古村治彦(ふるむらはるひこ)の政治情報紹介・分析ブログ

SNSI研究員の古村治彦(ふるむらはるひこ)のブログです。翻訳と評論の分野で活動しています。日常、考えたことを文章にして発表していきたいと思います。古村治彦の経歴などについては、お手数ですが、twitter accountかamazonの著者ページをご覧ください 連絡先は、harryfurumura@gmail.com です。X accountは、@Harryfurumura です。ブログ維持のために、著作のお買い上げもよろしくお願いします。

タグ:銀

 古村治彦です。

 ドナルド・トランプ大統領は二期目の大統領就任演説で、「製造業国家(manufacturing nation)」を実現すると述べた。これは、トランプの支持基盤である、五大湖周辺州のもともと製鉄や自動車製造の工場に勤務していた、白人の男性労働者たちの製造業の雇用を復活させるということであった。私はもはやアメリカには他国と競争できるほどの良質な製造業に適する労働力となり得る人材が残っているとは考えていないが、トランプの宣言は肯定的に受け止めた。そして、製造業の雇用を増大させるためには、アメリカ製品の輸出を伸ばす必要があり、そのためにはドルの価値を下げる、ドル安を目指すことになるだろうと考えていた。ドル安になれば、輸入品は高くなり、輸出品は安くなる。それで競争力をいくらかでも取り戻せる。しかし、アメリカは輸入大国である。アメリカの一般国民が消費する製品は海外からの安い製品である。彼らの生活を支えるためには、ドルは高い方が良い。ここのバランスをどう取るのかということがトランプ政権の腕の見せ所だと考えていた。

 しかし、この仕事は非常に複雑で、バランスを取ることは非常に困難だ。それでも何とかするだろうと考えていたが、トランプ政権でも手に負えない課題であったようだ。^結局、国内の不満は高まり、トランプ政権は、不満から目を逸らさせるために、アメリカ・ファースト外交、ドンロー主義を採用した。これは、モンロー主義と棍棒外交を混合させたものだ。西半球以外には出て行かないが、西半球内では好き勝手をして、アメリカの利益のためには収奪も厭わないということになった。このような状況になり、アメリカへの信頼は揺らいだ。トランプ政権になって、ドル安も進んでいたが、これに加えて、アメリカへの反発も高まり、ドル離れ、ドルからの逃避も起きている。世界基軸通貨(key currency)であるドルは、国際決済に使われる通貨であるが、その信頼が揺らいでいる。ドル以外での決済を模索する動きが、BRICSを中核とする「西側以外の国々(the Rest)」で起きていることは、これまで、私は著作やこのブログでもご紹介した。

 加えて、地政学リスクの高まりもあり、金をはじめとする実物資産の価格が上昇している。これらが安全資産として評価され、購入されている。値動きが激しくなってきた。それだけ世界情勢やアメリカ情勢、日本情勢が混とんしてきていることを示している。私たちは大きな時代の転換点にいる。そのことを肝に銘じておかねばならない。

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結局、ドナルド・トランプはドル安に陥っている(Trump Is Getting His Weaker Dollar After All

-それは良いことではないかもしれない。

キース・ジョンソン筆

2026年1月28日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2026/01/28/us-dollar-index-value-usd-trump-tariffs-economic-policy-currency/

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スコット・ベッセント財務長官を含むドナルド・トランプ米大統領政権のメンバーたちがスイスのダヴォスで開催された世界経済フォーラムでトランプ大統領の演説を聞いている(2026年1月21日)

今週、米ドルはほぼ4年ぶりの安値に急落した。これは一部には自業自得の結果であり、ドナルド・トランプ米大統領の思惑通りではあるものの、世界最大の経済大国の健全性(the health)にとって必ずしも最善のことではないだろう。

ドルは火曜日に急落し、1週間続いた下落の頂点に達した。トランプ大統領がドル安は「素晴らしい(great)」と述べたことで、下落は一時悪化した。ドルは、他の通貨、新興国通貨、そしてトランプ大統領就任以来約13%下落しているユーロなどの主要通貨に対して、全般的に弱くなっている。

