古村治彦(ふるむらはるひこ)の政治情報紹介・分析ブログ

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タグ:高関税

 第二次ドナルド・トランプ政権の肝いり政策である高関税に対して、米連邦最高裁判所が差し止め判決を出した。9名の最高裁判事のうち、判決に賛成が6名、反対が3名となった。共和党政権時に指名された保守派の判事が多い構成で、差し止め判決が出たことは衝撃となった。トランプ大統領は判事たちを口汚く非難した。
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 高関税政策は保護貿易政策であり、国内の産業を守り、育てるためのものだ。たとえば、自国内で自動車産業を育成したいということであれば、外国から入ってくる自動車(輸入車)に高関税を掛け、国内では高価格となるようにし、自国の自動車産業が製造する自動車が自国内で多く購入され、利益が出て、それが設備投資や研究開発に回るようにするということである。アメリカは、第二次世界大戦直後において、世界を凌駕する製造業の国であった。しかし、今は見る影もない。トランプ大統領は造船業や自動車産業、更に鉄鋼、そして、エネルギー産業を復活させるということで高関税政策を実施した。高関税の値上げ分を負担するのは消費者である。価格が上昇した輸入品を買わなくなることで、貿易赤字を減らすという目論見もあった。さらに、ドル安誘導にもなるということであった。

しかし、このような政策は1年くらいでやっても効果はない。製造業の設備投資だけでも数年の計画になる。保護貿易は長期間の見通しと計画が必要である。実は、第一次トランプ政権の後の、民主党のジョー・バイデン政権も保護貿易政策であった。第二次トランプ政権ほど激しい政策ではなかったが、保護貿易路線であった。それが、今回、最高裁判所の差し止め判決が出てしまった。

トランプ政権は一時的に、150日間、世界的に15%の関税を課すことになった。日本は交渉して既に15%になっていたので関税の引き下げの恩恵を受けない。加えて、80兆円規模の投資ということになると、実質的にはマイナスである。ここで恩恵を受けるのは、アメリカが貿易赤字を抱えるとして、高い税率を課されていた国々である。中国やブラジルは15%への引き下げで恩恵を受ける。トランプ政権はこの差し止め判決で打撃を受ける。中国やインド、ブラジルからの輸入品が安くなるというメリットがある。ドル安傾向のために効果は薄れるだろうが、それでも大きい。
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 トランプ政権は今年11月の中間選挙での共和党の連邦議会過半数維持を目指している。しかし、これまでのところ、経済政策などで支持が高まっていない。そうであれば、国内の不満を逸らすために、外国の脅威を喧伝し、外国への攻撃を企図することは可能性として高い。具体的には、イランへの攻撃ということも考えられるが、イランの実力はヴェネズエラ以上であり、アメリカ軍の制服組の最高機関である統合参謀本部は、イラク攻撃はリスクが高いという報告書をトランプ大統領に提出し、一蹴されたという報道も出ている。ウクライナ戦争停戦の仲介も進まない状況で、外交や軍事に支持率上昇のきっかけを見出すのも難しい。そうなると、今回の最高裁判決はトランプ政権にとって大きな打撃ということになる。

(貼り付けはじめ)

ドナルド・トランプ大統領の貿易戦争は次はどうなるか(What’s Next for Trump’s Trade War

-米連邦最高裁の判決は、米大統領の関税戦略と貿易協定を混乱に陥れた。

キース・ジョンソン筆

2026年2月23日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2026/02/23/trump-tariffs-trade-deals-supreme-court/

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左から右へ:ワシントンのホワイトハウスで実施された記者会見に出席した米訟務長官D・ジョン・ザウアー、米大統領ドナルド・トランプ、米商務長官ハワード・ラトニック、米通商代表ジェイミーソン・グリア(2026年2月20日)

ドナルド・トランプ米大統領は、金曜日の最高裁判所の不利な判決、国内の政治的支持の欠如、そしてこれまでのところ貿易政策による経済効果の不在にもかかわらず、週末にかけて関税を二度引き上げた。

米連邦最高裁判所が、トランプ大統領が関税賦課に用いてきた主要な権限を無効とした後、トランプ政権は1974年の法律のかつて用いられたことのない条項を、一時的な措置としてアメリカ企業と消費者への高税率を維持するための措置として利用した。この措置は5カ月後に失効するが、政権は年内に、より強力で包括的な関税権限を整備するための時間を稼ぎたいと考えている。

新たな権限の下での関税の即時再導入は、いくつかの疑問を提起する。今や違法となった関税の脅威の下でトランプ政権と貿易協定を交渉してきた国々は、この事態をどう見ているのだろうか? トランプ政権の関税に関するプランBはそもそも合法なのだろうか? プランCDは合法なのだろうか? これら全ては、連邦議会が貿易政策に対する伝統的な統制を取り戻すきっかけとなるだろうか? なぜ逆効果をもたらす政策がこれほど熱心に推進され、国民の議論がほとんど行われていないのだろうか?

第一に、トランプ政権との貿易協定で妥協・修正(accommodation)に至った国々は、偽りの商品を買ってしまったのではないかと自問している。皮肉なことに、アメリカの同盟諸国(イギリスなど)は1週間前よりも高い輸出障壁に直面する一方で、名目上の経済ライヴァル諸国(中国など)はより低い障壁に直面している。

例えば、ヨーロッパ連合(EU)はアメリカと貿易戦争休戦(a trade truce)について交渉した(まだ批准していない)。この休戦協定では、アメリカのEU製品に対する関税は15%という高水準に据え置かれる一方、アメリカからの輸出に対するEUの関税は引き下げられる。しかし、それは過去の話だ。最近発表されたアメリカの関税率では、EUは実際には交渉時よりも高い関税率に直面する可能性がある。EUは「合意は合意(deal is a deal)」であり、「関税の引き上げはなし(no increases in tariffs)」と主張している。ヨーロッパ議会のベルント・ランゲ通商担当委員長は、関税に関するおとり商法(bait-and-switch)は当初の合意に違反する可能性があると示唆した。

イギリスは、自国の輸出品にわずか10%の関税を課すという甘い協定を結んだと思っていたが、現在では自国の製品に対する障壁がさらに高まっており、トランプ政権との自国の貿易協定の運命がどうなるのか明確になることを切望している。

ヴェトナム、マレーシア、日本、韓国を含むアジア諸国も、懲罰的関税の脅威(the threat of punitive levies)に晒されながら、トランプ政権との合意を急いだが、その関税は後に違法と判明し、今や自らの約束に疑問を呈している。

もう一つの大きな疑問は、トランプ政権が関税維持のために講じた代替措置、すなわち1974年通商法第122条だ。トランプ政権は最高裁判決を受け、直ちに全ての国に10%(後に15%に引き上げ)の関税を課すことを発表した。第122条は、5カ月間最大15%の関税を課すことを可能にしており、その後関税を継続するには議会の承認が必要だ。(政権が新たな大統領令で関税を再び延長できるかどうかは不明だ。)

しかし、真の疑問は、これらの代替関税が合法なのか、それとも先週金曜日に無効とされた関税のように違法なのかということだ。第122条に基づく関税は、国際収支危機への対処を明確に意図している。これは、アメリカがまだ金本位制(the gold standard)だった。1960年代と1970年代に苦闘していた問題だ。その後、アメリカは通貨を自由変動相場制に移行しており、理論的には国際収支危機は発生し得ないため、新たな関税も違法となった。国際通貨基金(IMF)の元チーフエコノミストのジーナ・ゴピナスは、世界最大かつ最も流動性の高い経済が国際収支危機に直面しているとは考えていない。

しかし、誰もが同意している訳ではない。現在外交問題評議会に所属する、尊敬を集める元米財務省高官のブラッド・セッツァーは、アメリカの経常収支状況は1974年の法律で定められた条件を基本的に満たしていると主張した。

また注目すべきは、トランプ政権が最高裁判所への提出書類の中で、第122条に基づく関税は現在の状況には適用できないと主張し、だからこそカーター政権時代の法律を前例のない形で適用し、各国により高い関税を課さざるを得なかったと主張した点である。

新たな関税はほぼ確実に訴訟を呼ぶだろうが、近い将来には問題にはならず、あるいは審理されることさえないだろう。(裁判所が最終的に、広範な新たな関税概念を持つ行政府に敬意を払うならば問題は生じるだろう。)新たな関税は、連邦議会が更新を決定しない限り、7月下旬に失効する。

それまでに、トランプ政権はプランCDを準備したいと考えている。これらには、1974年通商法第301条の更なる活用が含まれる。これは、政権が「差別的(discriminatory)」行為を理由に中国に関税を課す際に繰り返し利用してきた、より明確な貿易救済措置である。第301条関税をめぐる法的疑問は少ないものの、実施には時間がかかる。米通商代表部(USTR)はその件で残業を続けている。

その他の可能性のある措置としては、1962年通商拡大法第232条に基づく「国家安全保障」関税(the “national security” tariffs)の更なる活用が挙げられる。米商務省は既に、木材や大型トラック部品といった分野の国家安全保障を守るために関税を利用する件について、12件の調査を進めている。別の選択肢としては、1930年スムート・ホーレー関税法(そう、あのスムート・ホーレー法だ)の新たな斬新な活用が挙げられ、これは更なる法的争点を招く可能性がある。

法的措置に関しては、直ちに行われる措置として、アメリカ政府が輸入業者から徴収した1300億ドルから1750億ドルの税金の還付が行われる予定だ。これは後に違法と判明した。昨年の法廷闘争中、アメリカ政府は、還付は容易かつ自動的に行われると述べていた。しかし、最高裁判所で敗訴した際には、還付は不可能であり、そうでなければ「企業福祉(corporate welfare 訳者註:政府が特定の企業や産業に対して行う補助金、減税、優遇措置)」に当たると警告した。既に数千社の企業が救済措置を申請している。高額な輸入品に高い代金を支払った消費者たちは、いずれにせよ還付を受けられないが、経験豊富な法律事務所の中には還付を受けられるところもある。

より大きな疑問は、最高裁判所のニール・ゴーサッチ判事が金曜日の判決に賛成する中で提起した疑問であるが、それは、連邦議会がほぼ1世紀を経て、アメリカの貿易・関税政策の立案者であり裁定者としての役割を取り戻すかどうかである。トランプ大統領の第二期目において、これまでのところ、貿易権限を行政府から奪還しようとする臆病で不運な試みはほんのわずかしかなかった。

さらに大きな疑問は、最高裁判所の非難と、トランプ政権が輸入品に課税するための未検証の方法を必死に模索していることが、過去半世紀以上にわたり前例のない繁栄の促進に貢献してきた貿易の流れを阻害することの有用性をめぐる、より広範な政治的議論を巻き起こすかどうかである。

トランプ大統領の関税は、アメリカの貿易赤字削減や製造業の再建という目標を達成していないものの、企業と消費者のコストを上昇させ、世界の他の経済圏に取引相手を見直すよう促すことには成功している。自由貿易への強い政治的支持があることを考えると、最高裁の重大判決と政権の慌ただしい対応は、行き詰まりを招いてきた政策を見直す機会となるかもしれない。

※キース・ジョンソン:『フォーリン・ポリシー』誌スタッフライター(地経学とエネルギー担当)。Blueskyアカウント:@kfj-fp.bsky.socialXアカウント:@KFJ_FP

(貼り付け終わり)

(終わり)

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シリコンヴァレーから世界支配を狙う新・軍産複合体の正体 
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ドナルド・トランプ大統領は、鉄鋼とアルミニウムに対する関税を25%から50%に倍増させる政策を正式に発効した。トランプ大統領が高関税を志向するのは、アメリカの国内産業を保護し、法律的な権限を拡大することが理由だ。具体的には、通商拡大法第232条に基づいて適用される関税が、ほとんど監視を受けずに貿易制限を行うための新たな手段となる可能性がある。
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トランプ大統領は、金属輸入税の引き上げが国家安全保障を守るために必要だと述べている。また、外国が米国市場に流入させている低価格の過剰鋼材に対抗し、アメリカの製鉄所を再稼働させる効果を期待している。しかし、下記論稿によると、専門家たちは、トランプ大統領の主張は誤りで、アメリカの鉄鋼輸入は過去1年で減少していることを指摘している。実際、アメリカの製鉄所の稼働率は近年よりも高くなっている。日本製鉄のUSスティール買収の判断もそうしたことが影響しているのだろうと考えられる。

