古村治彦(ふるむらはるひこ)の政治情報紹介・分析ブログ

SNSI研究員・愛知大学国際問題研究所客員研究員の古村治彦(ふるむらはるひこ)のブログです。翻訳と評論の分野で活動しています。日常、考えたことを文章にして発表していきたいと思います。古村治彦の経歴などについては、お手数ですが、twitter accountかamazonの著者ページをご覧ください 連絡先は、harryfurumura@gmail.com です。twitter accountは、@Harryfurumura です。よろしくお願いします。

タグ:西半球

 古村治彦です。

 アメリカは西半球に立て籠もろうとしている。世界に対する一極支配は既に不可能な状況になっている。そうした中で第二次ドナルド・トランプ政権は202512月に発表した、「国家安全保障戦略(National Security StrategyNSS)」で、「アメリカ・ファースト外交」を掲げ、「西半球」をアメリカの勢力圏(sphere of influence)とすると発表した。

 トランプ政権は、ヴェネズエラ攻撃とニコラス・マドゥロ大統領の拘束連行を実施し、グリーンランドの領有を主張している。有名なモンロー主義と棍棒外交を混ぜ合わせた、アメリカ・ファースト外交政策、ドンロー主義は、あらゆる手段を用いて、西半球から中国やロシアの影響を排除し、アメリカの支配権を確立するということになる。

donaldtrumpwesternhemispheretariffsmap001

 アメリカが西半球を勢力圏とすると、中国とロシアがそれ以外の地域を勢力圏にするという構造になる。ロシアは自国の周辺を「緩衝地帯」「衛星国」として、自国の防備を固めるという行動を取り、中国は影響を少しずつ拡大していく。一帯一路計画はその一例であるし、BRICSという枠組みもそれにあたる。

 アメリカの西半球のアメリカ勢力圏化は、実質的なアメリカ「帝国化」である。アメリカの利益のために、勢力圏内の全ての国家がアメリカの利益のために「奉仕する」という構造を目指すことになる。簡単に言えば、全ての国家を属国とするということだ。帝国と属国の関係を西半球に築き、搾取するということだ。遅れてきた植民地主義である。ドンロー主義のこのような態度は西半球の全ての国々の反米感情を増大させることになる。また、既に、ブラジルはBRICSの一角として、西側以外の国々の中でリーダー格として存在感を増している。西半球は既にアメリカの勢力圏、植民地帝国として再編することはできない。アメリカが、本当の意味で「共存共栄(co-prosperity)」を学ばねば、ドンロー主義による、西半球の植民地化は、太平洋戦争における日本の「大東亜共栄圏(Great East Asian Co-Prosperity Sphere)」と同じ結果に終わるだろう。
greateasternasiacoprosperityspheremap001

(貼り付けはじめ)

「ドンロー主義」は意味をなさない(The ‘Donroe Doctrine’ Makes No Sense

-寛大に解釈したとしても矛盾が山積している。

スティーヴン・M・ウォルト筆

2026年1月8日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2026/01/08/donroe-doctrine-trump-venezuela-empire/

ドナルド・トランプ政権のヴェネズエラ政策(ニコラス・マドゥロ大統領の最近の拉致事件を含む)の戦略的正当性(the strategic justification)について、もしあなたが困惑しているなら、それは仕方がないと思う。なぜなら、これまでに提示された論拠のほとんどは信頼性に欠けているからだ。

第一に、これはアメリカを「麻薬テロ(narcoterrorism)」から守ることではない。ヴェネズエラはアメリカに流入する違法薬物(ましてやフェンタニル[fentanyl])の主要な供給源ではなかっただけでなく、ドナルド・トランプ米大統領が、麻薬密売で有罪判決を受けたホンジュラスの元大統領フアン・オルランド・エルナンデスに完全恩赦(a full pardon)を与えるという最近の決定は、彼がこの問題をどれほど真剣に考えているかを示している。さらに、米司法省は、トランプ政権が昨年繰り返し騒ぎ立てた危険な麻薬カルテル「カルテル・デ・ロス・ソレス」が実際には存在しなかったことを認めた。言い換えれば、それは、繰り返し警告されながら発見されることのなかったイラクの大量破壊兵器(weapons of mass destruction)と同じくらい真実である、完全に虚構の政権プロパガンダだったのだ。

マドゥロ大統領の拘束は、アメリカの安全保障強化を目的としたものではなかった。ヴェネズエラは非常に脆弱な国(a very weak country)であり、マドゥロ大統領が容易に拘束されたことからもそれが明らかだ。また、アメリカの強力なライヴェル国にとって、ヴェネズエラは緊密な戦略的同盟国ではない。中国はヴェネズエラに軍事基地を建設しておらず、イランはアメリカを攻撃するためのミサイルをヴェネズエラに輸送していなかった。ヴェネズエラには、アメリカの貿易ルートを阻害できるほどの強力な海軍力も存在しなかった。カラカスからアメリカが直面する深刻な脅威を夜も眠れずに心配する人は誰もいなかったし、マドゥロ大統領がブルックリンに収監された今、誰もが安眠できている訳ではない。

また、トランプ大統領が野党指導者マリア・コリーナ・マチャドを権力の座に就かせることを既に断念し、代わりに依然として紛れもなく独裁的な政権を率いるマドゥロ大統領の副大統領と交渉する意向を示していることを考えると、これは民主政治体制の促進を目的としたものでもない。

 

 

 

 

 

危険な薬物の撲滅でも、深刻な安全保障上の脅威に立ち向かう必要性でも、民主政体を回復したいという願望でもないのなら、それは石油に違いない、そうではないか? トランプは、これが本当の理由であり、アメリカ企業がすぐにそこに参入して石油を奪い、アメリカを偉大な国にするつもりだと繰り返し述べている。これもまた間違いだ。トランプは自分が信じたいものなら何でも信じることができるが(そして頻繁にそうしている)、近いうちにアメリカを待ち受ける大規模な石油ブームなど起きない。火曜日、トランプはヴェネズエラがアメリカに最大5000万バレルの石油を引き渡すことに同意したと自慢したが、これはせいぜいアメリカの石油生産量の4日分にも満たない量だと気づくまでならば、素晴らしい話に聞こえるだろう。トランプは、売却益を管理し、ヴェネズエラの経済支援に使うと述べたが、もしこれを信じているのなら、トランプの略奪的本能(predatory instincts)に注意を払っていないことになる。そして、たとえその石油からの収入が最終的に得られるようになったとしても、それはヴェネズエラが経済再建に必要とするものの表面をかすめる程度にしか過ぎない。

確かに、ヴェネズエラは世界最大の確認埋蔵量(the world’s largest proven reserves)を誇るが、その重質原油は採掘が難しく、精製コストも高額になる。率直に言って、良識ある生産者なら開発を試みようとしないであろうし、まさに最後の手段と言えるだろう。ヴェネズエラの老朽化したインフラの危機的状況と、昨今の原油価格の低迷を考えると、なおさらだ。そして、もし奇跡的にヴェネズエラの原油が大量に世界市場に流入すれば、価格はさらに下落し、アメリカのシェールオイル掘削業者の多くは廃業に追い込まれるだろう。

そして、トランプ大統領や大手石油会社がどう考えようと、世界は徐々に炭化水素資源から離脱し、他のエネルギー源へと目を向けつつあり、ヴェネズエラの埋蔵量の価値はさらに低下していることを忘れてはならない。実際、気候変動の現実を考えると、最も賢明なのは、できる限り多くの原油を地中に残しておくことだ。つまり、中国が将来のグリーン産業を支配し、その結果影響力を獲得することにレーザーのように集中している一方で、トランプと彼を取り囲む戦略の天才たちは、地球を脅かす前世紀のエネルギー政策にさらに力を入れているということになる。

従って、この作戦の戦略的根拠についてあなたが混乱するのも無理はない。私がここで見出す唯一の「戦略的」目的(“strategic” objective)は、西半球(the Western Hemisphere)におけるアメリカの覇権(U.S. hegemony)を再確立するという大まかな考えだ。トランプはあらゆるものに自分の名前を冠することで自らの領土を示すことを好むため、この考えは現在「ドンロー・ドクトリン(Donroe Doctrine)」として宣伝されており、最近の「国家安全保障戦略(National Security StrategyNSS)」にも明確に示唆されている。これは外交政策のリアリストたちが支持できる合理的な考えのように聞こえるかもしれないが、綿密な検証にも耐えられない。

モンロー・ドクトリン(the Monroe Doctrine)の本来の目的は、アメリカが西半球におけるライヴァル大国の軍事介入を心配しなくて済むようにすることだった。ジェイムズ・モンロー大統領の構想が実現するまでにはほぼ1世紀を要したが、最終的にアメリカは他の全ての大国を西半球から追い出し、歴史家C・ヴァン・ウッドワードが「自由な(もしくは無料の)安全保障(free security)」と呼んだものの恩恵を享受することに成功した。

