古村治彦(ふるむらはるひこ)の政治情報紹介・分析ブログ

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タグ:西半球

 古村治彦です。

 下記論考は外交・国際関係専門誌『フォーリン・アフェアーズ』誌に掲載されたものだ。これは、アメリカの新右派(New Right)と呼ばれる、アメリカの新思想潮流と外交政策潮流のつながりを検討した内容になっている。アメリカの新右派はドナルド・トランプを支持する人々たちが所属する思想潮流である。この新右派が外交政策における新潮流である「文明主義(Civlizationism)」を生み出していると下記論考の著者レオナール・A・シュッテは述べている。私は新しい言葉を生み出して、いかにも素晴らしい発見ですというようなことを装うことには懐疑的であり、「文明」という言葉を使うのは煽り文句の様にも感じている。

 文明主義という言葉について、シュッテは発展途上としながら、文明主義を主張する人々は、「それぞれが覇権国(a hegemon)に主導される「境界を持った文明圏(bounded civilizational spaces)」を基盤として世界を構成することだ。彼らは、アメリカこそが正当な西洋の覇権国(rightfully the hegemon of the West)であると確信し、アメリカは、西洋の覇権国として、世界規模でのリーダーシップを目指すのではなく、文明の境界を防衛し、ヨーロッパに対して西洋的とされる価値観を堅持するよう促し、中国のような他の文明との共存(coexistence)を図ることが役割であると考えている」と述べている。

 文明主義とは、アメリカが西洋文明の覇権国であると考えることであり、西洋とは「特定の地理的領域(a specific geographic territory)、共有された祖先(a shared ancestry)、そしてキリスト教(Christianity)によって定義される」ということである。簡単に言えば、ヨーロッパ、白人、キリスト教ということになる。アメリカはヨーロッパの派生物(derivatives)ということになる。南米も同様だ。しかし、ここで不思議なのは、文明主義は、アメリカが西半球(the Western Hemisphere)の優位性を確保することを目指している点だ。西半球は南北アメリカ大陸と大西洋と太平洋の一部で構成される。ヨーロッパはそこには入っていない。それなのに、アメリカは西洋文明の覇権国となる。ここの整合性が取れていない。また、わざわざ文明主義という言葉を用いなくても、モンロー主義(Monroe Doctrine)という言葉もあり、それをもじったドンロー主義(Donroe Doctrine)という言葉がある。

 アメリカが世界帝国を維持する国力を失い、世界覇権国の地位から脱落する流れとなっており、現在は、アメリカを中心とする西側諸国(the West)と中国を中心とする西側以外の国々(the Rest)の構造になっている。シュッテはいくつかの文明圏が分立し、それぞれに地域大国、地域覇権国がそれぞれを統治するという形になると主張している。これは、サミュエル・P・ハンティントンの「文明間の衝突(the clash of civilizations)」とどこが違うのだろうか。ドンロー主義と文明間の衝突を混ぜ合わせると、このような考えができて、それに勝手に文明主義という言葉を使っているだけに過ぎない。

 アメリカが西半球に引きこもる、それ以外の地域については中国が指導的な立場に立つだろうが、介入主義的なアメリカと異なり、それぞれの体制を尊重し、イデオロギーを押し付けることはないだろう。アメリカは民主政治体制と資本主義と近代的な価値観を押し付けたが、そのようなことはないだろう。従って、ある程度の地位的なまとまりで、地域大国が出てくるということはあるだろう。しかし、そのようなことは誰でも考え付くことで、そこに大仰に「文明主義」などという言葉を使う必要があるのだろうかと私は今でも疑問に思っている。

(貼り付けはじめ)

トランプ後の新右派の大戦略(The New Right’s Grand Strategy After Trump

文明主義Civilizationism)はいかにして世界におけるアメリカの役割を根底から覆すのか。

レオナール・A・シュッテ

2026年8月25日

『フォーリン・アフェアーズ』誌

https://www.foreignaffairs.com/united-states/new-rights-grand-strategy-after-trump?check_logged_in=1

アメリカの大戦略(grand strategy)をめぐる議論は、長らく「抑制(restraint)」、「リベラル・インターナショナリズム(liberal internationalism)」、「卓越性(primacy)」といったよく知られた思想的潮流によって形作られてきた。しかし、ドナルド・トランプ大統領の台頭に思想的推進力を与えた「新右派(the Hew Right)」という知的潮流は、これらに代わる新たな有力な考え方を打ち出しつつある。それを「文明主義(civilizationism)」と呼ぶことができるだろう。トランプ政権の主要メンバーによる戦略文書や演説には、「西洋文明(Western Civilization)」についての言及が至る所に見られる。JD・ヴァンス副大統領は、2025年2月のミュンヘン安全保障会議での演説においてその基調を打ち出し、「私たちが共有する文明(our shared civilization)」を特徴づける根本的な価値観に対する「内部からの脅威(threat from within)」を強調した。トランプ政権の「国家安全保障戦略(National Security Strategy)」は、「文明の消滅(civilizational erasure)」に対する警告を発している。今年1月のダヴォス会議でトランプは「文明としてヨーロッパと共有する絆(the bonds we share with Europe as a civilization)」を強調し、翌月にはマルコ・ルビオ国務長官が、大西洋を挟んだパートナー諸国に対し、「人類史上最も偉大な文明を更新する(renew the greatest civilization in human history)」よう呼びかけた。

西洋文明が存在し、それが優れているという考え方は、もちろん新しいものではない。しかし、新右派が掲げる「西側諸国[西洋]the West)」の概念―そしてその概念がいかにアメリカの大戦略を導くべきかという点―は、それまで多くの人々が抱いていた理解とは根本的に異なる。それは、立憲民主政治体制(constitutional democracy)、自由(liberty)、平等(equality)といった、出発点を問わず誰もが信奉しうる一連の共有された原則に根ざした、信条に基づく西洋的アイデンティティの理解(a creedal understanding of Western identity)に立脚するものではない。むしろ、新右派の思想家たちにとって、西洋とは、特定の地理的領域(a specific geographic territory)、共有された祖先(a shared ancestry)、そしてキリスト教(Christianity)によって定義される。

西洋文明の基盤を再考するこの動きを外交政策の領域にまで広げると、そこには新たな、そして明確に異なる大戦略が求められることになる。「文明主義」は、まだ発展途上の概念だ。外交政策に関する「新右派」の思想家たちによる著作は限られており、彼らの陣営内でも意見の対立がある。しかし、そうした文献を検討し、この運動が国内政策について掲げる理念を論理的に突き詰めていけば、彼ら特有の世界観が見えてくる。文明主義者たち(civilizationists)が目指すのは、それぞれが覇権国(a hegemon)に主導される「境界を持った文明圏(bounded civilizational spaces)」を基盤として世界を構成することだ。彼らは、アメリカこそが正当な西洋の覇権国(rightfully the hegemon of the West)であると確信し、アメリカは、西洋の覇権国として、世界規模でのリーダーシップを目指すのではなく、文明の境界を防衛し、ヨーロッパに対して西洋的とされる価値観を堅持するよう促し、中国のような他の文明との共存(coexistence)を図ることが役割であると考えている。彼らは、圧倒的な優位性を求めて普遍的な覇権を志向することや、リベラル・インターナショナリズムによってアメリカの主権が制約されることを拒絶する。また、文明主義は「抑制」とも異なる。文明主義は、必要とあれば軍事介入(military intervention)を行ってでも西半球(the Western Hemisphere)における優位性を確保することを求めるからだ。そして、大国が正当な安全保障上の利益(legitimate security interests)を根拠に自国の「裏庭(backyard)」を支配することを正当化するリアリストの構想とは異なり、文明主義は勢力圏(spheres of influence)とその境界線に対してイデオロギー的な正当性を与えるものだ。

トランプ政権は文明をめぐるレトリック(civilizational rhetoric)を頻繁に使用しているが、実際の外交政策は、文明主義が提唱する内容や、トランプの支持者の多くが期待していた方針とは異なるものだった。仮に202年の大統領選挙で共和党が再び勝利したとしても、直ちに文明主義がアメリカの大戦略になることはない。そのためには、新右派が党内のエスタブリッシュメントに勝つ必要がある。しかし、党内抗争において新右派に有利に働く要因が少なくとも2つあるようだ。一つは人口動態(demographic)だ。多くの世論調査が示すように、共和党内には世代間の分断(a generational divide)があり、若い有権者は、中東地域におけるアメリカの役割縮小や、中国を主要な脅威と見なす姿勢からの転換といった立場をより強く支持している。もう一つは、トランプによるイラン戦争だ。戦略的に破滅的とも言えるこの戦争の結果がますます明らかになるにつれ、当初からこの戦争に反対していた新右派の影響力は高まっていくだろう。

●ワシントンの新しい外交エリート層(A NEW BLOB IN TOWN

数十年にわたり、ワシントンの外交政策のエスタブリッシュメントは、様々な形の「リベラルな覇権(liberal hegemony)」を提唱してきた。トランプの第1期政権下でさえ、外交政策の伝統的なエリート層は大きな影響力を行使し、対外政策において相対的な継続性を保っていた。しかし、トランプの第2期政権は、長らく外交政策の議論を支配してきた知的合意を根本から覆し、アメリカの戦略を形成する議論の場に「新右派」を参加させた。ローラ・フィールドがその権威ある著書『激怒する精神(Furious Minds)』で要約しているように、この運動は様々な派閥で構成されている。「ポスト・リベラル派(postliberals)」は、カトリック的な「共通善(common good)」や道徳(morality)を社会に浸透させようとしている。建国時の米国を理想とする「クレアモント派(Claremonters)」は、同意、行政国家(官僚主導の統治機構)の打破、そして市民的徳性(civic virtue)の醸成を目指し、急進的かつ反革命的な行動を提唱している。「ナショナル・コンサバティブ(国家保守主義者)」はキリスト教ナショナリズムを掲げ、リベラリズムの脅威から同質的な国民国家を守ろうとしている。

これら異なる陣営を結びつけているのは、制限された政府(limited government)、新自由主義経済学(neoliberal economics)、タカ派的な外交政策(hawkish foreign policy)といった伝統的保守主義(traditional conservatism)の核心的な信条を拒絶し、理念や信条に基づくアメリカのアイデンティティの概念に反対するという点である。その代わりに、新右派はアメリカのアイデンティティを民族・宗教的かつ集団的な条件(ethnoreligious and collective terms)から捉え、アメリカを本質的に白人、キリスト教徒、そして同質的な国民に光栄される、ヨーロッパ文明にその起源を持つ国だと見なしている。彼らは、個人の自由と権利の最大化を執拗に追求した結果、共同体(community)、宗教(religion)、伝統的な規範(traditional norms)が犠牲にされてきたと考えている。言い換えれば、この運動はリベラリズムを西洋文明の基盤ではなく、その「癌(cancer)」であると見なしているのである。

新右派は今や権力の中枢に前例のないほど接近している。彼らは、自らを「現状を破壊する大統領(a self-advertised disruptor president)」と称するトランプの台頭を千載一遇の好機と捉え、それを掴み取ったからだ。この運動は、ヴァンスという著名かつ影響力のある人物を筆頭に、フロリダ州知事ロン・デサンティス、ミズーリ州選出上院議員ジョシュ・ホウリー、メディア・パーソナリティのタッカー・カールソンといった指導者たちをその脇に配している。また、保守派の知的エコシステムの中で、その影響力を制度化しつつある。かつては周辺的な存在だったクレアモント研究所(the Claremont Institute)、かつてはエスタブリッシュメント寄りだったが今やトランプ派の牙城となったヘリテージ財団(the Heritage Foundation)、そして「アメリカ・ファースト政策研究所(the America First Policy InstituteAFPI)」、「センター・フォー・リニューイング・アメリカ(the Center for Renewing America)」、「アメリカン・モーメント(American Moment)」といった新興勢力が、現在、貿易や外交政策など多岐にわたる問題について、右派の議論を主導している。これらの組織は、トランプ政権に政治任用された多数の人材を育成してきた。ある集計によれば、ホワイトハウス行政管理予算局(the White House Office of Management and Budget)局長や国家安全保障担当大統領副補佐官を含む少なくとも70人のクレアモント・フェローシップ出身者が、現政権で要職に就いている。

●文明主義の揺りかご(THE CRADLES OF CIVILIZATIONISM

新右派のアメリカについてのヴィジョンは、アメリカ社会の非リベラルな基盤を強化し、彼らが考える「西洋文明の遺産(Western civilizational heritage)」を守ろうとする独特な外交政策に変換している。文明とは―少なくとも、政治学者の故サミュエル・ハンティントンが広めた単純化された理解においては―宗教(religion)、歴史(history)、言語(language)といった継承された特性によって定義される、同質的な文化的実体(homogeneous cultural entities)と見なされる。ハンティントンは、文明間の差異は単なる政治的イデオロギーの違いよりも根本的かつ不変なものであり、それらは「何世紀にもわたって生み出された産物(the product of centuries)」であると主張した。ハンティントンは、文明間で力が分散するにつれて文化的差異は解消不可能となり、対立を生むようになる。そして、とりわけ西洋の優位性(the West’s dominance)や普遍主義的な野心(universalist ambitions)が激しく異議を唱えられる中で、そうした事態が加速すると予測した。

しかし、新右派の文明主義の論理は、ハンティントン的というよりはむしろシュミット的である。「敵味方の区別(he friend-enemy distinction)」に関する理論で知られるナチス時代の法学者カール・シュミットは、新右派の思想家の間で広く読まれており、国際秩序(the international order)をいかに構築するべきかという議論も展開していた。シュミットは、世界は地域的な覇権国が支配する空間的ブロック、すなわち「広大地域(グロースラウム、Grossräume)」によって適切に組織化されるだろうと提唱した。シュミットは、それぞれの広大地域を支配する覇権国は、必要とあれば強圧的に支配を行うべきだと考えていた。しかし同時に、そのような秩序は安定したものになる(such an order would be stable)とも予測していた。なぜなら、普遍主義的なイデオロギーとは異なり、異なる政治体制の共存を受容するからだ。

安定(stability)と共存(coexistence)を重視するシュミット的な視点は、「永久戦争(forever wars)」への反対や普遍主義的な構想の拒絶といった新右派の姿勢と共鳴している。文明主義が示す相対的な抑制の姿勢は、軍事介入を正当化するためにしばしば西洋文明の防衛を掲げた「十字軍的(crusading)」なネオコンサヴァティヴィズム(neoconservativism)や、文明の衝突を予言する(prediction that civilizations will clash)ハンティントンの説とも区別されるものだ。したがって、文明主義とは、地域的な帝国主義(regional imperialism)こそが世界秩序を形成する上で最も正当かつ有望な手段であると見なす、階層的かつ反普遍主義的な(hierarchical and antiuniversalist)大戦略として定義するのが最も適切だろう。具体的には、この大戦略は次のように主張する。すなわち、アメリカは西半球における優位性(dominance over the Western Hemisphere)を追求すべきであり、文明主義的な世界観を共有する極右勢力を支援するためにヨーロッパの情勢に介入すべきであり、一方で他の文明の勢力圏からは手を引きつつも、それらを尊重すべきであるというものだ。

文明主義は、トランプの世界に対するアプローチとは著しく異なる。トランプ政権はしばしば文明主義的な言葉を使うが、トランプ自身の行動は、個人的な不満(personal grievance)や取引的な衝動(transactional impulse)、そして身内や側近(kin and clique)の財産を最大化しようとする私的な関心に主に突き動かされている。トランプ政権の外交政策と文明主義との間の最大の乖離は、中東政策に見られる。選挙公約とは裏腹に、トランプはこの地域から撤退するどころか、当初はイランに対する体制転換(regime change)を目的とした戦争と銘打った行動に踏み切った。イスラエルを特権的な同盟国として扱うその態度は、故リンジー・グラム連邦上院議員のようなネオコンのタカ派の姿勢と似通っている。

■「文明主義 は、アメリカがヨーロッパの情勢に介入すべきだと主張する。」

一方、アメリカの新右派は、イスラエルを擁護することにはそれほど関心を持っていない。右派層に陰謀論的な反ユダヤ主義が広がっていることが要因の1つだ。また、イスラエルを聖書の預言の成就(the fulfillment of biblical prophecies)であり、それゆえに文明的な同盟国として不可欠な存在と見なす「キリスト教シオニズム(Christian Zionism)」の人気が、アメリカの保守層の間で低下していることも挙げられる。しかし、戦略的な理由もある。新右派の多くの人々は、イスラエルとの同盟関係によってアメリカが中東地域に縛り付けられ、不必要かつ莫大なコストのかかる戦争を強いられてきたと考えている。ガザ地区でのイスラエルの軍事作戦がもたらした暴力の規模もまた、特に若い保守層の間でイスラエル支持から離れる動きを加速させた。

文明主義はまた、中国に対してトランプが採用してきたものとは異なるアプローチを提唱している。トランプ政権は、中国を危険なライヴァルとして敵対的に扱うことと、東アジアから撤退することの間で、一貫性を欠いた揺れ動きを見せてきた。トランプ政権支持者は、こうした方針の揺れを、対決に向けてアメリカがより有利な立場を築くための時間を稼ぐ「巧妙な策略(cunning ploy)」だと見ている。アジアへの軸足の転換(pivot to Asia)は事実上頓挫したと考える人々もいる。いずれにせよ、文明主義が提唱するのは、アジア地域からの軍事撤退という、より一貫した戦略だ。これは、中国の勢力圏内における中国の覇権を容認することに等しい方針と言える。例えば、新右派の著名な論客であるソーラブ・アーマリ、パトリック・デニーン、グラッデン・パッピンが2022年に『ニューヨーク・タイムズ』紙に共同寄稿した論説では、中国を「文明的に対等(civilizational equal)」と位置づけ、「無思慮な対中タカ派姿勢(mindless China hawkism)」ではなく、実践的な協力(pragmatic cooperation)を呼びかけている。新右派を代表する外交政策の論客であるマイケル・アントンは、台湾をめぐって戦う価値はない(Taiwan is not worth fighting over)と明確に発言している。

