京はかつてアメリカと協力して北朝鮮に核開発計画の放棄を迫ったが、これは中朝両国関係を悪化させた。その結果、中朝関係は長年にわたり極めて悪化した。最終的に、北京は北朝鮮の核兵器保有を暗黙のうちに容認せざるを得なくなった。つまり、朝鮮半島の非核化を原則として強調し続けながらも、実際には北朝鮮が核保有国であることを認めざるを得なかった。

中国の外交用語には依然として「朝鮮半島の非核化」という言葉が使われているが、もはや中朝関係の中心的なテーマではない。北京は、朝鮮半島の平和と安定、政治的解決、アメリカの軍事的抑止力への反対、そして北朝鮮の正当な安全保障上の懸念への尊重をより重視するようになっている。この変化は重要である。これは、北京が平壌との関係を重視し、米日韓安全保障同盟への対抗を非核化という目標よりも優先させていることを示している。

習近平国家主席の訪朝は、新たな協議の機会となる。北京は、北朝鮮の核問題を中国と北朝鮮の首脳レヴェルの交流を阻害する要因としてこれ以上容認できないと認識したのかもしれない。中朝両国関係は、北朝鮮の事実上の核保有という現状を踏まえて再構築される必要がある。

習主席の訪朝はまた、中国が北朝鮮を自国の戦略的緩衝システム(its own surrounding strategic buffer system)に再び組み込むことを意味するだろう。現在、日米韓の安全保障協力が深化し、日中関係が極めて悪化している状況下で、北朝鮮の中国にとっての戦略的価値は高まっている。核武装した北朝鮮は、もちろん中国にとっても潜在的な脅威ではあるが、日本にとってはより差し迫った脅威であり、北京にとっては切り札となる。

習近平はプーティン大統領のことも念頭に置いている。金正恩がモスクワに接近したのは、中国をロシアに取って代わらせたいからではなく、北朝鮮の安全保障を保証してくれる後ろ盾が必要だからだ。プーティン大統領はまさにその支援を提供する用意がある。しかし、ロシアが北朝鮮に提供できるのは軍事・安全保障面での支援だけであり、1980年代から1990年代にかけて中国が追求し、中国当局が長年北朝鮮に受け入れるよう働きかけてきたような、完全な発展の道筋を示すことはできない。

中国が北朝鮮との距離を保ち続ければ、北朝鮮はますますロシアに接近し、最終的には朝鮮半島における支配的な地位を失うことになるだろう。こうした現実を踏まえ、中国は習近平の訪問を利用して、経済的・安全保障上のインセンティヴを提供することで、北朝鮮を北京主導の軌道に引き戻そうとするだろう。

さらに、習近平の訪問は、豆満江河口と羅津・先峰経済特区へのアクセスを開放し、中国東北部の経済を活性化させることも目的としている。かつて中国の工業地帯として栄えたものの、長らく停滞状態に陥っている中国東北部の復興は、長年にわたり議論されてきたものの、いまだに本格的に始動していない。

人口減少や制度の停滞など、その理由は多岐にわたるが、周辺地域との関係も無視できない。中国東北部は北朝鮮と国境を接しており、北朝鮮の長期にわたる閉鎖政策が、真の意味での国境を越えた交流や貿易の機会を阻んできた。もし中朝関係が改善し、北朝鮮が限定的な形で開放政策を実施し、豆満江の河口が開放され、羅津港と羅先経済特区が再び活発化すれば、中国東北部は朝鮮半島、ロシア極東、そして日本海を結ぶ新たな繋がりを築き、新たな未来を切り開く可能性を秘めている。プーティン大統領の最近の中国訪問において、習近平国家主席との共同声明で再び豆満江問題と北朝鮮との協議の必要性が言及されたことは、この問題が依然として完全には解決されていないことを示している。

金正恩委員長には、習主席の訪問を歓迎する独自の理由がある。プーティン大統領は既に国内における王朝的権威(dynastic authority)を固めているものの、国外からの承認も必要としている。北朝鮮訪問は既に安全保障面で大きな支持を得た。しかし、中国の重要性は異なる。今日のロシアは、戦争と制裁に苦しみ、国力が衰退している大国である。一方、中国は世界第2位の強国である。

北朝鮮が真に発展を望み、政権の安定を維持するためには、依然として大国である中国の援助と支援に頼らざるを得ない。習近平国家主席の訪朝延期が続くということは、中朝関係がそれほど強固ではなく、金正恩の個人的権威が習主席の全面的な支持を得ていないことを意味する。したがって、金正恩委員長は習主席を盛大に歓迎することで、自身の権威にさらなる正当性を加える必要がある。

そして、北朝鮮が将来的に門戸を開放し、国際社会に復帰したいのであれば、孤立国家(a pariah state)の瀬戸際に立たされているモスクワではなく、北京を必要とする。特に、金正恩委員長がアメリカとのルートを開設し、トランプ大統領との首脳会談を再び開催し、アメリカの制裁の一部解​​除を実現したいのであれば、北京の仲介と安全保障の提供が必要となるだろう。

習主席の北朝鮮訪問は、金正恩委員長が中国を迂回してトランプ大統領と直接接触し、将来のトランプ大統領との首脳会談から中国が排除されることを北京が恐れていることの表れだと指摘する人もいる。習近平国家主席が北朝鮮を訪問すれば、トランプ大統領へのメッセージを伝える可能性は確かにある。しかし、北京が将来の米朝交渉から中国が排除されることを恐れているというのは誇張である。北朝鮮はそのようなことはしないし、そもそもできない。金正恩委員長とトランプ大統領の過去2回の会談では、中国は排除されなかった。むしろ、金委員長はシンガポールでトランプ大統領と会談する前に、まず北京で習主席と会談した。

今日、金委員長が北京を迂回して単独で行動することは、さらに困難になっている。北朝鮮はアメリカを信用しておらず、金委員長もトランプ大統領を信用していない。2019年のハノイ首脳会談の失敗は、金委員長にとって痛恨の出来事であり、教訓となった。彼はすでにトランプ大統領の土壇場での要求や突然の方針転換を経験している。ヴェネズエラやイラン、そしておそらくキューバでの経験を踏まえれば、小国は大国の支援、核兵器、あるいはその両方を必要とするという確信をさらに強めるだろう。彼がアメリカとトランプ大統領を信用しているだろうか?

習近平国家主席の訪朝は、核問題をめぐる中朝両国間の対立が完全に解消されることを意味するものではない。しかし、両国は現実に基づいた、より現実的な二国間関係を構築するだろう。中朝両国は伝統的な友好関係を引き続き重視する。北朝鮮は引き続き中国の保護と支援(China’s protection and assistance)を必要とし、北京は引き続き北朝鮮を自国の交渉材料(its own bargaining chip)として必要とする。それぞれが必要なものを得ることで、相互の実用的な関係(a relationship of mutual pragmatism)は長く続く可能性がある。

※デン・イーウェン:中国の作家・学者

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 古村治彦です。

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 2026年5月14日から15日にかけて米中首脳会談、20日に中露首脳会談が北京で実施された。アメリカのドナルド・トランプ大統領とロシアのウラジーミル・プーティン大統領が北京を訪問し、習近平中国国家主席が出迎える形となった。20世紀の第二次世界大戦後の世界を二分し、冷戦を戦った超大国である米露(旧ソ連)の最高指導者たちが21世紀の覇権国となる中国を訪問したことは歴史の皮肉である。中露首脳会談後、今度は中朝首脳会談の話が出てきた。習近平主席が7年ぶりに北朝鮮を訪問し、金正恩委員長と会談を持つということだ。トランプとプーティンを北京に来させた習近平がわざわざ北朝鮮を訪問するというのは、北朝鮮と金正恩委員長を尊重しているという外形を取りながら、中身は厳しい対処を行うということではないかと私は考えている。
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 それは、「北朝鮮は誰のおかげで存続できているのか」ということを改めて認識させるということだ。最近でいえば、ロシアと北朝鮮の接近ぶりが際立つ。北朝鮮はウクライナ戦争に北朝鮮人民軍を派遣し、多数の戦死者と負傷者を出している。その代わりにロシアから武器開発や資源などの支援を受けている。北朝鮮とロシアは北朝鮮の核開発でも旧ソ連時代から協力関係にある。ロシア(旧ソ連)は北朝鮮を中国に対する一種の牽制要員として利用している。しかし、実際に北朝鮮が国家として存続できているのは中国からの支援が大きい。そもそもが朝鮮戦争で鴨緑江まで追い詰められた北朝鮮に中国が人民義勇軍による支援を行ったことで、38度線付近まで押し返すことができた。中国側の膨大な死傷者や武器の犠牲があって北朝鮮の存立は守られた。北朝鮮のロシアへの接近は中国を苛立たせる。北朝鮮がロシアと接近することで中国の影響から脱しようという動きは中国としては許せないことになる。そのために、あくまで北朝鮮のメンツをつぶさない形で、北朝鮮に釘を刺すということになる。
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 中朝露の関係が今は中国とロシアが接近していることで二等辺三角形になっている。これでは下がぐらつくことで関係が安定しない。あくまで正三角形にならねばならない。そのための動きであると私は考えている。

