古村治彦(ふるむらはるひこ)の政治情報紹介・分析ブログ

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タグ:黒海

 古村治彦です。

 昨年、ウクライナ沖の黒海に展開していたロシア黒海艦隊の旗艦(flagship)だったミサイル巡洋艦「モスクワ」が、ウクライナ軍の地上配備の対艦ミサイル「ネプチューン」によって撃沈された。ロシア黒海艦隊の主力艦が撃沈された、この出来事は衝撃を与えた。「モスクワ」の装備の古さが指摘されたが、それよりも地上配備の対艦ミサイルの有効性が証明されたことの影響力は大きかった。海上艦艇による海上封鎖や侵攻に対して、対艦ミサイルが有効な対抗手段となることは守備側にしてみれば大きい。
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 米中関係について見てみれば、米中戦争となった場合に、アメリカ軍は中国に対して、艦艇派遣は慎重にならざるを得ない。中国の接近阻止・領域拒否戦略によって、防備が固められており、安易な接近は手痛いしっぺ返しを喰らうということになりかねない。アメリカ海軍が誇る第七艦隊の攻撃力や有効性は考えられているよりも減殺されてしまうだろう。アメリカからすれば、台湾に対してミサイルを売りやすくなったと言うことになる。「中国による台湾侵攻に対してはミサイル防衛が有効です」という売り文句が使える。
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 しかし、中国本土と台湾との距離の近さ、軍の規模の違いを考えると、ミサイル防衛がどれほど有効かは分からない。中国本土から戦闘機、爆撃機、ミサイル、火砲などが雨あられのように降り注ぐことになれば、台湾はひとたまりもないだろう。アメリカ軍が駆けつけると言っても、限界があるだろう。アメリカ軍が空母を派遣し、戦闘機で対抗するにしても、空母が対艦ミサイルの攻撃を受けてしまえば、戦闘機は帰る母艦を失う。

 対艦ミサイルの有効性向上によって、空母で容易に近づけず、戦闘機の戦闘力が制限されるということになれば、空母の有効性が削減されると言うことになる。太平洋戦争では、日本海軍は大艦巨砲主義にこだわり、空母群による航空攻撃を軽視したために敗れたということが定説になっている。日本はマレー沖海戦、真珠湾攻撃で空母を使った機動作戦を成功させていながら大艦巨砲主義、艦隊決戦思想から脱することができなかったとされている。太平洋戦争は空母打撃群を主力とする戦争の新しい形態を生み出した。しかし、ミサイルの正確で効果的な攻撃ということが今回実証され、空母打撃群もまた時代遅れとなりつつある。もちろん、作戦行動によっては空母打撃群が必要であることは変わらないが、空母が最強ということはなくなったようだ。時代は移り変わり、万物は流転するということになる。

(貼り付けはじめ)

ロシア海軍の件の戦艦と南シナ海(The Russian Warship and the South China Sea

-戦艦「モスクワ」撃沈は、台湾にとってどのような教訓となるか?

アレクサンダー・ウーリー筆

2022年10月1日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2022/10/01/moskva-south-china-sea-russia/

2022年4月14日、海軍をほとんど持たない国が、海上で見事な勝利を収めた。ウクライナは陸上配備対艦ミサイル(land-based anti-ship missilesASM2基を使用して、ロシアの誘導ミサイル巡洋艦モスクワ(Russian-guided missile cruiser Moskva)を撃沈したのである。これは衝撃的な勝利であり、5000マイル離れた場所で起こりうる紛争への教訓となるものである。中国はいつか、西太平洋からアメリカとその同盟諸国を排除するために、独自の対艦ミサイルを使用する可能性がある。

ウクライナのKh-35ミサイルの使用は、戦争初期にウクライナ陸軍がロシア軍に対して巧みに使ったものの海上版のような、非対称戦(asymmetric warfare)のように見える。ウクライナは戦艦モスクワに対して「ヘイメーカー(haymaker)」で攻撃したが、それは明確な戦略の一部というより、臨機目標(target of opportunity 訳者註:予定外、計画の攻撃目標)であった。そのため、他の紛争への適用は制限されるかもしれないが、台湾への最適な戦略をめぐる濃密な議論の一部として、今もなお利用されている。

何十年もの間、米海軍の水上戦闘部隊は、敵の海岸線までほとんど無抵抗で押し出すことができた。4月13日の時点で、ロシア人は歴史的にロシアの海軍力が支配してきた黒海について同様の自信を抱いていた。

接近阻止・領域拒否(A2/ADAnti-access/area denial)は、中国自身の海洋圏からアメリカを軍事的に抑止する北京の計画を説明するために最初に使われたアメリカの流行語だ。アメリカの軍艦にとって、これらの計画で最も致命的となりうるのは、世界最大の地上発射型ミサイル軍である人民解放軍ロケット軍(People’s Liberation Army Rocket ForcePLARF)である。PLARFは、西側諸国にはほとんど知られていないが、ミサイル兵器は独裁者たちのパレードでは定番となっている。PLARFは2000発以上の通常弾道ミサイルと巡航ミサイルを保有しており、特に対艦ミサイルに重点を置いている。これは南シナ海にいるアメリカの空母群を狙い、戦争になった場合には中国沿岸の基地から台湾を攻撃することができる。PLARFは、その数の多さによって、アメリカや同盟諸国の艦船防御システム(shipboard defensive systems)を圧倒しようとするものだ。ウクライナの軍事計画者たちは、トラック搭載の陸上配備対艦ミサイル(ASM)が2、3発で攻撃を成功させることでき、その結果に興奮しただろう。

しかし、1983年に就役したモスクワは冷戦時代の艦船であり、空母を撃沈させる能力を持つミサイルを装備していたが、それを発射する相手がいなかった。一方、軍事化が進む西太平洋では、空と海のプラットフォーム、武器、センサーの規模と精巧さ、技術的な攻撃と反撃のスピードが格段に向上している。

アメリカとその同盟諸国は、中国の新型の陸上弾道ミサイルや極超音速対艦ミサイルを打ち負かすために、ソフトキル(soft-kill)とハードキル(hard-kill)の対抗策を展開することになるであろう。ハードキルの対抗策は現在または近いうちに南シナ海の大部分をカヴァーできるようになる。北京がそれに見合う情報、監視、偵察能力を持っているかどうかは議論の余地がある。遠距離にある艦船を攻撃するには、最初の位置確認から追跡、交戦、そして戦闘後の評価まで、段階的なプロセスが必要であり、これらを総称して「キルチェーン(kill chain )」モデルと呼ぶ。

