古村治彦です。
6月27日の大統領選挙候補者討論会が終わり、週末を過ぎて、各種世論調査の結果が出始めている。予想通り、トランプがバイデンを上回る数字が出ている。民主党が優勢の東部ニューハンプシャー州の最新の世論調査では、トランプがバイデンをリードしているという結果が出た。激戦州のペンシルヴァニア州でもトランプがリードという結果が出た。トランプが全体でリードしている。しかし、支持率の差が大きくないというところが気になる。
ニューハンプシャー州では2ポイント、ペンシルヴァニア州では4ポイントとなっている。トランプはどうしても嫌だという有権者が存在することを示している。
これまで、討論会は民主、共和両党の全国大会が夏に開かれ、正式に候補者が決められた後、9月頃から複数回にわたって開催されるのが通例だった。今回は民主、共和両党の候補者が実質的に決まっていたこともあり、この早い段階での開催となった。討論会前まで、トランプがわずかだがリード、バイデンが追い上げるという展開だった。民主党、バイデン政権としては、今回の討論会で逆転の足掛かりをつかむはずだった。しかし、それはものの見事に失敗した。討論会の前に、「討論会を行うことが失敗だ。トランプに対して優位を見せつけること自体が難しい」という声があったが、この声が正しいことが証明されえる結果になった。
バイデンとトランプの人物を対比させることで、バイデンを引き立たせようという目論見もあったが、トランプが意外におとなしかったが、元気を見せていたということで、これも空振りに終わった。
民主党はバイデンで選挙戦を突っ走ろうという構えのようだ。これに対しては、党内からも怒りの声、批判の声が沸き上がるだろう。全国大会前に全国委員会で、バイデンを党の正式な候補者に決めてしまおうという動きが出ている。これを強行すれば、党大会で反対派が激しい抗議活動を行い、1968年のシカゴでの全国大会と同じような混乱となるだろう。奇しくも今年の民主党全国大会もシカゴで開催される。流血の混乱が再び発生するかどうか注目される。
(貼り付けはじめ)
トランプとの討論会がターニングポイントとなることをバイデンは求めている(Biden
seeks turning point in debate vs. Trump)
アレックス・ガンギターノ、アル・ウィーヴァー筆
2024年6月20日
『ザ・ヒル』誌
https://thehill.com/homenews/campaign/4732184-biden-trump-first-presidential-debate/
ジョー・バイデン米大統領とドナルド・トランプ前大統領が木曜日の討論会のステージで激突する。今回の討論会は、ホワイトハウスを目指すレースにおいて、極めて重要な瞬間となるだろう。
有権者の間での熱意は低いにもかかわらず、連邦議員や専門家たちは、アメリカ国民は木曜日の討論会に大いに注目するだろうと予測している。より良いパフォーマンスを見せた人物が、レースが最終段階に進むにつれて大きな勝利を掴む可能性がある。
両候補ともに、年齢や性格に関連した問題から、公職に適しているかどうかについて有権者からの深刻な疑問に直面している。各激戦州の世論調査でトランプにリードされているバイデンは特に、形勢を変える瞬間を必要としている。
シェリー・ムーア・カピト連邦上院議員(ウェストヴァージニア州選出、共和党)は、「非常に重要になると思う」と語った。
カピト議員は、「私たちは他の候補者たちでもこのようなことを見てきた。質問に正しく対処できなかったり、発言を間違えたりする。あなたの答えはかなり重大なものなので、これはかなり一か八かの賭けになる」と述べた。
バイデンとトランプは木曜日の討論会参加資格の要件を正式に満たした。独立候補のロバート・F・ケネディ・ジュニアは資格を逃し、最初の討論会はまさに2020年の大統領選挙候補者討論会の再現となった。
バイデン(81歳)とトランプ(78歳)が世論調査ではほぼ互角の状態で討論会に臨むことになり、この討論会の重要性を際立たせている。
「超党派政策センター」の大統領史専門家テヴィ・トロイは、今回の討論会に対するアメリカ人は熱意が低いが、各候補者の精神的な適性を判断することに人々は注目するだろうと述べた。
トロイは、「たとえ人々が候補者たちに熱意を示さなかったとしても、ステージ上で破綻(meltdown)が起きないかを見たいのだ。そして、破綻には2つのタイプがあると考えられる。トランプが怒りによって破綻する可能性があり、バイデンは年齢によって破綻する可能性がある」と述べた。
