古村治彦です。
アメリカや日本で中国脅威論が盛んに主張されるようになって久しい。その派生で、中国崩壊論、中国経済失速論、米中戦争論、日中戦争論なども多く語られている。これらの主張は人々の耳目を引きやすく、本にしても売り上げが良いので、「麻薬」のようになっている。「麻薬」は出版社にとっては、出版不況の中で、売り上げが良いとなるとどうしてもそういう極端な、派手な主張の本が多くなるということを意味する。そして、生活が苦しく、その不平不満を政治に向けるのではなく、外国に向けることで解消する人々にとってはこれらの本を読むことは娯楽の一種となっている。出版社と国民にとっての「麻薬」「アヘン」ということになる。
第一次ドナルド・トランプ政権、ジョー・バイデン政権、第二次ドナルド・トランプ政権で継続されているのは、中国に対する敵内的な通商政策である。中国に対して高関税を課すことで、中国製品の流入を止め、アメリカ国内の製造業を復活させるということは第一次トランプ政権から行われている。米中間では、米中貿易戦争、関税戦争という状態になっている。中国はアメリカに対抗し、レアアースの規制で対抗し、トランプ大統領は中国への攻撃を止めるということになった。アメリカは製造業の復活もできず、重要な資源の管理もできていないという点で、既に旗色は悪くなっている。
それでも下記論考のように、アメリカが西側諸国を取り込んで、対中包囲網を構築すれば、中国は恐れる必要はないという「お勇ましい」主張は出てくる。西側諸国というのは、具体的にはドイツと日本ということになるだろうが、両国にとって最大の貿易相手国は中国である。日本の貿易総額の約20%を中国が占めている。ヨーロッパにとっても中国は最大の貿易相手国であり、貿易総額の約15%を中国が占めている。中国に敵対するようなことをすれば経済に悪影響が出る。現在の日本を見てみれば明らかだが、レアアースを止められてしまえば干上がってしまう。
世界の貿易全体で見ても、最大のシェアを占めるのは中国で約14%、アメリカは約8%、ドイツは約6%となっている。日本は2%ほどとなっている。世界各国にとって中国の存在感と影響力は大きくなっている。前述したように、アメリカは中国に貿易戦争を仕掛けたが、目論見通りにはいかず、結局、関税率を引き下げざるを得なかった。
このように考えるならば、「中国経済恐るるに足らず」などと勇ましいことを言うのではなく、いかにして中国を利用して利益を上げるかということを考えることが得策だ。いたずらに敵視して、うっかり失言をして、関係が冷え切って、改善することもできないというような下の下の策を取らないようにすべきであるが、日本以外の諸外国の指導者はそのことが分かっているから、馬鹿なことはしない。残念なのは日本ということになる。
(貼り付けはじめ)
中国経済を恐れる必要はない(There’s No Need to Fear
China’s Economy)
-ワシントンとの経済闘争を容易にエスカレートさせる余裕を北京は持っていない。
セオドア・ブンゼル筆
2026年5月13日
『フォーリン・ポリシー』誌
https://foreignpolicy.com/2026/05/13/china-economy-us-trade-negotiations-trump-visit/
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上海の金融街を背景に黄浦江沿いで女性が龍の飾りを振っている(2025年4月14日)
アメリカは中国との貿易交渉で窮地に立たされているように見える。ドナルド・トランプ政権は就任後、北京に対し強硬な姿勢を示し、2025年4月には一時的に145%の関税を課し、過去1年間は対中実効関税率を40%前後と2倍以上に引き上げた。ワシントンの狙いは、中国からアメリカ市場を取り上げることで、北京に市場アクセスと二国間貿易赤字の削減について譲歩させることだった。スコット・ベセント財務長官は、2024年に約5000億ドルに達した対米輸出への依存度の高さを指摘し、中国は「不利な状況で戦っている(2のペアで遊んでいる、playing with a pair of twos)」と豪語したほどだ。
しかしながら、トランプ大統領の貿易戦争の犠牲となった多くの国々とは異なり、北京は猛烈な反撃に出た。中国は同等のレヴェルまで関税障壁を引き上げ、レアアース鉱物の生産における中国の圧倒的な優位性を利用して、これらの重要な産業資材の供給を遮断し、自動車から航空機、兵器に至るまで、あらゆる製品のアメリカでの生産に脅威を与えた。アメリカは事実上白旗を挙げ、最も厳しい関税措置を撤回した。今週、ワシントンは5月14日、北京との貿易協議に嫌々ながら臨み、中国のレアアース輸出規制の延長と、アメリカ産農産物およびエネルギーの購入拡大という大々的な約束を求めた。
