古村治彦(ふるむらはるひこ)の政治情報紹介・分析ブログ

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タグ:電気自動車

 古村治彦です。

 2023年12月27日に『バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる』(徳間書店)を刊行しました。『週刊現代』2024年4月20日号「名著、再び」(佐藤優先生書評コーナー)に拙著が紹介されました。是非手に取ってお読みください。よろしくお願いいたします。

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

 拙著『悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める』(秀和システム、2021年)と『バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる』(徳間書店、2023年)で、取り上げたが、私はアメリカの産業政策に注目している。特に、アメリカ軍部とシリコンヴァレーの情報産業・IT産業との新・軍産複合体づくりが行われていることを指摘した。そして、ジョー・バイデン政権では、産業政策が重視されていることも併せて紹介した。

 産業政策とは、「政府の政策を利用して、市場だけが生み出す可能性のある結果とは異なる、できればもっと前向きな結果を生み出そうとすることだ(Industrial policy is the use of government policy to try to produce an outcome that’s different—hopefully, more positive—than what the market alone is likely to produce)」と定義されている。政府が産業を保護し、指導して、より良い結果を生み出そうとするもので、その元祖は日本である。その研究を行ったのが、日本研究の大家だった故チャルマーズ・ジョンソンだった。このことも詳しく拙著『バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる』で紹介している。

 そして、現在、産業政策によって、急激な経済発展を成功させ、アメリカの地位を脅かすまでになっているのが中国だ。そして、アメリカ国内では、「中国の成功をけん引している産業政策なるものを私たちやるべきだ」という主張が出ている。下に紹介する論稿はまさにそれだ。現在、電気自動車、バッテリー、クリーンエネルギー(太陽光パネルなど)、人工知能、ロボット工学といった最先端分野で、中国がアメリカをリードしている分野が多い。それは、中国が産業政策をうまく使ったからだ。中国の産業政策の特徴は、「中央統制[central control](ただし反抗的な地方[recalcitrant localities])、巨額の補助金[massive subsidies](ただし熾烈な競争[ferocious competition])、保護主義[protectionism](ただし外国投資の勧誘[courting foreign investment])が入り混じった混乱した状況」であるが、「保護をしながら同時に激しい競争をさせる」「外資導入も積極的に行う」ということにある。加えて、こうした政策を首尾一貫して行える政府機関も存在する。それが中国国家発展改革委員会(China’s National Development and Reform Commission)である。日本では、通商産業省が「経済参謀本部(Economic General Staff)」であった。

 この論稿で重要なのは、アメリカ政府は権力、職掌が分立しており、こうした1つの本部機能を持つことは難しいのであるが、ジョー・バイデン政権1期目の前半は、ジェイソン・マセニー(Jason Matheny)という人物を、「技術・国家安全保障担当大統領次席補佐官(deputy assistant to the president for technology and national security)、国家安全保障会議(NSC)技術・国家安全保障担当調整官(National Security Council [NSC] coordinator for technology and national security)、そして、ホワイトハウス科学技術政策局(Office of Science and Technology PolicyOSTP)国家安全保障担当副局長の3つの異なる役職に任命した」ということだ。この人物が調整役となって、首尾一貫した政策の陣頭指揮(国内政策と対外政策)を執っていたということだ。現在はランド研究所所長となっている。この人物の存在が非常に重要ということになる。

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ジェイソン・マセニー

 米中は最先端の産業分野において官民協働で戦っている。その戦いは激しいものであるが、そのような戦いができることは羨ましい。しかも、産業政策を立案し、成功させたのは、戦後日本であった。日本がこの戦いに加われないほどに落ちぶれ果ててしまったこと花とも残念なことである。

(貼り付けはじめ)

迷走するアメリカの産業政策は中国から教訓を得ることができる(America’s Flailing Industrial Policy Can Take Lessons From China

-北京の経験は、数々のチャンスと罠(opportunities and traps)の両方を示す行程表(ロードマップ、roadmap)である。

ボブ・デイヴィス筆

2024年4月11日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2024/04/11/america-industrialpolicy-china-economics-infliation-manufacturing/

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ジョー・バイデン大統領率いるホワイトハウスは、ここ数十年で最も野心的な産業政策プログラム(industrial policy program)を策定し、海外との競争によって、国内で衰退した戦略的産業(strategic industries)を復活させようとしている。その目的は次の通りだ。クリーンエネルギー(clean energy)と半導体製造(semiconductor manufacturing)に重点を置き、アメリカの産業と技術力を強化することで、中国の先を行くことである。

しかし、北京と対決しようとするあまり、ワシントンは中国が何十年にもわたり西側諸国(the West)に追いつくことを目的とした産業政策を試行錯誤しながら(through trial and lots of errors)学んだ教訓を無視してきた。米中両国の政治体制が異なっているが、ワシントンが学ぼうと思えば学べることはまだたくさんある。

アメリカは少なくとも第二次世界大戦後、産業政策の一分野、すなわち新技術の育成(fostering new technologies)において主導してきた。ジェット飛行機からスーパーコンピューター、通信衛星、インターネットに至るまで、世界経済に革命をもたらす技術の開発には、多くの場合、国防総省を介した(via the Pentagon)連邦資金(federal dollars)と支援が重要な役割を果たした。しかし、アメリカが日本のような外国の競争相手に負けることに悩み始めた1980年代初頭以降、政府は重要産業の再国内化で惨めに失敗してきた。

アメリカ政府が何も試さなかった訳ではない。ロナルド・レーガン元大統領は国内の小型車製造を復活させようとし、ジョージ・HW・ブッシュは薄型テレビ(flat-screen televisions)に狙いを定め、ビル・クリントンは小型車に再挑戦した。バラク・オバマはソーラーパネルを推進した。ドナルド・トランプは電気通信機器を推した。どれも成功しなかったが、その主な理由は、補助金を得るアメリカ国内生産よりも、海外生産の方がはるかに安価なままだからである。

だからといって、ジョー・バイデン大統領の取り組みが絶望的であることを意味する訳ではないが、課題の大きさと、他の国の経験に目を向ける必要性を指摘している。中国は産業政策で失敗したこともあるが、繊維、タイヤ、電子機器製造、太陽エネルギー、風力発電、バッテリー、高速鉄道など多様な分野で、西側のライヴァルに打ち勝つ強力な産業を自国内で構築するために政府の政策を利用してきた。過去45年間、こうした成功によって、中国は貧しい国から、世界第2位の経済大国に成長した。

ホワイトハウスの元国際経済担当シニア・ディレクター、ピーター・ハレルは次のように語っている。「私の知る限りでは、バイデンのホワイトハウスでも中国の産業政策を研究する努力はなされてきた。しかし、その目的は、私たちにとってプラスになる教訓があるかどうかを確認することよりも、中国からの報復や被害を軽減する方法を見つけ出すことだった」。

第一に、定義だ。産業政策とは、政府の政策を利用して、市場だけが生み出す可能性のある結果とは異なる、できればもっと前向きな結果を生み出そうとすることだ(Industrial policy is the use of government policy to try to produce an outcome that’s different—hopefully, more positive—than what the market alone is likely to produce)。基本的に、政府は、経済成長の基礎となる産業の発展や技術の進歩のために投資する。

中国の産業政策をアメリカと比較するのは難しい。中国は一般的に西側諸国に追いつくことに重点を置いてきたのに対し、アメリカは他国よりも抜きんでる(stay ahead of the pack)ことを目指してきた。中国は、全権を握る(しかししばしば目に見えない)共産党をトップとする独裁的な政府(autocratic government)によって運営されている。ワシントンでは、経済における政府の役割についてまったく異なる見解を持つ2つの政党の間で権力がシフトしている。

中国の産業政策を説明する明確なハンドブックも存在しない。中央統制[central control](ただし反抗的な地方[recalcitrant localities])、巨額の補助金[massive subsidies](ただし熾烈な競争[ferocious competition])、保護主義[protectionism](ただし外国投資の勧誘[courting foreign investment])が入り混じった混乱した状況だ。しかし、このシステムにはアメリカが学ぶことができる部分がまだある。

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中国の東部、山東省の煙台港で輸出を待つ数百台の電気自動車(1月10日)。

中国は世界的な補助金のチャンピオンだ。アメリカが世界の軍事支出を支配しているのと同じように、補助金支出を支配している。戦略国際​​問題研究所(Center for Strategic and International StudiesCSIS)の中国専門家スコット・ケネディは、2019年に中国はGDPに占める割合で、アメリカの12倍の補助金を支出したと推定している。これらの補助金には、研究開発費(R&D dollars)や税額控除(tax credits)、安価な資金調達(cheap financing)、地価の割引(cut-rate land prices)、政府による優先購入(government purchasing preferences)、さまざまな投資基金の支払い(investment fund payouts)などが含まれていた。

バイデン政権のある元高官によれば、バイデンの税控除と補助金は数年間で6000億ドルに達する可能性があるという。しかしケネディは、それが中国との格差を縮めることにつながるかどうかは疑問であると述べている。ケネディは中国を「先進国には同輩がいない特異な存在(an outlier that has no peers in the industrialized world)」と呼んでいる。

中国専門の研究者たちは、中国の成功の秘訣は、単なる支出ではなく、驚くべきことに競争(competition)にあると述べている。中国共産党と中央政府は産業政策の優先順位(industrial policy priorities)を設定するが、計画を実施し、支出のほとんどを賄うのは地方自治体に委ねられている。地方レヴェルでは、地元の党幹部が中国政府の意向を実行して昇進を目指して争っているため、競争は熾烈である。