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習近平国家主席がトランプ退任後を見据えて外交攻勢を加速させている(Xi’s Flurry of Post-Trump Diplomacy

-中国の習近平国家主席は異例かつ重要な北朝鮮訪問の準備を進めている可能性がある。

リシ・イエンガー筆

2026年5月22日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2026/05/22/xi-north-korea-putin-trump-beijing-visit/

中国の習近平国家主席は、ドナルド・トランプ米大統領と(多額の費用をかけずに[without breaking the bank])北京での初会談を行った(breaking the ice)わずか数日後、より長年のパートナーとの関係に目を向けた。

習主席は火曜日、ロシアのウラジーミル・プーティン大統領を北京に迎え、実質的でより友好的な会談を行った。中露両首脳は、中国とロシアの「永遠に続く友情(everlasting friendship)」をテーマにした写真展に出席し、原子力エネルギーからヒョウ、パンダ、サルなどの保護に至るまで、あらゆる分野で「協力を深化させる(deepen cooperation)」ことを誓う長文の共同声明を発表した。また、トランプ大統領が提案したゴールデンドームミサイル防衛システムを「戦略的安定に対する明白な脅威(clear threat to strategic stability)」と名指しし、米露核兵器条約(新戦略兵器削減条約[New START])の失効を容認したトランプ大統領の「無責任な政策(irresponsible policy)」を非難した。

しかし、この包括的な会談は、全く予想外という訳ではなかった。習近平国家主席は、プーティン大統領の中国公式訪問が25回目であることに触れ、中露両国が築いてきた緊密なパートナーシップを強調した。

しかしながら、習主席はプーティン大統領の訪問に続き、さらに稀で重要な外交的行動を計画している可能性がある。複数の報道によると、習主席は数日中、早ければ来週にも北朝鮮を訪問する準備を進めているという。中国は公式には訪問を発表しておらず、在ワシントン中国大使館もコメントを拒否している。

もし実現すれば、習主席の北朝鮮訪問は、中国の最高指導者となって2度目、そして7年ぶりとなる。中朝両国は何十年にもわたり緊密なパートナーシップを築いてきた。北朝鮮の貿易のほぼ全ては中国とのものであり、北朝鮮は中国が相互防衛条約(a mutual defense pact)を結んでいる世界で唯一の国である。

しかし、北朝鮮とロシアの緊密化、特にウクライナにおけるロシアの戦争への軍事支援は、中国の立場をやや後退させている。北朝鮮の金正恩委員長とプーティン大統領は2024年に独自の相互防衛条約を締結した。

ワシントンのブルッキングス研究所の上級研究員で、SK-コリア財団韓国研究講座担当のアンドリュー・ヨーは、「習近平国家主席は、モスクワと平壌の強固で深まる関係にあまり乗り気ではないという見方がある。北朝鮮に対する影響力を失うリスクがあるため、中国は自国の存在感を維持したいと考えている」と述べている。

ヨー続けて次のように述べている。「中国は不安定性(instability)も懸念している。独自の路線を歩む北朝鮮にロシアの兵器や技術が渡れば、不安定化を招く可能性がある。中国が最も恐れているのはまさにその点であり、だからこそ北朝鮮が自国の勢力圏(orbit)に留まるようにしたいと考えている」。

中国が北朝鮮との関係強化を図る動きは、昨年1年間で勢いを増している。昨年9月には習近平国家主席が北京で行われた軍事パレードに金正恩委員長(プーティン大統領も同席)を迎え入れた。また、王毅外相も先月、北朝鮮の首都平壌を訪問し、金委員長と会談した。その中で、中朝両国が「主要な国際問題および地域問題について意思疎通と連携を強化する」必要性を強調した。

北朝鮮外交に関心を示す最近の訪問客は、プーティン大統領だけではない。トランプ大統領は政権復帰後、2019年の金委員長との歴史的な会談を再現したいと繰り返し示唆してきた。昨年、トランプ大統領は何度か金委員長と「会いたい」と述べ、先週、北京で習主席と北朝鮮問題について話し合ったことを記者団に明らかにした(ただし、会談内容の詳細は明らかにしなかった)。

しかし、北朝鮮はトランプ政権1期目、金正恩委員長がトランプ大統領と3度会談した時よりもはるかに自信に満ち、強硬な姿勢を見せている。この自信は、ロシアからの支援に加え、サイバー攻撃で数十億ドル相当の仮想通貨を奪取し、国際的な制裁を乗り切るための資金源としていることも一因だ。バイデン政権の国家安全保障会議で東アジア・オセアニア担当上級ディレクターを務めたミラ・ラップ=フーパーは、こうした状況も平壌と北京の関係に影響を与えるだろうと指摘する。

ラップ=フーパーは次のように語っている。「北朝鮮はここ2年間、ここ数十年で最も自信に満ち、制約の少ない立場にある。近年、北朝鮮にはほとんど焦りの兆候が見られない。北朝鮮が望んでいるのは、中国との関係をより強固なものに再構築することだろう。つまり、北朝鮮はもはや従属的なパートナー(a junior partner)や副官(a sheriff’s deputy)のような存在ではなく、中国・ロシア間のパートナーシップにおいて、より対等な立場に立つことを目指している」。

一方、中国の野心ははるかに広範で、よりグローバルなものだ。習近平国家主席の活発な外交活動は、世界における中国の地位と国際社会における台頭を示すシグナルを送るためだ(彼は将来のアメリカ軍の北京訪問についても強硬な姿勢を示している)。

オバマ政権、第一次トランプ政権、バイデン政権を通じて、国家安全保障会議や国務省などでアジア担当の政府高官や外交官を務めたダニエル・クリテンブリンクは、「ここで重要なのは、中国が世界の舞台でリーダーシップを発揮しようとしていることであり、個々のやり取りに焦点を絞りすぎるのは避ける必要がある」と述べた。

現在、ワシントンに拠点を置く地政学コンサルティング会社であるアジア・グループのパートナーを務めるクリテンブリンクは、3月の北京訪問時にその雰囲気を肌で感じたと述べ、トランプ大統領とプーティン大統領による相次ぐ首脳会談によってその思いはさらに強まったと述べた。クリテンブリンクは次のように述べている。「中国の自信はかつてないほど高まっている。国際情勢が中国に有利に働き、中国の時代が到来し、中国はそのチャンスを活かさなければならないという確信を持っている。こうした変化の多くは不安を掻き立て、混乱を招くものだが、それでも中国指導部からは公私ともに、中国はこれらの課題全てに対する解決策を持っており、その解決において中国が中心的な役割を果たすだろうというメッセージが伝わってきたように感じた」。

習近平国家主席の平壌訪問は、主に二国間関係の強化とロシアとの関係調整を目的としたものとなるだろうが、同時に、中国が不可欠なグローバルプレーヤーとしての地位を確立しようとする、より広範な動きの一環でもある。

ブルッキングス研究所ジョン・L・ソーントン中国センター所長ライアン・ハスは次のように述べている。「2026年前半、北京は世界外交の中心地(the center of gravity for global diplomacy)となった。北京は、国際秩序の維持に努める予測可能な主体として自らを位置づけている。中国は、世界の舞台で外交的影響力を蓄積するために、アメリカとの対比を巧みに利用している」。

※リシ・イエンガー:『フォーリン・ポリシー』誌スタッフライター。Blueskyアカウント:@iyengarish.bsky.socialXアカウント:@Iyengarish Instagram: @iyengar.rishi

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 古村治彦です。

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ザ・フナイ vol.225(2026年7月号)

 日中関係は冷え込んでいるという表現が生温いほどに悪化している。2025年11月の高市早苗首相の不要な台湾に関する発言から、すでに半年ほどを経過し、改善の努力は続けられていると思うが、成果は見られない。これは、近衛文麿首相の「爾後国民政府を対手(あいて)とせず」並みの日中関係における重大なマイナス発言として、後世の歴史家たちから評価されるだろう。あの時に謝って撤回しておけばここまでのことにはならなかった。高市首相は国益を毀損した首相である。


 米中首脳会談(5月14~15日)、中露首脳会談(5月20日)が行われ、ここで、日本の「新型軍国主義(Neo-Militarism)」について、中国の習近平国家主席が警告を発したという報道がなされている。米中首脳会談では議題に出る予定ではなかったのに、習主席が激しい言葉遣いで日本の新型軍国主義を非難したことに、アメリカ側が驚いたということだ。トランプ大統領は北朝鮮の脅威があるので日本の防衛費は増加しているという趣旨の発言をしたということだが、そもそも、どうしてアメリカ大統領が日本の弁護をしなければならないのかと大いに不満を持ったと思う(実際にはアメリカが大幅増額を要求しているのであるが)。「アメリカが増額するように命令しているからですよ」とはいくらトランプ大統領でも言えなかったようだ。「日本はあなたのところの属国だ。しっかり管理をしてくれなければ困る」ということになったようだ。トランプ大統領は帰りの飛行機から高市首相に15分間電話をしたそうだが、その内容は伝わっていない。「まぁ何とかとりなしておいたから」と言ったと考えられるし、「少しはおとなしくしろ」と言った可能性もある。