その見返りとして、トランプ政権は先端技術に関する一部の輸出規制の撤廃、あるいは台湾への支援の縮小さえも譲歩せざるを得ないかもしれない。アメリカのドナルド政権関係者たちは、おそらく小声でではあるが、今のところ中国が経済的なエスカレーションにおいて優位に立っていることを認めているかもしれない。
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『分断された時代:地政学の再燃が世界経済をどのように分裂させるか(The Fractured Age: How the Return of Geopolitics Will Splinter the
Global Economy)』(ニール・シアリング著)
もし米中競争が21世紀における最も重要な地政経済の展開であるならば、この事態はワシントンにとって決して良い兆候とは言えないだろう。経済学者のニール・シアリングが著書『分断された時代』で厳しく論じているように、世界経済は必然的に、とはいえ徐々に、そして不均等に、2つの陣営に分裂しつつある。1つはアメリカを中心とする陣営、もう1つは中国を中心とする陣営である。この分断の兆候は、国際通貨基金(IMF)が指摘するように、地政学的に連携する国々の間で資金がますます流れるようになっている世界貿易や海外直接投資のパターンに見て取れる。そして、より競争の激しい環境下では、経済戦争(economic warfare)は両陣営間の主要な戦線となるだろう。両ブロックともに自陣の政策利益を追求し、もう1つの陣営からの圧力に抵抗するために、互いに影響力を行使しようとするからだ。
この新しい、分断された世界において、中国は優位に立っているのだろうか? 昨年の対立を見れば、そう思えるかもしれない。しかし、数字は異なる事実を示している。元米財務省高官のベン・A・ヴェイグルとダートマス大学教授のスティーヴン・G・ブルックスは、示唆に富む分析書『商業の支配』の中で、アメリカが優位に立っていると主張している。世界で最も重要で、収益性が高く、高度な技術を持つ企業は、主にアメリカと西側諸国に集中しており、中国の輸出産業自体もこれらの国々の投資に依存している。彼らの研究によれば、中国と西側諸国が突然全面的にデカップリングした場合、短期的には中国経済への打撃はアメリカよりも5倍から11倍も大きくなり、長期的には中国経済はより深刻な経済的ダメージを受けることになるだろう。
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『商業の支配:アメリカの中国に対する永続的な経済力の優位性(Command of
Commerce: America’s Enduring Economic Power Advantage Over China)』(ベン・A・ヴァーグル、スティーヴン・G・ブルックス著)
それでは、なぜアメリカは中国を恐れているのだろうか? その理由の1つは、中国がレアアース規制という完璧な非対称兵器を見出したことだ。これは自国経済への負担はわずかである一方、アメリカ産業に大きな打撃を与えることになる。ワシントンの最も強力な経済兵器、例えば金融制裁などは、たとえ北京に不均衡な損害を与えたとしても、アメリカ企業や消費者に大きな負担を強いることになる。
もう1つの理由は、アメリカは中国よりも本質的に痛みに弱い、あるいは長年にわたる(大部分は的外れな)経済衰退への不安から自信を失っている可能性があるということだ。
しかし、大きな理由は、現政権が中国との経済戦争を仕掛けてきた方法だ。特に効果の低い手段である、一方的な関税を用い、統一戦線を築くどころか、同盟諸国を疎外してきた。アメリカは経済的圧力に対抗し、北京がアメリカの政策に拒否権(a veto)を行使するのを阻止するのに十分な影響力を持っているが、西側諸国の支持を維持できれば、その任務ははるかに容易になるだろう。
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ジョージア州ローマにあるクーサ・スティール社の工場を視察するドナルド・トランプ米大統領。(2月19日)
「超グローバル化(hyperglobalization)の時代は終わった」というのはもはや陳腐な表現だ。1989年から2010年にかけて輸出が世界GDPの20~30%に急増した後、世界金融危機以降、貿易は世界GDPに占める割合としてほぼ停滞している。世界の総資本フローは2007年のピーク時の世界GDPの20%から現在では約5%にまで減少しており、世界貿易機関(WTO)のような、国際貿易のルールを定め、自由な国際貿易を促進するために設立された多国間機関はまさに風前の灯火と言える。