トランプ関税によって、鉄鋼業が復活するのかということだが、これは難しいだろう。既に中国やインドの後塵を拝している状況だ。ドル安に誘導して(ドルの価値を下げて)、人件費の対外競争力を下げる必要があるが、それは、労働者たちの生活を改善することにはつながらない。輸入品が高くなることで、アメリカ国内の物価は高くなる。物価上昇率が給料の上昇率を上回れば、生活は苦しくなる。現在のアメリカの状況はまさにこれだ。トランプ大統領としては、石油や天然ガスのエネルギー増産で物価上昇を抑えることを考えているようだが、そう簡単にはいかない。
 直近では、日本とアメリカの関税をめぐる交渉では赤澤大臣が何度もワシントンと東京の間を往復して交渉を行っているが、妥結には至っていない。アメリカはこれから15カ国に対して関税通知書を送付するとしている。日本が送付対象に入っているかは分からないが、ギリギリのところに来ている。トランプとしては、高関税を受け入れるか、受け入れないならアメリカの国益に資する内容の譲歩を引き出すという強気の交渉態度であろうが、日本としては日本の国益のために交渉を続けている。これが故安倍晋三政権時代だったら、このような粘り腰は発揮されず、アメリカの国益のために、さっさと妥協がなされていただろう。石破政権は参院選でも苦しい状況にあり、選挙後は政局になることが考えられるが、粘り腰で、世界構造の大転換に臨んでもらいたい。そして、私たちは再び、対米隷従の安部は路線に戻ってはならない。それは大いなる退化である。
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ドナルド・トランプ大統領の関税は鉄鋼産業を改善させない(Trump’s Tariffs Won’t Fix the Steel Industry

-鉄鋼とアルミニウムの価格が上昇しても、国内の製鉄所に大きな利益をもたらすことはなく、むしろ製鉄所に打撃を与えるだろう。

キース・ジョンソン筆

2025年6月5日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2025/06/05/trump-trade-tariffs-steel-aluminum/

ドナルド・トランプ米大統領は水曜日、鉄鋼とアルミニウムへの関税(tariff)を25%から50%に倍増する措置を正式に発効させた。しかし専門家たちは、この関税はトランプ大統領のアメリカ産業再建計画を阻害し、海外のパートナーとの進行中の貿易交渉を複雑化し、何十年にもわたって世界の鉄鋼業界を悩ませてきた構造的な問題への対策には全く役立たないと指摘している。

トランプ大統領の視点から見ると、この関税には国内産業を優遇するだけでなく、先週裁判所が無効とした関税権限よりも、より防御力の高い法的権限を用いて実施できるという利点がある。これは、水曜日に鉄鋼とアルミニウムに適用された通商拡大法第232条の権限など、実績のある貿易権限への転換の一環となる可能性が高い。これらの権限は、ホワイトハウスに、ほとんど監視や法的手段を必要とせずに貿易制限を課す広範な裁量を与えている。

トランプ大統領は大統領令の中で、金属およびそれらから作られる全ての製品に対する輸入税の倍増は「こうした輸入品が米国の国家安全保障を損なう恐れがないようにするため(so that such imports will not threaten to impair the national security)」必要だと述べた。さらに、「関税の引き上げは、低価格で余剰となった鉄鋼やアルミニウムを米国市場に流出させ続ける諸外国に、より効果的に対抗し、最終的にアメリカの製鉄所の操業再開を促すだろう(The increased tariffs will more effectively counter foreign countries that continue to offload low-priced, excess steel and aluminum)」と付け加えた。

しかし、トランプ大統領が大幅な関税引き上げの根拠として挙げた2つの論拠はいずれも誤りだ。アメリカの鉄鋼輸入量は、トランプ大統領による最初の関税導入後も含め、過去1年間で減少しており、急増している訳ではない。また、アメリカの製鉄所(steel mills)の稼働率は近年よりも高い。

ケイトー研究所の国際貿易弁護士スコット・リンシカムは「トランプ大統領の主張は的外れだが、232条に基づく貿易措置によって、そうする必要がないことが分かった」と述べた。

トランプ大統領は、歴代大統領の多くと同様に、鉄鋼産業を特別に保護主義的に捉えている。これは、サーヴィスとデータの世界ではますます重要性を失っている、煙突駆動型経済(smokestack-powered economy)への数十年にわたるノスタルジーを反映している面もあるが、トランプ大統領の最初の任期が、鉄鋼産業の弁護士、特に通商代表部(U.S. trade representativeUSTR)代表のロバート・ライトハイザーに翻弄されたことも一因となっている。

しかし、最新の大統領令で強調したように、トランプ大統領は就任以来、製鉄所から造船所に至るまで、あらゆる経済安全保障問題(matters of economic security)全てを国家安全保障問題(matters of national security)と捉えてきた。だからこそ、カナダ産木材やメキシコ製自動車シートといった深刻な脅威に対する国家安全保障関連の関税調査も行われている。

リンシカムは次のように語っている。「これは、第232条がいかに無法であるかを如実に示している。彼らは何でも国家安全保障上の脅威だと主張し、どんな理由でも正当化することができ、裁判所がその判断に異議を唱える可能性は極めて低い」。

トランプ大統領の鉄鋼関税の皮肉な点は、存在しない問題に対処する一方で、解決策を切実に求めている問題、すなわち中国などの国々、そして間もなくインドでも発生する鉄鋼生産の過剰な供給能力には対処していないことだ。さらに事態を悪化させているのは、トランプ大統領の新たな関税が、今年初めに導入された軽めの関税と同様に、鉄鋼製品全般に加え、半製品および完成品の輸入も対象としているという事実だ。今回の増税は、ヨーロッパや中国を問わず、既にどの競合相手よりも高い鉄鋼価格を支払っている鉄鋼使用企業の価格を引き上げているだけだ。

金属・鉱物コンサルティング会社CRUグループの主任鉄鋼アナリストであるジョシュ・スポーレスは「関税は国内の鉄鋼価格を引き上げるだけだ」と述べた。

トランプ大統領が輸入品を値上げして以来、アメリカの鉄鋼とアルミニウムの価格は高騰の一途をたどっており、桁(大梁)、パイプ、板、釘、アルミ箔など、あらゆる素材を扱う企業の競争力に悪影響を及ぼしている。経済学者たちは、鉄鋼関税が経済全体にどれだけの純雇用喪失をもたらすかを依然として定量化しようとしている。

トランプ大統領が関税で掲げる表向きの目標は、鉄鋼業界を強化し、自動車、造船、その他の旧来型産業におけるアメリカ製造業の競争力を高めることだが、実際はその逆である。最初の痛みはおそらく石油産業でも感じられるだろう。石油産業もトランプ大統領が好む産業の一つだが、石油産業は既に貿易戦争による原油価格暴落の痛手を被っており、石油掘削は危険な賭けとなっている。

スポーレスは、アメリカの石油・天然ガス産業に必要なパイプ、チューブ、ケーシングの約半分は輸入に頼っていると指摘した。いわゆる「産油国産品(oil country goods)」は、アメリカの鉄鋼輸入量の中で常に最大のカテゴリーの1つだ。関税の有無に関わらず、これらの製品を国内生産するための魔法のスイッチは存在しない。鉄鋼は必需品であり、価格が大幅に上昇しただけだ。あるいは、スポ―レスの言葉を借りれば、「需要が価格とは無関係に発生するという非弾力性に大きく起因していると言える」だろう。

造船や自動車製造についても同様だ。これらはトランプ大統領が優先課題としているもう1つの分野であり、適切に実施すれば大量の鉄鋼を消費する。造船業の問題は、商船であれアメリカ海軍艦船であれ、長期契約が不足していることだ。関税率を気まぐれに引き上げたところで、アメリカの製鉄所が超大型タンカーに使われるような鉄鋼を生産できるとは限らない。

スポーレスは「関税だけで、そのようなプレートを生産するための投資が促進されるとは思えない」と語った。

自動車も同様だ。自動車に使用される鋼材は特殊で、徹底的な品質テストを受けている。数十億ドル規模の投資が関税決定に左右される可能性は低く、関税決定はツイート1つで覆される可能性があり、実際に覆されたこともある。

スポ―レスは、「関税は鋼材価格を上昇させるだけだ。自動車品質の製鉄所を稼働させるには5年ほどかかる」と述べた。

一方、トランプ大統領の最新の貿易攻撃は、数十、数百もの潜在的な貿易相手国との協議の最中に放たれた。これらの国は皆、恐怖に陥り、そのほとんどが調整を進めている。今年、様々な理由で多くの関税を課せられたメキシコとカナダは、両国ともこの関税のエスカレーションの理由を解明しようと努めている。メキシコは報復措置をちらつかせている一方、カナダの新政権は慎重ながらも対応の準備を整えている。

将来の貿易交渉の予備的枠組みに合意したイギリスは、今回の鉄鋼関税が二国間休戦に支障をきたすのではないかと懸念している。特に、イギリスの製鉄所の多くが実際にはインド資本であることから、その懸念は高まっている。ヨーロッパ連合(EU)は最初の鉄鋼関税発動後、報復措置を控えており、交渉の進展に依然として期待を寄せているものの、念のため数十億ドル規模のバッテリー関税対策を再び検討している。

ヨーロッパの交渉担当者、そして鉄鋼業界の専門家全般を悩ませているのは、業界の問題の大部分が中国の過剰生産能力にあるにもかかわらず、トランプ大統領の最新の措置では、それに全く対処されていないことだ。中国は年間10億トン以上の鉄鋼を生産しており、これは世界全体の半分以上に相当する。依然として主要生産国であるアメリカの生産量は約8000万トンである。

近年、アメリカとヨーロッパは、中国の影響力と環境への影響を制限するような鉄鋼生産と貿易に関する妥協点を模索してきた。しかし、ヨーロッパの貿易専門家たちやアメリカの環境保護主義者たちにとって残念なことに、それは壁にさらにレンガを追加することよりも後回しにされている。

※キース・ジョンソン:『フォーリン・ポリシー』誌地経学・エネルギー専門記者。Blueskyアカウント:@kfj-fp.bsky.socialXアカウント:@KFJ_FP

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(終わり)

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

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 古村治彦です。
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 中国の若いエリート層(大学生たち)にとって重要なことは、経済の安定だ。若者たちにとって、経済状況の好転は台湾統一よりも重要なことだ。国のことも大事だが、自分の身の回りの生活の方が切実であり、より重要だ。若者たちはよりナショナリスティックではなくなっているということだ。これは、私たちにとっても理解できることだ。

 しかし、アメリカのドナルド・トランプ政権の高関税政策、特に中国を狙い撃ちにした馬鹿げた超高関税政策は、中国に打撃を与えると同時に、中国の若者たちのアメリカへの反感を高め、台湾統一への支持、武力による統一への支持を高める可能性がある。アメリカが反中的な政策を続けるならば、中国国内のナショナリズムを刺激し、国論を硬化させる可能性が高い。これは、東アジアの安全保障環境にとっての大きなリスクとなる。アメリカ国内の対中強硬派であっても、米中戦争を望んでいない。せいぜい、日本が中国に嚙みつくのを見ているという程度のことだ。しかし、不安定な状況はどのような突発的な出来事で、一気に深刻化するかは分からない。米中関係は、トムとジェリーではないが、「仲良く喧嘩をする」ものでなければ、東アジア、アジア、世界全体が大いに迷惑をこうむることになる。
 中国は国内をきちんと管理できるだろうが、アメリカはドナルド・トランプの絶妙なバランス感覚頼りという面がある。トランプ政権内の強硬派が過激な政策を実行に移し、トランプがそれを一時的に止めたり、引っ込めたりということをしている。米中関係は対立しているが、深刻さはない。対話がきちんとなされ、管理された対立という形になることが大事だ。

