古村治彦(ふるむらはるひこ)の政治情報紹介・分析ブログ

SNSI研究員・愛知大学国際問題研究所客員研究員の古村治彦(ふるむらはるひこ)のブログです。翻訳と評論の分野で活動しています。日常、考えたことを文章にして発表していきたいと思います。古村治彦の経歴などについては、お手数ですが、twitter accountかamazonの著者ページをご覧ください 連絡先は、harryfurumura@gmail.com です。twitter accountは、@Harryfurumura です。よろしくお願いします。

タグ:進歩主義派

 古村治彦です。
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※2024年10月29日に佐藤優先生との対談『世界覇権国 交代劇の真相 インテリジェンス、宗教、政治学で読む』(←この部分をクリックするとアマゾンのページに飛びます)が発売になります。予約受付中です。よろしくお願いいたします。

 アメリカ大統領選挙から時間が経ち、様々な意見が飛び交っている。私が最も信用していないのは「想定通りでしたね」などと述べる人たちで、それは想定ではなく、あなたの希望や願望ではないのかと言いたくなる。想定するにあたってどのようなモデルを作り、どれくらい世論調査の数字データを集め、どれくらいの質的な調査を行ったのかと言いたくなる。今回の選挙結果を「想定通りでしたね」と言えるほど頭脳明晰であるからには、自分の原罪の仕事や学業でさぞや周囲を驚かせるだけの結果を出せているのでしょうね、羨ましい限りですと皮肉を言いたくなる。ここで愚痴を書いても仕方がないが、そのように思ったので書いておく。

 今回、民主党はホワイトハウス、連邦上院の過半数、連邦下院の過半数を失う大惨敗となった。2016年もそうであったが、大統領選挙の一般得票数ではヒラリー・クリントンが上回っていた。「大統領選挙の仕組みが違っていたならねぇ」ということは言えた訳だが、今回は全てにおいてうまくいかなかった。共和党の「赤い波(red wave)」に飲み込まれた形になった。「今回の選挙は民主党が真剣に反省する機会となるだろう」ということは2016年にも言われていたが、結局あまり反省ができていなかったようだ。そして、今回も民主党進歩主義派の重鎮であるバーニー・サンダース連邦上院議員(ヴァ―モント州選出、無所属)のお説教をもらうことになった。
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 各種世論調査の結果や出口調査の結果から、私たちが今まで習ってきたような「共和党は経営者やお金持ちの党、民主党は労働者やマイノリティの党」という構図は崩れ去り、逆になっている。「共和党は労働者の党」となった。そして、民主党は口先だけはきれいごとを言う、リベラル志向のお金持ちたちが支配する党になった。労働者のための政策をしてこなかったということで、これまで民主党支持だった労働者たち、特に白人労働者が民主党から離れたと言うことは2016年の選挙後に分析されている。そうしたことを私は最新刊『世界覇権国交代劇の真相』で述べている。是非読んでいただきたい。

 民主党内のエスタブリッシュメント派と進歩主義派の対立については拙著『悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める』『バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる』でも詳しく書いている。2016年のサンダース躍進に刺激を受けて登場した、アレクサンドリア・オカシオ=コルテス(AOC)をはじめとする若手の議員たちは「ジャスティス・デモクラッツ」を結成し、主流派・エスタブリッシュメント派が支配する執行部と対立している。進歩主義派の若手議員たちは「スクアット(Squad)」と呼ばれている。バラク・オバマ元大統領は若手たちの動きを嫌がって、「銃殺隊(firing squad)をうろうろさせるな」という発言をしたほどだ。オバマは演説がうまくイメージが良いので、リベラル、進歩主義的とみられることもあるが、決してそうではない。それどころか、民主党を支配する大ボスということになっている。ジョー・バイデンに再選を諦めさせたのはオバマの力が大きい。

 民主党がこれから変化していくことは難しい。サンダースの「お説教」も何度目のことだろうか。2016年にヒラリー・クリントンがドナルド・トランプ支持者を「負け犬(deplorables)」と呼んだ。今年の選挙戦の最終版、ジョー・バイデン大統領は「ゴミ(garbage)」と呼んだ。熱心なトランプ支持者たちは元々、(熱心であったかどうかは別にして)民主党支持者だった。そうした人々を負け犬、ごみと呼んでしまうような民主党エスタブリッシュメントに対して、人々は失望と怒りを感じている。その結果が「赤い波」となった。

(貼り付けはじめ)

サンダース:民主党は「労働者階級の人々を見捨ててきた」(Sanders: Democratic Party ‘has abandoned working class people’

アレクサンダー・ボルトン筆

2024年11月6日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/homenews/senate/4977546-bernie-sanders-democrats-working-class/
バーニー・サンダース連邦上院議員(ヴァ―モント州選出、無所属)は水曜日、民主党が労働者階級の優先事項をほとんど無視していると非難し、それが、民主党がホワイトハウスと連邦上院を掌握する力を失った最大の理由だと指摘した。

サンダースは火曜日の選挙結果について声明を発表しその中で、「労働者階級の人々を見捨ててきた民主党が、労働者階級が彼らを見捨てたことに気づくのは、それほど驚くべきことではない」と述べた。

サンダースは「民主党指導部が現状を擁護する一方で、アメリカ国民は怒り、変化を望んでいる。そして彼らは正しい」と述べた。

サンダースの厳しい声明は、ハリス副大統領が一般投票で500万票近くの差をつけられ、民主党はウエストヴァージニア州、モンタナ州、オハイオ州の連邦上院議員の議席を失ったと見られる選挙後、これまでで最も厳しく最も鋭い批判となっている。

民主党と会派を組む無所属のサンダースは、「草の根民主主義と経済的正義(grassroots democracy and economic justice)を憂慮する私たちは、非常に真剣な政治的議論をする必要がある」と述べた。

サンダースは、ここ数十年のアメリカにおける経済的不平等の大幅な拡大、何十万人もの人々を失業させる恐れのある先端技術、高額な医療費、そして何万人もの犠牲者を出したガザ地区での戦争に対するアメリカの支持をそうした議論のテーマに挙げた。

「民主党を支配する大金持ちや高給取りのコンサルタントたちは、この悲惨な選挙戦から本当の教訓を学ぶのだろうか? 彼らは、何千万人ものアメリカ人が経験している痛みや政治的疎外感を理解するのだろうか? 経済的に大きな力を持ち、ますます強大化するオリガーキーに対抗する方法を、彼らは考えているのだろうか?」とサンダースは疑念を表明した。

「おそらくそういうことはないだろう」と彼は自身が提起した疑問に答えて述べた。

連邦上院厚生・教育・労働・年金委員会の委員長であるサンダースは2028年までに連邦最低賃金を時給7.25ドルから17ドルに引き上げるという提案について、今年は一度も採決を行うことができなかった。

サンダースはまた、2021年と2022年に連邦上院予算委員長として、メディケアを拡大し、彼が「住宅危機(housing crisis)」と呼ぶものに対処するための6兆ドルの予算融和案を推進しようとしたが失敗した。

その後、チャック・シューマー連邦上院院内総務(ニューヨーク州選出、民主党)は、ジョー・バイデン大統領の「ビルド・バック・ベター」アジェンダの縮小版を中道派のジョー・マンチン連邦上院議員(ウエストヴァージニア州、無所属)と交渉したが、サンダースや他の進歩主義派がバイデンの大統領任期開始時に抱いていた大きな野望には届かなかった。

サンダースとマンチンの間に緊張が走ったのは2021年10月のことで、マンチンは民主党が成立させようとしていたものに制限をかけ、授業料無料のコミュニティ・カレッジを除外しようとした指導者会議で、サンダースがウエストヴァージニア州の中道派であるマンチンに暴言を吐いた。

(貼り付け終わり)

(終わり)

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる
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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める

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 古村治彦です。

 2024年7月4日のイギリスの総選挙で、労働党が地滑り的な勝利を収め、キア・スターマー党首が首相となった。イギリスの総選挙は、労働党の勝利というよりも、保守党の自滅という面が強い。度重なるスキャンダルにインフレ対策の失敗といった面で国民から愛想をつかされた。また、保革二大政党制であったイギリスでも第三党が存在感を増しており、そのために、二大政党の得票率が大きく下がっている。全体で見れば、労働党は前回選挙と得票率は変わらなかったが、保守党はほぼ半減となり、自由民主党、スコットランド国民党、リフォームUKといった諸政党が存在感を増す結果となった。

 イギリスの労働党の勝利を、進歩主義派・左派・リベラル勢力(社会民主勢力)と位置づけ、世界各国のこうした勢力にとっての勝利のモデルとなるというのが下の論稿の著者の主張である。私は、労働党が勝利したというよりも、保守党が勝手に躓いたという考えであるので、世界的に通じるモデルケースになるとは考えていない。論稿の著者は各国の左派勢力に対する教訓を次のように述べている。

(貼り付けはじめ)

「まず、文化戦争の問題は、ほとんどの有権者にとって中心的な動機ではない。あらゆる主要な文化戦争問題に関して、労働党は保守党ほど人気のない立場にある。しかし、住宅ローン金利が2%から5%に上昇すると、「問題は経済なんだよ、愚か者」ということになる。進歩主義者はポピュリスト右派の非難を恐れる必要はない。有権者はより賢明な答えを必要としている。

第二に、ルール違反や汚職とみなされる行為は有権者にとって強力な動機となり、世界各国での世論調査がこれを証明している。進歩主義派は、利益相反、企業ロビー活動、世界の世界都市の最高級不動産の海外の国富を横領している政治家たちによる買い占め、そして政治的支配によって存在する新興独占企業への対処に対して、より強力な路線を必要としている。そうすることでポピュリスト右翼に真っ向から対抗することになる。

第三に、左翼のオンライン空間におけるアイデンティティ政治の優位性は、この形態の政治に対する国民の理解や関心と一致していない。階級は理解されるが、交差性は理解されない。階級は、様々な場所の進歩主義者にとって最も重要な境界線である場合もあれば、そうでない場合もある。しかし、進歩主義者が勝つためには、上流・中産階級以外の出身で、幻滅し取り残されたと感じている人々の心に響く、生きた経験を持つメッセンジャーが必要だ。つまり、アメリカの民主党にはアンジェラ・レイナーが必要なのである」

(貼り付け終わり)

 教訓としては、経済問題を重視すること(特に人々の生活に関連する)、腐敗やルール違反に対する断固とした態度、中流階級より下の階級出身者へのアピールができる個人的体験を持つ政治家の出現ということになる。日本で考えれば、立憲民主党に対する教区員ということになるが、物価高や国民負担率の増大への対処のための効果的な政策を訴えること、自民党の裏金問題に端を発する現在の与党への不信感の受け皿になることということは考えられやすい。立憲民主党の執行部や幹部の政治家たちに若い人は少なく、また、キア・スターマーやアンジェラ・レイナーのようなタイプはいない。頭が良くて人生の苦労をあまりしていないようなエリートタイプが揃っている。この点が、立憲民主党にとって、これから改善し、アピールしていくポイントということになるだろう。しかし、イギリス労働党の勝利がそのまま世界的な左派リベラル派の躍進の流れにつながるということはないだろうと私は考えている。