 中露首脳会談後の共同声明では、日本の「新型軍国主義」への非難の言葉が記載されている。米中首脳会談での話はあくまでメディアによる取材で出てきた話であるが、中露首脳会談の共同声明はきちんとした証拠となる。中国とロシアが日本の「軍国主義」傾向に警戒感を持っているということを公に示した。国連常任理事国で、日本の隣国である中国とロシアがそのような態度となっている。この状況は非常にまずい。これで日本国内に核武装の機運が高まるということになれば、国連憲章第53条や第107条にある「敵国」認定される可能性もある。もちろん、アメリカが国連安全保障理事会で拒否権を発動してくれて、日本が攻撃されることはないだろうが、今の日本は非常に危うく外側からは見えている。

 中国側が使う「新型軍国主義(xin xing jung guo zhu yi)」という言葉は、新型コロナウイルスの中国語訳である「新型冠状病毒(xin xing guan zhuang bing du)」を連想させる。ある意味では、ここに救いがある。「日本は新型軍国主義ウイルスに感染している状態で病気なのだからその治療をすれば元に戻る」と中国側は見てくれていると考えることもできる。

 日本は少子高齢化が世界で最も進み、経済力は衰え、国力研究会に今更研究をしてもらわなくても国力は大きく衰退している。日本は21世紀の「東亜病夫(sick man of East AsiaDōngyà bìngfū)」である。この言葉は19世紀末に衰退していた清朝に対して使われた言葉である。病気から目を逸らすために、病気の痛みや苦しさから目を逸らすために、「排外主義」や「過激なナショナリズム」に走り、果てには核武装を言い出す人たちが出てくる。それを外側から煽り立てる勢力がいる。現在のような状況が続けば、日中間の不測の事態、思いがけない武力衝突の可能性が高まるばかりだ。日本が東アジアと世界の不安定要因にならないためにも現在のような極右的志向を改めることが重要だ。
 しかし、日本人は全体として新型軍国主義というウイルスを避けるための「免疫システム(immune system)」である「知性」や「思考力」が極端に低下している。このウイルスとの戦いに勝てるかどうかは甚だ悲観的にならざるを得ない。

(貼り付けはじめ)

中国の習近平国家主席はドナルド・トランプ米大統領との首脳会談で日本の「再軍備」を激しく非難した(Xi Jinping railed against Japan’s ‘remilitarisation’ at Donald Trump summit

-習主席は、アメリカの同盟国である日本の防衛費増額を批判する際に、激しい口調で発言した。

デメトリ・セヴァストプロ(ワシントンDC)、ジョー・リーヒー(北京)、レオ・ルイス(東京)筆

2026年5月25日

『フィナンシャル・タイムズ』紙

https://www.ft.com/content/70e922b3-c423-40f2-9c9d-1c64a38e026b?syn-25a6b1a6=1

北京で行われたドナルド・トランプ米大統領との首脳会談で、習近平中国国家主席は高市早苗首相に対し、日本の「再軍備(remilitarisation)」を激しく非難した。会談に詳しい7人の関係者が明らかにした。

習主席は日本について語る際、声を荒げ、感情的(vocal and agitated)になった。首脳会談前には中国側との協議で日本問題が取り上げられていなかったため、アメリカ政府当局者たちは驚いた。複数の関係者によると、習主席の激しい非難は、2日間にわたる首脳会談の中で最も白熱した場面(the most heated part)だったという。

習主席が高市首相と日本の防衛費増額を厳しく批判した後、トランプ大統領は、北朝鮮の脅威の高まりを理由に、日本はより積極的な安全保障姿勢を取る必要があると応じた。トランプ大統領が、日本の最大の安全保障上の懸念事項である中国について、同じ文脈で言及したかどうかは不明である。

元ホワイトハウス対日担当高官のクリストファー・ジョンストンは、習主席の日本に対する「辛辣なアプローチ(caustic approach)」と、トランプ大統領の米中関係安定への願望を利用しようとする試みは、安全保障における自立を目指す日本の姿勢を改めて裏付けるものだと述べた。

「習近平の自己認識の欠如は驚くべきものだ。彼自身の行動が、より強力な日本の台頭を加速させている」とジョンストンは述べた。

「中国の反日的なレトリックは、自国国境の外では支持を得ていない。・・・東京は、オーストラリア、フィリピン、そして韓国を含む地域全体のパートナー諸国との安全保障関係を強化している。これらの国々は皆、『再軍備(remilitarizing)』を進める日本よりも、攻撃的な中国をはるかに懸念している。」

日本は毎年発表する防衛白書において、北朝鮮よりも中国の脅威を優先的に挙げてきた。2023年以降、中国の軍事活動と対外姿勢を「最大の戦略的課題(greatest strategic challenge)」と位置づけている。2026年版防衛白書の草案では、中国による近年の軍事的強硬姿勢の高まりに焦点を当て、北京とモスクワの軍事協力の深化に「深刻な懸念(serious concern)」を表明している。

北京と東京の関係は、昨年11月、高市首相が台湾への中国の攻撃は日本にとって「存立の危機(existential threat)」となり、自衛隊の派遣を正当化する可能性があると発言したことに対し、中国が激しく反発して以来、急激に悪化している。高市首相の発言は政策変更を意味するものではないものの、中国からの非難を招いた。

中国はその後も日本に対する攻撃を繰り返し、レアアースの軍民両用輸出制限といった具体的な措置と、言葉による攻撃を織り交ぜながら攻撃を続けている。中国外務省は金曜日、日本が2025年までに防衛費を9.7%増額したと発表した。

中国外務省は続けて、「日本の防衛予算は14年連続で増加しているにもかかわらず、日本の右派勢力は依然として防衛費増額を声高に要求している。これは、日本の『平和国家(country for peace)』という仮面が剥がれ落ち、新軍国主義(neo-militarism)へと傾きつつあることを改めて示している」と述べた。

ストックホルム国際平和研究所(SIPRI)によると、世界第2位の軍事費支出国である中国は、昨年、防衛費を7.4%増の3360億ドルに引き上げた。これは31年連続の増額となる。一方、日本の防衛費は620億ドルだった。

高市首相は台湾に関する発言後、トランプ大統領やアメリカ政府高官からほとんど支持を得られなかった。この状況は、米中首脳サミットを前に、トランプ大統領が日本についてどのような発言をするのかという不安を東京にもたらした。

トランプ大統領はワシントンへの帰路、エアフォースワン機内から高市首相に電話をかけた。しかし、ホワイトハウスと日本政府は、大統領が高市首相に何を話したかについて詳細を明らかにしていない。

習近平国家主席との首脳会談について、あるアメリカ政府高官は、トランプ大統領が「日本国民への深い敬意と高市首相との親密な個人的関係を強調した(emphasised his deep respect for the Japanese people and his close personal relationship with Prime Minister Takaichi)」と述べた。

この高官はさらに、「アメリカ代表団は、在日アメリカ軍の大規模な駐留について中国側に改めて注意を促した(The US delegation reminded Chinese counterparts about the large US military presence in Japan)」と付け加えた。

日本政府は、トランプ大統領による同盟諸国への関税賦課から、イラン核戦争によって対中米軍事抑止力が弱体化しているとの懸念まで、日米同盟の現状について不安を抱いている。

『フィナンシャル・タイムズ』紙は土曜日、アメリカが今月、日本に対し、中国への「反撃(counterstrike)」力として日本が2024年に発注したトマホークミサイル400発の納入が大幅に遅れる可能性があると伝えたと報じた。

トランプ大統領が北京で、台湾への140億ドル規模の過去最高額の武器売却案は中国との交渉において有効な「交渉材料(negotiating chip)」になると述べたことを受け、同盟国やパートナー国はワシントンの台湾への関与について懸念を表明している。

『フィナンシャル・タイムズ』紙は金曜日、中国が、アメリカが台湾への武器売却案を承認するかどうかを明確にするまで、国防総省の政策担当高官(国防次官)であるエルブリッジ・コルビーの北京訪問を保留していると報じた。

在米中国大使館は習近平国家主席の発言についてコメントしなかったものの、日本の「右派勢力(right-wing forces)」が「地域平和の基盤を・・・揺るがそうとしている()shake the...foundation of regional peace」と非難した。

駐米中国大使館はさらに、「日本はまず何よりも、台湾に関する誤った言動を改め、無謀な再軍備の動き(reckless remilitarisation drive)を止め、良き友好関係(good neighbourliness)と友情(friendship)平和的発展(peaceful development)という正しい軌道に戻り、具体的な行動によってアジア諸国や世界の信頼を得るべきだ」と付け加えた。

