古村治彦(ふるむらはるひこ)の政治情報紹介・分析ブログ

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タグ:赤澤亮正

 古村治彦です。

 2025年11月21日に『シリコンヴァレーから世界支配を狙う新・軍産複合体の正体』 (ビジネス社)を刊行します。是非手に取ってお読みください。よろしくお願いいたします。
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シリコンヴァレーから世界支配を狙う新・軍産複合体の正体 
 最新刊の刊行に連動して、最新刊で取り上げた記事を中心にお伝えしている。各記事の一番下に、いくつかの単語が「タグ」として表示されている。「新・軍産複合体」や新刊のタイトルである「シリコンヴァレーから世界支配を狙う新・軍産複合体の正体」を押すと、関連する記事が出てくる。活用いただければ幸いだ。

 ドナルド・トランプ大統領が2025年4月に打ち出した高関税政策は世界に衝撃を与えた。世界各国が対応に追われた。日本も例外ではなかった。石破茂前政権では経済再生担当大臣の赤澤亮正が毎週のようにワシントンDCを訪問し、最終的には15%の追加関税で収めることができた。日本からは5500億ドル(約80兆円)の投資をアメリカに行うということも決まった。その後、多くの国々がアメリカに一定の譲歩をする形で、関税を引き下げるという取引を行った。

 日本はアメリカの属国である。日本については投資という形での貢ぎ金が必要となる。アメリカと戦争をしないこと、世界各国を敵に回さないことこそが日本の基本的な原理である。「お金で済むことならば」という態度で戦後80年を過ごしてきた。これに対して不満を持つ人もいるだろうが、戦争をしないこと、外国にまで出張っていってその国の人を殺すようなことをしないで済むことが一番大事である。

 ただ、金を貢ぐにしても「貢ぎ方」や「品格」がある。何でもかんでもアメリカ側の言いなりで、へいへい、ご無理ごもっともでは舐められるだけだ。石破前政権では、トランプ政権のエルブリッジ・コルビー国防次官からの「防衛予算の対GDP比3.5%への引き上げ」要求を蹴り、日米の外務・防衛担当大臣・長官の会談「2プラス2」を実施しなかった。これがトランプとアメリカ側の逆鱗に触れたということは考えられる。そして、そのような「謀反気」を一切持たない、芯からの属国根性の持ち主である高市早苗が首相に「据えられた」ということになる。高市早苗は骨の髄までの対米隷属志向であるのに、反米的な遊就館史観を持つ靖国神社には参拝するという矛盾する行動を取るのが不思議である。

 ドナルド・トランプは高市早苗就任直後に訪日し、高市首相はかいがいしくアテンドして回った。その姿は痛々しいほどだった。時期を前倒しで、防衛予算の対FDP比3%を達成すると決め、日本国民には「愛国増税」がのしかかる。高市首相の「失言」によって、日中関係は悪化し、日本経済にも影響が出ている。この状態が続くならば、厳しい年末年始から年度末ということになりそうだ。私の見立てでは、中国の習近平国家主席は、日本をいじめることが理由で、現在の状況を作り出してはいない。習近平は、トランプとアメリカに「踏み絵」を踏ませているのだ。「日本の高市を支持するということは、一つの中国政策から後退するということだな」と。トランプにとって台湾はもう中国のものだし、中国が好きにすればいいということになっているだろう。「アメリカ・ファースト」である。「アメリカは邪魔しない」ということをより明確にするために、高市失言を利用した。更に、アメリカの同盟諸国に「いざとなったらアメリカは同盟諸国を捨てますよ」ということをアピールすることにもなっている。

 日本はアメリカに無条件で貢ぎまくって、その代償が現状である、他国はもっとうまく、慎重に立ち回っている。日本の高市早苗政権の馬鹿さ加減が現状を生み出している。そして、この状況を生む出した根本原因は日本国民であり、日本国民の馬鹿さ加減である。

(貼り付けはじめ)

高市首相、トランプ氏に防衛費増を伝達 80兆円投資「着実に履行」

外交・安全保障

日本経済新聞 20251028 19:52(20251029 2:00更新)

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA23BCK0T21C25A0000000/

高市早苗首相は28日、東京・元赤坂の迎賓館でトランプ米大統領と会談した。両首脳は日米関税合意を「着実に履行する」と確認し、「日米同盟の新たな黄金時代」をめざすとの文書に署名した。首相は防衛力強化の方針を伝え、トランプ氏は日米関係が「今まで以上に強力になる」と述べた。

レアアース(希土類)など重要鉱物のサプライチェーン(供給網)強化に協力する覚書も交わした。

首相とトランプ氏の会談は初めて。会談とその後のワーキングランチの合計は90分ほどだった。首相は日本が主体的に防衛力強化と防衛費増額に取り組む決意を伝えた。「日本も世界の平和と繁栄に貢献していく」と強調した。

トランプ氏が同盟国に安全保障面での負担増を求めていることを踏まえ、自前の抑止力強化を進める姿勢を示した。

首相は24日の所信表明演説で、防衛関連費を2027年度に国内総生産(GDP)比2%へ引き上げる目標を25年度中に前倒しすると打ち出した。国家安全保障戦略など安保関連3文書も前倒しで改定する予定だ。