この小さな軍拡競争が続く中、アメリカはとりわけ、巡洋艦と駆逐艦のマーク41垂直発射システムにRIM-162進化型シースパローミサイルを「クアッドパック(quad-pack)」することを検討している。これは、1つの発射セルにつき1発ではなく4発のミサイルを搭載することを意味し、アメリカ軍の艦船が集団攻撃からよりよく身を守ることを可能にする。また、弾倉を深くして長く駐留させ、弾薬補給の機会が薄れそうなときに部隊が攻撃する見通しを向上させることができる。アメリカは対艦巡航ミサイル用レーザーの開発にも取り組んでおり、有望な技術ではあるが、配備にはまだ課題が多い。

誰が優位に立つのか? 米海軍大学のJC・ワイリー記念海洋戦略教授であるジェームズ・ホームズは「個人的な推測では、私たちは再び自国を守ることができるようになる手前まで来ていると思うが、それは新しいテクノロジーが大きな期待に応えられるのかにかかっている。しかし、確信をもって推測できるものではない」と述べている。

もし、中国の習近平国家主席がホームズの評価分析に同意するならば、台湾への攻撃を早急に考えるかもしれない。ホームズは「今しかないという考え方が定着しないか心配だ」と語っている。

しかし、台湾に関して言えば、接近阻止・領域拒否(A2/ADAnti-Access/Area Denial)は双方向に機能する。北京はアメリカ軍艦船を遠ざけたいが、侵略には自国の軍隊を世界で最も防衛の厳しい海域に送り込む必要がある。ロシアの戦艦が沈んだことで、アメリカの連邦議員たちは、「ハリネズミ防衛(hedgehog defense)」(ハリネズミの棘のようにミサイルが林立する島)の価値について、抵抗する台湾の軍事指導者を説得するための格好の材料となり、潜在的侵略者に対する防衛と抑止の両方が可能になった。

連邦下院外交委員会の共和党側筆頭委員であるマイケル・マコール連邦下院議員は『フォーリン・ポリシー』誌上に、「ほとんどの場合、中国の攻撃に弱いハイエンドシステムよりも、ウクライナが効果的に使用している対艦ミサイルのように、低コストで最大の抑止効果を発揮する費用対効果の高い、移動可能で生存可能な技術に焦点を当てることを意味する」と書いている。

しかし、台北はまだそこに到達しておらず、既存のシステムのいくつかは間違った配備がなされている。ホームズは次のように述べている。「台北の高官たちが、台北にある非常に限られた長距離地対地ミサイル(long-range, surface-to-surface missiles)の在庫を使って北京を攻撃すると脅すのだからおかしくなりそうだ。復讐のための攻撃は、民主国家としての台北の存続という観点からするとほとんど意味がない」。

人民解放軍の水陸両用軍による侵攻に対し、台湾が接近阻止・領域拒否を展開するという発想は新しいものではない。2010年、ジェームズ・ホームズとアジア太平洋地域の専門家であるトシ・ヨシハラは、台北がまさにそのような兵器と戦略を持つことを主張し、多くの点で中国本土が世界規模で活動できる海軍の構築に着手する前の数十年間に用いた、毛沢東の海洋拒否主義(sea denialism)を真似ることになるだろうと指摘した。しかし、台湾の軍指導部は、主要な兵器システム、他の中堅国の模倣品、駆逐艦やフリゲートの水上艦隊に関心を持っており、保守的なことで知られている。モスクワの沈没は、それを変える可能性がある。

アメリカと中国の両方にとって、陸上配備の対艦ミサイル(ASM)は何世紀にもわたって変わらない海戦を強化することになる。敵の海岸線に近づくほど、船に悪いことが起こる。3世紀前、それは沿岸の砲台(coastal batteries)と要塞(forts)だった。最近では、より高速な武器と陸上の乱雑な電子環境により、応答時間が短くなりが、破損した船は自国の基地や修理施設に戻る距離が長くなる。一方、ランドラバーシューターは、ターゲットが比較的沿岸に近い場合に、ターゲットを見つけて追跡するのが容易になる。ホレーショ・ネルソン元英国中将が「要塞と戦う艦船は愚かだ」と言ったのには理由がある。

例えば1982年のフォークランド紛争では、イギリスの空母インヴィンシブルとヘルメスは、アルゼンチンの陸上配備対艦ミサイルを恐れて東に大きく離れていたため、機動部隊(task force)の間で、「空母群には、現在のミャンマーでの任務に与えられる勲章であった、ビルマスター勲章を授与される」というジョークが流れたほどである。

アメリカの空母打撃群は、中国沿岸や中国が基地を建設している南シナ海の島々からどれだけ離れていても効果を発揮できるのだろうか? 1980年代ほどの力はない。ジョン・リーマン元海軍長官とCNAのスティーヴン・ウィルス中佐は、現在の空母艦載機はF-14やA-6といった以前のタイプの航空機のような航続距離や積載量を有していないと主張している。つまり、空母はより戦闘に近い場所にいなければならないのだ。

更に言えば、冷戦時代には空母航空団に専用の空中給油設備があったことが問題を大きくしている。しかし、今はもう存在しない。無人空中給油機MQ-25スティングレイは現在開発中で、空母の甲板から飛行し、F-18の航続距離を伸ばすことができるだろうが、少なくとも2026年までは運用できないだろう。

しかし、この問題は北京にとっても同様に深刻である。中国が台湾に侵攻する際、どのような主要な陸上部隊を投入するのだろうか? そのピカピカの新しい空母はどうだろうか? 2016年、歴史家のスティーブヴン・ビドルと戦略的安全保障の専門家アイヴァン・オエルリッチは、「同盟諸国の陸地の周囲(約500マイルまで)のアメリカの影響圏(sphere of influence)、中国本土の中国の影響圏、南・東シナ海の大部分を覆う戦闘空間、どちらの勢力も戦時中の地上・航空移動の自由を享受しない」を想定している。

彼らがそう書いてから多くのことが起こった。将来の戦争では、南シナ海は争われる段階を超えて、第一次世界大戦の西側塹壕の間のように荒れ果て、波の下をパトロールする潜水艦以外は何もない海上無人地帯になる可能性がある。

モスクワの撃沈が生んだもう一つの疑問は、艦船がいかに壊れやすいかということだ。水上艦艇が何回の攻撃に耐えられるかを推定することは、科学的に見て不正確であると同時に、大部分が機密事項である。ある退役した海軍司令官は最近、大まかな計算式に基づいて、モスクワはネプチューンのミサイル5発まで耐えられるはずだと書いている。ウィルスは本誌に対して、実際の発射数は3、4発であったはずだと推定している。