(貼り付けはじめ)

世界の左派にとってイギリス労働党の勝利が意味すること(What a U.K. Labour Win Means for the Global Left

-キア・スターマーの勝利はイギリスのイメージを大きく返るだろう。そして、世界中の社会民主主義者を元気づける可能性がある。

マイク・ハリス筆

2024年7月2日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2024/07/02/uk-election-labour-keir-starmer-sunak-class-supermajority-social-democracy-global-left/
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2022年9月24日、リヴァプールでの遊説の後に支持者たちを写真を撮るキア・スターマー労働党党首

私は世間話が苦手なので、大きな話をしたい。2022年後半、私はキア・スターマーと数人のアドバイザーたちとの個人的な会合の際に次のように言った。「あなたはおそらく、地球上のあらゆる議会の中で、最大多数を占める社会民主主義の指導者になるだろう。どんな感じか?」

スターマー氏の側近たちは苛立ちの表情を浮かべた。一方、イギリスの次期首相になる可能性が高かったスターマーは一瞬話を止めて、話題を逸らそうとした。そして、「何事も当然だと思ってはいけない(We can’t take anything for granted)」と語った。労働党の総選挙キャンペーンの非公式のモットーとなっていた。

しかし、スターマーは選挙での大成功に戸惑っているにもかかわらず(彼は本当に謙虚な人物だ)、75日の朝にはスターマーが世界の社会民主主義のスーパーヒーローとして目覚める可能性が高い。議会を持つ主要経済国の唯一の中道左派指導者となる。超多数派(supermajority)を獲得し、世界中の進歩主義者たちにとって大きな希望だ。

歴史的に間違いなく地球上で最も成功した政党である与党保守党は、現在選挙で忘却に直面している。2019年、ボリス・ジョンソンは労働党の中心地、いわゆる赤い壁(red wall)を破壊した。当時の指導者ジェレミー・コービンが政治的過激主義(political extremism)のサイレン音を受け入れた後、労働党はその基盤から切り離され、脱産業化の中心地で崩壊した。コービンは、バトル・オブ・ブリテンの記念式典での国歌斉唱を拒否し、党を財政逼迫の状況に追い込み、金融資産を持つ者たちを怖がらせた。

労働党は赤い壁を取り戻すだけでなく、ロンドンを取り囲む裕福なロンドン通勤者地区や、昔から保守に投票してきた田舎の選挙区など、青い壁(blue wall)で守られてきた、保守の堅固な議席を獲得し、進歩主義者の夢を実現しようとしている。例えば、イースト・ワーシング・アンド・ショアハムは、1780年に初めて保守党が議席を獲得し、それ以来一貫して保守党が支持を受ける選挙区の1つである。世論調査では、労働党がこの議席を獲得する勢いだ。

イギリスで起きていることは、控えめに言っても中道左派政党にとっては異例な現象だ。労働党はイギリス下院の全議席の70%を獲得する可能性があり、この勝利は1997年のトニー・ブレア元労働党党首・首相の選挙での勝利をも上回る可能性があり、あらゆる国の進歩主義派に教訓を与えることになる。政治的に支配的なスターマーは、高い不支持率に直面し統治課題の追求に苦戦しているフランスとドイツのエマニュエル・マクロンとオラフ・ショルツとは対照的に、完全な政治支配を行うリーダーとしてG7に出席することになるだろう。

イギリスでの労働党の勝利は、3つの主要な点で重要となるだろう。それは、進歩主義派が国政選挙でどのように勝利できるかを再検討し、社会民主党が達成できる最高水準を設定することになる。それは、勝利そのものよりも重要になる可能性のある、新しく予想外の方法でイギリスの政治を再構築するだろう。そしてそれは、イギリスに対する外部の認識を一変させ、イギリスとその将来に対する国際的な見方をリセットするだろう。

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ロンドンのダウニング街でボリス・ジョンソン首相の辞任を求めるプラカードを掲げるデモ参加者(2022年4月13日)

イギリスの政治階級がアメリカの政治階級に対して、病的なほどに執着を抱いているにもかかわらず、アメリカの民主党は池の向こう側を見て、労働党の成功から教訓を得るべき時なのかもしれない。

スターマーの成功の一部は、オーストラリア労働党がそうであったように、文化戦争問題(culture war issues)でオメルタ(omertà、神聖なる誓い)を立てたことである。それらの諸問題には、トランスジェンダーの権利、イギリスの植民地支配の過去、移民などが含まれ、イギリスの右派が利用しようとしてきた問題だ。元人権派弁護士であるスターマーは、論争の的となったルワンダからの強制送還計画を廃止することを約束したが、それはより広範な道徳的声明としてではなく、現実的な理由によるものだった。より広い移民問題に関しても、党は非常に慎重な姿勢で臨んでいる。これは確かに勇敢ではないが、うまくいっている。今回の選挙で文化戦争に火をつけようとしたあらゆる試みがあったが、労働党はそれらの争点について、焦点を絞ったままでうまく対応した。

保守党は文化戦争を引き起こそうとしてきているが、イギリスの有権者たちにとってより顕著なのは、力を持った保守党の汚職と規則違反の認識であり、選挙日を賭けるために、インサイダー情報を利用したという、選挙によって選出された政府職員たちが関与する現在のスキャンダルで人々の怒りは頂点に達した。

新型コロナウイルス感染症のパンデミック中に国民保健サーヴィス(National Health ServiceNHS)向けの保護用具の優先契約を含むスキャンダルや、そこでは驚くべき40億ポンド(50億ドル)相当の欠陥のある機器が調達された(一部は与党とつながりのある企業からのものとされている)スキャンダルなどが起きた。その後、ジョンソンとリシ・スナック現首相が新型コロナウイルス時代の法律違反で警察から罰金を科せられた「パーティーゲート(Partygate)」が登場した。同じく元首相デイヴィッド・キャメロンが関与したロビー活動スキャンダルも国民の大きな怒りを引き起こした。エリートのルール破りは、終わりのない文化戦争とは異なり、有権者の怒りに火をつけた。

並行して、労働党はコービン党首下のアイデンティティ政治の一形態(a form of identity politics)から、階級について非常に積極的な立場(a very proactive position on class)へと方向転換した。スターマーは自身の貧しい生い立ちをイギリスの選挙戦の表舞台に据え、イギリス社会の「階級の天井(class ceiling)」について誠実に語った。スターマーが純資産8億2200万ドルで、民主政治体制国家の指導者の中で最も裕福な指導者となっているスナクと争っていることから、これは特に有権者の共鳴を得ている。

スター魔の定番の演説は次のようなものだ。

「父は工場で工具製造者として働き、母は看護師だった。私たちが育った頃は何もなかった。現在の何百万もの労働者階級の子供たちと同じように、私も生活費の危機(cost-of-living crisis)の中で育った。カーペットがボロボロで窓がひび割れていて、友人たちを家に連れて帰るのが恥ずかしい気持ち、私にはよく分かる。実際のところは、私がサッカーボールを室内で蹴ったのでそのようなことになったので、責任は私にあるのだが」。

このように階級を重視するのは、現代イギリス政治においては異例なことだ。実際、最近の労働党指導者たち、ブレアからゴードン・ブラウン、エド・ミリバンド、コービンに至るまで、様々な点でイギリス労働者階級の部外者だった。ブレアとコービンは比較的裕福な(そして私立学校教育を受けた)生い立ちで、ブラウンとミリバンドは中産階級出身だった。 -階級的背景、そして部分的には、ミリバンドの父親はこの国で最も著名なマルクス主義学者の一人だった。保守党にとって、食料品店の娘だった首相の時代はとうの昔に過ぎ去った。キャメロンとジョンソンは、2年違いで同じエリート私立学校 (イートン校) に通っていた。それだけではない。彼らは同じ大学(オックスフォード大学)に通い、同じプライベート・ダイニング・クラブ [private dining club](最も特権的な人々のための)のメンバーだった。

スターマーは階級政治(class politics)を重視しており、それがうまく機能している。ほとんどの商品やサーヴィス(20%)に適用されるのと同じ付加価値税を私立学校の授業料に課すという約束は、子供を私立学校に通わせている、イギリスの親の6%である非常に裕福な人々からの怒りの爆発につながった。 スターマーにとって有利なことは、私立学校で教育を受けた人たちは保守派に投票する傾向があることが多い。一方、私立学校の税収を州立学校の94%の子供たちの教育に投資するという労働党の公約は、一般の有権者からの支持を集めている。

この階級重視の取り組みにより、他国では右派や極右に囚われてしまった有権者のグループを取り戻した。労働党は現在、得票率の38~42%で労働者階級の有権者の間でリードしており、保守党の22~24%とは対照的である。学歴が最も低い層については、50歳以上を除く全ての年齢カテゴリーで労働党がリードしている。

労働党とイギリス労働者階級との再関与を推進した立役者の1人が、副首相就任を目前に控えているアンジェラ・レイナーだ。レイナーは労働者階級出身であり、16歳で母親になり、37歳で祖母になった。自分の意見にとらわれず、強いお酒を好んで悪びれることのない喫煙者である彼女は、労働組合運動を通じて急速に手腕を発揮し、名前を上げていった。労働党の下院議員選挙候補者になるまで介護施設で働いていた。ライナーの物語は、優れた人々を議会政治に昇格させる方法についての教訓だ。彼女の成功は彼女自身のものだが、組合が彼女を育て、組合員は彼女を副リーダーとして支持した。彼女には真のスターとしての力があり、アメリカの民主党支配層の上層部には彼女のような人は事実上存在しない。

驚くべきことに、階級の側面はイングランドの中間階級を疎外していないように見える。幻滅した郊外派(surbubanites)や中道リベラル派(centrist liberals)は、ますます急進的で機能不全に陥っているように見える保守党によって切り捨てられてきた。スターマーの元首席検察官としての経歴と、正式には「サー・キアー」と呼ばれるナイト爵位は、保守党がポピュリスト右派の主張を悪びれることなく受け入れ、その支持を高めているのと同じように、スターマーに幅広い魅力を与えている。

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2022年10月24日、保守党党首選の勝者として発表され、レベッカ・パウ議員と同僚たちに迎えられるリシ・スナック(中央、右)

労働党の成功の一部は、保守党政権のここ数年間に起こった組織的な集団的混乱によるものである。保守党は2010年以来、5人の首相を国民に推挙してきたが、そのうち4人は国民全体ではなく、白人が大半を占める約17万人の男性党員によって選出された。経済成長は貧弱だ。イギリスだけでもNHSの待機リストには800万人近くの人がいる(この国では民間医療の利用は一般的ではない)。そして、刑務所や地方自治体を含む不可欠な公共サーヴィスはシステム失敗の危機に瀕している。