文明主義は、西半球やヨーロッパに対するトランプの外交政策にすでに強い影響を及ぼしている。文明主義的な見方によれば、地域覇権国は秩序を維持し外部勢力を排除するために、自らの「裏庭」に対して支配力を主張すべきとされる。西半球の管理は、新右派にとって特に切迫した懸念事項である。なぜなら、異質とされる文化圏からの移民や麻薬の流入が、彼らが望む社会の同質性や安定を損なうからだ。文明主義者はヨーロッパを、西洋文明の歴史的発祥地であると同時に、その最大の脅威であるリベラリズム(liberalism)の主要な発生源とも見なしている。したがって、ヘリテージ財団のケビン・ロバーツ会長が「文明の自殺(civilizational suicide)」と呼んだ事態を防ぐためにヨーロッパの情勢に強引にでも介入することは、ある種の内政の一環として正当化されることになる。しかし文明主義は、リベラルなヨーロッパ連合(EU)諸国政府を弱体化させ、最終的にヨーロッパを文化的に従属させようとするトランプ政権の、往々にして場当たり的かつ象徴的なアプローチをさらに激化させるだろう。

文明を基軸とした大戦略をとれば、ロシアは脅威とは見なされず、結果としてヨーロッパに対するアメリカの安全保障上の関与も維持されなくなるだろう。新右派の中には、ロシアとの文明的な親和性を強調し、二国間関係の深化を主張している人たちもいる。ロシアは「反ウォーク(反進歩主義的、anti-woke)」な国であり、タッカー・カールソンの言葉を借りれば、アメリカと「多くの共通点を持つ(a lot in common with)」「キリスト教国(Christian country)」だからだ。また別の勢力は、東ヨーロッパにおけるロシアの勢力圏を容認するような、モスクワとの現実的な妥協を提唱している。

●新右派、新世界(NEW RIGHT, NEW WORLD

もしワシントンが一貫した文明を基礎に下大戦略を採用すれば、アメリカの外交政策は根本から覆されることになるだろう。それは、地政学的なライヴァル国に対して、従来は考えられなかったような譲歩を許容することにつながる。文明主義は、すでに揺らいでいる大西洋同盟関係に歴史的な試練を突きつけるだろう。ロシアに東ヨーロッパの実質的な支配権を与えたり、モスクワを共通の西洋文明の一部と見なしたり、あるいはヨーロッパの現職政府に対してより公然と敵対的な動きを見せたりすることになるからだ。アメリカの他の歴史的な同盟関係も打撃を受けるだろう。中国の地域覇権を容認すれば東アジアの同盟諸国を見捨てることになり、中東地域から撤退すればイスラエルは孤立無援の状態に置かれることになる。

しかし、文明主義には矛盾が山積しており、もしそれがワシントンの指針となる政策になれば、そうした矛盾はすぐに露呈するだろう。学者アミタヴ・アチャリヤが書いているように、文明とは「分析的な意味での神話(myths in the analytical sense)」に過ぎないからだ。長い時間の経過の中で、民族的・文化的な純粋さ(ethnically or culturally pure)を保ち続けたり、あるいは同じ国境の枠内に留まり続けたりした文明は1つとして存在しない。実際、文明の境界線を引くことは容易ではない。ロシア文明はどこで終わるのか? ジョージア、バルト諸国、あるいはフィンランドまでを含めるべきなのか? また、アメリカの文明圏はラテンアメリカのどこまで及んでいるのか?

文明に基づく秩序が平和的なものになるとも考えにくい。文明間の主張が競合し、地域戦争(regional wars)の火種となる可能性があるからだ。ある文明が他の文明を「異質な文化(alien cultures)」と定義するような文明論的大戦略をとれば、差異を容認するどころか、むしろ敵対心を煽ることになりかねない。実際、ヨーロッパの極右政党でさえ、アメリカの極右勢力から露骨な支援を受けることに、次第に関心を示さなくなっているようだ。仮に大国間衝突(great-power conflict)を回避できたとしても、文明内部での暴力や紛争が頻発するだろう。日本、パキスタン、ポーランドといった国々が、それぞれ中国、インド、ロシアによる地域覇権を容認するとは考えにくいからだ。

新右派もまた、統一された陣営(a unitary camp)ではない。例えば、国家保守主義者たちは、アメリカとイスラエルの関係を弱めることや、中国やロシアの帝国主義を容認することに反対している。一方で、中国やイランといった「文明上の敵(civilizational enemies)」に対する「十字軍(a crusade)」を支持する人々も依然として存在する。さらに、新右派の最大の関心事はあくまで国内政策にあり、外交政策は往々にして二の次にされてきた。

しかし、アメリカの右派の思想的未来、そしてアメリカの大戦略の行方は、依然として不透明なままだ。トランプ政権は、冷戦後の「リベラルな覇権(liberal hegemony)」をめぐる超党派の合意を打ち破ったものの、それに代わる一貫性のある代替案を提示することには失敗した。ワシントンの外交政策のあり方をめぐる今後の論争において、文明主義は有力な選択肢の1つとなるだろう。

※レオナール・A・シュッテ:カーネギー国際平和財団のヨーロッパ・プログラム研究員。2025年から2026年にかけて、ハーヴァード大学ケネディスクール・ベルファー記念センターの国際安全保障プログラム研究員を務めた。

(貼り付け終わり)

(終わり)

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 古村治彦です。

 ドナルド・トランプ大統領は、ジェイムズ・モンロー大統領が1823年に提唱した、ヨーロッパとアメリカによる西半球をめぐる相互不干渉主義であるモンロー主義(Monroe Doctrine)をもじって、「ドンロー主義(Donroe Doctrine)」を標榜している。モンロー主義は「ヨーロッパの争いにアメリカは干渉しないので、ヨーロッパ諸国は西半球に介入しないように」というものであり、「西半球(Western Hemisphere)」は、アメリカの勢力圏(Sphere of Influence)であるということを宣言したものである。20世紀はアメリカが超大国として世界を支配してきたが、アメリカの国力の低下(decline)もあり、アメリカの一極支配構造は崩れている。そして、米中二極構造になりつつある。G2体制と呼ばれることもある。また、ロシアを入れて、「ヤルタ2.0」とも言われる。アメリカの一極支配の終焉に続くものとして、「アメリカは西半球、南北アメリカ大陸の支配を続ける」ということが、「ドンロー主義」である。世界の他の地域については、「アメリカは撤退する」ということになる。そうなれば、頼るのは中国ということになる。実際に中国が進出している。
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 アメリカにとって問題は、ラテンアメリカに中国が進出し、地歩を固めているということだ。2000年頃は貿易額で見ても分かる通り、中国の影響力は小さかった。しかし、今や南米諸国のほとんどにとって中国は最大の貿易相手国となっている。また、中国から多くの投資が行われている。その間にアメリカは何もしなかった。それが今になって急に、「南米はアメリカの勢力圏、属国だ。昔からそうだった」と言われて、「はい、その通りでございます」とは言わないし、言えない。「ヤンキー帝国主義(Yankee Imperialism)で酷い目に遭った。アメリカが行ったり、支援したりした選挙干渉や内戦などで酷いことになった」という反感がある。投資や経済協力は歓迎するが、アメリカが今になって、宗主国気取りでやって来て「言うことを聞け」は通用しない。
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 トランプ政権はヴェネズエラを攻撃し、キューバに厳しい経済制裁を科している。新中国派の牙城であるこれらの国々を崩して、中国の影響力を削ごうとしている。これはアメリカにとって非常に簡単な仕事だ。しかし、その効果は一過性でしかなく、これらの国々の国民はキューバ革命とシモン・ボリヴァルの独立革命の誇りを維持している。アメリカからの攻撃がかえって国民に反米意識と団結を生み出してしまうという逆効果になってしまう。この点はイランに似ている。中国は「民間企業がビジネスでやっていることなので」という建前で粛々と進出を続けていく。アメリカがやるべきことは「長期的な経済面を中心とした投資や経済協力」である。こうした長期的な仕事はアメリカにとっては苦手な分野である。どかーん、ぼこーんと一気に壊してしまえということになってしまう。そうして、世界に反米の種をまき続けてきた。もうすでに中国の存在感を簡単などかーん、ぼこーんで排除することはできないし、短期間で、中国に取って代わることもできない。それでも、地道に続けていけばまだ良いのであるが、それは今のアメリカには極めて困難であり、ほぼ不可能なことであろう。

(貼り付けはじめ)

アメリカはラテンアメリカから中国を排除することはできない(The U.S. Can’t Exclude China From Latin America

-ワシントンは中国をラテンアメリカから排除しようとするのではなく各国に対してより優れた戦略的選択肢を提示すべきである。

ブライアン・フォンセカ筆

2026年6月8日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2026/06/08/latin-america-us-china-national-security-strategic-displacement/

写真

ペルーのチャンカイにあるチャンカイ港の様子(2025年9月30日)

アメリカのジェイムズ・モンロー大統領がヨーロッパ列強に対し、西半球(the Western Hemisphere)への介入を戒める警告を発してから2世紀近くが経過した今、アメリカはこの地域における地政学的な課題に再び直面している。過去20年間で、中国は中南米およびカリブ海地域において、経済、技術、戦略面でのプレゼンスを劇的に拡大させてきた。しかし、今日の状況はモンロー・ドクトリンが掲げられた当時とは根本的に異なっている。

モンロー・ドクトリンは排除の戦略(a strategy of exclusion)であった。すなわち、西半球において外部勢力が領土的・政治的な支配権を確立することを阻止しようとするものだった。しかし、そうした枠組みは21世紀の競争の現実を反映していない。中国は征服や占領(conquest or occupation)によって中南米での影響力を拡大しているわけではない。むしろ中国は、中南米のインフラ、貿易ネットワーク、エネルギー・システム、デジタル・エコシステム、そして戦略的産業の内部へと深く入り込んでいる。

中国が行使する影響力は、武力によるものではなく、経済的な統合、技術への依存、そして構造的な優位性を利用したものだ。中国は今や、中南米における主要な貿易相手国であり、重要な資金提供元であり、さらには一次産品や農産物輸出の重要な市場となっている。インフラの慢性的な不足、低成長、長年にわたる投資不足に直面する多くの中南米諸国にとって、中国との関わりはイデオロギーの問題ではなく、経済的な必要性に基づいているのである。

アメリカが現実的に中国を中南米から排除することは不可能である。また、中南米の各国政府に対し、ワシントンか北京かの二者択一を迫るようなこともすべきではない。西半球に位置する国々の大半が求めているのは、単に多角化された経済関係(diversified economic relationships)と、より大きな戦略的自律性(greater strategic autonomy)なのである。

中国による関与の全てが、同レヴェルの戦略的重要性を有するということはない。アメリカは、ラテンアメリカおよびカリブ海地域における中国のあらゆる商業活動に反射的に反対するのではなく、地政学的および国家安全保障上の影響が最も大きい分野において、中国の影響力を置き換える(displace)ために選択的に競争すべきだ。アメリカにとってこれは、「戦略的拒否(strategic denial)」から、私が「戦略的置換(strategic displacement)」と呼ぶアプローチへと転換することを意味する。

第一に、アメリカは戦略的インフラを優先事項とすべきである。中国企業は、ラテンアメリカ全体にわたり、港湾、物流回廊、輸送ハブ、エネルギー・システムといった分野でその存在感を拡大してきた。これらの資産は単なる商業事業にとどまらない。それらは貿易の流れ、サプライチェインへのアクセス、海上輸送の接続性、そして戦略的な機動力を左右するものだ。重要インフラや通商を支配することは、永続的な政治的・経済的影響力を行使する手段となり得る。

2024年に開港したペルーのチャンカイ港は、こうした力学を如実に示している。中国の海運大手である中遠海運(Cosco)が主導して開発されたこの港は、南アメリカとアジア市場をより直接的に結びつけると同時に、太平洋の貿易回廊や地域のサプライチェインにおける中国の役割を強化するよう設計されている。アメリカは単にこうしたプロジェクトに反対するのではなく、より競争力のある資金調達手段やインフラ整備の代替案をラテンアメリカ諸国に提示しなければならない。

第二に、アメリカはラテンアメリカ全域において、デジタル・インフラ、通信、データ・ガヴァナンスの分野で、より積極的に競争を展開する必要がある。ファーウェイ(Huawei)やZTEといった中国のハイテク企業は、通信インフラ、クラウド・システム、監視技術、スマートシティ構想、デジタル決済プラットフォームなど、ラテンアメリカのあらゆる分野に深く浸透している。

これらのシステムは政治的に中立なものではない。それらはデータ・ガヴァナンスの基準を形成し、サイバーセキュリティ上の脆弱性を生み出すほか、将来的には中国による情報収集や政治的影響力工作の機会を拡大させる恐れもある。ZTEの支援を受けて開発されたヴェネズエラの「祖国カード(fatherland card)」システムは、デジタル・システムがいかにして政治的監視や社会統制の手段へと変貌し得るかを示す極端な事例である。

第三に、アメリカ政府は、重要鉱物(critical materials)に対する高まる関心を、持続的な対米州戦略へと転換しなければならない。ラテンアメリカは、先端製造業、半導体、エネルギー技術、防衛システムに不可欠なリチウム、銅、レアアース(希土類)などの鉱物資源を豊富に埋蔵している。中国はすでに、これらの資源に関連する採掘、加工、輸送の各ネットワークにおいて、特にアルゼンチン、ボリヴィア、チリからなる「リチウム・トライアングル(lithium triangle)」を中心に、強固な地位を築いている。

アメリカは、アルゼンチンやチリのように市場環境がパートナーシップの構築に適した国々において、融資可能な(bankable)プロジェクトへの資金提供に注力すべきだ。同時に、加工、精錬、およびオフテイク(offtake、生産物の引き取り)に関する取り決めを支援し、ヴァリューチェインのより多くの部分を西半球内に留めるようにすべきである。目指すべきは単なる原材料の確保ではなく、中国が支配する加工・物流への依存を低減させる、強靭な鉱物サプライチェインの構築である。

第四に、アメリカは西半球におけるエネルギーの強靭性を戦略的優先事項と位置づけるべきである。中国の国営・政府系企業は、西半球全域で送電、再生可能エネルギー、石油生産、および広範なエネルギーインフラへの投資を拡大してきた。例えばペルーのリマでは、中国企業が発電、送電、配電の各システムにおいて支配的な地位を占めている。

これらのプロジェクトの多くは、個々に見れば商業的に合理的であるかもしれないが、それらが複合的に組み合わさることで、国家の強靭性や長期的な経済発展にとって極めて重要な分野における中国の関与を深めることになっている。

第五に、アメリカは西半球全域における宇宙関連およびデュアルユース(dual-use、軍民両用)のインフラに対し、より一層の注意を払う必要がある。衛星システム、航空宇宙分野での協力、人工知能(AI)、高度な通信技術に関連する中国の投資は、正当な商業目的を支えるものであると同時に、中国による戦略的なアクセスや情報収集能力を拡大させる可能性も秘めている。

アルゼンチンのネウケンにある中国運営の深宇宙探査施設は、こうしたプロジェクトの多くを取り巻く不透明さを象徴する事例である。表向きは民生用とされているものの、この施設の透明性の欠如や、中国の軍事関連宇宙機関とのつながりは、アメリカや地域の当局者の間で根強い懸念を招いている。

ラテンアメリカにおける米中間競争は、本質的にイデオロギー的なものではなく、構造的なものだ。アメリカはこの地域に対し、長きにわたり「放置(neglect)」と「過剰な警戒(alarmism)」の間で揺れ動いてきた。そのアプローチは一貫性を欠いており、中国の活動のほぼ全てを脅威と見なす一方で、信頼に足るアメリカの経済的代替案を十分に提示できていない。こうした戦略は、中国の国家運営のあり方や、ラテンアメリカの各国政府が直面している経済・開発上の切迫した課題を誤解している。

例えば、ボゴタで建設中の中国製地下鉄システムを見てみよう。アメリカはこのプロジェクトを地政学的な競争という観点から捉えてきた。しかし、このプロジェクトと中国との関わりが、西半球の勢力均衡を決定づける可能性は低いと言える。ワシントンは、こうした個別の商業的案件を戦略的な勝利であるかのように扱う一方で、長期的により大きな影響を及ぼす分野を疎かにすることも多い。

アメリカは、中国が支援する象徴的なインフラ・プロジェクトを阻止することに固執するのではなく、長期的な戦略的強靭さを形作る分野において、より積極的に競争を展開すべきだ。

西半球における中国の優位性は、単にコストの低さやインフラ建設のスピードに由来するものではない。それは、中国政府が長期的な地政学的目標の達成に向けて、金融、外交、産業政策、そして企業活動を一体化させる能力を持っていることに起因している。アメリカが中国の国家資本主義モデル(state-capitalist model)を模倣する必要はないが、国家安全保障上、戦略的に重要な意味を持つ分野でアメリカ企業が競争できるよう促すための、組織的かつ統合された枠組みは必要だ。

この戦略的な置換には必然的に制約が伴う。ブラジル、メキシコ、コロンビア、チリといった国々は、大国間競争の受動的な競技場(passive arenas)ではない。それらの国々は独自の国益や開発の優先順位、そして「戦略的自律性(strategic autonomy)」に対する独自の考え方を持っている。ラテンアメリカ諸国の政府の多くは、二者択一的な地政学的陣営への参加を強いるように見えたり、アメリカの「パターナリズム(paternalism、父権的干渉主義)」に対する懸念を再燃させたりするような枠組みには抵抗感を示している。

例えば、ブラジルは、北京とワシントンの双方と多角的なパートナーシップを追求する、自立したグローバルな主体としての自意識を強めている。中国はブラジルにとって最大の貿易相手国であり、農業、エネルギー、インフラ、技術といった各分野における主要な投資国でもある。

南アメリカの多くの国でも同様の状況が見られる。中国を全面的に排除することを軸にしたアメリカの戦略は、政治的にも経済的にも失敗に終わるだろう。さらに、中国が戦略的な足場を簡単に明け渡すことはない。中国はこの地域全体で、長年にわたり商業関係の構築、金融面での依存関係の形成、外交的影響力の拡大、そして制度的なプレゼンスの確立に投資を続けてきたからだ。

アメリカ企業がラテンアメリカの重要分野でより効果的に競争できるよう望むのであれば、ワシントンはこの地域への長期投資に伴う財務的・政治的リスクを低減させる必要がある。つまり、民間部門の関与を促進するために、アメリカ国際開発金融公社(the U.S. International Development Finance CorporationUSIDFC)や輸出入銀行(the Export-Import Bank)、その他の公的金融メカニズムといった機関をより積極的に活用すべきだ。

