古村治彦(ふるむらはるひこ)の政治情報紹介・分析ブログ

SNSI研究員・愛知大学国際問題研究所客員研究員の古村治彦(ふるむらはるひこ)のブログです。翻訳と評論の分野で活動しています。日常、考えたことを文章にして発表していきたいと思います。古村治彦の経歴などについては、お手数ですが、twitter accountかamazonの著者ページをご覧ください 連絡先は、harryfurumura@gmail.com です。twitter accountは、@Harryfurumura です。よろしくお願いします。

タグ:解体

 古村治彦です。

 以下の論稿は1年ほど前に発表された論稿であるが、非常に興味深い内容になっている。アメリカ国内の分裂は今や隠せないほどになっている。政治の世界では、民主、共和両二大政党の間が分裂し、話がうまく進まない状況にある。また、それぞれの政党の内部も分裂しており、政治家たちは同じ党である必要があるのかというほどになっている。有権者も、自分が支持する政党には熱心な支持を表明しているが、反対党はなくなれば良いというくらいの考えを持っている。「アメリカの二大政党制は民主政治の精華(せいか)」ということはもう言えなくなっている。
 こうした状況について、中国とアメリカがインターネット空間に偽情報を流して生み出したという論調がある。しかし、それは大きな間違いだ。こうした分裂を助長するような動きはあったかもしれないが、アメリカ国内の分裂・分断はアメリカ国内で生み出されたもので、それは、アメリカの衰退が根本原因である。アメリカ国民は世界最強、世界最大の帝国の国民として、その利益を享受してきた。しかし、アメリカの衰退が明らかになるにつれて、そうした利益を得られない将来が近づいてきている。余裕がなくなってきている。個人個人でもそうだが、余裕がなくなれば、礼儀だの寛容性だのもあったものではない。

 アメリカ国内の分裂で怖いのは、アメリカには多くの武器が市民生活に存在していることだ。殺傷能力の高いライフル銃までが普通に売られている。また、民兵(ミリシア、militia)という考え、抵抗権という考えが憲法に書かれていることもある。中央政府に対して、国民が抵抗することは権利であるが、それは選挙やデモ、請願といった平和的な手段にとどまらず、武力を用いた抵抗も存在する余地がある。

 中央政府がアメリカ軍や州軍に、抵抗のために武器を持って立ち上がった国民の鎮圧を命じた場合に、現場の将兵たちがその命令に従うかどうかという疑問が出ている。そのことを下の記事では懸念している。アメリカ軍が中央の命令に従わないということになれば、内戦状態(civil war)ということになる。同士討ちなどということになれば、アメリカの誇った民主政治体制が崩壊することになる。そして、アメリカは分裂することになる。その時の分裂線は、リベラルな北部と保守的な南部ということになる。保守的な南部を、それこそ中国やロシアが支援するという状況が起きるかもしれない。こうしてアメリカの解体が起きる。

 荒唐無稽な話のようであるが、アメリカはそれくらいの危機に瀕している、分裂・解体の可能性も視野に入れるべきということは考えておく必要があるだろう。

(貼り付けはじめ)

2024年の選挙の本当の勝者たちは中国とロシアになるだろう(The Real Winners of the 2024 Election Could be China and Russia

リー・ドラットマン、シーン・マクフェイト筆

2022年12月21日

『タイム』誌

https://time.com/6242314/real-winners-of-the-2024-election-could-be-china-and-russia/

両敵対国も、伝統的な兵器に頼らない新しいタイプの戦争を戦っている。その代わりに、アメリカのような敵対国を外側からではなく内側から打ち負かそうとしている。この「卑劣な戦争(sneaky war)」は、一般的な不安を煽るためにサイバー攻撃を行ったり、アメリカ、EU、イギリスの選挙に揺さぶりをかけ、信頼を損なわせるために偽情報(disinformation)を使用したりするなどによって、内部の不和を煽る。