この「グローバル化の減速(slowbalization)」の背景にあるものを問うと、批評家たちは、世界的な紛争の増加、ポピュリズムの台頭、格差の拡大、そしてトランプ大統領の2期目による衝撃など、様々な理由を挙げるだろう。
しかし、シアリングは最も強力な要因を正確に指摘している。それは、数十年にわたるグローバル統合を崩壊させつつある米中間の緊張(U.S.-China tensions)だ。「21世紀初頭の世界経済を特徴づけた超グローバル化の時代はもはや終わった」とシアリングは書いており、その理由として「非現実的な期待に応えられなかったこと、そして新世代のポピュリスト政治家にとって都合の良いスケープゴートとなったこと」を挙げている。しかし、最大の理由は「中国がアメリカにとって戦略的ライヴァル(a strategic rival)として台頭したこと」だと主張している。
このライヴァル関係は、今後どのように世界経済を歪めていくのだろうか? シアリングは、世界は徐々にアメリカ主導のブロックと中国主導のブロックに分裂し、アメリカ主導ブロックにはヨーロッパ、日本、インド、メキシコ、その他の西側諸国が含まれるだろうと主張する。しかし、ブロック間のデカップリングは戦略産業(strategic industries)にとどまり、世界貿易の約15%がリスクにさらされることになるだろう(シアリング氏の包括的なタイトルを考えると、比較的軽微な分裂と言える)。
シアリングの『分断された時代』が執筆されたと思われるバイデン政権時代、これが最も現実的な道筋のように思われた。アメリカは、ヨーロッパ諸国を中国関連の規制に、ためらいながらも着実に引き込むことに成功していた。インドはアメリカとの連携を強化し、ジョー・バイデン大統領の国家安全保障問題担当大統領補佐官ジェイク・サリヴァンは、対中規制は「小さな庭に高い塀を(small yard, high fence)」という形をとるべきだと主張していた。
しかし、歴史は思いもよらない形で前提を覆すものだ。トランプ政権は、玩具から電子機器に至るまであらゆる中国製品への関税を引き上げ、サリヴァンの提唱した「塀(fence)」を破壊した。その結果、2025年には中国からアメリカへの輸出が20%減少すると予測され、より広範なデカップリングがますます現実味を帯びてきた。大西洋を挟んだ激しい貿易戦争や、グリーンランドとイランをめぐる争いを経て、ヨーロッパとの経済同盟関係は今や疑問視されている。ブリュッセルはより多くの「戦略的自律性(strategic autonomy)」を求め、アメリカへの技術的依存度を減らそうとしているからだ。
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中国東部山東省煙台港でメキシコ行きの天然ガスバスを積んだ船が停泊している(2月6日)
トランプ大統領の任期がさらに2年半延長され、2029年にトランプに近い共和党政権が再び誕生すれば、たとえ大西洋を挟んだ経済関係がアメリカとヨーロッパにとって依然として最も重要な関係であったとしても、アメリカとヨーロッパの間にはより深刻で恒久的な亀裂が生じる可能性がある。
これは非常に残念なことだ。シアリングは著書『分断された時代』の中で、ヨーロッパとその他の西側諸国を含むアメリカ主導の経済圏の経済規模を算出し、中国経済圏と比較するという、非常に示唆に富む分析を行っている。その結果は圧倒的な差だ。アメリカ経済圏のGDPは中国経済圏の2.5倍以上であり、中国はアメリカ経済圏全体の経済生産高の実に3分の2を占めている。
おそらく同様に重要なのは、アメリカ圏には商品輸出入国、発展途上国と先進国など、はるかに多様な経済圏が存在し、それがさらなる強みとなっている点だ。この多様性によってアメリカは独自の経済エコシステムを構築できる一方、中国圏は依然として北京への依存度が高く、商品と製造品の輸出を西側諸国に大きく依存している。そして、シアリングが指摘するように、中国の10兆ドル(しかも増加中)に上る対外資産は、中国がドルからの脱却にどれほど努力しても、アメリカの金融制裁に対して脆弱なままであることを意味する。
ヴァーグルとブルックスは著書『商業の支配』の中で、この重要な洞察(insight)をさらに展開している。彼らは、従来の経済分析は、アメリカとの経済覇権争いにおける中国の能力と影響力を過大評価していると主張する。
この主張を裏付けるために、彼らはまず中国の真のGDPを算出することに焦点を当てている。中国のGDP統計が誇張されていることは周知の事実であり、中国は毎年、公式目標を驚くほど正確に達成しているにもかかわらず、ほとんどの国際的な経済分析では依然としてこれらの数値が絶対的な真実として扱われている。一流の経済調査会社であるロジウム・グループは、商業データと公式データに対するボトムアップ分析を用いて、2025年の中国の真のGDP成長率は、報告されている5.2%に対し、2.5%から3%の間であると推定している。