何よりも重要なのは、アメリカが真剣かつ一貫した姿勢で、経済面からこの地域との関わりを再構築することだ。ラテンアメリカの多くの国において中国の影響力が拡大したのは、アメリカが不在であったり、対応に一貫性がなかったり、あるいは地域へのアプローチにおいて安全保障上の懸念を過度に重視しすぎたりしたためだった。この地域の国々は、地政学的な争いの場となることを望んではいない。彼らが求めているのは、投資(investment)、近代化(modernization)、そして信頼できる長期的なパートナーシップ(reliable long-term partnerships)だ。

ラテンアメリカおよびカリブ海地域において、アメリカは依然として中国に対して圧倒的な優位性を保っている。地理的な近接性、深い文化的つながり、教育ネットワーク、民間部門の技術革新、金融の厚み、そして長年にわたる民主政治体制に基づくパートナーシップなどがその強みだ。こうした優位性を活かすには、単なる反応的なレトリック(rhetoric)ではなく、競争力のある国家統治術(statecraft)が求められる。

※ブライアン・フォンセカ:フロリダ国際大学の国防・国家安全保障研究担当副アカデミック責任者(provost)兼ジャック・D・ゴードン公共政策研究所所長。ワシントンDCを拠点とするシンクタンク「ニュー・アメリカ」国際安全保障フェロー。Xアカウント:@BrianPFonseca

(貼り付け終わり)

(終わり)

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世界は「宗教戦争」に突入した 「神に選ばれた」支配者の使命と論理

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める

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 古村治彦です。

 第二次ドナルド・トランプ政権になり、アメリカは西半球、南北アメリカ大陸支配に対する欲望を隠さなくなった。ヴェネズエラに対しては奇襲攻撃を行い、ニコラス・マドゥロ大統領を拘束した(ヴェネズエラ政府内部の最高クラスに協力網ができていたのは想像できる)キューバに対する支配を明言し、経済制裁を実施している。そして、デンマーク領のグリーンランドの僚友の使途を明確にしている。NATOという集団的自衛権(collective self-defense)に基づいた同盟関係の中で、同盟国同士であるアメリカとデンマークが戦争状態になる場合、他の同盟諸国は、侵略側になるアメリカを自国への攻撃とみなし反撃として、攻撃するのか、大いに懸念される。アメリカが同盟国を攻撃するということはこれまで想定されてこなかった(学術研究としてはそういうシミュレーションはあっただろうが)。「アメリカと同盟関係を結んでも安心できない」ということになれば、同盟関係の意味はなくなってしまう。

 さて、下記論稿では「集団安全保障(collective security)」という言葉が使われている。論稿の著者スティーヴン・M・ウォルトは以下のように書いている。

(引用貼り付けはじめ)

伝統的な集団安全保障は、各国が平和的に意見の相違を解決し、この原則に違反する国を阻止するために協力することを約束することで、パウア・ポリティックス(power politics)を超越すること(to transcend power politics by committing states to settle their differences peacefully and to work together to stop any country that violates this principle)を求めてきた。残念ながら、これは危険な侵略者を容易に特定でき、他の全ての国々がその正体について合意していることを前提としている。さらに、全ての大国が、たとえ自国の利益が直接関わっていない場合でも、強力な侵略者を阻止するために協力する意思があることを前提としている。これは、多大な費用と危険を伴う。必然的に、傍観して他者に問題を処理させたいという誘惑に駆られるプレイヤーもいるだろう。つまり、この集団安全保障のヴィジョンは、世界政治において稀にしか見られない、あるいは全く存在しないレヴェルの信頼と無私の精神(a level of trust and selflessness that is rare to non-existent in world politics)にかかっている。
(中略)

戦争の可能性を低減することを目的とした協定、あるいは共通の脅威を抑止または撃退するために一部の国家が力を合わせる軍事同盟だ(as agreements intended to make war less likely or as military alliances where a subset of states join forces to deter or defeat a common threat)。歴史はそのような例を数多く残している。残念ながら、こうした比較的控えめな形態の集団安全保障でさえ、それほど効果的ではなく、その効果は低下しつつあり、将来の世界は近年よりも危険なものとなるだろう。

(引用貼り付け終わり)

 私たちは良く「集団安全保障」と「集団的自衛権(collective self-defense)」という言葉を目にし、耳にする。スティーヴン・M・ウォルトはこの2つの言葉を区別して使っていない。しかし、これら2つの言葉は厳密に違いがある。「集団安全保障(collective security)」と「集団的自衛権(collective self-defense)」は違う。集団安全保障は、国連などの国際的な枠組みにおいて、侵略を行った国家に対して、加盟国が全体で制裁や軍事行動を行うことを指す。全体で平和維持を目指す。集団的自衛権は、自国と密接な関係ある国、例えば、同盟国が攻撃を受けた場合に、自国が攻撃を受けたと見なし、対処することを指す。同盟国、パートナーの防衛を指す。NATOは集団的安全保障ではなく、集団的自衛権の枠組みということになる。細かい話になってしまうが、これらには違いがあるということを私は知っておくと、報道を見聞きする際に、気を付けるようになる。

 話を元に戻すと、世界の超大国であるアメリカは「やりたい放題(Do whatever you want)」ができ、そこには理屈をつけて「正当化(justification)」することが可能だ。しかし、そうしたことを続けていれば、国力が低下していくと、他国からの離反や反撃を招くことになる。現在でいえば、アメリカとイスラエルはこの「やりたい放題」をやりながら、「世界の平和のため」「自衛のため」という正当化を行っている。しかし、それをいつまでも続けることはできない。世界でアメリカとイスラエルに対する反感の声が高まっており、それを力で抑えられるということはもうできない。

 「アメリカに頼れない」「アメリカを信用できない」という考えが世界に蔓延していけば、現在の国際社会の構造は大きく変化していくことになる。渡したが日々目撃している世界の大きな動きはそのことを示している。

(貼り付けはじめ)

「集団安全保障」は生命維持装置に繋がれている(‘Collective Security’ Is on Life Support

-国際関係の基本概念の1つがこれまでにないほどの危機に瀕している。

スティーヴン・M・ウォルト筆

2025年12月16日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2025/12/16/nato-collective-security-alliances-nato-life-support/

collectivesecurityus001

ドイツ南部のホーエンフェルス訓練場で行われたNATO演習中、アメリカとアルメニアの兵士たちが負傷したとみられる兵士を医療装甲車両から陸軍移動外科病院(mobile army surgical hospitalMASH)に搬送している(2023年9月14日)

脆弱な世界秩序を考えると、「集団安全保障(collective security)」という概念はもはや消滅してしまったのではないかという疑問について考えてしまう。その答えは、この言葉が何を意味するかによって異なる。もし集団安全保障が、世界の複数の主要大国が現状変更のために武力を用いることを放棄し、この誓約に違反する国を阻止するために結束することに同意するシステムを意味するのであれば、それは死んではいない。それは単純な理由からだ。それは、そもそも存在しなかったからだ。

第一次世界大戦後に設立された国際連盟(the League of Nations)に最もよく見られるように、伝統的な集団安全保障は、各国が平和的に意見の相違を解決し、この原則に違反する国を阻止するために協力することを約束することで、パウア・ポリティックス(power politics)を超越すること(to transcend power politics by committing states to settle their differences peacefully and to work together to stop any country that violates this principle)を求めてきた。残念ながら、これは危険な侵略者を容易に特定でき、他の全ての国々がその正体について合意していることを前提としている。さらに、全ての大国が、たとえ自国の利益が直接関わっていない場合でも、強力な侵略者を阻止するために協力する意思があることを前提としている。これは、多大な費用と危険を伴う。必然的に、傍観して他者に問題を処理させたいという誘惑に駆られるプレイヤーもいるだろう。つまり、この集団安全保障のヴィジョンは、世界政治において稀にしか見られない、あるいは全く存在しないレヴェルの信頼と無私の精神(a level of trust and selflessness that is rare to non-existent in world politics)にかかっている。

しかし、集団安全保障には別の定義が存在する。それは、戦争の可能性を低減することを目的とした協定、あるいは共通の脅威を抑止または撃退するために一部の国家が力を合わせる軍事同盟だ(as agreements intended to make war less likely or as military alliances where a subset of states join forces to deter or defeat a common threat)。歴史はそのような例を数多く残している。残念ながら、こうした比較的控えめな形態の集団安全保障でさえ、それほど効果的ではなく、その効果は低下しつつあり、将来の世界は近年よりも危険なものとなるだろう。

しかしながら、過去に存在した比較的現実的な集団安全保障体制は、なぜ現在は生命維持装置に頼っているのかを理解するだけでも、今日、より深く検討する価値がある。

集団安全保障体制の限定的な形態の1つに「安全保障レジーム(security regime)」がある。これは、競争相手が狭く具体的な方法で競争を制限することに合意するものだ。SA​​LT条約やSTART条約といった軍備管理協定(arms control agreements)はその好例であり、これらの措置のいくつかは確かに戦争のリスクをわずかに軽減するのに役立った。しかし、これらの協定は、超大国が数千もの核兵器を製造したり、その威力を高めるために数十億ドルもの資金を費やしたりするのを阻止することはできていない。また、ソ連と西側諸国間の激しい対立に終止符を打つこともなかった。

こうした種類の軍備管理協定の見通しは、参加すべき国の数が増えていることもあって、今日では明るくない。世界は冷戦時代の二極構造(bipolar)ではなく、多極構造(multipolar)となっている。つまり、大国間の軍備管理を機能させるには、中国を巻き込む必要があるということだ。北京、モスクワ、ワシントンを巻き込んだ軍備管理協定を締結するための努力は行われておらず、中国は他の米露2カ国に追いつくまでは軍備制限に関心がない。それどころか、中国をはじめとする一部の国は核兵器を増強しており、ロシアとアメリカはこれに対抗して自国の軍事力を近代化している。さらに、他のいくつかの国も独自の核戦力の取得を検討している。人工知能やサイバー兵器に関するガードレールを設ける取り組みは行き詰まっているが、これは、関係国全てに意味のある制限について合意させることが困難な作業であることを考えると、驚くべきことではない。

集団安全保障の限定的な形態の2つ目は平和維持活動(peacekeeping)だ。2つかそれ以上の交戦国(warring parties)が和平(make peace)を決定した場合、中立の平和維持部隊が派遣され、合意内容を監視し、双方の安心感を与えることになる。しかし、この仕組みは、以前交戦していた集団が真に戦闘を停止し、その決定を堅持する意思がある場合にのみ有効だ。なぜなら、平和維持部隊は通常、再び武装蜂起する国家や軍閥(a warlord)を阻止するには弱すぎるからだ。平和維持活動は有用な手段だが、それだけでは戦争を防ぐことはできない。

集団安全保障の最終形態であり、より正確には「集団防衛(collective defense)」と呼ばれる形態は軍事同盟(a military alliance)だ。共通の脅威に直面している国々は、相互防衛に協力し、脅威となる国家からの攻撃を抑止し、あるいは攻撃を受けた場合には撃退するために軍事準備を調整することで、より安全な体制を築くことができる。同盟は、強力で十分な武装を備えた国家が近隣にあり、現状変更のために武力行使に踏み切る意思があるように見える場合に最も形成されやすいだろう。このような状況では、潜在的な侵略者による脅威は他の国々にとって明確であり、その危険に対抗するために団結する十分な理由となる。この論理は、1949年にNATOが結成された理由、冷戦期にアメリカが日本、韓国、その他のアジア諸国と同盟を結んだ理由、そして第一次湾岸戦争においてイラクをクウェートから追い出すために大規模な連合軍が結成された理由を説明している。

国家が外部からの脅威に対して力を合わせる傾向は、2022年2月のロシアによるウクライナ侵攻後、アメリカとヨーロッパ諸国の多くが結集して支援を行ったことにも表れている。しかし、これはまた、戦争が長引く中で中国と北朝鮮がロシアに多大な支援を提供してきた理由も説明している。ウクライナの事例はまた、集団防衛体制が必ずしも戦争を阻止できる訳ではないことを改めて認識させてくれる。抑止力(deterrence)が機能しないこともあるからだ。

冷戦期には集団防衛協定が非常にうまく機能した。なぜなら、ヨーロッパで武力行使すれば、2つの強力な同盟国間の大規模で破壊的な戦争(a vast and destructive war between two powerful alliances)につながることは、両陣営にとって明らかだったからだ。この悲惨な見通しを踏まえ、両陣営は賢明にも戦闘を回避した。

残念なことに、今日ではどの国が最大の脅威であるか、またそれらにどう対処するのが最善かについて、コンセンサスがはるかに乏しいため、冷戦期と同様の予測可能性と安定性は期待できない。例えばヨーロッパでは、ロシアをかつての帝国を再建し、ヨーロッパ大陸を支配しようとする容赦ない侵略者と見なす国もあれば、そうした警戒的な見方を共有しない国もある。南半球のほとんどの国はロシアを恐れておらず、モスクワとの取引を続けている。また、トランプ政権のロシアに対する立場は毎週のように変化しているようだ。NATOは依然としてウクライナがいつか加盟すると主張してるすが、NATO加盟諸国で自国の兵士をウクライナのために戦い、命を落とすことを望む国は1つもない。

さらに言えば、アメリカの政策立案者たちは、アメリカがアジアにおける中国の力の封じ込め(containing Chinese power in Asia)に集中できるようにするため、ヨーロッパは自らの安全保障に責任を持つべきだとますます確信を深めている。ヨーロッパはインド太平洋地域で戦略的な役割を果たすことについて時折口にするが、そこで変化をもたらすだけの軍事力を持つヨーロッパの国は存在しない。また、ヨーロッパはそうすることに重大な利益を持ってはいない。これは、アメリカとヨーロッパの戦略的利益が乖離していることを意味しており、たとえ同盟が形式上は維持されていたとしても、NATOは必然的に弱体化するだろう。

しかし、中国の台頭と野心は、アジアの近隣諸国、そして言うまでもなくアメリカにも明らかである。しかしながら、バランスをとる連合体を形成する努力は、アメリカの地域政策の不安定さ、多くのアジア経済にとって中国が重要であることから中国との友好関係を維持しようとする姿勢、様々なアジア大国間の対立、そして各国が傍観者となり、他国に対中国対策の重労働を担わせようとする姿勢(each state’s desire to get others to do the heavy lifting against China while they sit on the sidelines)によって阻まれてきた。その結果、危機に際して誰が何をするのかということに関して不確実性が高まり、誤算(miscalculation)の可能性が高まっている。例えば、中国による攻撃があった場合、オーストラリア、日本、アメリカ、その他いくつかの国が台湾を支援する可能性は十分にあるが、一部あるいは全員が傍観者となる可能性もある。つまり、アジアには中国を標的としたバランスをとる連合体が存在するものの、中国による地域覇権(regional hegemony)獲得への試みを抑止するのに十分な一貫性と信頼性を備えていない可能性があるのだ。

最後に、国家が同盟を結ぶのは主に外的脅威(external threats)への対応策だが、こうした取り決めは、国家が同様の価値観、特に自由主義的民主政治体制(liberal democracy)の中核となる価値観を共有している場合により強固なものとなる。残念ながら、かつて西側諸国を一つにまとめていた共通の価値観は消えつつある。冷戦終結時には、自由主義的民主政体こそが未来の潮流だと多くの人が信じていた。しかし、20年近くにわたり自由主義的民主政体は着実に後退を続け、エジプト、ハンガリー、インド、ロシア、トルコ、そしておそらくはアメリカでさえも、独裁者による支配(strongman rule)に基づく政府が台頭している。イギリスはヨーロッパ連合(EU)を離脱し、ハンガリーとスロバキアはEUの多くの原則に反対している。さらに、最近発表されたホワイトハウスの「国家安全保障戦略(National Security Strategy)」は、トランプ政権がEUの自由主義的原則と多くのヨーロッパ諸国政府に積極的に敵対していることを極めて明確にしている。

さらに、ヨーロッパとアメリカは中東情勢をめぐってますます対立を深めている。アメリカは、ガザ地区で大量虐殺作戦を展開するイスラエルに対し、220億ドル以上の追加軍事援助を行った。国際刑事裁判所(the International Criminal CourtICC)がイスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相とヨアブ・ガラント前国防相、そして複数のハマス指導者を戦争犯罪で起訴した際、アメリカは複数の国際刑事裁判所の関係者に制裁を科した。一方、イギリスやノルウェーを含む多くのヨーロッパ諸国は、パレスティナ国家を正式に承認し、イスラエル当局者の戦争犯罪責任を問うことを誓約している。こうした異なる対応のどこに、人権や国際正義への共通の関与があるか? 長年にわたりアメリカの最も緊密な同盟国であり、情報機関のパートナーであったイギリスが、トランプ政権によるカリブ海における小型船舶への違法かつ残虐な攻撃への関与を懸念し、アメリカとの特定の情報共有を停止したことも、示唆に富んでいる。これは小さな問題かもしれないが、どのような行為が正当か、あるいは西洋の核心的価値観に合致しているかについての合意が減少しつつあることのもう1つの兆候だ。

残念ながら、私が言いたいのは、共通の価値観は、勢力均衡(balance-of-power)を理由とした同盟関係を強化する、もしくは加盟諸国が相反する戦略的利益を克服する助けにはならないということだ。

この確かに悲観的な分析から、どのような結論を導き出すことになるか? 3つ提案したい。第一に、より野心的な集団安全保障に未来への希望を託すべきではない。それは過去に一度も機能したことがなく、将来も機能しないだろう。第二に、私たちは依然として、個々の国家が生き残り繁栄するために自国の資源に頼らざるを得ない世界に生きている。しかし、共通の危険に対処するために信頼できるパートナーを持つことで、安全保障を向上させることができないということはない。外交の任務は、こうした危険が何であるかを明らかにし、どのように対応するかについて幅広い合意を形成することだ。残念ながら、現在、このような外交は不足している。

第三に、自国の能力を強化し、強固な同盟関係を築くことは、既存の紛争の解決、ライヴァルとの緊張緩和、あるいは特定のリスクの最小化に向けた真剣な努力を妨げるものではない。こうした課題は、素人による密室取引(backroom deals conducted by amateurs)ではなく、経験と知識が豊富な当局者たちが規律ある透明性のある方法で敵対国と交渉することによって最も効果的に達成される。