ドルの低迷は、アメリカの経済政策における数々の激動のさなか、そして部分的にはその結果として発生している。

トランプ政権はNATO加盟国の領土を武力で奪取すると脅し、最大の貿易相手国であるヨーロッパ連合(EU)に高関税を課すと脅した後、突如として撤回したが、それでも世界の信頼を揺るがすには十分だった。

トランプ政権は、連邦準備制度理事会(FRB)理事の解任を試み、議長を脅迫することで、連邦準備制度理事会(FRB)の独立性を損なおうとしてきた。こうした動きは、アメリカの経済運営に対する信頼を揺るがしている。伝統的に通貨の監督も含まれるスコット・ベッセント財務長官の仕事はあまりにも杜撰で、金(ドルの代替通貨)の価格は1オンスあたり5000ドルを超える記録的な高値に達している。

トランプ大統領は先週だけでも、アメリカの自由貿易のパートナー国であるカナダと韓国に対し、理由も不明瞭なまま、新たな関税や追加関税を課すと警告している。ドイツの金融規制当局は水曜日、市場が世界の準備通貨としての米ドルの役割に疑問を抱き始める可能性があると指摘した。

ドルからの逃避(a flight away from the dollar)は、少なくとも歴代米政権のほとんどにとって懸念材料になっていたことだろう。しかし、トランプは選挙運動でこれを訴え、長年積極的に追求してきた。ドル安推進の背後にある考え方(the thinking behind the weak-dollar push)は、切り下げられた通貨(a devalued currency)によってアメリカ企業が他国との海外競争を容易にし、政権や多くのエコノミストが主張する自国通貨を人為的に低く抑えている国々と競争できるようになるということのようだ。しかし、輸出はアメリカのGDPのわずか11%弱を占めているだけに過ぎない。

ドル安は経済の残りの90%にとって良いニューズではない。輸入コストの上昇、インフレの長期化、そして連邦準備制度理事会(FRB)が予定通り年内に利下げを行う余地の縮小を意味するからだ。もし住宅価格の高騰と低金利がトランプの経済目標だとすれば(そして実際そうである)、ドル安は間違った治療法のように思える。

ドル安の理由について、ブルッキングス研究所のロビン・ブルックスによると、1つの合理的な答えは「政策の混乱(policy chaos)」だ。最近ではグリーンランドをめぐるヨーロッパ連合(EU)との争いが原因だが、それだけではない。要するに、不確実な世界の中で新たなパートナーを模索する中で、EUとインドが歴史的な貿易・防衛協定を締結するなど、各国がアメリカに対する地政学的リスクをヘッジしているのとほぼ同様に、外国人投資家たちもドルへの過度なリスクヘッジを行っているのだ。

しかし、確かに、ドル安の唯一のメリットは、アメリカの輸出品が海外で競争力を高めることではないか? ヨーロッパ諸国が1年前は100セントだったアメリカ製品を、今ではたった83セントで買えるのであれば、輸入を抑制しつつもアメリカの輸出を加速させ、トランプ大統領が「国家非常事態(national emergency)」と宣言した根深い貿易赤字の解消に繋がるはずだ。(米連邦最高裁判所は、おそらく来月、この件について判決を下す予定だ。)

理論上は、他の条件が同じであれば、ドル安は輸出にとって好ましい状況だ。しかし、他の条件が全て同じという訳ではない。

アメリカの輸出拡大を阻む、通貨以外の障壁は数多く存在する。消費者の嗜好はよく知られた例の1つで、大型SUVや小型トラックはヨーロッパや日本では高く評価されていない。規制上の制約もその1つで、ヨーロッパ向けであれアジア向けであれ、農産物輸出には多くの制限が設けられている。さらに、地政学的な障壁もある。トランプ大統領が中国との貿易戦争を二度も激化させた結果、巨大なアメリカ農業セクターの主要な輸出先が失われた。アメリカから中国への農産物輸出は、2022年の360億ドルから2025年には160億ドルに減少し、現在も減少傾向にある。