アメリカが海外で使用するF-35戦闘機に1兆7000億ドルを支出している。一方で、ロシアと中国はF-35戦闘機では打ち負かすことのできない、過度の党派性をアメリカ国内に生み出し、武器化している(weaponizing)。アメリカ社会に存在する「赤」対「青」の亀裂を基盤に、これらの外国勢力は秘密裏に挑発的な偽情報を使い、選挙までの期間(そしてそれ以降)が党派的な「ヘイト・ウィーク(hate week)」になるようにしている。彼らの目的は、アメリカを完全に破壊することではなく、内部分裂させ、イタリアのように第一世界にふさわしい力を持たない第一世界の国にすることである。

そして、中露両国による攻撃は、私たちがそうした争いに進んで参加しているおかげで成功している。最近の世論調査によれば、共和党と民主党のそれぞれの支持有権者の80%が、お互いの政治的に反対の立場を取る政党は脅威(threat)であり、そうした反対党の政権奪取を阻止しなければアメリカは滅亡すると考えている。民主党は、外国の敵よりも共和党を脅威と考える傾向がはるかに強い。共和党員も民主党員に対して同じように感じている。民主政治体制国家(democracy)はこうして滅びる。勝ち負けが民主主義を維持することよりも重要になり、最終的には一方が「国を救う」ために暴力に走る。

国家安全保障の指導者たちは、この問題を認識している。もし2024年が国家非常事態(national emergency)となれば、反乱法(Insurrection Act)に基づき、秩序を回復するために軍が召集されるかもしれない。しかし、軍隊はそれに従うだろうか?

アメリカ軍は南北戦争以来の政治的分極化(politically polarized)に陥っている。選挙で選ばれた指導者を非難したり支持したりする書簡に退役将兵が署名するのは日常茶飯事の出来事だ。2020年には、780人の退役将官と元国家安全保障リーダーがトランプ大統領に反対を表明し、一方で200人以上の退役軍人がトランプ大統領を「能力と実績が証明された指導者(proven leader)」として支持を表明した。現在、現役将兵が声を上げており、ある将兵は最近、フォックス・ニューズの司会者タッカー・カールソンをツイッターで取り上げたことで叱責された。国防総省は、その曖昧で矛盾した指導で助けてはくれない。ホワイトハウスは最近、国会議事堂の暴動対応に関与した、ある将軍の昇進を拒否した。軍の上層部は政治化しつつある。軍は不正に(再)選出されたと思われる最高司令官(訳者註:大統領)の命令を拒否するだろうか?

アメリカ軍のより低い階級の将兵たちの間でもまた、政治的な分極化が進んでいる。アメリカ軍将兵の約3分の1が接種の命令を受けたが、コロナワクチン接種を拒否した。軍は彼ら全員を軍法会議にかけることはできない。もしこれらの軍隊が右翼民兵(right-wing militias)の鎮圧を命じられても、その代わりに民兵に加担することになるかもしれない。敵が分割統治(to divide and conquer)を望んでいるとするならば、私たちは既に彼らが望む分割を実現させている。

核心的な問題は構造的なものだ。国家化された二大政党制は、私たちを人為的に分断し、互いに対立させる。我が国の勝者総取りの選挙制度(winner-take-all election system)は、双方に存亡の危機(existential crises)をもたらし、双方は他方に対して深い不信感を抱くようになっている。どんなグループでも2つのチームに分け、互いに対立させ、賞金を総力戦にすれば、ゼロサム競争によって、敵か味方かという二項対立(binary)しか見ない脳の古代のスイッチが入る。これがアメリカ政治の「破滅へのループ(doom loop)」である。有権者の間でも、政治指導者の間でも、そして軍隊のような組織の内部でも、これが繰り広げられている。そしてそれは、外国の敵対者にとって格好の標的となるのだ。

しかし、破滅へのループから逃れることはできる。より流動的な取り決めで協力できる政党を増やすことで、二元論を打破し、安定(stability)を生み出し、二元論によるゼロサム競争を終わらせることができる。内紛(civil strife)を防ぐ鍵は、敵が永久に存在しないように、政治的配置を常に調整し続けることだ。これは政治学者たちが長年にわたって知っている真実である。連邦議会への公開書簡で、200人を超える民主政体を研究する学者たちが、二大政党制が「要求の変化や新たな課題に対応できない、深く分裂した政治システムを生み出した」と警告を発した。

