古村治彦(ふるむらはるひこ)の政治情報紹介・分析ブログ

SNSI研究員・愛知大学国際問題研究所客員研究員の古村治彦(ふるむらはるひこ)のブログです。翻訳と評論の分野で活動しています。日常、考えたことを文章にして発表していきたいと思います。古村治彦の経歴などについては、お手数ですが、twitter accountかamazonの著者ページをご覧ください 連絡先は、harryfurumura@gmail.com です。twitter accountは、@Harryfurumura です。よろしくお願いします。

タグ:韓国

 古村治彦です。
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※2024年10月29日に佐藤優先生との対談『世界覇権国 交代劇の真相 インテリジェンス、宗教、政治学で読む』(←この部分をクリックするとアマゾンのページに飛びます)が発売になりました。よろしくお願いいたします。

 2024年12月3日から4日にかけて起きた、韓国の尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領による戒厳令布告と失敗について、「誰が戒厳令布告を勧めたのだろうか」と思っていたら、どうやら金龍顕(キム・ヨンヒョン)国防相だったようだ。金国防相は辞表を提出し、尹大統領はそれを受理したということだが、実質的には解任・罷免で、金国防相が責任を取る形になった。

 金前国防相は尹大統領の高校の同窓生(一学年下らしい)で、個人的に親しい関係があったということだ。金龍顕は韓国軍制服組の最高幹部にまでなった人物であり、尹大統領が就任してからは警備部長をしていた。尹大統領の信頼が厚い人物であったようだ。また、韓国軍政府組の最高幹部であり、短慮の人物であるとは思えない。金前国防相がどういう計算で、勝算があって、戒厳令布告を進言したのか、もしくは破れかぶれで、もうこれしか手段が残っていないということで、戒厳令布告を進言したのか、そこのところを知りたいところだ。

 興味深いのは、今年9月に金龍顕が新しい国防相に指名された際に、「戒厳令」へ向けた動きであるという批判が起きて、与党人民の力党はそれを否定していることだ。金龍顕が国防相に就任するということは、尹大統領が非常手段を行使する可能性があるということを今年の9月の段階で既に批判者たちが主張していたということになる。金前国防相が強硬な手段を選ぶことに躊躇しないということを韓国政界では分かっていたようだ。

 金前国防相は、日韓安全保障関係、日米韓三カ国の協力関係を強化することを主張しつつ、それだけでは不十分ということで、韓国の核武装についても主張していた。韓国の核武装は、アメリカや日本にとって微妙な、難しい問題である。韓国の核武装は、朴正煕大統領も検討し、そのために、アメリカによって暗殺されたという説もある。韓国が持つ核兵器が北朝鮮に備えるものではなく、日米に向かうものになりかねないという懸念がある。今回の戒厳令布告は、国会での予算審議に行き詰まりが原因ということになっているが、韓国政治の基底にある韓国の地政学的な位置やナショナリズムが大きな原因ということも考えられるのではないかと思う。

(貼り付けはじめ)

●「韓国大統領、戒厳令進言の国防相の辞表を受理 後任は駐サウジ大使」

12/5() 11:21配信 毎日新聞

https://news.yahoo.co.jp/articles/501f986fde9c28c69394d085f3eab0f6f36237b9

 韓国大統領府は5日、尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領が金龍顕(キム・ヨンヒョン)国防相の辞表を受理したと明らかにした。金氏は、尹氏に戒厳令の宣布を進言。戒厳令の解除後、「関連した全ての事態の責任がある」として辞意を表明していた。

 大統領府は、後任に崔秉赫(チェ・ヒョンヒョク)駐サウジアラビア大使を充てる方針を発表した。崔氏は軍人出身で、米韓連合軍司令部の副司令官などを歴任した。【ソウル福岡静哉】
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●「韓国新国防相に金龍顕氏就任 北朝鮮に「政権終末」警告 無人戦闘体系構築急ぐ」

2024/9/6 19:10 産経新聞

https://www.sankei.com/article/20240906-5CSRX2YA45L37KWQS3PYX7VAVQ/

韓国の尹錫悦大統領は6日、新たな国防相に軍出身で、大統領警護庁トップを務めた金龍顕氏を任命した。金氏は国防省での就任式で、北朝鮮に対し「挑発すれば『政権の終末』に直面する」と警告、無人機などを活用した「無人戦闘体系」の構築を急ぐとも強調した。

申源湜前国防相は、北朝鮮が挑発に出れば「即刻、強力に最後まで」懲らしめると重ねて発言してきた。金氏もこのスローガンを踏襲する意向を表明。米国の「核の傘」提供を軸とした拡大抑止を強化していく考えも示した。

金氏を巡っては、軍の学閥人事や不正に関与した疑惑があるとして野党が任命に反対。手続きの一つである国会での人事聴聞経過報告書の採択には至らなかったが、尹氏は任命を強行した。(共同)
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プロファイル:韓国の新しい国防相の金龍顕(Kim Yong-hyun、キム・ヨンヒョン)(Profile: New ROK Defense Minister Kim Yong-hyun

-韓国の新しい国防相に任命されたことを受けて、このプロファイルは金龍顕(Kim Yong-hyun、キム・ヨンヒョン)の経歴と主要な役職の概要を提供する。

ケイトリン・カン筆

2024年9月10日

スティムソン・センター

https://www.stimson.org/2024/profile-new-rok-defense-minister-kim-yong-hyun/

9月2日、韓国の尹錫悦(Yoon Suk Yeol、ユン・ソンニョル)大統領大統領は、金龍顕(Kim Yong-hyun、キム・ヨンヒョン)を国防相に任命した。812日に、国防相の辛源植(Shin Won-sikシン・ウォンシク)が国家安全保障問題担当大統領補佐官に、国家安全保障問題担当大統領補佐官の張浩鎮(Chang Ho-jin、チャン・ホジン)が新たに創設された大統領外交・国家安全保障特別補佐官に任命されるなどの予想外の人事異動が行われた中で、金は新しい地位に任命された。これらの人事異動は、安全保障と地政学的な懸念の高まりが動機となっているとの憶測が広まっている。

韓国は核の選択肢を求める可能性を排除すべきではないという金の発言は、特に尹政権の公式見解が、アメリカの同盟関係や拡大抑止の約束を通じて安全保障問題に対処するというものであることを考えると、注目を集めた。更に、金は、エスカレートする北朝鮮の脅威に対処するため、米韓二国間および米韓日三国間の安全保障協力を重視する尹政権の政策を推し進める可能性が高い。

●金とはどんな人物か?(Who Is Kim?

金龍顕は、2022年5月の尹政権発足以来、大統領警護部長を務めていた。2017年に三ツ星の陸軍大将として退任するまで、首都防衛軍司令官から陸軍司令官まで、軍の要職を務めた。統合参謀本部(JCS)の作戦部長を率いる。彼は生活の質の向上と徴兵制の支援を強く支持し、そのキャリアを通じてさまざまな軍体内の生活の質向上政策を推し進めたことでも知られている。

尹大統領とは高校時代の同窓生という長年のつながりがあり、金龍顕は以前尹大統領と仕事をしたことがあり、彼の政策志向を熟知している。尹大統領の大統領選挙では、軍事システムの技術統合を支援するなど、安全保障と外交政策についてユン大統領に緊密に助言した。また、大統領府を龍山(ヨンサン)にある国防省の敷地内に移転させ、安全性を高めるという尹大統領の選挙公約を実現させた。

このような経歴から、金龍顕は「最高司令官(大統領)の意向を格別に理解している」と評価されており、北朝鮮の脅威に対する安全保障を強化し、アメリカとの協力を深めるという尹大統領のヴィジョンに近い形で政策実行をサポートするのではないかと期待されている。

●主要なテーマでの立場(Key Positions

・北朝鮮(North Korea

金龍顕は、増大する北朝鮮の脅威に対する国家安全保障の強化と「最悪のシナリオに備える」必要性に焦点を当てた尹政権の方針を維持している。金は、北朝鮮に対する政府のタカ派的な姿勢を継続する意向であり、この姿勢は、「挑発(provocations)」が高まった場合の報復を警告する過去の発言によって強化されている。

北朝鮮に対する韓国の防衛アプローチについて、金龍顕はアメリカの拡大抑止が北朝鮮の脅威に対応する基礎となるべきだと述べたが、韓国の核武装も排除せず、「あらゆる選択肢が開かれている。アメリカの拡大抑止だけでは北朝鮮に対する核抑止力として十分ではない」とも述べた。これは、アメリカの拡大抑止力を通じて北朝鮮の脅威に対処するという尹政権の公式政策や、韓国の核能力が米韓同盟に及ぼす影響に対する直前の前任者辛源植の懸念とはいくらか矛盾している。金は過去に、北朝鮮が完全な非核化する可能性は低いことを認め、アメリカの戦術核兵器の再配備や国産核開発などの選択肢を含め、韓国が対応して自国を守ることを可能にする別のアプローチを主張してきた。

・米韓同盟と日本との安全保障協力(US-ROK Alliance and Security Cooperation With Japan

金龍顕は、核の選択肢を残しておくことに関心があるにもかかわらず、格上げされた米韓同盟と拡大抑止力への継続的な依存への支持を明確にしている。金は、特にロシアと北朝鮮の軍事協力の深化に直面して、米韓共同訓練の強化と、進化する北朝鮮の脅威に対する抑止力の拡大を強調してきた。

韓国の核の選択肢に関する金龍顕の立場や、日本が「核武装を追求する」可能性についての過去の懸念の声にもかかわらず、金は、対北朝鮮防衛を強化するための日米との共同作業に関する尹大統領の優先順位を強化する可能性が高い。金はまた、尹政権下で進展した日韓二国間関係を維持するため、日本との関係において肯定的なバランスを維持するだろう。

・中国(China

金龍顕は、尹大統領の目的に沿って、終末高高度防衛ミサイル(THAAD)システム砲台の増設を支持し、増大する北朝鮮の能力に対して重層的なミサイル防衛システムが必要だと主張している。金は、中国の反発に対する懸念を払拭し、更なる報復は「明確な主権侵害(a clear infringement of sovereignty)」であると主張した。