シカゴ大学の経済学者チャン・タイ・シエは、この競争が計画されることはほとんどないと語った。中央政府は、自らの制御を超えた競争を引き起こすよりも、むしろ州のチャンピオンを生み出すことに努めたいと考えている。しかし、政治的に安全と見なされているため、中国政府が優先分野に指定している分野に資金が殺到している。「中国の産業政策の秘訣は地方政府間の競争だ(The secret sauce of China’s industrial policy is competition among local governments)。各都市で役人たちは(経済的に)意味のないことをしているが、彼らは党階層内の人々を喜ばせたいのである」と述べた。

戦略国際問題研究所(CSIS)の調査によると、電気自動車(electric vehiclesEVs)が優先事項になってから、2020年までに全米約400社が電気自動車ビジネスの様々な分野に参入した。同じプロセスが太陽エネルギーでも起こり、現地レヴェルでの競争が激しすぎて太陽光パネルの価格が暴落し、中国企業は収益を上げるために輸出に目を向ける一方で、事業を存続させるために政府の融資に頼った。

これら全てが外国の競合他社を市場から追い出す巨大な力を生み出した。中国は現在、世界需要の3倍の太陽光パネルを生産していると『フィナンシャル・タイムズ』紙は報じた。 戦略国際問題研究所(CSIS)の研究者イラリア・マゾッコによると、昨年の中国の太陽光パネル、電池、電気自動車の輸出は鉄鋼および関連品目の輸出とほぼ同額だった。太陽光パネル業界は長年中国特有の過剰生産(overproduction)が蔓延してきた業界だという。

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ジョージア州ノークロスの同社を訪問した太陽電池会社スニバのマット・カード社長(中央)がジャネット・イエレン米財務長官としている(2024年3月27日)。

ジャネット・イエレン米財務長官は、最近の中国訪問中に中国の財務長官に対し、クリーンエネルギー製品の超安価な輸出を止めるよう強く求めたと述べた。イエレン財務長官は、最近の講演で「過剰生産能力は、アメリカの労働者や企業、世界経済だけでなく、中国経済の生産性や成長にもリスクをもたらす」と述べた。

中国製品の価格は非常に安いので、アメリカ国内の太陽光発電会社の一部は、インフレ抑制法(Inflation Reduction ActIRA)の補助金だけでは中国に代わる代替手段を生み出すのに十分ではないと主張している。『ウォールストリート・ジャーナル』紙の試算によると、IRAインフレ抑制法可決以降にアメリカで発表された新たな太陽光パネル生産量の約4分の1を中国企業が占めており、中国企業は最大14億ドルの補助金を受け取ることになる。

アメリカに本社を置く最大手の太陽光発電メーカーである「ファースト・ソーラー」社のマーク・ウィドマー最高経営責任者(CEO)は連邦上院委員会で、「インフレ抑制法の太陽光エネルギー税額控除の最大受益者が中国になる大きなリスクがある」と述べている。

それでも、補助金は中国の成功を保証しているものでもない。中国を中心とした市場調査会社であるガベカル・ドラゴノミクスの技術アナリストであるダン・ワンは、中国は半導体の設計と製造に何十億ドルもの補助金を費やしているが、先進的なコンピューターチップの製造において市場リーダーである台湾積体電路製造(Taiwan Semiconductor Manufacturing Co.TSMC)に少なくとも5年遅れを取っていると推定している。

資金の洪水は腐敗も招く。清華紫光集団(Tsinghua Unigroup Inc.)は、中国政府から巨額の半導体製造補助金を受けった。清華紫光集団を率いた趙偉国は、中国の汚職防止当局から「自分が経営する国有企業を私的に支配とした」との申し立てを受けて拘束された。

ここには、アメリカにとっていくつかの教訓がある。第一に、補助金だけでは産業政策を進めるのに十分ではない。第二に、中国が優先している産業で、中国と競争するには莫大な費用がかかり、おそらくアメリカがほぼ提供しないレヴェルの保護主義が必要となる。

国内企業の業界団体であるアメリカ太陽エネルギー製造業者連合のエグゼクティブディレクターであるマイケル・カーは、政府は何が必要なのかの一例として砂糖産業に注目すべきだと述べた。そこでは、アメリカは価格が一定の水準を下回った場合に、砂糖のローン返済を受け入れており、ミシガン州、ミネソタ州、およびカリブ海気候とは程遠い他の場所で砂糖が栽培されるという奇妙なシステムを支持している。

しかし、おそらく最も重要なことは、中国の例は、産業政策が競争を促進することを保証することの重要性を示しているということになるだろう。ピーター・ハレルは、「私たちが産業政策を考えるとき、補助金や税金補助金が少数の企業を固定化し、既存企業を弱体化させないようにすることを考える必要がある」と語った。

バイデン政権の国家経済会議前委員長ブライアン・ディーズは、バイデン政権の計画のように、現金補助金よりも税額控除に依存する方が競争を促進し、中国に蔓延する過剰生産を回避するはずだと述べた。税額控除が認められる前に、投資家たちは市場を評価し、収益性があるかどうかを判断し、資金を投下する必要がある。政府が決定を下している訳ではない。利益を追求する企業が決断しているのだ。

ディーズは次のように語っている。「補助金は収益を向上させる。しかし、最終的には、誰かが多額の資本を危険に晒さねばならない。返済能力がなければ、利用率は低くなる」。

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左:2020年1月22日、中国北部の河北省邯鄲の工場でフェイスマスクを生産する労働者たち。右:2月15日、フロリダ州マイアミ北部にある家族経営の医療機器工場で呼吸用マスクを生産する労働者たち 202115日。

中国の産業政策目標は、1970年代後半に経済が世界に開放されて以来、変化してきた。当初、中国は膨大な、かつ低賃金の労働力を利用して、繊維、アパレル、エレクトロニクス製造業を中国に誘致した。それ以降、北京はより野心的になり、現在ではロボット工学、半導体、クリーンエネルギー、人工知能などの未来の技術でリーダーシップを発揮することを目指している。

カリフォルニア大学サンディエゴ校の経済学者バリー・ノートンは、中国は特に「ショートボード(short board)」技術と呼ばれるもの、つまり西側諸国の封鎖によって中国が機能不全に陥る可能性がある分野に重点を置いている、と指摘している。例えば、トランプ政権以降、中国は中国のコンピューター産業がアメリカ主導の輸出規制に耐えられるよう、国内の半導体設計・製造装置メーカーの強化(strengthening its domestic semiconductor design and manufacturing equipment makers)に注力してきた。

産業政策に依存し過ぎることには、明らかに敗者となるプロジェクトを、撤退するべき時期よりも、はるかに長く続けることなどのマイナス面もある。たとえば、国際競争力のあるガソリン車、燃料電池、水素エネルギーの開発という失敗した取り組みに資金をつぎ込むことなどだ。しかし、多くの場合、中国は挫折もあったが、必要な調整を行ってきた。自動車分野では、ガソリン車が中国の産業政策計画から除外されるようになった。その代わりに、電気自動車が登場した。5カ年計画や指導者が次の選挙を心配する必要がないシステムに対する中国の執着を真似するよう、アメリカに勧める人はいないが、民主的な制度においては、関与と長期計画は米国の弱点となるのは必然であろう。

アメリカの繊維メーカーは既に、バイデン政権が新型コロナウイルス感染拡大期間中に当初提案された2021年の法律で義務付けられている、アメリカ製のマスク、ガウン、その他の個人用保護具の購入や、国防生産法(Defense Production Act)への資金提供がうまくいかずに、役に立たなかったと不満を漏らしている。全国繊維組織評議会のキンバリー・グラスは、アメリカ企業は約束された注文に向けて準備を進めたが、連邦政府機関は安価な中国からの輸入品を購入し続けたと述べている。

あるホワイトハウス高官は、退役軍人省はアメリカ製の物品129点を特定し購入を開始しており、他の機関も同様の取り組みを始めていると述べた。しかしグラス会長は、彼女のグループのメンバーたちはアメリカ製の注文を見たことがないと語った。

アメリカ政治の分裂状態について考えると、バイデンのクリーンエネルギー計画のどれだけが第二期トランプ大統領の任期後にも存続できるかは、まったくもって不透明だ。トランプ大統領は現在、電気自動車を雇用の喪失者として非難し、自動車産業は政府の自動車推進政策によって「暗殺」されていると主張している。そして、クリーンエネルギーに対する補助金や税制上の優遇措置の大部分を盛り込んだインフレ抑制法は、共和党からの投票を1票も得られずに可決された。半導体製造に対して、390億ドルの補助金と税額控除を提供するCHIPSおよび科学法(CHIPS and Science Act)は、超党派の支持を得ており、トランプ政権での提案として始まったため、より安全であるように思われる。

過去に共和党政権は民主党の産業政策努力を阻止しようと努めてきた。例えば、ジョージ・W・ブッシュ大統領は、超効率のガソリン車を開発するというクリントン政権の取り組みを即座に中止した。連邦議会共和党はオバマ大統領の太陽光パネル開発計画を縮小した。

ディーズは、地方政治での動きもあり、クリーンエネルギーへの補助金は政権交代後も存続するとみている。インフレ抑制法可決後に行われたクリーンエネルギーへの投資の約75%は共和党が勝利した連邦下院選挙区で実施された。ディーズは、「産業能力に、より精力的な方法でもっと投資する必要があるという基本的な命題には、より継続性がある」と述べている。

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北京のビルに飾られている巨大な中国国旗の近くで自身の電話を見る男性(2017年10月23日)。

アメリカが中国指導部の経済支配を真似て近づくことは、たとえそれを望むとしても、不可能なことだ。中国には、小規模な共産党指導グループが大規模な政府計画システムを監督する並行システムがあり、優先事項の承認を得るために様々な機関や国有企業によるロビー活動が渋滞するほどに活発である。