3人以上の候補者の立候補を認める比例投票制度(proportional vote system)に移行すれば、新たな政党が形成され、次いで新たな連合が生まれ、過度な党派性による対立がもたらす膠着状態を打破することができる。重要なのは、この選挙制度の変更がアメリカ合衆国憲法改正を必要としないことだ。憲法第1条第4項は、アメリカ連邦議会に選挙規則を定める権限を与えている。

政党が増えれば不安定になると反対する人もいるだろうが、二大政党制(two-party system)は以前であれば安定していたが、今はそうではない。しかしそれは、二大政党制の中に重複する連合があったからに他ならない。ある意味では、20世紀のほとんどを通じて、隠れた四政党体制がアメリカでは構築されていた。リベラルな共和党と保守的な民主党が、保守的な共和党とリベラルな民主党と共存していた。この柔軟な四政党体制が1990年代半ばに崩壊し、硬直的で重なり合わない2大政党制になったことで、米国は外国の工作に対して脆弱になってしまった。対照的に、5つまたは6つの政党からなる適度な多党制度(multi-party system)は、連立の柔軟性と流動性を可能にし、政治が二元的で脆くならないようにすることができる。

過度な党派政治は国家安全保障上の最重要課題である。ロシアや中国のような外国の敵対勢力は、ウイルスが宿主を殺すように、私たちを打ち負かす戦略として、秘密裏に挑発的な偽情報を通じて分極化を煽っている。最終的には、私たちを分断させ脆弱にさせている硬直した二大政党制と選挙制度に対処することが解決策となる。しかし、2024年までに解決することはないだろう。国内の平和が崩壊すれば、それは軍の問題となる。軍があまりに分極化して機能しなくなれば、ロシアと中国の勝利に等しい危機を誘発するかもしれない。まだ少しは時間がある今のうちに、対処を始めた方がいい。

(貼り付け終わり)

(終わり)

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ビッグテック5社を解体せよ

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める
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 古村治彦です。

 現在、私が翻訳を行っているジョシュ・ホーリー著『ビッグ・テック5社を解体せよ』に関連する内容をこれからご紹介する。
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ジョナサン・カンター
 ジョナサン・カンター(
Jonathan Kanter、1973年-、48歳)は、ニューヨーク州立大学オルバニー校(State University of New York at AlbanySUNY)を卒業して学士号を取得し、その後、ワシントン大学法科大学院で法務博士号を取得し、弁護士資格を得た。キャリアを連邦取引委員会に勤務する弁護士としてキャリアをスタートさせた。その後は、いくつかの法律事務所に勤務し、2020年には自身の法律事務所「カンター・ラー・グループ(Kanter Law Group)」を開設した。

2021年7月20日に、ジョー・バイデン大統領は、カンターを独占禁止法担当司法次官補(assistant attorney general for the antitrust division)に指名した。10月6日には、連邦議会司法委員会で人事承認のための公聴会が開催された。現在の状況は、「未定(TBDTo Be Determined)」である。しかし、人事承認は確実視されている。

 カンターについては、日本経済新聞に簡潔にまとめられた記事が掲載されていたので、以下に貼り付ける。

(貼り付けはじめ)

米、巨大ITの追及緩めず 司法次官補に反グーグル弁護士

逆境の巨大IT

2021721 19:43 (2021721 21:13更新)

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN2101X0R20C21A7000000/

【ワシントン=鳳山太成】バイデン米大統領は20日、司法省の反トラスト法(独占禁止法)担当トップに米グーグルへの批判で知られる弁護士を指名した。米連邦取引委員会(FTC)のカーン委員長を含め、競争政策を担う主要ポストにはIT(情報技術)大手に厳しい専門家をそろえる。独禁法を厳しく執行する方向へ転換する姿勢を鮮明にした。

この弁護士は、司法省の反トラスト局を率いる次官補に指名されたジョナサン・カンター氏。就任には議会上院の承認が必要だ。

司法省とFTCは反トラスト法を共同で所管する。カンター氏が就けば、カーン氏と共に独禁当局ツートップを形成する。FTCは委員5人の多数決で意思決定するが、司法次官補は組織の長として大きな権限を持つ。