金龍顕は、米中競争の激化と中国、北朝鮮、ロシアの連携強化を指摘し、朝鮮半島の安全保障に対するさまざまな脅威を緩和するため、韓国の軍事力を強化することを誓った。

●主要な利害関係者たちからの反応(Reaction From Key Stakeholders

・与党「人民の力」党:金龍顕の指名は保守的な与党によって支持されており、戒厳令(martial law)への動きを示唆する指名であるとの非難を否定した。

・野党「共に民主」党:リベラルな民主党は、金龍顕の指名に反対しており、尹大統領との個人的なつながりが国防相としての役割に影響することを懸念している。共に民主党はまた、2023年の海兵隊員死亡事件の隠蔽疑惑など、現在進行中の事件への金の関与の可能性についても問題を提起している。

国家革新党:韓国第三党の趙国(チョ・グク)代表は、金が韓国の核オプションに前向きであることを批判し、そのような動きは北東アジアの不安定性を悪化させると述べた。

●今後の見通し(Looking Ahead

金龍顕の国会承認公聴会は9月2日に開かれた。尹大統領は国会の承認なしに首相以外の閣僚を任命する権限を持っているため、この公聴会はほとんど形式的なものと見られている。公聴会中、与党人民の力党と野党共に民進党は金龍顕の資質について意見を交わし、金自身は攻撃を「誤報に基づく虚偽宣伝」として拒否し、北朝鮮の脅威と核武装への開放に対処する方法について政策スタンスを維持した。

尹大統領はこの人事を推し進め、金龍顕は96日に就任した。米韓同盟や米韓日三カ国の安全保障協力を通じて北朝鮮の脅威を抑止することを柱とする尹大統領の安全保障政策を継承する上で主導的な役割を果たすと期待されており、就任演説では前任者の姿勢を再確認し、「圧倒的な」防衛態勢を構築することを誓った。

(貼り付け終わり)
(終わり)

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 古村治彦です。
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※2024年10月29日に佐藤優先生との対談『世界覇権国 交代劇の真相 インテリジェンス、宗教、政治学で読む』(←この部分をクリックするとアマゾンのページに飛びます)が発売になりました。よろしくお願いいたします。

 2024年12月3日に、韓国の尹錫烈(ユン・ソンニョル)大統領が非常戒厳令を布告し、戒厳司令官となった韓国陸軍参謀総長の朴安洙は、「国会、地方議会、政党の活動と政治的結社、集会、デモなど一切の政治活動を禁じる」という布告を出した。尹大統領は国会議事堂を韓国陸軍で封鎖し、政治家たちを拘束しようと試みたが、それが失敗し、4日未明に、国会に登院した190名の議員たちの全会一致の投票で、戒厳令解除の要求が可決され、尹大統領は戒厳令布告を撤回した。最大野党の共に民主党を始め、野党側は大統領の弾劾、もしくは自発的な辞任を求めている。

 数々のスキャンダルで、低支持率に苦しむ尹錫烈と与党「国民の力」党は、2024年の総選挙でも敗北し、国会(300議席)で、108議席しか持っておらず、野党の共に民主党が170議席を握っており、少数与党という状態に置かれている。このため、政策実現が難しい中で、自身の権力を強化しようという自作自演クーデター(英語では、self-coup[背フル・クー]、中国語では自我政変、スペイン語ではautogolpe[アウトゴルペ])に賭けて失敗した。アウトゴルペは、1992年のペルーのアルベルト・フジモリ大統領の戒厳令布告に伴うクーデターの時に使われた言葉だ。この時はフジモリ大統領側が勝利し、憲法改正が行われた。この時のクーデターは、フヒモラソ(Fujimorazo)とも呼ばれているそうだ。

 アメリカ政府には事前の連絡がなかったということで、クーデター失敗を受けて、ホワイトハウスは「安堵した」という声明を出している。アメリカ軍が自国内に駐留している国家において、アメリカ軍が承認していない、この種の非情な手段が成功することはない。日韓関係、日米韓三カ国関係を緊密化しようとしていた尹錫烈大統領の無謀な行動と失敗、失脚は、アメリカの対中戦略において、マイナスの影響を及ぼすだろう。尹大統領は、自身に反対する勢力を「親北朝鮮の反国家的な存在」と呼んでいたが、今回の尹大統領の失敗を喜んでいるのは、北朝鮮と中国、ロシアである。

私は、尹錫烈大統領の今回の行動は、彼単独ではなく、教唆をした人物がいるのではないかと思っている。彼の強い反北朝鮮感情を利用して、かえって北朝鮮や中国を利するような結果を招く行動を起こすように仕向けた人物や勢力がいるのだろうと思う。更に言えば、アジアの状況を不安定化させるために、突発的な事件が起きること(事件を起こすこと)を望んだ人物や勢力の存在も考えられる。ただ単に、「自分の思い通りにならないから」ということで、ここまでの無謀な行動をするのは考えにくい。朴槿恵元大統領の最後を知っているならば猶更だ。

 韓国の位置は現在の地政学において非常に複雑なバランスの上に立っている。そのために、国内、国外の様々な思惑が複雑に絡み合っている。今回の出来事を解明するのは一筋縄ではいかないだろう。

(貼り付けはじめ)

韓国人はいかにして戒厳令を拒否したか(How South Koreans Rejected Martial Law

-尹錫烈(Yoon Suk -Yeol、ユン・ソンニョル)大統領による自作自演クーデターの試みは劇的に失敗した。

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韓国の尹錫悦大統領が戒厳令を布告した後に韓国国会の建物に入ろうと試みる兵士たち(12月4日)

ジェイムズ・パーマー筆

2024年12月3日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2024/12/03/south-korea-yoon-martial-law-declaration-army-parliament-vote/?tpcc=recirc_trending062921

2024年12月3日更新:この記事は戒厳令が引き上げられる前に出された。進行中の出来事を反映するために更新されている。

窮地に陥った韓国の尹錫烈(ユン・ソンニョル)大統領は火曜日、権力を強化するための異例の試みとして戒厳令(martial law)を布告した。しかし、韓国国会が全会一致でこの動きを否決した後、尹大統領の自作自演クーデターは屈辱的な失敗に終わった。

尹大統領は韓国軍を使って国会の採決を阻止しようとしたが、全政党の政治家たちがこの動きに反対し、抗議者たちは兵士たちに対して人間のバリケードを形成した。もし軍隊が尹大統領に従っていたら、軍隊と国民との対立など危機的状況は更に悪化していたかもしれない。代わりに軍は国会から撤退し、尹大統領は午前中に戒厳令を正式に解除すると発表した。危機は尹大統領の弾劾(impeachment)で終わる可能性が高い。

尹大統領は先週、国会との予算対決をエスカレートさせた。ユン首相が率いる「国民の力」党(People Power Party)は今年の選挙で大敗を喫し、現在は共に民主党(Democratic Party)が過半数を占めている。尹大統領は火曜日の発表で、この対立に言及し、「反乱を煽ることを目的とした明らかな反国家的行動(clear anti-state behavior aimed at inciting rebellion)」であり、共に民主党は「恥知らずな親北反国家勢力(shameless pro-North anti-state forces)」であると非難した。

尹大統領の戒厳令布告は全く予想外の動きだった。

尹大統領がそのような試みをするのではないかという噂は数カ月前から流れていたが、主流派の政治アナリストたちは、それを少数派の陰謀論だと決めつけていた。韓国の民主政治体制のもとでの戒厳令は、戦争や北朝鮮との大規模な対立への対応としてのみ想定されていた。しかし、平壌はここ数カ月、ロシアのウクライナ戦争を支援するために兵士を派遣するなど、憂慮すべき措置をとっているが、軍事的危機はない。

韓国憲法第77条は、大統領に戒厳令を布告し、国家非常事態の際に言論や集会、その他の自由に対する「特別措置(special measures)」を一時的に執行する権限を与えている。しかし、国会はまた、尹大統領の宣言のわずか数時間後に行ったように、単純な賛成・反対投票で大統領に戒厳令の解除を要求する権利も持っている。

憲法上、尹大統領は立法府に従う義務があるが、立法府の行動を阻止しようとする措置を講じた。尹大統領の盟友で戒厳司令官に任命された朴安秀(Park An-soo、パク・アンス)韓国陸軍参謀総長は、国会を含む政治活動を阻止し、メディアを統制するという布告を出した。韓国メディアは応じなかったが、共に民主党の李在明(Lee Jae-myung、イ・ジェミョン)代表は政治家と国民に対し、ソウルの国会議事堂に集まるように求めた。

韓国の戒厳令下において、国会に対する軍隊の使用は違法となる可能性が高い。憲法第77条で大統領に認められるのは行政府と司法に影響する措置のみであり、立法府には影響しないからだ。尹大統領は現職の指導者が独裁権力を掌握するアウトゴルペ(autogolpe)、自作自演クーデターを企てた。

戒厳令の布告は、4月の韓国国会選挙以来危機と闘ってきた不人気政治家による苦肉の策(desperate move)だった。 2022年5月に就任した尹大統領は、影響力が大きい、重大なスキャンダルに直面しており、それが支持率低迷の一因となっている。最近の尹大統領の支持率は連続して20%を下回っている。

それでも尹大統領は、北朝鮮に対する厳しい姿勢により、ワシントンでは支持を維持している。シカゴ国際問題評議会のアジア政策フェローであるカール・フリードホフは、「ユン大統領はまさに常に不人気だった。しかし、ワシントンの人々にとって、彼は正しいことを言ったりやったりしていた。彼は冷戦時代のレトリックに戻り、例えば進歩主義派を北朝鮮シンパ(North Korea sympathizers)と呼んだ。それは、前韓国大統領の文在寅(Moon Jae-in、ムン・ジェイン)に対する大韓民国の多くの人々の見方と一致するものだ」と述べている。

尹大統領の所属する「国民の力」党の多くは韓東勲(Han Dong-hoon、ハン・ドンフン)代表を含め、韓国の戒厳令に反対すると表明し、最終的に宣言解除の投票は国会に投票に来た議員190人全員の満場一致で行われた。韓東勲は尹大統領の側近(検察時代の後輩でもある)だったが、ここ1年で政敵として浮上した。

韓東勲をはじめとする「国民の力」党の議員たちは、大統領弾劾に賛成する野党に加わる可能性が高い。スティムソン・センターのロバート・マニング研究員は、「この動きは、2027年にブルーハウス(大統領府)を獲得するのに十分な位置にいる野党に、更に勢いを与えることになるだろう」と述べている。