しかし、より根本的な変化が起こっている可能性を示す兆候は存在する。 65歳以上を除く全ての年齢層で労働党がリードしている。就労していれば、労働党に投票する可能性が高くなる。45歳未満の有権者の45%は労働党に投票する可能性が高いが、保守党を支持しているのは10人のうち1人に過ぎない。今回の選挙ではミレニアル世代がイギリス最大の投票層となる。彼らの主要な問題には、壊滅的な気候変動を防ぐ政策(イギリスの政治的スペクトル全体でよく支持されている)、住宅の建設、交通網の改善(特に自家用車を所有していない都市部のミレニアル世代の多く)、および家族寄りの政策が含まれる。これら全てが今回の選挙に影響を及ぼした。

西側諸国の高齢の住宅所有者たちは、ミレニアル世代向けの新築住宅の建設に反対することで、潜在的には世界最大のカルテル(the world’s largest cartel)を運営することに成功している。労働党は、現在持続可能な開発を妨げている計画規制を大幅に緩和することで、イギリスにおけるこうした状況に終止符を打つことに尽力している。

労働は勤労者への課税を排除しているが、不労所得(unearned income)についてはそのような公約はなされていないため、キャピタルゲイン税(capital gains taxes)の引き上げと、地主層を含む大富豪向けの抜け穴を減らすことで税制のバランスを再調整するのではないかという憶測が広がっている。農地は世代間で、非課税で引き継がれる。労働者には地主に対する愛情も無い。ロンドンの不動産市場が世界中の、国富を横領する政治家たち(kleptocrats)による投機的投資によって膨張してきた約20年を経て、外国人による不動産所有に対する新たな制限や新たな税金を求める国民の欲求が高まっている。

労働党はまた、テクノクラート的な実証主義者のエリート(technocratic positivist elite)で囲まれている。このグループには、スターマーの側近と緊密に連携する野心的な知的シンクタンクである「レイバー・トゥゲザー(Labour Together)」と、生命科学と人工知能における国の比較優位に沿ったテクノ未来主義を受け入れているトニー・ブレア研究所(Tony Blair Institute)が含まれる。スターマー政権の下での公共部門改革は、例えばNHSのデータの宝庫(7000万人分)を医療分野の革新を推進するために利用する可能性を想像すれば、重要なものとなる可能性がある。

労働党が未来に焦点を当てているのとはまったく対照的に、高齢化する右派有権者層は現在、保守党と、民間企業、政党、そしてナイジェル・ファラージの個人的なプラットフォームを組み合わせたような手段である、リフォームUKに二分されている。ファラージは、ドナルド・トランプがイギリスの高級な舞台小道具小道具として持ち出した、EU離脱支持(pro-Brexit、プロ・ブレグジット)の政治家とし闊歩している。イギリス議会保守党は既に右傾化している。保守党の議員たちはヨーロッパ人権条約を非難する複数の声明を出しているが、この中の1つの文書は、保守党議員でニュルンベルクのナチス検察官を務めた、デイヴィッド・マクスウェル=ファイフが共同起草した文書だ。この文書は、ウィンストン・チャーチル首相の戦後ヨーロッパに対するヴィジョンに触発された内容となっている。

一方、保守党議員の一部は既に、このほぼ確実な敗北を、党がポピュリスト的右派に十分に軸足を移していなかった証拠としようとしている。右派が分裂したことで、物議を醸すファラージの保守党入りが現実味を帯びてきており、労働党はこの見通しに歓喜している。言うまでもなく、保守党の次期党首が穏健派になる可能性は低い。党が右傾化すれば、ファラージ主義の器(essel for Faragism)となり、トランプ運動の弱いイギリス版となる日も近いかもしれない。

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2022年8月17日、党首選に先立ち、北アイルランドのベルファストで、保守党の候補者スナク(左)とリズ・トラス(右)を描いた壁画の仕上げを行うアーティストのキアラン・ギャラガー

最後に、大きな動き(vibes)がある。英国政治の進歩主義的な描き直しは、イギリスをめぐる物語を変えるだろう。国民の物語は一瞬にして反転する可能性がある。バラク・オバマからドナルド・トランプに至るまで、あるいは中国経済の優位性の思い込みが、習近平国家主席の下での縮小と衰退の感覚に至るまでの、外国人のアメリカに対する認識を考えてみよう。最近の記憶では、イギリスは大西洋中部のどこかに停泊している、かなり安定した政治的に鈍い島だと思われていた。EU離脱、ボリス・ジョンソン、そしてリズ・トラスがそれに終止符を打った。認識されている実際の混乱と反乱を引き起こす右派から進歩主義的な超多数派への移行により、態度は再び変化する可能性がある。

この大きな変化は、英国経済にとって特に重要だ。イギリスは伝統的な大国ではなくなったかもしれないが、依然として国際的にその地位を大きく上回る文化的地位を保っている。イギリスの GDPの6%は、イギリス音楽の成功からプレミアリーグ、急成長する映画やテレビ産業、ファッション、芸術に至るまで、クリエイティブ産業によるものだ。これはドイツの水準の2倍であり、ドイツの自動車生産のドイツ経済全体の貢献(4.5%)よりも大きい。雰囲気(vibes)を売りにし、創造性の輸出に依存しているこの国にとって、ブレグジット(Brexit)と孤立(isolation)は大きなダメージとなっている。

今では忘れ去られて久しいが、1997年から2008年の金融危機までの最後の労働党政権の間、英国はG7の中で最も急速に成長し、クリントンやブッシュ時代のアメリカを上回る経済成長を遂げた。現在停滞している国の経済を考慮すると、次の議会は更に困難になるだろうが、高度にオープンな社会においては、消費者の信頼感と投資家の信頼感の役割を過小評価することはできない。

2019年の総選挙で労働党が歴史的な敗北を喫した後、本誌に掲載した記事の中で、私は次のように書いた。「急進左翼主義(radical leftism)は、政党として服用すれば、翌朝には元に戻るような薬ではない」。私は選挙については正しかったが、翌朝については間違っていた。

労働党がわずか5年で歴史的敗北を歴史的勝利に変えるとは誰も予想していなかった。保守党が直面した状況は異常だったが、スターマーは厳格な党運営、イデオロギーではなく有権者重視、階級に基づく政治の散りばめが社会民主主義政治を活性化できることを示した。

これは他の中道左派政党にとってどのような教訓となるだろうか?

まず、文化戦争の問題は、ほとんどの有権者にとって中心的な動機ではない。あらゆる主要な文化戦争問題に関して、労働党は保守党ほど人気のない立場にある。しかし、住宅ローン金利が2%から5%に上昇すると、「問題は経済なんだよ、愚か者」ということになる。進歩主義者はポピュリスト右派の非難を恐れる必要はない。有権者はより賢明な答えを必要としている。

第二に、ルール違反や汚職とみなされる行為は有権者にとって強力な動機となり、世界各国での世論調査がこれを証明している。進歩主義派は、利益相反、企業ロビー活動、世界の世界都市の最高級不動産の海外の国富を横領している政治家たちによる買い占め、そして政治的支配によって存在する新興独占企業への対処に対して、より強力な路線を必要としている。そうすることでポピュリスト右翼に真っ向から対抗することになる。

第三に、左翼のオンライン空間におけるアイデンティティ政治の優位性は、この形態の政治に対する国民の理解や関心と一致していない。階級は理解されるが、交差性は理解されない。階級は、様々な場所の進歩主義者にとって最も重要な境界線である場合もあれば、そうでない場合もある。しかし、進歩主義者が勝つためには、上流中産階級以外の出身で、幻滅し取り残されたと感じている人々の心に響く、生きた経験を持つメッセンジャーが必要だ。つまり、アメリカの民主党にはアンジェラ・レイナーが必要なのである。

最も重要なことは、社会民主勢力には一度政権を握ると時間的余裕がないということだ。インフラの崩壊、公共サーヴィスの機能不全、生活水準の低下、住宅不足は全て、1960年代後半のアメリカの偉大なる社会プログラム(Great Society programs)や、イギリスの同時代の同様の政策以来見られない規模で国家が直接介入することを示している。しかし、勢いを増しているポピュリズム右派によって、更なる挑戦を受けることになるだろう。

ジョー・バイデン米大統領のインフレ抑制法は、ロンドンとブリュッセルで進歩主義派の話題となっており、バイデンの大胆さはもっと評価されるべきだ。超過半数を獲得したスターマーには、より大胆な計画を立てる余地がある。進歩主義的なイギリス政府は、この国に対するヨーロッパ人の見方をリセットするだけでなく、成功すれば、緊縮財政(austerity)と財政化(fiscalization 訳者註:税務上の金融取引を電子的に登録するプロセス)は、経済成長や社会の安定を生み出さないという欧州内の進歩的な議論を助けることができる。

スターマーの勝利は、世界の社会民主勢力にとって、裕福な民主政体国家における選挙での成功への最高水準となるだろう。スターマーにとっての課題は、スターマーにとっての挑戦は、多くの危機的状況が同時に起きている(polycrisis)時代における信じられないほどの希望の重さである。労働党が成長を実現し、住宅を建設し、賃金を引き上げることに成功すれば、他の国でも真似できる、そして真似すべき青写真を提供することになる。

※マイク・ハリス:世界的な通信機関である「89up」 の最高経営責任者であり、元労働党議員 3人の議会顧問を務めていた。ロンドンのルイシャム地区評議会の労働党副委員長でもあった。ツイッターアカウント:@mjrharris

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める

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 古村治彦です。

 アメリカでは中間選挙が終わり、連邦上院では民主党が過半数を確保し、連邦下院では共和党が過半数を確保することになった。事前の予想に比べて、民主党が大善戦したということになるが、連邦下院で過半数を失ったことで、ジョー・バイデン政権の政権運営は難しくなる。

 民主党の中には「スクアッド(the Squad)」と呼ばれる進歩主義派の若手議員たちがいる。その代表格がニューヨーク州選出のアレクサンドリア・オカシオ=コルテス連邦下院議員だ。この議員たちも今回の選挙で楽々と再選を決めた。スクアッドの議員たちは、「ジャスティス・デモクラッツ(Justice Democrats)」という進歩主義的な議員たちの増加を目指す政治行動委員会(PAC)からの支援を受けている。このPACの支援を受けて、今回複数の新人が初当選を果たした。進歩主義派の議員たちは民主党エスタブリッシュメント派と同調せずに、たとえ民主党の出した法案であっても、バイデン大統領肝いりの政策であっても、反対する場合がある。エスタブリッシュメント派にとっては目の上のたんこぶのような存在だ。

今回の中間選挙では、ニューヨーク州の連邦下院議員選挙で4つの選挙区で共和党が民主党から議席を奪取した。州知事選挙では、クオモ前知事がスキャンダルのために辞任して、副知事から昇格した現職のキャシー・ホーチュルが得票率約52%で勝利した。これは、最近の選挙結果から見れば、民主党側にとっては大苦戦ということになった。2016年の大統領選挙では民主党候補のヒラリー・クリントンが得票率約59%で勝利、2018年の州知事選挙では当時現職だったアンドリュー・クオモが得票率約59%で勝利、2020年の大統領選挙ではジョー・バイデンが得票率約60%で勝利を収めた。共和党側が支持を伸ばし、民主党は大事な地盤であるニューヨーク州で負けたということになる。
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2020年に比べて共和党が支持を伸ばした