トランプ氏は日本の防衛力強化の方針について「承知している」と述べた。米国の防衛装備品を調達していることに「感謝を申し上げる」とも語った。米国が高性能の戦闘機やミサイルを有すると主張し、購入拡大への期待を示した。

首相は会談後、記者団に「(米側から)防衛費の規模感についての話はなかった。数字を念頭にしたやりとりはなかった」と説明した。

会談では国際情勢も話し合った。中国に関する諸課題について意見交換し「力または威圧による一方的な現状変更の試みに反対する」と合意した。台湾海峡の平和と安定の重要性を改めて確認した。中国、北朝鮮、ロシアの軍事連携も取り上げた。

北朝鮮に関し「完全な非核化に向けた確固たるコミットメント」を確かめた。首相から日本人拉致被害者問題の解決への協力を求め、トランプ氏は「全面的な支持」を表明した。同氏は会談後、被害者家族らと面会した。

首相は会談後、米軍横須賀基地(神奈川県)でトランプ氏と一緒に米海軍の空母に乗艦した。米軍兵士の前で「世界で最も偉大な同盟になった日米同盟を更なる高みに引き上げていく」と訴えた。トランプ氏は日米同盟が「太平洋における平和と安全の礎だ」と強調した。

関税合意を巡っては日本から米国への5500億ドル(84兆円)の投資が含まれており、首脳会談で実行を約束した。首相はワーキングランチで日本による対米投資の実績を地図を使って説明し、米経済への貢献を訴えた。

両首脳は重要鉱物のサプライチェーン強化への協力文書にも署名した。幅広い産業に不可欠なレアアースの調達を中国に依存する現状の改善をめざす。

人工知能(AI)や次世代通信をはじめとした重要技術、造船など経済安全保障にかかわる日米協力の強化を進めるとも確認した。担当閣僚間で複数の覚書を交わした。

首相はレアアース調達の協力について、自身の強い希望だったと会談後に記者団へ明らかにした。南鳥島周辺の海底に眠るレアアースやハワイ沖での開発案件に触れて「日米共同で開発していく協力関係が確認できた」と強調した。

会談では医薬品の原料も議題にしたと言及した。その上で、中国を念頭に「日米ともにあまりにも特定国に依存し過ぎている」と調達先を多様化する必要性を指摘した。

安全保障分野ではトランプ氏が同盟国の負担増を求めていることを踏まえ、日本の防衛力強化に向けた取り組みを説明した。内向き志向を強める米国が引き続きアジアの安保に関与するように、日本が自前の防衛力強化を進めると強調した。

首相は会談後、他の民主主義国との協力を深める方針でも一致したと説明した。「日米韓、日米フィリピン、日米豪印といった同志国連携を一層推進していくと確認した」と語った。

安倍晋三元首相が打ち出した「自由で開かれたインド太平洋」の実現を日米でめざす。

首相はトランプ氏との信頼関係の構築に向け、タイとカンボジアの紛争終結や中東での停戦合意への米国の貢献を「短期間に世界はより平和になった」とたたえた。米高官によると、トランプ氏をノーベル平和賞に推薦する考えも伝えた。

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なぜアジア諸国は貿易に関してトランプ大統領にこれほど多くの譲歩をしたのか?(Why Did Asian Countries Give Trump So Much on Trade?

-新たな協定には、アジアにおける物品の流れを変える可能性のある異例の譲歩が含まれている。

アガーテ・デマライス筆

2025年11月12日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2025/11/12/trump-trade-tariff-agreement-deal-asia-japan-south-korea-asean/

ドナルド・トランプ政権の交渉担当者たちは、このところ絶好調だ。わずか数週間のうちに、アメリカは東南アジア諸国連合(ASEAN)加盟4カ国(カンボジア、マレーシア、タイ、ヴェトナム)と貿易協定を締結し、7月に日本がホワイトハウスに提出した投資誓約の詳細を巧みに調整した。これらの協定の精神はシンプルだ。ドナルド・トランプ米大統領が課した、あるいは脅した関税よりも低い関税と引き換えに、これらの国々はワシントンの要求を驚くほど多く、広範囲に受け入れていた。

貿易協定は通常、不眠症の優れた特効薬(a great antidote to insomnia)となる。しかし、ワシントンとアジア諸国の間で最近締結された協定は異なる。協定の細則を見れば、これらの国々が協定締結のために異例の譲歩をしたことが分かる。これらの協定は、トランプ大統領が関税の脅威を巧みに利用し、パートナー諸国にアメリカへの投資を迫り、アメリカ政府が国内問題への発言権を与え、中国との分断を図ってきたことの手掛かりとなる。

トランプ大統領は、そのビジネス感覚に忠実に従い、アメリカの交渉担当者たちが世界中で締結を目指している貿易協定において、外国からの投資の約束を優先事項としてきた。日米協定はその好例だ。この協定の目玉は、2029年1月のトランプ大統領の任期満了までに、日本政府がアメリカに5500億ドル(約85兆2500億円)を投資するという約束である。これは日本のGDPの約15%に相当する額であり、おそらく偶然ではないだろうが、日本からアメリカへの輸出の4年間分(あるいは大統領の任期1期分)に相当する。