韓国の国民は尹大統領の行動に抗議するために大挙して集まり、尹大統領が大統領職から去るまで街頭に留まる可能性が高い。戒厳令という考えは韓国では極めて不人気で、高齢者の多くは1980年、元独裁者の朴正煕(Park Chung-hee、パク・チョンヒ)暗殺後に権力を掌握した全斗煥(Chun Doo-hwan、チョン・ドゥファン)将軍の軍事独裁政権下で戒厳令が発動されたことを思い出している。1980年5月、韓国軍は光州で多数のデモ参加者を殺害したが、この事件は現在韓国で記念碑的出来事として記憶されている。

また、韓国には、独裁政権下での生活、国内のアメリカ軍駐留に対する数十年にわたる抗議活動、そして2017年に保守派の朴槿恵(Park Geun-hye、パク・クネ)大統領を打倒した大衆運動の経験に基づいて構築された、効率的で洗練された抗議活動のインフラがある。 この時には、1600万人以上が街頭に繰り出した。

徴兵制の軍隊(conscript forces)は、デモ参加者に対して武力を行使することに他の兵士よりも不本意かもしれないが、韓国軍では徴兵の兵士が僅差ではあるが過半数を占めている。朴大統領は当時の国防保安司令部(Defense Security Command)、防諜部隊を使って政敵を弾圧しようとし、2016年には抗議デモの中で自ら戒厳令を敷こうとした。

尹大統領の戒厳令発令の決定にアメリカ政治が大きな役割を果たした可能性は低い。韓国政府はドナルド・トランプ次期米大統領との関係構築に努めているが、ジョー・バイデン大統領の任期はまだ1カ月以上残っている。ソウルでの出来事はすぐに終了する可能性が高い。バイデン政権は尹大統領を支持するかのか、全面的に非難するのか、はっきりしない中途半端な内容の声明を出した。

クーデター未遂の結果の1つは、尹大統領が重要な役割を果たした日韓和解におけるアメリカの努力を損なうことになるだろうが、それは国内での政治的損失にもなった。前述のフリードホフは「ワシントンDCでは、国内政策の失敗が外交政策にどのような波及効果をもたらすかについて十分に考えられていなかった」と述べている。

※ジェイムズ・パーマー:『フォーリン・ポリシー』副編集長。「X」アカウント:@BeijingPalmer
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 北朝鮮が朝鮮半島、東アジアの情勢を不安定化させる動きに出ている。2024年10月には韓国とつながる道路を爆破し、憲法を改正して、韓国を「主敵(principal enemy)」に規定した。これまで北朝鮮にとって韓国は「自国の領土(朝鮮半島)の南部に盤踞するアメリカの傀儡政権が違法に支配する地域」であり、韓国民は「アメリカと韓国からの支配を受けており解放しなければならない同胞」ということになっていた。しかし、韓国を「主敵」と定義することで、北朝鮮が韓国を攻撃するのではないかということで朝鮮半島の状況は危機感が増した。朝鮮戦争が再び起きる(現在は休戦中なので休戦が終わって戦闘が始まる)可能性が取り沙汰されている。北朝鮮が繰り返しているミサイル実験もこのような可能性に拍車をかけている。

 北朝鮮の金正恩総書記とアメリカのドナルド・トランプ前大統領は朝鮮半島の非核化に向けて合意を取り付けた。しかし、その後、ジョー・バイデン政権が発足し、この合意は無効化されている状況だ。北朝鮮はバイデン政権との交渉を行わなかった。バイデン政権もまた積極的に北朝鮮との交渉を行わなかった。結果として、北朝鮮の核開発とミサイル開発が進められることになった。そして、現在、状況が不安定化している。この北朝鮮の強気の裏には、ロシアとの関係深化がある。北朝鮮はウクライナに派兵さえも行った。こうした動きは中国を刺激し、敏感にさせている。中国としては朝鮮半島の状況の不安定化は望ましいものではない。

 北朝鮮のこのような動きは北朝鮮が破滅に向かうためにやっているのではない。合理的に考えれば、北朝鮮は状況を不安定化して、交渉材料にしようとしている。誰に対しての交渉材料か。それはアメリカだ。アメリカは来週には新大統領が決まる。交渉相手はドナルド・トランプか、カマラ・ハリスかということになる。トランプとは交渉を行った実績がある。トランプは早期に北朝鮮との交渉を行おうとするだろう。カマラ・ハリスが大統領になれば、ジョー・バイデン政権の路線を引き継いで、北朝鮮との交渉を行わないと打ち出すだろうが、状況が切迫してくれば、交渉のテーブルに着かざるを得ないことになるだろう。北朝鮮としては、ロシアの支援を受けており、アメリカに対しては強気に出られる状況にある。そして、何かしらのリターン、見返りを受け取ることを目指すことになるだろう。

 北朝鮮が派手に動いている時は逆にそこまで危険ではないと考えられる。本当に韓国を攻撃し、戦争を引き起こそうとするならば、静かに奇襲作戦を準備するだろう。従って、現状は朝鮮半島の状況は不安定化しているが、戦争の危険はそこまで高まっていない。問題は突発的な事件で戦争が起きてしまうことだ。北朝鮮と韓国の当局者はこの点を注意してもらいたい。

(貼り付けはじめ)

●「北朝鮮、憲法改正で韓国を「敵対国」と定義」

20241017日 BBCニューズ日本語版

https://www.bbc.com/japanese/articles/cq643vdnm5vo

北朝鮮の国営メディアは17日、同国が韓国を「敵対国」と定義する憲法改正を行ったと伝えた。北朝鮮が憲法改正を公にしたのはこれが初めて。

国営紙「労働新聞」は、北朝鮮と韓国の緊張がここ数年で最高潮に達しているなか、この変更は「避けられない正当な措置」だと報じた。

北朝鮮は15日、韓国とつながる2本の道路の一部を爆破した。国営メディアはこの動きを、両国を「完全に分離するための段階的措置の一部」だと説明している。

専門家らは、今回の憲法改正は主に象徴的な動きだとみている。北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)総書記は今年202312月の段階で、南北統一を放棄していた。

国営メディアは当時、金総書記が南北関係を「敵対する二つの国、戦争状態にある二つの交戦国」と表現したと報じた。

そして今年1月には、韓国との統一は不可能であると宣言し、憲法を改正して韓国を「第1の敵国」と指定する可能性を示唆した。

それ以来、特にここ数か月の間、南北間で批判の応酬となり、緊張は着実に高まっている。

 米シンクタンクのランド研究所の防衛アナリスト、ブルース・ベネット氏は、「敵対国」という表現は、ほぼ1年前から北朝鮮の発信の特徴となっていると述べた。

2023年末にこの発言が出た時は、対立のリスクとエスカレーションの可能性を高め、重要な進展となった」と、ベネット氏はBBCに語った。

「それ以来、金総書記とその妹(与正氏)は、韓国とアメリカに対して何度も核兵器による脅迫を行い、多くの行動で緊張を高めてきた。そのため、リスクは高まっている」

専門家の多くは、先週の最高人民会議で北朝鮮が統一政策と国境政策に関する憲法改正を行うとみていたが、そのような変更は現在まで公表されていない。

それでも、アナリストらは本格的な戦争の可能性については懐疑的だ。

「状況が戦争レベルにまでエスカレートするとは思わない」と、韓国・釜山の東亜大学で政治学と外交を教えるカン・ドンワン教授は言う。「北朝鮮は軍事対立を悪用し、国内の結束を強めている」。

一方、ソウルの北韓大学院大学校のキム・ドンヨプ教授は、北朝鮮が全面戦争を開始する能力があるのか疑問視している。

「政権は、そのような紛争がもたらす深刻な結果を十分に認識している」と、キム教授は述べた。

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再び朝鮮戦争が起こるリスクはかつてないほど高まっている(The Risk of Another Korean War Is Higher Than Ever

-北朝鮮はロシアと中国それぞれを利用しており、アメリカには見切りをつけている。

ロバート・A・マニング筆

2024年10月7日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2024/10/07/northkorea-war-nuclear-russia-china/?tpcc=recirc_trending062921

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「北朝鮮とロシアの無敗の友情と団結万歳!」「ロシア連邦大統領ウラジーミル・ウラジーミロヴィチ・プーチン同志を温かく歓迎する」と書かれた横断幕が平壌の平壌屋内競技場外掲げられている。そして、ロシアのウラジーミル・プーティン大統領と北朝鮮の指導者金正恩の肖像画も掲示されている(2024年6月20日)。

今年1月、経験豊かな韓国専門家であるロバート・カーリンとジークフリード・ヘッカーが、北朝鮮の指導者金正恩が戦争の準備をしていると書き、多くの人々を驚かせた。それは誇張かもしれないが、その懸念は的外れではない。私は過去30年にわたり、政府内外で朝鮮の核問題に取り組んできたが、朝鮮半島は1950年以降のどの時期よりも危険で不安定になっているように見える。

2019年以来、北朝鮮の核問題をめぐって3つの相互に関連した戦略的転換があり、1992年以来のアメリカと韓国の外交を導いてきた中核的な前提を無効にしている。まず、2019年にハノイで金正恩とドナルド・トランプ前米大統領との首脳会談が失敗に終わったことを受けて、金正恩は2021年に固体燃料大陸間弾道ミサイル、小型弾頭、戦術核兵器、極超音速ミサイルを含む核・ミサイルの大規模増強の5カ年計画を明らかにした。北朝鮮の核産業複合体への投資と、核を手放さないという金正恩委員長の強調した声明(これは北朝鮮の憲法と先制核理論に具体化されている)は、姿勢の戦略的変化を強調している。

これらの新たな能力と表明された意図は、北東アジアの戦略的バランスを変化させ、アメリカの拡大抑止力(United States’ extended deterrence)に対する新たな信頼性の問題を引き起こし、韓国が独自の核兵器を手に入れたいという願望を増大させた。

そして、北朝鮮の地政学的な再配置もある。それは、金正恩が諸大国の均衡(balancing major powers)を図る、アメリカとの国交正常化という北朝鮮の長期目標を放棄したことから始まった。これは30年にわたる核外交の論理を支えていた。

同時に、北朝鮮は2016年と2017年の北朝鮮核実験後に中国が国連の厳しい経済制裁を支持したことで緊張が高まっていた中国との関係を強化した。金正恩は2019年1月に北京を訪問し、中国の習近平国家主席も2019年6月に平壌に続いて交流訪問を行った。それ以来、中国はロシアとともに、北朝鮮の大陸間弾道ミサイル実験に対して新たな制裁を課そうとするアメリカの取り組みを阻止してきた。