日本の首相官邸はコメントを拒絶した。

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習近平氏、高市首相に言及し激高…中国外務省は否定

5/25() 18:15配信 読売新聞オンライン

https://news.yahoo.co.jp/articles/6b59e21248db3cac7208c4a5c9920c91eaec724f

 【ワシントン=栗山紘尚】英紙フィナンシャル・タイムズ(FT)は24日、北京で14~15日に行われた米中首脳会談で、中国の習近平(シージンピン)国家主席が、高市首相が「再軍備」を進めているとして声を荒らげて激高したと報じた。複数の関係者からの情報として伝えた。

 報道によると、習氏は会談で日本の防衛費増額の取り組みが話題になった際、口調を強めた。トランプ米大統領は日本の防衛強化策について、北朝鮮の脅威を引き合いに出し、「日本は積極的に防衛力強化を進めざるを得ない」と擁護したという。2日間の会談で、「最も緊迫した場面」だったと伝えている。

 報道について、中国外務省の毛寧(マオニン)報道局長は25日の記者会見で「中米首脳会談については、既に発表している。報道は中国が把握している内容とは異なる」と否定した。

 トランプ氏は3月に高市首相と会談した際、「習氏との会談では、日本を称賛するつもりだ」と話していた。習氏は今月20日、ロシアのプーチン大統領との首脳会談後の共同記者発表でも「軍国主義を復活させる挑発行為に反対する」と日本を批判した。

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中露が共同声明で「再軍備加速」と日本を名指し批判 プーチン氏、2日間の訪中終え帰国

5/21() 11:34配信 産経新聞

https://news.yahoo.co.jp/articles/69fe43d836f28814268b07ea0cbe4dcf09759a7b

【北京=三塚聖平】中国国営新華社通信は20日夜、習近平国家主席とロシアのプーチン大統領が同日の会談後に署名した「全面的戦略協力のさらなる強化と善隣友好協力の深化」に関する共同声明の内容を伝えた。共同声明は「日本で加速する『再軍備』が、地域の平和と安定を深刻に脅かしている」と主張し、日本を名指しして批判した。

中国は、高市早苗首相の台湾有事を巡る国会答弁を機に対日姿勢を硬化させており、ロシアと対日圧力でも連携を強化する可能性がある。

共同声明は、中国が主張する「新型軍国主義」という言葉も使い、日本側に「残酷非道な侵略の歴史に基づき、第二次大戦の全ての結果を認める」ことを求めた。日本で非核三原則の見直しを求める意見が出ていることに触れ、「日本の右翼勢力の容認できない野心と極端な挑発行為」への「警戒」を表明した。

米国とイスラエルによるイランへの攻撃に関しては、「国際法などに違反し、中東情勢の安定を甚だしく損なう」との認識で一致した。名指しを避けつつも米国を念頭に「一部の国が覇権主義を追い求め、新植民地主義の思考に固執している」と批判した。

ロシアが侵略したウクライナに関する問題については、「対話と交渉を通じた解決策の追求を継続することを支持する」と表明した。

新華社は、「世界の多極化と新型国際関係」に関する共同声明の内容も伝えた。中露両国で「多極世界と、より公正な新型国際関係の形成に向けた共通ビジョンの構築を継続する」としている。

プーチン氏は20日夜、2日間の中国訪問日程を終えて帰国の途に就いた。同日夜には習氏とプーチン氏が北京の人民大会堂でお茶を飲みながら会談した。中国外務省によると、習氏は、中露関係について「高い質の発展を続け、さらなる高みへ至ると信じている」と強調した。

(貼り付け終わり)

(終わり)
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ザ・フナイ vol.225(2026年7月号)
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シリコンヴァレーから世界支配を狙う新・軍産複合体の正体 
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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める

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 古村治彦です。

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ザ・フナイ vol.225(2026年7月号)

 ドナルド・トランプ大統領は融通無碍だ。自分の過去の行動や決定、発言に縛られない。これはトランプの強みだ。謝ることはしないが、これは違うと思えばさっと行動を変える。これだと発言や決定に信頼性を欠くことになるが、この柔軟性は事態をそこまで悪化させない。この柔軟性はほかの政治家ではなかなか持てない。

 ドナルド・トランプ大統領は中国を批判し、実際には極端な高関税政策など、厳しい対応を行ってきた。米中貿易戦争という言葉は、第一次トランプ政権の頃から使われている。中国もアメリカに対して厳しい対応を取るということを行ってきた。同時に、製造業での優位を確保し、最先端分野、AI(人工知能)、量子コンピュータ、ドローン、電気自動車などの分野でアメリカと肩を並べ、追い抜くというところまできた。また、レアアース分野における優位性も確保していた。そして、第二次トランプ政権で、このレアアースの優位性を利用して、アメリカに対抗し、アメリカからの譲歩を引き出した。

 今回の米中首脳会談では、具体的な内容はあまり伝わっていないが、中国側が「建設的戦略的安定性(constructive strategic stability)」の堅持で合意した。米中はお互いに緊張関係を欲しないし、競争と協調をミックスした関係を望んでいる。台湾問題にしても、武力衝突までエスカレーションすることを両国が望まない。アメリカにも、台湾にも、日本にも、そして、中国にも、米中日台湾の間で武力衝突をしたい、させたいと狂信的に望む人間や勢力がいる。しかし、実際には、トランプもアメリカも中国戦争をしたいとは望まないし、できない。そんなことをすれば、アメリカの衰退が加速し、国家が立ち行かなくなるからだ、そして、世界の敵と認定されてしまうからだ。

 トランプは対中強硬姿勢から見事に、華麗に変身した。トランプ政権内には対中強硬派が多く入っているが、親分が以前は白と言っていたが、今は「これは黒だよな」と言ったら、「そうですね、真っ黒ですよ」と答えるのが子分だ。裏では「何を言ってやんでぇ」と思っていたとしても、だ。トランプ政権の間は中国に融和的な姿勢とならざるを得ない。それが嫌ならトランプ政権から離れねばならない。トランプは根っからのビジネスマンであり、「金にならない」「損になる」ということを嫌うという本能で生きている。その本能が正しく機能して、中国に対して融和的になっているというのは、それだけで大きな価値があるということになる。そして、対中強硬姿勢を馬鹿みたいに続けるほど馬鹿ではないということだ。それでは、日本の指導者、高市早苗首相はどうだろうか。その答えは明らかだ。

(貼り付けはじめ)

トランプの対中政策における実用主義は歓迎する(Trump’s China Pragmatism Is Welcome

-北京とのライヴァル関係は避けられない。経済の断絶(economic rupture)は壊滅的な事態を招くだろう。

ファリード・ザカリア筆

2026年5月18日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2026/05/18/trump-xi-meeting-china-united-states-economics-trade-great-power-competition/

このコラムの読者の皆様さんは、私がドナルド・トランプ大統領の2期目の外交政策を支持してこなかったことを知っている。グリーンランドの併合やカナダの併合をちらつかせたり、一方的に関税を急激に引き上げたり、イラン戦争の失敗に終わったりと、トランプは無謀で(reckless)、混乱させ(chaotic)、深刻な不安定化(deeply destabilizing)をもたらしてきた。しかし、ある重要な分野、すなわち米中関係においては、彼は正しい直感(the right instincts)、そしておそらくは正しい政策さえも持ち合わせているのかもしれない。

トランプが最近、中国の習近平国家主席と会談した際、普段はなかなか見られない一面が見られた。彼は敬意を払い、ほとんど恭順を示し(almost deferential)、二人の個人的な親密さを強調しようと努めていた。一方、習主席は終始形式的で(formal)、規律正しく(disciplined)、決して温かみのある様子を見せなかった。この非対称性は、実態をよく示している。

トランプ氏は権力に執着している。イデオロギーや価値観よりも、彼は影響力と支配力という観点から物事を考えている。トランプはヨーロッパの同盟諸国を侮辱するが、それは彼らが依然としてアメリカの軍事的保護とアメリカ市場へのアクセスにどれほど依存しているかを理解しているからだ。トランプ氏は弱点を見抜き、それを巧みに利用する(Trump senses weakness and exploits it)。

しかし、中国に関しては、ワシントンの多くの人々が未だに感情的に受け入れられずにいる事実をトランプは理解するようになった。それは、北京が経済、技術、産業、軍事において独自の強大な力を持っており、それを効果的に行使できるということだ。従って、トランプは、好戦的な姿勢(belligerence)から、ライヴァル関係と協力関係(rivalry and cooperation)が複雑に絡み合った関係へと変化した。この関係こそ、まさに今求められているものなのかもしれない。