2005年に行われた超大型空母「USSアメリカ」のSINKEX演習の結果は機密扱いとされている。リーマンとウィルスは2021年の著書で、1960年代に米空母で起きた大火災を検証し、対艦巡航ミサイル攻撃(anti-ship cruise missile strike)の代用として使用することで答えを出そうとしている。著者たちは、甲板や格納庫の火災は、超音速の弾道ミサイルはともかく、亜音速の巡航ミサイルのような衝撃を受けるエネルギー特性を持たないことを認めているが、フォードやニミッツ級空母は打撃を受けうるという結論を出している。

逆に、1994年、ジョン・シュルトという海軍大学院の学生(海軍将校)が、沿岸戦における巡航ミサイルの有効性を検討する論文を提出した。そのために、シュルトは、過去にミサイルが艦船に命中した全てのデータを作成した。その結果、平均1.2発のミサイルが艦艇を破壊し、1.8発のミサイルが艦艇を沈没させることが分かった。モスクワはこの測定結果に合致する。モスクワの乗組員たちは、攻撃時に居眠りをしていたようだ。2009年に機密指定を解除されたシュルトの論文では、このようなケースもかなり多いことが判明している。シュルトは、「防御可能な標的(defendable targets)」という特別なカテゴリーを作った。対艦ミサイル攻撃を撃退する手段を持ちながら、それを使用せずに攻撃された軍艦ということになる。通常、不注意、防御システムのスイッチオフや機能停止、状況混乱などが理由となる。多くの場合、被害者たちは対抗策を講じることさえできなかった。最終的に引き起こされる大惨事は、使用された兵器の大きさ、数、精巧さに比例する。

防衛側にとって最悪なのは、一斉射撃で全てのミサイルを打ち落とせなかった場合、悲惨な事態になる可能性があることだ。2021年の『艦隊との戦闘(Fighting the Fleet)』の共著者である退役海軍大佐のジェフリー・カレスは、次のように述べている。「なぜ、戦闘に突入して攻撃を受けないようにしなければならないと考えるのか? 私たちのシステムが優れているからか? まあ、これは冗談であるが」。

対艦ミサイルの攻撃を受けた艦船のうち、モスクワのように1発か2発のミサイルを受けただけのものがほとんどである。ソ連や南シナ海で想定される接近阻止・領域拒否型のシナリオのように、対艦巡航ミサイルの弾幕をかいくぐった艦艇はないのである。

モスクワは大型で武装した軍艦だった。アメリカは、中国に比べれば相対的に少数ではあるが、大型で武装した艦艇を建造している。前述のカレスは次のように述べている。「私たちのようにバランスが悪く、高性能なプラットフォームを少数しか持てない場合、敵の標的の問題は非常に単純化される。中国人民解放軍海軍が撃つ可能性のあるものは、全て撃ち落とす価値があるものだ」。

更に緊急の問題は、ミサイルが命中した後、官邸が運用を継続できるか、あるいは迅速に修理できて戦列に復帰できるかということだ。短期的な紛争では、1発のミサイルが致命的でなくとも、戦闘機の作戦を停止させ、空母を戦場から退かせれば、それは沈没したのと同じことになるのだ。

しかし、中国自身は、空母の急速な建造計画を考えると、空母は時代遅れではないと考えていることは明らかだ。空母はある程度、虚栄心(vanity)の指標であり、中年の危機のためにポルシェを買うのと同じようなものだ。しかし、中国人民解放軍海軍は、空母に注ぎ込んでいる資源を考えると、空母が完全に教義的に時代遅れで、致命的に脆弱だとは考えないはずだ。6月には中国初の平甲板型空母「福建」を進水させ、戦略予算評価センターは最近、今後10年間に更に3隻の空母を購入する余裕があると推定している。大型艦の全盛期は終わったかもしれないが、まだ時代遅れにはなっていない。

※アレクサンダー・ウーリー:ジャーナリスト、大英帝国海軍士官(退役)。

(貼り付け終わり)

(終わり)

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ビッグテック5社を解体せよ

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める
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 古村治彦です。

 ロシアによるウクライナ戦争によって存在感を高めているのがトルコである。トルコはEU(ヨーロッパ連合)の加盟候補国であり、NATO(北大西洋条約機構)の加盟国である。トルコは長年にわたりEUの加盟候補国の地位にとどめられている。ヨーロッパとトルコは一部友好的な、そしてところどころぎくしゃくした関係となっている。
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 トルコはヨーロッパと中東をつなぐ位置にあり、重要な国家である。地図を見てみればわかる通り、地中海と黒海をつなぐダーダネルス海峡とボスポラス海峡を抑えている。トルコの許可がなければこの2つの海峡を通って黒海に入ることはできない。今回のウクライナ戦争でトルコの重要性が再認識されることになった。
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 アメリカとトルコの関係はぎくしゃくしていた。トルコにおける人権弾圧やクルド人問題、民主政治体制の後退など、批判の対象となった。レジェップ・エルドアン大統領についてアメリカ国内で多くの批判の声が上がった。また、トルコとロシアの関係深化もアメリカを苛立たせていた。トルコはロシアから武器システムを導入している。ジョー・売電大統領時代になって、トルコとの関係はぎくしゃくしていた。これはアメリカだけのことではなくて、西側諸国全体でそうであった。

 しかし、ウクライナ戦争が勃発し、トルコの存在の重要性は増した。前述したように、黒海の入り口をトルコが抑えている、門番のような存在である。ウクライナ南部は黒海に面している。ウクライナの物流、海運に取って黒海は重要である。現在、ロシア黒海艦隊が黒海を抑えており、ウクライナの物流が滞っている状態だ。トルコは対ロシア制裁にも積極的に参加していない。こうした存在であるトルコが黒海の入り口を抑えているというのは、西側諸国にとってなんとも厄介なことである。

 アメリカにしてみれば、トルコ国内の人権状況や民主政治体制の後退よりも今は機嫌を取って、西側に引き付けておかねばならないということになる。これは次のブログの論稿に譲るが、トルコはアメリカからの支援とクルド人勢力(クルド労働者党)を支援しないことを条件にして、反対していたフィンランドとスウェーデンのNATO加盟に賛成した。トルコにとって有利な条件を西側が受け入れるのはその存在の重要性のためである。

(貼り付けはじめ)

西側がエルドアンと今和解すべき理由(Why the West Should Make Peace With Erdogan Now

-彼は西側諸国が緊急に関係を改善する必要がある不愉快な人物である。

マクシミリアン・ヘス筆

2022年6月22日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2022/06/22/turkey-erdogan-ukraine-russia-war-west-us-geopolitics-black-sea-europe-energy/