この協定の解釈は、太平洋の両側で大きく異なっている。ホワイトハウスによると、「日本政府はアメリカに5500億ドルを投資することに同意した」となっている。トランプ大統領は、「5500億ドルを得ることになる。これは野球選手の契約ボーナスのようなものだ」と見ている。私がアメリカ政府当局者と話し合ったところによると、この協定の解釈によれば、アメリカ企業による100億ドルの投資プロジェクトが民間資金で40億ドルしか調達できない場合、不足分の60億ドルを日本の納税者の資金で補填することが可能となる。

日本政府はこの見解に強く反対している。ブルームバーグによると、7月に日本の首席交渉官は地元メディアに対し、「5500億ドルの投資枠組みは、日本政府が支援する金融機関による投資、融資、そして融資保証を組み合わせたものだ」と述べた。各投資の利益の90%はアメリカに渡る。その後、日本が初期投資を回収するまでは50対50のより均衡した配分となり、その後は90対10でアメリカに有利になる可能性が浮上している。

これらの議論はさておき、日本の投資公約について3つのことが明らかになっている。第1に、この合意は、日本が公的資金をアメリカにおける民間投資に充当することを約束している。第2に、アメリカは最終的にその見返りの90%を得る。第3に、日本が約束を履行しない場合(アメリカ側の解釈がどうであれ)、ホワイトハウスは日本製品の輸出関税を再び課すことができる。ホワイトハウス当局者たちは「私たちは貿易相手国に約束を守るよう求めており、もしいずれかの国が約束を破った場合、大統領は関税率を調整する権利を留保する」と述べた。

日本がなぜこのような協定に署名するのか、理解に苦しむ。第一の問題は、日本が資金提供を必要とするプロジェクトについて最終勧告を行う投資委員会にアメリカ人のみが参加し、最終決定権はトランプ大統領のみに握られるという点だ。日本にとっての潜在的な問題はこれだけではない。公的資金提供は、民間投資家がそもそもこれらのプロジェクトに興味を持っていなかったことを示唆しており、利益が出ない可能性もある。専門家はまた、アメリカ政府が、ワシントンが管理する投資ビークルを通じて外国資金を誘導する権限を持っているかどうかについても疑問を呈している。将来の政権や連邦議会がこの計画を違法と判断した場合、日本は投資を失う可能性がある。

韓国の李在明大統領は、現在ワシントンと交渉中の貿易協定で同様の条件に同意した場合、「弾劾されるだろう」と考えている。しかし、ホワイトハウスが韓国に対し3500億ドルの投資パッケージへの同意を迫っていることから、李大統領は間もなく日本と同じ轍を踏むことになるかもしれない。ハワード・ラトニック米商務長官は、「韓国は合意を受け入れるか、関税を支払うかのどちらかだ」と述べた。もちろん、ラトニック長官の見解は間違っている。アメリカの関税を支払うのは輸出国ではなく、アメリカ企業と消費者だ。

日本が投資誓約を確定し、韓国もそれに迫ったことで、ワシントンは第2の優先事項、すなわちASEAN諸国にアメリカ規制の適用を強制することに集中する余裕が生まれた。アメリカとマレーシアの合意は、まさにその好例だ。この合意には、ワシントンが要請すればマレーシアが「アメリカの一方的な輸出規制」に全て従うことが盛り込まれている。クアラルンプールがこのような条項を受け入れたことは奇妙だ。マレーシアの島嶼国ペナンは長年、中立的な(つまりアメリカと中国双方にサービスを提供する)半導体製造拠点としての地位を確立することで繁栄してきた。トランプ大統領が米国の対中輸出規制を維持し、マレーシアがそれを模倣するなら、ペナンの半導体企業がどのようにして中国で事業を継続できるのかは不透明だ。

ワシントンがパートナー諸国にアメリカの規制への準拠を求める動きは、これで終わる訳ではない。マレーシアはまた、アメリカの制裁対象、あるいは米産業安全保障局(BIS)のエンティティリストに掲載されている個人や企業との取引を制限することにも同意した。アメリカの制裁が世界的に影響を及ぼしていることは目新しいことではなく、この合意がなかったとしても、多くのマレーシアの銀行がアメリカのブラックリストに掲載されている個人や企業との取引を処理するとは考えにくい。新しいのは、アメリカが諸外国に対し、アメリカの主要な制裁措置に倣うよう公然と要求していることである。

デジタル分野は、アメリカの規制介入の最後の領域となっている。マレーシアは協定において、デジタルサーヴィスに課税しないこと、そして他国とデジタル協定を締結する前にアメリカと協議することを約束した。こうしたアメリカの要求は意外ではない。トランプ大統領は長年、アメリカのデジタルプラットフォームに対する不公平な課税に執着してきた。しかし、マレーシアがこの条項をどのように実施するかは興味深い。マレーシアはASEAN主導のデジタル経済枠組み協定というデジタル協定に署名したばかりだ。

アメリカとカンボジアの貿易協定は、アジアにおけるアメリカの第3の優先事項——同盟国に中国との経済的分離を迫ること——を如実に示している。まず、プノンペンはあらゆる国(つまり中国)に対し、アメリカの関税・割当を模倣することを約束する。さもなければ、カンボジアの対米輸出に対し、世界最高水準の49%という禁止的な関税が再課される。カンボジアがアメリカの敵対国(これも中国を指す)と経済協定を結んだ場合も同様の制裁が適用される。さらにカンボジアは、外国投資家に関する情報をアメリカに提供することに同意した。中国の名は明記されていないが、この条項が北京を念頭に置いていることは明らかだ。中国企業はカンボジア最大の投資主体であり、昨年の対外直接投資総額の約半分を占めている。