この結果を受けて、アレクサンドリア・オカシオ=コルテス連邦下院議員はニューヨーク州民主党指導部を批判し、委員長の辞任を要求した。これに対して、エスタブリッシュメント派である指導部は「あなたは選挙のために何もしなかったではないか」と反撃するということになった。アレクサンドリア・オカシオ=コルテスは全米的に人気を誇る議員であるが、民主党エスタブリッシュメント派からは嫌われている。

 今回、民主党は予想よりも大きく負けなかったということで、民主党が勝ったようなものだという雰囲気が醸し出されているが、足元のニューヨーク州で負けているというのは深刻な事態である。2024年の大統領選挙と連邦議会選挙に向けて、民主党は立て直しを図らねばならないが、党内融和と協力体制を作るところからということになる。しかし、それが困難なほどに党内での分裂は厳しいものがある。

(貼り付けはじめ)

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自身の選挙で落選した民主党の選挙対策委員長がオカシオ=コルテスを非難:「彼女はニューヨーク州の各選挙区での民主党候補の勝利にほぼ何も貢献しなかった」(Ousted Dem campaign chair blasts Ocasio-Cortez: ‘She had almost nothing to do’ with our wins

ジュリア・シャピロ筆

2022年11月10日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/homenews/campaign/3730516-ousted-dem-campaign-chair-blasts-ocasio-cortez-she-had-almost-nothing-to-do-with-our-wins/

アレクサンドリア・オカシオ=コルテス連邦下院議員(ニューヨーク州選出、民主党)がニューヨーク州で民主党が敗北を喫したことに民主党指導部の責任を追及したことを受けて、連邦下院民主党選挙対策委員会委員長シーン・パトリック・マロニー連邦下院議員(ニューヨーク州選出、民主党)はオカシオ=コルテスを非難した。

マロニー議員は『ニューヨーク・タイムズ』紙の取材に対して次のように述べた。「はっきりさせておきたい。民主党が過半数を維持するための歴史的な防衛戦において、彼女はほぼ何も貢献しなかった。「党の選挙資金をびた一文負担しなかった。彼女からの資金など望まなかった最前線に立つ候補者たちに資金を押し付けること以外には何もしなかった」。
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火曜日の中間選挙の投開票の結果、ニューヨーク州が右傾化したことが明らかになったことを受け、オカシオ=コルテスは水曜日にニューヨーク州民主党指導部を批判した。共和党は、ニューヨーク州全体で、民主党が保持していた4議席を奪取した。その中にはマロニー自身の議席も含まれていた。

オカシオ=コルテスは特に、ニューヨーク州民主党委員会委員長ジェイ・ジェイコブスの辞任を求めた。

しかしながら、マロニーはニューヨーク州選出の連邦下院議員であるオカシオ=コルテスに反撃し、中間選挙における彼女の支援のレヴェルについて疑義を呈した。

マロニーは「民主党が今回の中間選挙において連邦下院で過半数を維持するために、彼女は1分も時間を使わなかった。彼女がどのようなアドヴァイスを持っているかは分からないが、きっと惜しみなくアドヴァイスを与えてくれるだろう」と語っている。

オカシオ=コルテスは木曜日の夜、マロニーが彼女の選挙運動を無視していると主張し、反論した。

このような状況下、オカシオ=コルテスは、「マロニーは私に接戦の選挙を戦っている各民主党陣営に寄付を呼びかけた。私がこの選挙戦で行った最初のことは寄付だった」とツイッターで述べた。彼女は続けて「今回の選挙で25万ドル以上を民主党に寄付し、民主党連邦議会選挙対策委員会(DCCC)の資金集めを促進したのに、彼はそれを否定している。もし彼が、私のカリフォルニア訪問や私たちの努力を知らないのなら、それは彼の責任だ」と書いた。

連邦下院民主党は、中間選挙で共和党の「赤い波(red wave)」を退け、大敗するという予測を覆した。しかし、共和党が連邦下院を支配する可能性は依然として高いと見られている。

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オカシオ=コルテスが中間選挙の結果に関してニューヨーク州民主党指導部を非難(Ocasio-Cortez slams NY Democratic Party leadership over election results

ミカエル・シュニール筆

2022年11月9日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/homenews/house/3727383-ocasio-cortez-slams-ny-democratic-party-leadership-over-election-results/

アレクサンドリア・オカシオ=コルテス連邦下院議員(ニューヨーク州選出、民主党)は水曜日、中間選挙の結果でニューヨーク州が右傾化したこと(共和党が勢力を伸ばしたこと)を受け、ニューヨーク州民主党指導部を非難し、委員長の辞任を要求した。

オカシオ=コルテスはツイッター上で次のように書いた。「ニューヨーク州民主党指導部は、前ニューヨーク州知事アンドリュー・クオモ(民主党)の下で骨抜きにされ、ロビイストを詰め込み、共和党を後押しするために働き、ニューヨーク州の再編成を守るための基本的な州投票法案を通せなかった、説明責任を果たすべきだ」。

オカシオ=コルテスは「私は1年前にジェイ・ジェイコブスの辞任を要求し、今もその立場を変えていない」とニューヨーク州民主党の会長に言及した。

オカシオ=コルテスは、ニューヨーク・タイムズ紙が発表した、今年のニューヨーク州知事選挙の得票と2020年の大統領選挙での得票を比較したグラフィックに反応した。ニューヨーク・タイムズによると、今年のニューヨーク州の投票はより共和党にシフトしたということだ。

しかしながら、ニューヨーク州知事キャシー・ホーチュル(民主党)は、リー・ゼルディン連邦下院議員(ニューヨーク州選出、共和党)の挑戦を退け、セクハラ疑惑で辞任したクオモの後に就任したニューヨーク州知事として初めて完全な任期を確保した。

その後のツイートでオカシオ・コルテスは、ジェイコブスが元KKK指導者のデイヴィッド・デュークを含めた類推を行ったことで炎上した事件を詳細に伝える2021年10月の記事のリンクを掲載した。

2021年10月、ジェイコブスは、候補者が予備選に勝ったからといって党が支持する必要はないと主張し、デイヴィッド・デュークがニューヨーク州の民主党予備選挙で勝利するという「シナリオ」を提示した。

オカシオ=コルテスは次のように書いている。「民主党の議席を守るはずだった投票法案の惨敗に党を導いた後、委員長(ジェイコブス)は民主党候補となったアフリカ系アメリカ人女性をKKKと比較した。それなのに彼は守られたのだ。昨夜の劣勢はその決定の結果だ」。

そして、3つ目のメッセージで、オカシオ=コルテスは、「昨晩のニューヨーク州での民主党の劣勢は、パフォーマンス、戦略、そして組織化よりも、石灰化したマシーン政治とコネや優遇を優先してきた長年の証しである」と述べた。

オカシオ=コルテスは、党委員長ジェイコブスは「去らねばならない」と述べ、「そして私たちはコミュニティのリーダーシップと小さな民主政治体制をより大切にするために党を再編成しなければならない」と付け加えた。

本誌はジェイコブスにコメントを求めた。

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「スクアッド」のメンバー議員たちが順調に再選を決める(‘Squad’ members cruise to reelection

ザック・ションフェルド筆

2022年11月8日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/homenews/campaign/3726475-squad-members-cruise-to-re-election/

火曜日の中間選挙で、「スクアッド」と呼ばれる6人の進歩主義的な連峰下院議員のグループが、全員再選を果たすと予測されている。

様々な報道機関が、これらの民主党の連邦下院議員の当選を報じている。アレクサンドリア・オカシオ=コルテス(ニューヨーク州選出)、イルハン・オマル(ミネソタ州選出)、アイアナ・プレスリー(マサチューセッツ州選出)、ラシダ・タリブ(ミシガン州選出)、コリ・ブッシュ(モンタナ州選出)、ジャマール・ボウマン(ニューヨーク州選出)がスクアッドのメンバーである。
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しかしながら、全ての議員が2020年の大統領選挙でジョー・バイデン大統領がトランプに対して得票率で2桁の差をつけた選挙区の出身なので、彼らの勝利は驚くに値しない。

オカシオ=コルテス、オマル、プレスリー、タリブの4人は、2018年の選挙で初当選した後、1年生議員グループとして注目され、ソーシャルメディアで多くのフォロワーを獲得した。

「ニューヨーク州第14選挙区を代表する連邦下院議員という大きな責任を私に託してくれた、コミュニティのメンバー全てと草の根の支援者に感謝します」とオカシオ=コルテスはツイートした。彼女は続けて「私たちは毎回、少ない選挙資金で選挙運動をやっています。新しい種類の統治を可能にしてくれる皆さんには、感謝の念を抱き続けています」と書いた。

上記の4人に2020年の選挙で当選したブッシュとボウマンがメンバーに加わった。

6人の連邦下院議員はいずれも比較的若く、党のエスタブリッシュメント派には同調しないという意志を示している。

彼らは、バイデン大統領や多くの民主党連邦議員が中間選挙までの数カ月の間に繰り返し宣伝した主要法案である超党派インフラ法に反対票を投じた唯一の民主党連邦議員グループになった。

連邦下院民主党が9月に上程する予定だった警察・治安関連4法案について、そのうちの1法案に「説明責任方策」が欠けているとして、スクアッドのメンバーたちは審議を延期させる事態を招いた。

このグループのメンバーの中にはブッシュやタリブなど、予備選挙でより穏健な候補者からの挑戦に直面したメンバーもいた。現職議員の2人は民主党の予備選挙で楽に勝利した。

タリブは次のようにツイートした。「ヴォランティアの皆さん、人々の投票する権利を守ってくださったこと、ありがとうございます。十分な配慮をしてくださってありがとうございます。喜びと愛を持って活動してくださってありがとうございます。今夜、私たちは、私たちのコミュニティが美しく、力強いものであることを人々に示すでしょう。私たちは沈黙するつもりはありません」。

(貼り付け終わり)

(終わり)

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ビッグテック5社を解体せよ

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める
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 古村治彦です。

 2022年11月の中間選挙まで残り約1カ月強となった。現在のところ、下の図が示しているように、連邦下院で共和党が過半数を握る可能性が高いと見られている。連邦上院で共和党が過半数を握る可能性もあるが、どのようになるか、先行きは不透明だ。4年ごとの大統領選挙の間に行われる連邦上下両院、各州の州知事の選挙は中間選挙(midterm elections)と呼ばれている。大統領を出している与党と大統領自身にとっての中間試験の意味合いが強い。これまでの中間選挙を見てみると、与党側に対して厳しい結果が出ることが多い。
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連邦上院の情勢
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連邦下院の情勢