民主政治体制の西側諸国は、世界中の独裁者たちや絶対的政治指導者たちと便宜的な同盟を結んできたという長い歴史があり、物議をかもしてきた。倫理的に問題があると非難されているが、このようなスタンスは現実主義的であり、力の均衡を重視する政治の典型である。第二次世界大戦で世界が団結してアドルフ・ヒトラーを打ち負かし、西側諸国が冷戦に勝利することができたのも、このような姿勢によるものだ。

西側諸国が現在、緊急に関係を改善する必要がある不愉快な相手の筆頭は、トルコのレジェップ・タイイップ・エルドアン大統領である。トルコの民主政治体制を積極的に損ない、数十年にわたる自由化を台無しにし、移民を武器にし、国内と隣国シリアの少数派であるクルド人を脅かし、イランのアメリカからの制裁違反を手助けしてきた。最近では、スウェーデンとフィンランドのNATO加盟を阻むと脅している。西側諸国が彼を純粋に信頼できるようになるには、長い時間がかかるだろう。

しかし、現実には、西側諸国はこれまで以上にエルドアンを必要としている。ロシアのウクライナに対する残忍な全面戦争は、地政学的なチェス盤におけるトルコの存在感を大きく高めた。アンカラはキエフへのドローンの重要な供給元として浮上し、幸いにもキエフはその出荷を止めるつもりはないようだ。トルコの武器輸出が拡大すれば、ウクライナの勝利のチャンスは大きく広がるだろう。トルコ海峡から黒海へのアクセスを支配するエルドアンは、2月下旬に軍艦の航路を閉ざした。

同時に、エルドアン大統領が好機と見ているウクライナに関しても、アンカラはモスクワとの協力に前向きである。トルコのメヴルット・カヴソグル外相は6月8日、アンカラでロシアのセルゲイ・ラヴロフ外相とウクライナの穀物輸出ルート確保について話し合い、その一環としてトルコの穀物購入の25%割引を要求したと伝えられている。アンカラの協力がなければ、ロシアによるウクライナの港湾封鎖を打開するための西側の提案も水の泡となる。

西側諸国は、対ロシア経済戦争においてトルコを味方につける必要がある。アンカラの支援だけで、黒海に出入りする制裁対象のロシア製品の流れを制限することが可能だ。アンカラの支援は、ロシアの資金と独裁者のルートを断つ上で極めて重要である。トルコは制裁から逃れたロシアの資金(とオリガルヒのヨット)の主要な目的地となっており、ロシアのウラジミール・プーティン大統領の自国経済を支える新しい役割を強めている。トルコは、ロシアからの支払いを自由に受け入れている数少ない主要国の一つであり、欧米の銀行制裁の影響を弱めることができる位置にいる。トルコが西側諸国の対ロシア経済制裁に参加すれば、対ロシア制裁体制の最大の穴の1つを塞ぐことができる。

しかし、より重要なことは、トルコがヨーロッパのエネルギー供給の再編成において重要な役割を果たすということである。例えば、ヨーロッパの南部ガス回廊戦略(Southern Gas Corridor strategy)の鍵は、トルコのアナトリア横断パイプラインとアドリア海横断パイプライン(それぞれ2018年と2020年に開通)を通じて供給されるアゼルバイジャンのガスで、バルカン半島とイタリアのヨーロッパ・ガス網に供給されるものである。

エルドアン大統領はまた、トルコ国内のガス資源の開発にも積極的で、イスラエルやキプロスの海底ガス田をヨーロッパのパイプライン網に接続する可能性もある。もちろん、こうした努力は、キプロスとその周辺海域をめぐるギリシャとトルコの紛争によって複雑化している。東地中海の豊かなエネルギー資源を十分に活用するためには、ヨーロッパとトルコのパートナーシップを復活させるしかないだろう。このようなパートナーシップは、2020年のタークストリーム・パイプライン(TurkStream pipeline)の開通がトルコ・ロシア関係の新たな高潮を示唆したロシアに対して、エルドアンを翻意させることにもつながるだろう。

最後に、エルドアンと協力することは、ウクライナ戦争を越えて、西側諸国がクレムリンに対して地政学的なレバレッジをかけることにつながる。トルコは、ロシアが関与する3つの紛争でも重要な役割を担っている。シリア、リビア、そしてナゴルノ・カラバフをめぐるアルメニアとアゼルバイジャンの紛争である。エルドアンは過去10年間、これらの紛争に対して温和な無視政策から積極的な介入に転じたが、その動機は、西側諸国から独立した地域大国としてのトルコの役割を高めたいというものであった。エルドアンとの協力関係の再開は、モスクワの世界的影響力を抑制するための更なる圧力となる。

エルドアンの西側諸国離れとモスクワとの関係緊密化を逆転させるためには、その動機を理解することが重要である。現在、西側諸国は彼の懸念に耳を傾けなかった代償を払っている。この流れは、「アラブの春」が北アフリカと中東を席巻した2011年に始まった。エルドアンは、「アラブの春」によって、自分と同じようなイスラム主義者がこの地域で権力を握ることができると意気揚々としていた。オバマ米大統領(当時)がシリアでの安全保障政策を守らず、エジプト軍がクーデターでモハメド・モルシ大統領を追放した際には、ムスリム同胞団(Muslim Brotherhood)に属し、エルドアンが公然と支持していたモルシ大統領(当時)を見捨てたことに、エルドアンは裏切られたと感じている。アンカラ在住の国際関係専門家ムハメッ・ト・コカクは私に対して、「トルコは、アメリカがこの地域への投資に消極的であることを痛感している」と私に語った。同様に、トルコの安全保障政策を専門とするアムステルダム大学博士研究員エリザベッテ・アウニーナは「トルコの安全保障上の懸念は、NATOの課題において特に関連性の高い問題とは認識されていない」と述べている。

しかし、エルドアンの西側離れとモスクワへのシフトを加速させたのは、2016年のトルコのクーデター失敗後の裏切られたという感覚であり、アメリカがクーデターを助長したと公然と非難した。また、トルコが領空侵犯したロシアの戦闘機を撃墜した。この事件は、NATOとロシアやソ連の空軍が関わる事件としては60年ぶりのことであったが、NATOがほとんど反応しなかった。その結果として、エルドアンはNATOの同盟諸国から見捨てられたと感じたのであった。それ以来、エルドアンはモスクワの方がエルドアンの地域的・国内的な立場を向上させるのに有利だと感じている。