木曜日の大統領選挙候補者討論会は、1984年以降では、大統領選挙候補者討論委員会が主催しない初めての討論会となる。そして、今回よりも前となると、1960年に委員会が創設されて以降で、9月下旬まで本選挙のテレビ討論会が開催されたことはなく、木曜日の会談はまさに未知の領域での出来事となり、バイデンとトランプの再戦がどのようになるか、人々に疑問を抱かせている。
ティム・ケイン連邦上院議員(ヴァージニア州選出、民主党)は「それは未知数だ」と述べ、期日前投票(early voting)のせいで、討論は予定より早い時期に進められることになったと付け加えた。ケイン議員は、ヴァージニア州では9月中旬に期日前投票が始まる数か月前に、知事選挙と上院議員選挙の討論会が7月に開催されると指摘した。
ケイン議員は続けて、「10月に討論会を開くのはあまり意味がない。期日前投票を行う州に合わせて、カレンダーを早める必要がある」と述べた。
また、来週と9月の2回しか、討論会が開催されないという事実からも関心が高まっていると指摘する人たちもいる。副大統領討論会も開催される予定だが、その重要性は、最も重要なイヴェントに比べると通常は薄れる。
ジョー・クロウリー前連邦下院議員(ニューヨーク州選出、民主党)は、「候補者が2人しかいないこと、そして両候補の心構えについての議論や話を考えると、人々はバイデンのパフォーマンスを見たい、トランプがどれだけクレイジーになるかを見たいと考えていると思う。したがって、今回の討論には、大きな関心が集まるだろう」と語った。
ニューヨークの口止め料裁判(hush money trial)で、トランプ前大統領が有罪判決を受けた後も、バイデンはトランプに対して、数字を詰めることができておらず、必要とされている世論調査の伸びを得なければならないという圧力を受けて討論会に臨む。エマーソン大学とザ・ヒルの共同の最新世論調査では、判決を受けて以降、主要な激戦州ではトランプが僅差でリードしており、ディシジョンデスクHQとザ・ヒルの各世論調査集計によると、トランプ前大統領がバイデン大統領を0.6ポイント上回っているということになっている。
CNNのヴァン・ジョーンズは木曜日、今回の討論会はバイデンの負けであり、選挙全体を左右する可能性があると主張した。
ジョーンズは次のように述べている。「私に関する限り、これが選挙の全てだ」と彼は言った。「なぜなら、バイデンが外に出て失敗したら、ゲームオーヴァーだからだ。彼がその場を去って、1週間後に世論調査で数字が下がったら、党内はパニックになる。しかし、もし彼が討論会に参加して、暴走列車、機関車、荒れ狂う雄牛のドナルド・トランプに対して自分自身をうまくコントロールして対処できるならば、バイデンには再び大統領になる資格があるということになる。なぜなら、そのような行動は困難であるからだ」。
視聴者数については賛否両論あり、カピト議員のように、2016年のトランプ大統領とヒラリー・クリントン元国務長官の初討論に匹敵するほどの「大勢の聴衆(huge audience)」が集まると予想する人もいる。
トロイのように、TikTokやソーシャル・プラットフォームXなど、アメリカ人が討論会の良いところにアクセスできる他の方法があるため、他の討論会に比べて数字が低い可能性があると主張する者もいる。
トロイは、「今、素晴らしい瞬間があるとか、失言(gaffe)があるとか、破綻があるなどすれば、たとえ生で見ていなくても、誰もがソーシャルメディアを通じてそれを見ることができる。たとえ視聴者数が少なくても、リーチはより大きいと思う」と述べた。
有権者の考え方を変えるという点での討論会の重要性については、政界でも決着のついていない議論があり、専門家たちは、歴史の主要部分となった討論会もあれば、選挙サイクル全体の中では大失敗に終わった討論会もあると指摘している。
前述のトロイは「議論会が実際にどれほどの頻度で重要になったかという一般的な疑問がある。レースには、レースで何が起こるかを決定する構造的な要素があり、討論会で物事を変えることができるだろうかと疑問に思っている」と述べている。
トロイは、ミット・ロムニー連邦上院議員(ユタ州選出、共和党)が2012年にオバマ前大統領との初討論会で素晴らしい勝利を収めたが、結局その選挙戦では敗北したと指摘した。一方で、ロナルド・レーガン元大統領がウォルター・モンデール元副大統領の「若さと経験不足(youth and inexperience)」に「付け込む(exploit)」しないと発言して話題となった1984年の討論会など、討論会が重要な時期は他にもあった。