アメリカの産業政策へのアプローチは様々な機関の間で分裂しており、国家計画委員会(state planning agency)の後継である中国国家発展改革委員会(China’s National Development and Reform Commission)のような全体をまとめる機関はない。商務省が半導体プログラムを運営し、エネルギー省、財務省、内国歳入庁、その他の機関がクリーンエネルギー奨励金について発言権を持ち、国防総省が半導体や通信技術に関連する他のプログラムを管理している。ホワイトハウスの無名機関である科学技術政策局(Office of Science and Technology PolicyOSTP)が調整役として起用される可能性もあるが、大きな影響力を持つことはほぼない。

産業政策の監督を調整するため、ホワイトハウスは著名なテクノロジスト(technologist)であるジェイソン・マセニーを、技術・国家安全保障担当大統領次席補佐官(deputy assistant to the president for technology and national security)、国家安全保障会議(NSC)技術・国家安全保障担当調整官(National Security Council [NSC] coordinator for technology and national security)、そして、ホワイトハウス科学技術政策局(Office of Science and Technology PolicyOSTP)国家安全保障担当副局長の3つの異なる役職に任命した。国家安全保障が技術の進歩にますます依存する中、ホワイトハウスは政策が「一致している(in sync)」ことを確認したいとマセニーは語った。マセニーが国防シンクタンクのランド研究所所長に就任するために2022年に政権から離れた後は、彼の仕事は複数の人物に分担されていた。

オバマ政権で、国家安全保障委員会に勤務した経験を持つ、現在は政治コンサルティング会社バウンダリー・ストーン・パートナーズ社に勤めるクリスティン・ターナーは次のように語っている。「全体像を把握できる人は誰もいない。業界政策を全面的に機能させるための全ての糸を引く責任を負う閣僚レヴェルの担当者は存在しない」。長年にわたり、商務長官や新たな競争力強化担当政府機関(new competitiveness agency)を産業政策調整担当(industrial policy czar)にするという提案があったが、政府諸機関の間で、そして、連邦議会の各委員会の間の対立のため、実現には至らなかった。

あるホワイトハウス高官は、非常に多くの様々な機関が産業政策の取り組みに関与する必要があることで、アメリカの制度には利点があると反論した。「これは政府全体のアプローチだ」とこの人物は述べ、この計画はホワイトハウス次席補佐官のナタリー・クイリアンが調整していると述べた。

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オハイオ州ジョンズタウンにあるインテル社の新しい半導体製造工場を訪問するジョー・バイデン米大統領(2022年9月9日)。

ある意味、アメリカは中国の産業政策への取り組み方を真似し始めている。アメリカは何年もの間、中国がアメリカの経済モデルに従うことに利点を見出し、中国は保護主義を続ければ貿易が遮断されることを恐れるようになると考え、アメリカを中国の自由市場モデルとして提示しようとしてきた。しかし、それはもはや行われていない。現在、アメリカ政府も中国政府と同程度に、国内産業を活性化している。ライヴァル国が不利になる行動を取る理由として「互恵性(reciprocity)」を挙げる可能性が高い。

バイデン大統領が、中国の政府諸機関が収集する可能性のあるデータを送信しているとして、中国製電気自動車のアメリカへの輸入を禁止する大統領令案を発表したとき、バイデンの考えは明確だった。バイデン大統領は「中国は、中国で操業するアメリカ車やその他の外国車に制限を課している。なぜ中国からのコネクテッドヴィークル(connected vehicles)が安全対策措置なしで、我が国で走行することを許可されなければならないのか?」と述べた。

おそらく、中国の例が示すアメリカ政府にとって最も難しい問題は、このような保護主義にどこまで傾くかということだろう。中国の成功の重要な部分は、通信製造(telecommunications manufacturing)などの分野で巨大な国内市場を遮断したことだ。これにより、華為技術(ファーウェイ)と中興通訊(ZTE)は、国際競争に必要な研究開発や自動化の費用を賄える確実な収益基盤を手に入れた。中国はインターネットサーヴィスでもこの方式を繰り返し、百度(Baidu)はグーグルやその他の企業との競争から自由に成長できるようになった。

しかし、中国は多くの産業で海外からの投資も奨励してきた。中国は、合弁事業(joint ventures)、規制(regulations)、審査委員会(review committees)、そしてあからさまな盗用(outright theft)を利用して、濫用される可能性のある秘密技術を学習してきた。その例は数多く存在する。中国で事業を行う条件として、日本とヨーロッパの新幹線メーカーは中国鉄道省と中国企業にノウハウを移転した。やがて、中国企業が強力な競争相手となった。中国が電気自動車市場を開拓していた頃、外国自動車メーカーはアップグレードを支援するために地元企業からバッテリーを購入する必要があった。一方、中国資本のヴォルヴォ・カー・グループは韓国から、より先進的なバッテリーを購入することができ、電気自動車での競争力が高まった。

トランプ政権は、中国がアメリカに輸出する品目の4分の3に関税を課すことで、アメリカ国内市場の保護に努めたが、中国企業がサプライチェーンを再構築し、ヴェトナムとメキシコでの事業を通じて、アメリカに輸出できるようにしたため、大きな影響はなかった。審査に関わった弁護士らによると、バイデンは関税を維持し、中国企業が国家安全保障審査に合格してアメリカ企業を買収することをほぼ不可能にすることで保護を倍増したということだ。市場調査会社ロジウム・グループによると、中国の対アメリカ投資は2016年の540億ドルから2022年には約15億ドルに急減した。フォードが電気自動車での競争力を高めるために、中国の「コンテンポラリー・アンペレックス・テクノロジー」社から先進的な電池技術のライセンス供与を受けるという契約でさえ、連邦議会とヴァージニア州知事から非難を浴びた。

外国投資に対する偏見は、中国とその他の少数の敵対国家にのみ適用される。アメリカの産業政策計画は一般に海外投資(foreign investment)に大きく依存している。半導体メーカーに対するCHIPS法の補助金は主に、台湾に本拠を置くTSMCに、アメリカに先進的な工場を建設するよう説得する方法として始まった。最近、バイデン政権はアリゾナ州の新しい半導体製造工場3カ所へのTSMCの650億ドルの投資を支援するため、TSMCへの66億ドルの補助金を承認したが、プロジェクトの作業進行は予定より遅れている。これは、インテル社やその他の米メーカーへの補助金に、追加されるものである。

中国に関して、アメリカのアプローチは曖昧だ。バイデン政権が太陽光発電の設置拡大を推進しているので、アメリカ国内に新設される中国資本の太陽光パネル工場は税額控除の対象となる可能性がある。しかし、中国の電池メーカーや半導体企業は一般的にそうではない。そこでは、アメリカは中国企業を締め出し、アメリカ企業が技術分野で中国企業を追い越すことを期待している。

戦略国際問題研究所(CSIS)の中国専門家であるケネディは、中国企業がアメリカの市場リーダーから学んでアップグレードしたのと同じように、中国企業がリーダーとなっている、バッテリーや電気自動車、その他のグリーンテクノロジーなどの分野で、中国からの投資が必要だと述べた。

ケネディは次のように指摘している。「私たちは、表が出ればあなた方の勝ち、裏が出れば私たちの負けというアプローチを採っている。もし、私たちが技術的に進んでいるのであれば、中国に技術を与えたくないので中国からの投資は望まない。私たちが遅れている場合、それは国家安全保障上のリスクであると感じ、従って中国に依存したくないということになる」。

中国企業への投資優遇措置を全面的に禁止するよりも、リスクと利益を比較検討するアプローチの方が、筋が通っている。中国はまさにその手法を使っている。中国は、テスラの高級電気自動車生産能力を高めるために上海に工場を建設するよう奨励しようとしたとき、様々な減税措置や低利融資を提供した。

同様に、アメリカが明らかに遅れている、バッテリー分野での中国の投資を奨励することは、アメリカで生産する中国企業に、非中国企業が受けるのと同じ優遇措置を与えることを意味する。太陽光発電では、サプライチェーンを多様化する方法の1つとして、アメリカで生産する全ての企業(中国企業、非中国企業を問わず)は、使用する材料が中国以外の供給源から来ている場合、より多くの利益を得るべきである。

アメリカは、中国がこれまで非常にうまく利用してきた別のアプローチ、つまり、アメリカへの投資承認と引き換えに技術へのアクセスを要求するというアプローチを試すこともできる。アメリカでは連邦下院が、アメリカに友好的な買い手に販売されない限り、アプリを禁止する法案を可決したが、これは北京へのシグナルとして解釈すべきだ。基本的に、この法案は、TikTokの基盤となる技術を西側諸国の管理下に移すことを求めている。

技術交流(technology exchange)は、中国がアメリカでビジネスを行うために支払う代償となる可能性がある。カリフォルニア大学サンディエゴ校のエネルギー専門家マイケル・デイビッドソンは次のように指摘している。「非常に皮肉な状況がある。アメリカは、技術移転(technology transfer)を強制する中国の保護主義政策について長い間不満を述べてきた。アメリカには、それを覆し、中国から有利な条件で技術を手に入れるチャンスがある」。

この種の圧力戦術を使うことは、被害者が一流の弁護士や独立した司法機関にアクセスできる民主的なシステムにおいては難しいかもしれない。それでも、何がうまくいき、何がうまくいかないかを知るために、アメリカ人は中国の経験を研究するのがよいだろう。

※ボブ・デイヴィス:『ウォールストリート・ジャーナル』紙で長年にわたり、米中経済関係の特派員を務めた。共著に『超大国の対決: トランプと習近平の戦いが新たな冷戦をどのように脅かすか(Superpower Showdown: How the Battle Between Trump and Xi Threatens a New Cold War)』がある。ツイッターアカウント:@bobdavis187

(貼り付け終わり)

(終わり)
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ビッグテック5社を解体せよ

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める
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 古村治彦です。

 2023年12月27日に『バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる』(徳間書店)を刊行しました。『週刊現代』2024年4月20日号「名著、再び」(佐藤優先生書評コーナー)に拙著が紹介されました。是非手に取ってお読みください。よろしくお願いいたします。