 今回、2022年の中間選挙の各種選挙の、民主、共和両党の候補者を決める予備選挙(primaries)に関してはいくつかの特徴がある。まず、共和党側はドナルド・トランプ前大統領が支持した候補者たちが共和党の予備選挙で勝利し、各種選挙の共和党候補者となった。現職議員でもトランプから支持を得られなかった、もしくはトランプに敵対していると見られた人たちの多くが、共和党予備選挙で敗北した。その代表例が、このブログでも採算ご紹介してきたリズ・チェイニー連邦下院議員(ワイオミング州選出、共和党)だ。共和党はトランプの意向に大きく影響される状態になっている。その共和党が連邦議会で過半数を占めるということになれば、アメリカの国政全体におけるトランプの影響力は大きくなるということになる。

 民主党側では進歩主義派が勢力を拡大しつつあるが、その勢いが少し衰えているようだ。2016年の米大統領選挙でのバーニー・サンダース連邦上院議員(ヴァーモント州選出、無所属)の躍進によって、民主党内に進歩主義派の勢力が拡大していった。サンダースの大統領選挙の選対に参加していたアレクサンドリア・オカシオ・コルテスが2018年の連邦下院議員選挙に当選し、アメリカ政界で大きな注目の的になっていることは日本でも報道されている。私も拙著『悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める』で民主党内の進歩主義派の動きとエスタブリッシュメント派からの反発について取り上げている。今回の中間選挙の民主党予備選挙ではあまり勢力を伸ばすまでには至っていないが、すでに一定の勢力となっているのは確かだ。

 民主、共和両党でエスタブリッシュメント派は力を弱めているということになる。私がこれまでも述べてきたように、アメリカ政界を大きく見ると、民主、共和両党はそれぞれ、エスタブリッシュメント派対進歩主義派、エスタブリッシュメント派対トランプ派(MAGA派)に分裂している。進歩主義派とトランプ派はまったく相いれないようであるが、その根底には人々の既存の政治に対する怒りと不信からくるポピュリズム(Populism)がある。民主、共和両党の枠組みを取っ払えば、エスタブリッシュメント対ポピュリズムということになる。

 民主党エスタブリッシュメント派は、共和党側でトランプ派の候補者を増やして、自党の候補者に無党派層や共和党穏健派からの支持を集めようという戦略を採用したということだ。これが奏功すれば民主党が持ち直すことになるだろうが、今のところ、連邦下院では共和党が過半数を握るという状況では敵を招き入れてしまうという結果になるように思われる。

 連邦上下両院で民主党が過半数を失い、ポピュリズム派が勢力を拡大するということになると、ジョー・バイデン政権のかじ取りもますます難しくなる。バイデン政権が掲げる政策課題の実現も厳しくなる。これからの2年間でバイデンが支持率を上昇させるような大逆転を行えるとすれば、それはウクライナ戦争の停戦を実現することであるが、アメリカが進んで武器を供与している状況ではそれも難しい。アメリカ政治は手詰まり感がどんどんと深まっていくことになる。

(貼り付けはじめ)

重要な予備選挙の時期の5つの特徴(Five takeaways from a bruising primary season

マックス・グリーンウッド筆

2022年8月27日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/homenews/campaign/3617430-five-takeaways-from-a-bruising-primary-season/

今週、フロリダとニューヨークで行われた予備選挙で、2022年最後の主要な指名争いが行われ、今後2年間の連邦議会の主導権を握ることを目指す連邦議会選挙(中間選挙)に関心が移りつつある。

今年3月から今週にかけて行われた民主、共和両党の予備選挙は、両党とその有権者、そして秋の選挙戦の行方を占う上で重要な示唆を与えることになった。

2022年の予備選挙から見える5つの特徴を見ていく。

(1)共和党は依然としてドナルド・トランプの政党であり2020年にまだこだわっている。

ドナルド・トランプ前大統領は1年半以上前にホワイトハウスを去ったけれども、今年の共和党予備選挙では、彼が依然として国内で最も影響力のある共和党員であることが証明された。

トランプからの支持の影響は明らかで、共和党の官衙や意見を形成し、予備選を混乱させ、共和党幹部の中には勝利はおぼつかないはずだと楽観視していた候補たちを予備選挙勝利に導いた。

トランプからの支持を得るために、20020年の大統領選挙の結果と、それが自分に不利に操作されているという彼の誤った主張ほど重要な問題はないということになる。共和党の候補者たちは選挙戦で頻繁にこの主張を繰り返し、中にはこの主張を中心に選挙戦を展開し、前大統領に気に入られることを狙う者たちも出た。

最終結果は次のようになった。全米で注目を集めた共和党の予備選挙のほとんどで、有権者たちはトランプに味方した。

最も競争率の高い連邦上院議員選挙の共和党候補者全員が、予備選挙の前にトランプ前大統領の支持を受けていた。2021年1月6日の連邦議会議事堂進入事件に関与したトランプの弾劾に賛成投票した後に再選を目指した連邦下院共和党議員6人のうち、共和党の予備選挙で再選を勝ち取ったのは2人だけという結果になった。

そして、2020年の選挙結果に疑問を呈したり、真っ向から否定したりした候補者は、知事、連邦上院、連邦下院、州務長官の本選挙の党候補者指名を確保し、2022年11月の全米の投票用紙に名前が記載されることになる。

もちろん、いくつかの例外はある。たとえばジョージア州のブライアン・ケンプ知事は、トランプが支持する予備選挙の相手、デイヴィッド・パデュー元上院議員(ジョージア州選出、共和党)に地滑り的な勝利を収めた。また、サウスカロライナ州では、ナンシー・メイス連邦下院議員(サウスカロライナ州選出、共和党)が、トランプ推薦のケイティ・アリントンを相手に予備選で勝利した。

それでも、2022年の共和党予備選挙で1つだけはっきりしたことがあるとすれば、それは共和党支持の有権者たちが依然として圧倒的にトランプを支持しているということだ。

(2)民主党は順当な勝ちが続いたが、進歩主義派がいくつかの重要な勝利を収めた(Democrats largely played it safe, but progressives scored some key wins

民主党の方向性をめぐる議論は続いているが、全米の有権者たちは予備選挙で穏健派や体制派を支持し、それが民主党にとって厳しい政治環境の中で勝利を収めるための最善策と考えたようだ。

例えば、オハイオ州では、バーニー・サンダース連邦上院議員(ヴァーモント州選出、無所属)の大統領選挙キャンペーンで共同議長を務めた進歩主義派のニーナ・ターナー前オハイオ州上院議員が、党内のエスタブリッシュメント派の支持を受けたションテル・ブラウン連邦下院議員(オハイオ州選出、民主党)に2度目の敗北を喫した。

同様に、保守的なテキサス州南部出身のヘンリー・クエラー連邦下院議員(テキサス州選出)は、全米の注目を集めたレースで進歩主義的なジェシカ・シスネロスに僅差で勝利した。

それでも、民主党左派にとって悪いことばかりではなかった。

2つの重要な激戦州で、進歩主義的な人々が連邦上院議員選挙の民主党指名を勝ち取った。ペンシルヴァニア州では、ジョン・フェッターマン副知事が、郊外や農村部の有権者を取り込むのに有利な候補とされる穏健派のコナー・ラム連邦下院議員(ペンシルヴァニア州選出、民主党)を破り、ウィスコンシン州のマンデラ・バーンズ副知事はロン・ジョンソン連邦上院議員(ウィスコンシン州選出、共和党)への対抗馬としてチャンスを得た。そして今週、フロリダ州中部地区の民主党は、ヴァル・デミングス連邦下院議員(フロリダ州選出、民主党)の後任として、サンダース支持の銃規制活動家マックスウェル・アレハンドロ・フロストを指名したばかりである。

しかし、今年の民主党予備選挙は、進歩主義的な人々が期待していたイデオロギーの転換点にはほど遠いものとなった。

(3)現職の連邦下院議員の多くにとって厳しい季節となった(It was a tough season for a lot of House incumbents

まだいくつかの予備選挙が残ってはいるが、2022年の予備選挙はこれまでの20年間で最も多くのアメリカ連邦下院の現職議員たちが党の再指名を得ることに失敗した年となる道筋をたどっている。

ウェブサイト「バロットピア」によると、今年に入って、15名の現職連邦下院議員たち、9名が共和党所属、6名が民主党所属であるが、連邦議会に帰る道を断たれることになった。「バロットピア」はこれらの敗北を追いかけている。

これらのケースの中には、議員たちの個人の力ではどうしようもない環境の変化のために起きた敗北もある。多くの場合、それは10年ごとの選挙区区割り変更のために起きた。

例えば今週、連邦下院議員歴30年のヴェテラン議員、キャロリン・マロニー連邦議員(ニューヨーク州選出、民主党)は、マンハッタン区で行われた選挙区の区割りで選挙区が合併された結果、同じくヴェテランの現職のジェリー・ナドラー連邦下院議員(ニューヨーク州選出、民主党)に民主党予備選挙で敗れた。最初から、現職議員2名のうちどちらかが負けることは決まっていた。

しかし、他の予備選挙では、現職議員が政治的選択、とりわけトランプ弾劾への投票によって苦境に立たされた。その決断は、リズ・チェイニー連邦議員(ワイオミング州選出、共和党)、トム・ライス(サウスカロライナ州選出、共和党)、ピーター・メイジャー連邦下院議員(ミシガン州選出、共和党)、ハイメ・ヘレラ・ブートラー連邦下院議員(ワシントン州選出、共和党)に終わりを告げた。これらの現職の共和党所属の連邦下院議員たちは、トランプ支持の予備選挙での挑戦者に敗れた。選挙期間中、議員たちは弾劾投票について激しい批判に晒された。

また、マディソン・コーソーン連邦下院議員(ノースカロライナ州選出、共和党)のように、いくつもの論争の的になって予備選で敗退した現職議員たちもいる。

(4)民主党側の足元固め(Democrats found their footing

今年の前半、民主党はいくつかの困難な問題に直面していた。連邦議会での立法課題はほとんど行き詰まり、インフレイションは過去数十年で最高レヴェルに達し、主要な政治的な成功はホワイトハウスには存在しなかった。

さらに悪いことは重なり、民主党は、「中間選挙では政権与党が必ず敗北する」という現実にも直面していた。

この事実は今も変わらないかもしれない。しかし、連邦最高裁判所がロウ対ウエイド判決を覆して以来、民主党の状況は著しく変化した。この判決は、性と生殖に関する権利(reproductive rights、リプロダクティブ・ライツ)の保護が損なわれることを恐れる有権者たちを結集するための強力なメッセージを民主党に与え、自己満足が懸念される中で民主党を再び活性化させるのに役立った。

民主党にとって最大の転機となったのはカンザス州だ。州憲法から中絶の権利を消去しようとする修正案が有権者に大差で否決されたのである。

それ以来、民主党はより明確なメッセージ戦略を打ち出し、共和党が連邦議会で過半数を占めることが性と生殖に関する権利にとって何を意味するかを警告し、大規模な税制・気候変動法案の成立を宣伝し、民主党には堅実な手腕があるとアピールするよう努めた。