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ドナルド・トランプ大統領の貿易戦争は中国の若いエリートたちのナショナリズムを高める可能性がある(Trump’s Trade War May Make Elite Young Chinese More Nationalistic

-学生たちは驚くほど台湾に対して無関心だ。

マヤ・ガズダー筆

2025年5月21日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2025/05/21/trump-tariffs-china-trade-war-nationalism-polling/

2025年3月23日に開催された中国開発フォーラムにおいて、李強首相は、個人消費(consumer spending)、技術革新(innovation)、そして外国投資(foreign investment)を重視し、国家経済回復に向けた野心的なロードマップを示した。そのメッセージは明確だった。中国の優先事項は地政学的紛争(geopolitical conflict)ではなく、経済の安定(economic stability)である。多くの若い中国エリートたちにとって、李首相の焦点は、彼ら自身の変化する懸念を反映している。

中国は、新型コロナウイルス感染症後の経済再編が進む中で、成長の鈍化(slowing growth)と若年層の失業率上昇(rising youth unemployment)に苦慮しているが、台湾との統一の緊急性は若いエリートたちの間で薄れつつあるようだ。北京の中国人大学生を対象に行った私の研究によると、党寄り(pro-party)、つまり「赤(red)」の見解から、ますますナショナリスティックな(increasingly nationalistic)「リトル・ピンク(little pink)」になっていると一般的に考えられている若いエリートたちは、実際にはより現実的で内向きになり、戦争や紛争に懐疑的になっていることが示唆されている。これは、私が北京と厦門でインタヴューした労働者階級の中年中国人タクシー運転手たちが唱えるナショナリスティックな見解とは対照的である。

しかしながら、ドナルド・トランプ大統領の絶えず変化する関税政策といったアメリカの新たな政策は、アメリカに対する反感を増大させ、逆説的に防衛的対応としての統一への支持を高める可能性がある。

清華大学の学生たちの意見は習近平国家主席の行動を予見するものではないものの、中国共産党(the Chinese Communist PartyCCP)は、特に過去10年間の経済成長鈍化の中で「愛国教育(patriotic education)」を重視してきたことから、若者の世論醸成に関心を示してきた。

そして、将来の中国共産党指導者となる可能性のあるエリート大学生たち(習近平主席は清華大学の卒業生)と、彼らの態度に影響を与える要因は、アメリカの政策にとって重要な意味を持つ。

2023年春、私はナショナリズムが中国の若者の統一支持を牽引しているという仮説を検証しようと試みた際、北京のエリート大学である清華大学と北京大学の学生たちは、国家の言説に見られる、強まっている強硬姿勢(the growing hawkishness)、つまり、台湾に対する武力行使への意欲の高まりを反映するだろうと予想した。

しかし、私の調査結果は驚くべき現実を明らかにした。学生たちは台湾についてほぼ議論していなかった。

ある学生は、「台湾?そんな話題は重要ではないと思う。地理的にも精神的にも、遠く感じる」と述べた。

こうした考え方は、学生たちに配布された匿名アンケートの結果にも反映されており、140件以上の回答があった。中国が直面している8つの「国内」問題を、緊急性の高いものから低いものの順にランク付けするよう求められたところ、台湾は気候変動(climate change)に次いで最下位から2番目にランクされた。

その他の課題は、緊急性の高いものから低いものの順に、コロナ後の経済回復(post-COVID economic recovery)、社会経済的不平等(socioeconomic inequality)、社会の安定(social stability)、外国直接投資の誘致(attracting foreign direct investment)、汚職対策(combating corruption)、教育の改善(improving education)であった。

一方、私がインタヴューしたタクシー運転手たちは、台湾を国家としての重要性という観点から語り、歴史的な恨み(historical grievances)をしばしば口にした。ある北京の運転手は「私たちが台湾を失えば、私たちは面目を失う(If we lose Taiwan, we lose face)」と言った。しかし、こうした人々でさえ、経済的な懸念は大きな問題となっていた。多くの運転手は、コロナ禍がなかった時代と比べて収入が半減したと語り、学生よりも武力による統一を支持する傾向は強かったものの、最大の懸念事項ではなかった。

学生とタクシー運転手(配車アプリで見つけたのは、主に中年男性のタクシー運転手)の態度の違いは、より広範な世代交代を反映している可能性もある。多くの学生は、両親の世代と比べて台湾に対して「それほどタカ派的ではない(less hawkish)」と感じていると述べた。

中国の若者の意識に関する最近の他の調査も、この反紛争的で台湾に対する無関心な感情を強めており、中国の若者がますますナショナリスティックになっているという一般的な見方とは矛盾している。

ある学生は「私たちの両親は祖先を辿れば台湾とのつながりがあり、中国本土と台湾の交流が盛んだった時代を覚えている。私たちにはそれがない」と言った。他の学生は、中国が計画経済(a planned economy)から脱却したことを例に挙げ、自分たちの世代は経済的に実利的で、イデオロギー的なナショナリズムにあまり動かされていないと主張した。

この見解は人気があるものの、一部の学生は、ハト派的な見解のために、同級生の中では依然として、自分のことを異端者(outliers)だと感じていると認めた。

多くの学生が、キャンパス内やオンラインフォーラムにおいて「政治的に正しくない(politically incorrect)」発言が批判を招く政治環境について語った。ある学生は、「台湾は友人間で話題にされることがほとんどないので、他の人がどう感じているのか、実のところ私には分からない。私たちが目にするのは、オンライン上の投稿や一般のコメントだけだ。最近は武力行使に賛成だと発言する方が政治的に正しいので、戦争に慎重な人が自分の意見を言うことはあまりない」と述べた。

中国開発フォーラムでの李首相の演説は、国内の不安の高まりと、個人消費の拡大の必要性に対する政府の認識を反映していた。世界的な不安定化の高まりにもかかわらず、持続可能な国内経済成長の必要性を強調し、私がインタヴューで繰り返し耳にした「経済難によって若い中国人はより内向きになっている(Economic hardship has made young Chinese more inward-focused)」という認識を強めた。

ある学生は「ゼロコロナ政策はまるで戦時中の政策のようだった。戦争は望んでいないと気づいた」と語った。別の学生は、パンデミック中に経済的困難を直接経験したことで、台湾のような政治的な抽象概念はそれほど重要ではなくなったと説明した。その学生は「うまく暮らしていれば、大局的な見方がしやすくなる」と言った。

ある学生は、統一を「中国にとっての合併と買収(merger and acquisition for China)」と捉え、「統一のコストとメリットを比較検討すると、合理性ではなく政治がこれを推進していることは明らかです。統一に明確なメリットはあまりない」と説明した。

中国の若者の失業率は記録的な高水準で推移しており、都市部の若い中国人(学生を除く統計)の約17%が就職に苦労している。名門大学を卒業したばかりの学生でさえ幻滅しており、多くの人が「横たわる(lying flat)」あるいは「腐らせる(letting it rot)」という、社会的な圧力への受動的な抵抗を表す言葉に捉えられている。このような状況では、台湾をめぐる仮想的な戦争は賢明ではなく、無意味であるように思われる。

中国国内の社会不和(social discord)もこの見方に影響を与えている可能性がある。複数の学生は、2022年11月に清華大学と北京大学が中国で行われた白書抗議運動(China’s White Paper Protests)に参加したことを、中国社会が不安定であり、統一を成功させる準備ができていない証拠だと指摘した。

しかし、統一がアメリカの侵略に対する防衛行動と捉えられると、こうした無関心な感情は消え去った。例えば、台湾が独立を宣言するという仮定のシナリオでは、学生が武力統一を支持する可能性は2倍以上になった。これは、学生が台湾の独立宣言はアメリカの支援に依存していると認識していたためだ。

ある学生は、「台湾海峡の緊張の最大の原因はアメリカであり、台湾ではない。もしアメリカが関与していなければ、統一は時間をかけて平和的に実現するだろう」と述べた。

多くの学生は、台湾を、中国の台頭を抑え込もうとするアメリカの「切り札(card to be played)」の1つに過ぎないと見ていた。香港、チベット、関税と何ら変わらないと彼らは考えていた。

こうした学生の意見は、タクシー運転手たちのよりナショナリスティックな感情を反映するものだった。ある北京の運転手は、1800年代にフランス軍とイギリス軍によって破壊された圓明園を指さしながら、迂回して通り過ぎた。この運転手は「私たち中国人は、あまりにも長い間、外国勢力にいじめられてきた。アメリカのような別の大国が玄関のドアをノックしてきたら、ノックし返さなければならない」と述べた。

中国政府が経済回復を強調していることは、若いエリートたちの考え方と合致しているかもしれない。しかし、今日の中国経済の課題は、2023年の課題とは異なる。その課題とは、主にトランプ大統領による関税と輸出規制の脅威(the threat of tariffs and export controls by Trump)だ。

トランプ大統領が最近、対中関税を90日間引き下げたことは一時的な安堵をもたらしたが、今後の交渉には不確実性がつきまとう。さらに、トランプ政権は依然として、テクノロジーや製造業を含む一部の中国製品への大幅な関税を維持している。これらの関税は、新型コロナウイルス感染症からの回復の鈍化と相まって、消費者信頼感と若年層の失業率をさらに圧迫する可能性がある。

中国の政策担当者たちが引き続き経済成長と国内の安定を優先するならば、中国政府が積極的に統一を推進する可能性は低下するかもしれない。しかし、アメリカの関税はナショナリズムを刺激し、台湾への潜在的な侵略を含む国家主導の行動への支持を高める可能性があります。

今日の若い中国人たちは、台湾との統一を優先事項とは考えていないかもしれない。中国政府が再び経済回復に重点を移すにつれ、若い世代の考え方に同調するようになるかもしれない。しかし、関税、輸出規制、米中関係の緊張といった外的圧力によって、こうした状況は変化する可能性がある。

中国国民がトランプ大統領の対中関税を、アメリカによる台湾独立支援と関連づけて捉え始めれば、アメリカは意図せずして統一への支持を固めてしまうリスクを負う。その中には、本来であれば統一に反対するであろう、理性的で戦争を警戒する若いエリートたちも含まれる。こうした支持は、中国指導部に台湾の主権をさらに圧迫するための国内での隠れ蓑を与えることになるだろうし、あるいは北京が「国旗を掲げて」行動(a rally-around-the-flag moment)を起こすよう誘惑することになるだろう。

米中経済関係は、今後4年間、ますます不安定になる可能性が高い。緊張(そして関税)が高まるにつれ、アメリカ政府当局者にとって、台湾海峡紛争と台湾支援に関して強硬な姿勢を示す誘惑に駆られるだろう。しかし、彼らは貿易に関する言論と台湾に関する言論を区別し、彼らが恐れるまさにその紛争を招かないように注意しなければならない。

緊張が高まる時代において、「若い中国人は台湾のことを気にかけているだろうか?(Do young Chinese care about Taiwan?)」という問いはもはや通用しない。むしろ、「トランプ大統領の関税など、どのようなアメリカの政策が彼らの無関心な考え方を変えることができるだろうか?(What U.S. policy—such as Trump’s tariffs—could change their apathetic mindsets?)」という問いが重要だ。

※マヤ・ガズダー:ワシントンの米国在台湾協会会長特別補佐、台北の米国在台湾協会政治担当を務めた。シュワルツマン奨学金を受けて清華大学で国際問題に関して複数の修士号を取得。Xアカウント:@mayaguzdar

(貼り付け終わり)

(終わり)

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『トランプの電撃作戦』
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世界覇権国 交代劇の真相 インテリジェンス、宗教、政治学で読む