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

 電気自動車分野の動きに関して、ここ数回、このブログでもご紹介している。アメリカは中国製の電気自動車に対して、関税100%を課す決定を下した。この措置は、アメリカの国内市場で、中国製の電気自動車がシェアを広げており、アメリカ政府としては、経済問題と安全保障上の問題として、懸念を持っていることを示している。世界最大の電気自動車メーカーであるテスラにしてれば、ありがた迷惑な措置であることは前回の記事で書いた。

 アメリカは、電気自動車に必要不可欠なバッテリー分野で重要な存在となっているインドネシアとの間での自由貿易協定を結ぶことを躊躇している。インドネシア政府が、精錬されていないニッケル(バッテリーにとって必要な鉱物資源)の輸出を禁止したことで、インドネシアにニッケル精錬工場や、バッテリー製造工場を建設するために、各国が投資を行っているが、その中心は中国である。中国が関連しているニッケル精錬工場からのニッケルや、バッテリー製造工場からのバッテリーを、アメリカ国内に入れることに、バイデン政権は躊躇しているようだ。「インドネシアはいつまでもはアメリカを待っていられないよ」とルフット・ビンサル・パンジャイタン海洋・投資調整担当大臣名で『フォーリン・ポリシー』誌に掲載した論稿についてもこのブログで既にご紹介している。

そうした中で、イーロン・マスクがインドネシアを訪問し、ジョコ大統領とルフット大臣と会談を持ったということ、インドネシア国内にバッテリー製造工場を作ると発言したことは重要だ。イーロン・マスクはアメリカ政府の意向に反するような動きをしているが、これはマスクからすれば当然の動きだ。テスラは、中国市場が最大の得意先であり、中国の上海で製造している。中国が既に進出しているインドネシアに進出して、バッテリー工場を作るというのは、これもまた当然のことだ(中国資本の精錬工場からのニッケルを使うだろう)。アメリカが中国とインドネシアを排除している中で、テスラが入って、電気自動車分野に関して、三角形を形成している。そこにアメリカが入れないというのは、アメリカにとって大きな痛手である。

 インドネシア政府の海洋・投資調整府(Coordinating Ministry for Maritime and Investment Affairs)が、インドネシアにおける電気自動車関連、最終的な電気自動車の生産と輸出を担当している重要な部署となっている。ジョコ・ウィドド大統領就任直後の2014年10月27日に設置された(ジョコ大統領就任は10月20日)。ジョコ政権下、海洋・投資調整大臣はルフット・ビンサル・パンジャイタンが一貫して務めてきた。大統領交代のため、ルフット大臣が退任し、エリック・トヒル国有企業大臣が後任大臣に就任するという予測が出ている。大きな政策変更はないということのようだ。以下に紹介している論稿では、東南アジア地域では、タイが最大の電気自動車市場になっており、輸出量も地域で最大になっているということだ。これは世界の巨大自動車メーカーがタイに進出しているということもあるだろうが、インドネシアにとっては手強い競争相手になる。また、ヴェトナムもヴィンファスト社という会社があって、既に電気自動車を輸出しているとのことだ。これは、おそらく、中国からの支援や協力があってのことだろう。こうやって、アメリカの影響力を削いでいる。

 電気自動車分野は、国際政治の最前線ということになる。ここでも、米中対立が起きているが、アメリカは中国に対して、既に劣勢に立っている。最先端分野でのアメリカの衰退は、アメリカの世界帝国としての終わりを告げている。

(貼り付けはじめ)

マスク氏、インドネシア大統領と会談 EV電池工場の建設検討へ

By Stefanno Sulaiman

ロイター通信 2024520日午後 3:04 GMT+92時間前更新

インドネシアのルフット海洋・投資担当調整大臣は20日、ジョコ大統領とこの日面会した米電気自動車(EV)大手テスラのイーロン・マスク最高経営責任者(CEO)が同国にEV電池工場を建設する案を検討すると明らかにした。

[デンパサール(インドネシア 20日 ロイター] - インドネシアのルフット海洋・投資担当調整大臣は20日、ジョコ大統領とこの日面会した米電気自動車(EV)大手テスラ(TSLA.O), opens new tabのイーロン・マスク最高経営責任者(CEO)が同国にEV電池工場を建設する案を検討すると明らかにした。

マスク氏からコメントは得られていない。

同氏とジョコ大統領は20日にインドネシアのバリ島で開催された世界水フォーラムに出席後、会談を開いた。

また、ジョコ大統領はマスク氏にインドネシアの人工知能(AI)センターへの投資を検討するよう求めたほか、マスク氏の宇宙開発企業スペースXがパプア州ビアク島にロケット発射場を建設することを改めて提案した。

インドネシア政府は同国の豊富なニッケル資源を活用してEV産業を振興しようとしており、何年もテスラの工場誘致に力を入れてきた。

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インドネシアは電気自動車に大きく賭けている(Indonesia Bets Big on Electric Vehicles

-ジャカルタの最新の開発ギャンブルはグリーン転換にかかっている。

ジョセフ・ラックマン筆

2024年5月8日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2024/05/08/indonesia-electric-vehicle-green-transition-china-tariffs/

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ジャカルタで開催されたインドネシア国際モーターショーで、ヴェトナムの電気自動車ブランド「ヴィンファスト(VinFast)」が電気自動車VF7を展示(2024年2月24日)。

インドネシアの投資・海事担当調整担当(coordinating minister for investment and maritime affairs)副大臣ラフマト・カイムディンは、「中国は工業化するには40年から50年かかった。私たちはもっと速くする必要があるかもしれない」と述べた。インドネシア政府は、2045年までに先進国になるという野心的な目標を設定している。その一環として、電気自動車生産の世界的なハブ(global hub)となるという大きな賭けが行われている。

ジャカルタは、世界的なグリーン転換の中で、国内に埋蔵している莫大なニッケルとコバルトを成長の原動力にするチャンスに目をつけた。これらの鉱物はバッテリー生産に不可欠であり、鉱山から自動車ユーザーまでの国内サプライチェーン構築の基盤として利用できる。

今のところ、この賭けはうまくいっているようだ。インドネシアは現在、世界のニッケル生産の51%を占めており、コスト競争を圧倒し、コンゴ民主共和国に次ぐ世界第2位のコバルト生産国となっている。韓国のヒュンダイ、日本の三菱自動車、中国の五菱、奇瑞、DFSKの5社がインドネシア国内で既に、少数ではあるが、電気自動車を生産しており、今後更に多くの電気自動車が生産することが期待されている。大手電池メーカーや電池材料メーカーもこれらの企業と一緒にインドネシアに進出している。

この電気自動車という新興産業分野は、国内問題、地政学的保護主義、環境問題、技術革新など、無数の仕掛け線(tripwire)に直面しているが、楽観できる理由もある。ビジネス情報会社「ベンチマーク・ミネラル・インテリジェンス」のバッテリー・電気自動車担当主任アナリストのルーク・ギアは、「控えめに見積もっても、インドネシアは2030年までに年間50万台の電気自動車を生産できるようになるだろう」と述べている。

インドネシアの開発アジェンダ全体が電気自動車に懸かっており、その前途は険しいからだ。2045年までに政府の開発目標を達成するためには、インドネシアの成長率を平均5%前後から6~7%に引き上げる必要がある。最も基本的なレヴェルでは、インドネシアが望ましい商品を生産し、労働者が生産性の高い仕事に従事できるような産業からこれらの商品が生まれるようにし、これらの産業を構築するために必要な大規模な海外直接投資(foreign direct investmentFDI)を誘致できるようにする必要がある。もしそれができなければ、若い労働者と消費者からなるインドネシアの現在の人口ボーナスは、足かせに変わるだろう。希望は、今垣間見えるチャンスの窓がいつ閉じるのかという静かな不安と混ざり合っている。

電気自動車産業は、これらの条件を全て満たしているように見える。電気自動車市場は今後、猛烈な勢いで拡大すると予想されている。国際エネルギー機関(International Energy AgencyIEA)は、2035年までに販売される全ての自動車が電気自動車になると予測している。生産の大幅な増加によって生み出される雇用の多くは工場での仕事であり、工業化は労働者を農業や小規模サーヴィスなどの生産性の低い部門から生産性の高い部門に移動させる典型的な方法となる。これがインドネシアで起きることになる。

インドネシアは、莫大な重要鉱物資源を活用することで、海外企業にインドネシアへの投資を促し、鉱業に必要な直接投資を確保することを惜しまない。ニッケル鉱石の輸出禁止により、多くの中国企業がインドネシアでの精錬を開始した。2023年、中国企業はインドネシアの金属・鉱業プロジェクトに42億ドルを投じた。

現在、焦点はバッテリーと電気自動車生産の詳細を構築することに移っている。ここでインドネシア政府はムチよりもアメを投入している。補助金の対象となるには、インドネシアで製造された電気自動車が一定レヴェルの現地コンテンツ要件を満たす必要があり、この要件は時間の経過とともに増加している。しかし、その代わりに、これらの 電気自動車に対する付加価値税はわずか1% だ。この分野の主要投資家たちも10年間の納税猶予を受けている。インドネシアで生産を展開する際に、出荷する電気自動車には輸入税や奢侈税が課されない。

アメリカやヨーロッパの大手メーカーの多くはまだ参入を表明していないが、これは必ずしも問題になる訳ではない。その多くは世界的な電気自動車移行を呆然と見つめるだけで(caught flat-footed)、中国や新たな生産拠点の新興企業がチャンスを得ている。