しかし、誤ってはならない。集団安全保障へのより現実的なアプローチでさえ、戦争のリスクや、国家がその可能性に備える必要性を排除することはできない。集団安全保障は死んではいないかもしれないが、良好な健康状態にあるとは言えない。

※スティーヴン・M・ウォルト:ハーヴァード大学ロバート・アンド・レニー・ベルファー記念国際関係論教授。Blueskyアカウント:@stephenwalt.bsky.socialXアカウント:@stephenwalt

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(終わり)

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 古村治彦です。

 アメリカのドナルド・トランプ政権がドンロー主義を基盤として、西半球をアメリカの勢力圏として固める意向を示し、ヴェネズエラ攻撃やグリーンランド領有希望の公表など動きを強めている。そうした中で、カナダはアメリカを脅威と見なし、懸念を深めている。アメリカとカナダの関係について、私たちは深く学ぶ機会を持たない。正直なことを言えば、「どっちも似たようなものだろう」「カナダはフランス語を使用する地域があるな」というくらいのことしか思わない。しかし、考えてみれば、あれだけの長い国境線で接している、アメリカとカナダの関係は改めて知っておくことは有益であろう。

 アメリカは建国してしばらくの間、カナダの領土に対して野心を持っていた。1776年にアメリカはイギリスから独立したが、北方には、カナダが存在した。そこには当たり前のことだがイギリスが存在した。イギリスはアメリカにとって脅威である。従って、アメリカの北方にいるイギリス勢力に懸念を持ち、カナダの領土を欲するということもあった。イギリスの勢力に対する懸念は、アメリカの外交政策の原理原則である、モンロー主義(イギリスの影響力を排除する)に通底する。そうした動きは20世紀に入るまで続いた。カナダが自治領となり、独立国家となることで、アメリカの懸念は減少した。

 今回、トランプ大統領がカナダをアメリカの51番目の州と呼ぶなどの行為から、カナダ側の懸念が高まった。そして、アメリカとカナダの間に歴史的にある緊張関係に注目が集まっている。NATO加盟国であり、G7の一角であるカナダをアメリカが攻撃することは考えにくい。たとえカナダ攻撃の命令が出ても、アメリカ軍は「違法な命令である」として、動かない可能性が高い。しかし、このような緊張関係を生み出してしまったことは、国際関係に大きな影響を及ぼす。アメリカは同盟国でも攻撃するかもしれないという懸念を世界各国に持たせてしまうことは、アメリカの国益にとって大きなマイナスである。そして、それを注視しながらほくそ笑んでいるのは中国とロシアである。

(貼り付けはじめ)

アメリカは再びカナダにとって最大の脅威となっている(The United States Is Once Again Canada’s Biggest Threat

-ドナルド・トランプは北隣国カナダとの伝統的に緊張関係にあった関係を取り戻した。

ケイシー・ミシェル筆

2026年2月3日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2026/02/03/us-canada-threat-trump-carney-history/

ここ数週間、アメリカが国境を強制的に拡大することはない、NATO加盟国が他の加盟国を侵略することはないといった基本的な地政学的事実が、ドナルド・トランプ米大統領によるグリーンランドへの継続的な脅威によって、突如として揺らぎ始めた。カナダのマーク・カーニー首相が最近述べたように、これは「断絶(a rupture)」であり、古い秩序が崩壊し、新しい秩序が生まれようともがく瞬間である。

大西洋横断関係の亀裂に注目が集まっている一方で、その断絶の多くはカーニー首相にとってはるかに身近な問題、すなわち米加関係に集中している。トランプ政権下のワシントンが今や脅威となっていることに、デンマークやグリーンランドだけが突然気づいた訳ではないからだ。カナダもまた、今やアメリカ政府がカナダの主権(sovereignty)だけでなく、カナダという国家そのものを公然と脅かしているのを目の当たりにしている。トランプ大統領自身もカナダを幾度となく脅迫し、アメリカによるカナダ併合を要求し、両国の国境を撤廃すべきだと繰り返し示唆している。これは単なるおしゃべりではない。先週、トランプ政権当局者がアルバータ州の分離独立派と直接会談を開始したことが明らかになった。彼らはアルバータ州をカナダから分離し、アメリカに併合しようと躍起になっている。

カナダをアメリカの51番目の州にするというトランプの脅しを一笑に付した時代はとうに過ぎ去った。新たな現実が突如カナダ全土に波紋を広げている。トランプ政権下のアメリカは、受け入れがたい現実かもしれないが、突如としてカナダにとって最大の国家安全保障上の脅威となった。

カナダ国民はようやくこの現実を受け入れ始めている。しかし同時に、これはカナダが直面するアメリカの危機の、はるかに長く、はるかに根深い部分を浮き彫りにする現実でもある。実際、過去80年ほど続いた米加友好関係、世界最長の国境線は概ね平和裡に保たれ、ワシントンとオタワはおそらく世界で最も緊密な同盟国となったが、もはや時代錯誤(anachronism)、アメリカが北米におけるはるかに広範な拡大の歴史において単に立ち止まっただけの例外的な出来事のように思えるかもしれない。

トランプ政権下のアメリカ合衆国は、むしろ北の隣国を威嚇し、安定した同盟関係よりも野蛮な拡大(brutish expansion)を志向し、カナダを地図から完全に消し去ろうとする、伝統的な立場に戻ろうとしていると言える。この歴史はアメリカ合衆国ではほとんど見過ごされているが、ワシントンが再び信頼できるパートナーになるために、そして再び安定した北アメリカ大陸を見るために、検討する価値がある。

アメリカ合衆国がカナダの領土を欲しがる歴史は、アメリカ合衆国建国初期にまで遡る。1774年、フィラデルフィアで開かれたばかりの大陸会議(Continental Congress)は、カナダ国民に書簡を送り、彼らは「小さな人々(small people)」であると主張し、イギリスの支配を打破するための、芽生えつつある取り組みに加わるよう呼びかけた。この呼びかけには脅迫的な言葉が込められており、カナダ国民は「北アメリカの他の全ての国を揺るぎない友とするのか、それとも根深い敵とするのか」を考えるべきだと述べている。書簡には、もしカナダ人がアメリカ植民地人(American colonists)への参加を拒否した場合、彼らは「征服されて自由になる(conquered into liberty)」だろうと付け加えられていた。

これは決して少数派の立場ではなかった。「大陸の一致した意見は、カナダは私たちの領土でなければならないというものだ」と、後のアメリカ大統領ジョン・アダムズは1776年に書いた。「ケベックは奪取されなければならない」とベンジャミン・フランクリンも同様に、カナダを将来のアメリカ領土と見なしていた。カナダの歴史家マデリーン・ドロハンが明らかにしたように、フランクリンは当時アメリカがイギリス領北アメリカ全域を支配していた状況下で、フランス系カナダ人(当時カナダのヨーロッパ系植民地人口のほぼ全員を占めていた)の強制同化(forced assimilation)、あるいは全面的な追放(outright eviction)を主張した。

もちろん、こうした初期の立場は全て無駄になった。アメリカ軍はケベックへの壊滅的な攻撃を開始したが、戦略のまずさと天然痘の蔓延によって頓挫した。その後のイギリスとの交渉において、フランクリンがカナダを占領しようとした試みも失敗に終わった。アダムズ自身が記したように、「ああ、カナダよ! あの一帯は不幸と恥辱に満ちていたことを私たちは発見した(Alass Canada! We have found Misfortune and disgrace in that Quarter)」ということになる。

しかし、これらの失敗によって、アメリカのカナダに対する計画が終わることはなかった。米英戦争中、アメリカ軍は再びイギリス領カナダを視野に入れ、ある将軍はカナダを「アメリカの一部になる(one of the United States)」だろうと発言した。カナダ併合(Canadian annexation)は、この戦争全体の明確な目標ではなかったかもしれないが、この戦争自体、北アメリカ中部の大部分からイギリスの要塞を追放し、アメリカの拡張主義に対するイギリスの障壁を事実上終わらせたが、アメリカが大陸の覇権へと急速に突き進む、押しつけがましく、奪い取る大国であるというイメージを確固たるものにした。

その現実は、アメリカの大陸帝国主義(United States’ continental imperialism)が頂点に達した19世紀半ばに表面化した。当時、英米共同所有地として管理されていたオレゴン準州をめぐる紛争が続く中、米大統領候補ジェームズ・ポークの支持者たちは、太平洋岸北西部の北緯54度線までの全域に対する主権を放棄するよう英領カナダを説得する手段として、「54か40か、さもなくば戦え!(Fifty-Four Forty or Fight!)」と繰り返し叫んだ。ポークは最終的に全面戦争を諦め、北緯49度線までのアメリカの主権を確保した(その代わりにメキシコの分割に注力した)。それでも、ポークの帝国主義的支持者たちは止まらなかった。「明白な運命(Manifest Destiny)」という言葉の生みの親とされるジョン・オサリバンが書いたように、カナダの領土を含む「神の摂理によって割り当てられた大陸に広がることは、依然として明白な運命である(manifest destiny to overspread the continent allotted by Providence”—including Canadian territory.)」ということになる。

南北戦争(the Civil War)はアメリカを分裂させ、数十万人ものアメリカ人の虐殺を招いたが、それでもアメリカのカナダに対する計画を阻止することはほぼできなかった。戦争終結直後、アメリカはアラスカ購入を確定させ、帝政ロシア(tsarist Russia)から領土を獲得した。しかし、この購入は地政学的な空白の中で行われた訳ではない。購入を主導した国務長官ウィリアム・スワードは、アメリカが支配するアラスカがブリティッシュコロンビア、ひいてはそれ以上の領土を獲得する鍵となると見ていた。「自然は、この大陸全体が遅かれ早かれ、・・・アメリカ合衆国の魔法の輪の中に入るように設計している(Nature designs that this whole continent … shall be, sooner or later, within the magic circle of the American Union)」とスワードは1867年に聴衆に語った。ヴァージニア大学のアラン・テイラーが、この時代に関する傑出した歴史書の中で述べているように、「アメリカ人は(アラスカの)獲得をカナダに対する締め付けとして歓迎した」。彼らがすべきことはただ待つことだけだった。そうすれば、カナダは彼らのものになるはずだったのだ。

しかしながら、カナダ人は異なる方向へと進んだ。アメリカのアラスカ購入は、カナダを分裂させるどころか、主権国家としてのカナダと完全に独立したカナダのアイデンティティの確立に直接つながった。ジョン・マクドナルドをはじめとする指導者たちの指導の下、カナダ人は全国規模の連邦を発足させ、その後数年間で次々と州を新たなカナダ自治領に加えた。アメリカの併合論者(U.S. annexationists)の餌食になるのではなく、カナダは統合を進め、アメリカのさらなる拡大を鈍らせ、150年以上続く独立した国家としての地位を確固たるものにした。

建国の父たち(the Founding Fathers)のカナダに対する領有権主張、北の隣国に対するアメリカの脅威の一貫性、アメリカの脅威に直面したカナダの統合といった要素は全て、ごく最近まで、魅力的な歴史の脚注、より激動の時代を捉えたスナップショットだった。1890年代にアメリカの政治家たちが潜在的な戦争を警告し、1910年代には「カナダのあらゆる場所に星条旗を掲げる」よう求め続け、1930年代にはワシントンがカナダに対する有事の戦争計画を策定したにもかかわらず、カナダの主権に対するアメリカの実際の脅威は大幅に減少した。実際、米加関係は非常に緊密になり、良好な関係は最終的に当然のことと見なされるようになった。ワシントンが維持した最も緊密なパートナーシップは、安定した北アメリカの安全保障体制によってアメリカの世界的な支配力の拡大が可能になり、背景の雑音のようなものへと薄れていった。

そして、全ては崩壊した。トランプのグリーンランドに対する脅しは、カナダに対する脅しと並行して行われてきた。実際、グリーンランド危機のピーク時でさえ、NBCニューズはトランプがカナダへの「密かに関心を強めている(privately ramping up his focus)」と報じ、カナダの地図にアメリカ国旗を掲げた地図を見せたほどだった。さらに、カナダ国民がよく認識しているように、トランプのグリーンランドに関する言説、つまりグリーンランドを守れるのはアメリカだけであり、そもそもデンマークにはグリーンランドに対する権利はないという言説は、カナダの北極圏の島々にも容易に当てはまり得る。その多くはグリーンランドに隣接している。

トランプだけではない。MAGAのイデオローグであるスティーヴ・バノンは、カナダに対するアメリカの宗主権を幾度となく声高に訴えてきた。バノンは最近、「かつてカナダにとって大きな障壁であった北極圏北部が、今や最大の脅威となっている」と述べ、カナダの「弱点(soft underbelly)」だと主張した。さらにバノンは、カナダは「次のウクライナになる可能性がある」と述べた。ウクライナには「アメリカに敵対する人々」が溢れているそうだ。そして、これは北極圏だけではない。今週、『フィナンシャル・タイムズ』紙は、トランプ政権当局者がアルバータ州の極右分離主義者と複数回直接会談したと報じた。彼らはアメリカへの加盟の熱意を隠そうともしていない。

国境を拡大し、近隣の分離主義運動を煽り立てようとする新帝国主義大国(a neoimperialist power)である。これは全て、地域的支配を主張し、近隣諸国を分裂させる手段だ。実際、カナダとウクライナの類似点は、不快なほどに緊密になっている。しかし、カナダ国民は、かつてウクライナ国民であったのと同様に、この事態を黙って受け入れるつもりはない。カナダ国防省は新たな文民・民間人防衛軍(a new civilian defense force)の構想を練り始めており、オタワ政府は1世紀ぶりに、アメリカの侵略への対応をモデル化した軍事演習の計画を開始した。

そしてカナダ当局はついに、そして公に警鐘を鳴らし始めた。元カナダ国連大使のボブ・レイは『グローブ・アンド・メール』紙に対し、カナダに対するアメリカの脅威は「存亡の危機」(U.S. threats against Canada are “existential)に瀕していると語り、元カナダ国防長官はトランプ大統領の行動はカナダを警戒態勢に追い込むことになると述べた。あるカナダの紛争研究者は『ガーディアン』紙に次のように語った。「私たちはアメリカの友好と寛大さ(the friendship and benignness of the United States)に大きく依存してきたのに、突然、その両方が消えてしまった。消滅してしまった。今になってようやくカナダ国民がこの意味を真に理解し始めたのではないかと危惧している」。これはまさに衝撃的な出来事であり、かつて北アメリカに存在していた安定がもはや当然のこととは考えられなくなったことを示している。NORAD(北アメリカ航空宇宙防衛司令部)から砕氷船団、情報収集に至るまで、あらゆるものが突如として未解決の問題となり、カナダの領土保全さえも疑問視されるようになった。

しかし、トランプ大統領は恐らく気づいていないだろうが、カナダはカナダ国外のほとんどの人々が知るよりもはるかに長く、アメリカの計画を撃退してきた歴史を持っている。その歴史は、ここ一世紀よりも今の方がはるかに意味を持つ。それは全て、始まったばかりの断絶(a rupture)のおかげだ。

※ケイシー・ミシェル:ヒューマン・ライツ財団の「クレプトクラシー対策プログラム」の責任者。『アメリカのクレプトクラシー:アメリカはいかにして史上最大のマネーロンダリング計画を作り上げてきたのか(American Kleptocracy: How the U.S. Created the World’s Greatest Money Laundering Scheme in History)』の著者。Xアカウント:@cjcmichel

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(終わり)

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シリコンヴァレーから世界支配を狙う新・軍産複合体の正体 
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『トランプの電撃作戦』
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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める

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 古村治彦です。

 アメリカとヨーロッパの関係が悪化している。デンマーク領であるグリーンランド領有を目指す発言をドナルド・トランプ大統領や側近たちが行い、ヨーロッパ諸国は不安感を高めている。大西洋を挟み、北アメリカ大陸とヨーロッパ大陸の各国で構成している北大西洋条約機構(NATO)は旧ソ連と衛星諸国と対峙するために結成され、その後は、対ロシア同盟となっているが、NATOの枠組みにも緊張感が漂っている。アメリカが米軍をグリーンランドに派遣するとなると、デンマークの主権が侵害されることになり、NATOはアメリカと交戦状態になる。こうした事態はだれも望まないが、第二次ドナルド・トランプ政権の「狂人戦略」はヨーロッパをざわつかせている。

 こうした中で、ヨーロッパ諸国の中の大国であるドイツのフリードリヒ・メルツ首相は、アメリカとヨーロッパとの関係改善を訴えた。BRICS(ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカ)を中核とし、その他の様々な枠組みで重層的につながっている、西側以外の国々(the Rest、ザ・レスト)と西側諸国(the West、ジ・ウエスト)の分裂構造に世界はなりつつある。そうした中で、西側諸国の中で分断が起きることは、ヨーロッパ諸国にとって望ましくない。また、トランプ大統領が、ヤルタ2.0体制(米中露)、G2体制(米中)に傾きかねないとなると、ヨーロッパは孤立してしまう可能性がある。

 トランプのヴェネズエラ攻撃とグリーンランド領有希望は、「アメリカ・ファースト外交」に基づくドンロー主義(西半球を影響圏・勢力圏とする)の表れである。アメリカが世界の管理者であることを辞め、西半球を押さえるだけで良いとなり、他は中国(とロシア)に任せるとなれば、ヨーロッパは「捨てられる」ということになる。アメリカと中露を天秤にかけて、アメリカを選ぶということになるだろうが、アメリカは既に世界帝国であるための力を失っている。以下の記事で、メルツ首相は、「中国軍の伸長」に対抗するために、ヨーロッパとアメリカは協力しなければならないと述べている。ここがポイントである。ヨーロッパ連合(EU)とNATOにとって、中国は主敵とはならない。あくまでもロシアである。それでも、ヨーロッパ諸国が国防予算の増額を行い、アジア地域に出てくるというのは、アメリカの意向に沿うための動きである。しかし、トランプはヨーロッパのそうした意向をあっさり無視してしまう。トランプは中国と対立を深刻化させる意向はない。ヨーロッパと日本がトランプと側近たちの意向を「忖度」して、勝手にいきり立っているということになる。

 ヨーロッパの不安感は理解できる。世界構造の転換で自分たちが世界の中心でなくなる時代が再びやってくる。その対処の苦痛を和らげたいということもあるだろう。しかし、世界は大きく動いている。