トランプ氏の今回の訪問を、2021年にアンカレッジで行われたバイデン政権関係者と中国側関係者の初会談と比較してみよう。アメリカ側はテレビ中継で、人権問題、サイバー攻撃、国際秩序を巡って中国を激しく非難した。中国側の外交官たちも同様に激しく反論した。それは真剣な外交的対話というより、ケーブルニューズでの罵り合い合戦(a cable news shouting match)に過ぎなかった。

多くの中道派民主党連邦議員たちは、「中国に弱腰だ(soft on China)」と見なされることを恐れている。そのため、彼らはしばしば過剰なレトリックを用い、極端な表現を使い、象徴的な対立をエスカレートさせる。ジョー・バイデン大統領は、トランプ政権の対中関税に懐疑的な姿勢を示し、撤廃を約束したにもかかわらず、ほぼ全ての関税を維持した。また、バイデンは大統領として中国を訪問したことはなく、習近平国家主席をワシントンに招待することもなかった。

バイデン陣営は、トランプ政権が最初に主張した、中国の新疆ウイグル自治区における行為は大量虐殺(ジェノサイド、genocide)に当たるという主張を支持した。ジェノサイドという言葉は、ホロコーストや1994年のルワンダ虐殺のような、組織的な大量虐殺(extermination campaigns)を想起させる。中国の新疆ウイグル自治区の刑務所や再教育キャンプは残虐で恐ろしいものであり、数十人の学者がウイグル族に対する中国の行為をジェノサイドと呼んでいる。しかし、『エコノミスト』誌が指摘したように、それは多くの人がこの言葉を思い浮かべたときに連想するものとは異なる。

トランプの最大の強みは、右派からの攻撃を受けないことだ。2016年の大統領選挙後、彼は北京を激しく非難し、製造業の雇用喪失、貿易不均衡、そしてアメリカの産業衰退の責任を中国に押し付けて政権を握った。ある意味、これは「ニクソン大統領が中国へ向かった」というよりは、リチャード・M・ニクソン大統領よりも右派に位置する超タカ派のロナルド・レーガン大統領がソ連へ向かったという構図に近い。トランプが同様の方向転換を成し遂げられる可能性があるのは、彼の支持層が彼の先導する方向に従うからに他ならない。トランプがイランへの軍事介入を支持する姿勢を示した途端、多くのMAGA支持者がいかに迅速に態度を翻したかを見れば明らかだ。

なぜ中国とのより協調的なアプローチが理にかなっているのだろうか? それは、中国はソ連ではないからだ。ある指標によれば、冷戦終結時のソ連経済規模はイタリアよりも小さかった。一方、中国は世界第2位の経済大国であり、120カ国以上にとって最大の貿易相手国であるだけでなく、電気自動車やバッテリーからドローン、先端製造業、人工知能に至るまで、幅広い分野で技術大国としての地位を確立している。製造業の生産高は、米国、日本、ドイツを合わせた額を上回る。

このような国に対して本格的な冷戦を仕掛けようとすれば、世界が既に分断されていたソ連との闘争とは全く異なるものになるだろう。冷戦を仕掛けることは世界経済そのものを崩壊させることを意味する(It would mean tearing apart the global economy itself)。アメリカの消費者は物価上昇と供給ショックに直面するだろう。アメリカ企業は世界最大級の市場へのアクセスを失うだろう。大学は多くの優秀な学生を失うだろう。危険は単なる経済的苦痛にとどまらない。それは、敵対する2つの技術・地政学的ブロックが生まれ、対立が激化するという事態を招くことになるだろう。

もちろん、アメリカと中国はライヴァル関係にある。二極化した世界(a bipolar world)において、それは避けられないことだ。米中両国は今後数十年にわたり、経済、軍事、戦略のあらゆる面で競争を繰り広げるだろう。しかし、ライヴァル関係は必ずしも完全な断絶(total rupture)を意味するものではない。ヘンリー・キッシンジャーは亡くなる数週間前、私に次のように語った。「米中両国の指導者は、1914年に国家主義的な競争が結果を顧みずに追求された結果、世界秩序を根底から覆す世界大戦が勃発したことを心に留めておくべきだ(leaders of both countries should keep in mind how in 1914, nationalist competition pursued with no concerns of its consequences led to a world war that upended the entire global order)」。

人工知能、サイバー戦争、核兵器の時代において、協力関係を維持することはこれまで以上に重要だ。米中両国は激しく競争しながらも、核兵器の安定(nuclear stability)、AIの安全性(AI safety)、パンデミック(pandemic)、金融危機(financial crises)といった分野で、可能な限り取引、対話、協力関係を維持すべきである。冷戦時代、ワシントンとモスクワは激しい敵対関係の最中でも軍備管理交渉を継続した。それは、米ソ両国が制御不能なライヴァル関係が破滅的な結果を招くことを理解していたからだ。

それは今日においても変わらない。そして、もしトランプが、哲学(philosophy)というよりはむしろ本能的(instinct)な理由から、この基本的な現実を認識するに至ったのだとすれば、少なくともこの問題に関しては、彼の実用主義(Pragmatism)は理にかなっていると言えるだろう。

※ファリード・ザカリア:CNNの番組「ファリード・ザカリアGPS」の司会者であり、近著『革命の時代(Age of Revolutions)』がある。彼は『ワシントン・ポスト』紙に週刊コラムを執筆しており、そのコラムは『フォーリン・ポリシー』誌にも配信されている。Xアカウント:@FareedZakaria

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(終わり)
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シリコンヴァレーから世界支配を狙う新・軍産複合体の正体 
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『トランプの電撃作戦』
sekaihakenkokukoutaigekinoshinsouseishiki001
世界覇権国 交代劇の真相 インテリジェンス、宗教、政治学で読む

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める

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 古村治彦です。

 なんだか盛り上がらないままで、ドナルド・トランプ米大統領と習近平中国国家主席との米中首脳会談は終了した。何も大きな発表はなく、イラン戦争もウクライナ戦争もそのままということで、石油価格が短期的に下落することはないだろう。一方、中国側にとって十だったのは、台湾問題である。台湾問題で、アメリカ側から何らかの譲歩を引き出すことであった。台湾有事でアメリカ軍が支援することはしないとか、独立宣言を認めないといったことを公文書で記録しておくことを中国側は求めていただろうが、これはアメリカ政界内の親台湾派が許さないということもあって、厳しかっただろう。台湾問題については、トランプ大統領は中国訪問中には何も発言しなかった。しかし、アメリカに帰国後に、フォックスニューズでのインタヴューで、台湾独立に明確に反対する姿勢を示した。

 トランプ大統領はインタヴューの中で次のように述べている。

「何より、私たちは9500マイル(15289キロ)も離れた場所まで行って戦争をしなければならないということになる。私はそんなことを望んでいない。彼らには冷静になって欲しい。中国にも冷静になって欲しい(You know, we're supposed to travel 9,500 miles (15,289km) to fight a war. I'm not looking for that. I want them to cool down. I want China to cool down)」「私たちは戦争を望んでいない。現状維持であれば、中国もそれで構わないと思う。しかし、『アメリカが私たちを支持しているから独立しよう』と言うような事態は望んでいない(We're not looking to have wars, and if you kept it the way it is, I think China's going to be OK with that. But we're not looking to have somebody say, 'Let's go independent because the United States is backing us)」

 アメリカは中国と直接戦争することができない。万が一、中国が台湾に対して武力を行使することになってもアメリカ軍は出動することはないだろう。中国は現状維持で、少しずつ経済的な統合から始めて、時間をかけながら台湾を取り込んでいくことになるだろう。ここで邪魔になるのは、反中国で凝り固まって、何が何でも中国と戦いたいとする勢力である。これは、台湾にも、日本にも、アメリカにもいる。彼らが不測の武力衝突を行わせようとしてくるのは何とも怖いことだ。日中戦争も、第一次世界大戦も一発の銃声から始まったことを考えると、このような危険な勢力の蠢動こそが世界平和にとっての害悪である。

 日本の高市早苗首相の台湾有事に関する発言はトランプ大統領の今回の発言とは全く異なる内容だ。勇ましい内容ではあったが、これによって日中関係は冷え込み、イラン戦争が起きている現状で、この冷え込みの悪影響が少しずつ出てきている。トランプ大統領は放言も多いが決して馬鹿ではない。この点が高市早苗首相との最大の相違点ということになる。そして、今回のトランプ大統領の発言からは、米中首脳会談で、米中間で台湾に関して何らかの合意なり、取り決めがあったということが推測される。勇ましいだけで、梯子を外された高市早苗首相が何とも滑稽でもある。

(貼り付けはじめ)
トランプ大統領は中国の習国家主席との首脳会談から数時間後、台湾に対し独立宣言をしないよう警告した(Trump warns Taiwan against declaring independence, hours after summit with China's Xi

