古村治彦(ふるむらはるひこ)の政治情報紹介・分析ブログ

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タグ:証人喚問

 古村治彦です。

 

 今回は、2017年3月23日の籠池泰典の国会での証人喚問と外国特派員協会での会見を受けての、イギリスの『ザ・ガーディアン』紙の記事の内容をご紹介します。

 

 記事の内容は、籠池氏が国会の証人喚問でも述べた、2015年9月に安倍昭恵首相夫人に塚本幼稚園で講演をしてもらった際に、夫人が封筒に入った100万円を「安倍晋三からです」と言って籠池氏に渡したという主張をしており、政府側はそれを否定しているというものです。

 

 欧米では、宣誓証言を重要視します。彼らはキリスト教文化で、「内面で神と向き合う」ということを重視し、神に対して嘘をつくかどうかということをとても気にします。ですから、宣誓をしての証言で嘘をついてはいけない、だから嘘をつく可能性は低いと考えます。この記事でも、「籠池氏は宣誓をした上で証言をしており、彼の発言内容が重要性を増す可能性が高まる」と書いています。宣誓証言というのはそれほど重いものです。

 

 ですから、宣誓をした上での証言とそれ以外では重みが全く違うということを理解しなければなりません。

 

 政府は3月24日の参考人招致で幕引きをしたいと考えているようですが、そう簡単なことではありません。登場人物がどんどん増えてしまっている今、重要な人物たちには是非、国会で宣誓をして証言をしていただきたいと思います。私が一番話をしてもらいたいのは、森友学園の代理人をしていた酒井康生弁護士です。籠池氏の話を聞きながら、今回の森友学園の土地取引や学校建設で一種のスキームを作ったのは財務省近畿財務局とこの酒井弁護士ではないかというのが個人的な感想です。

 

(貼り付けはじめ)

 

安倍晋三首相と首相夫人が超国家主義を標榜する学校に現金を渡したと追及された(Shinzo Abe and wife accused of giving cash to ultra-nationalist school

 

幼稚園の運営者が、「安倍昭恵夫人がこれは夫からだと言いながら100万円を手渡した」と証言

 

ダニエル・ハースト(東京)筆

『ザ・ガーディアン』紙

2017年3月23日

https://www.theguardian.com/world/2017/mar/23/shinzo-abe-wife-akie-accused-giving-cash-ultra-nationalist-school?CMP=share_btn_tw

 

日本の首相と夫人は超国家主義の教育方針を採用している幼稚園を巡るスキャンダルの渦中にいる。このスキャンダルの中心人物が宣誓した上で、首相夫妻から秘密の寄付を受けたと主張した。

 

幼稚園の運営者は国会で安倍昭恵総理大臣夫人から、100万円(7100ユーロ)が入った封筒を渡され、これは安倍晋三からですと首相夫人は言ったと証言した。日本政府はこの証言内容を否定している。

 

森友学園理事長籠池泰典氏はまた、学校を開設しようとした大阪の国有地が大幅な値引きをされたことに関しては「おそらく」政治的な影響力が働いたと語った。

 

今回のスキャンダルは既に安倍政権の支持率にも影響を与えているが、そもそも始まったのは、森友学園が評価額の7分の1の価格で土地を購入したことが明らかになったことからであった。

 

安倍首相は土地取引には一切関与していないし、もし個人的にかかわっていることが明らかになったら首相を辞任すると述べた。昭恵夫人はもともと開校予定の学校の名誉校長に予定されていた。しかし、今回の論争が始まって辞任した。

 

籠池氏は次のように主張している。2015年9月に安倍昭恵夫人が幼稚園で講演を行った時、籠池氏は封筒を受け取った。伝えられるところでは、籠池氏と昭恵夫人は部屋の中で2人だけになったということだ。

 

籠池氏は木曜日の国会の委員会で次のように語った。「奥様は、“どうぞ、これは安倍晋三からです”と仰いました。そして、100万円が入った封筒をくださいました。安倍夫人はこのことについて全く覚えていないと言っておられますが、これは私たちにとって大変名誉なことですから、私はこのことをきわめてはっきりと覚えております」。

 