もちろん、民主党の中間選挙の見通しはいくらか明るくなったように見えるが、依然として厳しい政治情勢と共和党に有利となる可能性のある強い歴史的逆風に直面していることに変わりはない。

(5)しかしながら共和党支持の有権者たちは活気づけられている(But Republican voters are still energized

民主党にとって見通しは明るくなったかもしれない。しかし、今年の予備選挙の結果を見ると、共和党の指導者たちが1年以上にわたって主張してきたことに依然として信憑性を与えている。共和党支持の有権者は活気づいてやる気になっている。

主要な激戦州の最重要選挙戦では、共和党の予備選投票率が民主党の投票率を何度も上回り、共和党の有権者が今年も熱心に投票に臨んでいることが明らかになっている。

ジョージア州の連邦上院補欠選挙では、共和党の投票者数が民主党の投票者数を50万人近く上回った。アリゾナ州では、複数の選挙での共和党予備選挙で20万人以上の有権者が投票を行った。ペンシルヴァニア、ウィスコンシン、ノースカロライナ、ネバダ、フロリダの各州でも共和党の投票率の優位性は保たれている。

確かに、共和党の投票率の高さは、有権者の熱意だけによるものではないかもしれない。例えばジョージア州では、共和党は州知事選挙の共和党予備選で熱戦を繰り広げたが、民主党のステイシー・エイブラムス候補は誰からも挑戦を受けずに民主党の候補者指名を勝ち取った。

ノースカロライナ州も同様で、共和党は引退するリチャード・バー連邦上院議員(ノースカロライナ州選出、共和党)の後継を決める予備選挙でテッド・バッド連邦下院議員(ノースカロライナ州選出、共和党)とパット・マクロリー前知事の二者択一の選択となった。一方、民主党は、シェリー・ビーズリーを候補者として、既にほぼまとまった形になっていた。

しかし、フロリダ州では民主党が最も競争の激しい予備選挙の選挙戦を展開し、ペンシルヴァニア州とウィスコンシン州では賛否両論の熱い戦いが繰り広げられた。

また、今年のこれまでの各種世論調査の結果、共和党支持者の方が民主党支持者よりも11月の中間選挙の本選挙投票に熱心であることが明らかになっている。しかし、民主党の見通しが良くなるにつれて、その熱意の差も縮まり始めている。

ウェブサイト「モーニング・コンサルと」が先週発表した世論調査によると、共和党支持者の65%が中間選挙での投票に「きわめて」または「非常に」熱心であることが分かった。一方、民主党支持者の62%も同様に答えている。

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アメリカでの共和党予備選挙でドナルド・トランプが支持した候補者たちが勝利を重ねる(Donald Trump-backed candidates prevail in US primaries

-ドナルド・トランプ前大統領が共和党の一部に影響を与え続けていることを示す5つの州の予備選挙の結果

コートニー・ウィーヴァ―筆

2022年8月3日

『フィナンシャル・タイムズ』紙

https://www.ft.com/content/a114b4f5-11aa-4f26-b6b6-7a99c89b11da

ドナルド・トランプが支持した複数の候補者たちが、火曜日にアメリカの5つの州で行われた共和党予備選挙で勝利し、トランプ前大統領が共和党の一部の地域を引き続き支配していることが浮き彫りになった。

ミシガン州では、トランプ政権元高官ジョン・ギブスが、元雇用主(トランプ)の推薦と民主党から外部資金支援を受けて、現職の共和党所属の連邦下院議員ピーター・メイジャーを追い落とした。メイジャー議員は昨年、16日の連邦議会議事堂進入事件でトランプの弾劾に賛成票を投じた。

ミズーリ州では、2020年の米大統領選挙結果を覆す訴訟を支持し、同選挙でトランプが推薦した2候補のうちの1人だったエリック・シュミット州司法長官が、連邦上院の議席をめぐる争い(共和党予備選挙)で勝利を収めた。

一方、まだ開票中のアリゾナ州の共和党予備選挙では、知事選挙と連邦上院議員選挙の候補者には、トランプ氏が支持する候補者2人が決まり、今年後半の本選挙で民主党の対抗馬に挑むことになった。

アリゾナ州の連邦上院議員選の共和党予備選挙では、トランプは、億万長者ピーター・ティールの会社の元社員で、かつてのハイテク企業の雇用主ティールから多額の資金援助を受けて立候補したブレイク・マスターズを支持した。

アリゾナ州知事選挙では、トランプは2020年の大統領選挙が盗まれたという主張に共感する元テレビ司会者のカリ・レイクを支持した。レイクは民主党に所属していた。火曜日の夜、まだ開票中にもかかわらず、レイクは共和党予備選挙で勝利したことを宣言した。

トランプ政権の元副大統領であるマイク・ペンスを含む共和党のエスタブリッシュメントの多くは、カリン・テイラー・ロブソンを知事候補として支持していた。ロブソンは2020年の大統領選挙で票が盗まれたかどうかについては明言を避けているが、トランプの疑惑に関する主張を支持するところまでは至っていなかった。

トランプが推薦したアリゾナ州務長官選挙の共和党予備選挙で、2020年の大統領選挙の結果を声高に否定するマーク・フィンチェムは、州の投票を監督する立場となる州務長官選挙で、共和党の候補者指名を確保した。

トランプは、今年の共和党予備選で、注目度の高い知事選挙、連邦上院議員選挙、連邦下院議員選挙、地方選挙などで200名以上の候補者を支持している。

ジョージア州のデイヴィッド・パデュー元連邦上院議員など、トランプ前大統領が推薦した候補者の中で失敗した人もいるが、多くは国内で最も争いの激しいレースで勝利を収めている。ただし、世論調査の結果や資金調達で苦戦している人たちもいる。

ミズーリ州の連邦上院議員選挙の共和党予備選挙で、トランプは2名の候補者を支持するように見えた。トランプは声明で「エリック」を支持すると述べたが、それが不祥事疑惑で2018年に辞任した物議を醸した前知事のエリック・グレイテンズなのか、前司法長官のエリック・シュミットなのかはっきりさせなかった。

トランプの周辺では、将来は義理の娘となるキンバリー・ギルフォイル(訳者註:2020年にエリック・トランプと婚約)などが、トランプにグレイテンズの支持を強く求めていたが、大統領に近い人たちは、今回の指名で共和党が確保している議席が危うくなると警告している。

共和党の予備選挙の多くで、トランプは、自分の再選運動が盗まれたあるいは不正によってゆがめられたという虚偽の主張を公に支持した候補者たちを支持し、ミシガン州のメイジャーのように支持しなかった候補者を罰することに重きを置いている。

民主党もミシガン州の選挙でトランプが支持する候補を支援するために資金を使った。これは、より右派的なギブスとの対決でミシガン州を取り返す可能性が高いと考えたからだ。

アリゾナ州を拠点とする共和党系のストラティジストであるローナ・ロメロ・ファーガソンは、2020年の大統領選挙に焦点を当て続けることは、アリゾナのような州では、党が本選挙に軸足を移すため、それらの候補者の一部には逆効果になる可能性があると述べた。

ロメロは次のように指摘した。「州全体で勝つためには、共和党はメッセージの幅を広げ、穏健派や共和党寄りの無党派層など、より多くの有権者を引きつける必要がある。再選を目指す民主党所属の連邦上院議員マーク・ケリーは、経済、ガソリン価格の引き下げ、警察への資金援助に焦点を当てた広告を何カ月もテレビに流している。それを見習うべきだ」。

ロメロは、「共和党はただ有権者にとって本当に重要な問題に集中すればよい」とも述べた。

(貼り付け終わり)

(終わり)

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める
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 古村治彦です。

 民主党側からは激しい非難がマンチンに対して向けられている。「裏切り者」「嘘つき」という激しい非難がなされている。現在、連邦上院は民主、共和両党で50議席ずつ分け合っている状態で、副大統領の議長決裁(tie-breaking vote)で何とか民主党が過半数を握っている状態だ。そのため、法案を可決させるためには民主党所属議員全員の賛成が必要ということになる。マンチンが気候変動と社会支出法案に反対を表明したことで、そのバランスが崩れてしまった。共和党が全員反対でマンチンが反対に回れば反対51、賛成49となる。
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マンチン(左)とシューマー院内総務(民主党)

 共和党にとっては今年の中間選挙で民主党に打撃を与え、連邦上下両院で過半数を奪還するチャンスと見ている。そして、ジョー・バイデン大統領に打撃を与え、2024年の大統領選挙でホワイトハウスを奪還する布石としたいとも考えている(共和党の候補者となる人物はまだ定かではないが)。

 民主党指導部はマンチンに圧力をかけるために、敢えてビルド・バック・ベター法案の採決を行おうと考えている。しかも修正法案も含めて複数回にわたって採決投票を行おうとしている。民主党指導部は注目法案の採決投票を複数回行い、マンチンが反対票を投じ続けることを想定している。それによって地元の有権者に対して、マンチンが反対し続けたということをアピールして、次の選挙で民主党支持の有権者たちや組織団体からの支持を得られなくするという狙いがある。「裏切り者には落選という制裁を」ということになる。

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マンチン(左)とマコーネル院内総務(共和党)
 共和党側は以前からマンチンに共和党への入党を勧誘してきたようだ。2000年以降のウエストヴァージニア州の大統領選挙と連邦上下両院議員選挙の結果を見ると、マンチンを除いてほぼ共和党が勝利を収めている。ウエストヴァージニア州はレッドステイト(共和党優勢州)となっている。マンチンが共和党に入党すれば、現職の連邦上下両院の議員は全員共和党所属ということになる。更に、2020年の選挙で失った連邦上院での過半数を労せずして奪還できるということになる。しかし、マンチンは、「こちらに来ませんか」という共和党からの誘いを断っている。

 更に言えば、民主党内の亀裂は深刻で、進歩主義派は「マンチンは酷い裏切り者だが、マンチンが裏切るということはあらかじめ分かっていたことで、それに対して何の備えもしてこなかった連邦議会民主党指導部にこそ問題がある」と主張している。進歩主義派は約2兆ドル規模の大型支出法案でも「規模が十分ではない」としながらも、連邦下院で賛成に回ったという経緯がある。元々は6兆ドル規模の支出を想定していたのだから、それが3分の1にまで削られたことは大いに不満だが、可決成立しないよりはましということで賛成に回ったのに、連邦上院で通らないとなれば、批判の矛先はどうしても民主党指導部に向く。進歩主義派からすれば、2020年の選挙で副大統領の議長決裁付ではあるが、民主党が連邦上院で過半数を握ることに成功したのに、民主党指導部は無能だということになる。

 民主党内部の亀裂とまとまりのなさが今回の事態で明らかになった。これが今年前半も続けば、中間選挙の結果は厳しいものとならざるを得ない。

(貼り付けはじめ)

民主党はマンチンに対して厳しい態度で臨むことになる(Democrats set to play hardball with Manchin

アレクサンダー・ボルトン筆

2021年12月21日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/homenews/senate/586686-democrats-set-to-play-hardball-with-manchin