ウクライナ侵攻後、ロシアが北朝鮮と新たな安全保障パートナーシップを結び、経済的・軍事的援助を弾薬やミサイルと交換する中で、地政学的変化は激化した。中国当局者やシンクタンクの専門家との非公式な協議で伝えられたように、この動きは中国を不快にさせた。彼らは、ロシアのウラジーミル・プーティン大統領が中国政府の影響力を奪い、金正恩の祖父である金日成が2つの共産主義大国を敵対させた1950年代と1960年代によく似た状況を作り出しているのではないかと懸念している。

3つ目の変化も同様に深刻だ。今年1月、金正恩は歴史によって分断された1つの同族国家として北朝鮮と韓国が定義していた70年間の統一政策を放棄し、韓国を「主敵(principal enemy)」と宣言した。彼は、統一への誓約を消去する北朝鮮憲法の変更を要求し、南北和解を扱う機関を解体し、父親が平壌に建てた統一記念碑を取り壊した。

最近の出来事はこれらの変化を強めている。金正恩にとって、アメリカの選挙サイクルはしばしば楽しいメッセージの機会となる。9月、北朝鮮は短距離弾道ミサイルの集中発射実験を開始し、金正恩は核戦力をアメリカとの戦闘に備えさせると誓約し、その後、念のため、極秘施設内を散歩する自身の珍しい写真を公開した。ウラン濃縮工場を建設し、より多くの核兵器を製造すると約束した。しかし、これは私たちが期待できることのほんの一部を示しているに過ぎない。

なぜこれが重要なのだろうか? 少なくとも今のところ、それがそれぞれアメリカと韓国の政策目標であり続けているという事実にもかかわらず、金正恩は非核化と南北統一(denuclearization and North-South reunification)の両方を議題から外した。

韓国問題は今やゼロサムの大国間競争(great-power competition)の中に組み込まれている。北東アジアには、中国、ロシア、北朝鮮という対立する2つのブロックが存在し、別に、アメリカ、韓国、日本が存在する傾向にある。中国とロシアが(アメリカ、中国、ロシア、日本、韓国、北朝鮮が参加する)「六者協議(Six Party Talks)」で協力することを可能にした核拡散(nuclear proliferation)に対する共通の懸念はもはや存在しない。金正恩は現在、進化する核・ミサイル兵器、プーティン大統領の支援、そして最悪の場合は中国の無関心によって、これまでにないほど勇気づけられている。

しかし、私の言葉を鵜呑みにしないで欲しい。北朝鮮に関する国家情報会議(National Intelligence Council)の2023年の報告書では、新たなリスク環境の概要が述べられている。その判断は次のようになる。

北朝鮮は今後も、核兵器使用という立場を利用して強圧的な外交を続けるだろうし、核兵器や弾道ミサイルの質と量が増えれば増えるほど、よりリスクの高い強圧的行動を検討するのはほぼ間違いない。

報告書は、金正恩が「体制が危機に瀕していると確信(believes the regime is in peril)」しない限り、核兵器を使用することはないと評価する一方で、「核兵器がアメリカや韓国の容認できないほど強力な反応を抑止できると考え、より大きな通常軍事的リスクを取ることを厭わないかもしれない(He may be willing to take greater conventional military risks, believing that nuclear weapons will deter an unacceptably strong US or South Korean response)」と述べ、誤算(miscalculation)の可能性を示唆している。

報告書は、武力による「領土を奪取し、半島の政治的支配を達成しようとする攻撃戦略(an offensive strategy that seeks to seize territory and achieve political dominance over the Peninsula)」は「強制戦略よりも可能性が低い(less likely than the strategy of coercion)」としているが、後から考えると評議会が修正する可能性があるのではないかと私が疑う重要な警告を発している。

金正恩がアメリカの介入を阻止し、中国の支援を維持しながら韓国軍を圧倒できると信じている場合、あるいは国内または国際危機が修正主義的な目標を達成する最後のチャンスであると判断した場合、攻撃戦略(offensive strategy)の可能性はさらに高まるだろう。

このような戦略の結果、どのようなシナリオが考えられるだろうか? エスカレートする可能性のある火種は、南北朝鮮の海洋境界線である北方限界線(Northern Limit LineNLL)である。NLLは1953年の休戦前後に国連軍司令部によって画定されたが、北朝鮮はこれを争っており、長年の不満と度重なる軍事衝突の原因となっている。2010年、平壌は、NLLが韓国領と定義する5つの島の1つである延坪島を砲撃した。この攻撃で韓国海兵隊員2人が死亡し、韓国船1隻も沈没した。北朝鮮は今年初めにもこの島の近くで砲弾を発射している。

金正恩が憲法改正を要求し、韓国を「主敵(principal enemy)」と宣言したのと同じ1月の演説で、彼は将来の最高人民会議(Supreme People’s AssemblySPA)会議で北方限界線の国境主張を修正することにも言及した。「我が国の南側国境線は明確に引かれているため、違法な『北方限界線』やその他の境界線は決して容認できない。韓国が我が国の領土である陸地、空域、水域を0.001ミリでも侵犯すれば、戦争挑発(war provocation)と見なすだろう」。金正恩は10月7日に最高人民会議の会議を予定している。

朝鮮半島のこうした現実と北東アジアの地政学的苦境から生じるリスクは、いくつかの危険だがもっともらしいシナリオを示唆している。まず、国家情報会議報告書や韓国のアナリストたちが予見している核の影のシナリオがある。それは次のようなものだ。

米韓軍事演習を非難した後、北朝鮮はそのうちの2つの島の近くで実弾射撃訓練と思われる演習を開始し、その後砲弾を集中砲火し、続いて軍隊が延坪島に上陸した。韓国を牽制するアメリカの努力は失敗し、韓国政府は空軍と海軍をその地域に派遣し、北朝鮮の船舶に砲撃し、海兵隊を島に上陸させた。戦闘が続く中、北朝鮮は近くの無人島に戦術核兵器を発射した。

アメリカや韓国は軍事的に対応し、エスカレーションの危険を冒すだろうか? 広島以来初の核使用に直面して、中国は国連安全保障理事会決議に拒否権を発動するだろうか、それとも状況を封じ込めるために米国と協力するだろうか? アメリカと韓国の両国が北朝鮮との信頼できる外交的または軍事的コミュニケーション手段を欠いている現在、北朝鮮は簡単に制御不能になる可能性がある。

更に憂慮すべきシナリオは、朝鮮半島危機と台湾危機が同時に発生するアジアでの二正面戦争(two-front war)である。ウォーゲーム(wargaming)、政府関係者へのインタヴュー、ワークショップに基づく2023年の詳細な報告書の中で、北朝鮮担当の元国家情報担当官であるマーカス・ガラウスカスは、抑止力(deterrence)がどのように失敗する可能性があるか、また、例えば中国が台湾に侵攻し、アメリカが軍事介入(military intervention)して焦点と資源を逸らした場合、金正恩が韓国を攻撃する論理と力学について詳述している。あるいは逆に、中国と北朝鮮の両方が台湾と韓国を攻撃するような、協調しての同時攻撃(simultaneous offensives)の可能性もある。

3つの核保有国が対立する(そしてプーティンがどのように行動するかを推測するかもしれない)というのは、空想的に聞こえるかもしれないし、ハルマゲドンに向けて夢遊病になるのではないかと危惧する人もいるかもしれない。そのような最悪のシナリオがすぐに起こる可能性は低いが、北朝鮮の地政学的な再配置によって、今後6~18カ月以内に平壌が劇的な動きを見せる可能性は高まっている。

アメリカも中国も、朝鮮半島をめぐる危機感に欠けている。中国当局者によれば、北京は平壌の行動をアメリカの制裁のせいであり、自分たちの問題ではないと見ている。ウクライナや中東地域での紛争が激化し、中国とのゼロサム競争が高い議題となっている今、北朝鮮は後回しにされているし、今後もされ続けるだろう。しかし、金正恩はそれについて何か言うかもしれない。

※ロバート・A・マニング:スティムソン・センターの戦略的先見ハブ上級研究員を務めており、世界的な先見性と中国プログラムに取り組んでいる。ツイッターアカウント:@Rmanning4

(貼り付け終わり)

(終わり)

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる
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ビッグテック5社を解体せよ

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める

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 古村治彦です。

 2023年12月27日に最新刊『バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる』(徳間書店)を刊行しました。是非手に取ってお読みください。よろしくお願いいたします。

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

 最近、『タイム』誌が統一教会についての長い記事を発表した。統一教会が日本政界、特に自民党に深く浸透していたことを紹介しているが、後半は、統一教会内部の分裂や、アメリカ政界への浸透を紹介する内容になっている。安倍晋三元首相殺害から、日本では統一教会の政治からの排除まで進んだ。日本での霊感商法や莫大な献金が統一教会の主要な資金源であったことから、日本での活動が縮小することは統一教会にとっては痛手となるだろう。しかし、自民党が本当に統一教会と決別するのか、日本政界が統一教会の新党を排除し、浄化されるのかは不明だ。それほどに根深い問題である。
 今回、タイムが掲載した記事は、統一教会がアメリカ政界に浸透しているという内容だ。そして、「指桑罵槐(しそうばかい)」(ある人物を非難しているようで、実際には遠回しに別の人物を非難する手法)で、ドナルド・トランプ前大統領を非難している内容だ。ドナルド・トランプと統一教会が深い関係にあることをところどころに書いている。

 今回の記事について足りないと感じているのは、日本政界への浸透ぶりと、岸信介・安倍晋太郎・安倍晋三と続く血脈が、協力関係にあったアメリカのCIAと統一教会と深くかかわり、日本人と日本のお金をこれらに貢ぐことに貢献したということが書かれていないことだ。

 非常に長い論稿であるので、冒頭の紹介はこれくらいにして、中身を読んでいただきたい。この記事にもヴェクトルがかかっているので、トランプ批判のために書かれたということに注意しながらこのような統一教会と長年にわたりずぶずぶの協力関係にあった自民党は許しがたい存在であることだけはよく分かると思う。

(貼り付けはじめ)

統一教会は日本政府に浸透した。現在、その標的はアメリカに向けられている(The Unification Church Infiltrated Japan’s Government. Now Its Sights Are Set on the U.S.