先週、安倍首相は寄付をしたという話をきっぱりと否定した。しかし、籠池氏は、国会で宣誓した上で、寄付を受けたという話を繰り返した。そのため彼の発言は重みを増す可能性が高い。籠池氏は偽証をした場合には罪に問われることになる証人喚問を受けた。これは5年ぶりのことであった。

 

菅義偉官房長官は木曜日、再び寄付をしたという話を否定した。そして、主張の食い違いを解消するために安倍昭恵夫人が証言を行うことを求める可能性はないと断言した。

 

菅官房長官は記者団に対して「法的な問題とはならない行動についてある人物を喚問することには慎重でなければならない」と語った。

 

籠池氏は日本会議と関係を持っている。日本会議は愛国主義を標榜するロビー団体で、彼らはアメリカが起草した平和主義的な日本国憲法の改定を主張している。日本会議には、安倍晋三首相と安倍内閣の大臣10人以上がメンバーとして参加している。

 

木曜日の夕方、外国特派員協会で行った会見の中で、「素晴らしい仕事をしている」と確信していた首相に対して、厳しい発言をする決意をしたのはどうしてか、その理由について次のような示唆を与えた。

 

籠池氏は、自分は土地の確約売却を巡るスキャンダルで「スケープゴートとして使われ」たくないし、安倍夫妻が森友学園の教育哲学を支持する旨のメッセージから離れたことを怒っていると述べた。

 

籠池氏が経営する幼稚園は、園児たちに皇室の人々の写真の前でお辞儀をすること、毎日国歌を歌うこと、1890年に出された国家のために自身を犠牲にすることを強調した教育勅語を学ぶことを必修としていることで、人々の関心を集めている。この幼稚園の元園児の保護者たちは大阪府に対して、虐待と人種差別があったとし調査をするように求めている。

 

麻生太郎財務大臣は、土地の値段が9億5600万円から1億3400万円に引き下げられたことについて、これは土地に含まれていた産業廃棄物を除去するコストを除いたものだと述べた。しかし、建設コストに関する論争が起きている中で、学校の開校計画は撤回された。そして、財務省は土地の買い戻しを計画している。

 

防衛大臣稲田朋美は、弁護士時代の2004年に行われたある訴訟で森友学園の代理人をしていたことを国会で否定していたが、先週、それが誤りであったことを認め謝罪した。稲田大臣はこのために騒動の渦の中に巻き込まれている。

 

今月になって各社が発表した世論調査の結果では、内閣の支持率は3%から10%の間で下落した。しかし、それでも約50%は維持している。衆議院議員の任期(総選挙)は来年である。

 

(貼り付け終わり)

 

(終わり)








 

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 古村治彦です。

 

 昨日、森友学園理事長・籠池泰典氏の国会衆参両院での証人喚問が行われました。一民間人をいきなり証人喚問する、しかもその理由が総理大臣を侮辱したからという自民党の姿勢には驚くばかりです。

 

 この自民党の姿勢も含めて、現在、森友学園を巡るスキャンダルでは、「忖度(そんたく)」という言葉がよく出てきます。忖度の意味は、「他人の心を推しはかること」と辞書にはあります。しかし、現在、森友学園スキャンダルで使われている忖度は、「自分の上位者や依頼者の気持ちを推しはかり、その気持ちにかなうであろうと思われる行動を、直接的に何も言われなくても先回りして行う」という意味です。

 

 昨日、籠池氏は国会での証人喚問の後、外国人特派員協会での記者会見に臨みました。そこで、外国人記者や日本人記者から様々な質問を受けました。日英両方に長けた方が通訳をされていましたが、この方が困ってしまったのが忖度という言葉の訳でした。この方は、「conjecture」「read between lines」という表現を使っておられました。とっさの場合にどう説明するか、どう訳すか、ですが、忖度という言葉はとても難しいなぁと感じました。しかし、これらの言葉では忖度の持つ豊かな意味早くしきれていないなとも感じました。


 

 私はこの言葉について、英語のメディアではどのように伝えているのか気になって調べてみました。すると、『ニューヨーク・タイムズ』紙東京支局長のマーティン・ファクラー(Martin Fackler)氏が素晴らしい説明をしていることを知りましたので、是非ご紹介したいと思います。