ブルックスとヴァーグルは、経済生産高と正確に相関することが示されている夜間の輝度に関する衛星画像に基づき、中国のGDPが約3分の1も過大評価されていると主張する。このデータに基づくと、中国のGDPは2022年のアメリカのGDPの52%(購買力平価ではなく名目為替レートを使用)となり、公式統計で算出された72%をはるかに下回る。参考までに、これは1975年のソ連のGDPピーク時における対アメリカGDP比58%よりも低い。中国がアメリカを置き去りにしているという主張は、これで完全に覆されるだろう。
しかし、彼らの説得力のある分析はさらに進んでいる。著者たちは、ほぼ全てのセクターにおいて、世界の利益シェアが欧米企業によって独占されていると算出している。中国の産業政策が構造的に利益率を低下させる激しい競争を促しているのは事実だが、それでもなお、その結果は驚くべきものだ。ブルックスとヴァーグルの研究によると、アメリカと同盟諸国の企業はそれぞれ世界の利益の38%と35%を占めているのに対し、中国と香港を合わせた利益はわずか16%にとどまっている。ハイテク産業においては、この差はさらに顕著で、アメリカが55%、同盟諸国を合わせた利益は83.8%を占める一方、中国のシェアはわずか6.1%である。ハイテク産業における付加価値についても同様だ。世界の製造業全体の付加価値に占める中国の割合は29%で、アメリカは16%、同盟諸国は33%だが、ハイテク産業における付加価値に限ると、中国は18%にとどまり、アメリカは29%、同盟諸国は37%となっている。
付加価値と利益は重要な指標である。なぜなら、電子機器などの中国の主要輸出産業においても、中国企業ではなく欧米企業が、かけがえのない経済的価値の大部分を提供していることを示しているからだ。実際、ヴァーグルとブルックスは、中国が世界のテクノロジーハードウェア付加価値の31%を占めているにもかかわらず、中国企業がこの分野で世界売上高のわずか13%しか生み出していないと指摘している。つまり、ノートパソコンから携帯電話に至るまで、中国の付加価値の大部分は、主に輸出目的で中国に進出している外国企業によるものだということだ。
欧米企業にとって、製造エコシステムの効率が低い他の発展途上国にサプライチェインを移転することは、苦痛とコストを伴うだろう。しかし、中国にとって、欧米のサプライチェインが撤退すれば、輸出産業は長期的に深刻な打撃を受けることになる。
それでは、BYDやファウェイといった高度な技術を持つ中国企業、あるいはCATLのような中国のクリーンエネルギー分野のリーディングカンパニーはどうだろうか? 国家補助金に支えられ、中国は多くの戦略産業で急速にヴァリューチェインを上昇させており、電気自動車やバッテリーなどの分野では、世界をリードする企業や製品を擁している。
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左:中国江蘇省連雲港市の玩具工場で従業員が輸出用のぬいぐるみを製造している(2月28日)右:中国東部浙江省義烏市にある太陽光発電式プラスチック製品専門工場でトランプのプラスチック製玩具の部品が見られる(2025年4月11日)
しかし、これらは中国経済全体のごく一部に過ぎない。著者たちは、中国の付加価値の高い製造業の約60%が、金属、プラスチック、玩具といった低技術分野に集中していると指摘している。太陽光発電システムのようなクリーンエネルギー製品でさえ、特に高度な技術を要するものではなく、他国でも(コストは高くなるものの)同様の製品を製造することが可能である。
ヴァーグルとブルックスは、これらの洞察の深遠さ(the profundity of
these insights)を分かりやすくモデル化している。台湾を巡る西側諸国と中国の急激なデカップリングをシミュレーションした6つの異なるシナリオにおいて、中国の短期的なGDP損失は米国の4.7倍から11.1倍に達し、損失率は15.4%から50.8%に達するのに対し、アメリカは2.8%から7.6%にとどまる。デカップリングは双方にとって極めて大きな痛手となることは間違いない。アメリカのGDPが短期的に約5%減少するという事態は決して軽視できるものではない。しかし、米中両国が全面戦争に突入した場合、中国はアメリカよりもはるかに大きな損失を被ることになる。