カンター氏は巨大IT企業に挑む弁護士として名をはせてきた。米メディアによると、米マイクロソフトや飲食店口コミサイト「イェルプ」の代理人弁護士として、競合であるグーグルや米アップルなどの不公正な慣行を訴えてきた。

カンター氏は自身が設立した法律事務所の代表を務める。「反トラストの権利擁護者」を自称し、活動家の側面を持つ。オバマ元政権で司法次官補を務めたビル・ベア氏は「尊敬される経験豊富な弁護士だ。全国民に対して自由市場経済を機能させるという(バイデン)政権の公約に取り組むだろう」と話す。

デジタル時代に沿うように反トラスト法の改正を求める声もあるが、現行法でも対応可能だというのがカンター氏の主張だ。202010月のイベントでは「私たちには法律がある。勢いよく情熱を持って定期的に執行しよう」と述べていた。

司法省は米国のIBM、マイクロソフトといった巨大企業を独禁法違反で提訴してきた。01年に発足した共和党のブッシュ政権(第43代)を機に、独禁法にからむ大型訴訟は途絶えた。カンター氏は独占や寡占に寛容な当局の姿勢をやり玉にあげてきた。

トランプ前政権の司法省は2010月、グーグルを独禁法違反の疑いで提訴した。カンター氏が就任すれば、23年にも公判が始まる久しぶりの大型訴訟を引き継ぐ。

バイデン氏は司法省の独禁法担当トップには穏健派を登用し、カーン氏のFTC委員長指名とのバランスをとろうとするとの見方もあったが、リベラル色を前面に押し出した。「巨大IT企業解体」を唱える民主党左派のウォーレン上院議員は「企業の強力な支配力を監視する戦いのリーダーだ」と、今回の人選を称賛した。

(貼り付けはじめ)

 上の記事にあるように、カンターは法律家(弁護士)としてのキャリアを連邦取引委員会(日本の公正取引委員会)から始め、その後はいくつもの法律事務所に所属しながら、中小企業の代理人として、グーグルやマイクロソフトとの訴訟を戦ってきた。今回、司法次官補となり、反独占禁止法違反容疑でビッグ・テックを捜査し、訴訟を提起するということになるだろう。

 バイデン政権の「ビッグ・テック解体」を目指す姿勢を示すのが、ジョナサン・カンターの指名である。今後は後2人のキーパーソンを紹介していく。

(貼り付けはじめ)

バイデンは、ビッグ・テックの批判者を司法省の独占禁止法担当部門責任者に指名(Biden to appoint Big Tech critic to DOJ antitrust role

クリス・ミルズ・ロドリゴ筆

2021年7月20日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/policy/technology/563923-biden-to-appoint-big-tech-critic-to-doj-antitrust-role

バイデン大統領は法律家のジョナサン・カンターを司法省の独占禁止法担当部門の責任者として指名する計画を持っている、とホワイトハウスは木曜日に発表した。これはバイデン政権のビッグ・テックとの対峙姿勢のもう一つのシグナルだ。

カンターの指名は、司法省と連邦取引委員会(FTC)に対しテクノロジー業界における反競争的行為の取り締まりを強化するよう求めてきた進歩主義的な各組織にとって、満足できる人事となった。

昨年、自身の法律事務所を立ち上げたカンターは、独占禁止法の執行機関にグーグルを訴えるように仕向けようとする企業の代理人を務めてきた。人事承認を得られれば、カンターは、独占禁止法担当司法次官補(assistant attorney general for the antitrust division)に就任することになる。今回の人事を最初に報道したのはブルームバーグだった。

「アメリカン・エコノミック・リバティーズ・プロジェクト」の上級部長サラ・ミラーは次のように述べている。「バイデン大統領は、司法省の独占禁止法担当部門の責任者に素晴らしい人物を選んだ。ジョナサン・カンターは経験豊富で、有能で、知的先見性を持っている。彼はバイデン政権下での独占禁止法に基づいた執行を確実に行い、それは労働者や中小企業、共同体のための仕事をしてくれるだろう」。