しかし、トランプと側近たちが言っているのはそういうことではない。なぜなら、現在、西半球で重要な軍事的役割を果たしている大国はおらず、また、そのような役割を担おうとしている大国も存在しないからだ。「国家安全保障戦略」が明らかにしたように、トランプ政権は、発生する可能性のあるあらゆる問題において、可能な限り多くの近隣諸国に、自らの指示に従わせようとしている。彼らは現在、マドゥロ大統領の後継者たちにこう言い放っている。「私たちの要求に応じなければ、封鎖(blockading)を続け、もしかしたらもっとひどいことをするかもしれない」。そして、彼らは地域の他の国々がこのメッセージを理解し、従順に行動してくれることを期待しているのだ。

特に、トランプ政権は現在、近隣諸国の経済政策を統制し、これらの国々や中国などの国々にとって経済的に有益な政策を拒否する権利を主張している。「国家安全保障戦略」では、「私たちは、敵対的な外国の侵略や主要資産の所有から自由な西半球を望んでいる」と述べ、さらに、部外者が「戦略的に重要な資産を所有または支配」してはならず、アメリカは「西半球以外の競争相手がこの地域で影響力を高めることをより困難にしなければならない」と付け加えている。トランプとその仲間たちは、一部のラテンアメリカ諸国が「低コストと規制上のハードルの少なさ(low costs and fewer regulatory hurdles)」に惹かれて他国と「ビジネスを行うことに魅力を感じている(attracted to doing business)」ことを理解しているため、「そのような援助を拒否するよう各国に促す(induce countries to reject such assistance)」と主張している。しかし、トランプ政権は一般的に外国援助に反対し、あらゆる二国間関係において利益の大半を独占しようとする略奪的な政権であるため、望むものを手に入れるには寛大さ(generosity)ではなく脅迫(threats)に頼らざるを得ない。

しかし問題は、アメリカがこのように近隣諸国の経済に介入し続けるなら、その国の経済状況に責任を負うことになるということだ。ラテンアメリカ諸国に対し、アメリカ製品よりも安価な中国製品(場合によっては電気自動車のように大幅に優れた製品)を購入できないと告げれば、消費者は不満を抱くだろう。もし同じラテンアメリカ諸国に対し、インフラ整備やその他の機会創出につながる中国やその他の外国からの投資を拒否するよう命じれば、アメリカはそれを提供しなくてはいけなくなる。さもなければ、ラテンアメリカ諸国の貧困を助長していると非難されるだろう。これに加えて、アメリカの問題をこの地域からの移民や難民のせいにする傾向、そして可能な限り多くの移民や難民を強制送還するという強硬な姿勢が加われば、安定した覇権どころか、反米感情の高まりと地域の不安定化を招くことになる。

より成功したアメリカの政策との対比は明白だ。例えば第二次世界大戦後、アメリカはヨーロッパとアジア(かつての敵国であったドイツと日本を含む)で非常に成功したパートナーシップを築いた。これは、これらの国々がソ連という共通の脅威を認識していたことに加え、アメリカが新たなパートナー諸国が第二次世界大戦から可能な限り速やかに復興できるよう、慈悲深く行動したことも一因となっている。しかし、トランプは「慈悲深く()benevolent」という言葉の意味を理解していない。彼の人生観は「私のものは私のもの、他人のものは交渉の余地がある(what’s mine is mine and what’s yours is negotiable)」というものだ。

銃を突きつけて西半球を支配しようとする試み(trying to run the Western Hemisphere at the point of a gun)は、過去と同様に、今後もうまくいくことはないだろう。トランプの顧問であるスティーヴン・ミラーは、「歴史の鉄則(iron laws of history)」の1つは、世界は力によって支配されていることだ(the world is governed by power)と考えている。ミラーが言及しなかった「鉄則」は、力こそが全てだと考える指導者は必然的に多くの愚かな行為を犯すということ(leaders who think power is all that matters inevitably do a lot of stupid things)だ。

※スティーヴン・M・ウォルト:『フォーリン・ポリシー』誌コラムニスト。ハーヴァード大学ロバート・アンド・レニー・ベルファー記念国際関係論教授。Blueskyアカウント:@stephenwalt.bsky.socialXアカウント:@stephenwalt

(貼り付け終わり)

(終わり)

sillionvalleykarasekaishihaiwoneraugunsanfukugoutainoshoutai001
シリコンヴァレーから世界支配を狙う新・軍産複合体の正体 
trumpnodengekisakusencover001
『トランプの電撃作戦』
sekaihakenkokukoutaigekinoshinsouseishiki001
世界覇権国 交代劇の真相 インテリジェンス、宗教、政治学で読む

bidenwoayatsurumonotachigaamericateikokuwohoukaisaseru001

バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

akumanocybersensouwobidenseikengahajimeru001

 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める

このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック

古村治彦です。

 国際関係論には様々な理論(theory)が存在する。「理論」と言うと、確立された内容であるように思われるが、「理論」は多くの実験(experiment)や観察(observation)を経て、その内容が確かめられているが、これからも様々な試験を受けることで、内容が修正される可能性があるという点で、「仮説(hypothesis)」の一種である。「仮説」はこれから実験や観察の試験を受ける考えや物の見方である。理論は「法則(law)」とは違う。社会科学においては、「法則」はほぼ存在しないと言ってよい。

 国際関係論の理論の1つに「民主平和論(democratic peace theory)」がある。これは簡単に言えば、「民主政治体制国家同士は戦争をしない」というものだ。第二次世界大戦で考えてみると、連合諸国(the Allied Forces)と枢軸諸国(the Axis)では、この理論が適用される。第二次世界大戦後の世界では、小競り合いなどを除くと、この理論が適用されるようだ。

 国際関係論は社会科学の一分野で、統計学も用いられるが、同時に歴史学も用いられる。歴史上の出来事から理論を作り出すということが行われる。こうした中で、「民主平和論」は、その有効性が高い理論として知られている。「民主国家同士は戦争をしない」ということから敷衍すると、「世界の全ての国が民主政治体制になれば、世界から戦争がなくなる」というテーゼが導き出される。これが、アメリカによる外国への介入(intervention)、「民主化(democratization)」を正当化することになった。ネオコンにとっての「金科玉条(a golden rule)」となった。第二次世界大戦の結果として、枢軸国側だったドイツと日本、そしてイタリアは「民主化」された。これが成功例として喧伝された。2003年のイラク戦争とアメリカによる民主化について、日本が成功例として引き合いに出されることもあった。

 世界を眺めてみれば、民主的ではない国家は多く存在する。ネオコンにとっては全てが民主化すべき対象となるはずだが、実際には、サウジアラビアなどの中東地域の王制国家については、民主化を求めていない。アメリカにとって利益になるのであれば、民主化を求めない。これは二重基準、ダブルスタンダード(double standard)である。

 アメリカのドナルド・トランプ政権のドンロー主義によって、民主国家同士の緊張も高まっている。NATOの存在意義にも疑義が出るほどになっている。民主平和論は時代の大転換の中で生き残ることができるかどうか、現在はそのための実験が行われているとも言える。
(貼り付けはじめ)
民主的平和理論よ、安らかに(Democratic Peace Theory, R.I.P.

-主流の学術理論であったこの理論の台頭と潜在的な衰退。

スティーヴン・M・ウォルト筆

2025年10月28日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2025/10/28/democratic-peace-theory-definition-democracy-international-relations-us/

democraticpeacetheoryforeignpolicypicture001

江陵で開催された2018年平昌冬季オリンピックの選手村にあるファストフード店の外で2人の女性が自撮りしている(2018年2月8日)

社会科学理論の中には、驚くほど長く続くものもあれば、寿命が短いものもある。かつて有望視されていたアイデアが、何の成果も上げられず(タルコット・パーソンズの社会学構造機能主義的アプローチ[structural-functionalist approach to sociology]はその一例だ)、最終的に多くの学者がそれを放棄し、別の分野へと進んでしまうこともある。あるいは、斬新な理論的議論が最初は説得力があるように思えても、その後の研究で論理的または実証的な限界が明らかになることもある。また、大胆な主張に対して現実世界が厳しい判断を下す場合もある(「歴史の終わり(end of history)」テーゼを覚えておられるだろうか?)。しかし、信用を失った理論の中には、強力な利害関係者が存続させることにメリットを見出すため、ゾンビのように生き残るものもある。

なぜこの話を持ち出したのか? それは、最近、民主的平和論(democratic peace theoryDPT)に一体何が起きたのか、疑問に思ったからだ。国際関係論を学ぶ人なら誰もが知っているように、民主平和論は1980年代半ばから21世紀に入ってからも、国際関係論研究者たちにとって大きな知的関心事だった。マイケル・ドイルによるこのテーマに関する独創的な著作(イマヌエル・カントが提唱した議論を洗練させた)に始まり、「民主政治体制国家は互いに争わない(democracies don’t fight each other)」という考えは、膨大な数の学術論文や書籍、そして数々の重要な批判を生み出した。

現代の民主平和論は、確立され機能している民主政治体制国家は互いに戦争をしないという経験的観察(the empirical observation)に基づいており、ある著名な学者はこの発見を「国際関係の研究において経験法則に最も近いもの(the closest thing we have to an empirical law in the study of international relations)」と呼んだ。支持者たちはこの興味深い観察に対して、経済的相互依存(economic interdependence)などの他の要因と組み合わせるなど、いくつかの競合する説明を展開した。多くの社会科学理論とは異なり、民主平和論はすぐに象牙の塔(the ivory tower)を出て、世界中に民主政治体制を広めたり、NATO などの機関を拡大したりするアメリカの取り組みを正当化しようと努める政治家たちに利用された。この理論の魅惑的な魅力は明らかだった。なぜなら、完全に自由主義的な諸国で構成される世界は戦争から自由であると示唆していたからだ。ジョージ W. ブッシュ大統領が就任当初に述べたように、「私たちの目標は、このアメリカの影響力の時代を、何世代にもわたる民主的な平和に変えることである」ということになる。