アメリカの圧力はいずれ脱却の面で強まる可能性があり、その最優先課題が中継貿易となる。平たく言えば、これは中国からのアメリカ向け輸出をヴェトナムやメキシコなどの第三国経由で迂回させ、アメリカの対中関税を回避しようとする動きを指す。ASEAN各国政府は、アメリカが間もなくこの慣行への対応を要請すると考える根拠がある。マレーシアとの協定では、この問題に関する条項を空白のままにしており、アメリカは中継された中国製品を低関税対象から外す文言を柔軟に策定できる余地を残している。そうなれば、中国とアメリカの間の貿易ハブとして位置づけてきた多くのASEAN経済圏のビジネスモデルは崩壊する可能性がある。

ヨーロッパ連合の官僚たちは、これらの最近の協定を精査する中で、いくらか慰めを見いだすかもしれない。ヨーロッパ連合はアメリカとの協定において、日本、カンボジア、マレーシアなどがアメリカに与えた額のほんの一部しか譲歩していない。これは、なぜアジア諸国政府がこれほど制限的な協定に署名したのかという疑問を提起する。確かに、アメリカは東アジアおよび東南アジア諸国にとって巨大な貿易相手国であり、アメリカによる安全保障の保証は日本と韓国にとって重要である。アジア諸国の政策立案者たちは、トランプ大統領が自らの約束の履行状況をチェックしないことを期待しているのかもしれない。この点については、トランプ大統領の最初の任期中にアメリカが貿易協定の監視と履行を怠った事例が示唆しているかもしれない。これらの説明はどれも完全に説得力がある訳ではない。その間、ヨーロッパ連合の政策立案者たちは、アメリカがアジアへの要求をヨーロッパ連合との次回交渉にそのまま持ち込み始めた場合、どのように対応するか熟考するのが賢明だろう。

※アガーテ・デマライス:『フォーリン・ポリシー』誌コラムニスト。ヨーロッパ外交評議会地経学上級政策研究員。著書に『逆噴射:アメリカの利益に反する制裁はいかにして世界を再構築するか(Backfire: How Sanctions Reshape the World Against U.S. Interests)』がある。Blueskyアカウント:@agathedemarais.bsky.socialXアカウント:@AgatheDemarais

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(終わり)
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 古村治彦です。

※2025年3月25日に最新刊『トランプの電撃作戦』(秀和システム)が発売になりました。是非手に取ってお読みください。よろしくお願いいたします。
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 石破茂首相の退陣報道が出た。今日は、ドナルド・トランプ大統領がSNSで日本と関税15%で合意、米や自動車の市場開放、日本の対米投資5500億ドル(約80兆円)で雇用創出という内容を発表した。この内容ならば、先日の参議院選挙の投開票日前にでも発表出来るではないかと思うが、石破政権、特に赤澤亮正経済再生担当大臣の粘り腰の交渉が実を結んだということになるだろう。合意内容に不満はあるだろうが、石破政権だからこそ手にできた成果でもある。これが対米隷属の旧清和会系の首相だったら、条件闘争はほぼできなかっただろう。このように、日本国民の利益のために、世界覇権国と交渉できる指導者こそが愛国者(patriot)であり、ナショナリスト(nationalist)だ。石破茂首相が敬愛する石橋湛山元首相はまさにそうだ。

 昨日、村上誠一郎総務大臣が記者会見で、「旧統一教会との関係など『自民党が数十年やってきた問題が今回、噴出したのではないか』と指摘し、『今回の結果が本当に石破さん個人の責任なのか』と述べ」たということだ。きわめて正常な見識である。村上大臣は、記者会見場で涙を浮かべていたということだが、これは、石破首相の退陣の決意を聞いていたのだろうと推察される。

 自民党保守本流の総理大臣がまた職を辞する。国民は刺激のない、面白みのない総理大臣を使い捨てる。つまらない、人気がない、問題を即座に解決することができないということを理由にして。何度も書いているが、「大国を治むるは小鮮(しょうせん)を烹(に)るがごとくす」(国家を治めるには小さい魚を煮るようにする)が保守本流の真骨頂だ。退屈で苦しい日常が続き、大きな変化はない。しかし、それこそが貴重なのだ。大きな変化は危険だ。漸進的に、少しずつこそが理想だ。理想を性急に手に入れようとして、人類はどれだけの失敗をしてきたか、そのことを知っているのが保守だ。最近の言葉で言えば、それは「ショック・ドクトリン」でもある。そして、退屈で平凡な日常を過ごす力を「教養」という。物事をたくさん知っているとか、試験の出来が良かった、学歴が高いということが、教養があるとか、知性があるということではない。日本は保守と教養が衰えた国家だ。そして、この衰退はこれからも続くだろう。石破茂の師でもあった田中角栄の「必要なのは学歴ではなく学問だよ。学歴は過去の栄光。学問は現在に生きている」「いくら死にたくなくても、人間は必ず灰になる。ところが人間でも植物でも、生物は劣性遺伝なんだ。働かない、勉強しない奴は親よりバカになる」という言葉を拳拳服膺したい。