しかし、この移行の裏返しとして、象徴的(totemic)な国家産業を保護したいという願望が、インドネシアの輸出への期待を台無しにする可能性のある先進国の保護主義を生み出しているということだ。ジョー・バイデン政権の電気自動車補助金には多くの条件が付けられており、インドネシアで組み立てられた電気自動車は排除されている。ヨーロッパ連合もまた、安価な中国製電気自動車が市場に流入することにパニックを起こし、ますます保護主義的な方向に進んでいる。インドネシアでは大量の石炭が燃焼されているため、同国の電気自動車は比較的炭素集約的である。

問題の1つは、グリーン・サプライチェーンにおける中国の支配に対する恐れである。しかし、これはほとんどの西側諸国の自動車メーカーが技術シフトについていけなかったことと表裏一体の関係にある。ステランティスはそれなりの業績を上げている。しかし、GM、フォード、フォルクスワーゲンは後塵を拝している。

競争力はないが政治的に重要な産業に対する保護主義について、長年にわたり発展途上国に説教してきた、西側諸国は、逆の立場になるとその姿勢を変えようとしている。保護主義や西側メーカーが採算の取れない電気自動車の撤退を遅らせていること、加えて、世界経済が不安定であることが、電気自動車の販売台数は伸び続けているものの、その伸び率は鈍化しており、下方修正されているとUBSの電気自動車バッテリー調査担当エグゼクティブ・ディレクターのティモシー・ブッシュは指摘する。

インドネシアの計画に対するもう一つの脅威は、更なる技術革新である。インドネシアの魅力の多くは、NCM電池に必要なニッケルとコバルトの豊富さにかかっている。しかし、過去5年間で、ニッケルもコバルトも使用しないLFP電池は、ニッチな製品から、電気自動車電池市場の40%以上を供給するまでになった。皮肉なことに、高価だが航続距離が長いNCM電池は、消費者が豊かで、世界的に見ても大変長距離を走る米国市場に最適かもしれない。しかし、インドネシアはその市場から締め出されている。

インドネシアはまた、電気自動車製造ブームに乗ろうとする他の国々との厳しい競争にも直面する可能性がある。ブルームバーグNEFのアナリスト、コマル・カレールは、「電気自動車に対する強い国内需要の欠如は、より多くの現地生産を誘致するためのハードルとなり得る。通常、バッテリーメーカーや自動車メーカーは、エンドユーザー層が厚い市場を好むものだ」と言う。実際、インドネシアは既にタイとの競争に直面している。タイは東南アジア諸国連合(ASEAN)最大の自動車輸出国であり、この地域最大の電気自動車市場を持っている。

この文脈では、インドネシアが長い間苦労してきた電気自動車分野に特化しない問題が特に重要になる。最近の改革は、外国人投資家の生活をより容易にしようとしている。しかし、非関税障壁は依然として大きな問題である。また、多くの企業にとって、この国の不透明な規制をナビゲートするための権力ブローカーとの関係が必要なのは、まさに生活の現実である。ニッケル部門における中国の主要投資は、海事・投資担当調整大臣であるルフート・ビンサール・パンジャイタン(インドネシアの便利屋[Mr. Fix It.])が指導している。

また、インドネシアの教育制度にはまだ多くの課題が残っており、競争相手の国々と比較しても一貫して悪い成績が続いている。電気自動車企業にとって、有能な労働者を見つけることは難題かもしれない。この問題をより深刻にしているのは、技術開発によって製造業の技能や資本集約度が高まり、労働吸収力が低下するという明らかな傾向である。電気自動車製造が熟練度の低い労働者の雇用を生み出す代わりに、インドネシアは少数の専門職のために適切な訓練を受けた労働力を提供するのに苦労することになるかもしれない。

それでも、こうした潜在的な問題が死刑宣告となる必然性はない。電気自動車の販売台数の伸び率が鈍化しているにもかかわらず、アナリストの多くは依然として強気で、世界市場は依然として力強く拡大していると指摘している。前述のベンチマーク社のギアは、インドネシアが魅力的なのは、その鉱物資源だけでなく、ASEAN最大の巨大な国内自動車市場があるからだ、と述べている。現在、国内の電気自動車普及率は低いが、需要は急速に伸びると予想される。強力な国内市場は、輸出に移行する企業をサポートするのに役立つだろう。

自動車メーカーが代替拠点としてインドネシアに目を向ければ、反中の保護主義がインドネシアに有利に働く可能性さえある。メイバンク・インベストメント・バンキング・グループの持続可能性調査責任者であるジガー・シャーは、「このような状況では、中国の自動車メーカーが採用する可能性のある最善の政策は、多くの拠点で現地に根ざした事業を立ち上げることだ」と語る。

有力な有力者たちとの関係が必要なため、物事が厄介になることもあるが、適切なコネクションを築いた企業にはレッドカーペットが敷かれる可能性がある。電気自動車メーカーに対する様々な優遇措置は、メーカーとの協議の上で決定されたものであり、投資を行う企業は、インドネシア政府が直面する問題を解決しようとしていることを期待できるだろう。また、プラヴウォ新大統領が誕生する一方で、ジョコ・ウィドド政権の主要人物が新政権で活躍することが期待されている。その中には、ルフット海洋・投資調整相の後任として一部で期待されている、大富豪のエリック・トヒル国有企業相も含まれている。

技術面では、LFPバッテリーの台頭が問題となる可能性があるが、対処可能な問題である。BMIの自動車アナリスト、コケッツォ・ツォアイは「LFPバッテリーはかなり大きなリスクだ」と述べている。しかし、ニッケルリッチ電池の市場シェアは、一時的な縮小の後、2026年に向けて回復すると予想している。エネルギー密度に関して、ニッケル電池の優位性は、様々な用途でニッケル電池が存在し続けることを保証するはずだ。また、先駆的なLFPブレード・バッテリーをほぼ独占的に使用するBYDによるインドネシアへの大規模な投資計画も、インドネシアがニッケル資源だけではない魅力を持っていることを示唆している。

また、製造における技術的な方向性も明確に定められたものではない。最近の研究では、電気自動車の労働集約性が低いかどうかが再評価され、ほぼ同じであるか、実際にはより多くの労働者が必要である可能性が示唆されている。特に市場シェアを拡大させている、BYDは労働集約的な生産モデルを開発しており、創業者は実際に自動車の製造には特に複雑な技術の習得が必要であることをきっぱりと否定している。

技術、市場、地政学がますます急速に変化する中、インドネシアが行う政策的な賭けは確実なものではない。ラフマット副調整相は次のように述べている。「私たちは成功するだろうか? その答えは時間が出してくれるだろう。私たちが知っているのは、立ち止まってはいられないということだ」。

※ジョセフ・ラックマン:インドネシアと東南アジアをカヴァーするフリーランス・ジャーナリスト。ツイッターアカウント:@rachman_joseph

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(終わり)
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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める
20211129sankeiad505

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 古村治彦です。

 2023年12月27日に『バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる』(徳間書店)を刊行しました。『週刊現代』2024年4月20日号「名著、再び」(佐藤優先生書評コーナー)に拙著が紹介されました。是非手に取ってお読みください。よろしくお願いいたします。

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

 アメリカのジョー・バイデン大統領は、中国からアメリカに輸出される電気自動車の関税を100%に引き上げると発表した。電気自動車をめぐり、米中の間は争いになっている。

バイデン大統領が強いドル政策を維持していれば、自然とアメリカからの輸出は高くなり、中国からの輸入は安くなる。関税を引き上げて、国内メーカーを保護するにしても、アメリカ最大の電気自動車メーカーであるテスラは中国との関係は悪くないし、既に進出して一定のシェアを保っている。

アメリカのテスラ(Tesla Motors)のイーロン・マスクは、中国との関係が悪くないどころか、良好である。上海にテスラの工場があり、テスラにとっての最大の市場は中国市場である。テスラのイーロン・マスクにしてみれば、バイデン政権の輸入電気自動車の関税引き上げは、中国からの報復を引き起こす可能性があり、迷惑なことだろう。テスラは電池だけの電気自動車に特化しており、バッテリー関連で制裁されると、テスラにとっては大きな痛手となる。イーロン・マスクがバイデンを支持していないこと、アメリカの三大メーカーが電気自動車で後塵を拝していることから、関税引き上げがやりやすかったということが考えられる。

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 バイデンの関税引き上げは、国家安全保障上の懸念から実施された面がある。アメリカ国内で中国メーカーの電気自動車が「コネクテッド・ヴィークル(connected vehicles)」であり、個人情報の流出やハッキングを警戒している。コネクテッド・ヴィークル「インターネットを介し、さまざまな情報を送受信できる次世代の自動車」のことであり、ジーナ・ライモンド米商務長官は中国製の電気自動車を「車輪のついたスマートフォン」と呼んでいる。個人情報が外国(中国)に流れることを懸念している。また、ハッキングされたり、遠隔操作をされたりして、運転できない状態にされることや、この電気自動車を通じて、政府機関のコンピュータへの侵入されてしまうことを懸念している。アメリカ国内市場で、安価な中国製の電気自動車がシェアを伸ばすことは、こうした懸念を増大させることになる。しかし、他国からすれば、アメリカ製の電気自動車に対して、同様の懸念がある。
 今回のバイデン大統領の措置は経済的な懸念というよりは、安全保障上の懸念の側面が強いということになる。また、政治的に見て、自分の再選に大きな影響がないと判断したものでもあるだろう。

(貼り付けはじめ)

●「バイデン氏、中国製品国家経済会議分への関税引き上げ 電気自動車は100%に」

2024.05.14 Tue posted at 20:30 JST CNN

https://www.cnn.co.jp/usa/35218904.html

ワシントン(CNN) バイデン米大統領は14日までに、中国からの輸入品のうち、国家安全保障に戦略的な重要性を持つ180億ドル(約2兆8000億円)相当の製品に対する関税を引き上げる方針を明らかにした。

鉄鋼やアルミニウム、汎用(はんよう)(レガシー)半導体、電気自動車、バッテリー部品、重要鉱物、太陽電池、クレーン、医療用品などに適用される。

電気自動車の関税を現行の27.5%から100%と約4倍に引き上げるほか、太陽光パネル関連は50%、他分野の製品は25%とする。

米国家経済会議(NEC)のブレイナード議長は、中国が自国の成長のために他国を犠牲にする戦略を続けていると批判した。

トランプ前大統領は在任中、中国から輸入される3000億ドル相当の製品に追加関税を課した。この措置は4年に1度、効果を検証することが法律で義務付けられている。バイデン政権の新たな関税は、この検証結果に基づいているという。

ホワイトハウス当局者らによると、バイデン政権は政策の優先順位に沿って算定法の見直しも図り、クリーンエネルギー技術に重点を置いた。

中国はこれまでの関税に、高い報復関税で対抗してきた。ホワイトハウスは、中国が今回どのような対抗措置を取るかについての言及を避けた。

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バイデン氏、中国の電気自動車を取り締まる(Biden Cracks Down on Chinese Electric Vehicles

-外国の「コネクテッド・ヴィークル(connected vehicles)」に関する新たな調査は、将来的に北京のハイテク部門に対する措置を可能にする可能性がある。

A new investigation into foreign “connected vehicles” could enable future action against Beijing’s tech sector.