ドル安が輸出増加を促すという期待のもう1つの問題は、物を作るには物が必要であり、その物(製造業の投入財)の3分の1は輸入されているということだ。これらの投入財はドル安と世界のほぼ全ての国が自主的に輸入関税を課していることで値上がりしており、特に医薬品、航空宇宙、自動車、トラック、石油製品などの産業にとっては、見た目ほど利益は出ていない。

さらに、アメリカの貿易収支という難解な計算もある。輸入額は毎年輸出額を1兆ドル上回っている。ドル安になれば、これらの輸入品は全て高価になる。トランプ政権は輸入品が消えてしまえば喜ぶだろうが、多くの輸入品は必要不可欠であり(アメリカの石油産業は輸入されたチューブやパイプを本当に必要としているし、ヨーロッパの医薬品産業にはアメリカに匹敵する製品がまだ存在しない)、放棄することはできない。

したがって、ドルが弱まるほど、比較的低調なインフレ率(3%弱)が再びじりじりと上昇するのではないかという懸念が高まる。ちょうどその頃、連邦準備制度理事会(FRB)は政策面で2026年半ばまでに金利をさらに引き下げることに安心感を抱いていた。もしその時までに独立したFRBがまだ存在していたとしたら(FRB理事会の主要メンバー2人が迫害され、中央銀行が干渉を受けずに運営する能力に対する攻撃が公然と懸念されていることを考えると、これは未解決の問題だが)、それはおそらく利下げを見送ることを意味し、住宅ローンや自動車ローンなどの金利上昇につながるだろう。

結局のところ、ドル安はトランプ政権下のアメリカに対する世界の認識を問う、不完全な国民投票(referendum)の1つに過ぎない。もしアメリカと米ドルが晒されているリスクの拡大が主流の考えであれば、米ドルは需要が高まり、金は安くなり、米国債は安くなるはずだった。しかし、奇妙なことに、現状は全く逆のようだ。

※キース・ジョンソン:『フォーリン・ポリシー』誌地経学・エネルギー担当記者。Blueskyアカウント:@kfj-fp.bsky.socialXアカウント:@KFJ_FP

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(終わり)

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『トランプの電撃作戦』
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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

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 古村治彦です。

 昨年は金、銀、プラチナという実物資産の価格が上昇した。年初にこの動きは収まるかと思われていたが、ドナルド・トランプ大統領によるウクライナ攻撃とニコラス・マドゥロ大統領夫妻の拘束連行によって、「地政学リスク(geopolitical risks)」が高まったことで、実物資産への投資が続くことになり、価格が上昇している。田中貴金属のウェブサイトには毎日の値動きが表示され、グラフもある。これを見れば、地政学リスクの動きに連動していることが分かる。
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2025年12月1日から2026年1月19日までの金価格の推移
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2025年12月1日から2026年1月19日までの銀価格の推移
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2025年12月1日から2026年1月19日までのプラチナ価格の推移

地政学リスクとは、「ある特定の地域が抱える政治的・軍事的な緊張の高まりが、地理的な位置関係により、その特定地域の経済、もしくは世界経済全体の先行きを不透明にするリスク」と定義されている。ドナルド・トランプ大統領の動きはまさに地政学リスクそのものとなっている。また、日本の高市早苗首相のこれまでの動きも地政学リスクとなっている。私は、トランプと高市の日米両国の首脳を「地政学リスクのTTコンビ」と呼んでいる。日米で地政学リスクを上昇させているのだから、実物資産の価格が上昇する。そして、通貨であるドルや円の価値が毀損される。こうした動きがしばらく続くだろう。

 私の師である副島隆彦先生が2月4日に『金を握りしめた者が勝つ 銀は10倍になる』(祥伝社)を発刊する。まさに時宜を得た、出版となっている。是非、お読みいただき、資産防衛にお役立ていただきたい。
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『金を握りしめた者が勝つ』