当然のことながら、民主平和論の大胆な主張には多くの批判が寄せられた。一部の学者は、実証的発見の根底にある因果メカニズムに一貫性がなく説得力に欠けると指摘した。一方、1945年以前には真の民主政体国家はほとんど存在しなかったことを考えると、民主政体国家間の戦争の頻度の低さは統計的な人工物(artifact、アーティファクト)である可能性があると示唆する学者もいた。また、第二次世界大戦後の民主政体国家のほとんどがアメリカの冷戦同盟ネットワークの一部であったことを考えると、民主政体国家間の戦争がないのは権力政治によるものだ、あるいは特定のコーディング決定や「民主政治体制(democracy)」の定義の変化の結果だと示唆する学者もいた。さらに、確立された民主政体国家は過去に互いに戦っていなかったかもしれないが、新たに民主化した国家は特に戦争を起こしやすい傾向にあると指摘する学者もいた。これは、民主政治体制の普及は長期的には報われるかもしれないが、そこに到達するには困難なプロセスになるだろうということを示唆している。

この知的論争は学術誌やモノグラフの紙面上で激しさを増し、最終的には行き詰まりに陥った。競合する大規模N研究(large-N studies)の結果が、採用されている仮定やモデリング手法にますます依存するようになったためだ。私見だが、民主政治体制による平和に関する極端な主張は誇張されているものの、民主政体国家同士が戦争する可能性はやや低いと言えるだろう。なぜなら、民主政体国家は戦争に対する国民の抵抗を克服するのが不可能ではないものの、やや困難だからだ。

さらに重要なのは、民主平和論は完全に民主政治体制国家のみで構成される世界がどのようなものになるかについて、あまり多くを語っていないように思われたことだ。なぜなら、そのような世界はこれまで存在したことがなく、民主政体国家間の戦争がないことは、潜在的に危険な非民主政体国家のライヴァルたちが常に存在することによって裏付けられてきたからだ。しかし、全ての独裁国家が民主政体国家に置き換えられれば、カント主義的な共和国でさえも互いを疑いの目で見て、不公平な区別をつけ始めるかもしれない。民主政治体制の原則を共有しても全ての利益相反がなくなる訳ではなく、議会制共和国や大統領制共和国は互いを異なる、そしておそらく危険な存在と見なし始めるのではないだろうか? もしそうなら、民主政治体制を広く普及させることは、民主平和論の最も熱心な支持者が信じていたような万能薬(the panacea)ではないかもしれない。そして、他の学者と同様に、私は、民主平和論が強力な民主政体国家に平和の名の下に非自由主義国家に対する暴力的な十字軍(crusades)を開始するよう奨励し、そのような取り組みが国内の自由主義の規範と自由を徐々に侵食するのではないかと懸念していたが、まさにそれが起こっている。

しかし、民主平和論は今日の世界においてどのような位置づけにあるだろうか? 理論そのものには含まれていなかったものの、その提唱者やそれを援用した政策立案者の多くは、自由主義的民主政治体制こそが未来の潮流であり、ソヴィエト帝国に対する一見勝利した後も、それがさらに拡大していくと想定していた。しかし、この予測は大きく外れた。世界中で民主政治体制は20年近く後退しており、長らくその主要な擁護者であったアメリカ合衆国においても、急速に衰退している。世界で最も人口の多い民主政体国家であるインドは、ますます非自由主義的な方向へと進んでいる。ブラジルは前回の選挙後、独裁政権の掌握を辛うじて免れた。そして、ヨーロッパの既存の民主政治体制国家のいくつかは、それぞれ独自の正統性の危機に直面している。

したがって、世界の主要国の全て、そして多くの中小国も、まもなく、言葉の意味する意味で自由主義でも民主政治体制でもない状態になる可能性は十分にある。民主平和論はこの点について何を示唆しているのだろうか?

最も明白な点は、たとえ民主平和論が真実だとしても、そのような世界ではほとんど無関係であるということだ。その因果メカニズムは非自由主義国家間、あるいは非自由主義国家と自由主義国家の間では機能しないため、主要な民主政体国家が存在しない世界は理論の範疇外だ。民主平和論の信奉者たちは、そのような世界ではさらに紛争が激化すると予想するかもしれない。なぜなら、民主政治体制の平和のオアシスは少なくなり、結果として非民主政治体制国家間の紛争の機会が増えるからだ。しかし、民主平和論は非民主政体国家間の戦争の頻度についてはほとんど語っておらず、地球上に残された民主政治体制国家が少なくなったという理由だけで、非自由主義国家が過去よりも頻繁に戦争を始めると考える明白な理由は存在しない。

さらに言えば、そのような世界にはわずかな希望の光(silver lining)があるかもしれない。民主政治体制と独裁政治体制の間のイデオロギー的競争、それぞれが相手を自らの正統性に対する脅威と見なすことになるが、それがなくなることで、両者間の安全保障上のディレンマは緩和され、過去に強力な自由主義国家を戦争へと駆り立てた、そして独裁主義国家が自国の体制維持のために予防戦争(preemptive wars)を仕掛ける原因となった、十字軍的な衝動が弱まるだろう。大国間の競争は終わらないが、イデオロギーに駆り立てられることは少なくなり、妥協を許さない性格を帯びることも少なくなるだろう。皮肉なことに、民主平和論が政策立案者たちにとって有用な指針とみなされなくなった世界は、より平和的になるかもしれない。

誤解しないで欲しい。私はそのような世界が望ましいと言っているのではない。むしろ、非自由主義的な大国のみで構成される世界には多くの欠点が存在する。人権は深刻な危機に瀕し、腐敗が蔓延し、野放しの独裁者たちは毛沢東の大躍進政策(Mao Zedong’s Great Leap Forward)のような破滅的な政策、あるいはヨシフ・スターリンの大粛清(Joseph Stalin’s Great Terror)やナチスのホロコースト(the Nazi Holocaust)のような全体主義的な悪夢を自由に実行することになるだろう。私は民主政治体制が「他のあらゆる政治形態を除けば最悪の政治形態(the worst form of government, except for all the others)」であり、独裁政権下で暮らすことを望んでいないため、世界、特にここアメリカ合衆国における独裁主義の動向について深刻な懸念を持っている。

理想的には、アメリカ合衆国が現在の衰退傾向を逆転させ、健全で力強い自由主義共和国であり続けることを願っている。そこでは、あらゆる政治家が民主政治体制の規範と法の支配(the rule of law)を尊重し、これらの原則に違反した際には責任を問われるだろう。また、力強いアメリカが、他の社会がそれぞれのやり方とペースで模倣したくなるような、素晴らしい、公正で、効果的な統治の模範を示すことで、これらの価値観を推進していくことも望んでいる。もし民主平和論を廃止することで、より控えめで現実的なアプローチが促進され、銃を突きつけて民主政体を押し付けようとする試(trying to impose democracy at the point of a gun)みを正当化しにくくなるのであれば、私はそれで良いと考えている。

※スティーヴン・M・ウォルト:『フォーリン・ポリシー』誌コラムニスト。ハーヴァード大学ロバート・アンド・レニー・ベルファー記念国際関係論教授。Blueskyアカウント:@stephenwalt.bsky.socialXアカウント:@stephenwalt

(貼り付け終わり)

(終わり)

sillionvalleykarasekaishihaiwoneraugunsanfukugoutainoshoutai001
シリコンヴァレーから世界支配を狙う新・軍産複合体の正体 
trumpnodengekisakusencover001
『トランプの電撃作戦』
sekaihakenkokukoutaigekinoshinsouseishiki001
世界覇権国 交代劇の真相 インテリジェンス、宗教、政治学で読む

bidenwoayatsurumonotachigaamericateikokuwohoukaisaseru001

バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

akumanocybersensouwobidenseikengahajimeru001

 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める

このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック

 古村治彦です。

 「勢力圏(sphere of influence)」という考え方がある。これはある国が自分の国がある地域や周辺において、優先的に影響力を行使して支配するという考え方だ。アメリカのモンロー主義は「孤立」を強調されるが、実際には、「アメリカは南アメリカを影響圏として、スペインやイギリスの影響力を排除して支配する。ヨーロッパには関心を持たない」ということであり、南米を支配するための原理原則であった。南米を支配するために棍棒外交も採用して、武力的に介入することもできるという考えでもある。ロシアはソ連時代も含めて、自国の周囲に緩衝地帯(buffer zone)、衛星諸国(satellite states)を作り、本国ロシアを守るという考えを持っている。
spheresofinfluencemap001