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める

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 古村治彦です。

※2025年3月25日に最新刊『トランプの電撃作戦』(秀和システム)が発売になりました。是非手に取ってお読みください。よろしくお願いいたします。
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『トランプの電撃作戦』←青い部分をクリックするとアマゾンのページに行きます。
 

第2次ドナルド・トランプ政権の発足100日のハネムーン期間は大きな動きが続いて、アメリカ国内、そして、諸外国を驚かせ続けた。大きな出来事としては、イーロン・マスク率いる政府効率化省(DOGE)による、連邦政府諸機関への立ち入りや調査が進められて、米国国際開発庁(USAID)という日本では聞き慣れない(私はデビュー作『アメリカ政治の秘密』で取り上げている)政府機関の閉鎖などが決められた。アメリカ政府の抱える財政赤字(fiscal deficit)の削減のために、連邦政府の予算に切り込んでおり、連邦政府職員の解雇も進められる。

 今年4月初旬には、世界各国からの輸入に一律10%の関税、更におよそ60カ国には追加の「相互」関税が課されるという、高関税政策が発表された。中国には145%という関税がかけられるとされたが(日本の24%が低く見えてしまうほど)、その後、スマートフォンや半導体は例外とされたり、大幅に引き下げられるということが発表されたりし、混乱を招いた。これは、株式市場の下落と共に、米国債の金利上昇が理由として考えられる。一説には中国が保有する米国債を売却し、「抑止力」を行使したとも言われている。

トランプ政権は、貿易赤字の削減を目指している。トランプ政権は1980年代のロナルド・レーガン政権の進めた「双子の赤字(twin deficits)の削減」政策を踏襲していると言えるだろう。レーガン政権時代との違いは、貿易赤字の相手国が、アメリカの属国で言いなりの日本ではなく、強力な対抗措置を取る力を持つ中国であるという点だ。

 こうした大きな流れをけん引しているトランプ政権内の重要人物たちをご紹介する。今回のトランプ関税(トランプ高関税、解放記念日関税とも呼ばれる)をめぐる動きでは、スコット・ベセント財務長官が主導権を握り、トランプ大統領に妥協を迫ったということになっている。それを支持したのがイーロン・マスクだとも言われている。そして、対中強硬派が敗北したと言われている。対中強硬派は今回のトランプ関税を利用して、中国に大規模な貿易戦争を仕掛けようとしたが、中国の返り討ちに遭った形になっている。そして、アメリカの信頼性を損なうということまで引き起こした。トランプ政権は妥協、交代を迫られることになった。総体的に中国の信頼性が高まるということになった。アメリカの製造業が復活することはなく、これからも厳しい状態は続く。トランプ大統領は厳しい時間を過ごすことになる。それでも、支持してくれた白人労働者たちのために力を尽くすだろう。そして、失敗し、アメリカは衰退の道を進んでいく。

(貼り付けはじめ)

トランプ大統領の外交政策のドライヴァーたち(そしてその乗客たち)(The Drivers (and Passengers) of Trump’s Foreign Policy

-アメリカ大統領就任後100日間、第2次トランプ政権の中心人物は誰で、脇に追いやられた人物は誰なのか。

FPスタッフ筆

2025年4月25日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2025/04/25/trump-100-days-influential-officials-navarro-bessent-witkoff/

ドナルド・トランプの通常の基準から見ても、米大統領就任後100日間は混沌と混乱を極めており、対立が激化している。特に外交政策においては、ウクライナとガザ地区での戦争終結に向けた迅速な(そして未だ未完了の)合意を推し進め、200人以上の移民をエルサルヴァドルの刑務所に強制送還し、世界の大半の国々(主に中国)に対して貿易戦争(trade war)を開始した。

これまでのところ、政権幹部の交代は最初の任期に比べて比較的少なく、地政学的な優先事項を策定・実行する中心人物として、数人の重要人物が台頭している。1月初旬には影響力のある役割を担うと思われていたものの、事実上脇に追いやられた人物もいる。

このリストには、皆さんが予想するかもしれないが、今回は含めなかった人物が1人いる。イーロン・マスクだ。世界で最も裕福な男は、9桁の選挙キャンペーン献金を糧にトランプ政権内で影響力を持ち、あらゆる場面で存在感を示すようになった。外国首脳との電話会談に同席したり、国防総省や国家安全保障局での高官級会合を開いたり、さらにはインドのナレンドラ・モディ首相と直接会談したりもしている。

しかし、ワシントンの国際関係におけるマスクの影響力はここ数週間で弱まり、非公式の政府効率化省(Department of Government EfficiencyDOGE)や、自身のソーシャルメディア「X」におけるMAGA支持の投稿の絶え間ない流れといった、より国内的な優先事項に取って代わられている。さらに、マスクの「特別政府職員(special government employee)」としての役職は130日の期限が約1カ月後に切れる予定であり、トランプ大統領とトランプ・ワールドは、期限後は彼が留任しない可能性を示唆している。

マスク以外では、マイク・ウォルツ国家安全保障問題担当大統領補佐官にも言及すべきだっただろう。ウォルツのこれまでの影響力の低さは、特に前任者のジェイク・サリヴァンの著名さを考えると注目に値するが、彼をこのリストに含めなかったのは、彼をどちらの陣営にも明確に分類するには時期尚早だと考えたためである。シグナルゲート事件において、残念ながら彼は『アトランティック』誌編集長ジェフリー・ゴールドバーグをチャットに招き入れた閣僚として重要な役割を果たしたが、この論争の火種は今やピート・ヘグセス国防長官にも向けられている。

写真

さて、トランプ大統領が優先事項を遂行する上で信頼を寄せている人物と、そうでない人物について見てみよう。
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■ドライヴァーたち(DRIVERS

(1)ピーター・ナヴァロ(Peter Navarro

トランプ大統領のホワイトハウス貿易製造業担当補佐官であるナヴァロは、トランプ政権の高コストで破滅的な貿易政策を、トランプに次ぐ存在として主導してきた。しかし、今月初め、トランプが世界各国との全面的な貿易戦争の瀬戸際(the precipice of his all-out trade war on the rest of the world)から撤退したことを受け、ナヴァロが明らかに脇に追いやられるまではそうだった。

ナヴァロ(と、彼が創作した別人格のロン・ヴァラ)は第1次トランプ政権にも在籍し、当時も同様のタカ派的な貿易政策についての考えを持っていたものの、スティーヴン・ムニューシン、ゲーリー・コーン、ウィルバー・ロスといった比較的保守的な経済思想家が政権のスタッフを務めていたため、ナヴァロの影響力はそれほど大きくなかった。しかし、2022年に連邦下院1月6日委員会への証言と証拠提出を求める連邦議会の召喚状を拒否し、最終的に4カ月の禁錮刑に服したことは、第2次トランプ政権でナヴァロの忠誠心を証明し、政権における高官の座を確保したと言えるだろう。

今回は、ナヴァロははるかに重要な役割を担っている。トランプ政権内の多くの補佐官たちからの妨害はほとんど受けていないものの、彼の考えは市場には完全に拒否された。ナヴァロは、貿易の仕組みに関する同様の根深い誤解(a similar profound misunderstanding)と、アメリカ企業への輸入関税を必ずしも是正する必要もない問題の万能薬(a cure-all)として好む姿勢を組み合わせることで、トランプにアピールしている。

しかし、ナヴァロが懸命に取り組んできた貿易戦争の影響が徐々に明らかになり、世界の株式市場、特に債券市場が激しく反応するにつれ、スコット・ベセント財務長官のようなより市場志向の政権高官が台頭してきた。少なくとも今のところは。トランプは、これまでで最も過激な貿易政策を控え、多くの国との二国間交渉(bilateral negotiations)の扉を開いた。ナヴァロの影響力の低下を示す兆候として、マスクでさえ彼を「間抜け(moron)」と考えていることが挙げられる。

(2)スコット・ベセント(Scott Bessent

財務長官就任前の大統領選挙運動中にトランプに助言したウォール街のヴェテランであるベセントは、ナヴァロとは大きく異なる。ベセントは、現在の世界経済の不均衡の原因と弊害について、綿密な論理に基づく分析を提示し、混乱した世界貿易システムの欠陥を是正しつつもその恩恵を維持するため、慎重に修正すべきだと提唱してきた。トランプ新政権に対するベセントの影響力は、4月2日の「解放記念日」関税(the April 2 “Liberation Day” tariffs)がほぼ全世界に無秩序に導入された後、特に顕著になった。この関税は、友好国と敵国を問わず、歴史的に高く、恣意的に選択されたものだった。トランプが1週間後に関税の大部分を部分的に撤回し、関税をそれ自体の目的ではなく交渉の手段として利用する方向に転換したことで、ベセントの影響力は明らかになった。

世界金融システムの頂点に君臨し、米ドルの管理者としての地位も確立したことで、世界市場が米ドルの神聖性(the sanctity of the greenback)、ひいては安全資産としての米国債の魅力にさえ疑問を呈しているように見えるこの時期に、ベセントはより大きな発言力を持つようになった。

ベセントはまた、トランプ政権が通商政策に意義を持たせるための最新の取り組みの立役者でもあるようだ。この取り組みは、アメリカの一方的な関税だけでは到底実現できないような形で、多くの国との二国間協議(bilateral talks)を通じて中国の経済的影響力を抑制しようとする試みである。

(3)スティーヴ・ウィトコフ(Steve Witkoff

不動産王(a real estate mogul)であり、トランプ大統領の長年の友人でもあるウィトコフは、政府や外交の経験がないにもかかわらず、トランプ新政権の数々の主要な外交政策危機において主導的な交渉役を務めてきた。トランプ大統領が当初中東担当特使に任命したウィトコフは、トランプ大統領就任前からイスラエルとハマス間の約2カ月にわたる停戦(cease-fire)の仲介役を務めていた。しかし、前回の停戦が決裂して以来、ガザ地区での停戦の再構築には成功していない。

ウィトコフはまた、ウクライナ戦争終結に向けた交渉においても政権の窓口役を務めてきた。これらの交渉への彼のアプローチは物議を醸している。ウィトコフは戦争に関してクレムリンの主張を繰り返すため、ウクライナのウォロディミール・ゼレンスキー大統領を激怒させ、アメリカの同盟諸国やワシントンの親ウクライナ派連邦議員の間で深刻な懸念を引き起こしている。ゼレンスキー大統領は最近、ヴィトコフが危険な「ロシアの言説を拡散している(disseminating Russian narratives)」と非難した。トランプ政権によるウクライナ戦争終結に向けた取り組みは今のところほとんど進展がなく、トランプ大統領は進展がない中で、アメリカが間もなく交渉(さらには戦争そのもの)から離脱する可能性があると示唆した。

一方、トランプ大統領はウィトコフを非常に有能な交渉担当者と評価し続けており、その仕事量と外交ポートフォリオを拡大し続けている。ウィトコフはここ数日、イランの核開発計画に関する協議を主導し始めた。政権は、イランの核兵器開発を阻止する合意の確保を目指している。ウィトコフは、アメリカがイランの核開発計画の縮小を求めるのか、それとも完全に放棄を求めるのかに関して、矛盾したメッセージを伝えている。協議はまだ初期段階にあるが、トランプ大統領は合意に至らなければ、アメリカとイスラエルは軍事行動に出る可能性があると述べている。

ウィトコフが新政権に持つ並外れた影響力は、トランプ大統領の型破りな外交政策アプローチと、経験は浅いものの忠実な部外者を要職に就ける傾向を示している。カリフォルニア州選出の民主党連邦上院議員アダム・シフ氏は最近、『フォーリン・ポリシー』誌に対し、ウィトコフを「真の国務長官(“real secretary of state)」と見なしていると語り、ウィトコフは「中東とロシアの両方で、マルコ・ルビオ国務長官よりもはるかに大きな役割を果たしていることは明らかだ」と述べた。