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国内金価格、初の26000円台に上昇 FRBへの政治圧力を警戒

グローバルマーケット 日本経済新聞

2026114 9:57

(2026114 11:36更新)

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB140UW0U6A110C2000000/

金(ゴールド)価格の国内指標となる地金商最大手の田中貴金属工業が14日午前に公表した小売価格が、初めて1グラム26000円を超えた。前日比258円(1%)高い26051円を付け、2日連続で最高値を更新した。米インフレの鈍化を示す経済指標の発表を受けて米利下げ継続への観測が強まった。トランプ米政権による米連邦準備理事会(FRB)への政治圧力の激化への警戒と共振し、金を求める動きが広がった。

米労働省が13日に公表した202512月の米消費者物価指数(CPI)はエネルギーと食品を除くコア指数が市場予想を下回り、物価上昇の落ち着きを示唆する内容と受け止められた。FRBが利下げを継続するとの見方が金相場を支えた。利下げは金利の付かない金の相対的な投資妙味を高めることにつながる。

国際価格の指標となるロンドン現物価格は13日の取引で前日比40.84ドル(0.9%)高い1トロイオンス4634.33ドルを付け、最高値を更新した。

米政権によるFRBへの政治圧力の強まりも金需要を強めている。トランプ米大統領は市場予想を下回ったCPIの発表後、SNSへの投稿で再び大幅な利下げを要求した。FRBについては本部ビルの改修工事を巡ってパウエル議長が刑事捜査の対象となっているが、トランプ氏は改めてパウエル氏を「無能か不正のどちらかだ」と批判した。

中央銀行の独立性が損なわれて金融市場が混乱することへの懸念が広がるなか、コモディティーなどの取引仲介を担う米StoneXのローナ・オーコネル市場調査責任者は「相場は既に高値圏にあるものの、重要な金への追い風となる」と指摘する。

外国為替市場で進む円安が円建ての金価格を押し上げている面も大きい。国内では高市早苗首相が早期に衆院を解散するとの観測が広がった。財政出動による財政悪化への懸念から対ドルの円相場は1ドル=159円台と1年半ぶりの円安・ドル高水準に下落。円の価値が下がれば、円でみた金の価値は相対的に上昇する。

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 古村治彦です。

 2025年の重大な出来事に金や銀、プラチナの価格高騰があった。私の周りでも、金や銀の価格高騰について話題に上ることが多かった。以下のグラフにあるように、2020年1月の時点から比べて金は約4倍、銀も約4倍、プラチナはおよそ2倍となっている。特に2025年10月からの上昇率が高く、これは証明されていないが、高市早苗政権発足が理由の1つになると私は考えている。実物資産の価格が上昇するのは、地政学リスク(特に戦争の可能性)が高まった際に起きるものだ。高市早苗首相の台湾有事に関する発言をはじめとして、高市政権は東アジアの平和と安定を脅かす最大の要因となっている。高市政権が地政学リスクとなっている可能性がある。
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金価格の推移
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銀価格の推移
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プラチナ価格の推移

 2025年の年末にニューヨークで金銀プラチナの価格下落が起きている。このことについては、副島隆彦先生の論稿が最新の分析となっている。是非お読みいただきたい。
※ウェブサイト「副島隆彦の学問道場」内「重たい掲示板」
3205】年末に金、銀、プラチナに大変なことが起きていた。アメリカ金融資本主義の終わりが始まった。副島隆彦 投稿日:2026/01/02 09:04 ↓↓↓

https://snsi.jp/bbs/page-1/#23676

 2026年も金銀プラチナの価格の上昇は続くという予測が出ている。それは、金の世界的な需要が高いためだ。中国やロシアを中心に新興国(西側以外の国々、the Rest[ザ・レスト])での需要が高まっているが、世界各国の中央銀行が資産における金の割合を増やしていることも理由として挙げられる。これは地政学リスクもあるが、他に、ドルの価値の下落ということもある。「脱ドル化(de-dollarization)」については、これまでも著作の中で紹介してきたが、ドルの価値が下落している状況で、金が買われている。金の需要が高いというのは、世界が不安定になっている証拠であり、複雑な感情になるが、世界の根本的な構造転換の時代となっているので、このような動きになっている。ドル覇権(dollar hegemony)の衰退と実物資産への移動は大きな流れであり、2026年も続いていくことになるだろう。