ミラーは更に次のように述べた。「高い能力を有する法律家(弁護士)として、カンターはキャリアを通じて、独占禁止法の執行の再活性化に取り組んできた。彼は、ビッグ・テックに対する主要な独占禁止に関する調査において、最も成功した法的議論を数多く展開してきた。彼は連邦議会の民主、共和両党から、さらに法曹界において多くの人々からの尊敬を集めている」。

エリザベス・ウォーレン連邦上院議員(マサチューセッツ州選出、民主党)はバイデンの指名を称賛し、カンターについて、「企業の統合的な力を抑制し、市場における競争を強化するための戦いにおけるリーダー」と評した。

民主、共和両党で50議席ずつを持っている連邦上院で人事承認が得られれば、カンターは連邦取引委員会委員長リナ・カーンとホワイトハウスの経済アドヴァイザーであるティム・ウーと共に、バイデン政権内のビッグ・テックに対して声高の批判を行う人々のグループに参加することになる。

今回のカンターの指名の前には、バイデンは競争促進を目的とした包括的な大統領令を発表した。大統領令の実行は、連邦取引委員会と司法省独占禁止法担当部門に大きく依存している。

連邦上院司法委員会反独占小委員会委員長は声明の中で、「カンターの司法分野における深い経験と積極的な行動を主張してきた経歴を見れば、司法省独占禁止法担当部門を率いる地位に彼を就けることは素晴らしい選択である」と書いている。

カンターが司法次官補に就任すれば、グーグルが検索およびオンライン広告の分野で、違法に独占的な地位を維持しているとする既存の訴訟を引き継ぐことになる。

フェイスブックとアマゾンは既にカーンに対して、自分たちを対象とした調査を中止するように求めている。カンターの過去の仕事を見れば、グーグルから同様の異議申し立てがなされる可能性がある。

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大企業の力に対峙するために、バイデンにはジョナサン・カンターが必要だ(To confront corporate power, President Biden needs Jonathan Kanter

モンダレー・ジョーンズ連邦下院議員(ニューヨーク州選出、民主党)

2021年4月21日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/blogs/congress-blog/judicial/549404-to-confront-corporate-power-president-biden-needs-jonathan

1980年代以降、企業の力はどんどん強まっていく一方で、独占禁止法を執行する連邦政府諸機関は、その責任をほとんど放棄し続けて現在に至る。このような企業の力の集中は、経済に対する脅威であるだけでなく、民主政治体制そのものへの脅威でもある。

連邦取引委員会(FTC)委員長にリナ・カーン、国家経済会議(NEC)の大統領特別補佐官にティム・ウーをそれぞれ指名することで、バイデン大統領は、企業に対して制つめ五責任を果たさせる準備ができていることを示した。彼の独占禁止法担当ティームの人事の仕上げとして、現在の独占禁止運動の主導者を、独占禁止法担当司法次官補に指名することが必要だった。その人物こそはジョナサン・カンターだ。

独占禁止法執行こそは、企業の力を抑制し、公正で包括的な経済を構築するために、連邦政府が持つ最良の手段の一つである。独占禁止法担当司法次官補の仕事は、現在の経済のルールを決めている現代の独占企業に対抗するための政権のアプローチを確立することである。連邦下院司法委員会独占禁止法小委員会の委員として、我が国の独占禁止法は、独占禁止法執行者たちくらいにしか効果的ではないということが分かっている。

これまでの数十年間、私たちは独占禁止法執行の重要性を痛い目に遭いながら学んできた。連邦政府は、大企業が自分たちに有利なように市場を操作するのを阻止できなかった。その結果、労働者、中小企業、消費者が犠牲になってきた。