(4)JD・ヴァンス(J.D. Vance

JD・ヴァンス副大統領ほど、数々のミームを生み出したトランプ政権高官はほとんどいない。ヴァンス副大統領はトランプ大統領のナンバー2として、常に上司の政策について議論する際には、型通りの発言をすることが求められていた。しかし、ここ数カ月、ヴァンスは政権の熱心で攻撃的な外交政策を体現する存在となり、公の場でトランプ大統領の忠実な攻撃犬(Trump’s loyal attack dog)としての地位を確立しようとしている。

まず2月のミュンヘン安全保障会議で、ヴァンスは異例の演説を行い、第2次トランプ政権がいかに劇的に大西洋横断関係を覆しているかを明らかにし、ヨーロッパの議員たちを驚かせた。2月下旬、ゼレンスキー大統領のホワイトハウス訪問でも、ヴァンスは再び攻撃犬としての地位を確立した。トランプ大統領とゼレンスキー大統領が話している間、22分間のほとんどで静かに座っていたヴァンスは、攻撃的に発言に割り込んだ。これがきっかけとなり、両首脳はウクライナ大統領を激しく非難し、公の場で激しい対立が起きた。

より最近で言えば、ヴァンスはトランプの最も物議を醸した外交政策のいくつかの顔として登場してきた。例えば、グリーンランド側が明らかに望んでいなかった訪問を熱心に主導したことなどだ。(デンマークのメディアによると、訪問に先立ち、アメリカ政府関係者はセカンドレディのウーシャ・ヴァンスを歓迎するグリーンランド人を見つけるのに苦労したと報じられている。)ヴァンスは予想通り、この任務により力を入れた。

(5)スティーヴン・ミラー(Stephen Miller

先月ワシントンを動揺させた「シグナルゲート」スキャンダルは、第2次トランプ政権にとって驚くべきリークであっただけではない。それはまた、トランプ大統領のトップ補佐官たちが、上司が部屋にいないときにどのようにコミュニケーションをとっているのか、そして誰が最終決定権を持っているのかを明らかにするものでもあった。

公開されたグループチャットのメッセージは、スティーヴン・ミラーに権力があることを示唆している。ミラーはトランプ第1次政権時代、大きな物議を醸した移民政策の立案者として名を馳せ、アメリカの指導者のより強硬な衝動を後押ししたことで知られる。彼は現在、トランプ大統領の国土安全保障補佐官およびホワイトハウスの政策担当次席補佐官としてより大きな影響力を持ち、特に政権の大規模な強制送還やアメリカの一流大学に対する十字軍の舵取りを担っている。

ミラーはその権限を利用して、政権と裁判所との衝突においてトランプ大統領の権限の限界を公に試してきた。最近では、誤ってエルサルヴァドルの刑務所に強制送還されたメリーランド州の男性キルマール・アブレゴ・ガルシアの件が記憶に新しい。トランプ政権は、アブレゴ・ガルシアがMS-13ギャングのメンバーであると主張しているが、ガルシアはこの主張を否定しており、刑事責任を問われたこともない。しかし政府は以前から、アブレゴ・ガルシアの強制送還は「行政上の誤り(administrative error)」であることを認めており、裁判所の裁定はホワイトハウスに彼の帰還を「促進(facilitate)」するよう求めている。

ミラーは反抗的である。フォックス・ニューズのインタヴューで、彼は裁判所の調査結果に反論した。ミラーは「彼は間違ってエルサルヴァドルに送られたのではない。彼は正しい場所に送られた、正しい人間なのだ」となった。

■乗客側(PASSENGERS

(6)マルコ・ルビオ(Marco Rubio

トランプ大統領の外交政策分野の最高ランク補佐官として、ワシントンの外交政策の優先事項を遂行するのが職務内容である人物にとって、ルビオはウクライナ、ガザ地区、イランに関する米国の唯一の責任者とはほど遠く、特にウィトコフにスペースを譲ることが多く、意思決定よりもダメージコントロールの任務が多い。

ルビオ国務長官がこれまでトランプ大統領の優先事項を最も顕著に実行したのは、何百人もの大学生のヴィザを取り消し、新規申請者のソーシャルメディアアカウントを監視させたことだ。

ルビオはまた、彼が監督する部局の大部分を解体する(半分程度と言われている)ことを命じられているようだ。これには、外国の偽情報を追跡するオフィスの最近の閉鎖、米国国際開発庁(USAID)の廃止、国務省の人権に関する活動の縮小などが含まれる。ルビオは最近、米国国際開発庁が国務省に吸収された後、米国国際開発庁の廃止を担当していたMAGAの忠実な支持者のピーター・マロッコを解雇したことで、トランプの熱烈な支持者の一部から国務長官に対する批判の嵐が巻き起こり、閣僚としての任期が残り少ないのではないかという憶測が再燃した。

おそらく、少なくともポップカルチャーに関して言えば、ルビオにとってこれまでで最も大きな出来事は、大統領執務室でトランプとヴァンスがゼレンスキー氏を激しく叱責する場面を、非常に不快そうな表情で目撃したことだろう。その場面はあまりにも気まずく、「サタデー・ナイト・ライヴ」で実際にパロディ化されたほどだ。

(7)ジェイミソン・グリア(Jamieson Greer

影響力を失い、何が起こっているのかを把握しているという印象さえ失った人物の中には、政権最大の政策において中心人物であるべきだった2人、すなわち米通商代表部(U.S. Trade RepresentativeUSTR)のジェイミソン・グリア代表とハワード・ラトニック商務長官がいる。トランプ大統領は当初、この2人を政権の貿易政策の責任者に指名していた。

この2人のうち、米通商代表グリアは最も不利な立場に立たされており、最も有名なのは、アメリカが貿易黒字を計上している同盟諸国に対しても巨額の関税が絶対に必要である理由について、連邦議会で証言している最中に、トランプ大統領がソーシャルメディアで方針を一変させ、グリアを困惑させたことで、グリアは窮地に陥ったことだ。米通商代表部は他国の差別的貿易慣行について綿密に記録された苦情申立書を作成したが、当初の「解放記念日」関税(“Liberation Day” tariffs)に使用された恣意的な計算式には、その作業は一切盛り込まれなかった。

トランプ大統領の1期目の任期中、国際パートナーは当時の米国通商代表ロバート・ライトハイザーが大統領の耳に心地よく響く、機転が利く貿易通の交渉相手であることを知っていたが、グリアがアメリカの貿易政策の策定において実際にどのような役割を果たしているのかは、今でも明らかではない。

(8)ハワード・ラトニック(Howard Lutnick

トランプは当初、商務長官であるラトニックを通商政策の最高責任者として想定していた。たとえ、トランプ自身がその舵取りをしっかりと握り、グリアが連邦議会で定められた権限を持ち、ベセントが財務省の役割拡大を主張し、ナヴァロが大統領の耳を持っていたとしても、である。

しかし、トランプ大統領の貿易戦争がエスカレートして以来、ラトニックは政権の政策に対する影響力の欠如を公の場で強調するばかりだ。市場では既に、ラトニックの攻撃的な口調や経済理解の欠如に懐疑的な見方をしていた。しかし、ラトニックもまたグリアと同様、トランプ大統領の鞭打つような通商政策とは一線を画している。ラトニックは、関税は交渉のためではなく、不公正な慣行を罰するためのものだと大声で何度も繰り返した。ラトニックは、アメリカ人が「小さなネジをねじ込んで(screwing in little screws)」iPhoneを製造する未来を約束したが、大統領が電子機器を懲罰的な中国制裁の対象から除外し、中国関税の根拠となる、既に疑問視されていたものを根底から覆すまでは。報道によれば、ホワイトハウスはラトニックをテレビから遠ざけようとしているようだ。

(9)キース・ケロッグ(Keith Kellogg

トランプ大統領のウクライナ・ロシア担当特使であるキース・ケロッグ退役中将は、トランプ新政権で自己主張するのに苦労している。ウクライナ戦争終結に向けたアメリカの努力の中で、彼はしばしばウィトコフの後塵を拝してきた。例えば、ケロッグは最近リヤドで行われた停戦交渉に出席しておらず、傍観されているのではないかという疑問が投げかけられている。

対露タカ派として知られ、他の政権高官よりもキエフに友好的と見られているケロッグは、最近パリで行われた戦争に関する協議には出席した。しかし、トランプ大統領がウィトコフにこの問題の処理にはるかに大きな信頼を置いていることは、不動産王ウィトコフの度重なるロシア訪問からも明らかだ。そしてトランプ大統領は、アメリカが戦争を終わらせる努力をすぐに放棄する可能性を示唆しており、ケロッグは更に影が薄くなる可能性がある。

(10)ピート・ヘグセス(Pete Hegseth

ヘグセスの国防総省長官としての在任期間は、混乱と論争に象徴されている。連邦上院で辛うじて承認されたわずか数週間後の2月、ヘグセスはベルギーで開催されたNATOの会議で、同盟諸国との「不均衡な関係を容認しない(tolerate an imbalanced relationship)」と述べ、ウクライナの同盟参加を否定した。ヘグセスはまた、ウクライナの2014年以前の国境線に戻ることは「非現実的(unrealistic)」だとも述べた。

フォックス・ニューズの司会者であったヘグセスは、歴史的に国防長官として不適格であると民主党は見ているが、その後、モスクワとの和平交渉においてキエフの最も重要な影響力を事実上放棄したと批評家から非難された。連邦上院軍事委員会の委員長である共和党のロジャー・ウィッカー連邦上院議員(ミシシッピ州選出)は、ヘグセスの演説は「新人のミス(rookie mistake)」だったと述べた。

ヘグセスは、トランプ政権がこれまでに直面してきた最大の論争の1つであるシグナルゲート事件の中心人物でもある。彼はシグナルのグループチャットで、イエメンのフーシ派に対する今後のアメリカ軍攻撃に関する機密情報を他の政権高官と共有したのだが、そのグループチャットには偶然、『アトランティック』誌編集長も含まれていた。

4月初旬、国防総省の監察総監代理(the Pentagon’s acting inspector general)は、シグナルのグループチャットにおけるヘグゼスの役割について調査を開始した。トランプ政権は、このチャットで機密情報は共有されなかったと主張しているが、報道はそれを否定しており、国家安全保障の専門家たちは、こうした主張は事実無根であると断言するとともに、このスキャンダルが主要同盟諸国との情報共有に深刻な影響を与え、国家を脅威から守ることがより困難になる可能性があると懸念を表明している。

そして今週、『ニューヨーク・タイムズ』紙は、ヘグゼスがシグナルでイエメン作戦に関する機密軍事情報を共有したという新たな疑惑を報じた。今回は、妻、兄弟、そして個人弁護士を含むグループチャットで共有されたとのことだ。

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トランプ大統領の経済政策を作っている5人の人物たち(The 5 people shaping Trump’s economic agenda

ブレット・サミュエルズ

2025年4月19日

『ザ・ヒル』誌

by Brett Samuels - 04/19/25 5:00 PM ET

https://thehill.com/homenews/administration/5256332-trump-economic-advisers/

ドナルド・トランプ大統領は、金融市場を揺るがし、時に矛盾したメッセージを伝える大規模な関税政策を実行するにあたり、異なる視点と経歴を持つ複数の経済アドヴァイザーに依存している。

スコット・ベセント財務長官は貿易協定交渉を主導し、共和党所属の連邦議員やウォール街の金融機関の幹部たちからは頼りになる人物と見られている。

ピーター・ナヴァロ上級貿易顧問は気難しい性格だが、関税に関してはトランプ大統領の揺るぎない見解を共有し、心底からの忠誠心を持っている。ハワード・ラトニック商務長官はトランプ大統領の長年の友人だが、メディア出演で何度か失言をしている。

加えて、ケヴィン・ハセット国家経済会議(National Economic CouncilNEC)委員長とジェイミソン・グリア米国通商代表部(U.S. trade representativeUSTR)代表は、トランプ大統領の経済計画の策定、実行、そしてそのメッセージ発信を影で支える高官たち(behind-the-scenes senior officials)だ。