 現在の世界は、アメリカの一極支配(unipolar dominance)が崩れつつある。アメリカを中心とする西側諸国(the West、ジ・ウエスト)と中国とBRICSを中核とする西側以外の国々(the Rest、ザ・レスト)に分かれている。アメリカは世界から撤退して、西半球(Western Hemisphere)を勢力圏として押さえるということになる。アメリカと中国の間にある太平洋をどうするかであるが、アメリカはハワイやグアムまで退くということになる。日本や台湾を嫌がらせのようにして、空母のようにして中国の沿岸に張り付ける形になっているが、これもやがて終わっていく。アメリカに日本にアメリカ軍を駐留させるだけの力がなくなり、日本にもそれを支えるだけの経済力がなくなり、日本の軍事力もそれを支える経済力も低下していくことになる。アジアと西太平洋は中国の勢力圏ということになる。ロシアは隣接する各国への影響力を維持するだろうが、それも中国との協力関係を維持しながらということになる。

 勢力圏内であれば、協力は何をしてもよいということにはならない。そんなことをすれば、勢力圏自体が崩壊する。強国を「脅威」と見なす各国が合同して、強国に対峙することになる。さらに、圏外の強国に支援を求めるという動きも出てくるだろう。南アメリカ最大の強国はブラジルであり、ブラジルはBRICSの一角を占めている。アメリカが南アメリカから「西側以外の国々」の影響を排除することはできない。

 アジア地域は共存共栄の勢力圏を目指すべきであり、中国は実際にそのように動くだろう。アメリカと違って馬鹿ではない。ヨーロッパが進出してくる前のアジアの状態に戻るということになるだろう。

(貼り付けはじめ)

勢力圏とは何か-そして何でないか(What Spheres of Influence Are—and Aren’t

-国際政治において最も誤解されている概念の一つが力によって戻ってきている。

スティーヴン・M・ウォルト筆

2026年1月19日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2026/01/19/sphere-influence-trump-venezuela-donroe-doctrine/

最近、「勢力圏(spheres of influence)」について多くの議論が交わされているが、これは主にアメリカの最新の「国家安全保障戦略(National Security Strategy)」、ドナルド・トランプ政権によるヴェネズエラでの最近の行動、そしてグリーンランドの占領に向けた新たな試みに対する反応だ。大国は自国の「近隣地域()neighborhoods」において誰にも邪魔されることのない影響力を行使すべきだという考えは、ドナルド・トランプ米大統領の信念とも一致している。彼は、強国の強力な指導者が世界を統治し、国際法や普遍的な道徳原則、その他の理想主義的な考えを気にすることなく、互いに取引を行うべきだと考えている。

残念なことに、勢力圏を支持する人も反対する人も、世界政治におけるその位置づけを十分に理解していない可能性がある。現実の世界では、勢力圏は廃止できる時代遅れの慣行でもなければ、大国間の競争を最小限に抑える効果的な方法でもない。むしろ、勢力圏は国際的な無政府常態(international anarchy)の必然的な結果であると同時に、国際的な無秩序状態が生み出す競争インセンティヴに対する不完全な解決策でもある。

大国勢力圏構想に対する反対意見のほとんどは規範的なものであり、批評家たちはそのような取り決めは本質的に不公平だと主張する。主権国家の世界では、各国は国際法の下で平等な地位を享受している(例えば、国連憲章第2条を参照)。したがって、強国が経済的または軍事的強制力によって弱い隣国に大きな支配力を及ぼすことは、本質的に間違っていることになる。例えば、ウクライナのNATO加盟への傾倒(将来の正式加盟の可能性も含む)をロシアが懸念する理由があるかもしれないと認識している人々でさえ、そのような決定はNATOとキエフの判断に委ねられるべきであり、ロシアの拒否権(veto)に左右されるべきではないと主張する。この見方に立てば、中国がアジア諸国に対しアメリカや台湾から距離を置くよう圧力をかけること、あるいはアメリカが(最近の「国家安全保障戦略」にあるように)「私たちの半球(西半球)外の競争国が西半球に軍事力やその他の脅威となる能力を配置したり、戦略的に重要な資産を所有・管理したりする能力を否定する(deny non-Hemispheric competitors the ability to position forces or other threatening capabilities, or to own or control strategically vital assets, in our Hemisphere)」と宣言することなどは、同様に不当である。こうした批判者たちは、全ての国が自らの判断で自由に連携すべきであり、強力な隣国には、誰と貿易し、誰から投資を受け、誰と軍事協力できるかを指図する権利はないと主張する。

そのような規範に支配された世界に住めたら素晴らしいだろうが、このヴィジョンは到底現実的ではない。勢力圏は国際政治において繰り返し出現する特徴であり、それを完全に排除できる可能性は低い。ホワイトハウス補佐官スティーヴン・ミラーが世界政治のいわゆる「鉄則(iron laws)」について無知な大言壮語をするのを鵜呑みにする必要もなく、強大な国家は自国の領土周辺で何が起きているかに常に敏感であり、自国の安全保障を強化すると信じる方法で周囲の状況を形作るために、自らの持つ力を利用するだろうことを認識すべきである。

勢力圏が生じる理由は3つある。第一に、大国は通常、遠隔地の大国よりも自国の近隣地域に強い関心を持つ。そして自国に近い地域で不利な動向が勢いを増すのを防ぐため、リスクを冒しコストを負担する意思が、遠隔地の大国が同じ動向を支援する意思よりも強い。後述するように、遠方の大国は他の大国に近い地域に重要な利益を有する場合もあるが、その利益は通常小さく、防衛のために多大な資源を犠牲にする意思も通常低くなる。2015年に私が主張したように、これがウクライナを西側の自由主義圏に組み入れようとする試みが危険であった理由の1つだ。ロシアは私たちよりも(ほとんどのウクライナ人よりもという訳ではないが)ウクライナを気にかけており、したがって私たちとは異なる方法でエスカレートする意思があったはずだ。同じ論理で、アメリカが本当に動揺しているときに、ロシア、中国、イランからの支援がラテンアメリカ諸国にとってほとんど役に立たない理由も説明できる。この事実は、大国による干渉が正当または道徳的であることを示すものではないが、なぜそのような干渉が起こるのかを理解する上で役立つ。

第二に、ヨーロッパ連合(EU)、アメリカ・メキシコ・カナダ貿易協定、そして東アジアにおける中国の経済的影響力が示すように、グローバル化の時代においても、貿易は依然として地域的に集中する傾向がある。その結果、地域最大の経済大国は、近隣諸国の選択に対して相当な(無限ではないものの)影響力を持つのが一般的である。なぜなら、近隣諸国は、支配的な大国が自国の市場へのアクセスを拒否したり、主要輸出品を制限したりする可能性のある措置を講じた場合の経済的影響を考慮しなければならないからである。

第三に、軍事力を自国に近い場所に展開することが容易であるため(そして、遠方の大国が遠方の国を支援することはより困難であるため)、大国は反抗的な近隣諸国に対してより説得力のある軍事行動の脅しをかけることができる。例えば、ロシアがラテンアメリカ、中東、アフリカに50万人以上の兵士を輸送し、維持することはほぼ不可能であるが、隣国ウクライナには(困難を伴うものの)同数の部隊を配備することが可能であり、実際に配備している。

世界政治において勢力圏が頻繁に見られるという認識から、批評家の一部は、勢力圏について、世界を組織化し、大国間の対立を緩和する潜在的に有用な手段と捉えている。大国が互いの勢力圏を認め、尊重することに合意すれば、潜在的な利益相反(conflicts of interest)は減少し、それぞれの大国の安全保障は強化されるはずだ。理論上は、大国が境界線の位置について合意し、それぞれの勢力圏において「互いに尊重し合う(live and let live)」ことを約束すれば、それぞれが自らの地域を自由に管理できるようになり、潜在的な摩擦点(points of friction)は減少するはずだ。

歴史が示しているのは、私たちはこの処方箋にある程度懐疑的な見方をしているようだ。主張者たちは、このアプローチの成功例として、冷戦時代のヨーロッパ分断を挙げるかもしれない。何世紀にもわたる戦争の繰り返しの後、ヨーロッパはアメリカとソ連がそれぞれ大陸の半分を支配し、互いに抑止力となり、従属諸国(clients)を統制していたため、平穏を保っていた。 NATOとワルシャワ条約機構の直接衝突は計り知れないほどの破壊をもたらすことは誰もが知っていたため、双方とも相手の領域に過度に干渉することに警戒していた。

しかし、この例は一見するほど説得力があるようには思えない。1950年代(特にベルリンの壁が建設される前)のヨーロッパは、危機が繰り返し発生していただけでなく、核兵器を保有する2つの超大国(two nuclear-armed superpowers)が「鉄のカーテン(the Iron Curtain)」を挟んで睨み合っていたという事実に、平和は大きく依存していた。ヨーロッパが2つの対立圏(rival spheres)に分断されていたことで、開戦の可能性は低かったかもしれないが、冷戦(the Cold War)下の競争は依然として激しく、どちらの側も、相手が自らの勢力圏で優位な影響力を行使する「権利(right)」を完全には認めていなかった。もしアメリカ人がそうしていたら、ロナルド・レーガン大統領がベルリンでソ連の指導者たちに「この壁を壊せ(tear down this wall)」と演説することは決してなかっただろう。

