古村治彦です。
2025年11月21日に『<a
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現在を理解する際に、歴史上の出来事や過去から類推する方法がある。類推(analogy)は、政治学や国際関係論において有効な手段である。現在の世界と日本の状況を類推するならば、1930年代、第二次世界大戦前と似ているという指摘がある。こうした指摘は、しかしながら、残念なことに多くの人々の耳に届かない。
1930年代から後の時代を経験し、記憶していた人々は多くが鬼籍に入った。世界も日本も第二次世界大戦、太平洋戦争を実際に体験し、その悲惨さを記憶し、警鐘を鳴らし続けた世代が消え去りつつある。人間は世代交代によって、重要な記憶を「忘却」していく。そして、この忘却によって、悲惨な歴史を繰り返すことになる。アメリカの作家マーク・トウェインの言葉を借りれば、歴史は繰り返すのではなく、韻を踏むということになる。確かに、全く同じことは起きないが、似たようなことは起きる。トウェインはそれを「韻を踏む(rhyme)」と表現している。人類は世代交代をして、社会全体で「忘却」することで、悲惨な出来事を繰り返す。その内容は多少の違いがあれど、本質は変わらない。1930年代からの悲惨な歴史の教訓を今の私たちは忘れているのである。
ここで重要なことは、歴史を学ぶことだ。歴史を学ぶというのは、YouTubeで、専門家でもないどこの馬の骨かも分からないインフルエンサーの番組を見ることではない。何事にも通じることだが、専門家が地道な努力を積み重ねて得た知見の発表を読むことである。多くの場合、読みやすい一般書、入門書がある。私はある分野の入門として、岩波のジュニア新書を読む。ジュニアとついてしまっているので、大人、しかも中高年は手に取りにくいが、内容は簡潔で充実している。歴史を学ぶということは人類が種として残してきた教訓を知ることであり、生活を防衛することである。それを怠ってしまえば、悲惨な出来事を繰り返してしまう。たゆみない努力は現在の基準で言えば、タイパもコスパも悪いということになるだろう。しかし、そうした営為を忘れた時、私たちは大いなる後悔を伴う結末を迎えることになる。「後悔先に立たず」という警句もある。高市早苗麻生太郎傀儡・対米隷属政権を迎えた今こそ、歴史から教訓を得るべきである。
(貼り付けはじめ)
崩壊しつつある私たちの世界は歴史の繰り返しだ(Our unraveling world
is history repeating itself)
ロバート・A・マニング筆
2024年3月27日
『ザ・ヒル』誌
https://thehill.com/opinion/international/4557568-our-unraveling-world-is-history-repeating-itself/
モスクワでの恐ろしいテロ行為、ガザ地区とウクライナでの残虐な暴力、そして世界中で激化する戦争と危機を目の当たりにし、私は歴史家ウィル・デュラントの言葉を思い出す。
「野蛮さ(barbarism)から文明(civilization)へは1世紀の期間がかかるが、文明から野蛮へはたった1日しか必要ではない」。
ガザ地区とウクライナにおける、一見不運で、代理戦争のように思えるアメリカの関与だけが、終息と解決に向けた24時間体制の努力を逃れ続けている訳ではない。西アフリカから東アフリカにかけての様々な紛争、ナゴルノ・カラバフ紛争やバルト諸国におけるセルビアの動乱といった紛争の波だけが、この紛争の波を逃れている訳ではない。そして、国際通貨基金(International Monetary Fund、IMF)が「地経学的な分断‘(geoeconomic fragmentation)」を警告するに至ったのは、不安を掻き立てる経済ナショナリズムや保護主義の高まりだけではない。
むしろ、これら全てが複合的に作用し、「ポリクライシス(a polycrisis)」と呼ばれる現象が起きた。すなわち、災害事象(ウクライナ情勢、食糧不足、気候変動)が連鎖的に同時発生し、その影響が相乗的に増幅される(calamities cascading against each other)事態である。この複合的な危機は、第二次世界大戦以来最も不確実で紛争に満ちた時代(the most uncertain and conflict-riven period since World War II)を浮き彫りにし、制御不能に陥る世界の亡霊(the specter of a world spinning out of control.)を映し出している。
しかし、私の言葉を鵜呑みにしないで欲しい。先月発表された年次世界脅威評価において、インテリジェンス・コミュニティ(IC)は41ページにも及ぶ、気が遠くなるような詳細を記している。その要点は次の通りだ。
「アメリカは、大国間の戦略的競争の激化(accelerating strategic
competition among major powers)、より激化し予測不可能な国境を越えた諸課題(more
intense and unpredictable transnational challenges)、そして広範囲にわたる影響を及ぼす複数の地域紛争(multiple regional conflicts with far-reaching implications)によって、ますます脆弱化する世界秩序(an increasingly fragile global order)に直面している。」
インテリジェンス・コミュニティ報告書は、アメリカの政策立案者たちが直面する問題について次のように詳述している。「地域的・局地的な紛争と不安定性・・・国家と非国家主体が、大国間の競争や共通の越境課題をめぐり、この変化する世界秩序の中で苦闘する中で、アメリカの関心は高まるだろう。」