チャーリー・キャンベル(東京発)筆

2024年4月4日

『タイム』誌

https://time.com/6961050/unification-church-ffwp-moonies-us-election/

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ニューヨークのマディソン・スクエア・ガーデンで演説する際に劇的な動きをする文鮮明(Sun Myung Moon)牧師。牧師の首席補佐役である朴普煕(Bo Hi Park)大佐(右)が韓国語から英語に翻訳している。

日本の西側にある奈良市の空は曇っていた。午前11時29分、安倍晋三首相にマイクが手渡された。紺のジャケットにパリッとした白いシャツを着た安倍元首相が、大和西大寺駅の小さな赤い台の上に立つと、集まった聴衆から割れんばかりの拍手が起こった。15メートルほど離れたところに山上徹也が立っていた。フェイスマスクを鼻の穴の下に下げ、両手を腰に当て、演説には全く無関心な様子だった。安倍元首相が地元選出の自民党議員を応援する演説を始めると、山上は演説場所から遠ざかり、数秒後に安倍の側近たちの真後ろに再び姿を現した。安倍がマイクを手にしてから2分25秒後、銃声が鳴り響き、現場は濃い白煙に包まれた。安倍は混乱した様子で、周囲を見回した。その3秒後、もう1発の銃声が安倍の首と胸を捉えた。安倍は倒れた。山上は警備員にタックルされ、逮捕された。路上から手製の銃器が回収された。

2022年7月8日の事件は、衝撃的であると同時に、間違いなく事実である。安倍はドクターヘリで奈良県立医科大学附属病院に搬送されたが、そこで死亡が確認された。山上被告(当時41歳)は殺人容疑で起訴され、今年末の裁判を控えている。山上は、安倍元首相が物議をかもしている統一教会(Unification Church)を支持していたことが殺害の動機だと主張している。統一教会は、山上の母親を説得して、1億円(67万ドル)以上を教団に献金させ、山上一家を破産と困窮に追い込んだ。釜山長神大学校教授で統一教会の専門家であるタルク・ジイルは、「ある意味、この青年は加害者ではなく被害者だ」と述べている。

安倍元首相が暗殺されてから数カ月後、内部調査によって自民党所属議員の約半数が統一教会と関係があることが明らかになり、日本政府の最高首脳部から辞任が続出した。しかし、「ムーニー(Moonies)」と呼ばれ、合同結婚式(mass weddings)や熱狂的な反共(anticommunist fervor)で知られる宗教的好奇心が、なぜこのような殺人的怒りを引き起こしたのだろうか? そして、当時世界第3位の経済大国であった日本の統治エリートたちに中に、粛清(purge)が必要なほど深く入り込んだのはなぜなのか?

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日本の奈良県で行っていた選挙運動の間に銃撃された後に地面に横たわる安倍元首相。2022年7月8日。

統一教会の真実は、1件の暗殺事件や日本よりもはるかに深い。統一教会はあらゆる大陸に広がる政財界の網の目のような存在であり、約200万人の会員(この数字には反対意見も多い)と10億ドル以上の資産を擁していると見られている。教団は、『ワシントン・タイムズ』紙、UPI通信、マンハッタンにあるニューヨーカー・ホテル、バレエ団、そしてアメリカの寿司業界に鮮魚を供給する最大手のトゥルー・ワールド・フーズ(True World Foods)を所有している。アメリカの諜報機関の報告によれば、第三世界のクーデターに資金援助をしている。共和党や民主党の有力者たちを招待して、保守的な大義を推進するイヴェントを開催している。リチャード・ニクソン、ロナルド・レーガン、ドナルド・トランプを含む歴代アメリカ大統領は、教団について熱心な支持を表明してきた。

統一教会は1954年に文鮮明牧師によって設立された。彼は、神の王国(God’s Kingdom)を地上に樹立し、世界平和をもたらすという任務を完遂するために、イエスから第二のメシア(second messiah)として託されたと主張した。文鮮明の神学(theology)は、エデンの園でアダムと寝る前にエヴァがサタンに誘惑されたという考え方に基づいている。信者は、文鮮明の選んだ配偶者と結婚し、塩をたっぷりまぶした部屋で文鮮明の肖像画の下で、あらかじめ決められたさまざまな体位でセックスするなどの一連の儀式を行うことで、この「原罪(original sin)」の血統を清めることができる。

このような特殊性は、神聖なふりをした、1人の指導者に焦点を当て、資金を積極的に収奪することに加えて、統一教会はカルトであるという非難を増大させてきた。文鮮明は自らを「完璧なアダム(perfect Adam)」、韓国を「アダム国家(Adam nation)」とし、「天使長(archangel)」国家アメリカの支援を得て、人類が発作前の純粋さを取り戻す手助けをするだろうと主唱した。一方、日本は、1910年から1945年の朝鮮半島植民地支配中に犯した罪の償いを求められる「イヴ国家(Eve nation)」に指定された。数多くの日本の元教会員の代理人を務める弁護士の山口隆は次のように述べている。「彼らは、日本人全ての資産は韓国に返還されるべきだと信じている。それが救いへ向かう道だ、と」。

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2022年8月10日、東京の首相公邸での写真撮影から退場する岸田文雄首相に頭を下げる閣僚たち。支持率の低迷を受け、岸田首相はこの日、政権から統一教会とのつながりを排除するために内閣を改造した。

しかし今日、統一教会は自らを苦境から救おうと奮闘している。 HBOのヒット作「サクセッション」の中に描かれたような、内紛(infighting)、悲劇(tragedy)、反社会的組織の陰謀が充満している。統一教会の資産が増加するにつれて、その資産をめぐる争いはより激しく、憎むべきものになった。文鮮明の末子ショーン(文亨進、SeanMoon Hyung-jin)は、タイム誌とのインタヴューで、安倍殺害の責任は、2012年の文鮮明の死後、統一教会の実権を奪った別居中の母親である韓鶴子(Hak Ja Han)にあると断言した。ショーンは、「これは、主である神と再来したイエスを裏切ってきた組織に対する裁きの鉄槌だ」と語っている。ショーンはペンシルヴァニア州の田舎に、分派の教会であるサンクチュアリ教会を設立した。ショーンは銃を携帯し、銃を前面に押し出している。1月6日には国会議事堂の外で親トランプ暴徒の中で催涙ガスを浴びた。ショーンは「盲目的なそして異端的な方向性がその組織(統一教会)に呪いをもたらした」と述べている。

確かに、安倍元首相の死は、統一教会にとって存在を揺るがす深刻な問題である。日本政府は10月13日、統一教会から宗教法人としての地位を剥奪するように裁判所に訴えた。宗教穂人の資格はく奪により、法人税と固定資産税が免除されなくなる。統一教会の世界的な資金源の70%は日本だと推定され、積極的な献金勧誘に加え、先祖の霊を「鎮める(appease)」とされる高値の「霊感(psychic)」人参茶や大理石の壺を販売している。全国霊感商法対策弁護団(Japan’s National Network of Lawyers Against Spiritual Sales)が実施した調査によると、1987年から2021年までに、全国の弁護士会や消費者センターに報告された統一教会の募金に関する被害件数は3万4537件に達し、被害総額は8億5000万ドルを超えている。カルト研究家のサラ・ハイタワーは「彼らは基本的に日本をATMとして利用している」と述べた。

その資金源が脅かされている今、統一教会は、積極的な資金調達戦術が憲法修正第1条によって守られている、アメリカに重点を移している。10月、ハク・ジャハンは4年ぶりにアメリカに戻り、ラスヴェガスで「真のお母様の心を理解する(understand True Mother's heart)」ための「特別ワークショップ(special workshop)」を開催した。17歳から40歳を対象としたこのイヴェントは、日本からの収入減を補うために寄付を増やす必要性に支配されていた。タイム誌が入手したリークされた電子メールには、「真のお母様に私たちがどれほど感謝しているかを伝えるために」、イリノイ州シャンバーグにある住所に100ドル札を送るようアメリカの信者たちに指示し、「文書に現金という文字を書かないように」と更に指示していた。

統一教会のアメリカ支部である世界平和統一家庭連合(Family Federation for World Peace and Unification InternationalFFWPUI)の会長、デミアン・ダンクリー牧師が主催した9月26日のZoom会議の映像がリークされた。この中では、同団体が直面している様々な危機について説明し、日本からの減少分を補うためにアメリカ人会員からの献金を3倍にするよう牧師たちに促した。「最も高い献金者から始め、徐々に下げていこう」とダンクリー牧師は述べた。今後の「主要な目的」は、「会員数の増加」と「財政的な成長」だと彼は言った。ダンクリー牧師は「もし、ネパールの食べるのに苦労している家族が、自分たちの子供たちを食べさせることができるかどうかも分からないのに、年に一度、真のお母様に真の愛の献金をすることができるのであれば、アメリカの家族にも同じことができるはずだ」と述べた。

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2020年2月7日、韓国・加平の清心平和国際センターで行われた世界平和統一家庭連合の祝福式で、新婚カップルたちの中に立つ統一教会創始者である故文鮮明の妻、韓鶴子。

会議の中でダンクリーは、「日本の人口の90%が統一教会解散に賛成している」ことを認め、友好的な「首相周辺の国会議員たち(parliamentarians around the prime minister)」(彼はこれを「私たちの仲間(our people)」と表現している)は、「おそらくこれを逃れる方法はないだろう」と述べていると語った。日本におけるこのような逆風を考慮すると、アメリカの牧師たちは「若者」の勧誘に力を入れるべきであり、また「お母様に会うように言われた億万長者や大富豪たち」を参加させれば、これらの問題を迅速に解決できるとダンクリーは指示した。

統一教会の中で育ち、現在は回復した元会員たちを助けるために「フォーリング・アウト」というポッドキャストを主催しているエルゲン・ストレイトにとって、このメッセージは非常に明確だ。そして、秋には接戦が予想される大統領選挙が近づいており、統一教会の政治的、財政的な力は、統一教会のアジェンダに最も適した人物たちに握られている。

統一教会は長い間、定義づけを拒んできた。統一教会は、1960年代から1970年代にかけて西側諸国を席巻したハレ・クリシュナ(Hare Krishna)や超越瞑想(Transcendental Meditation)などの新宗教運動の津波の一部ではあるが、その持続性と影響力の両方において際立っている。それでも今のところ、ISISやマンソン・ファミリー、ジム・ジョーンズの人民寺院(People’s Temple)のような殺人志向は見受けられない。統一教会の信者の多くは、何十年もの間、統一教会を出たり入ったりしている。統一教会が与えるいかなる害も、より陰にこもったものだ。