さらに言えば、諸列強帝国(great-power empires)の初期の歴史は、誰が異なる地域に支配的な影響力を及ぼすかについて相互合意(mutual agreement)によって平和を確保しようとすることの難しさを如実に示している。様々な植民地大国(colonial powers)は海外に帝国を築く権利を認め、時には世界のどの地域が誰のものであるかについて暫定的な合意に達したものの、こうした取り決めは流動的であり、時に激しい論争を巻き起こした。イギリスとフランスは、北アメリカにおける支配的な影響力をめぐって争い(最終的にはどちらにもならなかった)、アフリカ、中東、南アジア、太平洋におけるそれぞれの植民地領有権をめぐって繰り返し衝突した。したがって、歴史が示すように、地図上に線を引いて各列強の領域を画定することは、問題の解決に長くは続かないだろう。

今日ではどうだろうか? 一方で、諸大国は確かに国益を有しており、特に自国領土に近い地域においては、これを無視して自国の戦略を策定するのは愚かな行為である。後知恵(hindsight)で言えば、アメリカの指導者たちは、旧ソ連に隣接する地域で政治的連携を再構築しようとする試みは逆効果になると警告した多くの声に耳を傾けるべきだった。そして、もし遠く離れた大国がアメリカ本土付近で同様のことを行おうとしたら、自分たちはどう反応するだろうかと自問すべきだった。他者の感受性(sensitivities)に配慮することは、道徳的な放棄ではなく、単に賢明な国家運営に過ぎない。

しかし他方で、勢力圏モデルを採用することで世界政治を平和化しようとしても、大国間の競争に終止符を打つことはできない。その理由は次の通りだ。

始めに、大国は自国地域内では相当な経済的影響力を持っているものの、今日の世界経済は高度に、そしておそらくは不可逆的にグローバル化しており、世界中の生活水準は、製造品の複雑なサプライチェインと、世界中から流入する原材料や食料資源に依存している。その結果、様々な地域を外部の経済力から完全に遮断することは(かつてのスターリン主義ロシアのように)、誰もが著しく貧しくなることなしには実現不可能だ。もしアメリカがラテンアメリカ諸国による中国製品の購入、原材料や大豆の輸出、そして切望されている中国からの投資の受け入れを阻止できると考えるなら、同等の価値を持つ代替品を提供するか、地域全体の人々の怒りを募らせるかのどちらかを迫られるだろう。同じ原則は、中国が東アジアにおいて外部勢力を排除する経済秩序を押し付けようとする試みにも当てはまる。そしてこれは、非常に深刻なコストを負わない限り、ライヴァル大国の影響力を自国の領域から排除することはできないことを意味する。

さらに、たとえ全ての主要国がそれぞれの領域を何らかの形で正式に承認したとしても、彼らは互いに警戒を強め、力と優位性を競い合うことになるだろう。そして、たとえ潜在的なライヴァル国に自国に近い地域への関心と資源を集中させるためだけでも、他の領域への様々な形での干渉に誘惑されるのは避けられないだろう。これが、ヨーロッパやアジア(そして程度は低いがペルシャ湾岸地域)における地域覇権国(regional hegemons)の台頭を阻止しようとアメリカが繰り返し試みてきた中心的な論理であり、こうした覇権国が台頭するには、時にアメリカの積極的な介入(active U.S. intervention)が必要だった。アメリカの指導者たちは、ヨーロッパやアジアにおける覇権国は、自らの領域内では誰にも挑戦されず、西半球を含む世界中でより自由に介入できるだろう。そして、この可能性はアメリカが長らく享受してきた「無料の安全保障(free security)」を低下させるだろうと理解していた。ライヴァル関係にある諸大国が互いの領域に干渉し始めると、たとえそれが限定的なものであっても、各国は警戒感を抱き、反発する可能性が高い。そのため、互いに譲り合い、ライヴァルの領域に介入しないという合意は、特に力のバランスが変化し、魅力的な新たな機会が生まれる場合には、極めて脆弱であることが判明する可能性が高い。

加えて、東ヨーロッパにおけるソ連の経験や、アメリカとラテンアメリカ諸国との関係史が示唆するように、大国の勢力圏内にある弱小国家の中には、その優位性に憤り、それを弱める方法を模索する国も出てくる。これは、遠方のライヴァル大国に介入の機会を与え、優位な大国を不利な立場に追い込むことになる。例えば、アメリカは1953年、1956年、1968年といった時期に、ワルシャワ条約機構加盟国の反乱軍をほとんど支援しなかった。また、1962年のキューバ危機を除けば、ソ連はフィデル・カストロ率いるキューバやサンディニスタを支援するために大きなリスクを冒すことはなかった。むしろ、米ソ両国は主に、ライヴァル国が弱い隣国に高圧的な干渉を行っていることを強調することで、プロパガンダの得点を稼ごうとした。そして、大国が自国の勢力圏内の反体制勢力を弾圧しなければならない状況では、こうした種類の正統性を失わせる動きが必ず起こるのである。

この状況はまた、勢力圏が最も効果的に機能するのは、それがほとんど目に見えない時、支配的な大国が近隣諸国を従わせるために多くのことをする必要がなく、自らの役割を本質的に善意あるものとして見せることができる時であることを私たちに思い出させる。とりわけ、だからこそトランプ政権は、「私たちの(our)」半球に自らの意志を押し付けると豪語しながらも、他国の資源や領土を支配したいという願望を公然と宣言している。これは外交上の失策であり、半球内でさらなる反感を醸成し、大国同士がアメリカを危険なならず者(a dangerous rogue)と描写するための十分な材料を与えることになるだろう。

最後に、たとえ中国、アメリカ、ロシア、そしておそらく他の12カ国が互いの勢力圏を認め、尊重することを約束したとしても、アフリカと中東は現在、どの大国の勢力圏にも入っていない。そのため、大国が富、力、影響力を求めて競争できる場所は依然として多く存在し、各大国が争っている地域への安全な通信回線を確立し、他の地域へのアクセスを拒否しようとするため、ある地理的領域での競争は他の地域にも波及する傾向がある。

結局のところ、世界が能力の大きく異なる独立国家に分断されている限り、勢力圏は国際情勢の不可避的な特徴であると同時に、平和を促進することにとっては、頼りない手段でもある。より平穏で繁栄した世界を築きたいのであれば、まずは他国の勢力圏に挑戦することは危険な試みであることを認識する必要がある。しかし、それだけでは終わらない。安定した平和の構築は、少数の世界指導者が地図を取り出して誰がどこに何を得るかを決めるだけでは到底できるものではない。たとえ今日、何とか合意に至ったとしても、将来、互いの地域的宗主権(regional suzerainty)の主張に挑む、微妙な、あるいはそれほど微妙ではない試みを含め、優位性を競い合うことを止めることはできない。

※スティーヴン・M・ウォルト:『フォーリン・ポリシー』誌コラムニスト。ハーヴァード大学ロバート・アンド・レニー・ベルファー記念国際関係論教授。Blueskyアカウント:@stephenwalt.bsky.socialXアカウント:@stephenwalt

(貼り付け終わり)

(終わり)

sillionvalleykarasekaishihaiwoneraugunsanfukugoutainoshoutai001
シリコンヴァレーから世界支配を狙う新・軍産複合体の正体 
trumpnodengekisakusencover001
『トランプの電撃作戦』
sekaihakenkokukoutaigekinoshinsouseishiki001
世界覇権国 交代劇の真相 インテリジェンス、宗教、政治学で読む

bidenwoayatsurumonotachigaamericateikokuwohoukaisaseru001

バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

akumanocybersensouwobidenseikengahajimeru001

 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める

このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック

 古村治彦です。

 ドナルド・トランプ大統領の外交政策はいつも通り、はったりを利かせながら進んでいる。西半球(Western Hemisphere)を勢力圏(Sphere of Influence)として、支配を確立するために、逆に言えば、世界覇権国であることを辞めるために動いている。ヴェネズエラ攻撃、グリーランド奪取への言及、パナマ運河への野心、カナダやメキシコを「州」として扱うような行動は南北アメリカ大陸を支配するための動きである。ドンロー主義は、モンロー主義(南アメリカからイギリスの影響を排除する)と棍棒外交(アメリカ海軍の戦艦の太平洋と大西洋の行き来を確保しつつ、物流の通行料を取るためにパナマを奪取する)を混合させたものだ。ドンロー主義が排除を目指すのは、中国とアメリカの影響力だ。

 19世紀のイギリス、21世紀の中国とロシア、それぞれターゲットは異なる。また、置かれている状況も異なる。南アメリカには「西側以外の国々」の中核であるBRICSの一角ブラジルが控えている。ブラジルは国力を充実させ、南アメリカの地域大国となり、ドル覇権からの離脱を目指す存在である。BRICSは既に世界の重要な拠点を押さえている。BRICSの位置を確認すれば、北米大陸(とヨーロッパ)が包囲されていることが分かる。
bricsmap201
BRICS加盟諸国の地図

 アメリカの横暴な動きが続けば、ヨーロッパ諸国がそうであるように、アメリカを「脅威」と見なすことで、西側以外の国々が「対米防衛同盟」を成立させることで、「脅威の均衡(balance of threat)」を図るということも起きるだろう。「脅威の均衡」はこのブログでも頻繁にご紹介しているスティーヴン・M・ウォルトが提唱した考えである。簡単に言えば、ある国を「脅威」と認識した国々は、その国に従うか(「バンドワゴニング、勝馬に乗る[bandwagoning]」)、同盟を組んで対抗するか(バランシング、均衡を図る[balancing])ということになる。中国は表立って、対米防衛同盟の動きを行うことはないだろうが、アメリカの暴力的な動きが激しくなれば、西側以外の国々が結束して、アメリカに対抗し、アメリカを包囲し、封じ込める(containment)ということも考えられる。

(貼り付けはじめ)

勢力均衡理論が再び台頭している(The Balance-of-Power Theory Strikes Again

-ドナルド・トランプの脅しに対する世界の反応に誰も驚くことはない。

スティーヴン・M・ウォルト筆

2026年1月23日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2026/01/23/trump-threats-europe-greenland-balance-power/

ついに、かつて友好国だった国々が、ならず者国家アメリカ(a rogue America)に対抗し始めているのを目にする日が来たのだろうか?