大統領選挙候補として、バラク・オバマは「独占禁止法執行の再活性化」を公約として挙げた。しかし、オバマ政権は、アマゾン、フェイスブック、そしてグーグルのようなビッグ・テックの各企業が独占的な地位を確立することを阻止できなかった。アメリカン・エコノミック・リバティーズ・プロジェクトが明らかにしたように、オバマ政権は大企業の持つ力に挑戦する歴史的な機会を得ていた。しかし、オバマ政権の最高幹部たちのほとんどは、レーガン政権から始まった「大企業には手を出さない」アプローチから脱却しようとはしなかった。その結果として、2009年から2019年にかけて、五大インターネットプラットフォーム企業による400件以上の行買収に対して、1件も独占禁止法の執行は行われなかった。

驚くべきことに、オバマ政権は、独占禁止法の執行を難しくした面もある。2010年、取引委員会と司法省独占禁止法担当部門の両者は、企業統合を黙認するために、一部の合併ガイドラインを改訂した。法学教授であるダニエル・クレインは『スタンフォード・ラー・レヴュー』誌に掲載した論文の中で、これらのルールは、「(この種の)合併による集中は、以前の体制に比べて、独占禁止法の審査を受ける必要が出てくる」ということを示唆していると書いた。

2010年、司法省独占禁止担当部門は、ライヴネイション社とティケットマスター社の合併を承認した。両社はチケット販売とコンサート関連市場をそれぞれ支配していた。しかしながら、企業合併は単純に企業の力を統合することではあるが、独占禁止法担当省次官補はこの企業合併を承認した決定について、両社に対して一部資産の売却を認めることを条件に付けただけだった。この決定について「強力な独占禁止法の執行だったが、ハンマー(sledgehammer)ではなくメス(scalpel)を使っているだけのことだった」と評された。

同様に、オバマ大統領の連邦取引委員会は、2013年に反競争の行動について、グーグルに説明責任を果たさせることに失敗した。広範囲にわたる捜査の結果、連邦取引委員会のスタッフたちは、グーグルを独占禁止法で提訴すべきだと連邦取引委員会に働きかけたが、連邦取引委員会は訴訟の提起を拒絶した。

そして、当然のことだが、オバマ政権はフェイスブックがインスタグラムとワッツアップの買収することを阻止できなかった。フェイスブックは強力な競争相手となり得る存在を吸収することができた。

これまでのところ、バイデン大統領の独占禁止法関連の人事は、新しい、より希望に満ちた道筋を描いている。バイデン大統領は、優れた独占禁止法執行の主導者であるリナ・カーンを連邦取引委員会委員長に指名することで、新しい経済のために強固な独占禁止法の執行を刷新することを決心したことは明らかだ。また、技術・競争政策のアドヴァイザーとしてティム・ウーを起用したことで、バイデン大統領は新しい進歩主義時代の到来を認識していることを示した。今回の人事により、バイデン大統領は、すべての人に恩恵をもたらす経済を実現するために必要な、勇気ある指導力を発揮している。

独占禁止法担当ティームの性格が大きく変更されつつあるが、その変更を完成させるためには、バイデン大統領はジョナサン・カンターを独占禁止法部門担当司法次官補に任命すべきだ。カンターが司法の世界で最初にインターンとして働いたのが連邦取引委員会だった。それ以来、カンターは集中した企業の力に対峙することでキャリアを過ごしてきた。 連邦取引委員会の競争担当部で弁護士として働いていた時、カンターは、統合による危機を生み出した大企業の合併に異議を唱えた。現在、司法省は最近では最も重要な独占禁止法違反容疑の訴訟である、アメリカ合衆国対グーグルの訴訟を抱えている。独占禁止法担当部門は、創造性を持ち、訴訟における法理論を構成するために努力を惜しまない人物に率いられるべきだ。アメリカとヨーロッパでは、独占禁止法執行部門は、現代の独占巨大企業に対する最も厳しい訴訟に勝つためには、ジョナサン・カンターから助言を受けねばならない。法律関係の出版において、ジョナサン・カンターが独占禁止法に関する指導者として繰り返しトップにランク付けされる理由はここにある。