ホワイトハウスに近い複数の取材源によると、異なる見解を持つ政府関係者がいることは大統領にとって目新しいことではなく、関税、貿易、経済政策に関して最終的な決定権を持つのは最終的にはトランプ大統領だということだ。しかし、経済学者たちがトランプ大統領の政策の潜在的な影響を警告する中、こうしたトップ経済担当アドヴァイザーたちは注目を集めている。

ある第1次トランプ政権のホワイトハウス関係者は次のように述べている。「彼らはA地点からB地点へ到達する方法に関して異なる見解を持っている。率直に言って、それがトランプ大統領の狙いだ。『私の前で戦い、誰が勝つかは私が決める(fight in front of me, and I’ll decide who wins)』という姿勢を望んでいる」。

(1)スコット・ベセント(Scott Bessent
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ベセントはここ数日、トランプ大統領のホワイトハウス内での評価が高まっており、彼の主張が大統領に受け入れられている兆候が見られる。

ベセントは、他の経済アドヴァイザーが交渉の余地はないと示唆した後、ホワイトハウスが先週記者団に対し、より厳しい「相互」関税(“reciprocal” tariffs)の90日間の一時停止について説明を行うために派遣したトランプ政権の高官だった。

ベセントは、日本をはじめとする各国との貿易協定締結交渉を主導してきた。木曜日、トランプ大統領とイタリア首相との会談中、ベセントは大統領執務室のソファに座っていた。トランプ大統領は、協定締結に向けた進行中の取り組みについて、ベセントに発言を委ねた。

ベセントは、市場への影響を懸念し、ジェローム・パウエル連邦準備制度理事会(FRB)議長の解任について、トランプ大統領に警告したと報じられている。また、政権内外の多くの人々から、ベセントは大統領の政策を一般大衆とウォール街の両方に訴える形で明確に説明できる人物だと見られている。

「重要なのは、誰がグループにとって最良のメッセンジャーであるかだ。ベセントは最良のメッセンジャーだ」とトランプの支持者の1人は述べた。

第一次政権下では、トランプ・ワールドの中心人物ではなかった高官の台頭は、注目すべきものだ。ベセントは2015年にヘッジファンドを設立した。それ以前は、リベラル派の巨額献金者であり、共和党から頻繁に攻撃や陰謀論の標的となっているソロス家の資産を運用する投資会社に勤務していた。

(2)ハワード・ラトニック(Howard Lutnick
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トランプ大統領は、キャンター・フィッツジェラルド社の取締役であるラトニックを商務長官候補に指名した際、ラトニックが「関税と貿易政策を主導する(lead our tariff and trade agenda)」と述べた。これは、トランプが追求しようとする積極的な政策において、ラトニックがいかに重要な役割を担うかを早期に示唆するものだった。

確かに、ラトニックは政権による様々な関税導入において重要な役割を果たし、トランプ大統領の近くに頻繁にいる。しかし、特にメディア出演はホワイトハウス内の一部の人々を苛立たせ、その影響力の大きさを疑問視する声も上がっている。

ラトニックは3月のFOXニューズのインタヴューで、アメリカ国民にテスラ株への投資を促した。大統領が関税を撤回する数日前まで、ラトニックは決して撤回しないと断言していた。更に、トランプの貿易政策によって、何百万人ものアメリカ人が「iPhoneを作るために小さなネジを締める」ことになると示唆し、人々に不快感を起こさせた。

トランプ大統領の側近やウォール街の関係者の中には、ホワイトハウスの関税政策が失敗し(go awry)、経済が急落した(the economy into a tailspin)場合、ラトニックが責任を取るべきだと主張する人たちもいる。

共和党のあるストラテジストは、「ラトニックは明らかに一部の人々を怒らせている」と述べている。

しかし、ラトニックがすぐに解任される可能性は低く、依然として大統領の耳目を集めていると取材源は本誌に語っている。

ラトニックはトランプ大統領の長年の友人であり、大統領選挙に数百万ドルを寄付してきた。大統領専用機エアフォースワンに同乗する姿が頻繁に目撃されており、木曜日には大統領執務室で、アメリカの水産物輸出拡大に向けた取り組みを訴える大統領令の署名式に出席した。

(3)ピーター・ナヴァロ(Peter Navarro
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ピーター・ナヴァロ(右)とスティーヴン・ミラー

ナヴァロの正式な肩書きは、貿易・製造業担当上級顧問(senior counselor for trade and manufacturing)だ。彼とトランプ大統領は、製造業をアメリカに呼び戻す手段(a tool to return manufacturing to the United States)として関税を活用するという点で一致している。

ナヴァロはトランプ大統領の関税政策を主導し、輸入品に対する新たな関税の導入を提唱してきた。また、鉄鋼・アルミニウム、そして自動車に既に課されている関税の重要性を主張してきた。

彼は、輸入品に10%の基本関税を課し、さらに数十カ国にさらに厳しい制裁関税を課す「相互」関税(“reciprocal” tariffs)を強く支持し、これを国内製造業の復活のための「国家非常事態(national emergency)」と位置付けていた。ナヴァロはかつて、ヴェトナムが全ての関税を撤廃するだけでは不十分だと示唆したこともあります。

しかし、トランプ大統領が中国を含むホワイトハウスとの協議への扉を開くと、彼の揺るぎない姿勢はホワイトハウス内の他のメンバーと足並みを揃えなくなっていった。ナヴァロの序列は、大統領顧問の億万長者であるイーロン・マスクがソーシャルメディアで公然と彼を攻撃したことで、さらに厳しく問われることになった。また、彼は連邦議会でも多くの友人を得ていない。

ホワイトハウスは内部の意見の相違を軽視している。ホワイト報道官のキャロライン・リーヴィットはマスクとナヴァロの口論について記者団に対して、「男はいつになっても少年(Boys will be boys)」と述べた。

更に言えば、トランプ大統領はナヴァロの忠誠心も高く評価している。ナヴァロは第1次政権でも内部抗争の中心にいたが、政権内にとどめられた。その後、ナヴァロは2021年1月6日の連邦議事堂襲撃事件に関連する議会の召喚状に応じなかったため、収監された。

(4)ケヴィン・ハセット(Kevin Hassett
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国家経済会議(National Economic CouncilNEC)の議長であるハセットは、事実上トランプ大統領のトップ経済アドヴァイザーである。

選挙運動中は大統領の経済政策を擁護する立場にあり、政権発足後も同様の役割を果たし、テレビや記者会見に出席して関税への批判に反論してきた。

ホワイトハウスに近い取材源は本誌に対し、ハセットは舞台裏では大統領の発言に常に同意している訳ではないと述べた。しかし、公の場では、ハセットはトランプ大統領のメッセージに忠実であり、大統領の行動やその先手を打つような発言はしない、一貫した人物と見られている。

例えば、ハセットは2021年に発表した回顧録の中で、自身と他のトランプ陣営の顧問たちが大統領に対し、FRB議長の解任は実際には不可能かもしれないし、合法かどうかに関係なく、金融市場を暴落させる可能性が高いと警告したと述べている。

金曜日、ハセットは慎重な姿勢を示し、記者団に対し、トランプ大統領とそのティームは、大統領がジェローム・パウエル連邦準備制度理事会(FRB)議長を解任できるかどうかについて「引き続き検討する(will continue to study)」と述べ、FRBの政策を批判した。

ハセットは、トランプ大統領の最初の任期中、大統領経済諮問委員会(Council of Economic AdvisersCEA)の委員長を務めた。また、新型コロナウイルス感染症のパンデミックの間、ホワイトハウスに経済政策に関する助言を行い、CEAが米国の新型コロナウイルスによる死者数が2020年5月までに減少すると予測するグラフを発表した際には、厳しい批判に晒された。

(5)ジェミソン・グリア(Jamieson Greer
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あまり知られていないが、貿易交渉において同様に重要な人物が、米国通商代表を務めるグリアだ。

グリアはトランプ第1次政権時代、ロバート・ライトハイザー通商代表(当時)の首席補佐官を務め、関税や最終的な貿易協定に関する中国との交渉で最前列に立ち、重要な役割を果たした。彼はまた、NAFTAを再交渉し、2020年に調印されたUSMCAU.S.-Mexico-Canada Agreement、米・メキシコ・カナダ協定)にするための協議にも加わっていた。

グリアは、貿易に関して大統領の側近に誰がいるかということになると、見落とされる傾向がある。トランプ大統領は、ラトニックが商務省を運営するポートフォリオの一部として貿易を監督すると述べており、大統領自身もこの問題について強い見解を持っている。

グリアは、法令上はホワイトハウスの貿易交渉官だが、トランプ大統領はこれまで主要な経済協議の主導を財務長官に頼ってきた。

しかし、グリアは大統領のアジェンダを実行した経験を持つ人物としてトランプ・ワールド内で尊敬されており、連邦上院の承認公聴会では貿易赤字の削減と国内製造業の強化が優先事項であることを示唆した。

グリアは2月、複数の連邦上院議員に対し、「国際貿易システムを再構築し、アメリカの利益をより良くするための時間は比較的短いと確信している」と語った。

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●「対中強硬派、米政権で影響力低下 The Economist

日本経済新聞2025422

https://www.nikkei.com/article/DGKKZO88177570R20C25A4TCR000/

トランプ米大統領が関税政策で世界を大混乱に陥れる前から、彼の対中戦略を見極めるのは難しかった。トランプ氏の決定は多くが気まぐれによるうえ、外交政策の顧問らも派閥に分かれ互いに対立しているようだ。

ワシントン用語で言う「優越主義者」はあらゆる脅威に立ち向かい、世界における米国の覇権を取り戻すとし、「優先主義者」は米国が対処できるのは中国だけでウクライナは見捨てるべきだと主張する。「抑制主義者」は米国は今後の戦争は避け、自国に専念すべきだと考える。

トランプ氏の考えがどうあれ、今、明らかになりつつあるのは優越主義者であれ、優先主義者であれ対中強硬派は影響力を失いつつある点だ。

関税騒動に隠れて目立たないが、それをよく表す出来事の一つが43日に公になった国家安全保障会議(NSC)の高官6人の解雇・異動だ。その前日、右翼の陰謀論者ローラ・ルーマー氏がトランプ氏と会い、彼らがトランプ氏に「忠実でない」と主張したのが影響したのは明らかだ。

6人を中国との戦争も辞さない「ネオコン(新保守主義者)」とみなし、排除したいという思いはトランプ・ジュニア氏ら抑制主義者とルーマー氏でほぼ一致している。

更迭された一人がNSCの重要技術担当のデビッド・フェイス上級ディレクターで、これは象徴的だ。父ダグラス氏も初期のネオコンの一人で、米国防総省高官として2003年の対イラク軍事作戦の立案に携わった。デビッド氏は現政権の最も経験豊富な中国専門家の一人で、第1次トランプ政権では国務省に勤務し、同盟国との関係強化を図るインド太平洋戦略の策定を支援した。その後、シンクタンクに移り、強硬な対中政策の必要性を訴えてきた。

NSCでは米国の対中技術輸出などの問題を担当し、中国発の動画共有アプリ「TikTok(ティックトック)」の米国事業の非中国企業への売却を提案した。多くのバイデン前政権の取り組みを進める一方で、2月に発表した「アメリカファースト投資政策」など新しい政策にも取り組んだ。同政策はロシアと中国を「敵対国」とし、対中投資規制の枠を広げるものだ。

こうした政策への彼の見解が解雇を招いたのかは不明だが、元同僚らはこの解雇を孤立主義者らの勝利で、中国専門家らの敗北だとみている。

NSCの対中強硬派でアジア担当上級部長のイバン・カナパシー氏と、大統領副補佐官(国家安全保障担当)のアレックス・ウォン氏の先行きも今や不透明だ。ルーマー氏は、カナパシー氏が以前トランプ氏に批判的な人物と仕事をしていたことや、ウォン氏とその妻が中国系であること、妻の弁護士としての経歴を批判した。両氏はまだ解任されていないが、2人の上司であるウォルツ大統領補佐官(国家安全保障担当で対中強硬派)がすでに権威を失っているため弱い立場にある。