イアン・アキマン筆
BBC
2026年5月16日

https://www.bbc.com/news/articles/ce8p61v7l68o

ドナルド・トランプ米大統領は、台湾が中国からの正式な独立を宣言しないように警告を発した。

トランプ大統領は、北京で行われた習近平国家主席との2日間の首脳会談を終えた金曜日、フォックスニューズに対し、「私は誰かが独立することを望んでいる訳ではない(I'm not looking to have somebody go independent)」と述べた。

頼清徳台湾総統は以前、台湾は既に主権国家(a sovereign nation)であると認識しているため、正式な独立を宣言する必要はないと述べている。

アメリカは長年にわたり台湾を支援しており、法的義務として台湾に自衛手段を提供する義務を負っているが、この同盟関係と中国との外交関係の維持との間でしばしば折り合いをつけざるを得ない状況にある。

トランプ大統領は以前、自治権を持つ台湾について「どちらの立場にも確約はしていない(made no commitment either way)」と述べていた。中国は台湾を自国領土の一部と主張し、武力による併合も排除していない。

ワシントンの確立された立場は、台湾の独立を支持しないというものであり、北京との関係維持は、中国政府は一つであるという認識をアメリカが受け入れることを条件としている。

北京は台湾総統への嫌悪感を公然と表明しており、以前にも彼を「トラブルメーカー(troublemaker)」「両岸平和の破壊者(destroyer of cross-strait peace)」と表現したことがある。

台湾人の多くは自らを独立した国家の一部だと考えているが、大半は台湾が中国から独立も統一もせず、現状維持(the status quo)を望んでいる。

トランプ大統領はフォックスニューズのインタヴューで、この問題に関するアメリカの政策は変わっていないと改めて述べた。

「何より、私たちは9500マイル(15289キロ)も離れた場所まで行って戦争をしなければならないということになる。私はそんなことを望んでいない。彼らには冷静になって欲しい。中国にも冷静になって欲しい(You know, we're supposed to travel 9,500 miles (15,289km) to fight a war. I'm not looking for that. I want them to cool down. I want China to cool down)」。

ワシントンへの帰路、トランプ大統領は記者団に対し、習近平国家主席と台湾について「たくさん(a lot)」話し合ったと述べたが、アメリカが台湾を防衛するかどうかについては議論を避けたと語った。

トランプ大統領は、習主席は台湾に対して「非常に強い思い入れ(feels very strongly)」を持っており、「独立運動を望んでいない(doesn't want to see a movement for independence)」と述べた。

中国国営メディアによると、習国家主席は会談で「台湾問題は米中関係において最も重要な問題だ」と警告し、「対応を誤れば、米中両国は衝突、あるいは紛争に発展する可能性もある」と付け加えた。

トランプ大統領は、台湾を巡る中国との紛争を予見しているかと問われ、「いや、そうは思わない。大丈夫だろう。習主席は戦争を望んでいない("No, I don't think so. I think we'll be fine. [Xi] doesn't want to see a war)」と答えた。

中国は近年、台湾周辺で軍事演習を強化しており、地域の緊張を高め、ワシントンが築いてきたバランスを試している。

昨年後半、トランプ政権は台湾への110億ドル相当の武器売却を発表した。これには最新鋭のロケットランチャーや各種ミサイルが含まれており、北京はこれを非難した。

トランプ大統領は、この売却を進めるかどうか近いうちに決定すると述べ、習近平国家主席と「非常に詳細に(in great detail)」協議したと付け加えた。

さらに、「今、台湾を統治している人物、つまり誰のことかは皆さんも知っているだろうが、その人と話をする必要がある」と述べた。

アメリカは台湾と正式な外交関係はないものの、非公式ながら相当な関係を維持している。米大統領は伝統的に台湾の指導者と直接対話することはなく、もしそうすれば、台湾の頼清徳総統を分離主義者(a separatist)とみなす北京との間で大きな緊張が生じる可能性が高い。

台湾外交部政務次長の陳明祺は土曜日、台湾はトランプ大統領の発言の正確な意味を明確にする必要があると述べた。

陳次長はまた、アメリカによる台湾への武器売却はアメリカ国内法で認められていると述べた。

「台湾とアメリカの武器売買は、常に地域の平和と安定の礎となってきた」と付け加えた。

ロイター通信が引用した頼総統の報道官の発言によると、アメリカによる武器売却は、「アメリカによる台湾の安全保障への関与(US security commitment" to Taiwan)」の一部であり、「地域的な脅威に対する共通の抑止力として機能する(serve as a shared deterrent against regional threats)」とのことだ。

トランプ大統領はフォックスニューズに対し、「私たちは戦争を望んでいない。現状維持であれば、中国もそれで構わないと思う。しかし、『アメリカが私たちを支持しているから独立しよう』と言うような事態は望んでいない(We're not looking to have wars, and if you kept it the way it is, I think China's going to be OK with that. But we're not looking to have somebody say, 'Let's go independent because the United States is backing us)」と述べた。

アメリカは以前、独立問題に関して姿勢を軟化させたとして中国の反発を招いたことがある。

米国務省はウェブサイトから、2025年2月の台湾独立に反対するワシントンの立場を改めて表明する声明を削除した。北京はこれに対し、「分離主義勢力に誤ったシグナルを送るものだ」と批判した。

当時、台湾駐在の米当局者は「私たちは、いずれの側による一方的な現状変更にも反対すると長年表明してきた」と述べた。

台湾外交部長の林佳龍は、米中首脳会談を注視しており、「台湾とアメリカの関係の安定的な深化と台湾の利益の保護を確保するため」、アメリカをはじめとする各国と良好な意思疎通を維持していると述べた。

林部長は、台湾は常にこの地域の「平和と安定の守護者(guardian of peace and stability)」であったと述べ、中国が「攻撃的な軍事行動と権威主義的な抑圧(military actions and authoritarian oppression)」によってリスクを高めていると非難した。
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トランプ氏、台湾に独立宣言しないよう警告

AFP=時事 5/16() 7:52配信

https://news.yahoo.co.jp/articles/b6dfa0610fbe746f1253b50ac4af692da2567550

AFP=時事】ドナルド・トランプ米大統領は15日、中国訪問で習近平国家主席に台湾を支持しないよう圧力をかけられた後、台湾に対し正式な独立宣言をしないよう警告した。

習氏にとって重要な問題である台湾の独立宣言について、トランプ氏は反対する姿勢を明確にし、台湾が軍事攻撃を受けた場合に米国が台湾を防衛しなければならない理由を疑問視した。

トランプ氏は米FOXニュースの番組「スペシャル・レポート・ウィズ・ブレット・ベイヤー」で、「私は誰かが独立することを望んでいない。それに、戦争をするために9500マイル(約15300キロ)も移動しなければならなくなることも望んでいない」と主張。

「彼ら(台湾)には冷静になってほしい。中国にも冷静になってほしい」「われわれは戦争を望んでいない。現状維持であれば、中国もそれで構わないと思う」と付け加えた。

米国は中華人民共和国が中国の唯一の合法政府であると承認しており、台湾の正式な独立を支持していないが、歴史的に台湾の独立に反対すると明言することは避けてきた。

米国は台湾関係法に基づき、台湾防衛のために武器を提供する義務を負っているが、米軍が台湾を支援するかどうかについては戦略的曖昧さを維持してきた。

習氏は米中首脳会談で、台湾問題で米側が対応を誤れば、「両国は衝突、さらには対立し、中米関係全体を極めて危険な状況へと押しやる可能性がある」と警告した。

台湾の頼清徳総統は、台湾は既に独立国であり、独立宣言は不要だという立場を取っている。【翻訳編集】 AFPBB News

(貼り付け終わり)

(終わり)

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シリコンヴァレーから世界支配を狙う新・軍産複合体の正体 
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『トランプの電撃作戦』
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世界覇権国 交代劇の真相 インテリジェンス、宗教、政治学で読む

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める

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 古村治彦です。

 今回のドナルド・トランプ米大統領と習近平中国国家主席の首脳会談は地味なものとなった。何か大きなサプライズがあった訳でもなく、華やかなイヴェントもなかった。ドナルド・トランプ大統領が何か重大な発言をすることもなかった。習近平国家主席はこれまで通りに慎重な動きに終始した。馬鹿笑いもハグもなかったし、晩餐会で知っている曲が流れたからと言って場も弁えずに踊り出すような馬鹿なこともなかった。世界政治を動かすということは落ち着いた環境で静かになされるものだということを認識させられた。

 首脳会談の内容について具体的な内容は伝わっていない。しかし、今回の米中首脳会談は「対等な超大国間の首脳会談」という、歴史上初の出来事であったことは間違いがない。これまで中国側で実施された米中首脳会談ではもっとアメリカ側に「媚びた」内容になっていた。しかし、今回は非常に控え目であった。アメリカが中国に辞を低くして臨み、中国は過剰に謙(へりくだ)ることなく、丁寧に接遇した。