 統一教会やキリストの幕屋というような危険な考えを持つカルトとつながっていた自民党保守傍流・旧清和会、故安倍晋三元首相勢力、参政党の蠢動によって、日本政治は危険な状況に追い込まれる。高市早苗代議士を総理総裁にすることは日本滅亡への第一歩だ。しかし、そのシナリオはかなり明確に見える。参政党、国民民主党が連立、もしくは閣外協力で高市早苗政権を誕生させ、憲法改悪、国内の不満を逸らすために、外国人排斥、対中強硬姿勢からの最悪の日中衝突が見えてしまう。アメリカの対中強硬派はそのように画策するだろう。そのことを防ぐ必要がある。

 失われた30年間のうちの9割は自民党が政権を保持していた。その9割の内の約32%、3分の1弱は安倍晋三元首相が政権を担ってきた。不思議なことに、安倍晋三元首相を敬愛している人々は、安倍政権時代にはそうは言わなかったのに、急に「失われた30年」という言葉を使い始めている。そのうちの多くを安倍晋三元首相が政権を担っていたのだが。年数にして約9年、安倍首相だったのだ。安倍首相に全く責任がないかのように、そして、現在の多くの問題が、石破茂首相が引き起こしたかのように非難をしている。敢えて言うならば、故安倍晋三元首相と彼が象徴となっている、祖父岸信介元首相から戦後政治の負の部分が問題の根本だ。

 私たちは賢くならねばならない。戦略的に動かねばならない。最悪のシナリオを避けるために、一般国民にできることは少ないかもしれない。しかし、何もできないということはないし、何もしないというのは座して死を待つのと同じだ。現在は情報化社会である(もう既に古臭い言葉になっている)。まずは自分が居住している選挙区の自民党議員を調べてみる。もしこの議員が保守傍流(旧安倍派・麻生派・二階派など)に参加し、石破降ろしをやっている政治家なら投票しない、保守本流系でまともな考えならば投票する。比例は自民党、維新・国民民主・参政のゆ党以外に投票する(公明党に投票することは考慮する)ということをしてみるというのは、既に多くの方々が行っているだろうが、どうだろうかと考える。最悪を避けるための戦略的投票について、SNSを通じての洗練が望まれるところだ。

 戦後80年が戦後100年、戦後200年と続き、日本が緩やかな衰退の道を進みながら、何とか平穏に暮らしていけるようにと願うばかりだ。石破首相退陣報道を受けて、書き散らしになってしまったが、雑感を書き残しておく。

(貼り付けはじめ)

●「石破首相、退陣へ 8月末までに表明 参院選総括踏まえ」

毎日新聞 7/23() 11:17配信

https://news.yahoo.co.jp/articles/81483105d5094d1b717f392d166ec6dd932287fd

 石破茂首相は23日、自民党が8月にまとめる参院選の総括を踏まえ、同月までに退陣を表明する意向を固め、周辺に伝えた。首相は同日、自民党の麻生太郎最高顧問、菅義偉副総裁、岸田文雄前首相と会談し、自らの進退を巡り協議するとみられる。

 ただ、参院選大敗直後に続投の意向を表明した首相に対し、党内から退陣要求や批判の声が高まっているため、判断時期が前後する可能性もある。

 首相に対しては、各地の地方組織が退陣や党の体制刷新を求める他、中堅・若手議員からは党大会に次ぐ意思決定機関「両院議員総会」を開催し、総裁選の前倒しの議決を求める声も出ている。

 こうした状況を踏まえ、首相は麻生氏ら首相経験者3人と意見を交わし、理解を求めたい考えだ。現職首相が首相経験者と一堂に会するのは異例。政府関係者は「石破首相が3人に頭を下げるスタンスだ」と話す。

 党執行部は当初31日の開催を予定していた両院議員懇談会を29日にも前倒しし、参院選の総括を開始する。8月に総括をまとめた後、執行部として責任のあり方を判断する方向だ。木原誠二選対委員長は検証・総括を終えた段階で辞任する意向を示しており、党総裁である首相の進退も判断することになる。政権幹部は「総括が出れば、執行部は責任についてしっかりと判断しないといけない」と話した。

 首相が今月中に退陣した場合、来月に召集予定の臨時国会で首相指名選挙が行われるが、少数与党の状況では自民党総裁が首相になれる保証はない。首相指名を巡り野党と協議する時間を確保するため、退陣する場合は来月以降の表明を検討している。

 首相は23日、続投理由の一つに挙げていた日米関税交渉が合意に至ったことが進退に与える影響について、「合意の内容をよく精査をしなければ申し上げることはできない」と首相官邸で記者団に語った。

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●「最側近閣僚ら涙ながらに「石破総理個人の責任か」 「支えていきたい」村上総務大臣」

7/22() 17:01配信 テレビ朝日系(ANNAll Nippon NewsNetwork(ANN)

https://news.yahoo.co.jp/articles/99c41b7587e157e1e187c770859f9c6c9f98caa5?source=sns&dv=sp&mid=other&date=20250722&ctg=dom&bt=tw_up

参議院選挙での大敗を巡り石破総理大臣に近い村上総務大臣は涙ながらに「支えていく」などと述べました。

村上総務大臣

「確かに選挙の結果がこうなるとね、皆さんの不満は本当によく分かります。だけど今までの色んな負の遺産を背負いながらね、やっぱりここまでやってきたっていうことに対してはね、私は石破さんだからここまでやってこられたというふうに心底、思っているので、私はできる限り一生懸命、支えていきたいとそういうふうに考えています」