このような変化は、世界情勢の大きな転換点となるだろう。もし実際にそうなったとしても、それはトランプ政権の戦略的近視眼(the strategic myopia of the Trump administration)と、ますます不安定になる大統領の略奪的衝動(the predatory impulses of an increasingly erratic president)に完全に起因するだろう。

過去100年ほど、アメリカの世界支配の台頭は、その地位が圧倒的ではあっても、多くの国々がワシントンを牽制するために結集するほどではなかったという点で、古いスタイルの勢力均衡理論(old-style balance-of-power theory)の部分的な例外であった。冷戦期には、アメリカはソ連主導の諸国連合という対抗勢力に直面したが、世界の主要諸国や中規模諸国のほとんどは、アメリカの特定の政策に時折反対する場合があっても、アメリカを貴重な同盟国と見なしていた。しかし、カナダのマーク・カーニー首相が火曜日、スイスのダヴォスで開催された世界経済フォーラムの参加者に語ったように、そのような世界はもはや過去のものとなった。今日、彼は次のように語った。「大国間の競争(great-power rivalry)が繰り広げられる世界において、中間に位置する国々には選択肢がある。互いに好意を得るために競争するか、協力して影響力のある第三の道を切り開くかだ。」

以下、私自身の研究に触れて恐縮ですが、約40年以上前に博士論文(そして最初の著書)を執筆して以来、同盟の諸起源(the origins of alliances)と国家間の均衡を保つ理由(the reasons why states balance)というテーマについて考え、書き続けてきた。国家が同盟を結ぶのは、主に脅威への対応(response to threats)であり、力(power)だけによるものではないと私は主張した。もちろん、力は脅威の一要素だ(つまり、他の条件が同じであれば、強い国家は弱い国家よりも危険だ)。しかし、地理や知覚された意図[他者の行動から読み取った目的や動機]geography and perceived intentions)も重要だ。近隣にある国家は遠くにある国家よりも厄介な傾向があり、修正主義的な野心を持つ国家(states with highly revisionist ambitions)は特に危険だ。特に、他国から領土を奪ったり、他の国の統治者を支配しようとしたりする場合には猶更だ。弱小国家や孤立国家は、脅威となる勢力に「勝ち馬に乗る、バンドワゴニング(bandwagoning)」することで融和(accommodate)しようとすることもあるが、より典型的な対応は、理想的には他国と連携して、脅威となる勢力と均衡を保つことだ(the more typical response is to balance against a threatening power, ideally in partnership with others)。

私が「脅威の均衡理論(balance-of-threat theory)」と名付けたこの定式は、とりわけ、アメリカの冷戦同盟システムがワルシャワ条約機構やソ連の様々な非同盟諸国よりもはるかに大規模で強力であった理由を説明するものであった。アメリカは総合的な力では勝っていたが、ソ連はヨーロッパとアジアの多くの中規模国に隣接し、領土獲得に最適化された大規模な軍隊を有し、その指導者たちは共産主義の普及に公然と尽力していた。対照的に、アメリカはヨーロッパとアジアから2つの巨大な海によって隔てられており、そこに領土的野心はなかった。脅威の均衡理論は、1991年にイラクをクウェートから追い出した多国籍軍のような、不均衡な構造(lopsided alignments)も説明できる。あの事件では、イラクをはるかに上回る能力を総合的に備えた、本来はあり得ないような国々のグループが力を合わせた。なぜなら、彼らは皆、イラクの行動が地域の安定に対する深刻な脅威であると見なしたからである。

脅威均衡理論は、アメリカが単独で権力の頂点に立つ一方で、公然とした均衡維持の努力が少数の脆弱なならず者国家(weak rogue states)に限られていた「一極時代(unipolar moment)」という一見異常な状況を理解する上でも役立つだろう。冷戦時代のアメリカの同盟諸国がNATOに残留したのは、(1)制度的惰性(institutional inertia)(「NATOが崩壊していないのなら、なぜ修復する必要があるのか​​?」)、(2)不確実性へのヘッジをしたいという願望(a desire to hedge against uncertainty)、(3)アメリカの保護に頼るのは極めて良い取引だという認識(the recognition that relying on American protection was a pretty good deal)、そして、(4)ワシントンの最悪の衝動が他国に向けられていたという事実(the fact that Washington’s worst impulses were directed elsewhere)、による。ヨーロッパの指導者たちは、2003年のイラク侵攻のような失策が自国に悪影響を及ぼすことを正しく恐れ、アメリカの判断力に何度も疑問を呈したが、「ソフト・バランシング(soft balancing)」にとどまり、再編や自立に向けた努力は行わなかった。この決定が容易にされたのは、アメリカが依然として同盟諸国に対して自制(with restraint)を示し、領土的野心を抱かず、概ね各国政府と建設的な協力関係を築こうと努めていたためである。対照的に、ロシア、中国、北朝鮮、イランは、アメリカからの潜在的な脅威をより強く懸念する理由があったため、アメリカの力のバランスを取るためにより積極的な努力を傾けた。

それは当時のことであり、今は違う。ドナルド・トランプは、大統領として2期目を開始して以来、脅威の均衡理論が警告するほぼ全てのことを実行し、予想通り否定的な結果をもたらしている。トランプは、カナダ、グリーンランド・デンマーク、パナマに対する拡張主義的な目標を公然と繰り返し宣言しており、その野望はそこで止まらないかもしれない。彼と彼の側近たちは、主権の規範(the norm of sovereignty)を含む国際法は無意味であり、強い者は手に入れることができるものは何でも手に入れることができると信じているようだ。彼は、他国に経済的・政治的譲歩を強要するために、関税の脅威を繰り返し振りかざしたり、課したりしてきた。彼は、多くの場合、非常に疑わしい理由をもって、6カ国以上に軍事力を行使し、デンマークなどの忠実な同盟国に対しても軍事力行使をほのめかしてきた。彼は、他の外国の指導者たちを露骨に軽蔑し、適正手続きを経ずに100人以上の外国人民間人を殺害することを容認してきた。これもまた、国際法違反である。さらに、反逆的な政府の凶悪集団(例:移民関税執行局[Immigration and Customs Enforcement])をアメリカ国内の都市に解き放つことで、他国社会がアメリカを安定し規制の行き届いた社会と見なすこと、あるいは彼の外交政策行動を異常な事例と捉えることを不可能にした。要するに、国内外を問わず、アメリカ政府は危険ないじめっ子であり、強迫的な略奪者のように振る舞っているのだ。

ある意味、この行動は奇妙だ。賢い捕食者たち(clever predators)は、真意を可能な限り隠そうとする。トランプも2016年、そして最初の任期の大部分においてそうだったように、それは「部屋の中の大人(adults in the room)」によって抑制されていたことも一因だ。しかし、2021年1月6日の犯罪を免れ、再選を果たし、確固たる信念を持たない取り巻き、忠誠者、追従者、そして日和見主義者たち(cronies, loyalists, sycophants, and opportunists with no fixed principles)で政権を固めたことで、彼は最悪の衝動を解き放った。そして今、世界は注目し始めている。

世界はどのように反応しているのだろうか? 確かに、アメリカの最も近い同盟諸国は、いくつかの明白な理由から、トランプの好戦的な姿勢に抵抗するのが遅れている。アメリカとの関係を縮小し、アメリカに対抗する動きを見せるにはコストがかかり、意味のある対抗勢力となるのに十分な数の国を集めるには、集団行動におけるよくあるディレンマ(the usual dilemmas of collective action)に直面する。したがって、イギリスのキア・スターマー首相、NATO事務総長のマーク・ルッテ、韓国の李在明大統領のような人々が、お世辞、象徴的な服従、贈り物、そして小さな譲歩を組み合わせることで、ワシントンとの緊密なパートナーシップから得られる利益のほとんどを維持できるかどうかを見極めようとしたのは理解できる。

試してみる価値はあったかもしれないが、その賭けは明らかに成功しなかった。トランプ自身の言動が、そのアプローチの愚かさを露呈した。過去の合意は全ていつでも再交渉可能であると信じ、いかなる譲歩もさらなる要求への誘いと解釈する捕食者を受け入れることはできない。

脅威均衡理論が予測するように、かつての友好諸国は距離を置き、信頼できず潜在的に敵対的なアメリカに対する依存を減らし、互いに、そして場合によってはアメリカの敵対諸国とも新たな取り決めを結んでいる。長年、どの国にとっても最良の隣国であったカナダの首相が北京を訪れ、「新たな戦略的パートナーシップの柱(the pillars of [a] new strategic partnership)」を概説するということは、地殻変動が起こっていることを物語っている。ヨーロッパの指導者たちも、数十年にわたるゼリー状の優柔不断の後、再び背骨が生えてきたように見える。なぜなら、彼らには選択肢がほとんど残されていないからだ。『フィナンシャル・タイムズ』紙のエド・ルースは明確に次のように述べている。「トランプに立ち向かうことが成功を保証するわけではない。一方、服従は必ず失敗する(Standing up to Trump offers no guarantee of success. Submission, on the other hand, is certain to fail)」。

かつてアメリカが誇った数々の国際的パートナーシップの更なる崩壊を防ぎ、新興国により適した新たな枠組みを構築するには、もう手遅れではないだろうか? 確かに手遅れだが、それはトランプ政権がこれまでの略奪的な戦略を捨て、アメリカが一方的な利益のためだけでなく、共通の利益のために他国と協力する意思を示すことが条件だ。その可能性はどれほど高いだろうか?