 米中首脳間の発言で注目されるのは、「トゥキディデスの罠(the Thucydides Trap)」という言葉だ。習近平主席がトランプ大統領に対して、米中両国間はこの「トゥキディデスの罠」に陥らないように注意しなくてはならないと述べた。「トゥキディデスの罠」という言葉を提唱したのは、ハーヴァード大学教授のグレアム・アリソンだ。アリソンはヘンリー・キッシンジャーの後継者として、中国を何度も訪問し、習近平主席をはじめとする最高指導部と会談し、米中関係の維持、改善に努めている。「トゥキディデスの罠」とは、古代ギリシアのスパルタとアテネのペロポネソス戦争のアナロジーであり、既存の覇権国と新興大国との間には望まなくても戦争が起きてしまうということを警告している。アリソンや「トゥキディデスの罠」について詳しくは拙著『トランプの電撃作戦』(秀和システム)をぜひお読みいただきたい。

 すでにこのブログでも書いたが、中国側は台湾問題について、アメリカ側から大きな譲歩を引き出すことができなかった。そのために、イラン戦争停戦に関して、アメリカの求める停戦に関して大きなお土産を渡すことができなかった。台湾に関して、これまで以上に、中国に有利になるような形で姿勢を変更することはいくらトランプ大統領でも難しい。連邦議会の承認も必要になるし、アメリカ政府各部にいる親台湾派勢力の抵抗もある。したがって、そもそもが今回の首脳会談で大々的に発表することはできないだろう。しかし、アメリカ側の姿勢に何かしらの変化が見られるならば(たとえ小さくても)、何かしらの合意がなされたと見ることは可能であろう。

 今回の米中首脳会談は非常に地味であったが、時代の転換点を象徴する非常に重要な出来事であった。このことは間違いない。

(貼り付けはじめ)

ドナルド・トランプ・習近平首脳会談は驚くほど平凡だった(The Trump-Xi Summit Was Remarkably Banal

-より自信を持つようになっている中国はトランプ大統領の訪問を軽視することを喜んで行っている。

ジェイムズ・パルマー筆

2026年5月15日

『フォーリン・ポリシー』誌
https://foreignpolicy.com/2026/05/15/trump-xi-summit-china-us-presidential-visit/

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ドナルド・トランプ米大統領と習近平中国国家主席は北京の天壇公園(Temple of Heaven)を訪問した(2026年5月14日)

今週、中国の報道を読み、見ていた人なら、ドナルド・トランプ米大統領の北京訪問を全く見逃していたとしても仕方ないことだ。

トランプ大統領が到着した水曜日、国営英字紙『チャイナ・デイリー』紙の一面は、習近平国家主席がタジキスタン大統領と握手する写真で埋め尽くされた。一方、中国共産党機関紙『人民日報』紙は、トランプ大統領の訪問に関する論評を3面まで追いやった。

中国で最も視聴率の高い夜のニュース番組「新聞聯報」は、月曜日にわずか12秒の報道でトランプ大統領の訪問を報じた。比較のために付け加えると、その後には「長江デルタの統合的発展は新たな突破口を開き続けている」と題した約6分間の特集が続いた。水曜日のトランプ大統領と習近平国家主席の会談は、放送時間でわずか2分半しか割かれず、13番目に位置づけられた。

結果的に、中国側がドラマチックな演出をほとんどしなかったのは、むしろ適切だったと言えるだろう。トランプ大統領の訪問は退屈極まりないものだった。習主席は政治的な決まり文句に終始し、台湾、民主政治体制と人権(democracy and human rights)、中国の「方途とシステム(path and system)」、そして「発展の権利(development right)」といったお決まりのレッドライン(red lines)について語った。「発展の権利」とは、ワシントンに押し下げられることなく、世界経済の階段を駆け上がる中国の能力を指す。

習主席はまた、お気に入りの話題にも触れた。二国間関係は競争(competition)ではなく安定(stability)でなければならない。既存の強大国と新興大国の間の対立というトゥキディデスの罠(the Thucydides Trap)を回避しなければならない。アメリカと中国は共に、常に未来に向かって前進し続けなければならない。

トランプ大統領と習主席は、貿易に関するいくつかの小さな譲歩、例えばアメリカ産食肉処理場の中国への輸出許可などを除けば、実質的な合意はほとんどなかったようだ。しかし、それもすぐに覆されたようだ。(この明らかな逆転は、突然の不遇の兆候ではなく、すでに政府の保護を求めていた中国の農業関係者による迅速なロビー活動の結果だと解釈すべきだろう。)

中国がボーイング機を購入するという約束など、期待されていた合意は会談前の噂を下回り、市場を失望させた。イラン、台湾、日本、その他の地政学的に係争中の問題については、進展はおろか、本格的な議論すら見られなかった。トランプ大統領は習近平国家主席がイランへの武器供与を「強く(strongly)」拒否したと述べたが、中国によるイランへの軍事支援は既に水面下で行われているため、この発言は何の意味も持たない。

しかし、過去の米大統領の中国訪問は、たとえ重要な成果がほとんど得られなかったとしても、中国の厳しく統制されたメディアで大々的に報じられていた。なぜ今回の訪問について、北京はこれほど沈黙を守ったのだろうか? 一つの理由は予測不可能性(unpredictability)だ。過去の米大統領は中国訪問の際、事前に合意された議題に沿って行動し、発言も抑制的かつ慎重だった。トランプ大統領にそのような姿勢を期待する者は誰もいない。

過去の訪問では、中国メディアは事前に準備を整え、万が一事態が悪化した場合に自らの立場が危うくなるリスクを負うことなく、事前に報道することができた。今回は、どの新聞編集者もメディア検閲官も、トランプ大統領の訪問を肯定的に報じれば、大統領の激しい発言後に「重大な政治的過ち(serious political mistakes)」と非難されることを恐れた。

過去の大統領訪問の際も、中国指導者たちはワシントンからの承認を通じて自国の正当性(validation)を確立しようとした。アメリカは世界的な超大国(the global superpower)として認められ、中国は対等な立場で寛大なホスト国(a peer and a gracious host)として振る舞うことで、自国民の目から見て地位を高めた。米大統領はもちろん、それほど地位の高くない要人でさえ訪れたレストランは、たちまち人気スポットとなった。今回、トランプ大統領の随行員の一人である台湾系アメリカ人のIT界の大物ジェンスン・フアンだけが、こうした人気を集めることができた。

ビル・クリントン、ジョージ・W・ブッシュ、バラク・オバマの中国訪問は、メディアで大きく取り上げられ、国民の強い関心を集めた。2017年のトランプ大統領の初訪問も同様だった。しかし今回は、イラン戦争におけるアメリカの失敗を皮肉るコメント(sardonic commentary over U.S. failure in the Iran war)や、トランプ大統領の従順で礼儀正しい態度を称賛する声(some praise for Trump’s submissive and mannered approach)を除けば、ソーシャルメディアのユーザーたちでさえ関心を示さなかったようだ。(中国のソーシャルメディアは、重要な国賓訪問の際によくあることだが、いつも以上に検閲されていた。)

中国はもはやアメリカからの承認を必要としていない(China no longer needs that validation from the United States)。製造業超大国(a manufacturing superpower)としてだけでなく、技術・科学大国(a technological and scientific giant)としても、その世界的な優位性は十分に確立されている。一方、アイソレイショニズム的で同盟諸国に敵対的、そして軍事的に苦戦している政権下で、アメリカの世界的なリーダーシップはかつてないほど不安定に見える。長年のパートナー国でさえ、ワシントンに対抗するために北京に接近している。

実際、今回の訪問中、承認を求めていたのはトランプ大統領の方だったようだ。しかも、国家レヴェルではなく、個人的な承認を求めていた。トランプ大統領は習近平国家主席を惜しみなく称賛し、フォックスニューズに対し、「ハリウッドに行って、映画に出演する中国の指導者を探しても・・・彼のような人物は、容姿も含めて、どこにも見つからないだろう」と語った。

トランプ大統領から予想外の称賛を受けた他の人物とは異なり、習主席はカリスマ性で知られているわけではない。中華人民共和国建国の父の一人の息子である習近平は、党の長老たちが「太子党(princelings)」に対して一般的に警戒心を抱いていたにもかかわらず、最高指導者の地位に就くことを許された。その理由の1つは、彼らが習近平を、同じく太子党出身の薄熙来のような危険なカリスマ性を持たない、堅実な共産党員だと誤解していたからである。

トランプ大統領は強権的な指導者を好むことで知られ、中国の独裁体制をしばしば称賛してきたが、今回は習近平から何か特別なものを求めていたようだ。奇妙なことに、トランプ大統領は「とルース・ソーシャル(Truth Social)」における投稿で、習近平がアメリカを「おそらく衰退国家(perhaps being a declining nation)」と「上品に(elegantly)」表現したと述べた。これは会談の中国側の発表には記載されていない。トランプ大統領が過去の発言を指していたのか、あるいは想像上の発言だったのかは不明だが、いずれにせよ、トランプ大統領は習近平がバイデン政権のことだけを指していたに違いないと示唆した。なぜなら、今のアメリカは「世界で最も熱い国(the hottest Nation anywhere in the world)」だからだ。