1920年、現在の北朝鮮北西部に生まれた文鮮明は、残忍な日本統治時代に藁葺き小屋で育った。10歳の時、彼の家族はキリスト教に改宗し、16歳の時、彼はイエス・キリストの訪問を受けたと主張した。1945年に連合軍が朝鮮半島を解放した後、彼はソ連が支配する平壌に移り住んだが、3年後に逮捕され、共産主義者が運営する収容所で5年間を過ごした。

朝鮮戦争勃発後、文鮮明は国境を越えて逃亡し、韓国の釜山に定住し、一間の掘っ立て小屋に住んでいた。彼は、キリスト教(Christianity)、儒教(Confucianism)、シャーマニズム(shamanism)、反共産主義の辛辣さ(anti-communist vitriol)を混ぜ合わせた神学的信条を土壁に走り書きし始めた。1950年代には、文鮮明の献身的な信奉者の一団が成長し、文鮮明が教会関連の財団や企業を多数設立するのを支援した。1960年、文鮮明は40歳のときに、当時まだ17歳だった2番目の妻、料理人の娘、韓鶴子と結婚した。文鮮明はまた、1963年に複合企業「統一グループ(Tongil Group)」を設立し(「統一(Tongli)」とは韓国語で「統一」を意味する)、武器、農業、高麗人参、造船、航空、観光、鉱物などの事業に進出し、急速に多角化(diversified)した。

元統一教会信者で文鮮明の非公式伝記を書いたマイク・ブリーンは、「間近で見る文鮮明は、とても謙虚な印象を受けた。とても、とても気配り上手で、向き合っているその瞬間、本当に相手に集中している人という感じがした」と述べた。

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2012年8月14日、ソウルで開催された日本の植民地支配からの解放記念行事に先立つ集会で、日本軍によって行われた戦争時の朝鮮人性奴隷に対する謝罪の行為として頭を下げる統一教会の日本人信者たち。

1973年までに、文鮮明は自分の使命をアメリカに持ち込み、ニューヨーク州タリータウンのイースト・ガーデンと呼ばれる18エーカーの森林地帯に居を構えた。そこでは、アルコールとドラッグが禁止され、結婚以外のセックスをすると罪人として燃えるような天罰を受けるという新しいコミュニティを設立した。1974年までに、アメリカの統一教会は年間800万ドルの収益を上げ、文鮮明はその2年後にニューヨーカー・ホテルと隣接するマンハッタン・センターを購入することができたと言われている。アールデコ調の建物は、統一教会のアメリカでの活動拠点となり、統一教会の信者たちの子供たちが共同保育される場所となった。前述のストレイトは3歳になるまでニューヨークで育ったが、両親が大学のキャンパスを探し回る勧誘員から「愛の爆撃(love bombed)」を受けた後だった。ストレイトは、「多くの家族があのホテルに住んでいた。そこから、人々が資金集めや布教活動に出かけた」と回想する。

統一教会は、若い男女を家族から引き離し、「洗脳(brainwashed)」されたとされる隔離されたキャンプに送り込むことで悪名高い存在となった(教会はこれを否定している)。しかし、改宗の熱意(zeal of conversions)は、心配した親族が「ディプログラミング(deprogramming)」と呼ばれる連れ出しを開始することを促し、双方に訴訟が相次いだ。文鮮明はまた、保守的な政治活動を支援し始めた。ウォーターゲート事件の最中には、全米の新聞にニクソン支持の全面広告を掲載し、連邦議事堂で「神はリチャード・ニクソンを愛している(God Loves Richard Nixon)」集会を開いた。文鮮明は魅力的な女性信者たちを派遣し、連邦上院議員たちを篭絡させ、情報を収集させた。そうした信者の1人は、カール・アルバート連邦下院議長の側近にまでなった。

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1974年、ホワイトハウスでリチャード・ニクソン米大統領と会談する文鮮明牧師。

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1981年10月22日、文鮮明牧師の巨大なポスターが経っている間にアメリカ国旗がいくつも立てられている。彼の信者たちが一団となってアメリカ連邦地方裁判所の外の公園でデモを行っ写真7た。

1976年、米連邦議会の調査により、文鮮明が、アメリカの対北朝鮮政策に揺さぶりをかけようとする韓国の諜報活動に関与していたことが明らかになった。1982年、文鮮明は脱税で有罪判決を受け、18カ月の禁固刑を言い渡された。文鮮明は自らを型破りな信仰のために迫害された殉教者に仕立て上げ、ジェリー・ファルウェルやティム・ラヘイなど、さまざまな市民的自由主義者や宗教保守派から支持を集めた。影響力を高めるため、文鮮明はワシントン・タイムズ紙を創刊し、その創刊号は文鮮明が有罪判決を受ける前日に発行され、ロナルド・レーガン大統領を含む保守派の間で必読の新聞となった。

文鮮明は信教の自由と反共の熱意を訴え、当時の冷戦の熱気の中で幅広い支持を得た。ラテンアメリカでは、米州社会統一連盟(Confederation of the Associations for the Unification of the Societies of the AmericasCAUSA)を設立した。アメリカ政府の情報筋によれば、CAUSAはコントラ反乱軍に現金と物資を送り、1980年に民主的に選出されたボリヴィア政府を転覆させた右派クーデターを画策した準軍事組織、コカインカルテル、逃亡中のナチス戦犯クラウス・バービー(「リヨンの虐殺者(Butcher of Lyon)」)といった多様な一団に資金を提供した。

冷戦が終結しても、文鮮明の並外れた政治的影響力を妨げることはなかった。1995年、ジョージ・HW・ブッシュ元大統領とバーバラ夫人は韓国の統一教会で、一連の有料講演を行い、その1年後、ブッシュはブエノスアイレスを訪れ、文鮮明が設立した新しい地域日刊紙『ティエンポス・デル・ムンド』の創刊式で演説した。その他の著名な仲間には、ジェラルド・R・フォード元大統領、共和党のジャック・ケンプ連邦上院議員、ミハイル・S・ゴルバチョフ、そして現在不祥事を起こしている芸能人のビル・コスビーなどがいる。2000年、文はパラグアイにデラウェア州とほぼ同じ広さの土地を購入した。地元の警察当局は、統一教会が武器や麻薬の密輸を容易にするためにこの土地を使用していると非難している。統一教会は、その土地での違法行為を認識していると述べているが、関与は否定しており、警察当局に協力していると主張している。

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2005年7月16日、パラグアイのタクアラで、プエルト・カサドの町のパラグアイ人たちが、文鮮明の統一教会が自分たちの地域で取得した土地の一部を、自給自足農業のために自分たちに引き渡すよう政府に圧力をかけるため、自宅から首都アスンシオンまで148km(91マイル)の行進に参加した。

統一教会の政治的結びつきが強まるにつれて、そのプロパガンダも直接的になっていった。2003年、ワシントン・タイムズ紙は見開き2ページで、亡くなった36人のアメリカ大統領全員が文鮮明の卓越性を認めていたと主張した。一方、トーマス・ジェファーソンは、墓の中から「全ての人々にとっての救世主である文鮮明師の教えに従え」という個人的な推薦文を書いた。翌年、ダークセン記念連邦上院議員会館で行われた華やかな式典には、少なくとも12人の米連邦議員が出席した。式典の中で、文鮮明は「戴冠式(crowned)」を行い、自らを「人類の救世主、救世主、帰天の主、真の親」と宣言した。また、数百名のゲストを前にして、イエス、仏陀、ヒトラー、スターリンは文鮮明の教えを通じて「生まれ変わり、新しい人間となった」と報告された。共和党のロスコー・バートレット議員は文鮮明と韓鶴子の前で一礼し、民主党のダニー・デイビス議員は文鮮明の頭に金の王冠を載せた枕を差し出した。2006年、ジョー・バイデン大統領の弟のジェームズは、甥にあたるジョー・バイデンの息子ハンターとともに、文鮮明の義理の息子であるジェームス・パークが設立したヘッジファンドを購入した。

しかし、舞台裏で全てが順調だった訳ではない。

1984年、文鮮明の次男文興進(Heung Jin Moon)が自動車事故による負傷がもとで亡くなった。17歳だった。1999年、もう一人の息子文榮進(Young Jin Moon)がリノの17階建てのホテルの部屋から飛び降り自殺した。一方、文鮮明の長男で後継者と目されていた文孝進(Hyo Jin Moon)は、飲酒、麻薬、無差別暴力を好む気まぐれな人物として知られていた。1995年、妻のナンスク・ホンさんは家族と決別し、文孝進をコカインとポルノ中毒の不倫女たらしで、妊娠7カ月の時も含め定期的に暴力を振るったとして非難する本を書いた。文孝進は2008年に心臓発作で亡くなった。45歳だった。両親が指導的立場の信者で、イースト・ガーデンの近くで育ち、現在は脱会した元信者であるテディ・ホースは、「成人した大人たちが、文鮮明の子供たちに頭を下げてかしずいてきたので、文鮮明の子供たちは、人々をおもちゃのように扱っていた。彼らはまさに反社会的家族だった」と述べている。

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1986年に撮影された文鮮明の家族写真。

文鮮明地位族の偶像崇拝(idolatry)は、一般信者の経験とは対照的である。攻撃的な資金集めは日本で最も深刻であるが、山上徹也の貧しい子供時代と似たような話は、統一教会の信者がいるところならどこでも見られる。ノルウェーのオスロでリリアン・ホルドフスが「本当に、本当に貧しく」育ったのは、母親が文鮮明に対して献身的に献金していたからだと彼女は言う。

文鮮明は、全ての先祖は地獄におり、信者たちは各世代の先祖を解放するために金を払わなければならないと教えていた。「天元(Cheon Won)」として知られる統一教会の韓国本部の公式ウェブサイトには、国に応じて価格が異なる「祖先解放」計算ツール(“ancestor liberation” calculator)さえある。先祖たちがいる世界は明らかにウェストファリア的な国家概念と現代のGDP指標に固執しているようだ。父系と母系の430世代の家族全員を解放するには、ノルウェーやアメリカでは1万2420ドルが必要だが、スーダンではわずか2280ドルで済む。ちなみに、日本では同じ偉業を達成するには652万円(約4万4800ドル)が必要だ。先祖を祝福したり、流産や中絶で失われた胎児の魂を解放したり、死ぬ前に自分の魂を事前に解放する機会には追加料金がかる。 ただし、先祖全員が既に救われている場合に限られる。