※スティーヴン・M・ウォルト:『フォーリン・ポリシー』誌コラムニスト。ハーヴァード大学ロバート・アンド・レニー・ベルファー記念国際関係論教授。Blueskyアカウント: @stephenwalt.bsky.socialXアカウント:@stephenwalt

(貼り付け終わり)

(終わり)

sillionvalleykarasekaishihaiwoneraugunsanfukugoutainoshoutai001
シリコンヴァレーから世界支配を狙う新・軍産複合体の正体 
trumpnodengekisakusencover001
『トランプの電撃作戦』
sekaihakenkokukoutaigekinoshinsouseishiki001
世界覇権国 交代劇の真相 インテリジェンス、宗教、政治学で読む

bidenwoayatsurumonotachigaamericateikokuwohoukaisaseru001

バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

akumanocybersensouwobidenseikengahajimeru001

 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める

このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック

 古村治彦です。

 2026年はアメリカ建国250年の節目の年である。中間選挙がじっしされる年でもある。現在、ドナルド・トランプ大統領の人気は低迷し、連邦下院で共和党は過半数を失う可能性が高い。連邦上院は共和党が過半数を維持する可能性が高い。下院で民主党が過半数を握れば議長を出すことになり、トランプ肝いりの法案の可決も困難になる。第二次トランプ政権の後半2年の政権運営も厳しくなる。

 トランプ政権が支持率を上昇させるには、物価対策と外交政策の成功が重要になる。海外からの輸入製品の価格引き下げが物価対策の1つの方法である。そのためには、究極的には戦争を終わらせる必要がある。地政学リスクと言うが、地政学リスクを下げることが重要だ。ウクライナ戦争とイスラエル・ハマス紛争を収拾することが重要であるが、ウクライナ戦争は2026年2月24日に4年が経過することになるが、停戦の見通しは立っていない。イスラエルのガザ地区の状況も戦闘は起きていないが、イスラエルはガザ地区への圧力を強めている。また、イランに対して更なる攻撃を加える姿勢を捨てていない。中東地域も不安定なままである。

 昨年、トランプ政権は「国家安全保障戦略」を発表した。このことについてはこのブログでも複数回紹介した。重要なのは、ラテンアメリカと中東、東アジアである。トランプ政権は、ヴェネズエラ近海にアメリカ海軍の艦艇を派遣し、船舶に対して攻撃を行い、ニコラス・マドゥロ大統領に圧力をかけている。麻薬対策を大義名分にしているが、それならば、コロンビアやメキシコを標的にした方が合理的だ。アメリカ政府はマルコ・ルビオ国務長官を中心にして、ラテンアメリカにおけるアメリカの勢力確保を狙い、反米勢力の一掃、中国とロシアの影響力排除を行おうとするグループがいる。ヴェネズエラはそのための標的である。問題は、どこまで介入するかということだ。地上軍派遣の可能性も浮上しているが、この段階まで進むと、アメリカは泥沼にはまり込む可能性がある。マドゥロ政権を倒しても、マドゥロ支持派がゲリラ戦を展開する可能性がある。ラテンアメリカ各国の「ボリバル主義」「反ヤンキー帝国主義」感情が高揚することになる。それでも地上部隊まで派遣して、マドゥロ政権を打倒して親米政権を樹立するというところまで進めば、トランプは自身が戦争を止める大統領だという自画自賛を放棄することになる。国内の不満を海外での武力行使で目を逸らさせるという意図があるとすれば、アメリカ国内の不満は相当大きくなっているという見方もできるだろう。また、トランプ政権内の対外強硬派の勢いが強くなっているのだろう。※2025年1月2日にトランプ大統領はアメリカ軍に対してヴェネズエラへの攻撃を命令し、マドゥロ大統領夫妻を拘束し、国外に連れ出したと発表した。このような暴挙は予想できなかった。トランプ主義、アメリカ・ファーストの終焉である。BRICSを中心とする「西側以外の国々」は反アメリカの姿勢を強めるだろう。トランプも馬鹿なことをしたものだ。ドル離れと金(きん)への資金の移動が続くことになる。

 中東地域に関して言えば、イランへの攻撃があるかどうかである。イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相はイランへの攻撃を行いたいという願望を持っている。中東地域の不安定な状況はネタニヤフの個人的な利益に適う。状況が平常に戻れば、個人的な汚職の問題で裁判にかけられることになる。ハマスとの紛争が停戦したことで、平常に戻る可能性が大きくなるが、状況の不安定化を継続させるために、ガザ地区に対して人道的に許しがたい圧力をかけ、ハマスの暴発を狙うか、ハマスを支援するイランへの攻撃を行うかである。アメリカのトランプ大統領は昨年実行したイランへの空爆について、イランが核開発を、場所を変えて継続している可能性があると発言している。イランへの攻撃は実行される可能性はあるが、大規模な攻撃とはならないだろう。イランとイスラエルの全面戦争に発展することは避けたい。イラン側としてもアメリカの衰退が継続していけばイスラエルも衰退していくということになるので、中国やロシアと連携しながら、状況を悪化させないということになる。

 東アジアにおける最大の不安定要因は高市早苗首相と日本である。日本は成長のない30年を経て、残念なことだが衰退が決定づけられている。経済や社会において人々の不満が高まっていく。人々の不満を外に向けることは常套手段である。そうした状況下で、「日本初の女性首相」という大義名分で、極右派・隷米派の高市早苗議員が首相に就任した。そして、早速に台湾有事の発言で、日中関係と東アジアに緊張をもたらした。高市政権の後ろ盾はアメリカ国防総省のナンバー3であるエルブリッジ・コルビー国防次官だ。コルビー次官については、これまでの著作で取り上げているので、そちらを参照していただきたい。トランプ大統領は中国との対立を望んでいないが、トランプ政権に入った、対中強硬派が中国との対立を望んでいる。厄介なことに、アメリカが直接対峙するのではなく、日本を利用して、日本をぶつけようという姑息な手段を用いてである。2026年は高市政権を退陣させ、日本が中国との衝突を起こさないようにすることが重要である。
elbridgecolbyjapanesepoliticians20250430001

 2026年も世界を不安定にしようという動きがある。私たちはそのことに気づき、そして、阻止するために学び続ける必要がある。

(貼り付けはじめ)

ドナルド・トランプ大統領の新たな国家安全保障戦略:5つの重要なポイント(Trump’s new national security strategy: 5 key takeaways

ラウラ・ケリー筆

2025年12月5日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/policy/international/5635890-trump-national-security-strategy/

ドナルド・トランプ大統領は木曜日の夜遅く、「国家安全保障戦略(national security strategy)」を発表した。西半球(Western Hemisphere)におけるより大きな軍事プレゼンス(a larger military presence)、世界貿易の均衡(balancing global trade,)、国境警備の強化(tightening up border security)、そしてヨーロッパとの文化戦争への勝利(winning the culture war with Europe)に重点が置かれている。

この包括的な戦略は通常、新政権発足1年以内に発表され、大統領の外交政策の重点を説明し、予算の配分に関する指針を示している。

33ページに及ぶこの文書は、トランプ大統領の「アメリカ・ファースト(America First)」のイデオロギーを基盤としているが、同時に、トランプ大統領がモンロー主義を踏襲し、西半球におけるアメリカの優位性(U.S. dominance)を主張していることを初めて明確に示している。

「長年の無視の後、アメリカはモンロー主義を再び主張し、実行することで、西半球におけるアメリカの優位性を回復し、アメリカ本土と地域全体の主要地域へのアクセスを守る」と「国家安全保障戦略」は述べている。

この文書は、アメリカの世界からの撤退を明確には示していないが、同盟国間の負担分担の増大(increasing burden sharing among allies)、アメリカの経済的利益と重要なサプライチェインへのアクセスの向上(elevating American economic interests and access to critical supply chains)、アメリカのエネルギー生産の「解放」(“unleashing” American energy production)を求めている。