それ以来のトルコとロシアの協力には、タークストリーム・パイプライン、ロシアがトルコに200億ドルの原子力発電所を建設する計画、アンカラがモスクワのミサイル防衛システムS―400を購入すると2017年に発表したことなどがある。トルコとロシアは、シリアやリビアの内戦で異なる側を支持するなど、時折対立することもあるが、関係は概して温厚で管理しやすいものに保たれている。そのため、エルドアンの志向を覆すことができれば、西側諸国が得ることのできる戦略的な影響力はますます大きくなる。

西側諸国はモスクワを見捨てる代償にエルドアンにどんなニンジンを提供できるのだろうか? トルコの経済危機は、まさにそのチャンスかもしれない。2022年5月の年間インフレ率は73.5%に達し、外貨準備高は過去最低に近く、トルコリラは2021年の44%下落に続き、今年累計で対ドル30%下落しており、トルコのデフォルトリスクは急増している。外国人投資家はトルコ市場から逃げ出した。新らたな外国資本を必死に探すエルドアンは、地域の重要なライヴァルであるサウジアラビアのムハンマド・ビン・サルマン王太子と関係修復まで行っている。西側諸国にとっては、モスクワを許すよりも、エルドアンに経済的な命綱を提供する方が良いだろう。例えば、アメリカ連邦準備制度理事会(FRB)とヨーロッパ中央銀行は、ここ数十年で大幅に拡大した安定化手段である通貨スワップラインをエルドアンに提供することを検討すべきだろう。ドルやユーロへのアクセスは、アンカラが抱える多くの経済的課題を軽減し、より協力的なパートナーシップを築くための舞台となるだろう。

エルドアンは、自分が強力な手段を持っていることを知っており、他の要求をする可能性が高い。彼は既に、スウェーデンとフィンランドが望むNATOへの加盟に対して影響力を行使し、イスラム国との戦いで西側の勇敢な同盟者であるシリアのクルド人に対してトルコがより自由に行動できるように結びつけている。今月初め、エルドアンはクルド人を標的とした新たな作戦の計画を発表した。エルドアンは地域の他の利益についても要求するかもしれないし、国内の統治に対する西側諸国の批判を鈍らせようとするのは間違いない。このような譲歩は、他の西側諸国の利益にとって高くつく可能性がある。

現時点では、エルドアンに関与することに明らかな躊躇がある。コカクによれば、西側諸国の戦略は「エルドアンが2023年6月の選挙に負ける可能性に期待する」ことのようだ。エルドアンが1年後に自由で公正な選挙と平和的な政権移譲を可能にすることを期待するのは、よく言えば理想主義的、悪く言えば絶望的にナイーブなことである。

エルドアンは不愉快な人物であり、今後もそうあり続けるだろう。しかし、プーティンを弱体化させ、ウクライナの生存を確保するためには、エルドアンがロシアの側ではなく、西側諸国の側にいることが得策である。プーティンを弱体化させ、ウクライナを存続させるためには、ロシア側ではなく、西側諸国が彼の味方になることが得策である。

※マクシミリアン・ヘス:外交政策研究所中央アジア担当研究員。

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アメリカとNATOは黒海でロシアの独占に対抗しなければならない(The US and NATO must counter Russia’s dominance in the Black Sea

ブライアン・ハリントン筆

2021年11月4日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/opinion/national-security/579525-the-us-and-nato-must-counter-russias-dominance-in-the-black-sea/

台湾海峡の緊張が高まり、中国を最優先事項とする包括的な国防指針が示される中、ロイド・オースティン国防長官の先週の旧ソ連圏諸国訪問は、中国と台湾の関係と、失地回復論者(revanchist)のウラジミール・プーティンや黒海の近隣諸国に対するロシアの威圧に十分に注意を払うことのバランスをとらなければならないことを思い起こさせた。2008年のグルジアでの地上戦と2014年のウクライナからのクリミア奪取は、西側が見える旧ソ連諸国が最小限の支援で危機を管理することになった。今春のロシアによるウクライナ東部国境沿いの大規模な動員は、同地域における将来の侵略を抑止するための選択肢が限られていることを示した。オースティン長官のウクライナ支援の確約、グルジアとの訓練協定、ルーマニアとの協議に続いて、黒海でロシアに対抗する具体的な取り組みが必要である。

ロシアのバスティオン型とカリブ型ミサイルは、高度な対艦巡航ミサイルと長距離陸上攻撃型があり、ロシアに恐るべき攻撃能力を提供している。このシステムをロシア占領下のクリミアに配備し、大規模な黒海艦隊に搭載すれば、中国が南シナ海で展開しているのと同様の対アクセス・領域拒否(AD2)戦術を黒海で展開することができる。さらに、ロシアの航空機は黒海におけるNATO軍の存在に常に挑戦している。最近では、10月19日にSU-30が国際空域でアメリカ軍の爆撃機を護衛したと報じられた。現在では、黒海にいるアメリカとNATOの軍艦は、ロシアの軍艦を追尾する形になり、攻撃機によってそれらの上空を通過するのが通例となっている。

アメリカ軍の司令官クラスの将官たちは、戦術的な誤算が戦略的な影響を及ぼしかねない危険な上空飛行の状況下で、正しく自制してきた。しかし、挑発的なロシアの行動は懸念に値する。ヨーロッパ戦域を担当するアメリカ海軍のロバート・バーク提督はこの夏、「指揮官に最初の一発をあごで受けるよう求めるつもりはない」と述べ、危機への対応をより良くするための措置が取られるようになった。ロタにある4隻の米駆逐艦(DDG)は、黒海での作戦に最も適したプラットフォームを提供するため、最新のイージス戦闘システムスイートを搭載した船体への入れ替えが進められている。6月には、英国海軍の軍艦「HMSディフェンダー」がロシアの航空機からブザーを受け、その進路上に物体を落とされた可能性があり、同盟諸国の団結を示した。

おそらく最も重要なことは、バイデン大統領が9月にウクライナのヴォロディミ0ル・ゼレンスキー大統領と会談し、更にオースティン国防長官がウクライナを訪問したことにより、この地域に対する関与の可視性が高まったことである。しかし、この立場を強化するために、もっとできることがある。

高度な戦争と相互運用性を示す作戦は、単なる存在感を信頼できる抑止力へと高める。モントルー条約は、黒海に常時配備できる軍艦のトン数を制限しているが、シーブリーズ演習で示されたように、同じ考えを持つ国々のグループがこの制限を克服するために相当な戦力を作り出すことができる。アメリカとウクライナが主導するこの多国籍演習は、この夏で21回目を迎え、水陸両用作戦や実弾砲撃演習を含むまでに拡大している。