トランプ大統領の卑屈な態度(Trump’s obsequiousness)は、米中間の力関係と認識の真の変化を反映しているのかもしれない。しかし、これは地政学的な問題というよりは心理的な問題であり、支持率の低下とイラン戦争をめぐる弁明の強化によって、トランプ大統領自身の不安が高まっていることの表れとも言えるだろう。

いずれにせよ、米中関係の相対的な安定は今のところ揺るぎないように見える。その大きな理由は、米中両国とも他国との紛争に巻き込まれ、国内経済も停滞しているため、戦争を望む余裕がないからだ。

※ジェイムズ・パルマー:『フォーリン・ポリシー』誌副編集長。Blueskyアカウント:@beijingpalmer.bsky.social

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首脳会談からドナルド・トランプと習近平が求めるもの(What Trump and Xi Want From Their Summit

-両首脳は貿易、台湾問題、イラン核戦争について協議すると予想されている。

ジェイムズ・パルマー筆

2026年5月12日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2026/05/12/trump-xi-china-summit-visit-taiwan-trade-japan/

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ワシントンのホワイトハウスを出発する際に報道陣に語りかけたドナルド・トランプ米大統領(2026年5月12日)

今週に北京で開催されるドナルド・トランプ米大統領と習近平中国国家主席による待望の首脳会談についてプレビューする。

ドナルド・トランプ米大統領は水曜日に北京に到着し、習近平中国国家主席と2日間の首脳会談を行う予定だ。現職の米大統領による中国訪問は、2017年(トランプ大統領の1期目)以来となる。

こうした会談に歴史的な意義を見出したくなるのは当然だろう。特に、1972年のリチャード・ニクソン元大統領の中国訪問が大きな転換点となったことが記憶に残っているためだ。実際には、米大統領は中国大統領と定期的に会談しており、その結果も通常は定型的だ。しかし、今回の会談間隔は異例に長い。

ジョー・バイデン前大統領は、新型コロナウイルス感染症のパンデミックによる二国間関係の悪化のため、在任中に中国を訪問することはなかった。トランプ大統領にとって今回の北京公式訪問は2回目となり、歴代大統領の訪問回数とほぼ同水準となる。バラク・オバマ大統領は在任中に3回、ジョージ・W・ブッシュ大統領は4回、ビル・クリントン大統領は1回北京を訪問している。

習近平国家主席は、13年間の在任期間中にアメリカを公式訪問したのは4回だが、他の行事の場で歴代大統領と会談したことは数多くある。

しかし、これらの首脳会談は、太平洋のどちら側で開催されようとも、依然として機会となっている。例えば、2015年には、オバマ大統領と習近平国家主席はワシントンへの公式訪問中に、重要なサイバーセキュリティ協定に合意した。では、両首脳はこの首脳会談で何を求めているのだろうか?

トランプ大統領は明らかに、何らかの象徴的な貿易協定または投資協定を狙っている。会談は主に米財務省が主導しており、トランプ大統領は多数の企業CEOを同行させている。彼の1期目の対中政策を特徴づけていた構造改革要求やタカ派的な優先事項の多くは姿を消し、政府内の国防・安全保障専門家は首脳会談に向けた準備段階で蚊帳の外に置かれている。

新たな貿易協定が締結されれば、2020年に合意された「第一段階(Phase One)」の合意を必然的に想起させるだろう。この合意では、中国は2000億ドル相当のアメリカ製品を購入すると約束したが、新型コロナウイルスの影響もあり、その約束は果たされなかった。今回中国が約束を履行するかどうかは、トランプ大統領にとって見かけ上の印象ほど重要ではないだろう。彼は、見出しを飾り、自身の支持率低下を相殺できるような象徴的な数字を求めているのだ。

注目すべきは、人権問題がアメリカの議題から完全に抜け落ちていることだ。トランプ政権下では人権は事実上死文(a dead letter)となっている。せいぜい、交渉担当者が求めるのは、中国の出国禁止措置の対象となっている少数のアメリカ市民の釈放くらいだろう。別の政権であれば、サイバーセキュリティも議題に上がるはずだ。特に昨年、ソルト・タイフーン・ハック(the Salt Typhoon hack)がワシントンに衝撃を与えた後ではなおさらだ。

習近平国家主席の優先事項はやや異なる。関税引き下げは歓迎すべきことではあるが、必須ではない。中国はトランプ政権の貿易戦争を比較的容易に乗り切り、昨年の輸出額は過去最高の3兆8000億ドルに達した。習主席はむしろ安全保障面での譲歩を求める可能性が高く、特に注目すべき分野が3つある。

第一に、中国は短期的には、自国経済と湾岸諸国の経済を圧迫しているイラン戦争の終結を望んでいる。中期的には、中国は、トランプ大統領が日本の高市早苗首相に対し、中国による台湾侵攻は日本の軍事介入を正当化するという立場を撤回するよう働きかけることを望んでいる。

最後に、中国は長期的には、台湾に関するアメリカの立場を恒久的に変更することを望んでおり、これには武器売却の停止、さらには中国による侵攻があった場合のアメリカの介入の可能性も含まれる。

最初の目標は、少なくとも中国の圧力だけでは実現しそうにない。2つ目の目標は、トランプ大統領が昨年、北京の意向を代弁して高市首相に電話をかけたことを考えると、より現実的だ。しかし、それが東京の姿勢に影響を与えるとは限らない。高市首相は、政策問題に関しては自らの立場を堅持しつつ、トランプ大統領を巧みに取り込む手腕を発揮してきたからだ。

台湾に対するアメリカの対応は大きな問題であり、習近平国家主席は、中国がアメリカに対して圧力をかける姿勢を昨年、アメリカが中国に対して圧力をかける姿勢よりも強かったことを考えると、優位な立場で首脳会談に臨むことになる。中国の重要鉱物資源に関する脅威はホワイトハウスを動揺させ、米中両国間の報復関税の応酬が急激に沈静化するきっかけとなった。

習近平はトランプが媚びへつらいを好むことを理解しているものの、小国が時折見せるような露骨な迎合行為(the overt displays of deference)には手を染めない。ここで金冠を戴くようなことはあり得ない。習近平自身の国内イメージにとって、トランプと対等(equal)、あるいはそれ以上の存在(superior)として見られることが重要なのだ。

一方、トランプは中国に対する経済制裁の行使にますます消極的になっており、エヌヴィディア(NVIDIA)のジェンスン・フアンCEOの働きかけを受けて、高度な人工知能チップの輸出をほぼ全面的に容認した。中国は、主要分野における依存度と安全保障上の弱点を軽減する能力を高めている。

しかし、台湾問題でアメリカから実質的な譲歩を引き出す可能性は低い。既に述べたように、アメリカが台湾防衛を放棄する代わりに中国が譲歩するという、信頼できる「大取引(grand bargain)」は成立し得ない。トランプ大統領の約束だけでは信用できず、事実上台湾を明け渡すという拘束力のある約束は、アメリカ連邦議会を通過することは決してないだろう。

それでも、北京は象徴的な勝利を収めることができるかもしれない。中国当局は台湾に関する用語に極めて重きを置き、しばしば言葉のニュアンスを他国の政治的立場を示す指標として解釈する。こうした好ましい表現は、指導者たちが愛国心を示そうとするにつれて、時代とともに変化していく。

例えば、2010年代初頭、中国の国営メディア幹部は、英語の報道において「台湾人(Taiwanese)」という呼称を用いることは、台湾を国家として認めることを意味するとして、使用を禁止した。北京は状況に応じて、台湾を「台湾島(Taiwan island)」「台湾省(Taiwan province)」「台湾地域(Taiwan region)」などと使い分けることができる。

トランプ大統領に中国の立場を反映した表現、例えば「アメリカは台湾が中国の一部であることを認める(the United States accepts that Taiwan is part of China)」といった表現を使わせるのは容易かもしれない。しかし、これは長年にわたる複雑なアメリカの政策とは相容れない。アメリカの政策は「一つの中国(one China)」という概念と中国共産党の正統な代表を認めつつも、台湾が中国の一部であるか否かについては公式な立場を取らず、中国が台湾を中国の一部と主張する立場を容認しているに過ぎない(no official stance on whether Taiwan is a part of China, although it acknowledges China’s position that it is.)。

トランプ大統領がこのような発言をすれば、台北では警戒感が高まり、ワシントンでは超党派の反発を招くだろう。台湾支持は共和党、特に連邦上院議員の間で強く、議員たちは首脳会談を前に既に懸念を表明している。

こうした反発がトランプ大統領にとってどれほど重要かは不明だ。彼は来月には容易に立場を撤回する可能性があり、そもそも立場変更を認めない可能性もある。

※ジェイムズ・パルマー:『フォーリン・ポリシー』誌副編集長。Blueskyアカウント:@beijingpalmer.bsky.social

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