著者たちは、2つの警告的かつ不吉な予言とも言える注意点を指摘している。アメリカが同盟諸国を伴わずに単独で中国からデカップリングした場合、短期的なGDP損失は中国の70%と、アメリカとほぼ同等になるという。また、レアアースなどの重要鉱物の生産における中国の優位性を、交渉材料として活用できる可能性も指摘している。しかし、ヴァーグルとブルックスの見解はやや楽観的すぎるかもしれない。彼らは、レアアース産業は低価値で比較的小規模(60億ドル)な産業であり、中国国外で再構築できる可能性があり、これらの鉱物を備蓄することが効果的な緩和策であると正しく主張している。
しかし、彼らは供給体制の再構築にかかる時間(ほとんどの鉱山は生産開始までに少なくとも10年はかかる)と、このチョークポイント(choke point)が持つ特異な効果を軽視している。中国は自国への損失を最小限に抑えつつアメリカへの輸出を遮断することができ、同時に、産業生産ラインに必要な供給が枯渇することで、短期的にはアメリカに甚大な損害を与えることができる。
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二国間会談のために会場へ向かうトランプ大統領と中国の習近平国家主席(2025年10月30日、韓国釜山)
しかし、これはまさにトランプ政権が2025年に実行した実験である。中国との包括的な貿易戦争を仕掛け、同盟諸国を敵に回した。西側諸国が中国以外の代替サプライチェインを再構築したり、十分な備蓄を確保したりする時間もないまま、中国は非対称的なレアアース兵器を発動した。一方的な関税は、中国が輸出先を他国市場に転換し、過去最高の1兆2000億ドルの貿易黒字を計上することで容易に回避できる、弱い手段であることが証明された。経済力の均衡が明らかにアメリカと同盟諸国にある経済競争において、ワシントンは準備不足のまま単独行動に出るという、極めて不利な戦略を選択し、予想通りの結果を招いた。
しかし、アメリカには、絶望の中で過ちを繰り返し学ぶのではなく、そこから学び、適応する機会がある。アメリカと中国が長期的な競争関係に突入するならば、経済的影響力は、西側諸国が自国の利益に反すると考える中国の行動に対抗するための重要な手段となるだろう。逆に、経済的抑止力を維持することで、西側諸国は、中国の過剰生産能力を阻止するための貿易障壁の設置など、自国の利益になると考える政策を、中国からの報復を恐れることなく追求できる。ヴァーグルとブルックスが正しく指摘しているように、戦略的あるいは経済的な緊張がエスカレートし、報復合戦に発展した場合、アメリカは中国に対してより多くの切り札を持っている。中国がレアアース問題で強硬な措置を取った場合、アメリカは厳しい金融制裁、あるいは中国の輸出を支える重要な技術や投資の流れを遮断することで対抗できる可能性がある。
そうした措置は短期的には自国に経済的苦痛を与えることになるだろう。しかし、アメリカが経済的抑止力(economic deterrence)を回復し、中国の経済的圧力によってアメリカの政策が左右されるのを阻止することに真剣に取り組むのであれば、反撃に際して何らかのコストを負担する覚悟が必要であり、その代償として消費者や企業に補償を行い、痛みを和らげる必要があるかもしれない。
同盟諸国との連携もまた極めて重要である。短期的な交流であれ、分裂しつつある世界経済において長期的にアメリカ陣営を強化することであれ、同盟諸国はアメリカに圧倒的な経済力をもたらす。西側諸国にとって最大の課題は調整(coordination)にある。その優位性を真に活かすためには、ワシントンは西側パートナー諸国と経済安全保障同盟(an economic security alliance)を構築すべきだ。この同盟において、中国によるいかなる経済的圧力に対しても互いに支援し合い、対抗策、輸出規制、さらには相互経済援助を共同で計画することを誓約すべきだ。西側諸国は、ロシアによるウクライナへの本格的な侵攻に先立ち、まさにこのような協調的な制裁政策を効果的に実施した。
将来の政権はこれを教訓とすべきだ。アメリカがパートナー諸国の協力を得て断固として反撃し、企業や経済面での反発をある程度受け入れる覚悟があれば、実際には中国に対して経済的なエスカレーションにおいて優位に立つことができる。ワシントンが自らの同盟関係を分裂させることでその優位性を無駄にしてはならない。
※セオドア・ブンゼル:ラザード・ジオポリティカル・アドバイザリーのマネージングディレクター兼責任者。在モスクワ国大使館政治部と米財務省に勤務した経験を持つ。2008年から2010年までは、ズビグニュー・ブレジンスキーの研究助手を務めた。
(貼り付け終わり)
(終わり)

シリコンヴァレーから世界支配を狙う新・軍産複合体の正体

『トランプの電撃作戦』

『世界覇権国 交代劇の真相 インテリジェンス、宗教、政治学で読む』