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ドイツ首相フリードリヒ・メルツがアメリカの指導力が「失われた」と発言し関係の修復を求める(German Chancellor Merz says US leadership ‘lost,’ calls for repair of relations

ロウラ・ケリー筆

2026年2月13日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/policy/international/5737485-us-leadership-challenged-merz/

ドイツ首相フリードリヒ・メルツは金曜日、世界舞台におけるアメリカの指導者としての役割は「失われた(lost)」と発言し、ドナルド・トランプ大統領に対し、中国とロシアの脅威に対抗するため、大西洋関係(the transatlantic relationship)の修復を促した。

「アメリカの指導力の追求は挑戦を受け、おそらくは失われつつある」と、メルツ首相はミュンヘン安全保障会議に集まった各国の首脳、政治家、軍指導者たちに語った。

メルツ首相の演説は、先月スイスのダヴォスで開催された世界経済フォーラムで、カナダ首相マーク・カーニーがアメリカ主導の世界秩序の「断絶(rupture)」を指摘した発言と重なるものだった。カーニー首相は、トランプ大統領によるグリーンランド占領の脅し、制裁措置としての関税、そしてNATOへのアメリカの関与に関する疑念をめぐるヨーロッパの不安に訴えた。

しかし、カーニー首相が米中両国による卓越に挑戦するため、新たな中堅国連合(a new coalition of middle powers)の結成を呼びかけている一方で、メルツ首相はトランプ大統領に対し、中国軍の伸長に対する最善の防衛策として、ヨーロッパとの関係修復を訴えた。

メルツ首相は、「大国間競争(great power rivalry)の時代では、アメリカでさえ単独では立ち向かえないだろう」と述べ、ドイツ語から英語に切り替え、ワシントンとアメリカ国民に直接語りかけた。

メルツ首相はアメリカとヨーロッパの関係修復を訴え、NATOへの共通の関与こそが脅威に対する最善の防衛策だと述べた。

メルツ首相は「親愛なる友人の皆さん、NATOに加盟することは、ヨーロッパの競争優位性であるだけでなく、アメリカの競争優位性(competitive advantage)でもある。だからこそ、共に大西洋間の信頼を修復しよう」と述べた。

メルツ首相はまた、アメリカが敵対的になる中でヨーロッパ諸国が連携するよう訴え、「新たな大西洋横断パートナーシップ」を求めた。

メルツ首相は、2025年のミュンヘン安全保障会議におけるJD・ヴァンス副大統領の演説に言及し、大量移民に直面してヨーロッパが報道の自由を抑圧し、歴史的文化を失っていると厳しく批判した。

メルツ首相は、「ヨーロッパとアメリカの間には分断が生まれており、JD・ヴァンス副大統領は1年前のミュンヘン安全保障会議でこのことを非常に率直に述べており、彼の言う通りだった」と述べた。

メルツ首相は「アメリカにおけるMAGAのような文化間の争いは、私たちの問題ではない。言論の自由は、人間の尊厳と私たちの基本法に反する言葉が発せられた時点で終わる」と続けて述べた。

メルツ首相は「私たちは関税や保護主義ではなく、自由貿易を信じている。気候変動に関する協定や世界保健機関(WHO)の方針を堅持するのは、地球規模の課題は共に解決しなければならないと確信しているからだ」と続け、トランプ大統領の政策に言及した。

「私たちのパートナーシップに未来があるのであれば、新たな方法でそれを築き上げ、それを理性的に理解する必要がある」。

マルコ・ルビオ国務長官は今週末、ミュンヘン安全保障会議で演説を行う予定だ。演説の予告として、ルビオ長官は記者団に対し、「私たちが目指すところ、彼らと共に目指すところ」について説明すると述べた。

ルビオ長官は「古い世界は過ぎ去った。率直に言って、私が育った世界は過ぎ去った。私たちは地政学の新たな時代に生きている。私たち全員が、そのあり方、そして私たちの役割とは何かを再検討する必要があるだろう」と述べた。

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シリコンヴァレーから世界支配を狙う新・軍産複合体の正体 
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『トランプの電撃作戦』
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世界覇権国 交代劇の真相 インテリジェンス、宗教、政治学で読む

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

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 古村治彦です。

 アメリカは西半球に立て籠もろうとしている。世界に対する一極支配は既に不可能な状況になっている。そうした中で第二次ドナルド・トランプ政権は202512月に発表した、「国家安全保障戦略(National Security StrategyNSS)」で、「アメリカ・ファースト外交」を掲げ、「西半球」をアメリカの勢力圏(sphere of influence)とすると発表した。

 トランプ政権は、ヴェネズエラ攻撃とニコラス・マドゥロ大統領の拘束連行を実施し、グリーンランドの領有を主張している。有名なモンロー主義と棍棒外交を混ぜ合わせた、アメリカ・ファースト外交政策、ドンロー主義は、あらゆる手段を用いて、西半球から中国やロシアの影響を排除し、アメリカの支配権を確立するということになる。

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 アメリカが西半球を勢力圏とすると、中国とロシアがそれ以外の地域を勢力圏にするという構造になる。ロシアは自国の周辺を「緩衝地帯」「衛星国」として、自国の防備を固めるという行動を取り、中国は影響を少しずつ拡大していく。一帯一路計画はその一例であるし、BRICSという枠組みもそれにあたる。

 アメリカの西半球のアメリカ勢力圏化は、実質的なアメリカ「帝国化」である。アメリカの利益のために、勢力圏内の全ての国家がアメリカの利益のために「奉仕する」という構造を目指すことになる。簡単に言えば、全ての国家を属国とするということだ。帝国と属国の関係を西半球に築き、搾取するということだ。遅れてきた植民地主義である。ドンロー主義のこのような態度は西半球の全ての国々の反米感情を増大させることになる。また、既に、ブラジルはBRICSの一角として、西側以外の国々の中でリーダー格として存在感を増している。西半球は既にアメリカの勢力圏、植民地帝国として再編することはできない。アメリカが、本当の意味で「共存共栄(co-prosperity)」を学ばねば、ドンロー主義による、西半球の植民地化は、太平洋戦争における日本の「大東亜共栄圏(Great East Asian Co-Prosperity Sphere)」と同じ結果に終わるだろう。
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「ドンロー主義」は意味をなさない(The ‘Donroe Doctrine’ Makes No Sense

-寛大に解釈したとしても矛盾が山積している。

スティーヴン・M・ウォルト筆

2026年1月8日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2026/01/08/donroe-doctrine-trump-venezuela-empire/

ドナルド・トランプ政権のヴェネズエラ政策(ニコラス・マドゥロ大統領の最近の拉致事件を含む)の戦略的正当性(the strategic justification)について、もしあなたが困惑しているなら、それは仕方がないと思う。なぜなら、これまでに提示された論拠のほとんどは信頼性に欠けているからだ。

第一に、これはアメリカを「麻薬テロ(narcoterrorism)」から守ることではない。ヴェネズエラはアメリカに流入する違法薬物(ましてやフェンタニル[fentanyl])の主要な供給源ではなかっただけでなく、ドナルド・トランプ米大統領が、麻薬密売で有罪判決を受けたホンジュラスの元大統領フアン・オルランド・エルナンデスに完全恩赦(a full pardon)を与えるという最近の決定は、彼がこの問題をどれほど真剣に考えているかを示している。さらに、米司法省は、トランプ政権が昨年繰り返し騒ぎ立てた危険な麻薬カルテル「カルテル・デ・ロス・ソレス」が実際には存在しなかったことを認めた。言い換えれば、それは、繰り返し警告されながら発見されることのなかったイラクの大量破壊兵器(weapons of mass destruction)と同じくらい真実である、完全に虚構の政権プロパガンダだったのだ。

マドゥロ大統領の拘束は、アメリカの安全保障強化を目的としたものではなかった。ヴェネズエラは非常に脆弱な国(a very weak country)であり、マドゥロ大統領が容易に拘束されたことからもそれが明らかだ。また、アメリカの強力なライヴェル国にとって、ヴェネズエラは緊密な戦略的同盟国ではない。中国はヴェネズエラに軍事基地を建設しておらず、イランはアメリカを攻撃するためのミサイルをヴェネズエラに輸送していなかった。ヴェネズエラには、アメリカの貿易ルートを阻害できるほどの強力な海軍力も存在しなかった。カラカスからアメリカが直面する深刻な脅威を夜も眠れずに心配する人は誰もいなかったし、マドゥロ大統領がブルックリンに収監された今、誰もが安眠できている訳ではない。

また、トランプ大統領が野党指導者マリア・コリーナ・マチャドを権力の座に就かせることを既に断念し、代わりに依然として紛れもなく独裁的な政権を率いるマドゥロ大統領の副大統領と交渉する意向を示していることを考えると、これは民主政治体制の促進を目的としたものでもない。

 

 

 

 

 

危険な薬物の撲滅でも、深刻な安全保障上の脅威に立ち向かう必要性でも、民主政体を回復したいという願望でもないのなら、それは石油に違いない、そうではないか? トランプは、これが本当の理由であり、アメリカ企業がすぐにそこに参入して石油を奪い、アメリカを偉大な国にするつもりだと繰り返し述べている。これもまた間違いだ。トランプは自分が信じたいものなら何でも信じることができるが(そして頻繁にそうしている)、近いうちにアメリカを待ち受ける大規模な石油ブームなど起きない。火曜日、トランプはヴェネズエラがアメリカに最大5000万バレルの石油を引き渡すことに同意したと自慢したが、これはせいぜいアメリカの石油生産量の4日分にも満たない量だと気づくまでならば、素晴らしい話に聞こえるだろう。トランプは、売却益を管理し、ヴェネズエラの経済支援に使うと述べたが、もしこれを信じているのなら、トランプの略奪的本能(predatory instincts)に注意を払っていないことになる。そして、たとえその石油からの収入が最終的に得られるようになったとしても、それはヴェネズエラが経済再建に必要とするものの表面をかすめる程度にしか過ぎない。

確かに、ヴェネズエラは世界最大の確認埋蔵量(the world’s largest proven reserves)を誇るが、その重質原油は採掘が難しく、精製コストも高額になる。率直に言って、良識ある生産者なら開発を試みようとしないであろうし、まさに最後の手段と言えるだろう。ヴェネズエラの老朽化したインフラの危機的状況と、昨今の原油価格の低迷を考えると、なおさらだ。そして、もし奇跡的にヴェネズエラの原油が大量に世界市場に流入すれば、価格はさらに下落し、アメリカのシェールオイル掘削業者の多くは廃業に追い込まれるだろう。

そして、トランプ大統領や大手石油会社がどう考えようと、世界は徐々に炭化水素資源から離脱し、他のエネルギー源へと目を向けつつあり、ヴェネズエラの埋蔵量の価値はさらに低下していることを忘れてはならない。実際、気候変動の現実を考えると、最も賢明なのは、できる限り多くの原油を地中に残しておくことだ。つまり、中国が将来のグリーン産業を支配し、その結果影響力を獲得することにレーザーのように集中している一方で、トランプと彼を取り囲む戦略の天才たちは、地球を脅かす前世紀のエネルギー政策にさらに力を入れているということになる。

従って、この作戦の戦略的根拠についてあなたが混乱するのも無理はない。私がここで見出す唯一の「戦略的」目的(“strategic” objective)は、西半球(the Western Hemisphere)におけるアメリカの覇権(U.S. hegemony)を再確立するという大まかな考えだ。トランプはあらゆるものに自分の名前を冠することで自らの領土を示すことを好むため、この考えは現在「ドンロー・ドクトリン(Donroe Doctrine)」として宣伝されており、最近の「国家安全保障戦略(National Security StrategyNSS)」にも明確に示唆されている。これは外交政策のリアリストたちが支持できる合理的な考えのように聞こえるかもしれないが、綿密な検証にも耐えられない。

モンロー・ドクトリン(the Monroe Doctrine)の本来の目的は、アメリカが西半球におけるライヴァル大国の軍事介入を心配しなくて済むようにすることだった。ジェイムズ・モンロー大統領の構想が実現するまでにはほぼ1世紀を要したが、最終的にアメリカは他の全ての大国を西半球から追い出し、歴史家C・ヴァン・ウッドワードが「自由な(もしくは無料の)安全保障(free security)」と呼んだものの恩恵を享受することに成功した。

しかし、トランプと側近たちが言っているのはそういうことではない。なぜなら、現在、西半球で重要な軍事的役割を果たしている大国はおらず、また、そのような役割を担おうとしている大国も存在しないからだ。「国家安全保障戦略」が明らかにしたように、トランプ政権は、発生する可能性のあるあらゆる問題において、可能な限り多くの近隣諸国に、自らの指示に従わせようとしている。彼らは現在、マドゥロ大統領の後継者たちにこう言い放っている。「私たちの要求に応じなければ、封鎖(blockading)を続け、もしかしたらもっとひどいことをするかもしれない」。そして、彼らは地域の他の国々がこのメッセージを理解し、従順に行動してくれることを期待しているのだ。

特に、トランプ政権は現在、近隣諸国の経済政策を統制し、これらの国々や中国などの国々にとって経済的に有益な政策を拒否する権利を主張している。「国家安全保障戦略」では、「私たちは、敵対的な外国の侵略や主要資産の所有から自由な西半球を望んでいる」と述べ、さらに、部外者が「戦略的に重要な資産を所有または支配」してはならず、アメリカは「西半球以外の競争相手がこの地域で影響力を高めることをより困難にしなければならない」と付け加えている。トランプとその仲間たちは、一部のラテンアメリカ諸国が「低コストと規制上のハードルの少なさ(low costs and fewer regulatory hurdles)」に惹かれて他国と「ビジネスを行うことに魅力を感じている(attracted to doing business)」ことを理解しているため、「そのような援助を拒否するよう各国に促す(induce countries to reject such assistance)」と主張している。しかし、トランプ政権は一般的に外国援助に反対し、あらゆる二国間関係において利益の大半を独占しようとする略奪的な政権であるため、望むものを手に入れるには寛大さ(generosity)ではなく脅迫(threats)に頼らざるを得ない。

しかし問題は、アメリカがこのように近隣諸国の経済に介入し続けるなら、その国の経済状況に責任を負うことになるということだ。ラテンアメリカ諸国に対し、アメリカ製品よりも安価な中国製品(場合によっては電気自動車のように大幅に優れた製品)を購入できないと告げれば、消費者は不満を抱くだろう。もし同じラテンアメリカ諸国に対し、インフラ整備やその他の機会創出につながる中国やその他の外国からの投資を拒否するよう命じれば、アメリカはそれを提供しなくてはいけなくなる。さもなければ、ラテンアメリカ諸国の貧困を助長していると非難されるだろう。これに加えて、アメリカの問題をこの地域からの移民や難民のせいにする傾向、そして可能な限り多くの移民や難民を強制送還するという強硬な姿勢が加われば、安定した覇権どころか、反米感情の高まりと地域の不安定化を招くことになる。

より成功したアメリカの政策との対比は明白だ。例えば第二次世界大戦後、アメリカはヨーロッパとアジア(かつての敵国であったドイツと日本を含む)で非常に成功したパートナーシップを築いた。これは、これらの国々がソ連という共通の脅威を認識していたことに加え、アメリカが新たなパートナー諸国が第二次世界大戦から可能な限り速やかに復興できるよう、慈悲深く行動したことも一因となっている。しかし、トランプは「慈悲深く()benevolent」という言葉の意味を理解していない。彼の人生観は「私のものは私のもの、他人のものは交渉の余地がある(what’s mine is mine and what’s yours is negotiable)」というものだ。

銃を突きつけて西半球を支配しようとする試み(trying to run the Western Hemisphere at the point of a gun)は、過去と同様に、今後もうまくいくことはないだろう。トランプの顧問であるスティーヴン・ミラーは、「歴史の鉄則(iron laws of history)」の1つは、世界は力によって支配されていることだ(the world is governed by power)と考えている。ミラーが言及しなかった「鉄則」は、力こそが全てだと考える指導者は必然的に多くの愚かな行為を犯すということ(leaders who think power is all that matters inevitably do a lot of stupid things)だ。

※スティーヴン・M・ウォルト:『フォーリン・ポリシー』誌コラムニスト。ハーヴァード大学ロバート・アンド・レニー・ベルファー記念国際関係論教授。Blueskyアカウント:@stephenwalt.bsky.socialXアカウント:@stephenwalt

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古村治彦です。

 国際関係論には様々な理論(theory)が存在する。「理論」と言うと、確立された内容であるように思われるが、「理論」は多くの実験(experiment)や観察(observation)を経て、その内容が確かめられているが、これからも様々な試験を受けることで、内容が修正される可能性があるという点で、「仮説(hypothesis)」の一種である。「仮説」はこれから実験や観察の試験を受ける考えや物の見方である。理論は「法則(law)」とは違う。社会科学においては、「法則」はほぼ存在しないと言ってよい。

 国際関係論の理論の1つに「民主平和論(democratic peace theory)」がある。これは簡単に言えば、「民主政治体制国家同士は戦争をしない」というものだ。第二次世界大戦で考えてみると、連合諸国(the Allied Forces)と枢軸諸国(the Axis)では、この理論が適用される。第二次世界大戦後の世界では、小競り合いなどを除くと、この理論が適用されるようだ。

 国際関係論は社会科学の一分野で、統計学も用いられるが、同時に歴史学も用いられる。歴史上の出来事から理論を作り出すということが行われる。こうした中で、「民主平和論」は、その有効性が高い理論として知られている。「民主国家同士は戦争をしない」ということから敷衍すると、「世界の全ての国が民主政治体制になれば、世界から戦争がなくなる」というテーゼが導き出される。これが、アメリカによる外国への介入(intervention)、「民主化(democratization)」を正当化することになった。ネオコンにとっての「金科玉条(a golden rule)」となった。第二次世界大戦の結果として、枢軸国側だったドイツと日本、そしてイタリアは「民主化」された。これが成功例として喧伝された。2003年のイラク戦争とアメリカによる民主化について、日本が成功例として引き合いに出されることもあった。

 世界を眺めてみれば、民主的ではない国家は多く存在する。ネオコンにとっては全てが民主化すべき対象となるはずだが、実際には、サウジアラビアなどの中東地域の王制国家については、民主化を求めていない。アメリカにとって利益になるのであれば、民主化を求めない。これは二重基準、ダブルスタンダード(double standard)である。

 アメリカのドナルド・トランプ政権のドンロー主義によって、民主国家同士の緊張も高まっている。NATOの存在意義にも疑義が出るほどになっている。民主平和論は時代の大転換の中で生き残ることができるかどうか、現在はそのための実験が行われているとも言える。
(貼り付けはじめ)
民主的平和理論よ、安らかに(Democratic Peace Theory, R.I.P.