マーク・トウェインの言葉に「歴史は繰り返さないが、しばしば韻を踏む(History
doesn’t repeat itself, but it often rhymes)」というものがある。残念ながら、大国間の競争(great power competition)、関税戦争(tariff wars)、そして国家の利益を目的とした相互依存の武器化(weaponized interdependence for national advantage)といった傾向を見ると、1930年代との類似性を見ずにはいられない。これは、『フォーリン・アフェアーズ』誌に最近掲載された論文が説得力を持って主張している通りである。
徐々に強固になりつつある2つのブロック――アメリカとそのヨーロッパ・アジアの同盟諸国、そして中露ユーラシア協商(Sino-Russan-Eurasian entente)――には、過去の残影がはっきりと見て取れる。ウクライナと台湾海峡で摩擦が激化している。
同様に、経済面でも、米中間の関税戦争、制裁措置、そして競合する大国によるその他の経済的圧力手段(other tools of economic coercion)は、1929年の銀行破綻と同様に1930年代の世界恐慌の引き金となったスムート・ホーリー法のような影響力を持つには、まだ程遠い状況だ。制度やルールは揺らぎつつあり、貿易の伸びは鈍化し、より地政学的な要因に左右されるようになっているが、崩壊には至っていない。
しかしながら、IMFは、こうした傾向が強まれば、長期的には世界経済の成長率が最大7%低下する可能性があると懸念している。そして、1930年代に起こったように、経済の不安定さは世界を紛争に陥れやすくする傾向がある。
おそらく最も憂慮すべきは、地政学的にも経済的にも、歴史的忘却(a historical
amnesia)が進んでいるように見えることだ。例えば、台湾をめぐる米中間の緊張を見ると、冷戦の教訓は忘れ去られているように思われる。
それはどのように忘れられているか? 現在と1930年代の大きな違いは、核兵器の存在リスク(the existential risk of nuclear weapons)だ。台湾の窮状は、1962年のキューバ危機を思い起こさせる。当時、アメリカとソ連は間一髪で破局(catastrophe)を回避した。米ソ両国の公文書の公開によってさらに深まったこの画期的な出来事に関する最近の研究は、ケネディとフルシチョフの両指導者が核戦争の勃発を恐れていたことを示唆している。
しかし、現在アメリカと中国は互いに悪者と呼んでおり(demonization)、台湾をめぐる白熱した言論には、潜在的な核破壊(potential nuclear destruction)の制約が欠如しているように見える。米中両国は時折、戦争の必然性と、戦争への備えへの熱意を感じているように見える。
キューバ危機は、アメリカとソ連が、自国の脆弱性(vulnerabilities)を克服するには、戦略的競争を管理する手段となる何らかの抑制が必要であることを徐々に認識するに至った、いくつかの重要な出来事の1つだった。これが軍備拡張競争を抑制するための軍備管理体制の構築((an architecture of arms control to limit the arms race))につながった。
しかし、ロシアと中国との大国間の対立が再燃(the resurgence of
great power rivalry with Russia and China)するにつれ、軍備管理体制全体が崩壊した。最後に残った痕跡、アメリカとロシアの核兵器を制限する新戦略兵器削減条約(START)は2026年に失効するが、プーティン大統領はモスクワが新戦略兵器削減条約への参加を停止すると発表した。アメリカは中国と核協定を結んでいない。しかし、三大国はいずれも核兵器の近代化と増強を進めている。
マーク・トウェインは何かに気づいていたのかもしれない。ピーター・ターチンのような歴史家たちは、現代の不協和音、興亡、統合と崩壊(the discord of our times, rise and falls, integration and
disintegration)の中に、歴史の繰り返されるサイクルを見出している。彼らは、人間には主体性があるという点で、何事も必然ではないと認めているが、ここで描かれている傾向は憂慮すべきものだ。
1930年代とその後の紛争を振り返ると、歴史の教訓は明白に思える。積極的な外交によって、力の均衡(balance of power)、中国との競争的共存を管理するための枠組み(a
framework to manage a competitive coexistence with China)を見出すことはできるだろうか?
第二次世界大戦後の秩序を形成した機関、すなわち、世界銀行、IMF、世界貿易機関は、現代の課題に対応できるよう改革・更新できるだろうか?
どちらも可能だ。しかし、歴史は、そこから学ぶことは例外(the exception)であり、一般的ではないことを示唆している。
※ロバート・A・マニング:スティムソン・センター特別研究員。国務次官補(グローバル問題担当)上級顧問、国務長官政策企画スタッフメンバー、国家情報会議戦略未来グループメンバーを務めた。X(旧Twitter)アカウント:@Rmanning4
(貼り付け終わり)
(終わり)
『人類を不幸にした諸悪の根源 ローマ・カトリックと悪の帝国イギリス』
『トランプの電撃作戦』
『世界覇権国 交代劇の真相 インテリジェンス、宗教、政治学で読む』