ホルドフスの母親は、先祖を救うことに執着し、リリアンが8歳から15歳までの間、毎晩学校が終わると子供たちを新聞配達に行かせ、家族のために現金を稼がせた。日曜日には、礼拝の前に新聞を配達するため、ホルドフスとその兄弟は朝4時にベッドから引きずり出された。そのお金は全て統一教会に献金された。リリアンは「学校では、教科書を読むのがとても遅かったことを覚えている。働いた後だったので、疲れて宿題をする気にもなれなかった」と述べている。

攻撃的な資金集め以外に、統一教会は手配された合同結婚式で最もよく知られている。1982年、マディソン・スクエア・ガーデンで2075組のカップルが文鮮明によって結婚式を挙げられ、花嫁はレースとサテンのガウンを、花婿は同じコバルト色のスーツを身にまとった。2012年、彼女がまだ17歳だったとき、リリアンの番が回ってきた。彼女は天元に送られ、文鮮明が生前に個人的に行った最後の集団「祝福」に参加することになった。文鮮明は彼女をドイツのニュルンベルクに住む20歳のイタリア人男性と引き合わせた。一目惚れという訳にはいかなかった。リリアンは「彼はすぐに私に悪い印象を与えた。『こんな人と結婚するなんてありえない』という感じだった」と語った。

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統一教会の指導者である文鮮明とその妻韓鶴子。1982年の元旦にマディソン・スクエア・ガーデンで2075組の信者の合同結婚式を挙行した。

しかし、リリアン・ホルドフスが結婚を取り止めようとしたとき、統一教会の関係者の一人が、リリアンがサインしたイヴェント参加の意思を示す契約書を見せた。リリアンは「彼女は私に腹を立て、私はとてもプレッシャーを感じた。だから、私は結婚の儀式に参加すると言わざるを得なかった」と述懐している。今日、リリアンは何が起こったかについてはっきりと語った。「私は人身売買された(trafficked)のです。私は成人として法的に自分のことを決めることができなかった。人身売買の疑惑について尋ねられたダンクリーは、強制的な行為の責任は参加者の親にあるとし、「大多数は信じられないよう茄子払い井経験をしている」と主張している。

リリアンは高校を卒業するためにオスロに戻ったが、卒業後、母親からドイツにいる新しい夫のもとに行くよう命じられた。リリアンは、「彼は精神的な虐待をする人で、私のことを馬鹿だ、ノロマだとの常に罵声を浴びせてきた。彼はまったく協力的でも共感的でもなかった」と述べている。

結婚後もリリアンの苦労は続いた。新しい夫に言われるまま、ホルドフスは8人のティーンエイジャーと一緒にヴァンに乗ってイタリア、スロヴェニア、ドイツを3ヵ月間にわたって回り、教会の資金を稼ぐために、グリーティングカードやろうそくなどの小物を一軒一軒売り歩いた。車内で寝ることもあれば、コミュニティセンターの床で寝ることもあり、まれにホステルの一室に詰め込まれることもあった。食料は、チームリーダーがスーパーマーケットで安いパン、ハム、チーズを買ってきて作ったサンドイッチだった。

リリアンは、「北イタリアの何もない小さな村で、文章が書かれた小さな紙切れ1枚ヲ渡されて、ヴァンから降ろされたことを覚えている。言葉も分からないし、本当にパニックになってしまった」と述べた。

毎朝、参加者全員がその日の自分の目標を述べさせられた。そして毎晩、リーダーたちに渡す前に、グループの前で自分の稼いだお金を数えなければならなかった。リリアンは次のように述べている。「私はたいてい1日に200ユーロ(230ドル)ほど稼いだ。私は稼ぎが良い方ではなかった。稼ぎが少ない人はティームの前で恥をかかされた。だから、もっともっと稼がなければならないというプレッシャーがあった」。資金集めに重点を置いたこの計画について尋ねられたダンクリーは、「実際はお金のためでもなく、むしろ、教育のためだ」と主張している。

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2022年7月29日、東京の日本外国特派員協会で行われた統一教会の活動に関する記者会見で、統一教会の歴史書と教団の聖典を提示する、全国霊感商法対策弁護団の山口広弁護士(左)と川井康雄弁護士(右)。

リリアンの経験は決して特別なものではない。ストレイトやホースを含め、アメリカの統一教会で育った子供たちは、高校卒業後1、2年の間、キーホルダーや風鈴のような意味のない小物を売る、当初は特別任務部隊(Special Task Force)と呼ばれた同様の計画に参加する。これは危険な仕事だ。2002年、18歳のジン・ジュ・バーンは、教会のためにコスチューム・ジュエリーを売っている最中に、シャーロットのアパートで性的暴行を受け殺害された。数年後、特別任務部隊はジェネレーション・ピース・アカデミー(Generation Peace Academy)に改名されたが、新型コロナウイルス感染拡大による封鎖中でさえ、毎年全米だけで約200人の若者を派遣し、高値のカレンダーや立体的な猫の写真を売り続けている。このアメリカのプログラムは、年間1000万ドル以上を売り上げていると推定されている。リリアン・ホルドフスは、「彼らはこのプログラムをとても美化している。私は、これが単なる労働者人身売買(labor trafficking)だと気づいた」と述べている。タイム誌の取材に対し、ダンクリーは再び人身売買の非難を否定し、集まった資金は「プログラムに投資されるか、地域社会に還元される」と述べた。

山口弁護士は、「統一教会がこうしたプログラムを行っているのは、若者はそれほどお金を持っていないので、代わりに自分の労働力を求めているからだ。害となるのは、若者たちが最も実り豊かな年月を無駄にさせられていることだ」と述べている。

不安障害や広場恐怖症などの精神的健康状態の悪化が5年続いた後、リリアンは夫に別れを告げてオスロに戻った。しかし、母親は大いに困惑した。リリアンは「母は私に『彼とよりを戻すべきだ』と言い続けた」と述べている。しかし、しばらくすると、母親は折れた。 「しかし、私が教会に行くたびに、母は私を単なる商品であるかのように、適当な年上の人と私を結び付けようとする」とリリアンは述べている。

リリアン・ホルドフスの精神状態は悪化し続けた。「彼らは、悪霊のようなおかしなものがあなたをコントロールしようとしていると信じている」とリリアンは述べている。「アルコールを一口飲むと、それはあなたの体への悪霊の侵入を招くことになると言ってくる。もう我慢できなかった」。結局、新型コロナウイルス感染拡大が彼女を助けてくれた。ロックダウンは物理的に教会の礼拝に出席しない口実を与え、オンラインで組織について調べ始める心の余裕を彼女に与えた。リリアンは、「統一教会は、なぜメンバーからそんなにお金が欲しいのか、疑問を持った。子どもの頃は『文鮮明一族の方々に私たちのお金が必要だ!』ということしか言われなかった」と述べている。

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1976年9月18日、韓国の伝道者である文鮮明牧師と統一教会が主催する「ゴッド・ブレス・アメリカ・フェスティバル」のためにワシントン記念塔の敷地に集まる群衆。

家族間の内紛で金庫の中の資金が目減りする中、統一教会は献金に重点を置いている。1998年、文鮮明は文顕進(プレストン、Hyun Jin Moon)に愛情を注いだ。プレストンは現在生き残っている彼の長男であり、元オリンピック馬術選手で、世界平和統一家庭連合(FFWPUI)の副会長である。2006年には、教会の資産を管理するためにワシントン D.C. に設立された非営利団体である国際統一教会 (Unification Church International UCI) の会長にも指名された。後継者としてのプレストンの将来は確実視されていた。

しかし、2008年、文顕進は両親に統一教会の方向性を批判する書簡を送った。これに応じて、文鮮明は文顕進(プレストン)に代わって、文亨進(ショーン・ムーン)をFFWPUIの副会長に任命した。同年、文鮮明の三女文仁進(タチアナ、In Jin Moon)がアメリカ統一教会総会長に任命された。文顕進は主流の組織から外れ、代わりに「平和構築への革新的で価値観に基づくアプローチ(an innovative, values-based approach to peacebuilding)」を促進するという明言された使命を掲げ、世俗的な非営利団体であるグローバル平和財団(Global Peace Foundation)を設立した。しかし、彼は個人的に厳選された理事会のおかげでUCI会長に留まり、2011年には関連のないスイスの財団に約5億ドルの資産を寄付したとして母親から訴訟を起こされた。この訴訟はアメリカの法廷で続けられており、9月26日にリークされたダンクレー牧師のズーム会議では、現在の「危機(crisis)」の1つとして挙げられていた。ダンクレーは、「これは家族の問題なので、私たちは時には態度を静観していたが、これ以上は沈黙を守っていられない」と述べた。

2012年の文鮮明の死後、権力闘争はエスカレートした。三女文仁進(タチアナ)は、不倫関係で子供を産んだことが明らかになり、母親韓鶴子から辞任を強要された(中傷者は韓鶴子がスキャンダルをリークしたと非難している)。翌年、韓鶴子はまた、ペンシルヴァニア州の田舎に世界平和統一サンクチュアリ教会[World Peace and Unification Sanctuary Church](ロッド・オブ・アイアン・ミニストリーズ[Rod of Iron Ministries]として知られる)を設立した文亨進(ショーン)の追放にも成功した。現在、サンクチュアリ教会で、文亨進(ショーン)は母親を「バビロンの売春婦(whore of Babylon)」と非難している。文顕進(プレストン)と韓鶴子は、タイム誌からの複数回のインタヴュー要請を断っている。しかし、文亨進(ショーン)は喜んでZoom通話に応じた。「父(文鮮明)は、後継者が誰であるかを明確にするためだけに、韓国で2回、アメリカで1回、計3回も私に王冠をかぶせた」と文亨進(ショーン)は憤慨する。

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2018年4月26日、ペンシルヴァニア州グリーリーのカー・アベニューにあるカー・アームズ社のトミー・ガン倉庫で撮影のためにポーズを取るカー・アームズ社のオーナー文國進(ジャスティン・ムーン、Justin Moon)。

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2018年4月26日、ペンシルヴァニア州マタモラスにある自宅で、金色のAR-15「鉄の棒」を持ってポーズを取る文亨進(ショーン)牧師。

韓鶴子の権力強化(consolidation of power)は友情、結婚、家族を引き裂く分裂を生み出した。信者のほとんどは、韓鶴子が率いる主流の統一教会に留まったが、文顕進(プレストンに従う者もいたし、文亨進(ショーン)の分派に加わった者もいた。文亨進(ショーン)はカール・アームズと呼ばれる小型武器会社の創始者であるもう一人の兄弟文國進(ジャスティン)と同盟を結んだ。2016年に開業したカール・アームズ社の、トミー・ガン倉庫ショールームでの開業式の主賓はエリック・トランプだった。文國進(ジャスティン)はこのイヴェントを利用して、出席者たちに「ヒラリー・クリントンは決して米大統領になるべきではないことに全員が同意できることを願っている」と語り、盛大な拍手を浴びた。