-主流の学術理論であったこの理論の台頭と潜在的な衰退。

スティーヴン・M・ウォルト筆

2025年10月28日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2025/10/28/democratic-peace-theory-definition-democracy-international-relations-us/

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江陵で開催された2018年平昌冬季オリンピックの選手村にあるファストフード店の外で2人の女性が自撮りしている(2018年2月8日)

社会科学理論の中には、驚くほど長く続くものもあれば、寿命が短いものもある。かつて有望視されていたアイデアが、何の成果も上げられず(タルコット・パーソンズの社会学構造機能主義的アプローチ[structural-functionalist approach to sociology]はその一例だ)、最終的に多くの学者がそれを放棄し、別の分野へと進んでしまうこともある。あるいは、斬新な理論的議論が最初は説得力があるように思えても、その後の研究で論理的または実証的な限界が明らかになることもある。また、大胆な主張に対して現実世界が厳しい判断を下す場合もある(「歴史の終わり(end of history)」テーゼを覚えておられるだろうか?)。しかし、信用を失った理論の中には、強力な利害関係者が存続させることにメリットを見出すため、ゾンビのように生き残るものもある。

なぜこの話を持ち出したのか? それは、最近、民主的平和論(democratic peace theoryDPT)に一体何が起きたのか、疑問に思ったからだ。国際関係論を学ぶ人なら誰もが知っているように、民主平和論は1980年代半ばから21世紀に入ってからも、国際関係論研究者たちにとって大きな知的関心事だった。マイケル・ドイルによるこのテーマに関する独創的な著作(イマヌエル・カントが提唱した議論を洗練させた)に始まり、「民主政治体制国家は互いに争わない(democracies don’t fight each other)」という考えは、膨大な数の学術論文や書籍、そして数々の重要な批判を生み出した。

現代の民主平和論は、確立され機能している民主政治体制国家は互いに戦争をしないという経験的観察(the empirical observation)に基づいており、ある著名な学者はこの発見を「国際関係の研究において経験法則に最も近いもの(the closest thing we have to an empirical law in the study of international relations)」と呼んだ。支持者たちはこの興味深い観察に対して、経済的相互依存(economic interdependence)などの他の要因と組み合わせるなど、いくつかの競合する説明を展開した。多くの社会科学理論とは異なり、民主平和論はすぐに象牙の塔(the ivory tower)を出て、世界中に民主政治体制を広めたり、NATO などの機関を拡大したりするアメリカの取り組みを正当化しようと努める政治家たちに利用された。この理論の魅惑的な魅力は明らかだった。なぜなら、完全に自由主義的な諸国で構成される世界は戦争から自由であると示唆していたからだ。ジョージ W. ブッシュ大統領が就任当初に述べたように、「私たちの目標は、このアメリカの影響力の時代を、何世代にもわたる民主的な平和に変えることである」ということになる。

当然のことながら、民主平和論の大胆な主張には多くの批判が寄せられた。一部の学者は、実証的発見の根底にある因果メカニズムに一貫性がなく説得力に欠けると指摘した。一方、1945年以前には真の民主政体国家はほとんど存在しなかったことを考えると、民主政体国家間の戦争の頻度の低さは統計的な人工物(artifact、アーティファクト)である可能性があると示唆する学者もいた。また、第二次世界大戦後の民主政体国家のほとんどがアメリカの冷戦同盟ネットワークの一部であったことを考えると、民主政体国家間の戦争がないのは権力政治によるものだ、あるいは特定のコーディング決定や「民主政治体制(democracy)」の定義の変化の結果だと示唆する学者もいた。さらに、確立された民主政体国家は過去に互いに戦っていなかったかもしれないが、新たに民主化した国家は特に戦争を起こしやすい傾向にあると指摘する学者もいた。これは、民主政治体制の普及は長期的には報われるかもしれないが、そこに到達するには困難なプロセスになるだろうということを示唆している。

この知的論争は学術誌やモノグラフの紙面上で激しさを増し、最終的には行き詰まりに陥った。競合する大規模N研究(large-N studies)の結果が、採用されている仮定やモデリング手法にますます依存するようになったためだ。私見だが、民主政治体制による平和に関する極端な主張は誇張されているものの、民主政体国家同士が戦争する可能性はやや低いと言えるだろう。なぜなら、民主政体国家は戦争に対する国民の抵抗を克服するのが不可能ではないものの、やや困難だからだ。

さらに重要なのは、民主平和論は完全に民主政治体制国家のみで構成される世界がどのようなものになるかについて、あまり多くを語っていないように思われたことだ。なぜなら、そのような世界はこれまで存在したことがなく、民主政体国家間の戦争がないことは、潜在的に危険な非民主政体国家のライヴァルたちが常に存在することによって裏付けられてきたからだ。しかし、全ての独裁国家が民主政体国家に置き換えられれば、カント主義的な共和国でさえも互いを疑いの目で見て、不公平な区別をつけ始めるかもしれない。民主政治体制の原則を共有しても全ての利益相反がなくなる訳ではなく、議会制共和国や大統領制共和国は互いを異なる、そしておそらく危険な存在と見なし始めるのではないだろうか? もしそうなら、民主政治体制を広く普及させることは、民主平和論の最も熱心な支持者が信じていたような万能薬(the panacea)ではないかもしれない。そして、他の学者と同様に、私は、民主平和論が強力な民主政体国家に平和の名の下に非自由主義国家に対する暴力的な十字軍(crusades)を開始するよう奨励し、そのような取り組みが国内の自由主義の規範と自由を徐々に侵食するのではないかと懸念していたが、まさにそれが起こっている。

しかし、民主平和論は今日の世界においてどのような位置づけにあるだろうか? 理論そのものには含まれていなかったものの、その提唱者やそれを援用した政策立案者の多くは、自由主義的民主政治体制こそが未来の潮流であり、ソヴィエト帝国に対する一見勝利した後も、それがさらに拡大していくと想定していた。しかし、この予測は大きく外れた。世界中で民主政治体制は20年近く後退しており、長らくその主要な擁護者であったアメリカ合衆国においても、急速に衰退している。世界で最も人口の多い民主政体国家であるインドは、ますます非自由主義的な方向へと進んでいる。ブラジルは前回の選挙後、独裁政権の掌握を辛うじて免れた。そして、ヨーロッパの既存の民主政治体制国家のいくつかは、それぞれ独自の正統性の危機に直面している。

したがって、世界の主要国の全て、そして多くの中小国も、まもなく、言葉の意味する意味で自由主義でも民主政治体制でもない状態になる可能性は十分にある。民主平和論はこの点について何を示唆しているのだろうか?

最も明白な点は、たとえ民主平和論が真実だとしても、そのような世界ではほとんど無関係であるということだ。その因果メカニズムは非自由主義国家間、あるいは非自由主義国家と自由主義国家の間では機能しないため、主要な民主政体国家が存在しない世界は理論の範疇外だ。民主平和論の信奉者たちは、そのような世界ではさらに紛争が激化すると予想するかもしれない。なぜなら、民主政治体制の平和のオアシスは少なくなり、結果として非民主政治体制国家間の紛争の機会が増えるからだ。しかし、民主平和論は非民主政体国家間の戦争の頻度についてはほとんど語っておらず、地球上に残された民主政治体制国家が少なくなったという理由だけで、非自由主義国家が過去よりも頻繁に戦争を始めると考える明白な理由は存在しない。

さらに言えば、そのような世界にはわずかな希望の光(silver lining)があるかもしれない。民主政治体制と独裁政治体制の間のイデオロギー的競争、それぞれが相手を自らの正統性に対する脅威と見なすことになるが、それがなくなることで、両者間の安全保障上のディレンマは緩和され、過去に強力な自由主義国家を戦争へと駆り立てた、そして独裁主義国家が自国の体制維持のために予防戦争(preemptive wars)を仕掛ける原因となった、十字軍的な衝動が弱まるだろう。大国間の競争は終わらないが、イデオロギーに駆り立てられることは少なくなり、妥協を許さない性格を帯びることも少なくなるだろう。皮肉なことに、民主平和論が政策立案者たちにとって有用な指針とみなされなくなった世界は、より平和的になるかもしれない。

誤解しないで欲しい。私はそのような世界が望ましいと言っているのではない。むしろ、非自由主義的な大国のみで構成される世界には多くの欠点が存在する。人権は深刻な危機に瀕し、腐敗が蔓延し、野放しの独裁者たちは毛沢東の大躍進政策(Mao Zedong’s Great Leap Forward)のような破滅的な政策、あるいはヨシフ・スターリンの大粛清(Joseph Stalin’s Great Terror)やナチスのホロコースト(the Nazi Holocaust)のような全体主義的な悪夢を自由に実行することになるだろう。私は民主政治体制が「他のあらゆる政治形態を除けば最悪の政治形態(the worst form of government, except for all the others)」であり、独裁政権下で暮らすことを望んでいないため、世界、特にここアメリカ合衆国における独裁主義の動向について深刻な懸念を持っている。

理想的には、アメリカ合衆国が現在の衰退傾向を逆転させ、健全で力強い自由主義共和国であり続けることを願っている。そこでは、あらゆる政治家が民主政治体制の規範と法の支配(the rule of law)を尊重し、これらの原則に違反した際には責任を問われるだろう。また、力強いアメリカが、他の社会がそれぞれのやり方とペースで模倣したくなるような、素晴らしい、公正で、効果的な統治の模範を示すことで、これらの価値観を推進していくことも望んでいる。もし民主平和論を廃止することで、より控えめで現実的なアプローチが促進され、銃を突きつけて民主政体を押し付けようとする試(trying to impose democracy at the point of a gun)みを正当化しにくくなるのであれば、私はそれで良いと考えている。

※スティーヴン・M・ウォルト:『フォーリン・ポリシー』誌コラムニスト。ハーヴァード大学ロバート・アンド・レニー・ベルファー記念国際関係論教授。Blueskyアカウント:@stephenwalt.bsky.socialXアカウント:@stephenwalt

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(終わり)

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 古村治彦です。

 「勢力圏(sphere of influence)」という考え方がある。これはある国が自分の国がある地域や周辺において、優先的に影響力を行使して支配するという考え方だ。アメリカのモンロー主義は「孤立」を強調されるが、実際には、「アメリカは南アメリカを影響圏として、スペインやイギリスの影響力を排除して支配する。ヨーロッパには関心を持たない」ということであり、南米を支配するための原理原則であった。南米を支配するために棍棒外交も採用して、武力的に介入することもできるという考えでもある。ロシアはソ連時代も含めて、自国の周囲に緩衝地帯(buffer zone)、衛星諸国(satellite states)を作り、本国ロシアを守るという考えを持っている。
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 現在の世界は、アメリカの一極支配(unipolar dominance)が崩れつつある。アメリカを中心とする西側諸国(the West、ジ・ウエスト)と中国とBRICSを中核とする西側以外の国々(the Rest、ザ・レスト)に分かれている。アメリカは世界から撤退して、西半球(Western Hemisphere)を勢力圏として押さえるということになる。アメリカと中国の間にある太平洋をどうするかであるが、アメリカはハワイやグアムまで退くということになる。日本や台湾を嫌がらせのようにして、空母のようにして中国の沿岸に張り付ける形になっているが、これもやがて終わっていく。アメリカに日本にアメリカ軍を駐留させるだけの力がなくなり、日本にもそれを支えるだけの経済力がなくなり、日本の軍事力もそれを支える経済力も低下していくことになる。アジアと西太平洋は中国の勢力圏ということになる。ロシアは隣接する各国への影響力を維持するだろうが、それも中国との協力関係を維持しながらということになる。

 勢力圏内であれば、協力は何をしてもよいということにはならない。そんなことをすれば、勢力圏自体が崩壊する。強国を「脅威」と見なす各国が合同して、強国に対峙することになる。さらに、圏外の強国に支援を求めるという動きも出てくるだろう。南アメリカ最大の強国はブラジルであり、ブラジルはBRICSの一角を占めている。アメリカが南アメリカから「西側以外の国々」の影響を排除することはできない。

 アジア地域は共存共栄の勢力圏を目指すべきであり、中国は実際にそのように動くだろう。アメリカと違って馬鹿ではない。ヨーロッパが進出してくる前のアジアの状態に戻るということになるだろう。

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勢力圏とは何か-そして何でないか(What Spheres of Influence Are—and Aren’t

-国際政治において最も誤解されている概念の一つが力によって戻ってきている。

スティーヴン・M・ウォルト筆

2026年1月19日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2026/01/19/sphere-influence-trump-venezuela-donroe-doctrine/

最近、「勢力圏(spheres of influence)」について多くの議論が交わされているが、これは主にアメリカの最新の「国家安全保障戦略(National Security Strategy)」、ドナルド・トランプ政権によるヴェネズエラでの最近の行動、そしてグリーンランドの占領に向けた新たな試みに対する反応だ。大国は自国の「近隣地域()neighborhoods」において誰にも邪魔されることのない影響力を行使すべきだという考えは、ドナルド・トランプ米大統領の信念とも一致している。彼は、強国の強力な指導者が世界を統治し、国際法や普遍的な道徳原則、その他の理想主義的な考えを気にすることなく、互いに取引を行うべきだと考えている。

残念なことに、勢力圏を支持する人も反対する人も、世界政治におけるその位置づけを十分に理解していない可能性がある。現実の世界では、勢力圏は廃止できる時代遅れの慣行でもなければ、大国間の競争を最小限に抑える効果的な方法でもない。むしろ、勢力圏は国際的な無政府常態(international anarchy)の必然的な結果であると同時に、国際的な無秩序状態が生み出す競争インセンティヴに対する不完全な解決策でもある。

大国勢力圏構想に対する反対意見のほとんどは規範的なものであり、批評家たちはそのような取り決めは本質的に不公平だと主張する。主権国家の世界では、各国は国際法の下で平等な地位を享受している(例えば、国連憲章第2条を参照)。したがって、強国が経済的または軍事的強制力によって弱い隣国に大きな支配力を及ぼすことは、本質的に間違っていることになる。例えば、ウクライナのNATO加盟への傾倒(将来の正式加盟の可能性も含む)をロシアが懸念する理由があるかもしれないと認識している人々でさえ、そのような決定はNATOとキエフの判断に委ねられるべきであり、ロシアの拒否権(veto)に左右されるべきではないと主張する。この見方に立てば、中国がアジア諸国に対しアメリカや台湾から距離を置くよう圧力をかけること、あるいはアメリカが(最近の「国家安全保障戦略」にあるように)「私たちの半球(西半球)外の競争国が西半球に軍事力やその他の脅威となる能力を配置したり、戦略的に重要な資産を所有・管理したりする能力を否定する(deny non-Hemispheric competitors the ability to position forces or other threatening capabilities, or to own or control strategically vital assets, in our Hemisphere)」と宣言することなどは、同様に不当である。こうした批判者たちは、全ての国が自らの判断で自由に連携すべきであり、強力な隣国には、誰と貿易し、誰から投資を受け、誰と軍事協力できるかを指図する権利はないと主張する。

そのような規範に支配された世界に住めたら素晴らしいだろうが、このヴィジョンは到底現実的ではない。勢力圏は国際政治において繰り返し出現する特徴であり、それを完全に排除できる可能性は低い。ホワイトハウス補佐官スティーヴン・ミラーが世界政治のいわゆる「鉄則(iron laws)」について無知な大言壮語をするのを鵜呑みにする必要もなく、強大な国家は自国の領土周辺で何が起きているかに常に敏感であり、自国の安全保障を強化すると信じる方法で周囲の状況を形作るために、自らの持つ力を利用するだろうことを認識すべきである。

勢力圏が生じる理由は3つある。第一に、大国は通常、遠隔地の大国よりも自国の近隣地域に強い関心を持つ。そして自国に近い地域で不利な動向が勢いを増すのを防ぐため、リスクを冒しコストを負担する意思が、遠隔地の大国が同じ動向を支援する意思よりも強い。後述するように、遠方の大国は他の大国に近い地域に重要な利益を有する場合もあるが、その利益は通常小さく、防衛のために多大な資源を犠牲にする意思も通常低くなる。2015年に私が主張したように、これがウクライナを西側の自由主義圏に組み入れようとする試みが危険であった理由の1つだ。ロシアは私たちよりも(ほとんどのウクライナ人よりもという訳ではないが)ウクライナを気にかけており、したがって私たちとは異なる方法でエスカレートする意思があったはずだ。同じ論理で、アメリカが本当に動揺しているときに、ロシア、中国、イランからの支援がラテンアメリカ諸国にとってほとんど役に立たない理由も説明できる。この事実は、大国による干渉が正当または道徳的であることを示すものではないが、なぜそのような干渉が起こるのかを理解する上で役立つ。

第二に、ヨーロッパ連合(EU)、アメリカ・メキシコ・カナダ貿易協定、そして東アジアにおける中国の経済的影響力が示すように、グローバル化の時代においても、貿易は依然として地域的に集中する傾向がある。その結果、地域最大の経済大国は、近隣諸国の選択に対して相当な(無限ではないものの)影響力を持つのが一般的である。なぜなら、近隣諸国は、支配的な大国が自国の市場へのアクセスを拒否したり、主要輸出品を制限したりする可能性のある措置を講じた場合の経済的影響を考慮しなければならないからである。

第三に、軍事力を自国に近い場所に展開することが容易であるため(そして、遠方の大国が遠方の国を支援することはより困難であるため)、大国は反抗的な近隣諸国に対してより説得力のある軍事行動の脅しをかけることができる。例えば、ロシアがラテンアメリカ、中東、アフリカに50万人以上の兵士を輸送し、維持することはほぼ不可能であるが、隣国ウクライナには(困難を伴うものの)同数の部隊を配備することが可能であり、実際に配備している。