それにもかかわらず、木曜日の討論会は民主、共和両党の全国大会に先立って行われる、選挙戦にとっての最初の重要な瞬間であることに変わりはない。
エリザベス・ウォーレン連邦上院議員(マサチューセッツ州選出、民主党)は本誌に次のように語った。「今回の討論会は大きい。見られることを喜んでいる。私たちは両党の候補者が誰になるかを知っている。彼らに直接対決させるのは良い試みだ。私は全面的にそれに賛成だ。良いことだと思う。彼らに議論してもらい、それを見ることにしよう」。
ウォーレン議員は、早期のイヴェントは「誰もが、ドナルド・トランプがドナルド・トランプであることを間近で見る機会」を与えることになるので、バイデンの再戦にとって有益だと主張した。
「それが今度の選挙で最大の争点になると思う」とウォーレンは語った。
ウォーレンは続けて「この2人がどのような人物なのか、もう一度皆さんに思い出して欲しい。それがこの討論会で明らかになるであろうものであり、まさに彼らが芯の部分でどのような人物なのかということが分かるだろう。私はこれについてかなり楽観している」と述べた。
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ロバート・F・ケネディ・ジュニアはCNN主催の討論会のステージに立てず憤慨(RFK Jr. lashes out after failure to make CNN debate stage)
ジュリア・ミュラー筆
2024年6月20日
『ザ・ヒル』誌
https://thehill.com/homenews/campaign/4731707-rfk-jr-lashes-out-failure-make-cnn-debate-stage/
ロバート・F・ケネディ・ジュニアは木曜日、6月27日の討論会がジョー・バイデン大統領とドナルド・トランプ前大統領の直接対決になるとCNNが発表したことを受けて、激しく非難した。CNNは、無所属のホワイトハウスに向けたレースの有力候補をステージから外した。
ケネディは陣営の発表した声明の中で、「バイデン、トランプ両大統領は、私が討論会の舞台に立つことを望んでおらず、CNNは彼らの要求に不法に同意した。バイデン大統領とトランプ大統領による私の討論会からの排除は非民主的で、非アメリカ的で、卑劣だ」と述べた。
バイデンとトランプだけが、大統領選挙のサイクルの最初となる来週の大統領討論会への正式な出場資格を獲得したとCNNは木曜日に発表した。
ケネディはこの討論会の参加資格獲得を目指して奔走していたが、期限を前にして、バイデンとトランプが既にクリアしている、世論調査と代議員数の基準を達成する可能性は低いと見られていた。
CNNは、ジェイク・タッパーとダナ・バッシュが司会をする、今回の討論会に参加する条件として、候補者が4つの全国世論調査で15%の支持を獲得し、総選挙人投票数270(大統領当選に必要な最低数)を獲得するのに、十分な場所(全州とワシントンDC)に宣言された候補者として登場することを要求した。無所属として、ケネディは各州で投票用紙に名前を記載してもらえることに関して、上り坂を経験してきた。
ケネディは、CNNがバイデンとトランプと「共謀(colluded)」して、ケネディをステージから遠ざけたと主張して、連邦選挙委員会(FEC)に告発状を提出しており、ケネディ陣営は木曜日、CNNのバイデンとトランプの討論会は「明らかな連邦選挙法違反()a clear
violation of federal law」であるとの主張を繰り返した。
ケネディ陣営は木曜日に声明を発表し、その中で次のように述べている。「もし討論会がケネディなしで進められた場合、ケネディ陣営は、このような非民主的で非アメリカ的な(undemocratic and un-American)行為が今後二度と起こらないようにするため、この違法行為に対する裁きを得るために必要な限り、この問題を追及するつもりである」。
本誌は、ケネディ大統領の発言についてCNNにコメントを求めた。
それぞれの党の候補者とされるトランプとバイデンは、来週、2020年の選挙戦の再選を行う予定となっている。前回の選挙戦での2人の候補者間の討論は、侮辱、中断、司会者との衝突によって特徴づけられた。
ABCは9月10日に第2回討論会を主催する予定だ。
(貼り付け終わり)
(終わり)

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