最も重要なポイントだと思われるのは、カンターはキャリアを通じて、今の時代に必要な政治的勇気を持っていることを示していることだ。カンターは、私たちがテクノロジー産業のプラットフォーム提供巨大企業の力を再認識する数年前にすでに、グーグルがテレビ業界を支配することに警鐘を鳴らしていた。2018年に連邦上院で証言を行った際、カンターは「集中した経済力は、集中した政治力と同様に、自由に対する大きな脅威となり得る」と強調した。また、自身の法務活動を通じて、競争を促進するために苦しい戦いを強いられている中小企業を代理してきた。今こそ、私たちのために考えてくれる、独占禁止法執行者が必要とされているのだ。

次期独占禁止法担当司法次官補(assistant attorney general for the Antitrust Division)は、チェックを受けない大企業の力こそが問題だ、その解決のためには大企業の力と対峙しなければならないと認識する人物が就任しなければならない。アメリカの歴史が示しているのは、司法省独占禁止法担当部門においては、真の反独占主義者が責任者に就くことで、アメリカの働く人々と小規模業者たちに大きな利益を与えることができるということだ。バイデン大統領がフランクリン・デラノ・ルーズヴェルト大統領の足跡を負いたいと望むならば、問題の当事者ではなく、解決の当事者でもある人を選ぶ必要がある。

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バイデンは独占禁止法担当人事でテクノロジー企業に対する厳しい姿勢を示す(Biden signals tough stance on tech with antitrust picks

クリス・ミルズ・ロドリゴ、レベッカ・クレアー筆

2021年7月24日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/policy/technology/564612-biden-signals-tough-stance-on-tech-with-antitrust-picks

バイデン大統領によるジョナサン・カンターの独占禁止法担当司法次官補指名は、アメリカ最大のテクノロジー企業の解体(break up)を目指す進歩主義派の運動に支持される、予想外の一連の人事が完成したことを意味する。

カンターと共に、バイデン政権はリナ・カーンを連邦取引委員会(FTC)委員長に就任させ、ティム・ウーをホワイトハウスの補佐官に指名した。

3名の人事は、バイデンの反独占禁止法の再活性化と独占に対する挑戦の意図を示すものだ。

最近盛り上がりを見せている独占反対運動の主要な団体であるアメリカン・エコノミック・リバティーズ・プロジェクトの政策・アドヴォカシー担当部長モーガン・ハーパーは、

「今回の指名は、バイデン大統領が強力な独占禁止法執行と優れた競争政策を持つことにどれほど真剣に取り組んでいるかを示す、極めて重要な一歩である」と述べている。

ハーパーは続けて次のように述べている。「問題をよく理解しているだけでなく、経済で起きている多くの問題を解決するための政策に積極的に取り組むという実績を持つ人々を見ることは興奮することです」。

カンターは、独占禁止法専門弁護士として中小企業を代理していた時代に、長年にわたり巨大ハイテク企業を批判してきた。

イェルプやマイクロソフトを含む、グーグルの反競争的な行為を非難する企業の代理人をカンターは務めてきた。司法省が検索エンジン大手のグーグルに対して現在進行中の独占禁止法違反訴訟を抱えていることを考えると、カンターの指名は特に重要な意味を持つと考えられる。

カンターとカーンの両者の独占禁止法に関する考えを現実化するためには、訴訟が重要な道具立てということになる。

カーンが率いる連邦取引委員会は、今年6月に最初の訴訟が棄却された後、フェイスブックに対する訴訟で、訴状の修正版を提出する期限が今月末に迫っている。

この訴訟のターゲットは、フェイスブックが以前に買収したワッツアップとインスタグラムである。

訴訟以外にも、連邦取引委員会は新しい規則を発行したり、報告書を作成したり、公聴会を開いたりして、経済の様々な分野での集中に注意を喚起することが可能である。

カーンは、連邦取引委員会委員長に就任してから、今月2回の公開ミーティングを開催するなど、すでにいくつかのステップを踏んでいる。

連邦取引委員会は今週、消費者保護団体にとって重要な課題である、「修理を行う権利」に関する諸法を施行することを全会一致で決議した。

カーンは会合の席上、次のように述べた。「連邦取引委員会は、違法な修理制限を根絶するために利用できる様々な手段を保有しており、本日の政策ステイトメントは、この問題を新たな勢いで前進させることを約束するものだ」。