世界政治において勢力圏が頻繁に見られるという認識から、批評家の一部は、勢力圏について、世界を組織化し、大国間の対立を緩和する潜在的に有用な手段と捉えている。大国が互いの勢力圏を認め、尊重することに合意すれば、潜在的な利益相反(conflicts of interest)は減少し、それぞれの大国の安全保障は強化されるはずだ。理論上は、大国が境界線の位置について合意し、それぞれの勢力圏において「互いに尊重し合う(live and let live)」ことを約束すれば、それぞれが自らの地域を自由に管理できるようになり、潜在的な摩擦点(points of friction)は減少するはずだ。

歴史が示しているのは、私たちはこの処方箋にある程度懐疑的な見方をしているようだ。主張者たちは、このアプローチの成功例として、冷戦時代のヨーロッパ分断を挙げるかもしれない。何世紀にもわたる戦争の繰り返しの後、ヨーロッパはアメリカとソ連がそれぞれ大陸の半分を支配し、互いに抑止力となり、従属諸国(clients)を統制していたため、平穏を保っていた。 NATOとワルシャワ条約機構の直接衝突は計り知れないほどの破壊をもたらすことは誰もが知っていたため、双方とも相手の領域に過度に干渉することに警戒していた。

しかし、この例は一見するほど説得力があるようには思えない。1950年代(特にベルリンの壁が建設される前)のヨーロッパは、危機が繰り返し発生していただけでなく、核兵器を保有する2つの超大国(two nuclear-armed superpowers)が「鉄のカーテン(the Iron Curtain)」を挟んで睨み合っていたという事実に、平和は大きく依存していた。ヨーロッパが2つの対立圏(rival spheres)に分断されていたことで、開戦の可能性は低かったかもしれないが、冷戦(the Cold War)下の競争は依然として激しく、どちらの側も、相手が自らの勢力圏で優位な影響力を行使する「権利(right)」を完全には認めていなかった。もしアメリカ人がそうしていたら、ロナルド・レーガン大統領がベルリンでソ連の指導者たちに「この壁を壊せ(tear down this wall)」と演説することは決してなかっただろう。

さらに言えば、諸列強帝国(great-power empires)の初期の歴史は、誰が異なる地域に支配的な影響力を及ぼすかについて相互合意(mutual agreement)によって平和を確保しようとすることの難しさを如実に示している。様々な植民地大国(colonial powers)は海外に帝国を築く権利を認め、時には世界のどの地域が誰のものであるかについて暫定的な合意に達したものの、こうした取り決めは流動的であり、時に激しい論争を巻き起こした。イギリスとフランスは、北アメリカにおける支配的な影響力をめぐって争い(最終的にはどちらにもならなかった)、アフリカ、中東、南アジア、太平洋におけるそれぞれの植民地領有権をめぐって繰り返し衝突した。したがって、歴史が示すように、地図上に線を引いて各列強の領域を画定することは、問題の解決に長くは続かないだろう。

今日ではどうだろうか? 一方で、諸大国は確かに国益を有しており、特に自国領土に近い地域においては、これを無視して自国の戦略を策定するのは愚かな行為である。後知恵(hindsight)で言えば、アメリカの指導者たちは、旧ソ連に隣接する地域で政治的連携を再構築しようとする試みは逆効果になると警告した多くの声に耳を傾けるべきだった。そして、もし遠く離れた大国がアメリカ本土付近で同様のことを行おうとしたら、自分たちはどう反応するだろうかと自問すべきだった。他者の感受性(sensitivities)に配慮することは、道徳的な放棄ではなく、単に賢明な国家運営に過ぎない。

しかし他方で、勢力圏モデルを採用することで世界政治を平和化しようとしても、大国間の競争に終止符を打つことはできない。その理由は次の通りだ。

始めに、大国は自国地域内では相当な経済的影響力を持っているものの、今日の世界経済は高度に、そしておそらくは不可逆的にグローバル化しており、世界中の生活水準は、製造品の複雑なサプライチェインと、世界中から流入する原材料や食料資源に依存している。その結果、様々な地域を外部の経済力から完全に遮断することは(かつてのスターリン主義ロシアのように)、誰もが著しく貧しくなることなしには実現不可能だ。もしアメリカがラテンアメリカ諸国による中国製品の購入、原材料や大豆の輸出、そして切望されている中国からの投資の受け入れを阻止できると考えるなら、同等の価値を持つ代替品を提供するか、地域全体の人々の怒りを募らせるかのどちらかを迫られるだろう。同じ原則は、中国が東アジアにおいて外部勢力を排除する経済秩序を押し付けようとする試みにも当てはまる。そしてこれは、非常に深刻なコストを負わない限り、ライヴァル大国の影響力を自国の領域から排除することはできないことを意味する。

さらに、たとえ全ての主要国がそれぞれの領域を何らかの形で正式に承認したとしても、彼らは互いに警戒を強め、力と優位性を競い合うことになるだろう。そして、たとえ潜在的なライヴァル国に自国に近い地域への関心と資源を集中させるためだけでも、他の領域への様々な形での干渉に誘惑されるのは避けられないだろう。これが、ヨーロッパやアジア(そして程度は低いがペルシャ湾岸地域)における地域覇権国(regional hegemons)の台頭を阻止しようとアメリカが繰り返し試みてきた中心的な論理であり、こうした覇権国が台頭するには、時にアメリカの積極的な介入(active U.S. intervention)が必要だった。アメリカの指導者たちは、ヨーロッパやアジアにおける覇権国は、自らの領域内では誰にも挑戦されず、西半球を含む世界中でより自由に介入できるだろう。そして、この可能性はアメリカが長らく享受してきた「無料の安全保障(free security)」を低下させるだろうと理解していた。ライヴァル関係にある諸大国が互いの領域に干渉し始めると、たとえそれが限定的なものであっても、各国は警戒感を抱き、反発する可能性が高い。そのため、互いに譲り合い、ライヴァルの領域に介入しないという合意は、特に力のバランスが変化し、魅力的な新たな機会が生まれる場合には、極めて脆弱であることが判明する可能性が高い。

加えて、東ヨーロッパにおけるソ連の経験や、アメリカとラテンアメリカ諸国との関係史が示唆するように、大国の勢力圏内にある弱小国家の中には、その優位性に憤り、それを弱める方法を模索する国も出てくる。これは、遠方のライヴァル大国に介入の機会を与え、優位な大国を不利な立場に追い込むことになる。例えば、アメリカは1953年、1956年、1968年といった時期に、ワルシャワ条約機構加盟国の反乱軍をほとんど支援しなかった。また、1962年のキューバ危機を除けば、ソ連はフィデル・カストロ率いるキューバやサンディニスタを支援するために大きなリスクを冒すことはなかった。むしろ、米ソ両国は主に、ライヴァル国が弱い隣国に高圧的な干渉を行っていることを強調することで、プロパガンダの得点を稼ごうとした。そして、大国が自国の勢力圏内の反体制勢力を弾圧しなければならない状況では、こうした種類の正統性を失わせる動きが必ず起こるのである。

この状況はまた、勢力圏が最も効果的に機能するのは、それがほとんど目に見えない時、支配的な大国が近隣諸国を従わせるために多くのことをする必要がなく、自らの役割を本質的に善意あるものとして見せることができる時であることを私たちに思い出させる。とりわけ、だからこそトランプ政権は、「私たちの(our)」半球に自らの意志を押し付けると豪語しながらも、他国の資源や領土を支配したいという願望を公然と宣言している。これは外交上の失策であり、半球内でさらなる反感を醸成し、大国同士がアメリカを危険なならず者(a dangerous rogue)と描写するための十分な材料を与えることになるだろう。

最後に、たとえ中国、アメリカ、ロシア、そしておそらく他の12カ国が互いの勢力圏を認め、尊重することを約束したとしても、アフリカと中東は現在、どの大国の勢力圏にも入っていない。そのため、大国が富、力、影響力を求めて競争できる場所は依然として多く存在し、各大国が争っている地域への安全な通信回線を確立し、他の地域へのアクセスを拒否しようとするため、ある地理的領域での競争は他の地域にも波及する傾向がある。

結局のところ、世界が能力の大きく異なる独立国家に分断されている限り、勢力圏は国際情勢の不可避的な特徴であると同時に、平和を促進することにとっては、頼りない手段でもある。より平穏で繁栄した世界を築きたいのであれば、まずは他国の勢力圏に挑戦することは危険な試みであることを認識する必要がある。しかし、それだけでは終わらない。安定した平和の構築は、少数の世界指導者が地図を取り出して誰がどこに何を得るかを決めるだけでは到底できるものではない。たとえ今日、何とか合意に至ったとしても、将来、互いの地域的宗主権(regional suzerainty)の主張に挑む、微妙な、あるいはそれほど微妙ではない試みを含め、優位性を競い合うことを止めることはできない。

※スティーヴン・M・ウォルト:『フォーリン・ポリシー』誌コラムニスト。ハーヴァード大学ロバート・アンド・レニー・ベルファー記念国際関係論教授。Blueskyアカウント:@stephenwalt.bsky.socialXアカウント:@stephenwalt

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 古村治彦です。

 ドナルド・トランプ大統領の外交政策はいつも通り、はったりを利かせながら進んでいる。西半球(Western Hemisphere)を勢力圏(Sphere of Influence)として、支配を確立するために、逆に言えば、世界覇権国であることを辞めるために動いている。ヴェネズエラ攻撃、グリーランド奪取への言及、パナマ運河への野心、カナダやメキシコを「州」として扱うような行動は南北アメリカ大陸を支配するための動きである。ドンロー主義は、モンロー主義(南アメリカからイギリスの影響を排除する)と棍棒外交(アメリカ海軍の戦艦の太平洋と大西洋の行き来を確保しつつ、物流の通行料を取るためにパナマを奪取する)を混合させたものだ。ドンロー主義が排除を目指すのは、中国とアメリカの影響力だ。

 19世紀のイギリス、21世紀の中国とロシア、それぞれターゲットは異なる。また、置かれている状況も異なる。南アメリカには「西側以外の国々」の中核であるBRICSの一角ブラジルが控えている。ブラジルは国力を充実させ、南アメリカの地域大国となり、ドル覇権からの離脱を目指す存在である。BRICSは既に世界の重要な拠点を押さえている。BRICSの位置を確認すれば、北米大陸(とヨーロッパ)が包囲されていることが分かる。
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BRICS加盟諸国の地図

 アメリカの横暴な動きが続けば、ヨーロッパ諸国がそうであるように、アメリカを「脅威」と見なすことで、西側以外の国々が「対米防衛同盟」を成立させることで、「脅威の均衡(balance of threat)」を図るということも起きるだろう。「脅威の均衡」はこのブログでも頻繁にご紹介しているスティーヴン・M・ウォルトが提唱した考えである。簡単に言えば、ある国を「脅威」と認識した国々は、その国に従うか(「バンドワゴニング、勝馬に乗る[bandwagoning]」)、同盟を組んで対抗するか(バランシング、均衡を図る[balancing])ということになる。中国は表立って、対米防衛同盟の動きを行うことはないだろうが、アメリカの暴力的な動きが激しくなれば、西側以外の国々が結束して、アメリカに対抗し、アメリカを包囲し、封じ込める(containment)ということも考えられる。

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勢力均衡理論が再び台頭している(The Balance-of-Power Theory Strikes Again

-ドナルド・トランプの脅しに対する世界の反応に誰も驚くことはない。

スティーヴン・M・ウォルト筆

2026年1月23日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2026/01/23/trump-threats-europe-greenland-balance-power/

ついに、かつて友好国だった国々が、ならず者国家アメリカ(a rogue America)に対抗し始めているのを目にする日が来たのだろうか?

このような変化は、世界情勢の大きな転換点となるだろう。もし実際にそうなったとしても、それはトランプ政権の戦略的近視眼(the strategic myopia of the Trump administration)と、ますます不安定になる大統領の略奪的衝動(the predatory impulses of an increasingly erratic president)に完全に起因するだろう。

過去100年ほど、アメリカの世界支配の台頭は、その地位が圧倒的ではあっても、多くの国々がワシントンを牽制するために結集するほどではなかったという点で、古いスタイルの勢力均衡理論(old-style balance-of-power theory)の部分的な例外であった。冷戦期には、アメリカはソ連主導の諸国連合という対抗勢力に直面したが、世界の主要諸国や中規模諸国のほとんどは、アメリカの特定の政策に時折反対する場合があっても、アメリカを貴重な同盟国と見なしていた。しかし、カナダのマーク・カーニー首相が火曜日、スイスのダヴォスで開催された世界経済フォーラムの参加者に語ったように、そのような世界はもはや過去のものとなった。今日、彼は次のように語った。「大国間の競争(great-power rivalry)が繰り広げられる世界において、中間に位置する国々には選択肢がある。互いに好意を得るために競争するか、協力して影響力のある第三の道を切り開くかだ。」

以下、私自身の研究に触れて恐縮ですが、約40年以上前に博士論文(そして最初の著書)を執筆して以来、同盟の諸起源(the origins of alliances)と国家間の均衡を保つ理由(the reasons why states balance)というテーマについて考え、書き続けてきた。国家が同盟を結ぶのは、主に脅威への対応(response to threats)であり、力(power)だけによるものではないと私は主張した。もちろん、力は脅威の一要素だ(つまり、他の条件が同じであれば、強い国家は弱い国家よりも危険だ)。しかし、地理や知覚された意図[他者の行動から読み取った目的や動機]geography and perceived intentions)も重要だ。近隣にある国家は遠くにある国家よりも厄介な傾向があり、修正主義的な野心を持つ国家(states with highly revisionist ambitions)は特に危険だ。特に、他国から領土を奪ったり、他の国の統治者を支配しようとしたりする場合には猶更だ。弱小国家や孤立国家は、脅威となる勢力に「勝ち馬に乗る、バンドワゴニング(bandwagoning)」することで融和(accommodate)しようとすることもあるが、より典型的な対応は、理想的には他国と連携して、脅威となる勢力と均衡を保つことだ(the more typical response is to balance against a threatening power, ideally in partnership with others)。

私が「脅威の均衡理論(balance-of-threat theory)」と名付けたこの定式は、とりわけ、アメリカの冷戦同盟システムがワルシャワ条約機構やソ連の様々な非同盟諸国よりもはるかに大規模で強力であった理由を説明するものであった。アメリカは総合的な力では勝っていたが、ソ連はヨーロッパとアジアの多くの中規模国に隣接し、領土獲得に最適化された大規模な軍隊を有し、その指導者たちは共産主義の普及に公然と尽力していた。対照的に、アメリカはヨーロッパとアジアから2つの巨大な海によって隔てられており、そこに領土的野心はなかった。脅威の均衡理論は、1991年にイラクをクウェートから追い出した多国籍軍のような、不均衡な構造(lopsided alignments)も説明できる。あの事件では、イラクをはるかに上回る能力を総合的に備えた、本来はあり得ないような国々のグループが力を合わせた。なぜなら、彼らは皆、イラクの行動が地域の安定に対する深刻な脅威であると見なしたからである。

脅威均衡理論は、アメリカが単独で権力の頂点に立つ一方で、公然とした均衡維持の努力が少数の脆弱なならず者国家(weak rogue states)に限られていた「一極時代(unipolar moment)」という一見異常な状況を理解する上でも役立つだろう。冷戦時代のアメリカの同盟諸国がNATOに残留したのは、(1)制度的惰性(institutional inertia)(「NATOが崩壊していないのなら、なぜ修復する必要があるのか​​?」)、(2)不確実性へのヘッジをしたいという願望(a desire to hedge against uncertainty)、(3)アメリカの保護に頼るのは極めて良い取引だという認識(the recognition that relying on American protection was a pretty good deal)、そして、(4)ワシントンの最悪の衝動が他国に向けられていたという事実(the fact that Washington’s worst impulses were directed elsewhere)、による。ヨーロッパの指導者たちは、2003年のイラク侵攻のような失策が自国に悪影響を及ぼすことを正しく恐れ、アメリカの判断力に何度も疑問を呈したが、「ソフト・バランシング(soft balancing)」にとどまり、再編や自立に向けた努力は行わなかった。この決定が容易にされたのは、アメリカが依然として同盟諸国に対して自制(with restraint)を示し、領土的野心を抱かず、概ね各国政府と建設的な協力関係を築こうと努めていたためである。対照的に、ロシア、中国、北朝鮮、イランは、アメリカからの潜在的な脅威をより強く懸念する理由があったため、アメリカの力のバランスを取るためにより積極的な努力を傾けた。

それは当時のことであり、今は違う。ドナルド・トランプは、大統領として2期目を開始して以来、脅威の均衡理論が警告するほぼ全てのことを実行し、予想通り否定的な結果をもたらしている。トランプは、カナダ、グリーンランド・デンマーク、パナマに対する拡張主義的な目標を公然と繰り返し宣言しており、その野望はそこで止まらないかもしれない。彼と彼の側近たちは、主権の規範(the norm of sovereignty)を含む国際法は無意味であり、強い者は手に入れることができるものは何でも手に入れることができると信じているようだ。彼は、他国に経済的・政治的譲歩を強要するために、関税の脅威を繰り返し振りかざしたり、課したりしてきた。彼は、多くの場合、非常に疑わしい理由をもって、6カ国以上に軍事力を行使し、デンマークなどの忠実な同盟国に対しても軍事力行使をほのめかしてきた。彼は、他の外国の指導者たちを露骨に軽蔑し、適正手続きを経ずに100人以上の外国人民間人を殺害することを容認してきた。これもまた、国際法違反である。さらに、反逆的な政府の凶悪集団(例:移民関税執行局[Immigration and Customs Enforcement])をアメリカ国内の都市に解き放つことで、他国社会がアメリカを安定し規制の行き届いた社会と見なすこと、あるいは彼の外交政策行動を異常な事例と捉えることを不可能にした。要するに、国内外を問わず、アメリカ政府は危険ないじめっ子であり、強迫的な略奪者のように振る舞っているのだ。

ある意味、この行動は奇妙だ。賢い捕食者たち(clever predators)は、真意を可能な限り隠そうとする。トランプも2016年、そして最初の任期の大部分においてそうだったように、それは「部屋の中の大人(adults in the room)」によって抑制されていたことも一因だ。しかし、2021年1月6日の犯罪を免れ、再選を果たし、確固たる信念を持たない取り巻き、忠誠者、追従者、そして日和見主義者たち(cronies, loyalists, sycophants, and opportunists with no fixed principles)で政権を固めたことで、彼は最悪の衝動を解き放った。そして今、世界は注目し始めている。

世界はどのように反応しているのだろうか? 確かに、アメリカの最も近い同盟諸国は、いくつかの明白な理由から、トランプの好戦的な姿勢に抵抗するのが遅れている。アメリカとの関係を縮小し、アメリカに対抗する動きを見せるにはコストがかかり、意味のある対抗勢力となるのに十分な数の国を集めるには、集団行動におけるよくあるディレンマ(the usual dilemmas of collective action)に直面する。したがって、イギリスのキア・スターマー首相、NATO事務総長のマーク・ルッテ、韓国の李在明大統領のような人々が、お世辞、象徴的な服従、贈り物、そして小さな譲歩を組み合わせることで、ワシントンとの緊密なパートナーシップから得られる利益のほとんどを維持できるかどうかを見極めようとしたのは理解できる。

試してみる価値はあったかもしれないが、その賭けは明らかに成功しなかった。トランプ自身の言動が、そのアプローチの愚かさを露呈した。過去の合意は全ていつでも再交渉可能であると信じ、いかなる譲歩もさらなる要求への誘いと解釈する捕食者を受け入れることはできない。

脅威均衡理論が予測するように、かつての友好諸国は距離を置き、信頼できず潜在的に敵対的なアメリカに対する依存を減らし、互いに、そして場合によってはアメリカの敵対諸国とも新たな取り決めを結んでいる。長年、どの国にとっても最良の隣国であったカナダの首相が北京を訪れ、「新たな戦略的パートナーシップの柱(the pillars of [a] new strategic partnership)」を概説するということは、地殻変動が起こっていることを物語っている。ヨーロッパの指導者たちも、数十年にわたるゼリー状の優柔不断の後、再び背骨が生えてきたように見える。なぜなら、彼らには選択肢がほとんど残されていないからだ。『フィナンシャル・タイムズ』紙のエド・ルースは明確に次のように述べている。「トランプに立ち向かうことが成功を保証するわけではない。一方、服従は必ず失敗する(Standing up to Trump offers no guarantee of success. Submission, on the other hand, is certain to fail)」。

かつてアメリカが誇った数々の国際的パートナーシップの更なる崩壊を防ぎ、新興国により適した新たな枠組みを構築するには、もう手遅れではないだろうか? 確かに手遅れだが、それはトランプ政権がこれまでの略奪的な戦略を捨て、アメリカが一方的な利益のためだけでなく、共通の利益のために他国と協力する意思を示すことが条件だ。その可能性はどれほど高いだろうか?