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●「ドル覇権はいつまで持ちこたえるか、揺らぐ基軸通貨の前提」

ブルームバーグ日本版 20251230 at 9:58 JST

https://www.bloomberg.com/jp/news/articles/2025-12-30/T81C0NKIP3JH00?taid=6953393d469db40001f5f878&utm_campaign=trueanthem&utm_content=japan&utm_medium=social&utm_source=twitter

世界経済におけるドルの覇権は、どこまで持ちこたえるのか。仮にその地位が揺らげば、どの程度の影響が生じるのか。少し前まで、こうした問いは机上の空論として一蹴されてきた。世界経済は長年、ドルを軸に回っており、過去にも「脱ドル化」を予測する見方は繰り返し現れたが、構図が近く変わる兆しは乏しかった。

しかし、トランプ米大統領が国際関係の常識を多方面から揺さぶったことで、状況は変わり始めた。時に、あり得ないと思われていたことが現実になる。

ドル支配を巡る議論の焦点は、得られる利益とその代償、そして先行者としての地位にある。ドルが基軸通貨であることで、米国は世界の金融システムに一定の影響力を持つ。

その影響力は権限として機能し、金融制裁という形で行使されてきた。さらに、ドル建てで資金を調達する借り手は、相対的に低いコストで資金を確保できる。世界的にドル資産への需要が極めて高いためだ。一方で、ドル資産への需要の高さはドル高を招き、そのしわ寄せは米国内の製造業に及ぶ。

多くの経済学者は、こうしたコストと利益のバランスは、依然として基軸通貨としてのドル優位に分があるとみている。だがホワイトハウスの見方は異なる。米国は利益を維持したまま代償を取り除けると考えているのだ。

こうした発想を示しているのが、米大統領経済諮問委員会(CEA)の委員長で、米連邦準備制度理事会(FRB)の理事も務めるスティーブン・マイラン氏だ。通商障壁によって米国の製造業を後押しし、金融介入でドルの競争力を保つ一方、同盟関係の見直しを示唆するなど経済以外の手段も使って、世界の金融インフラにおけるドルの地位を維持しようとしている。

通商障壁が経済を強化するとの考え方には、控えめに言っても疑問が残る。もっとも、ここではその是非はいったん脇に置こう。仮に関税によって世界貿易が分断され、その結果として米製造業の雇用が回復し、経済が押し上げられるとしよう。こうした意図的な貿易分断の政策は、トランプ政権が唱えるように、基軸通貨としてのドルの地位を維持することと両立するのだろうか。

その答えの鍵は、ドルの優位性がどこから生まれているのかにある。行き着く先は「慣性」だ。

しばらくの間であれば、米国が経済力や軍事力といった別の面で相対的に弱まったとしても、ドルの支配的地位は維持され得る。理由は単純で、支配的な通貨は「便利」だからだ。取引が円滑になることで参加者全体の利便性が高まり、いわゆるネットワーク効果が生まれる。米国が資本市場を適切に機能させ、高インフレや金融不安を回避しながら経済運営を首尾良く続ける限り、その恩恵は結果として広く共有される。

こうした利点は、ドル中心の仕組みを支えるだけでなく、自己強化的にも作用する。国際取引でドル建ての売買が行われれば、取引主体はドル建ての金融資産を保有するようになる。ドル資産への需要が高まれば、米国債などの価格が上昇し、結果的にドル金利は低下する。ドルで低コストに資金調達できれば、取引はさらにドル建てで行われやすくなる。