同様に、NATO海上群(SNMG12は、同盟諸国全体から交代で参加し、リーダーシップを発揮することで、黒海の自由を支援するNATOの統一的なメッセージを発信することができる。しかし、このプレゼンスを実質化するためには、継続的な成長が必要となる。北ヨーロッパ戦域での多国間演習「フォーミダブル・シールド」は、オランダの発案により開始され、アメリカによる弾道弾迎撃でクライマックスを迎えた。黒海で同盟諸国やパートナーと共により高性能な能力を実証することは、クリミアから頻繁に試射を行うロシアに対抗するのに役立つことになる。

黒海の戦闘空間を形成するもっと抜本的な方法は、ロシアの支配を脅かす範囲と数量を持つ沿岸防衛巡航ミサイルCDCM)の存在である。ルーマニアはNATOの熱心な加盟国であり、防衛への最低限の貢献を超え、1000人以上のアメリカ軍をローテーションで受け入れ、ヨーロッパの弾道ミサイル防衛を担う唯一のイージス・アショア施設を保有している。このような同盟国の模範的な行動は、ルーマニアの権威主義的支配の記憶と、黒海におけるロシアの侵略が世界の海へのアクセスにもたらす直接的な脅威とが、そう遠くない時期に結びついていることは間違いない。

今年5月、ルーマニアが海上攻撃ミサイルの購入を約束し、その立場を強化した。この沿岸防衛システムは、2024年までに運用開始されれば、黒海におけるプーティンの計算を複雑にすることは間違いないだろう。しかし、それだけではクリミア半島への対抗策としては不十分だ。アメリカとNATOは、ルーマニア、ブルガリア、トルコが沿岸防衛巡航ミサイルCDCM)のカヴァー範囲を重複させて黒海艦隊を危険にさらす追加オプションを追求する必要がある。

ロシアが西方に拡大し、NATOの同盟諸国を脅かすことは、近い将来にはありえないかもしれないが、抑止力を短期間に増大させることはできない。黒海の戦闘空間はロシアがほぼ掌握している。このロシアによる支配はNATOの同盟諸国であるルーマニアとブルガリアに戦略的脅威を与え、西側に面するウクライナとグルジアにはすでに領土と人命を喪失させる結果になっている。ロシア艦隊を危険にさらすことができるハイエンドの戦争デモンストレーションと沿岸防衛巡航ミサイル(CDCM)を特徴とするアメリカとNATOの有意義なプレゼンスは、継続的な侵略を抑止し、黒海の国際水域の自由を維持する方法として追求されるべきものである。

※ブライアン・ハリントン:スタンフォード大学フーバー研究所国家安全保障問題研究員、米国海軍の水上戦担当中佐。ここで述べられた意見は著者のものであり、アメリカ海軍や国防総省を代表するものではない。

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アメリカ国務省はアメリカのトルコ政策を再考すべきだ(The State Department should rethink its Turkey policy

リチャード・ガザル筆

2021年8月4日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/opinion/international/565726-the-state-department-should-rethink-its-turkey-policy/

アメリカの対トルコ政策におけるアメリカ連邦議会とアメリカ国務省の不一致は、ワシントンの外交政策分野における最も知られざる秘密である。連邦議会は、地域的・国際的な紛争におけるトルコの役割に超党派で深い関心を示しているが、国務省は、NATO加盟の大国であるトルコの多くの悪行には目をつぶり続けているのである。

2021年7月21日、連邦上院外交委員会はトルコに関する公聴会を開き、ヴィクトリア・ヌーランド国務次官(政治問題担当)の証言を通じて国務省のトルコ政策について模索した。外交委員会の委員たちはヌーランドに対し、アメリカとNATOの利益を侵害する同盟国としてのトルコの敵対的役割の増大、国内の民主化戦争、人権状況の悪化などについて、手加減なく質問した。

確かに、今回の公聴会では、ジョー・バイデン政権のトルコ政策の賞賛すべき点が浮き彫りにされた。しかし、現地の現実とは相容れない、誤った見解の例も多く、懸念材料となっている。

ヌーランドは、アメリカとトルコの関係を「多面的で複雑(multifaceted and complex)」と表現し、隠された事実を掴もうとしたようだ。「多面的で複雑」というのは、表面上は関係を正確に評価しているが、その「複雑さ」は、トルコが同盟国と敵対国の二重性を持っていることに起因していると考えられる。

連邦上院外交委員長のボブ・メネンデス上院議員(ニュージャージー州選出、民主党)と共和党側の幹部委員ジェームズ・リッシュ上院議員(アイダホ州選出、共和党)は、トルコが何度も「出口」を提示されているにもかかわらず、ロシアの対空ミサイルシステムS-400を躊躇なく取得していることを厳しく追及した。ヌーランドは、トルコに対する対敵対者制裁措置法(CAATSA)制裁を維持し、F-35統合戦闘機計画からの除外を継続することを約束した。また、トルコがロシアの兵器システムを追加で購入した場合、さらなる制裁を求めると述べた。

公聴会の前日、トルコのエルドアン大統領は1974年からトルコが不法占拠している北キプロスを訪問し、東側緩衝地帯にあるキプロスの象徴的なリゾート地であり、トルコ侵攻以来閉鎖されているヴァロシャを、国連安保理決議550号および789号を無視した形で再開発する計画を発表した。この計画は、アメリカと国際社会の決意を明らかに試すものとして、北キプロス島にトルコの独立国家を建設するというエルドアンの構想を強調するものである。

アントニー・ブリンケン米国務長官は、トルコの発表を速やかに非難した。ヌーランドは、エルドアンが提案したキプロスの二国間解決策を拒否することを再確認し、唯一受け入れられる方法は、同島を二国間連邦として再統一することであると述べた。

しかしながら、メネンデスは、トルコが北キプロスに無人機基地を設置するとの報道に懸念を示したが、ヌーランドはコメントを避けた。トルコはシリア北部やイラク北部などでキリスト教徒に対してドローンを配備している。「デイヴィッド・シシリーン連邦下院議員(ロードアイランド州選出、民主党)とガス・ビリラキス連邦下院議員(フロリダ州、共和党)は、トルコの無人機の開発、展開、拡散を国際的な脅威として調査するよう国務省に要請している。

ヌーランドの最も問題のある発言は、「トルコ軍のシリア北部への駐留によってアサド政権による無差別標的からシリア人が守られている」というものであった。バシャール・アル・アサド政権は、数え切れないほどの人的被害に対して確かに責任を有しているが、トルコをシリア国民、特に北部のクルド人、シリア人、ヤシディ教徒の救世主とするのは、見当違いで危険なほどの見当違いである。2020年5月、ノーベル平和賞受賞者のナディア・ムラドは次のように述べている。「トルコの支援を受けた民兵たちが、シリアのアフリンでヤシディ教徒たちに対する民族浄化作戦を黙々と行っている。彼らは女性を誘拐し、民間人を殺害し、家や祠を破壊している。そして、シリア北部で誘拐されたヤジディ教徒の女性たちが、トルコ東部に続々と送られている」。