連邦上院民主党は、ジョー・マンチン連邦上院議員(ウエストヴァージニア州選出、民主党)に対して、民主党が主導する気候変動と社会的支出法案を支持するように圧力をかけるためにより厳しい態度で臨む意図を持っていることを示唆している。ここ数カ月、連邦上院民主党はマンチン議員からの支持を得るために慎重なアプローチで臨んできた。

民主党はマンチンとウエストヴァージニア州の低所得の有権者たちとの間にくさびを打ち込むことになると脅している。「ビルド・バック・ベター」法案が可決されれば、子供税額控除の強化、メディケアと交渉した処方薬価格の引き下げ、育児費用の補助など、何十億ドルもの連邦給付を受けられると有権者たちにアピールすることでマンチンから引き離そうとしている。

連邦上院多数党(民主党)院内総務チャールズ・シューマー連邦上院議員(ニューヨーク州選出、民主党)は月曜日、マンチンはこれらの人気の高いプログラムへの反対を、連邦議事堂の議場で投票することで繰り返し守らねばならないと述べた。また、週末に「フォックスニュース・サンディ」に出演し、国の政策に影響を発揮しようとしている同僚マンチンを間接的に非難した。

民主党のスタッフたちは、マンチンはシューマーや他の民主党所属の連邦議員たちからより厳しい取り扱いを受けることになるだろうと予測していると述べている。民主党所属の連邦議員たちは、今年初めに公約として提示した「大規模なかつ大胆な」政策を実現することに失敗しつつあり、そのために、有権者たちから新たなプレッシャーを受けている。

民主党のあるスタッフは、マンチンが今年の秋にホワイトハウスとデラウェア州にあるバイデンの自宅でバイデンと友好的な会談を行ったが、望む結果を得られなかったことを受け、「マンチンにはまったくプレッシャーがかかっていない」と述べた。

この民主党スタッフは、「バイデンはマンチンの襟首を掴んで、『いいか、これはもう終わりだ』と言わなければならない」と述べ、「ビルド・バック・ベター」法案の可決が失敗すれば、2022年の中間選挙までに別の主要法案が通過する見込みはほとんどないと警告を発している。

民主党所属の複数の上院議員はここ数ヶ月前、「マンチンに大きな圧力をかけることは、それが裏目に出て、再生可能エネルギーへの大規模な新規投資やメディケア給付の拡大といった進歩的優先事項に対してより強固に抵抗するようになることを恐れて、消極的に対応するしかない」と述べていた。

また、マンチンが民主党会派を脱退し、無所属を宣言するかもしれないという脅威も迫っていた。上院少数党(共和党)院内総務のミッチ・マコーネル氏(ケンタッキー州選出、共和党)は休暇前に記者団に対し、マンチンが共和党会派に加わることを望んでいるが、その可能性が高いわけではないと述べている。

しかし、バイデン、シューマー、その他の民主党所属の連邦議員は、マンチンがフォックスニュースでビルド・バック・ベター法案に反対することを明確に表明した。バイデンたちの依頼を平然とはねつけ、無能と思われる危険を冒すことになった。

民主党系のストラティジストで、民主党連邦上院議員選挙委員会の顧問を務めたスティーヴ・ジャーディングは、「マンチンは大統領の政策を吹き飛ばそうとしているのだから、厳しい姿勢で臨まねばならない」と述べた。

ジャーディングは「マンチンは民主党指導部が無能だと見えるように行動している」とも述べた。

日曜日、ホワイトハウスのジェン・サキ報道官は、マンチンが10月にバイデンと達した合意から手を引いたとして、マンチンを非難する激しい声明を発表した。

サキ報道官は、マンチンは「インシュリンのために毎月1000ドル払っている家庭」、「仕事に復帰するために必要な手頃なデイケアを受けたいと考えている200万人の女性」、「先週期限切れとなった児童税控除のおかげで、貧困から脱した数百万人の子供たち」に対して法案への反対についてその理由を説明しなければならないだろう、と述べた。

翌日、ホワイトハウスはより柔らかい姿勢を取った。記者会見でサキ報道官はバイデンがマンチンと協力したいと考えていると述べた。

バイデンは9月末と10月末にホワイトハウスでマンチンと会談を持った。また、デラウェア州ウィルミントンのバイデンの指定でも会談を持った。しかし、これらの会談では主だった成果は出なかった。

ホワイトハウスは、シューマーも出席したデラウェア州での会談で、マンチンが1兆7500億ドルの枠組みに同意したと発表したが、マンチンは今週、何にも同意してはいないと反論した。

月曜日に各議員に送付された「同僚議員の方々へ」と題された書簡の中で、シューマーは、マンチン氏へ微妙なジャブを放ち、間接的に批判した。

シューマーは書簡の中で、「上院議員各位は、新年早々、連邦上院がビルド・バック・ベター法案について審議することを認識しておくべきだ。そうすれば、全ての議員がテレビだけでなく、連邦上院の議場で自らの立場を明らかにする機会を得られる」と言明した。

民主党の指導者であるシューマーは、「マンチンについては、バイデンの最優先事項に何度も反対票を投じさせるような形にして、ウエストヴァージニア州選出の中道派議員であるマンチンが、地元の低所得者救済を目的とした改革の邪魔をしているというメッセージを明確に打ち出すことにする」と警告を発した。

シューマーは「連邦下院で可決されたビルド・バック・ベター法案については、連邦上院で修正を加えて、それらについて投票を行う。何かを成し遂げるまで何度も投票を続ける予定だ」と書いている。

前述のスタッフとは別のある民主党スタッフは、シューマーの脅しは重要だと述べた。その理由は、数日前には、連邦上院多数党(民主党)院内幹事のディック・ダービン連邦上院議員(イリノイ州選出、民主党)をはじめとする民主党議員たちが、マンチンにビルド・バック・ベター法案の賛成投票をクリスマス前までに行うよう強要するよう働きかけていたのを、シューマーが押しとどめていたことだ。

このスタッフによれば、民主党内の進歩主義派の人々がマンチンに賛成させることができなかったことに怒っていることをシューマー知っており、来年のニューヨーク州の連邦上院議員選挙での自身の再選キャンペーンに向けて挑戦者となる候補に付け入る隙を与えないようにするためにシューマーは脅しを始めたのだということだ。

このスタッフは「これはパフォーマンスに過ぎない。上院議委選挙の予備選挙というレンズを通してみないということはできない」と述べた。

アレクサンドリア・オカシオ=コルテス(AOC)連邦下院議員(ニューヨーク州選出、民主党)は連邦下院の中でも主導的な進歩主義派の人物だ。彼女は頻繁にマンチンを批判してきた。AOCは2021年8月、シューマーに対して連邦上院議員選挙民主党予備選挙で挑戦する可能性があることを排除しなかった。

AOCは月曜日、マンチンが「大統領の信頼を著しく損なう行為」を行ったと指摘し、「1カ月以上前に我々が警告していた通りの結果となってしまった」と述べた。

AOCMSNBCの「モーニング・ジョー」に出演し、次のように述べた。「もちろん、ジョー・マンチンに激怒するのは当然のことだ。しかし、この岐路に立つことを決断したのは民主党指導部であり、今後どのように前進するかについては、民主党指導部が自由に使える非常に多くの手段を持っていると私は考えている」。

彼女は更に「問題について真剣に取り組むべき時だ」と述べた。

連邦上院の民主党進歩主義派の議員たちもまた、マンチンがフォックスの司会者ブレット・ベイヤーにビルド・バック・ベター法案に「ノー」だと言明したことについて、不満を爆発させた。

連邦上院予算委員会委員長バーニー・サンダース連邦上院議員(ヴァーモント州選出、無所属)は月曜日、次のようにツイートした。「ウエストヴァージニア州の人々も、他の州の人々と同じように考えているのではないかと私は考えている。彼らは、処方薬のコストを下げたいと考えている。メディケアに視力、聴力、歯科の治療をカカヴァーして欲しいと望んでいる。子供一人につき月300ドルの手当を継続させたい。彼らは、富裕層が公正な負担分を支払うことを望んでいる」。

サンダースは、CNNの「ステート・オブ・ユニオン」に出演し、インタヴューの中で、有権者のニーズに応えられない、とマンチンに対する非難を繰り返した。

サンダースは次のように述べた。「マンチン議員は、ウエストヴァージニア州民を代表していると常々言っている。私はマンチン議員に、それでは、ウエストヴァージニア州でこの問題について世論調査をする費用を私が負担しようと言った。ウエストヴァージニア州の人々がどう感じているかを見てみよう」。

連邦上院のもう一人の主要な進歩主義的な議員であるエリザベス・ウォーレン連邦上院議員(マサチューセッツ州選出、民主党)は、マンチンにビルド・バック・ベター法案への投票を強制する、それが複数回になるだろうというシューマーの約束を高く評価した。シューマーはフォックスの番組に出演し、「可能な限り全てのことをやってみた。しかし、私は思うような結果を得られていない」と述べた。それでも、ウォーレンはシューマーを高く評価している。

ウォーレンは次のようにツイートした。「アメリカ国民は、連邦上院が ビルド・バック・ベター計画を実現し、投票権を保護することを期待している。無為無策という選択肢はない。我々の民主政治体制は攻撃を受け、経済は労働者のために機能していない。お喋りはもうたくさんだ。今こそ投票する時だ」とツイートした

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民主党はマンチンの反対を受け、バイデン計画について厳しい選択を迫られる(Democrats face tough choices on Biden plan after Manchin setback

ジョーデイン・カーニー筆

2021年12月21日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/homenews/senate/586680-democrats-face-tough-choices-on-biden-plan-after-manchin-setback

民主党の指導者たちは、バイデン大統領が求める気候・社会支出に関する大規模な法案を前に、痛みを伴う決断と党内の緊張に直面している。

ジョー・マンチン連邦上院議員(ウエストヴァージニア州選出、民主党)は、「フォックスニュース・サンディ」に出演しインタヴューに応じ、下院が可決した約2兆ドルの法案に事実上終止符を打ち、議会民主党とホワイトハウスが、穏健派議員マンチンとの合意に至らなかったとして非難合戦を繰り広げることになった。

しかし、民主党の指導者たちとホワイトハウスは、自分たちの主要政策の重要な部分を救おうと、何が起こるかわからないという状況に直面しながらも前進することを誓っている。

パトリック・リーヒー連邦上院議員(ヴァーモント州選出、民主党)は、「この法案には、通過させたいものがたくさんある。この法案には、私が支持し、また大多数のアメリカ人が支持していると考えられるものがたくさん含まれている」と述べた。

法案を可決させてバイデンが署名して法律とするために、民主党は、自分たちの最大の優先事項のいくつかが危機に瀕していることを目撃している。保守的な同僚議員たちの動きにますます落ち着きを失っている。不満を募らせている進歩主義派の人々を遠ざけることなく、マンチンの反対に勝つことができる修正法案を考え出す必要がある。