※スティーヴン・M・ウォルト:『フォーリン・ポリシー』誌コラムニスト。ハーヴァード大学ロバート・アンド・レニー・ベルファー記念国際関係論教授。Blueskyアカウント: @stephenwalt.bsky.socialXアカウント:@stephenwalt

(貼り付け終わり)

(終わり)

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める

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 古村治彦です。

 2026年はアメリカ建国250年の節目の年である。中間選挙がじっしされる年でもある。現在、ドナルド・トランプ大統領の人気は低迷し、連邦下院で共和党は過半数を失う可能性が高い。連邦上院は共和党が過半数を維持する可能性が高い。下院で民主党が過半数を握れば議長を出すことになり、トランプ肝いりの法案の可決も困難になる。第二次トランプ政権の後半2年の政権運営も厳しくなる。

 トランプ政権が支持率を上昇させるには、物価対策と外交政策の成功が重要になる。海外からの輸入製品の価格引き下げが物価対策の1つの方法である。そのためには、究極的には戦争を終わらせる必要がある。地政学リスクと言うが、地政学リスクを下げることが重要だ。ウクライナ戦争とイスラエル・ハマス紛争を収拾することが重要であるが、ウクライナ戦争は2026年2月24日に4年が経過することになるが、停戦の見通しは立っていない。イスラエルのガザ地区の状況も戦闘は起きていないが、イスラエルはガザ地区への圧力を強めている。また、イランに対して更なる攻撃を加える姿勢を捨てていない。中東地域も不安定なままである。

 昨年、トランプ政権は「国家安全保障戦略」を発表した。このことについてはこのブログでも複数回紹介した。重要なのは、ラテンアメリカと中東、東アジアである。トランプ政権は、ヴェネズエラ近海にアメリカ海軍の艦艇を派遣し、船舶に対して攻撃を行い、ニコラス・マドゥロ大統領に圧力をかけている。麻薬対策を大義名分にしているが、それならば、コロンビアやメキシコを標的にした方が合理的だ。アメリカ政府はマルコ・ルビオ国務長官を中心にして、ラテンアメリカにおけるアメリカの勢力確保を狙い、反米勢力の一掃、中国とロシアの影響力排除を行おうとするグループがいる。ヴェネズエラはそのための標的である。問題は、どこまで介入するかということだ。地上軍派遣の可能性も浮上しているが、この段階まで進むと、アメリカは泥沼にはまり込む可能性がある。マドゥロ政権を倒しても、マドゥロ支持派がゲリラ戦を展開する可能性がある。ラテンアメリカ各国の「ボリバル主義」「反ヤンキー帝国主義」感情が高揚することになる。それでも地上部隊まで派遣して、マドゥロ政権を打倒して親米政権を樹立するというところまで進めば、トランプは自身が戦争を止める大統領だという自画自賛を放棄することになる。国内の不満を海外での武力行使で目を逸らさせるという意図があるとすれば、アメリカ国内の不満は相当大きくなっているという見方もできるだろう。また、トランプ政権内の対外強硬派の勢いが強くなっているのだろう。※2025年1月2日にトランプ大統領はアメリカ軍に対してヴェネズエラへの攻撃を命令し、マドゥロ大統領夫妻を拘束し、国外に連れ出したと発表した。このような暴挙は予想できなかった。トランプ主義、アメリカ・ファーストの終焉である。BRICSを中心とする「西側以外の国々」は反アメリカの姿勢を強めるだろう。トランプも馬鹿なことをしたものだ。ドル離れと金(きん)への資金の移動が続くことになる。

 中東地域に関して言えば、イランへの攻撃があるかどうかである。イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相はイランへの攻撃を行いたいという願望を持っている。中東地域の不安定な状況はネタニヤフの個人的な利益に適う。状況が平常に戻れば、個人的な汚職の問題で裁判にかけられることになる。ハマスとの紛争が停戦したことで、平常に戻る可能性が大きくなるが、状況の不安定化を継続させるために、ガザ地区に対して人道的に許しがたい圧力をかけ、ハマスの暴発を狙うか、ハマスを支援するイランへの攻撃を行うかである。アメリカのトランプ大統領は昨年実行したイランへの空爆について、イランが核開発を、場所を変えて継続している可能性があると発言している。イランへの攻撃は実行される可能性はあるが、大規模な攻撃とはならないだろう。イランとイスラエルの全面戦争に発展することは避けたい。イラン側としてもアメリカの衰退が継続していけばイスラエルも衰退していくということになるので、中国やロシアと連携しながら、状況を悪化させないということになる。

 東アジアにおける最大の不安定要因は高市早苗首相と日本である。日本は成長のない30年を経て、残念なことだが衰退が決定づけられている。経済や社会において人々の不満が高まっていく。人々の不満を外に向けることは常套手段である。そうした状況下で、「日本初の女性首相」という大義名分で、極右派・隷米派の高市早苗議員が首相に就任した。そして、早速に台湾有事の発言で、日中関係と東アジアに緊張をもたらした。高市政権の後ろ盾はアメリカ国防総省のナンバー3であるエルブリッジ・コルビー国防次官だ。コルビー次官については、これまでの著作で取り上げているので、そちらを参照していただきたい。トランプ大統領は中国との対立を望んでいないが、トランプ政権に入った、対中強硬派が中国との対立を望んでいる。厄介なことに、アメリカが直接対峙するのではなく、日本を利用して、日本をぶつけようという姑息な手段を用いてである。2026年は高市政権を退陣させ、日本が中国との衝突を起こさないようにすることが重要である。
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 2026年も世界を不安定にしようという動きがある。私たちはそのことに気づき、そして、阻止するために学び続ける必要がある。

(貼り付けはじめ)

ドナルド・トランプ大統領の新たな国家安全保障戦略:5つの重要なポイント(Trump’s new national security strategy: 5 key takeaways

ラウラ・ケリー筆

2025年12月5日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/policy/international/5635890-trump-national-security-strategy/

ドナルド・トランプ大統領は木曜日の夜遅く、「国家安全保障戦略(national security strategy)」を発表した。西半球(Western Hemisphere)におけるより大きな軍事プレゼンス(a larger military presence)、世界貿易の均衡(balancing global trade,)、国境警備の強化(tightening up border security)、そしてヨーロッパとの文化戦争への勝利(winning the culture war with Europe)に重点が置かれている。

この包括的な戦略は通常、新政権発足1年以内に発表され、大統領の外交政策の重点を説明し、予算の配分に関する指針を示している。

33ページに及ぶこの文書は、トランプ大統領の「アメリカ・ファースト(America First)」のイデオロギーを基盤としているが、同時に、トランプ大統領がモンロー主義を踏襲し、西半球におけるアメリカの優位性(U.S. dominance)を主張していることを初めて明確に示している。

「長年の無視の後、アメリカはモンロー主義を再び主張し、実行することで、西半球におけるアメリカの優位性を回復し、アメリカ本土と地域全体の主要地域へのアクセスを守る」と「国家安全保障戦略」は述べている。

この文書は、アメリカの世界からの撤退を明確には示していないが、同盟国間の負担分担の増大(increasing burden sharing among allies)、アメリカの経済的利益と重要なサプライチェインへのアクセスの向上(elevating American economic interests and access to critical supply chains)、アメリカのエネルギー生産の「解放」(“unleashing” American energy production)を求めている。

トランプ大統領の「国家安全保障戦略(NSS)」の5つのポイントを以下に挙げる。

(1)カリブ海におけるトランプ大統領の戦争は激化する見込み(Trump’s war in the Caribbean likely to heat up

カリブ海で麻薬密輸の疑いのある船舶に対するトランプ大統領の2カ月以上にわたる軍事作戦は、「国家安全保障戦略」がアメリカに対し、世界的な軍事プレゼンスを南北アメリカ大陸に再調整し、「ここ数十年、あるいは数年間でアメリカの国家安全保障にとって相対的に重要性が低下した地域」から撤退するよう求めていることから、より大きな支持を得る可能性が高いだろう。

トランプ大統領は、カリブ海におけるアメリカ軍の軍事作戦を麻薬カルテルとの「武力紛争(armed conflict)」と位置づけ、麻薬密売の罪でアメリカで起訴されているヴェネズエラの実力者ニコラス・マドゥロ大統領を主要な脅威として挙げ、アメリカは間もなく「地上作戦(land operations)」を開始する可能性があると述べた。

ヴェネズエラは具体的には名指しされていないものの、「国家安全保障戦略」は、アメリカ国境の安全確保と「カルテルの打倒(defeat cartels)」、そして「戦略的に重要な地域へのアクセスの確立または拡大(establishing or expanding access in strategically important locations)」のために「標的を絞った展開(targeted deployments)」を求めている。

この戦略はまた、トランプ大統領が関税を用いて地域を支配する手法にも焦点を当てている。しかし、トランプ大統領がそのような権力を有しているかどうかは、最高裁判所で係争中の訴訟の焦点となっている。

「アメリカは、関税と相互貿易協定を強力なツールとして活用し、アメリカの経済と産業を強化するため、商業外交(commercial diplomacy)を優先する」と文書は述べている。

この文書はラテンアメリカにおける中国の進出を明確に指摘していないものの、NSSは、米国は金融とテクノロジーにおける影響力を駆使して地域諸国を敵対勢力から引き離し、「スパイ活動、サイバーセキュリティ、債務の罠、その他の方法」でこれらの諸国への依存の脅威を強調すべきだと述べている。

And while the document does not explicitly call out China’s inroads in Latin America, the NSS says the U.S. should use its leverage in finance and technology to pull regional countries away from adversaries and underscore threats of reliance on those countries “in espionage, cybersecurity, debt-traps, and other ways.”

(2)トランプ大統領がロシアへの対応に失敗したとしてヨーロッパを批判(Trump criticizes Europe as failing to deal with Russia

「国家安全保障戦略」は、ロシアとの関係悪化の一因となったヨーロッパの「自信の欠如(lack of self-confidence)」を批判しているが、ロシアのウラジーミル・プーティン大統領による2014年と2022年のウクライナ侵攻の決定や、破壊工作、選挙介入、そして大陸における不安定化煽動といった活動については言及していない。

「国家安全保障戦略」は、「ユーラシア大陸全体にわたる戦略的安定の条件を再構築し、ロシアとヨーロッパ諸国間の紛争リスクを軽減する」ためにヨーロッパとロシアの間の仲介を行うことができる唯一の勢力がアメリカであると述べている。

この文書はさらに、アメリカは「ヨーロッパの偉大さを促進する」必要があると明言しており、これはヴァンス副大統領が2月にドイツで行った演説を彷彿とさせる。

ヨーロッパ外交評議会上級政策研究員パウエル・ゼルカは分析の中で、「ワシントンはもはや、ヨーロッパの内政に干渉しないふりをしていない」と述べている。

「現在では、こうした干渉を『ヨーロッパがヨーロッパであり続けることを望む』という善意の行為であり、アメリカの戦略的必要性に基づくものと位置付けている。最優先事項は何か? 『ヨーロッパ諸国において、ヨーロッパの現在の方向性に対する抵抗を育むこと』である」。

(3)台湾はアメリカの対中戦略を応援(Taiwan cheers US strategy on China

「国家安全保障戦略(NSS)」が台湾の主権と安全保障を外部からの影響から守ることを明確に認めたことは、台北の外務省から歓迎され、ワシントンの対中強硬派は、トランプ政権が台湾を北京に明け渡すつもりはないと安心することになるだろう。

「アメリカの『国家安全保障戦略(NSS)』は、台湾をめぐる紛争の抑止が地域と世界にとって不可欠であると明言している」と台湾外務省は声明で述べた。

「台湾の安全はインド太平洋の安定を支えるものであり、私たちは自衛を強化し、地域の平和と繁栄に貢献し続ける」。

「国家安全保障戦略」は、台湾をめぐる紛争を抑止するためにアメリカに対し「軍事力の優位性(military overmatch)」を維持するよう求め、「有利な通常戦力のバランス(a favorable conventional military balance)」が地域におけるアメリカの利益の鍵であるとしながらも、地域におけるアメリカの同盟国間の「負担分担(burden-sharing)」を強調している。

この文書は、日本、韓国、台湾、オーストラリアに対し、国防費の増額を求める圧力を継続するよう求めている。

ハドソン研究所アジア太平洋安全保障担当部長パトリック・クローニンは、「国家安全保障戦略」への初期の反応として、「アジアについて考えると、経済と抑止力への重点は概ね妥当だ」と述べている。

クローニンは続けて「それでもなお、中国の戦略が相互に公正な貿易に関するものだという考えは、この文書が過去の誤った前提について正当に指摘している様々な批判に真っ向から反するものである」と述べた。

(4)アメリカの中東への重点は「後退」(American focus on Middle East to ‘recede’

トランプ大統領は、アメリカのエネルギー輸出増加に注力し、イスラエルとの12日間の戦争とアメリカの核施設への攻撃を受けてイランとその代理勢力が大幅に弱体化したと述べるなど、中東におけるアメリカの責任を軽減しようと努めている。

「国家安全保障戦略」は、「しかし、長期的な計画と日常的な実行の両面において、中東がアメリカの外交政策を支配していた時代は、ありがたいことに終わった。中東がもはや重要ではなくなったからではなく、かつてのように常に人々を苛立たせ、差し迫った大惨事の潜在的な原因ではなくなったからだ」と述べている。

トランプ大統領は「紛争は依然として中東で最も厄介な問題である」と認めつつも、この地域の明るい展望を描いている。

リバータリアン系シンクタンクであるケイトー研究所研究員ジョン・ホフマンは、アメリカが中東における役割を縮小する戦略を歓迎する一方で、トランプ政権にそのようなロードマップを実行する政治的意思があるかどうか疑問視している。

ホフマンは「過去4人の大統領うち2人はドナルド・トランプ――は、中東へのアメリカの関与縮小を公約に掲げながら、変化ではなく継続性に根ざした政策を追求してきた」と書いている。

「ワシントンは依然としてこの状況に巻き込まれ、この地域の情勢を細かく管理しようとしている。このようなアプローチでは、この『国家安全保障戦略(NSS)』の明示された目的を達成できないだろう。トランプが中東情勢を根本的に転換する政治的意思を持っているかどうかはまだ分からない」。

(5)民主党からの党派的な反発を招く(Draws partisan pushback from Democrats

民主党は、トランプ大統領の「国家安全保障戦略(NSS)」を、世界におけるアメリカの後退を示す危険な計画であり、アメリカと同盟諸国を弱体化させるものだと即座に非難した。

連邦下院情報特別委員会と連邦下院軍事委員会委員であるジェイソン・クロウ下院議員(コロラド州選出、民主党)は声明で「この計画が進められると、世界はより危険な場所となり、アメリカ国民の安全は脅かされるだろう」と、述べた。

「多くの懸念すべき点の中でも、ソーシャルエンジニアリング(social engineering)、文化戦争(culture warfare)、そして同盟国である外国政府や政治体制への干渉(interference with allied foreign governments and political systems)を露骨に呼びかけている点が挙げられる。これは国内外における自由と個人の権利に対する攻撃だ」。

同様に、連邦上院軍事委員会委員であるリチャード・ブルーメンソール連邦上院議員(コネチカット州選出、民主党)は、「国家安全保障戦略(NSS)」は「同盟諸国を見捨てて、ウクライナを犠牲にし、主要な戦略目標と基本的価値観を放棄するという後退を予兆するものだ。アメリカはより安全になるどころか、より弱体化するだろう。アメリカ・ファーストはアメリカだけの問題であり、その代償を払うことになるだろう」と述べた。

評論家の一部はより慎重な見方を示した。

民主政治体制防衛財団軍事政治力センター上級ディレクターであるブラッドリー・ボウマンは、「国家安全保障戦略」は「以前の国家安全保障戦略との連続性もいくつかあるが、大きな変更点もいくつかある」とコメントした。

「称賛に値する点もあれば、注目すべき批判点もあり、そして深刻な『何だって?』という点もある」。

(貼り付け終わり)

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