クリスティーナ・リュー、リシ・イエンガー筆

2024年3月1日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2024/03/01/biden-china-electric-vehicles-tech-security-investigation-commerce/

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中国東部の江蘇省にある蘇州港にある国際コンテナターミナルで船への積み込みを待つBYD製の電気自動車(2023年9月11日)

バイデン政権は木曜日、米商務省に対し、中国製の「コネクテッド・ヴィークル(connected vehicles)」がもたらす潜在的な国家安全保障上の脅威を調査するよう命令した。これは、中国との関係のリスクを軽減し、中国のハイテク産業に対して、圧力をかけようとするアメリカの最近の取り組みを示すものである。

ジョー・バイデン米大統領は声明の中で次のように警告している。「これらの電機自動車は、私たちの電話やナビゲーションシステム、重要なインフラ、そしてそれらを製造した企業に接続されている」と述べた。このような自動車は、わが国の市民やインフラに関する機密データを収集し、そのデータを中華人民共和国に送り返す可能性がある」。これらの電気自動車事態は「遠隔操作でアクセスされたり、機能停止させられたりする」とバイデンは述べている。

中国は電気自動車(electric vehicleEV)生産大国に成長し、アメリカとヨーロッパの同盟諸国を動揺させてきた世界の産業内で支配的な地位を築いている。バイデン政権が発表した調査は、テクノロジーへの懸念が米中関係を支配するようになった最新の例であり、車両を対象とした将来のアメリカの措置の基礎を築く可能性がある。

バイデンは続けて次のように述べている。「中国は、不公正な慣行を用いるなどして、将来の自動車市場を支配しようとしている。中国の政策は、私たちの市場に中国製の電機自動車を氾濫させ、私たちの国家安全保障にリスクをもたらす可能性がある。私の目の前でそのようなことが起こるのを許すつもりはない」。

バイデン政権の最新の攻撃は、テクノロジーの未来と未来のテクノロジーの両方をめぐる米中競争の、より広範なエスカレートに当てはまる。半導体チップ(semiconductor chips)、人工知能(artificial intelligence)、対外技術投資(outbound tech investment)に対する行動が最も注目されているが、ワシントンは更に多くの蛇口を閉めようとしているようだ。

コロラド鉱山大学ペイン研究所のモーガン・所長は、本誌に宛てた電子メールの中で、バイデン政権が発表の中で国家安全保障上の必要性を強調したことに触れながら、「これは米中間の現在進行中の貿易戦争の一環のように考えられる」と書いている。

バジリアンは、「確かに、サイバーとデータの面で実際のセキュリティ上の脅威は存在するが、私にとって主な推進力は経済的な闘争のように見える」と付け加えた。

こうした経済的懸念は、アメリカに限ったものではない。ここ数カ月間、安価な中国製電気自動車の流入に対する懸念は、中国政府の主要電気自動車市場の1つであるヨーロッパでも動揺しており、ヨーロッパ議会議員らは、中国政府が国内の電池式電気自動車メーカーに与えた補助金疑惑について調査を開始するまでに至っている。中国政府は、中国の電気自動車に補助金を与えることで、EUの電気自動車メーカーを圧倒しているという疑いだ。中国の電気自動車輸出は過去3年間で851%と爆発的に増加し、中国製のほとんど電気自動車がヨーロッパ市場に上陸した。

アメリカにおける中国製電気自動車の販売は依然として比較的小規模だが、特にバイデン大統領と共和党の対抗馬となる可能性が高いドナルド・トランプ前大統領が、11月の大統領選挙に向けて準備を進める中、アメリカの政治論争でも、ヨーロッパにおけるのと同様の懸念が浮上している。バイデンは先月、全米自動車労働組合がバイデン大統領の再選を正式に支持し、政治的に大きな勝利を確実にした一方、トランプ前大統領は自動車労働者の支持を集めるために選挙期間中、バイデンの電気自動車政策を激しく非難してきた。

そして実際、バイデンは木曜日の声明で、自身の政治的動機を隠そうとはしなかった。バイデンは次のように述べた。「大統領として、私は自動車労働者と、自動車産業に雇用を依存する中流家庭に対して正しいことをすると誓った。今回の措置やその他の措置によって、私たちは、自動車産業の未来がここアメリカでアメリカ人労働者によって作られることを確実にするつもりだ」。

戦略国際​​問題研究所の中国ビジネス専門家イラリア・マッツォッコは、「自動車産業をめぐる政治経済は非常に強力かつ重要だ。中国の電気自動車が先進諸国の主要産業を、非常に破壊的な形で脅かす可能性があるという深刻な懸念があると考えている」と述べている。

複数の米政府高官は、今回の調査は、データをめぐる国家安全保障上の懸念に根ざしていると強調する。ジーナ・ライモンド米商務長官は、「コネクテッド・ヴィークルにアクセスできる外国政府が、国家安全保障とアメリカ国民の個人的プライバシーの双方に深刻なリスクをもたらす可能性があると考えるのは、ほぼ想像力を必要としないものだ」と述べ、電気自動車を「車輪のついたスマートフォン(smart phones on wheels)」と例えた。

ライモンド長官は、「これらの自動車に搭載され、広範囲のデータを取得したり、コネクテッド・ヴィークルを遠隔操作で無効化したり、操作したりできる技術の範囲を理解する必要がある」と続けて述べた。

バイデン政権の今回の発表は、中国やロシアを含む6つの「懸念国(countries of concern)」に対する、アメリカ人の個人データの売却を制限することに焦点を当てた大統領令を発表した翌日に行われた。この大統領令では、ゲノムデータ(genomic data)、バイオメトリックデータ(biometric data)、金融データ(financial data)、個人健康データ(personal health data)、地理位置情報(geolocation data,)、そして個人を特定できる特定のカテゴリーという6つの機密情報のカテゴリーについて概説している。

しかし、データの流れを監督し取り締まることはより難しくなる可能性があり、バイデン政権による最新の規制は、アメリカ市民にとって意図しない結果をもたらす可能性があると、アメリカ自由人権協会(ACLU)は水曜日に警告した。ACLU上級政策顧問コーディ・ヴェンスキは声明の中で次のように述べた。「この大統領令は、政府の干渉を受けずに情報を共有しアクセスする私たちの権利を更に侵食し、消費者たちがプライバシーとセキュリティのニーズに最も適したオンラインサービスを選ぶことを禁じ、プライバシーを保護するどころか、むしろ害する結果になりかねない」。

ヴェンスキは続けて、「私たちのオンライン上の安全を本当に守るために、バイデン政権はその代わりに、私たちに関して収集されるデータの氾濫を食い止め、暗号化のような強力な保護を受け入れる、強固なプライバシー法を可決するよう議会を後押しすることに集中すべきだ」と述べた。

この2つの措置は互いに接近しており、中国のアメリカのテクノロジーへのアクセスを遮断することを目的とした過去数年間にわたる一連の大統領指示の最新のものである。

戦略国際​​問題研究所(CSIS)の貿易・技術専門家エミリー・ベンソンは、「これらの政策を総合すると変化が起こり、新たなパラダイムが生まれる。全体として、テクノロジーがこの新たな経済と国家安全保障の課題の最前線にあるということは、改めて非常に明白な象徴であり、それがすぐに変わる可能性は低い」と述べている。

※クリスティーナ・リュー:『フォーリン・ポリシー』誌記者。ツイッターアカウント:@christinafei

リシ・イエンガー:『フォーリン・ポリシー』誌記者。ツイッターアカウント:@Iyengarish

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(終わり)
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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める
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 古村治彦です。

 2023年12月27日に『バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる』(徳間書店)を刊行しました。『週刊現代』2024年4月20日号「名著、再び」(佐藤優先生書評コーナー)に拙著が紹介されました。是非手に取ってお読みください。よろしくお願いいたします。