カナパシー氏は現政権で最も強力な台湾支持者の一人とされているため、中国と台湾当局は彼の動向を注視するだろう。1417年に米国の対台湾窓口機関、米国在台協会に駐在武官として赴任した。24年には第1次トランプ政権でNSCアジア上級部長だったマット・ポッティンジャー氏が編集した台湾防衛に関する本に寄稿し、同氏と共に昨年6月、頼清徳(ライ・チンドォー)台湾総統と会っている。

ポッティンジャー氏は211月の米議会襲撃事件へのトランプ氏の対応に不満を募らせ辞任したが、以来、中国に政治的変化を促すべく厳しい対中政策を提唱してきた。

こうした動きが米政府の中国への対応にどう影響するかは不透明だ。トランプ氏は貿易最重視で、対中政策を巡る高官らの対立を知らないかもしれない。だがもはや対中強硬派は1期目のように同氏に気付かれずに物事を進めるのは困難になる可能性がある。

米国が最近、中国の台湾支配に反対する断固とした共同声明を同盟国と共に複数出したことや、国務省のサイトから「台湾独立を支持しない」とする文言が削られたことについては、対中強硬派の関与を指摘する声がある。

国防総省でも勢力図は変わりつつあるかもしれない。要職経験のないヘグセス国防長官は3月にアジアの同盟各国を初めて歴訪した際、バイデン前政権の約束の多くを繰り返し、相手国を安心させた。それはトランプ政権がまだアジアでの軍事的優先事項を決めていなかったからだろう。

米上院は8日、国防総省ナンバー3の国防次官(政策担当)にコルビー氏を承認した。彼はヘグセス氏を支援する重要な役割を担うわけで、優先事項は今後明らかになる。

コルビー氏は中国を優先課題にすべき(台湾防衛を含む)だと声高に主張してきただけに元同僚らは適任だと言う。筋金入りの中国専門家ではないが、第1次トランプ政権では国防総省で中国とロシアを主たる敵対国とみなす国防戦略を策定した。退任後は中国のアジアでの覇権に対抗すべきだと主張するシンクタンクを設立し、本も出版した。

だがコルビー氏は最近はむしろ抑制主義者のようだ。台湾は米国の「存在にかかわる」問題ではないとし、台湾は防衛費を今の国内総生産(GDP)比3%から10%に上げるべきだと非現実的な主張を展開、韓国にも自力での国防に注力するよう求めている。

バンス副大統領やトランプ・ジュニア氏はこうした発言を支持している。彼らはトランプ氏は「眠れる竜の目を不必要に突く」のを避け、「中国と均衡を図って戦争を回避すべく」中国の習近平(シー・ジンピン)国家主席と交渉したい考えで、コルビー氏もこれを支持しているという。

コルビー氏の変節は政治的には賢明かもしれない。だが米国や同盟国の一部の防衛関係者の間で懸念を招いている。トランプ氏の欧州への見解と似たものを感じたためだ。トランプ氏の台湾への関心は低い。それだけに台湾防衛を犠牲にして、習氏から中国の貿易面で譲歩を引き出す一方、米国がアジアで既に持つ権益には手を出さないと約束させる取引をするのではないかと危惧しているのだ。

トランプ氏がアジアの同盟各国にも関税を課し、空母とミサイル防衛システムを最近アジアから中東に移したことなどから、彼が一貫した対中戦略を維持できるのかを疑問視する声もある。

国務省もルビオ国務長官が対中強硬派であるにもかかわらず、中国については限られた発言権しかないようだ。ルビオ氏の政策立案を担うマイケル・アントン政策企画局長は米国は台湾を防衛すべきでないと主張している。主な中国専門家数人が最近早期退職した一方で、東アジア・太平洋地域担当の次期トップに指名された弁護士のマイケル・デソンブル氏は駐タイ米国大使を1年務めた以外、外交経験がない。

中国がこうした人事を見逃すはずがない。中国政府に助言する中国の米研究者らは、第1次トランプ政権はNSCや国防総省、国務省の対中強硬派が強い影響力を持っていたとみている。復旦大学の孟維瞻研究員は最近、ある論評でトランプ現政権の対中強硬派の影響力は第1次政権に比べ弱まったと指摘した。米国はテックや貿易では強硬姿勢を強めていくが、国内問題重視からイデオロギーや軍事面ではそれほど圧力をかけてこないと孟氏はみている。

だがどれもトランプ氏の対中戦略を決定づけるものではない。この数週間をみても、彼の戦略は気まぐれですぐ変わる。それでも国際関係や政策を誰が日々管理するかは大事だ。トランプ氏が中国と取引しようとするか、あるいは貿易戦争が安全保障問題に波及した場合、同氏がとり得る選択肢や中国の反応を読む能力は重要だ。

米国が台湾を巡り弱腰な姿勢を見せれば中国の軍事行動を誘発するかもしれないし、挑発しすぎて軍事行動を招くかもしれない。一貫した戦略もなく中国との貿易戦争に突入するのは、それだけで多くのリスクを伴う。防衛面で一貫性を欠けば大惨事を招きかねない。

419日号)

(貼り付け終わり)

(終わり)
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『トランプの電撃作戦』
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世界覇権国 交代劇の真相 インテリジェンス、宗教、政治学で読む

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

akumanocybersensouwobidenseikengahajimeru001

 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める

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 古村治彦です。

※2025年3月25日に最新刊『トランプの電撃作戦』(秀和システム)が発売になりました。是非手に取ってお読みください。よろしくお願いいたします。
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 下記論稿は、トランプ政権の発足後100日の動きを政治学・国際関係論の4つの理論(モデル)を使って分析している。難しい内容ではないので、軽い勉強だと思ってお読みいただければと思う。

1つ目は「リアルポリティックの復活」で、トランプ政権が強硬な現実政治へと回帰し、中国と西半球を優先しているという分析になる。トランプ政権は、アメリカの国防費を増額させつつ、ロシアとの交渉での和解を図るなど、リアリズムに基づく外交政策が実行されている。

2つ目のモデルは「外交政策としての国内政治」で、トランプ政権の外交政策が実際には国内政策からの影響を受けているという分析になる。このモデルは、トランプが不人気な連邦機関を解体しようとする試みや、投資家やウォール街の不安を引き起こす貿易政策によって裏付けられている。

3つ目のモデルでは、トランプ政権が依然として従来型の共和党政権の外交政策を維持しつつ、トランプ自身の好みに寄り添った形で変化を求める「トランプ・レーガン統合」という分析だ。このモデルはトランプ特有の行動様式や奇異な外交方針の背後にある矛盾も示している。

最後に4つ目のモデルでは、共和党内での外交政策に関する内部対立が外交政策の混乱の要員になっているとされる。国家主義的かつ保護主義的なグループが、他方では超タカ派の国際主義者が存在し、トランプ自身はそのどちらにも傾く可能性が示唆されている。

このように、トランプ政権の外交政策は多様なモデルを通じて説明可能である。それぞれのモデルに説得力がある。社会現象の見方は様々である。どれかが完全に正しいということもなく、完全に間違っているということはない。

 大事なことは、社会現象を前におろおろしたり、慌てたりすることではない。「どうしてそのようなことが起きたのか」ということを分析することであり、そのために、社会科学の理論(モデル)を利用することだ。そして、歴史を良く学び、同様の事例を参考にして、予測を立ててみることだ。こうしたことは専門家の専有物ではない。

(貼り付けはじめ)

トランプ政権の混乱を説明する4つのモデル(Four Explanatory Models for Trump’s Chaos

-第2次トランプ政権がアメリカの外交政策において、停滞(inertia)ではなく変革(change)を目指していることは明らかだ。

エマ・アシュフォード筆

2025年4月24日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2025/04/24/trump-100-days-chaos-explanatory-models-foreign-policy/

ウラジーミル・レーニンはかつて、何十年も何も起こらない時期もあれば、数週間だけで、何十年間で起こるようなことが起きる時期もあると述べた。この基準に照らせば、ドナルド・トランプ大統領就任後の最初の100日間は、少なくとも20年間の外交政策の転換期と言えるだろう。

第2次トランプ政権の「迅速に行動し、物事を打破する(move fast and break things)」という外交政策へのアプローチは、その混沌とする状況においてのみ一貫している。注目を集める世界的な紛争へのアメリカのアプローチは、ロシアとの交渉への軸足を移し、ガザ地区での停戦を推進し、イランに対する軍事行動の脅しと新たに交渉された核合意の提案の間で揺れ動いている。

一方、米国国際開発庁(U.S. Agency for International DevelopmentUSAID)は突然閉鎖され、食糧援助で満たされた倉庫は腐るに任せられた。移民問題では、エルサルヴァドル政府への移民収容のアウトソーシングなど、限界を押し広げる動きが見られた。更に言えば、トランプ大統領の気まぐれで電灯のスイッチのように関税がオンやオフになるなど、政権の貿易政策の不確実性によって金融市場にもたらされた混乱もある。

それでは、この混乱をどう理解すればいいのだろうか? 第2次トランプ政権がアメリカ外交政策において、停滞ではなく変革を目指していることは明らかだが、その方向性は不明確だ。それでも、これまでの選択を説明する上で、検討に値する4つのモデルがある。

●モデル1:リアルポリティックの復活(Model No. 1: The Return of Realpolitik

トランプの外交政策を理解する上で最初に適用できるモデルは、おそらく最も一貫性のあるものでもある。それは、トランプ政権が強硬な現実政治への回帰(a hard-nosed return to realpolitik)を目指し、ヨーロッパや中東よりも中国と西半球(the Western Hemisphere)を優先しているという考え方だ。この文脈において、トランプ政権とヨーロッパの同盟諸国との複雑な関係は、アメリカがヨーロッパに過度に関わり過ぎた時期(period of overreach)の後に、アメリカの戦略的関与のバランスを取り戻そうとするニクソン流の試みの一環と捉えられるだろう。実際、この見方では、トランプ政権はルールに基づく国際システム(a rules-based international system)における、アメリカのリーダーシップを放棄しているのではなく、むしろ既存の偽善(existing hypocrisy)を認め、民主政治体制や人権といった漠然としたリベラルな理想よりもアメリカの利益が常に重要であることを認めているに過ぎない。

トランプ政権の対欧アプローチは、おそらくこのトランプの意思決定モデルの最も強い証拠(the best evidence for this model of Trump’s decision-making)となる。同盟諸国に国防費増額を迫り、ロシアとの交渉による和解を通じてウクライナ戦争からアメリカを離脱させようとする政策は、どちらもリアリストたちが長らく支持してきた政策だ。トランプのリアルポリティック・モデルを裏付ける証拠は他にもある。敵対国と同盟国の両方に対して、国家運営の手段を積極的に利用しようとする姿勢は、世界に対する取引的なアプローチを反映している。関税の脅威を用いてカナダ、メキシコ、あるいはヨーロッパ連合(EU)に政策問題を迫ることは、長期的には問題となるかもしれないが、現時点では短期的な成果をもたらす可能性がある。

第2次トランプ政権が突如として西半球への懸念を表明したことも、このモデルに当てはまる。就任直後のマルコ・ルビオ国務長官によるラテンアメリカ歴訪、パナマ運河周辺における中国の存在に対するトランプ政権の懸念、そして一見奇妙に見えるグリーンランド併合の構想など、その背後にはハードパワーの論理がある。一方、副大統領を含むトランプ大統領の主要任命者の多くは、明らかに現実主義的な世界観を持っている。