トランプ大統領の「国家安全保障戦略(NSS)」の5つのポイントを以下に挙げる。

(1)カリブ海におけるトランプ大統領の戦争は激化する見込み(Trump’s war in the Caribbean likely to heat up

カリブ海で麻薬密輸の疑いのある船舶に対するトランプ大統領の2カ月以上にわたる軍事作戦は、「国家安全保障戦略」がアメリカに対し、世界的な軍事プレゼンスを南北アメリカ大陸に再調整し、「ここ数十年、あるいは数年間でアメリカの国家安全保障にとって相対的に重要性が低下した地域」から撤退するよう求めていることから、より大きな支持を得る可能性が高いだろう。

トランプ大統領は、カリブ海におけるアメリカ軍の軍事作戦を麻薬カルテルとの「武力紛争(armed conflict)」と位置づけ、麻薬密売の罪でアメリカで起訴されているヴェネズエラの実力者ニコラス・マドゥロ大統領を主要な脅威として挙げ、アメリカは間もなく「地上作戦(land operations)」を開始する可能性があると述べた。

ヴェネズエラは具体的には名指しされていないものの、「国家安全保障戦略」は、アメリカ国境の安全確保と「カルテルの打倒(defeat cartels)」、そして「戦略的に重要な地域へのアクセスの確立または拡大(establishing or expanding access in strategically important locations)」のために「標的を絞った展開(targeted deployments)」を求めている。

この戦略はまた、トランプ大統領が関税を用いて地域を支配する手法にも焦点を当てている。しかし、トランプ大統領がそのような権力を有しているかどうかは、最高裁判所で係争中の訴訟の焦点となっている。

「アメリカは、関税と相互貿易協定を強力なツールとして活用し、アメリカの経済と産業を強化するため、商業外交(commercial diplomacy)を優先する」と文書は述べている。

この文書はラテンアメリカにおける中国の進出を明確に指摘していないものの、NSSは、米国は金融とテクノロジーにおける影響力を駆使して地域諸国を敵対勢力から引き離し、「スパイ活動、サイバーセキュリティ、債務の罠、その他の方法」でこれらの諸国への依存の脅威を強調すべきだと述べている。

And while the document does not explicitly call out China’s inroads in Latin America, the NSS says the U.S. should use its leverage in finance and technology to pull regional countries away from adversaries and underscore threats of reliance on those countries “in espionage, cybersecurity, debt-traps, and other ways.”

(2)トランプ大統領がロシアへの対応に失敗したとしてヨーロッパを批判(Trump criticizes Europe as failing to deal with Russia

「国家安全保障戦略」は、ロシアとの関係悪化の一因となったヨーロッパの「自信の欠如(lack of self-confidence)」を批判しているが、ロシアのウラジーミル・プーティン大統領による2014年と2022年のウクライナ侵攻の決定や、破壊工作、選挙介入、そして大陸における不安定化煽動といった活動については言及していない。

「国家安全保障戦略」は、「ユーラシア大陸全体にわたる戦略的安定の条件を再構築し、ロシアとヨーロッパ諸国間の紛争リスクを軽減する」ためにヨーロッパとロシアの間の仲介を行うことができる唯一の勢力がアメリカであると述べている。

この文書はさらに、アメリカは「ヨーロッパの偉大さを促進する」必要があると明言しており、これはヴァンス副大統領が2月にドイツで行った演説を彷彿とさせる。

ヨーロッパ外交評議会上級政策研究員パウエル・ゼルカは分析の中で、「ワシントンはもはや、ヨーロッパの内政に干渉しないふりをしていない」と述べている。

「現在では、こうした干渉を『ヨーロッパがヨーロッパであり続けることを望む』という善意の行為であり、アメリカの戦略的必要性に基づくものと位置付けている。最優先事項は何か? 『ヨーロッパ諸国において、ヨーロッパの現在の方向性に対する抵抗を育むこと』である」。

(3)台湾はアメリカの対中戦略を応援(Taiwan cheers US strategy on China

「国家安全保障戦略(NSS)」が台湾の主権と安全保障を外部からの影響から守ることを明確に認めたことは、台北の外務省から歓迎され、ワシントンの対中強硬派は、トランプ政権が台湾を北京に明け渡すつもりはないと安心することになるだろう。

「アメリカの『国家安全保障戦略(NSS)』は、台湾をめぐる紛争の抑止が地域と世界にとって不可欠であると明言している」と台湾外務省は声明で述べた。

「台湾の安全はインド太平洋の安定を支えるものであり、私たちは自衛を強化し、地域の平和と繁栄に貢献し続ける」。

「国家安全保障戦略」は、台湾をめぐる紛争を抑止するためにアメリカに対し「軍事力の優位性(military overmatch)」を維持するよう求め、「有利な通常戦力のバランス(a favorable conventional military balance)」が地域におけるアメリカの利益の鍵であるとしながらも、地域におけるアメリカの同盟国間の「負担分担(burden-sharing)」を強調している。

この文書は、日本、韓国、台湾、オーストラリアに対し、国防費の増額を求める圧力を継続するよう求めている。

ハドソン研究所アジア太平洋安全保障担当部長パトリック・クローニンは、「国家安全保障戦略」への初期の反応として、「アジアについて考えると、経済と抑止力への重点は概ね妥当だ」と述べている。

クローニンは続けて「それでもなお、中国の戦略が相互に公正な貿易に関するものだという考えは、この文書が過去の誤った前提について正当に指摘している様々な批判に真っ向から反するものである」と述べた。

(4)アメリカの中東への重点は「後退」(American focus on Middle East to ‘recede’

トランプ大統領は、アメリカのエネルギー輸出増加に注力し、イスラエルとの12日間の戦争とアメリカの核施設への攻撃を受けてイランとその代理勢力が大幅に弱体化したと述べるなど、中東におけるアメリカの責任を軽減しようと努めている。

「国家安全保障戦略」は、「しかし、長期的な計画と日常的な実行の両面において、中東がアメリカの外交政策を支配していた時代は、ありがたいことに終わった。中東がもはや重要ではなくなったからではなく、かつてのように常に人々を苛立たせ、差し迫った大惨事の潜在的な原因ではなくなったからだ」と述べている。

トランプ大統領は「紛争は依然として中東で最も厄介な問題である」と認めつつも、この地域の明るい展望を描いている。

リバータリアン系シンクタンクであるケイトー研究所研究員ジョン・ホフマンは、アメリカが中東における役割を縮小する戦略を歓迎する一方で、トランプ政権にそのようなロードマップを実行する政治的意思があるかどうか疑問視している。

ホフマンは「過去4人の大統領うち2人はドナルド・トランプ――は、中東へのアメリカの関与縮小を公約に掲げながら、変化ではなく継続性に根ざした政策を追求してきた」と書いている。

「ワシントンは依然としてこの状況に巻き込まれ、この地域の情勢を細かく管理しようとしている。このようなアプローチでは、この『国家安全保障戦略(NSS)』の明示された目的を達成できないだろう。トランプが中東情勢を根本的に転換する政治的意思を持っているかどうかはまだ分からない」。

(5)民主党からの党派的な反発を招く(Draws partisan pushback from Democrats

民主党は、トランプ大統領の「国家安全保障戦略(NSS)」を、世界におけるアメリカの後退を示す危険な計画であり、アメリカと同盟諸国を弱体化させるものだと即座に非難した。

連邦下院情報特別委員会と連邦下院軍事委員会委員であるジェイソン・クロウ下院議員(コロラド州選出、民主党)は声明で「この計画が進められると、世界はより危険な場所となり、アメリカ国民の安全は脅かされるだろう」と、述べた。

「多くの懸念すべき点の中でも、ソーシャルエンジニアリング(social engineering)、文化戦争(culture warfare)、そして同盟国である外国政府や政治体制への干渉(interference with allied foreign governments and political systems)を露骨に呼びかけている点が挙げられる。これは国内外における自由と個人の権利に対する攻撃だ」。

同様に、連邦上院軍事委員会委員であるリチャード・ブルーメンソール連邦上院議員(コネチカット州選出、民主党)は、「国家安全保障戦略(NSS)」は「同盟諸国を見捨てて、ウクライナを犠牲にし、主要な戦略目標と基本的価値観を放棄するという後退を予兆するものだ。アメリカはより安全になるどころか、より弱体化するだろう。アメリカ・ファーストはアメリカだけの問題であり、その代償を払うことになるだろう」と述べた。

評論家の一部はより慎重な見方を示した。

民主政治体制防衛財団軍事政治力センター上級ディレクターであるブラッドリー・ボウマンは、「国家安全保障戦略」は「以前の国家安全保障戦略との連続性もいくつかあるが、大きな変更点もいくつかある」とコメントした。

「称賛に値する点もあれば、注目すべき批判点もあり、そして深刻な『何だって?』という点もある」。

(貼り付け終わり)

(終わり)

sillionvalleykarasekaishihaiwoneraugunsanfukugoutainoshoutai001
シリコンヴァレーから世界支配を狙う新・軍産複合体の正体 
trumpnodengekisakusencover001
『トランプの電撃作戦』
sekaihakenkokukoutaigekinoshinsouseishiki001
世界覇権国 交代劇の真相 インテリジェンス、宗教、政治学で読む

bidenwoayatsurumonotachigaamericateikokuwohoukaisaseru001

バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

akumanocybersensouwobidenseikengahajimeru001

 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める

このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック

このページのトップヘ