銃は、合衆国憲法修正第2条を神の祝福にまで高める、世界平和統一サンクチュアリ教会(ロッド・オブ・アイアン・ミニストリーズ)において決定的な役割を果たしている。老若男女の信者たちが礼拝中に銃器(通常はAR-15)を握りしめる一方、文亨進(ショーン)は弾丸の冠をかぶるようになった。彼は、父親(文鮮明)が1960年代から韓国の武器製造に投資していたと指摘する。それでも、子供たちに「同性愛の政治的課題(the homosexual political agenda)」を教え込む公立学校を非難する文亨進(ショーン)による、良く準備された派手な内容の説教は、南部貧困法律センターのヘイトウォッチから、ヘイトスピーチ指定を受けた。文亨進(ショーン)にとって、自由に対する最大の敵は国家であり、2020年の選挙はトランプから盗まれたものだと今でも堅く信じている。文亨進(ショーン)は、「歴史上、地球上で最大の虐殺を行った最も暴虐な勢力は、実際には中央集権的な全体主義政府である」と述べている。

現在、文亨進(ショーン)の分派は、政治的影響力においてその著名な前身団体に匹敵する存在となっている。定期的にフリーダム・フェスティヴァルを開催しており、保守的な共和党員からソーシャルメディア陰謀論者の著名人まで、右翼の講演者が多数集まる。極右過激派グループ「プラウド・ボーイズ(Proud Boys)」がブースを出展した10月7日と8日の最新イヴェントで、文亨進(ショーン)はステージ上で小児性愛者たち(pedophiles)を「木材破砕機(the wood chipper)」に入れることについて歌ったラップを披露した。このイヴェントでは、全性愛(pansexual)のプライド旗の焼却式と、元トランプ高官セブ・ゴルカのスピーチも行われた。これまでには、トランプ大統領顧問のスティーヴ・バノン、元NRA報道官のダナ・ロエシュ、ペンシルヴァニア州上院議員のダグ・マストリアーノが登場した。世界平和統一サンクチュアリ教会(ロッド・オブ・アイアン・ミニストリーズ)は最近、テキサス州ウェイコ近郊の30エーカーの土地と、テネシー州東部の山にある130エーカーの「トレーニングセンター」を購入したが、文亨進(ショーン)によると、そこが将来の本部となるということだ。1月26日、文亨進(ショーン)はトランプタワーのパーティーで、ドナルド・トランプ・ジュニアと元共和党大統領候補のヴィヴェク・ラマスワミと談笑する自分と文國進(ジャスティン)の動画をXに投稿した。

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2023年10月7日、ペンシルベヴァニア州ジーリーで毎年開催されるロッド・オブ・アイアン(鉄の棒)・フェスティバルの文國進(ジャスティン・左)と文亨進(ショーン・右)。このフェスティバルでは銃、トランプ前大統領、憲法修正第2条を祝う。

今日、統一教会の主流派とその分派は、アメリカの右派からの支持を競っている。リークされたダンクリーのズーム画像はまた、「ワシントン・タイムズの仕事を中心としたアメリカ における政治的影響力活動の活発化」を明らかにした。2022年8月12日、マイク・ポンペオ元CIA長官・元国務長官とニュート・ギングリッチ元連邦下院議長は、ソウルで開催された統一教会のフロント組織である万国平和連合(Universal Peace FederationUPF)のイヴェントで、文鮮明の没後10周年を記念して演説を行った。一方、トランプ元大統領はヴィデオメッセージを送り、文鮮明を「真のインスピレーション(true inspiration)」、韓鶴子を「驚くべき素晴らしい女性(amazing and wonderful woman)」と評した。財務記録によると、トランプは2021年から2022年にかけて、このヴィデオメッセージと他の2つのビデオ出演のために約250万ドルを受け取っており、マイク・ペンス前副大統領はUPFのイヴェントで講演するために55万ドルを受け取っていた。5月にも、トランプはUPFのイヴェントにヴィデオメッセージを送った。

ストレイトは、統一教会の指導者たちはこのようなお礼を払って受ける支持を「宣教の神性の証明(as proof of the divinity of mission)」と捻じ曲げて主張し、信者たちからより多くの献金を強要していると述べている。その効果は循環している。つまり、教会が寄付を募れば募るほど、知名度の高い後援者を集めるためにお金を費やすことができるという循環が出来上がっている。

これは日本から直接借用した戦略であり、犯罪も銃器もほとんどない日本で、統一教会のエスタブリッシュメントたちに守られた資金集めが安倍殺害に関与していると日本では言われている。現在、文鮮明一族は、世界で最も銃所有率が高く、一人当たり殺人率が日本の20倍を超えるアメリカで、同様の政治的隠れ蓑(political cover)、富、そして最も重要なことに人材の採用を進めている。ストレイトは次のように疑義を呈している。「力を行使できる人々が自分たちの人生をめちゃくちゃにしたことに子供たちが気づいたら、20年後には何が起こるだろうか? 更に大きな目標を狙った怒りの爆発が再び起こるだろうか?」

文鮮明一族の行く先々には悲劇がつきまとう。彼らの新しいアメリカでの冒険にも悲劇がつきまとうとしても、誰も驚かないだろう。

(貼り付け終わり)

(終わり)
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ビッグテック5社を解体せよ

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める
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 古村治彦です。

 日本の原子力政策は日本政府が独自に、単独で行っているというのは幻想だ。原子力エネルギー利用は、アメリカで、当時の若手議員だった中曽根康弘が習ってきて、日本でスタートさせることになった。2011年に東日本大震災が発生し、福島第一原発で爆発事故が起きた。その際も、首相官邸にはアメリカ政府関係者が詰めていた。日本が何かを行う場合に、アメリカに相談しなければならない。この表現はまだ甘いもので、実際にはアメリカが命令し、日本はそれに従う、ちょっとした意見具申ができるというのが実態だ。第二次世界大戦後、アメリカの世界支配が確立したが、日本はアメリカにとっての「優等生的属国」「モデル属国」である。そうやって70年以上が過ぎた。属国根性は代を継いで日本国民の中に根を下ろしている。

 事故が起きた福島第一原発の原子炉を冷却するために、膨大な量の水が必要である。原子力燃料に直接触れて、直接冷却する。燃料に触れた水をそのまま川に流したり、海に流したり、地面に流したりできない。それは様々な核物質が入っており、汚染してしまうからだ。そのために、ALPS処理を施して、薄めて海に放出するということを日本政府は決定した。冷却に使った水が大量に保存されて、それが大きな負担になっているからだ。

 薄められた水の海洋放出を受けて、韓国や中国では反対の動きが起きた。日本産の海産物の買い控えということが起きている。韓国政府は冷静な対応、中国政府は批判を行っているが、過剰な反応というところまでは至っていない。
 処理水(汚染水)の海洋放出を日本政府に命じたのはアメリカだ。中国が嫌がることは進んでやるというのが今のアメリカだ。日本の福島第一原発の汚染水の放出は、日本政府がそこまで強硬に進める必要がないものだったし、他にも方法があったと考えられる。近隣のアジア諸国との関係を考えても、海洋放出はあまり上策ではなかった。それでも、アメリカに命令されればそれに従うしかない。

 日本の国益にならない政策を近隣諸国に十分な説明もせずに行ったことは外交の失敗である。しかし、日本政府だけを責めることはできない。日本政府に外交において自主的な判断や決定を行うことはできない。アメリカの意向にあくまで従うしかできない。それがもう80年近く続き、属国根性がもう「習い性になっている」。親子どころか、三代、四代にわたって属国を続けてしまった日本。世界の大きな構造転換の時期に直面し、アメリカと一緒に没落していくしかできないのだろうかと思えば、何とも悲しくなってくる。

(貼り付けはじめ)

●「東大准教授、処理水の風評被害500億円補正予算「ナショナリズムに話をスライド」中国の反応は「外交の失敗」」

9/17() 13:51配信 デイリースポーツ

https://news.yahoo.co.jp/articles/ddd3f52ad805f4d04edf390160ced9f37e92edfe

 拓殖大学の富坂聰教授が17日、テレビ朝日系「ビートたけしのTVタックル」に出演し、福島第1原発の処理水の海洋放出について中国のスタンスを解説した。

 処理水に含まれるトリチウムは中国の原発が排出するものよりも少ないというデータが示されている。MCのビートたけしが一般的な中国人は自国の原発については「分かってないの?」と質問。東国原英夫が「分かってないでしょうね」と語ったが、富坂氏は「分かってますよ。上の方のいろんなことを理解してる人たちとか、都会の人とかそういう人たちは知ってるけど、いいかげんに騒いでる人も多い」と知識のある人もいると反論した。

 「上の方の人」の見解は「冷却水と今回の処理水は違うものだ」と解説。中国では「冷却水はゆで卵をゆでた水、処理水は途中で卵がはじけた水を」と説明されているとした。

 東京電力は処理水の放射性物質の含有量などのデータを公表しているが、富坂氏は「東電に対する信用がないわけですよ」とした。元衆院議員の宮崎謙介氏は東電は中国にも何度も説明しているとした上で、ALPSで放射性物質の多くは取り除かれているとした。富坂氏は「ALPSで本当に取りきれているのかという証明を中国の専門家を入れてやればいい」と返した。

 東京大学の斎藤幸平准教授は「中国とかが反対するっていうことを日本政府も分かってたわけですよね。それを説得できないまま流しちゃってるっていうのが外交の失敗」と科学ではなく外交の問題だと分析。富坂氏も「仰るとおり」と同意した。

 斎藤氏は国が漁業者支援に500億円の補正予算を付ける方針であることに「わたしたちの税金なわけであって、最終的には『食べて応援しよう』みたいな、外交のツケをナショナリズムで話をスライドさせて」と指摘。富坂氏は「本当に仰るとおり」と再度同意した。

 さらに東電の説明についても「放出するという前提でやられたら、そういう場所に行って『話を聞いたからあなたOKね』って言われても困るから『行きたくない』って言ったんですよね」と解説。「ALPSで本当に取りきれているのかという証明を中国の専門家を入れてやる」には中国側のハードルがあることも語った。

(貼り付け終わり)

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