この政策ステイトメントは、連邦取引委員会が直面している、論争の少ない投票の一つとなった。連邦取引委員会は今年5月、この問題についての長文の報告書を発表した。この報告書に関しては、その当時に委員会に在籍していた4名の委員全員が賛成票を投じた。

しかし、消費者金融保護局の責任者に指名されたロヒット・チョプラ委員長の後任をバイデン氏が指名する時期によっては、他の施策の可決が難しくなる可能性がある。

例えば、水曜日の会合の席上、連邦取引委員会は、1995年に出された政策ステイトメントを取り消すことを3対2の賛成多数で決議された。この政策ステイトメントでは、過去の合併で法律に違反した企業に対して、今後の合併の際には連邦取引委員会の事前承認を得ることを義務付けるという慣行が廃止された。

カーンは、会議において、1995年の政策によって「追加的な負担」がもたらされ、「すでに窮地に立たされている資源を使い果たしてしまう」と主張した。共和党側の委員たちは1995年の政策ステイトメントの取り消しは「不確実性をもたらす」と主張した。

今月初めの、カーンが委員長となって開催された最初の会議において、共和党側の委員2名は同様に反対票を投じた。これは、既存の独占禁止法に違反していない「不公正な競争方法」に異議を唱えることを封じる2015年の方針声明を廃止する投票について、反対したのだ。

新たに指名された人物たちはホワイトハウスから完全な支援を受けていることが明らかだ。

バイデン大統領は今月初め、各産業分野における反競争的行為を取り締まることを目的とした包括的な大統領令を発表した。ホワイトハウスが発表したファクトシートによると、この大統領令では、司法省と連邦取引委員会が「過去の悪質な合併に異議を唱える」ことが法律で認められていることになった。

ハーヴァード大学ケネディ記念行政学大学院教授でオバマ大統領の経済アドヴァイザーを務めたジェイソン・ファーマンは「バイデン大統領は個人的に、競争に関する諸問題について大いに関心を持っている。連邦取引員会の動きはこれに同調している」と述べている。

米国の消費者が電子機器や自動車を自ら修理できるようになるが、メーカー側はこれについて引き続き反発している。連邦取引委員会は、修理する権利の投票などバイデン大統領の命令で示された提言に沿って、すでにいくつかの行動を起こしている。

カンターは、バイデンの命令を司法省で実現するために、指名プロセスを通過しなければならない。

カンターの指名は、連邦上院司法委員会独占禁止法小委員会委員長であるエイミー・クロウブッシャー連邦上院議員(ミネソタ州、民主党)やエリザベス・ウォーレン連邦上院議員(マサチューセッツ州、民主党)などの連邦上院民主党の主要メンバーから絶賛された。

カンターの人事承認は、民主党側の賛成票だけで進めることができるが、マイク・リー連邦上院議員(ユタ州選出、共和党)もカンターに前向きな姿勢を示している。

連邦上院独占禁止法小委員会共和党側幹部委員であるマイク・リー議員は本紙の取材に対して声明で次のように述べた。「カンター氏のビッグ・テックと対峙してきた経歴を見て、私は彼に賛成票を投じることを考えている。私は人事承認プロセスを通じて、彼の適格性についてより多く学べることを楽しみにしている」。

バイデンが指名した人々が共有している独占禁止についての考えの実現を確実にするためには連邦議会の存在も重要になる。

前述のファーマンは次のように述べた。「しかし、重要なポイントは、リナ・カーンとジョナサン・カーンが司法システムの内部に入ってしまったことだ。ほとんどの問題について、最終的には彼らが判断するのではなく、裁判官が判断することになる。従って、彼らは自分たちの考えをそのまま実現することはできない」。

連邦下院司法委員会は先月、独占禁止法を改善し、規制当局が最大規模のテクノロジー企業を攻撃しやすくすることを目的とした法案の審議を進め、本会議の審議のために上程した。

しかし、司法委員会での投票は、民主党内の分裂を浮き彫りにし、連邦下院での可決のチャンスをふいにする可能性があった。特に、穏健派の指導者たちは、いくつかの法案に懸念を表明している。

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める

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