 村上大臣は旧統一教会との関係など「自民党が数十年やってきた問題が今回、噴出したのではないか」と指摘し、「今回の結果が本当に石破さん個人の責任なのか」と述べました。

岩屋外務大臣

「ここは言ってみれば進むも地獄、退くも地獄ということでございますけれども、国家国民のために前に進んでいかなければならないというふうに考えている」

 また、岩屋大臣はアメリカとの関税協議での合意に向けて「国内の政治基盤が極めて不安定に映ることは決して交渉にプラスに作用しない」「足元をみられないよう、今こそ一致結束が必要だ」と強調しました。

 村上大臣、岩屋大臣、そして中谷防衛大臣ら石破内閣を支える総理最側近のメンバーは参院選投開票の前夜に集まり、与党が過半数割れしても石破総理を支えることで一致し、続投を促していたということです。

(貼り付け終わり)

(終わり)

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世界覇権国 交代劇の真相 インテリジェンス、宗教、政治学で読む

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める

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 古村治彦です。

※2025年3月25日に最新刊『トランプの電撃作戦』(秀和システム)が発売になりました。是非手に取ってお読みください。よろしくお願いいたします。
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 アメリカは日本に対して25%の高関税を課すことを決定したようだ。中国に対する100%を超える関税を課すということがあったので、案外高くないなと思ってしまうほどだが、日本経済に対しては影響が出る。アメリカの巨額の貿易赤字はアメリカの国内問題であり、日本だけが一方的に努力をしたり、我慢をしたり、犠牲になったりすするということはおかしい。自動車が日米間の重要な問題になっているようだが、それならば、アメリカの三大メーカーは日本で売れるような、日本人に選んでもらえるような自動車を作って輸出すべきだ。そもそも、戦後すぐからしばらくは日本国内でもアメリカ車が走っていたし、憧れの的だった。それは黒澤明監督のその頃の映画を見てみたら分かる。また、その頃の日本車は箱根の山を登り切れずにエンジンが焼けてしまって立往生をしている横をアメリカ車が颯爽と走り去っていったという逸話が残っている。高性能で価格が見合うなら、日本の消費者は買うだろう。それができないのはアメリカの怠慢だ。
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 また、日本車に高関税をかけても、アメリカの消費者は壊れにくく、長持ちし、中古として売却するにしても高くで買い取ってもらえる日本車を選ぶだろう。アメリカのインフレの状態を考えると、25%の関税はあまり影響が大きくないということも考えられる(これは机上の空論であるが)。

 輸入品に関税を掛けてお金を徴収するのは政府だが、その支払いをするのは国民だ。トランプ政権の高官勢はアメリカ国内の製造業の保護や復活を企図したものだが、そのための「補助金」をアメリカ国民が支払うということになる。これまで、私たちはアメリカが最大の市場であり、アメリカで商売をして利益を上げて、ドルを獲得するということが最上のシステムであると考えてきた。ドルを獲得しなければ国際決済はできないし、何より石油を獲得することができないということであった(ペトロダラー体制)。

 しかし、今や西側諸国の国力の減退、西側以外の国々の発展があり、アメリカ依存は得策ではない。トランプ関税について、私は一定の評価をしてきたが、それは、アメリカ国内の支持者たちからの視点としてであった。トランプ支持者たちは、貧しい白人の労働者たちであり、高関税によって彼らの仕事が一部でも戻ってくる、新しくできるということを願っている。トランプとしてはそれをかなえてやりたいということになる。実際に少しは良くなるだろう。しかし、大きく見れば、アメリカは既に厳しい状況であり、「手遅れ」である。先の大戦における、サイパン陥落後の日本のようなもので、もうどうしようもないという状況だ。何とかしたい、しかし、もう有効な方法は残っていない。既にアメリカの覇権国としての寿命は尽きつつある。

(貼り付けはじめ)

トランプは貿易戦争に負けるだろう(Trump Will Lose the Trade War

-多面的な紛争は、それを誘発した国にとって決して良い結末を迎えたことがない。

ロバート・D・アトキンソン筆

2025年6月12日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2025/06/12/trump-us-trade-war-tariffs-china-canada-protectionism-isi/

第一次世界大戦の敗戦後、ドイツ軍最高司令部は重要な教訓を学んだ。それは、「決して二正面作戦を戦わない(Never fight a two-front war)」というものだ。だからこそドイツは1939年、ソ連とモロトフ・リッベントロップ協定(Molotov-Ribbentrop pact)を締結し、10年間は​​両国が互いに攻撃を仕掛けないことを約束した。しかし、アドルフ・ヒトラーは10まで数えることができず、ドイツは第二次世界大戦に突入した。これもまた二正面作戦であり、ドイツにとって悲惨な結末を迎えた。

貿易戦争にも同じことが言える。一正面戦争(a one-front war)なら問題ないかもしれないが、世界全体と戦うのは避けるべきだ。コメディアンのノーム・マクドナルドが2015年の「レイト・ショー」でジョークを飛ばしたように、「前世紀の初め、ドイツは戦争を決意した。そして、誰と戦ったか? 世界だ。・・・それから約30年が経ち、ドイツは再び戦争を決意した。そして再び、世界を敵に選んだ!」