しかしながら、このリアリティ・ポリティック・モデルは他の分野では行き詰まっている。イスラエル政策を説明できないし、外交政策機関の骨抜き化(the gutting of foreign-policy agencies)も容易に説明できない。大国間の競争(great-power competition)に重点を置く政権であれば、アメリカのソフトパワーの基盤を揺るがそうとはしないだろうと予想されるにもかかわらず、第2次トランプ政権はヴォイス・オブ・アメリカや米国国際開発庁(USAID)の解体によってロシアや中国がその空白を埋めるという訴えにほとんど無関心である。同様に、関税政策もこの枠組みに当てはめるのは難しい。中国とのデカップリングはリアルポリティックな論拠として成り立つかもしれないが、近隣諸国への制裁や世界の準備通貨としてのドルの地位の剥奪は論拠として成り立たない。

●モデル2:外交政策としての国内政治(Model No. 2: Domestic Politics as Foreign Policy

トランプ政権の外交政策を説明するもう1つのモデルは、民主党寄りのケーブルテレビでよく聞かれるものだ。外交政策は主に国内政策によって動かされている、あるいは富裕層を更に豊かにすることを目的としているというものだ。例えば、バーニー・サンダース連邦上院議員は、米国国際開発庁の廃止を「世界で最も裕福な人物であるイーロン・マスクが、世界で最も貧しい人々に食料を提供している米国国際開発庁をターゲットにしている」と表現した。

確かに、政府効率化省(the Department of Government EfficiencyDOGE)の行動、そして新政権が連邦政府官僚機構に対して明らかに抱いている敵意は、共和党が長年試みてきた、グローヴァー・ノーキストの印象的な表現を借りれば「政府を浴槽に沈めて溺れさせるまで縮小する(shrink the government until one can drown it in a bathtub)」という試みの継続と解釈できる。政権は一部の連邦機関(例えば、米国国際開発庁や教育省)を解体する一方で、他の機関(例えば、国防総省や社会保障局)は保護してきた。標的とされた機関は、概して共和党の有権者や寄付者から最も人気のない機関だった。

同時に、トランプ政権の対外経済政策はウォール街や経済界を非常に不安にさせており、市場は事実上暴落している。関税の目的については、大きな不確実性(significant uncertainty)がある。それはアジアとのより良い貿易協定のための手段なのか、それともメキシコやカナダとの移民政策や麻薬政策における譲歩(concessions)なのか? それとも、ドル安を促進し、国内の再工業化(domestic reindustrialization)を促進するための広範な戦略なのだろうか? スコット・ベセント財務長官がニューヨークの銀行家たちに語った印象的な発言の1つは、アメリカンドリームの本質は単に中国からの「安物(cheap goods)」ではないということだった。これはアメリカの経済エリートにとって、決して心地よいものではなかった。

国内政治への懸念は、他の地域にも反映されている。2月にミュンヘン安全保障会議でJD・ヴァンス副大統領が行った演説は、NATOへのアメリカの関与に関する部分だけでなく、移民問題や文化問題への重点、そして、ヨーロッパとアメリカの間に価値観の相違があるという主張でも注目された。ドイツ総選挙の直前に極右政党「ドイツのための選択肢(Alternative for Germany)」と会談するというヴァンス副大統領の型破りな選択もまた、第2次トランプ政権がヨーロッパ各地の右派政党を高く評価していることを反映している。

しかしながら、国内政治というレンズだけでは、トランプ政権の外交政策の選択を理解するには限界がある。政権が引き続き中東を重視していること、特にイスラエルに白紙委任(carte blanche)を与えようとしていることを説明するのは難しい。実際、マフムード・ハリルをはじめとする親パレスティナ派の抗議者たちに対する移民弾圧が続いていることは、外交政策と国内政策の逆転した関係を示唆している。ガザ紛争におけるイスラエルへの支持が、国内における言論の自由の弾圧を促しているのだ。国内の視点だけでは、第2次トランプ政権がウクライナから撤退したいという明らかな意向を説明することはできない。

●モデル3:第一期への回帰(Model No. 3: A Return to the First Term

トランプの外交政策を説明する3つ目のモデルは、彼の第1期の任期を振り返る必要がある。実際、これは共和党議員やワシントンDCに拠点を置く外交官の間では通説となっており、彼らは2016年から2020年にかけての第1次トランプ政権と同様に、政権初期の混乱は間もなくほぼ従来型の共和党政権に取って代わられると主張している。そのような政権はトランプ独特の才能の要素を持つかもしれないが、概ねジョージ・W・ブッシュ政権に遡る、主権(sovereignty)、単独行動主義(unilateralism)、強硬なタカ派的な軍事力(hawkish military power)を重視する共和党の外交政策の優先事項を継承するだろう。

結局のところ、トランプの第1期の国家安全保障戦略(National Security Strategy)は比較的従来型であり、彼のスタッフは主にワシントンDCの官僚だった。北朝鮮の独裁者である金正恩との首脳会談や、ツイートによる外交政策への傾倒は確かに刺激的な展開をもたらしたが、外交政策全体としては現状から大きく逸脱することはなかった。第2次トランプ政権は、伝統的なレーガン主義的な外交政策の方向性をほぼ維持しながらも、党をトランプ自身の好みに少し近づける、一種の「トランプ・レーガン」統合(“Trump-Reagan” synthesis)へと向かっているだけだと主張する人さえいる。

このモデルでは、就任後100日間における共和党の正統派(Republican orthodoxy)からのより過激な逸脱の多くは、トランプの性格のせいにするだけで説明できる。例えば、ロシアへの接近は、トランプ特有のストロングマン(強権的な人物)との直接交渉を好む傾向(Trump’s own idiosyncratic preferences for negotiating personally with strongmen)、そして、おそらくノーベル平和賞への渇望によって説明できるかもしれない。しかし、第1次政権と同様に、多くの共和党エリートは、トランプが迅速な和平合意を勝ち取れないことが明らかになるにつれ、ウクライナ問題、そしてより一般的な外交政策において、より伝統的なアプローチに傾倒するだろうと想定している。

しかし、この理論には矛盾(contradictions)も明らかだ。イスラエルについて考えてみよう。伝統的な共和党外交政策関係者の間では、イスラエルへの全面的な支持は依然として当たり前のことだ。第2次トランプ政権は、イスラエルへの全面的な支持を声高に表明する一方で、アブラハム合意(the Abraham Accords)の拡大・延長といった、ガザ紛争の継続によって阻まれている他のトランプ政権の優先事項との両立に苦慮している。ヴァンスは、アメリカはイランとの戦争には関心がないと公言しており、トランプ自身も、イランの核施設攻撃を望むイスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相の意向を支持することを拒否したと報じられている。

こうした立場、そし​​てその他多くの立場は、アメリカはイランの核開発計画への攻撃においてイスラエルを支援すべきであり、ウクライナへの武器供与を継続すべきであり、アメリカの広範な同盟関係を維持すべきだと考える、より伝統的な連邦議会にいる共和党タカ派とトランプ政権を対立させている。元連邦上院院内総務で熱烈なタカ派だったミッチ・マコーネル上院議員は、トランプ大統領が国防総省の高官の有力候補と目していたエルブリッジ・コルビーにさえ反対票を投じた。他の共和党連邦議員たちは、コルビーがイランとの戦争を支持する意向はないとほのめかしていた。この政権が伝統的な共和党員にとってトランプとレーガンの融合を意味するのかどうかは、まだ明らかではない。

●モデル4:共和党外交政策対決(Model No. 4: Republican Foreign-Policy Showdown

こうした論争は、トランプ政権を理解するための4つ目、そして最終的なモデルを示唆している。私たちが目にする混乱は、外交政策をめぐる共和党内の内紛(Republican infighting)が一因となっている。一方では、党内に台頭する国家主義的かつ保護主義的な一派が見られる。彼らは中国への関心を強めており、アイソレイショニストではないものの、もはやネオコンではないことも確かだ。この一派は国防総省、副大統領周辺、そしてマスクや政権内のシリコンヴァレー陣営にも広く代表されている。

他方では、より伝統的で超タカ派的な国際主義的な共和党員たちが、政権を自分たちの好みに回帰させようとしている(例えば、ルビオやマイク・ウォルツ国家安全保障問題担当大統領補佐官など)。トランプ自身の本能は最初のグループに傾いているように思えるが、第1期の任期中に学んだように、彼はしばしば説得可能である。このモデルが正しければ、トランプ政権の外交政策の混乱と混沌は、政権内の派閥間の意見の相違、つまり人事と政策への影響力争いによる対立に一部起因していると言えるだろう。

これらの派閥が対立する問題は小さくない。ロシア、イラン、そしてある程度イスラエルに関しても、根本的に意見が一致していない。政権のウクライナ特使を務めているキース・ケロッグ退役陸軍中将が、キエフ問題で大統領と副大統領の見解に食い違い始めていたにもかかわらず、疎外された事例を考えてみよう。あるいは、シグナルゲート事件では、ヴァンスがイエメンのフーシ派への攻撃を遅らせるよう土壇場で嘆願したが、それが非生産的で無駄だと判断したものの、却下された。

もしこの対立が就任後100日間の混乱の一部を説明するのであれば、トランプ自身も前回よりもアドヴァイザーたちの指示に従うことをはるかに嫌がっていることもますます明らかになっている。ウォルツは、自身の見解が大統領の見解と頻繁に食い違うことに苦悩しているという報道もある。一方、Xパーソナリティのローラ・ルーマーは、大統領を説得し、国家安全保障会議(National Security CouncilNSC)のウォルツのスタッフ数名を、忠誠心の欠如とネオコンへの共感を理由に解任させた。この傾向が続けば、第2次トランプ政権は、従来の共和党外交政策の考え方である第3のモデルではなく、ここで論じた第1および第2のモデル(どちらもより明確な「アメリカ・ファースト(America First)」の色合いを持つ)に近づくと予想される。対照的に、先週、ピート・ヘグセス国防長官のより「抑制された(restrained)」上級スタッフ3名が不明瞭な理由で突然解任されたことは、その逆を示唆しているのかもしれない。

信じるのが難しいかもしれないが、トランプ政権はようやく、アメリカ人が政権を判断する基準となる就任100日目を迎えたばかりだ。第1期の任期では、主要な危機や外交政策上の決定の多くは、この時点を過ぎてから発生した。そして多くの点で、政権の外交政策がどこへ向かうのか、あるいは連邦議会や裁判所といった他のアクターが、ここ数週間に見られた行き過ぎをどの程度抑制できるのかを判断するのは、時期尚早である。実際、外交政策の最も重要な決定要因は、共和党の外交政策エリートたちがトランプを自分たちの意のままに操れるのか、それともトランプが彼らに自分の意向を押し付けることができるのか、ということなのかもしれない。このため、今のところ、トランプ・ドクトリン(Trump Doctrine)を1つだけ定義することは不可能である。

しかし、これらのモデルは、100日を過ぎようとする中で展開する外交政策のドラマを評価する方法を提供してくれる。今のところ、ここで提示した最初の2つのモデルは、トランプ大統領の決断を説明する上でより有用であるように思われる。しかし、外的ショックから人事をめぐる内部対立に至るまで、他の要因も第2次トランプ政権全体の外交政策の方向性を形作る上で依然として重要な役割を果たす可能性がある。そして、トランプ大統領自身が設定した主要目標の達成可否は、政策そのものを形作る可能性がある。例えば、ウクライナでの交渉が失敗に終われば、トランプ大統領は当初交渉を支持した現実主義的な保守派から遠ざかる可能性がある。イランへの壊滅的な爆撃作戦は、ネオコンの正当性を永久に失わせる可能性がある。

確実に言えることは、今後4年間は過去100日間と同じくらい混沌としたものになる可能性が高いということだ。そろそろ頭痛薬(headache medication)に投資すべき時かもしれない。

※エマ・アシュフォード:『フォーリン・ポリシー』誌のコラムニスト。スティムソン・センター「米大戦略再考(Reimagining U.S. Grand Strategy)」プログラムの上級研究員、ジョージタウン大学の非常勤助教、そして『石油、国家、そして戦争(Oil, the State, and War)』の著者。Xアカウント:@EmmaMAshford

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