2016年以来、トルコとトルコが支援するイスラム主義民兵組織は、この地域で唯一成功した民族宗教の自由の実験である民主的なシリア北東部自治行政区(AANES)の破壊に執念を燃やしている。米外交問題評議会に寄稿したエイミー・オースティン・ホルムズは、アメリカが仲介したシリア北東部の停戦に対するトルコの違反を、動的なトルコ軍の攻撃を通じて、1年間で800件以上暴露している。

2019年10月以降、トルコと支援している民兵勢力は、イスラム国(ISIS)との戦いにおけるアメリカの重要な同盟者であるキリスト教シリア軍評議会兵士を含むシリア民主軍メンバー200人以上を誘拐したと伝えられている。捕虜たちは、ジュネーブ条約第4条違反でトルコに不法移送され、その後、拷問を受け、不法に裁判にかけられ、トルコの刑務所で終身刑を宣告されたと伝えられています。

メネンデスは、シリア北部で行われた数々の人権侵害におけるトルコの役割にどう対処しているのか、もっと明確に連邦議会に示すよう政権に要求した。

しかし、連邦上院外交委員たちは、レバノンにおけるトルコの挑発行為についてヌーランドに質問することができなかった。報道によると、トルコはレバノンに流入するシリア難民やパレスチナ難民を利用し、南部や東部のヒズボラへの対抗策として、レバノン北西部のスンニ派集中地域に武器や過激なイデオロギーを輸入しているとのことである。レバノンが外国の代理勢力によって荒廃させられた悲劇的な歴史に鑑みれば、トルコのレバノンへの関与は悲惨な結果を招きかねない。

トルコの国際的な挑発から一転して、メネンデスとヴァン・ホーレンは、トルコ国内の民主政治体制の後退に深い懸念を表明した。この加速する非自由化の傾向は、トルコの法制度がジャーナリストや思想家、政治的反対者、宗教的少数派に対して武器化していることを通して見ることができると、両者は指摘した。

ヴァン・ホーレンは次のように述べた。「エルドアンは私たちが何を言おうが気にしないと明言している。だから、声明を出すだけでは不十分なのだ。トルコは不誠実な同盟国であり、代償を払う時だけ反応するだろう。それでは、国際社会を馬鹿にするエルドアンに対して、私たちは何をするつもりなのか?」

ビル・ハガティ連邦上院議員(テネシー州選出、共和党)から再度質問を受けたヌーランドは、トルコとの戦略的対話について、「あらゆるレヴェルで関与、関与、関与ということになる。ただし、意見が異なる場合は率直に言う」と述べた。一見、良いアプローチに見えるが、重要な懸念はその詳細と定義にある。何をもって「率直な」対応とするのか、またトルコのどのような行動に対して政権が反対するのか?

今回の連邦上院公聴会では、バイデン政権がエルドアン政権の違反行為に対して、より冷静で曖昧でない、そして、そうなのだ、より厳しいアプローチを確立し実施する責任を連邦議会が持ち続ける必要性が明確に示された。もしトルコが危険な軌道に歯止めがかからないままであれば、アメリカの地域的利益は損なわれることになる。

※リチャード・ガザル:「イン・ディフェンス・オズ・クリスティアンズ」上級部長。アメリカ空軍犯罪捜査官、レヴァント地域とトルコを専門とする情報士官を務めた。

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ロシアがウクライナ国内で勢力を確立する中、アメリカは黒海に2隻の艦艇を派遣(US sending two warships to Black Sea as Russia builds up forces in Ukraine

エレン・ミッチェル筆

2021年4月9日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/policy/defense/547446-us-sending-two-warships-to-black-sea-as-russia-builds-up-forces-in-ukraine/

トルコ政府は金曜日、ウクライナとの国境沿いでロシアが軍事力を増強する中、アメリカは来週黒海に2隻の軍艦を派遣すると発表した。

NATOの同盟国であるトルコは、ワシントンが2週間前にアンカラに通知した後、2隻の米軍艦が水曜日から木曜日にかけて黒海に到達すると発表した。

ロイター通信が報じたところによると、トルコ外務省によれば、アンカラに海峡の支配権を与えた1936年の条約であるモントルー条約に沿って、2隻の米軍艦が黒海を通過するという通知が15日前に外交ルートで送られてきた、ということだ。ロイター通信は、「米軍の艦船は5月4日まで黒海に留まる予定だ」と報じた。

国防総省のジョン・カービー報道官は、金曜日に具体的な動きについて認めず、国防総省は日常的にこの地域に船を派遣していると記者団に語った。

カーバーは「何も新しいことではない」と述べた。

アメリカ海軍はしばしば黒海(ウクライナ南部のほぼ全ての国境に沿った海域)を航行するが、今回の動きは、ワシントンが最近のロシアの攻勢を認識していることをモスクワに示すものだ。

カービー報道官は金曜日、ウクライナ東部でのロシアの最近の行動について、モスクワが主張しているように訓練ではなく、軍の「増強(buildup)」であると複数回述べた。

先月、ウクライナ東部でモスクワが支援する分離主義勢力とウクライナ軍との戦闘が再開され、両グループが昨年夏に結んだ停戦協定が破られた。この行為にNATO諸国は懸念を抱き、在ヨーロッパ米軍司令部は警戒態勢を最高レヴェルに引き上げている。

これに対してロシアは、黒海と海岸線を接していないNATO諸国がそれぞれの国の海軍の活動を活発化させていると非難している。

ホワイトハウスは今週、ロシアがウクライナからクリミアを併合した2014年以降、いつにも増してウクライナ東部国境に多くの軍隊を配置していると述べた。

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国防総省はウクライナ支援のために黒海に海軍艦艇を送る可能性(Pentagon may send warships to Black Sea in support of Ukraine

エレン・ミッチェル筆

2021年4月8日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/policy/defense/547247-pentagon-may-send-warships-to-black-sea-in-support-of-ukraine/

ロシアがアメリカの同盟国ウクライナの東部国境に将兵と軍事物資を集めていることを受け、アメリカはウクライナへの支援を示すために黒海にアメリカ海軍の艦艇を派遣することを考慮中だ。