しかし、相応の衝撃が加われば、この仕組みは逆方向に回りかねない。貿易の分断によってドル建て取引が減れば、ドルで低コストに資金を調達できるという優位性は損なわれる。その結果、ドル建て取引はさらに縮小する。

ドルの支配的地位は、ほかの要因によっても支えられている。とりわけ大きいのが、現実的な代替通貨が見当たらない点だ。ユーロは、欧州連合(EU)の低成長や政治の機能不全に加え、銀行・資本市場同盟を十分に構築できていないことが足かせとなっている。中国の人民元も、改革は進んだものの、政府による統制や制度面の未成熟さが制約となる。

それでも、米国の経済運営に対する不満が強まる中で、通貨覇権を巡る競争が再び活発化する可能性はある。

トランプ政権もこの危険を理解しており、手を打ち始めている。例えば、BRICS諸国が脱ドル化構想を進めれば、報復措置を取ると威嚇している。ただ、こうした対応だけで十分とは言えない。むしろ最終的には逆効果になりかねない。米国に依存するコストを浮き彫りにし、代替が必要だという考えをかえって強めてしまう恐れがあるからだ。

高関税措置の乱発や、ドル決済網に依拠した金融制裁の多用、そして先の読めない行動。トランプ政権のこうした姿勢はいずれも同じ方向に作用し、従来の秩序から得られていた利益を相殺し、かつてのパートナーたちに別の選択肢を意識させている。

ドルの地位を脅かすもう一つの大きな要因は、ドル建て資産がもはや安全ではないのではないかとの見方が広がりつつあることだ。米国は過剰な借り入れに依存する体質に陥っているとの指摘がある。政治の世界では、歴史的な規模に膨らんだ財政赤字をどう抑制するかについて、十分な議論が行われていない。債務が返済困難な水準まで膨らめば、インフレによって実質的に債務負担を軽減する選択が取られかねない。その過程で、政治からの独立性が揺らぐFRBが、その実行役を担わされる恐れもある。

こうした動きはいずれも、ドル覇権への信認を高めるものではない。現実的な対抗通貨が現れなくても、金融の分断は加速し得る。基軸通貨がユーロや人民元に移行するという、なお想像しにくい展開ではなく、世界は徐々に標準なき状態や、複数の標準が併存する方向へ向かう可能性がある。体制を一変させるような危機が起きないとしても、世界は重要な何かを失うことになりかねない。そして、その代償を最も大きく払うのは、ほかならぬ米国だ。

今のところ、投資家は動じていない。「こうした状況もいずれ過ぎ去る」と考えているのかもしれない。トランプ氏は例外的な存在であり、政権2期目の最初の1年は、その基準で見ても異例尽くしだった。さすがに、この状態がずっと続くとは考えにくい。やがて政治は次の局面へ移り、平常が戻ると考える向きも多いだろう。

たしかに、そうかもしれない。だが、もしそうならなかったとしたら、ドル覇権の持続性よりも、もっと深刻な問題が表面化しているはずだ。

(クライブ・クルック氏は、ブルームバーグ・オピニオンのコラムニストです。このコラムの内容は、必ずしも編集部やブルームバーグ・エル・ピー、オーナーらの意見を反映するものではありません)

原題:Dollar’s Exorbitant Privilege Is on Borrowed Time: Clive Crook(抜粋)

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近づく金最高値、途切れぬ中銀買い ブラジルの購入ペース「中国超え」

グローバルマーケット

日本経済新聞 20251218 11:00

[会員限定記事]

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB11BC30R11C25A2000000/

nikkeiarticlegold20251218001
中央銀行の金買いの裾野が拡大している=ロイター

金(ゴールド)価格が再び最高値に接近している。市場で意識されているのは米利下げ観測に加え、中央銀行の強い買い意欲だ。ブラジル中央銀行は4年ぶりに購入を再開し、2025年の買い入れ規模は中国を上回っている。10月は中銀全体で今年最大となった。上場投資信託(ETF)などの活用で一部手口が見えにくくなっており、統計値以上に購入規模が膨らんでいる可能性もある。