 忖度という言葉の意味の説明は、ファクラー氏が2016年に外交専門誌『フォーリン・ポリシー』誌に発表した論稿の中で行われています。2016年5月27日付の記事でタイトルは、「日本の自由な報道が沈黙している(The Silencing of Japan’s Free Press)」です。記事の内容は、第二次安倍晋三内閣の成立以降、日本の報道機関が政府批判を弱めているというものです。

 

※記事のアドレスは以下の通りです↓

http://foreignpolicy.com/2016/05/27/the-silencing-of-japans-free-press-shinzo-abe-media/

 

 忖度の説明の部分をまず引用したいと思います。

(引用はじめ)

 

According to Torigoe, the result has been a form of self-censorship that Japanese journalists call sontaku, a term with no exact English translation but that refers to a Japanese social strategy of trying to please others, usually superiors, by preemptively acting in accordance with their perceived whims.

 

(引用終わり)

 

 この部分を私なりに訳してみますと次のようになります。「鳥越俊太郎氏は、その結果として、一種の自己検閲、日本のジャーナリストたちが「忖度(sontaku)」と呼ぶ状態が起きている。忖度には正しい英語訳が存在しないが、日本の社会的な戦略で、他の人、たいていの場合は上位者を喜ばせようとするものだ。その方法は、上位者たちの気まぐれな希望を知覚してそれに沿うように先回りして行動するというものだ」。

 

 昨日、この忖度について質問したのは、ニューヨーク・タイムズ紙の記者の方でしたが、ファクラー氏から助言を得れば、忖度についてより理解ができたのではないかと思います。これほど忖度についての完璧な英語での説明はないように思います。

 

 私はアメリカの大学で政治学を学びましたが、少しお手伝いも兼ねて、日本政治の授業にも出席したことがあります。その時にも「天下り」とか「根回し」といった言葉が日本政治の一面を説明するために出てきました。そして、宿題として、日本政治の授業で出てきた単語の意味の説明と重要性をまとめるという課題が出されていました。私も日本人の端くれとしてこの宿題に挑戦してみましたが、なかなか大変でした。それでも何とかやってみました。以下にその時の私なりの説明を掲載します。ご笑覧いただければ幸いです。

 

(貼り付けはじめ)

 

Amakudari (“descend from heaven”)

 

(1)The bureaucrats who are between the ages of 50 and 55 move from government to powerful positions in private enterprise, banking, the political world, and the numerous public corporations. This phenomenon is called as amakudari. This word shows that bureaucrats think themselves as higher position or rank than private sector or political arena.

 

(2)This mechanism shows the increase of bureaucratic influence over Japanese society. For example, in general, the Japanese enterprises do not seek the maximum profit. This is influenced by the former-bureaucrats in them. To bureaucracy, they can receive the compensations and young bureaucrats can get the high positions. To non-governmental sector, they can receive the talented, experienced, and intelligent people.

 

=====

 

Nemawashi (“behind-the-scenes consultation”)

 

(1)The term, Nemawashi originally refers to the process of trimming the roots around a tree before transplanting. Steven Reed uses this term to explain why companies obey the administrative guidance from ministries. In observations of some scholars (Richard Samuels, Daniel Okimoto), the Japanese government is not strong. The companies are in competition. At the same time, companies want to avoid the excess competition. The government plays the mediator role and arranges the numerous informal negotiations with companies. Through the negotiations, the government produces the solution and the companies obey the guidance.

 

(2)Nemawashi is used to explain one character of Japanese culture (harmony, or effort to avoid the disputes). In Japan Inc. model, Nemawashi refers to the cooperative business-government relationship. The government is not strong and can not impose a solution on companies. Companies want to make compromise to avoid the excess competition. As the result, the government and business sector have the relationship and control the competition. There are negotiations and trust between the government and the business sector. It contributes to stability.

 

(貼り付け終わり)

 

 こうした日英文化間の狭間にあるような言葉に出くわすと、故ベネディクト・アンダーソンが「翻訳は大変に重要な作業なのだ」と述べたことが思い出されます。
 
 

(終わり)









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