現在、ドナルド・トランプ米大統領は貿易戦争の開始を決意した。そして、誰を攻撃対象に選んだのだろうか? それは世界だ。4月のいわゆる「解放記念日(Liberation Day)」に、トランプ大統領はペンギンのいる島国やアメリカとの貿易赤字を抱える同盟諸国も含む、ほとんどの国に関税を課した。

その結果、世界の他の国々はアメリカへの反感を募らせ、アメリカに代わる貿易体制の構築を模索し始めている。日本、韓国、中国、そして東南アジア諸国連合(ASEAN)加盟諸国は、ヨーロッパ連合(EU)と中国と同様、貿易協力に向けた協議を行っている。カナダもまた、トランプ大統領の関税措置を受け、EUとの貿易・投資関係強化に期待を寄せている。

それにもかかわらず、トランプはアメリカが依然としてトップであり、ボスであり、主導権を握っていると考えているようだ。しかし、そろそろ事実を直視すべき時だ。アメリカは彼の貿易戦争によって甚大な損失を被るだろう。

その理由は単純だ。特に先進産業においては、多くのアメリカ企業が生き残り、繁栄するために世界市場へのアクセスを必要としている。トランプが模範とする企業は、低中程度の技術水準で非上場のアメリカ企業であり、生産物のほぼ全てを国内で販売している。包丁メーカー、家具メーカー、ゴルフクラブメーカーなどを思い浮かべてみよう。(トランプは、自分やカントリークラブの仲間たちが、間もなく新しいアイアンセットに高額なお金を使うことになることを知っているのだろうか?)自分がこれらの企業を海外の競争から守れば、これらの企業は繁栄するだろうというのがトランプの考えだ。保護された巨大な市場があれば、繁栄しないはずがない。

話はそんなに早くは進まない。アメリカは、力強い先進産業なしには強大な力を持つことはできない。そして、これらの産業はトランプの新しい世界では深刻な苦戦を強いられるだろう。

課題には複数のベクトルがある。1つ目は、輸出向けに生産するアメリカ企業(ボーイング、メルク、ゼネラル・エレクトリックなど)は、輸入部品や材料に関税を支払うため、投入コストが大幅に増加することだ。

第二に、他国が相互関税を課すと、これらの企業の製品は価格的に海外市場から締め出されることになる。他国の企業は、マイクロン製のメモリチップではなく、韓国製のメモリチップを購入するだろう。ボーイングではなくエアバス製のジェット機、キャタピラーではなく、日立製の機械類を使うだろう。これはお分かりいただけるだろう。

さらに、トランプ大統領はアメリカ企業に対する露骨な差別への扉を開こうとしている。EUはトランプ大統領の攻撃的な姿勢を利用して、「ユーロスタック(EuroStack)」計画を正当化しようとしている。これは、コンピューターチップからサーヴァーに至るまで、ほぼ全てのアメリカ製ハイテク製品を最終的にヨーロッパ製の製品に置き換える計画である。そして、EUはついに軍事費増額計画を発表したが、それはヨーロッパ製の兵器を購入することによって行われることになる。

これは関連する課題につながる。トランプ大統領の貿易戦争下で、アメリカの輸出企業はますます海外市場から締め出されることになる一方で、競合他社はアメリカ抜きではあるものの、グローバルに統合された市場に参入することになるだろう。特に、他国が新たな貿易協定を通じてより統合された市場の構築に着手する中で、この傾向は顕著になるだろう。外国企業は革新と繁栄に必要な規模を獲得するだろう。一方、比較的小規模なアメリカ市場に依存しているアメリカの生産者たちは、徐々に縮小し、最終的には消滅する可能性もある。

トランプ氏の輸入代替産業化戦略(import substitution strategyISI)は、過去にも他国で試みられてきたが、失敗に終わった。国際開発コミュニティは1950年代から60年代にかけて、成長戦略として輸入代替工業化(Import substitution industrializationISI)を広く採用し、多くの発展途上国は1980年代以降もそれを維持した。失敗の理由の1つは、ブラジルのような比較的規模の大きい国でさえ、ますます複雑化する製品を効率的に生産できるだけの市場規模を持っていなかったことにある。国際通貨基金(International Monetary FundIMF)による最近の世界産業政策分析によると、繁栄したのは韓国や台湾のように輸出戦略(export strategies)を採用した国であり、ISIを推進した国ではないことが明らかになった。

アメリカ経済は、例えば韓国経済よりもはるかに大きいものの、今日の先進産業は、継続的な研究開発費を賄うために必要な収入を生み出すだけでも、アメリカが提供できる以上の大きな市場を必要としている。

しかし、それだけではない。世界貿易の覇権国としてのアメリカの役割が衰退するにつれ、中国が確実にその地位を奪うだろう。中国は過去15年間、あらゆる国際機関に浸透してきた。トランプ大統領が主導権を握り、世界保健機関(WHO)、パリ協定、国連人権理事会など多くの機関からアメリカが離脱したことで、勝利は中国のものとなった。

すでに多くの国々が北京を訪れ、習近平国家主席に媚びへつらって貿易協定を締結するのを目にしており、今後もこうした動きが続く可能性が高い。かつて南米で最大のアメリカからの経済支援の受取国であったブラジルとコロンビアは、すでにその道を歩んでいる。中国の先進産業は貿易戦争後、アメリカ市場へのアクセスを失うかもしれないが、世界の他の国々の市場へのアクセスは確保されるだろう。一方、アメリカ企業はアメリカ市場の残りかすを残されることになるだろう。