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

 電気自動車(electric vehicles)分野は米中の競争になっている。アメリカのテスラモータース(Tesla Motors)と中国のBYD(比亜迪)の争いになっている。電気自動車はこれから伸びていく分野だと考えられている。アメリカはこの分野で世界シェアの拡大を図り、中国は国内市場をまずは固めるという状況になっている。
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 電気自動車にとって重要なバッテリーに欠かせないのが、ニッケルだ。ニッケルの産出量、埋蔵量共に世界のトップとなっているのは、インドネシアである。インドネシアでは、未加工、未精錬のニッケルの輸出をジョコ・ウィドド政権下の2020年に禁止した。その結果、中国企業や韓国企業がニッケル加工に進出している。インドネシアとしては、更なる技術移転を求めており、将来的にはバッテリーの自国内の生産(国産化)を推進している。
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 下に紹介する論稿は、インドネシア海洋・投資担当調整大臣のルフット・ビンサル・パンジャイタン(Luhut Binsar Pandjaitan)の名前で出されたものだ。その内容は、一言で言えば、「アメリカもインドネシアのニッケルに投資しないと、電気自動車分野での未来はない。私たちはいつまでも気長にアメリカが投資してくるのを待つつもりはない」というものだ。ルフット大臣は、インドネシア軍の将官の出身であり、現役時代には、アメリカ軍特殊部隊での教育、トレーニングを複数回にわたって受けてきた人物だ。また、ワシントンDCにあるジョージワシントン大学で修士号を取得している。スハルト時代のエリート軍人であり、現在もスハルト体制時代の与党だったゴルカルに属している。アメリカとは不快コネクションがある人物だ。その人物がアメリカに半分脅しをかけるような、半分誘いをかけるような内容の論稿を発表した。

 アメリカ連邦議会は、ニッケルの分野でインドネシアの競争相手である、オーストラリアの働きかけを受けて、インドネシアからのニッケル輸入を制限している。その理由に、インドネシアでのニッケル精錬に石炭が使われており、炭素排出を行っていること、既に中国企業が多数進出していることを挙げている。これに対して、ルフット大臣は、「そんなことを言っていて大丈夫?」というような内容の論稿を出している。

インドネシアは、「西側以外の国々(the Rest)」の中で存在感を高めている。東南アジアの地域大国となっている。ジョコ大統領の下で、経済発展を進めている。2050年には、GDPの面で、日本を抜いて、世界第4位になるという予測も出ている(日本は第8位と予測されている)。そのスタートとなるのが、自国から算出する資源の有効活用だ。日本はインドネシアと良好な関係をこれまで継続して築いてきた。中国も歴史上、様々なことがあったが、現在はやはりインドネシアとの友好関係を保っている。アメリカがインドネシアとの関係を重視しないとなれば、それは、アメリカの衰退のスピードが加速するだけのことだ。

(貼り付けはじめ)

インドネシアのニッケルなしでは、EVにアメリカの未来はない(Without Indonesia’s Nickel, EVs Have No Future in America

-ジャカルタとの自由貿易協定に反対するIRAと連邦上院は、アメリカのグリーン転換を台無しにしている。

ルフット・ビンサル・パンジャイタン筆

2024年5月1日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2024/05/01/indonesia-nickel-green-energy-ev-fta-congress/

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インドネシア南東スラウェシの採掘現場で、ニッケル鉱石を積んだダンプトラックの様子(2023年8月3日)

インドネシア産ニッケルがなければ、アメリカの電気自動車(Electric VehiclesEV)市場は低迷するだろう。我が国は、電気自動車用バッテリーの中核的金属であるニッケルの世界最大の埋蔵量を誇っている。2023年、インドネシアは世界のニッケル加工品の半分以上を輸出した。今後数年間で、このシェアは拡大すると予測されている。

しかし、米連邦議会議員の中には、インドネシアの海外の競争相手と協力して、我が国からの精製ニッケル(refined nickel)の輸入を阻止することを決意している。これまでのところ、彼らは成功している。しかし、企業にガソリン車の販売からの転換を強制する、3月に可決された措置と併せて導入するということになると、最終的に損をするのはアメリカの自動車労働者たちということになる。

ジョー・バイデン米大統領のインフレ削減法(Inflation Reduction ActIRA)は、競争条件を根本的に変えてしまった。アメリカの製造業者たちは、アメリカが自由貿易協定を結んでいる国(インドネシアは結んでいない)からのインプットでない限り、その補助金を利用することができない。

アメリカの自動車メーカーに必要なニッケルの供給を確保するため、昨年(2023年)、私が大臣を務める政府は、重要鉱物を対象とした限定的な貿易協定をアメリカ側に提案した。しかし、超党派の米連邦上院議員グループとオーストラリアなどニッケル生産国の企業による頓挫を狙ったキャンペーンが展開され、今のところ合意には至っていない。

連邦上院議員たちの反対は、環境への懸念に集中する傾向がある。インドネシアのニッケル製錬所の多くは石炭を燃料としている。一部の人々にとっては、内燃機関を道路から撤去すること(ガソリン自動車を減少させること)が炭素削減につながるにもかかわらず、その精製されたニッケルを含むバッテリーが信用されていないことを意味する。このような気候の純粋性は惰性を生み、結局は自滅する。環境とのトレードオフは、ニッケルがその動力源となるバッテリーにとって重要であるのと同様に、グリーン転換にとっても重要である。

アメリカが炭素の排出量を大幅に削減するためには、より多くの電気自動車が道路を走る必要がある。運輸部門は、アメリカ最大の排出源であるにもかかわらず、電気自動車の割合は1%にも満たない。電気自動車の普及は、購入しやすい価格に左右される。投入資源が安くなれば、バッテリーも安くなる。人為的な貿易障壁のないインドネシア産の精製ニッケルは、石炭が豊富にあるため競争力がある。

それは理想的ではないかもしれない。しかし、再生可能エネルギーは、インドネシアの製錬所の電力を賄う費用対効果の高い選択肢をまだ提供していない。技術が進歩するのを待つよりも、私たちは今、重要な金属を精製するために自由に使える資源を使わなければならない。

インドネシアのニッケルは、より環境に優しいものになるだろう。しかし、そのためには経済発展が不可欠である。輸出収入や海外からの直接投資があって初めて、エネルギーシステムの再構築を始めることが可能となる。例えば、インドネシア最大のニッケル生産者であるハリタ・ニッケル(Harita Nickel,)は、その経済的成功の上に立って初めて、自社施設に自然エネルギーを導入することができる。

当然のことながら、政府のイニシアティブも助けになる。今年導入される予定の炭素排出量規制と税制は、石炭からの脱却を促進するのに役立つだろうし、石炭発電所の新設は禁止されている。しかし、インドネシアにおける真のグリーン転換は、最終的には資本次第ということになる

途上国を化石燃料から引き離すための、気候変動資金調達メカニズムであるジャスト・トランジション・パートナーシップの下で約束された、西側諸国からの資金だけでは、約束が実際に履行されるかどうかにかかわらず、十分ではない。これは何の見返りもなく、ただ金を出せと言っているのではなく、事実を言っているだけのことだ。

大幅な資金不足を補うためには、途上諸国が既存の天然資源で繁栄し、世界のグリーン転換に積極的な役割を果たせるようにしなければならない。私たちは、慈悲深い諸大国からの施しに頼るだけの傍観者に成り下がることはできないし、そうなる意図もない。

一方、インドネシア国内でグリーン転換が国民の支持を維持するためには、国民の雇用と繁栄を実現しなければならない。2020年、インドネシア政府は、ヴァリューチェーンをより拡大するため、未加工のニッケル原鉱石の輸出を禁止した。それ以来、インドネシアには投資が殺到している。

インドネシアからのニッケル加工品の輸出額は飛躍的に増加し、年間300億ドル(約46500億円)に達している。今年、インドネシア初のバッテリー発電所が、韓国メーカーとの合弁でオープンする。この工場はインドネシア人に何千もの高生産性雇用を創出し、技術移転を促進し、インドネシアの輸出を更に押し上げることになるだろう。

同様に、インフレ削減法は、アメリカの雇用を促進し、グリーンエネルギーのコストを削減し、重要鉱物のサプライチェーンを確保することを目的としていた。それどころか、移行が依存する商品やインフラを提供するために、アメリカの製造業者が必要とする重要物資の参入を事実上妨げている。

考えられる最悪のシナリオは、アメリカのインフレ削減法は、アメリカを世界の電気自動車市場から完全に締め出す可能性がある。S&Pグローバル社は、2035年までに世界のニッケル供給の90%が、アメリカの自由貿易協定によってカヴァーされなくなると予想している。今後数十年の経済関係を形成するサプライチェーンが現在構築されつつあるのに、これではアメリカを拠点とするメーカーが需要を満たすことが不可能になりかねない。簡単な解決策は、重要鉱物を対象とするアメリカとインドネシアの限定協定(limited agreement)にある。

提案されている自由貿易協定に対するアメリカの連邦議員たちの環境問題への懸念は、北京とワシントン間の緊張によっても裏付けられている。インドネシアのニッケル精錬には中国企業が進出している。しかし、韓国企業やアメリカ企業も同様に進出している。アメリカの製造業者は、米財務省の指導に反しない企業から重要な鉱物を調達することができる。実際、自由貿易協定が結ばれれば、アメリカのインドネシアへの投資が促進され、サプライチェーンの安全が確保されるだろう。

しかしながら、アメリカのサプライチェーンの確保には、他国がニッケル産業に参入しているという理由だけで、アメリカがインドネシア産ニッケルの実質的な全面禁止を決定しない限り、という条件が付く。しかし、そのような動きは、アメリカのインド太平洋地域の同盟諸国が中国かアメリカかの二者択一を迫られるべきではないというイエレン米財務長官の再保証と矛盾することになる。結局のところ、インドネシアのニッケルはどこかに輸出されることになる。

インドネシアは全ての国との提携に手を差し伸べている。その手を握ってより環境に優しい未来を創造するかどうかは、ワシントン次第である。しかし、我が国はいつまでも気長に待つつもりなどない。

※ルフット・ビンサル・パンジャイタン:インドネシア海洋・投資担当調整大臣

(貼り付け終わり)

(終わり)
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ビッグテック5社を解体せよ

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める
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 古村治彦です。

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

 2023年12月27日に最新刊『バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる』(徳間書店)を刊行しました。BRICS(ブリックス)を中心とする非西洋諸国(the Rest、ザ・レスト)の台頭と重要性について書きました。是非手に取ってお読みください。