金価格の国際指標の一つであるロンドン現物価格は17日の取引で前日比45.13ドル(1%)高い1トロイオンス(約31.1グラム)4348.66ドルを付けた。10月に最高値(4381.21ドル)を付けた後に利益確定売りに押され、4000ドルを下回る場面があった。足元では再び騰勢を強めており、最高値まで残り0.7%の水準に戻ってきた。

国内では外国為替市場における円安・ドル高の影響もあり、指標となる地金商最大手の田中貴金属工業が18日午前に公表した小売価格が前日比240円(1%)高の1グラム23961円と最高値を記録した。

金価格上昇の一因は米利下げ観測だ。11月の米雇用統計が労働市場の減速を示したとの見方から、市場では米連邦準備理事会(FRB)が2026年にもう一段の政策金利引き下げに動くとみられている。加えて大口の買い手の存在も改めて意識されている。新興国の中央銀行だ。

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1日にブラジル・サンパウロで開かれた投資助言会社の会合。ブラジル中銀のガリポロ総裁が金の購入について言及し「安値で買って利益を得ようとしているわけではない」としたうえで「将来の逆風に備えるため、より強固な準備高を維持する」と強調した。市場は今後も購入を継続すると受け止めた。

国際調査機関のワールド・ゴールド・カウンシル(WGC)が今月公表したリポートによると、中銀による金買いは10月に前月比36%多い53トンで昨年11月以来の高水準だった。1トロイオンス4000ドル超えという歴史的高値圏でも買い控えることなく、むしろ相場を押し上げるような行動をとっていたことが明らかになった。

WGCによるとブラジル中銀は9月に4年ぶりに15トンの金を買うと、10月も16トンの追加購入に踏み切った。110月期の累計でみると定期的に購入を続ける中国を上回る。外貨準備における金の保有比率を30%にまで高めると目標を示すポーランドの中銀も、5月以降は停止していた買い入れを10月に再開した。買い手である中銀の顔ぶれが広がり、金の先高観につながっている。

新興国の中銀は米ドル建て資産を中心に構成する外貨準備を「非ドル」資産に分散させようとしている。米国は基軸通貨ドルを武器にロシアなど敵対国に厳しい制裁を科した。ブラジルも関税を巡ってトランプ米政権と対立した経緯があり、「ドル離れ」を志向しやすいとみられている。

英商品ブローカーのマレックスで市場分析のグローバル責任者を務めるガイ・ウルフ氏は「他の既存通貨も現状だと米ドルと同様に発行する政府の財政悪化などの懸念を抱えており、金が買われている」とみる。外貨準備を金に振り向ける動きは「1020年続き、中長期的に金価格を下支えする」とみる。

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中銀の金購入方法も多様になっている。中銀の金保有と言えば映画で見るような地金が一般的だが、現物の金を裏付けとするETFや先物・スワップなどデリバティブ(金融派生商品)を活用する事例が増えている。

米資産運用大手インベスコが世界各国の中銀の資金運用担当者などに対して毎年実施する調査では、回答した中銀の16%がすでにETFを購入しており、5年後までに投資するとの回答は21%に達した。調査を担当したロドニー・リングロー氏は中銀がETFやデリバティブを活用する利点について「効率的かつ匿名性高く金の比率を調整できる」と話す。

WGCが公表する金ETFの資金流出入は機関投資家やヘッジファンドの取引動向を映すものとして広く認識されているが「すでに中銀の売買も反映されている可能性がある」(インベスコのリングロー氏)。実際の中銀による購入額はWGCの統計で報告されている分よりも大きいことも想定される。

ファンド勢が機動的に売買する金ETFは、相場環境によって資金が大きく流入したり、流出したりする。長期保有が前提である中銀による活用が広がれば「ETFも動かないマネーになるかもしれない」(日本貴金属マーケット協会の池水雄一代表理事)との見方があった。今後はETFの売買動向にも一段と注目が集まりそうだ。

(神山美輝、サンパウロ=水口二季)

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