トランプ大統領が対外援助を削減した後、中国は他国の心を掴むためにアメリカよりもはるかに多くの資金を費やしている。風向きが東であることは、気象予報士でなくても分かる。習近平国家主席が最近ロシアの新聞に寄稿した記事にあるように、「一極主義、覇権主義、そして威圧的な行為が世界中で深刻な被害をもたらしている」。中国を自由貿易と連帯の守護者として見せることができるのは、トランプ大統領だけである。

明確にしておくと、トランプはフェアプレーをしない国々に(貿易)戦争を仕掛ける必要があった。最大の加害者は中国であり、2006年頃に世界的な貿易戦争を開始し、習近平国家主席の就任以降、これを激化させてきた。中国は他のいくつかの国と共に、体系的な重商主義的慣行(systemic mercantilist practices)に従事し、アメリカの製造業の空洞化を助長し、巨額の貿易赤字につながっている。

中国は大規模な知的財産窃盗を行った。外国企業を恫喝し、中国国内での生産と技術移転を強要した。そして、特定の産業で生産能力を獲得すると、市場を閉鎖した。

アメリカが世界貿易機関(World Trade OrganizationWTO)を通じて中国の不正行為に対処しようと試みた事例はごくわずかだ。その理由の1つは、WTOの構造上、そのような行為を効果的に訴追することがほぼ不可能なためだ。アメリカ企業もまた、中国政府の報復を恐れて、WTOへの協力をほとんど拒否した。EUも同様だ。

アメリカが提訴し勝訴した訴訟は比較的少数で、レアアース輸出割当や風力発電補助金といった、ほとんどがピュロス的な勝利(pyrrhic victories、訳者註:勝利ではあるものの、その代償が大きすぎて、実質的には敗北と変わらないような状況を指す)に終わった。これらはいずれも競争の実態を変えることはなかった。そして、ほとんどの場合、中国はアメリカの訴訟に対して反訴を起こした。トランプは正しかった。宣戦布告すべき時だった。しかし、マクドナルドが言うように、世界に対して一度に宣戦布告するべきではない。

それでは、希望はあるのだろうか? おそらくないだろう。しかし、トランプに関しては予測不可能だ。

トランプがなすべきだったのは、まずヴェトナム、インドネシア、インドといった、世界貿易ルールの最も深刻な違反国に焦点を絞ることだった。関税を課す前に、これらの国々に協議を促し、アメリカの主要な要求事項を列挙し、90日以内に是正するよう求める。そして、相手が応じない場合のみ関税を課すのだ。そして、その際には、先進産業におけるアメリカの競争力にとって最も重要な貿易障壁や阻害要因に焦点を当てるべきだった。

これらの国々がエビの輸出を拡大したいなら誰が気にするだろうか? アメリカ産ウイスキーの市場を閉鎖したいなら争う価値はない。しかし、アメリカのハイテク企業を攻撃し、先進的なアメリカ製品・サービスへのアクセスを制限することなら、徹底的に抗戦する(going to the mattresses over)価値がある。

次に、ヨーロッパに軸足を移し、その後、日本、韓国、台湾に軸足を移す。お分かりだろう。しかし、世界全体と同時に戦争を仕掛けるべきではない。それがもたらすのは、世界的な反米同盟(a worldwide anti-American alliance)の形成だけだ。

中国は貿易戦争を仕掛ける際、全ての国を一度に攻撃しないだけの分別を持っている。北京は特定の国に貿易攻撃を仕掛け、しばらく様子を見て外国の反応を伺う。そして、怒りが収まると、また別の攻撃を仕掛ける。そして、沸騰した湯の中の蛙のように、他の国々は中国の攻撃をほとんどすすり泣くことなく受け止めてきた。

中国は依然として、アメリカ、そして西側諸国の先端技術産業を破壊する意志と手段を持つ唯一の国である。トランプの貿易戦争は、北京の勝利を阻止することを目的として設計されるべきである。何よりも、それはアメリカの同盟諸国と協力することを意味する。しかし、アメリカに対する敵意の高まりと国力の低下を目の当たりにすると、多くの国は北京との取引をより容易にしている。

同盟諸国がいなければ、いかなる戦争も敗北に終わる。トランプが同盟諸国との交渉に意欲を示さない限り――5月にカナダ首相マーク・カーニーと会談した際には、彼はこれを拒否した――アメリカは第一次世界大戦以前と同様に、世界的に孤立したままになるだろう。しかし、当時と現在との大きな違いは、アメリカ企業が生き残るためには技術面で世界的規模に到達する必要があり、中国がアメリカを凌駕する競争力を持つようになったことである。

アメリカがドイツよりもうまく、多面的な紛争から脱却することを願うばかりである。

※ロバート・D・アトキンソン:情報技術イノベーション財団(Information Technology and Innovation FoundationITIF)の創設者兼理事長、ジョージタウン大学エドマンド・A・ウォルシュ外交大学院の非常勤教授。クリントン、ジョージ・W・ブッシュ、オバマ、トランプ、バイデン政権で顧問役を務め、『技術革新経済学:グローバル優位をめぐる競争(Innovation Economics: The Race for Global Advantage)』を含む4冊の著書がある。Xアカウント:@RobAtkinsonITIF
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『トランプの電撃作戦』
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