 世界規模で電気自動車の需要が高まる中(電気自動車の有効性については疑問がある)、電気自動車の肝となる電池(バッテリー)に使われるニッケルでは、世界最大の埋蔵量(約23%)を占め、鉱石生産量の約半分(約48%)を占めるのがインドネシアだ。

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 インドネシア成否はニッケルの重要性を理解しており、精製していないニッケルの輸出を禁じている。国内に精製工場を建設し、精製済みのニッケルの輸出が必要となっている。世界の電気自動車競争において、電池(バッテリー)が重要だ。インドネシアは電池を製造するところまではいっていないが、精製する段階までは来ている。そのために、電気自動車分野で世界をけん引する中国企業がインドネシアに投資を行っている。インドネシア国内への産業投資の約3分の1は金属部門に流れているが、その多くはニッケル分野だ。

インドネシア政府はこれから電池製造に進もうとしているが、まずはニッケル精製を行っている。これは、2000年代のユドヨノ政権から始まり、2010年代のジョコ政権と続き、今年の選挙で当選したプラヴウォ政権でもこの動きは続く。

 日本ではパナソニックが電気自動車用の電池(バッテリー)を製造している。日本にとって重要なのは、テスラだけではなく、中国電気自動車企業BYDにも電気自動車用の電池(バッテリー)を供給することである。そのために、インドネシアとの友好関係をしっかりと固めることである。日本からも積極的に投資を行うべきだ。それこそは日本の経済だけではなく、安全保障にとっても重要である。

(貼り付けはじめ)

インドネシアはニッケル産業に大きな野望を抱いている(Indonesia Has Grand Ambitions for Its Nickel Industry

-同国が今週投票に向かう中、ジャカルタの大統領府の将来により焦点が当てられることになる。

クリスティナ・ルー筆

2024年2月13日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2024/02/13/indonesia-election-nickel-economy-energy-jokowi-prabawo/

世界中でエネルギー転換の機運が高まるずっと以前から、ニッケル大国(powerhouse)インドネシアは、豊富な鉱物資源を活用して自国の経済を変革し、国際市場においてより大きな影響力を行使することを夢見てきた。

化石燃料からの世界規模での脱却と、グリーン・テクノロジーの原動力となる重要鉱物の需要の高まりが、ジャカルタの野心を加速させている。ニッケルは電気自動車用バッテリーの主要部品に使用される。インドネシアは世界最大級のニッケル埋蔵量を誇り、2022年には世界供給量の半分を採掘したインドネシアほど、世界のニッケル分野で大きな権益を主張できる国はない。

現在、水曜日には1億人以上の有権者たちが10年ぶりのインドネシアの新しい大統領を選出するために投票所に向かうことが予想されており、ジャカルタの大統領府の将来により焦点が当てられることになる。現在のジョコ・ウィドド大統領(通称ジョコウィ)は、許容される最長任期である10年間権力を握った後、2024年10月に退任する予定であり、彼の後継者が国の急成長するセクターを具体的にどのように形成し続けるのかについて疑問が生じている。

ベンチマーク・ミネラル・インテリジェンス社の政策アナリストであるアレックス・ベッカーは、「インドネシアが、世界の他の地域でより価値の高い原料を生産することを望んでいる訳ではないことは明らかだ。本格的な電池とまではいかなくても、少なくとも精製ニッケルを生産することで、自分たちの世界での価値を高めたいのだろう」と述べた。

こうした野望は、ジョコ政権下で具体化され、ジョコウィは世界的な投資を呼び込み、インドネシアを地域の電池製造大国に作り変える努力を強め、一時はOPECと同様の、ニッケルカルテルの設立を提案したこともあった。より付加価値の高い製造能力(川下化[downstreaming]として知られるプロセス)を構築することに熱心なジョコウィは、2020年に未加工ニッケルの輸出を禁止した。この動きは、主に中国企業など、関心を持つ投資家たちに対して、代わりにインドネシアで製錬所を開発し、国内で鉱物を加工するよう促した。ジョコウィは大統領在任中、ジャカルタはボーキサイト、パーム油、石炭の輸出を様々な時点で制限してきた。5月には銅鉱石の輸出の禁止が実効化される予定だ。

ジョコウィの後継者をめぐる競争は始まっている。 3人の候補者が大統領の地位を争っている。その3人は、残忍な独裁者スハルトの親族であり、人権侵害を行ったとして告発されている現国防大臣プラヴウォ・スビアント、元中部ジャワ知事ガンジャール・プラノウォ、元ジャカルタ知事アニエス・バスウェダンだ。

プラヴウォは、ジョコウィの実の息子であるギブラン・ラカブミン・ラカを副大統領候補としているが、最近の世論調査では、水曜日に50%以上の票を獲得すると予測されており、現在のところ最有力視されている。どの候補者も50%以上の得票を得られなかった場合、選挙は6月の決選投票に持ち越される。2人はジョコウィの政策の継続を誓い、経済的繁栄への道を歓迎しており、ギブランはライヴァルたちを「反ニッケル(anti-nickel)」だと非難している。

プラヴウォは投票を前の声明で次のように宣言した。「この粘り強さこそ、私たちが維持しなければならないものだ。私たちは電気自動車のバッテリーや電気自動車を輸出した方がいいのであって、他国に加工してもらうために生のニッケルを輸出した方がいいということはない」。

オーストラリア国立大学インドネシア研究所所長で『インドネシアの資源ナショナリズム』の著者イヴ・ウォーバートンは、「彼らの主張は、私たちは鉱物の下流部門で多くのことを達成しており、プラヴウォ・ギブラン政権の任期中も同じ道を歩み続けるだろう、ということだ。この特定の政策介入に関して、他の候補者たちがプラヴウォやギブランと差別化を図るのは困難なことだった。なぜなら、政府および政府の数字によれば、それは大成功だったからである」と述べた。

例えば、2014年にジョコウィ政権が誕生した当時、インドネシアのフェロニッケル(ニッケルの加工品)の輸出額は8300万ドルだったが、2022年には58億ドルにまで膨れ上がった。輸出だけでなく、インドネシアでは現在、外国直接投資(foreign direct investment)が記録的な水準に達しており、その約3分の1が同国の金属・鉱業部門に注ぎ込まれている。

インドネシアのニッケル産業育成への取り組みは、ジョコウィの在任期間よりも10年以上前に遡る。当時のスシロ・バンバン・ユドヨノ大統領は2009年、企業に国内の鉱山労働者たちを雇用するよう命じる法律を導入し、全ての鉱山への取り組みは国益の増進に焦点を当てるべきだと強調した。外国からの投資を誘致するために、ユドヨノ大統領は2014年にインドネシア初のニッケル未加工品の輸出禁止も課したが、その制限は2017年に緩和された。

ウォーバートンは、「インドネシアのニッケル部門に対する野望は、ユドヨノ時代と2009年の鉱山法にまでさかのぼる。それ以来、インドネシアは鉱物からより多くの価値を引き出すべきだと法律で定められている」と述べた。

しかし、その後数年間、この業界は多くの課題に直面し、特に製錬所の爆発やその他の死亡事故の報告を受けて業界の汚染、環境への被害、安全上の問題に対する懸念が高まっている。最も致命的な事件の1つとして、12月に中国のニッケル工場で爆発があり、21人が死亡、数十人が負傷した。

インドネシアの政治リスク分析コンサルタント会社リフォルマシ・インフォメーション・サーヴィス代表ケヴィン・オルークは、「ニッケル川下政策の本当の問題は、セーフガードが全くないように見えることだ」と言う。

ニッケル部門の将来には、他の課題も立ちはだかる。中国の大手投資家たちやBYDを含むEVメーカーが数十億ドルの投資をインドネシアに集めている一方で、ジャカルタのアプローチは他の有望なパートナーたちやアメリカを含む国際市場からインドネシアを遠ざける危険性がある。

ジャカルタはワシントンとともに、インドネシア企業がインフレ抑制法を通じて多額の税額控除を利用できる限定的重要鉱物貿易協定の締結を推進していた。しかし、この入札はワシントンで激しい反発を引き起こし、昨年10月には9名のアメリカ連邦上院議員がそのような協定に反対する書簡を書いた。

アメリカ連邦上院議員たちは書簡の中で、「私たちは、インドネシアの労働権、環境保護、安全性、人権に関する基準に懸念を抱いている」と書いている。また、中国企業のインドネシアへの投資やジャカルタのニッケル鉱石輸出禁止に対する懸念も書簡の中で挙げられていた。結局、貿易協定は実現しなかった。

エネルギー転換の需要が新型EVバッテリーの開発を後押しする中、専門家たちによると、技術状況の変化もジャカルタの将来計画を複雑にする可能性があるという。ニッケルは、現在普及している強力なニッケル・マンガン・コバルト(NMC)電池の重要な構成要素だが、企業の一部はニッケルを使用しない新型電池に目を向けている。

ピーターソン国際経済研究所のシニアフェローであるカレン・ヘンドリックスは昨年11月、「インドネシアのニッケル埋蔵量と産業への野心は、電池化学の変化によって価値が低下する恐れがある。NMCバッテリーの優位性はつかの間かもしれない」と書いている。

その一例がテスラだ。ジャカルタは数年にわたりテスラからの投資誘致に努めてきたが、テスラはインドネシアへの投資に難色を示し、代わりにインドネシアの豊富な鉱物資源を必要としないバッテリーを採用している。

オーストラリア国立大学のウォーバートンは次のように述べている。「その多くは、技術の進化の早さにかかっている。当初の計画では、ニッケルがこの産業を本格的に立ち上げるために必要な主成分であるという考えに長い間基づいていた。市場は、それが転換する可能性を示唆しているようだ」。

※クリスティナ・ルー:『フォーリン・ポリシー』誌特派員。ツイッターアカウント:@christinafei
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