連邦下院議長ナンシー・ペロシ連邦下院議員(カリフォルニア州選出、民主党)は「まだ継続中の交渉は存在する。私たちはこの責務から逃げることはできない」と述べた。

民主党議員はここ約2週間、アメリカ各地に散らばっている状態だ。緊迫した1年を終え、互いに距離を置き、息抜きとブレインストーミングをする時間を得ている。しかし、「ビルド・バック・ベター法案のどの部分が生き残ることができるかを見極めるために、初心に帰る準備をしながら、彼らは既に次のステップの光景を思い浮かべているのだ。

連邦上院財政委員会委員長ロン・ワイデン連邦上院議員(オレゴン州選出、民主党)は、処方薬、クリーンエネルギー、子供税額控除の強化、オバマケア税額控除を結びつけたパッケージを提案している。ワイデンによれば、この法案は、ワイデンが委員長を務める財政委員会がより大規模な法案のためにすでにまとめたのと同じ財源によって、10年間にわたって恒久的に支払うことが可能である。

ワイデンは「民主党は、より多くの支援を必要とする家族に対して重要な公約を掲げている。ここで失敗することは許されない」と語っている。

ニュー・デモクラッティック・コアリション代表のスーザン・デルベネ連邦下院議員(ワシントン州選出、民主党)は声明を発表しその中で、自分たちのグループは、以前から、より少ない分野に焦点を当て、より長い期間資金を提供する法案を要求してきたと述べている。

デルベネは「このようなアプローチを採用することで、この法案を前進させる可能性があると確信している」と述べている。

しかし、デルベネたちが主張しているような小規模な法案がどのような内容になるのか、もしくは実行可能なのかどうかを見極めるのは口で言うほど簡単なことではない。

マンチンは、WVMetroNewsのホッピー・カーチヴァルとのインタヴューで、「喜んでいつでも話し合う用意がある」と述べ、2017年の共和党が連邦上院の各委員会での審議を経て行った税制法案の変更に焦点を当てた劇的な状況の好転を望んでいることを示唆した。ホワイトハウス首席補佐官ロン・クラインはマンチンのこのコメントに注目し、人々の目に留まるように強調した。

マンチンは「チャンスは一度きりだ、いいか?公平で公正な税制に修正するチャンスだ」と語った。民主党所属議員全員が「共和党の減税に関する和解に反対と言っているが、それならば、ただ座っていて公平で公正な税制を修正できるとでも思っているのか?」とも述べた。

ここ数週間、民主党指導部にはマンチン氏を取り込もうとする希望があったものの、ウエストヴァージニア州選出の上院議員マンチンは、両者が「哲学的にかけ離れており」、自分はいかなる社会改革に対しても「責任と説明責任」を求めると述べ、いかに対立しているのかを強調した。マンチンは、就労条件や所得制限の導入を強く求めている。

マンチンは「今、私の目の前にある、彼らが出し続けている法案は、最初は6兆ドル規模の法案だった」と述べた。更に臨時プログラムが延長された場合の推定費用にも言及した。

マンチンはラジオ番組でのインタヴューで、バイデンとの先週の交渉でおよそ1兆7500億ドルの法案について話し合ったことを認めた。『ワシントン・ポスト』紙によると、交渉が決裂する前のマンチンからの提案には、10年間の全幼児向け教育プログラム、オバマケアの拡大延長、気候変動対策への数千億ドルの拠出が含まれていたということだ。

しかし、マンチンからの提案には子供税額控除の延長が含まれていなかったために、ホワイトハウスと子供税額控除を法案に必須と考える多くの民主党議員は、マンチンからの提案を法案に盛り込む修正ができない。

マンチンと進歩主義派の間には深い不信感が既に存在し、気候・社会支出法案の後退は、今年(2021年)の大半を占めた両派の古傷に再び火をつけることになった。

マンチンと連邦議会進歩主義派議員連盟会長のプラミラ・ジェイパル連邦下院議員(ワシントン州選出、民主党)は月曜日に会談を持った。ジェイパルは記者団に対して、「マンチン議員には“誠実さが欠如”していると考える」と語った。

ジェイパルと議連のメンバーのほとんどは、超党派のインフラ法案に賛成票を投じた。この際には、マンチンを含む連邦上院議員のグループと交渉を行った。進歩主義派の連邦下院議員たちは、「バイデンが民主党所属の連邦上院議員50人全員を下院で可決させた大型支出法案に賛成させることができると理解した上で、インフラ法案に賛成票を投じた。

ジェイパルは記者団に対して次のように語った。「法案についての話し合いは今後も継続されるだろう。私たちもそれに関わり続けていく意向だ。しかし、人々を置き去りにし、気候変動のような重要な問題に取り組もうとしない、さらに小さなパッケージで満足しようとは誰も思わないはずだ」。

ジェイパル議員はバイデン大統領に対し、議会が通せない分野については、行政措置で対応するよう求めている。彼女は「私たちとの約束を守ることが大統領にとっての “責務”である」と述べた。進歩主義派議連は、幹部会合がバーチャルに開催した後、バイデン大統領に何を要望するかについての詳細を発表する予定だ。

ジェイパル議員は次のように語った。「私たちはすぐに仕事を始めることになる。私たちはアメリカ全土のアメリカ国民の生活を改善するための広範な行動を要望することになるだろう。そして、化石燃料産業や大手製薬会社など、大統領の政策を阻止するために懸命に働いてきたロビイストたちに、アメリカ国民には勝てないということを思い知らせる」。

連邦上院多数党(民主党)チャールズ・チューマー連邦上院議員(ニューヨーク州選出、民主党)は進歩主義派に配慮し、マンチンが今年初めに下院で可決された約2兆ドル規模の大型支出法案を支持できないと述べているにもかかわらず、ビルド・バック・ベター法案の複数回の投票を強行すると公言している。しかしながら、民主党は大型支出法案の可決に必要な50票を欠いたままの状態となっている。

シューマーは、「連邦下院で可決されたビルド・バック・ベター法案の修正法案を採決するつもりだ。何かを成し遂げるまで採決を続ける」と述べた。また、マンチンへの皮肉として、「テレビだけではなく、上院の議場で自分の立場を明らかにすべきだ」と異例の強い批判を含んだ発言をした。

シューマーは、法案を進めるのに十分な票数があるかどうかにかかわらず、法案について議場において投票するよう求める声が連邦議会内で大きくなっている中、確実に失敗すると思われる投票を進める決断をした。民主党はフィリバスター(議事妨害)を回避するために、調停制度(reconciliation)を利用するので、支出法案の審議を開始するためには50人の所属議員全員の審議開始への賛成が必要である。

連邦上院予算委員会委員長バーニー・サンダース連邦上院議員(ヴァーモント州選出、無所属)は複数の同僚議員たちが求めている内容を繰り返して次のように述べた。「ジョー・マンチン連邦上院議員がビルド・バック・ベター法案に反対票を投じたいと望むならば、連邦上院が再開してすぐに議場で採決に投票する機会を得ることができるだろう」。

マンチンは月曜日にラジオ番組に出演し、インタヴューを受けた。その中で、マンチンは次のように述べている。「私は、サンダース議員やその他の同僚議員たちにビルド・バック・ベター法案について投票を行い、何が起きるかを見てみようと述べた。彼らは法案について何の行動も起こせない状況に不満を持っていた」。

「私の同僚議員たちは税印が大きな不満を抱えている。私はそれを理解できる。私は、紳士淑女の皆さん、投票を行う時が来ました、と彼らに言った。前もって何かを保証するなどことはできないが、投票が行われれば、私の居場所は分かるだろう」。

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共和党所属の連邦上院議員がジョー・マンチンに共和党入りについてテキストメッセージを送った(Republican senator texted Joe Manchin about joining GOP

ジョーデイン・カーニー筆

2021年12月21日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/homenews/senate/586798-republican-senator-texted-joe-manchin-about-joining-gop

ジョン・コーニン連邦上院議員(テキサス州選出、共和党)は火曜日、ジョー・マンチン連邦上院議員(ウエストヴァージニア州選出、民主党)が、連邦下院が可決した「ビルド・バック・ベター」法案への反対表明に対する激しい批判が起きている中、共和党に入ることを促した、と発言した。

コーニンはKXANの取材に対して、マンチンに「ジョー、あの人たちが君を望まないのなら、私たちは望んでいる」とテキストメッセージを送ったが、返事はなかったと述べた。KXANはテキサス州オースティンを本拠とするテレビ局であり、ネクスター・メディア・グループに属している。本紙もこのグループに属している。

コーニンは続けて次のように述べた。「彼がどのような決断を下すか分からない。しかし、ウエストヴァージニア州が共和党優位になっていることを私は良く知っている。だから、彼が共和党に入ることを歓迎する。それによって現在の連邦上院の過半数を持つ党派が変わることになる」。

連邦上院は現在民主、共和両党で50対50に分かれている。カマラ・ハリス副大統領が同数状態を打ち破ることができるため、民主党が過半数を握っている。マンチンが民主党を離れて共和党に参加するとなると、共和党が51議席、民主党が49議席となり、連邦上院少数党(共和党)院内総務ミッチ・マコーネル連邦上院議員(ケンタッキー州選出、共和党)が多数党院内総務となる。

マンチンが所属政党を変更するのではないかという疑いはここ数年、ワシントンで取り沙汰されてきた。

今年初め、マンチンは民主党から離れる意図はないが、自分が民主党に属していることで同僚たちを「困らせる」ようであれば、民主党を離党して無所属になると、同僚たちに述べたことを明らかにした。

しかし、無所属になっても、バーニー・サンダース連邦上院議員(ヴァーモント州選出)とアンガス・キング(メイン州選出)のように、連邦上院で民主党の会派に参加するだろうとマンチンは述べた。そうであれば、民主党はギリギリで過半数を握ることになる。

月曜日に、WV Metronewsのホッピー・カーチェヴァルから、「民主党にあなたの居場所はまだあるか」と質問され、マンチンは「私のような感覚を持つ民主党員がまだいることを期待したい。私は、財政的な責任を果たし、社会的な思いやりのある行動を取ると言ってきた。今、そのような民主党員がいなければ、彼らは望むところまで私を押し切り続けることになるだろう」と答えた。

共和党は何年も前からマンチンを勧誘してきたが成功しなかった。

先週、マコーネルは記者団に対して次のように語った。「私は彼との話し合いを楽しんでいる。私は何年も前から、ウエストヴァージニア州のような赤の濃い州(共和党優勢州、red state)を代表しているマンチン議員が私たちの側に来るのは素晴らしいアイデアだと提案してきた。このことには皆さんも驚かないだろう。しかし、彼が共和党に入党するということは起きるとは私は考えていない」。

今週、フォックスニュース・ラジオの番組に出演した際、マコーネルは、民主党所属議員たちが、「マンチンに対して人々は大いに不満を持っている」と激しく非難していることについて疑義を呈し、「マンチンは同僚議員たちからの様々な暴言にショックを受けている。民主党の議員たちはマンチン議員を嘘つき呼ばわりしている」と述べた。

マコーネルは更に、「そのような行動は全くもって賢明とは言えない。現在の連邦上院の両党の議席数は50対50なのだから」と述べた。

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