アメリカ海軍は定期的に黒海において艦艇を航行させている。黒海はウクライナの南部国境線のほぼ全域に接している。しかし、アメリカが海軍艦艇を黒海に新たに派遣することは、モスクワに対して、「アメリカは事態の推移を監視している」ということを示すシグナルとなる、と木曜日、国防総省のある高官はCNNの取材に対して語った。

アメリカが艦艇の派遣を行うならば、黒海内に入る意図があることを14日前にトルコに通告することになる。これは1936年に結ばれた条約でトルコ政府が黒海につながる海峡のコントロールを行うという取り決めのために必要な手続きだ。

国防総省が艦艇派遣を検討しているのか、アメリカ軍艦艇の黒海に入る意志をトルコに既に通知したのか、という本誌の質問に対して、国防総省の報道官はこれら全ての質問をアメリカ海軍ヨーロッパ派遣軍に照会した。

CNNの取材に応じた国防総省のある高官によると、アメリカ海軍は今後も国際空域で黒海上空に偵察機を飛ばし、ロシアの船の動きや2014年にモスクワがウクライナから奪取したクリミアでの部隊の動きの可能性に目を光らせていくということだ。

情報・諜報機関の複数の報告によると、ロシアは訓練や演習を行っており、追加の軍事行動に関する命令は確認されていないが、前述の米国防総省高官によると、状況は急速に変化する可能性があるということだ。

バイデン政権は、先月ロシアが東ヨーロッパに対して武力を用いての威嚇のレヴェルを上げており(saber rattling)、ウクライナ東部でモスクワが支援する分離主義勢力とウクライナ軍との戦闘が再開され、両者が昨年夏に行った停戦を終了させて以来、警戒を強めている。

バイデン大統領、ロイド・オースティン国防長官、マーク・ミリー米統合参謀本部議長、アントニー・ブリンケン国務長官、ジェイク・サリヴァン国家安全保障問題担当大統領補佐官はその後、ウクライナの担当者たちと連絡を取っている。

一方、米欧州派遣軍司令部は警戒態勢を最高レヴェルに引き上げている。

国防総省の報道官ジョン・カービーは火曜日に記者団に対して次のように述べた。「私たちはロシアに対し、国境沿いに集結させているロシア軍が何をしているのか、その意図をより明確にするよう求めるとともに、ミンスク合意で求められた停戦を引き続き求める」。

カービーは更に、「国境沿いの緊張を緩和すること」と「ウクライナの領土と主権がロシアによって尊重されること」が重要であると付け加えた。

ロシアのウラジミール・プーティン大統領は今週、ドイツのアンゲラ・メルケル首相との電話会談の中で、ウクライナ政府のウクライナ東部地域での攻撃的な行動を非難した。プーティンは「東部地域における状況の悪化させているのはキエフだ」と主張した。

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国防総省はロシアがサーベルを鳴らし始めたので警戒している(Pentagon on alert as Russia steps up saber rattling

エレン・ミッチェル筆

2021年4月4日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/policy/defense/546346-pentagon-on-alert-as-russia-steps-up-saber-rattling-in-eastern-europe-and/

ロシアは、東ヨーロッパと北極圏でサーベルを鳴らし、バイデン政権を警戒させている。

この2週間、モスクワはウクライナ東部での軍備増強、アラスカ領空での軍事飛行、北極での潜水艦活動など、陸、空、海でワシントンとその同盟諸国を試そうと動いてきた。

国防総省報道官ジョン・カービーは水曜日、「ロシアがどのような脅威を抱いているか、私たちははっきりと認識している。私たちは非常に、非常に真剣に受け止めている」と述べた。

ウクライナ東部でモスクワが支援する分離主義勢力とウクライナ軍の戦闘が再開され、両グループが昨年夏に結んだ停戦協定が終了した後、国防総省は特にロシアの活動について監視を行っている。

2021年の開始以来、双方の小競り合いでのウクライナ兵20名が死亡している。

両者は、モスクワがウクライナからクリミアを奪取・併合した2014年から戦闘を続けており、キエフが主張する紛争は、開始以来1万4000人が死亡している。

ロシアのジェット機や爆撃機も頻繁に同盟諸国の領空近くを飛行しており、NATOのジェット機は月曜日だけで10回もスクランブル発進して対応することを余儀なくされた。

加えて3月下旬には、ロシアの核弾道ミサイル潜水艦3隻が北極圏で同時に数フィートの氷を割って軍事訓練を行い、クレムリンが北極圏の防衛力を強化する動きを見せている。

ロシアの積極的な行動により、在ヨーロッパ米軍司令部は警戒態勢を最高レヴェルに引き上げ、特にウクライナでの活動は、バイデン政権の国家安全保障部門のトップが、ウクライナのカウンターパートや地域の他の指導者に電話をかけるよう促している。

米統合参謀本部議長のマーク・ミリー大将は水曜日、ウクライナのルスラン・ホムチャク参謀総長およびロシアの最高幹部であるヴァレリー・ゲラシモフ参謀総長と電話で会談した。

その翌日、ロイド・オースティン国防長官はウクライナのアンドリー・タラン国防相に電話をかけ、「地域の安全保障状況について議論」し、「ウクライナ東部における最近のロシアの攻撃的で挑発的な行動のエスカレーション」を非難したと国防総省のカービー報道官は述べている。

先週、ジェイク・サリヴァン国家安全保障問題担当大統領補佐官もウクライナ側と話した。アントニー・ブリンケン国務長官も、ドミトロ・クレバ外相と「安全保障協力強化の方法」について議論したと述べた。

全ての指導者たちは、ワシントンがキエフを支持することを約束した。

しかし、ロシアは金曜日、NATOにウクライナに軍隊を派遣しないよう警告し、そのような行動は緊張をエスカレートさせ、モスクワが対応せざるを得なくなると脅した。

クレムリンのドミトリー・ペスコフ報道官は金曜日に記者団に対し、「このようなシナリオは、ロシアとの国境付近の緊張を更に高めることになるのは間違いない。もちろん、これはロシア側の安全を確保するための追加措置を求めるものだ」と述べた。

米軍北部司令部のトップ、グレン・ヴァンヘルク空軍大将は、米露両国が冷戦時代のような「大国間競争(great power competition)」に戻っていることが原因だと述べた。

ヴァンヘルクは水曜日に記者団に対して「明らかに、ロシアは世界的な舞台でその影響力と能力を再強化しようとしている」と述べた。

「昔と今の違いは、傍受がより複雑になっていることだ。複数アクセス、複数プラットフォームで、しばしば防空識別圏に入り込み、何時間も滞在することもある」とヴァンヘルクは付け加えた。

2020年、北アメリカ空域の防衛を担当する北アメリカ航空宇宙防衛司令部は、冷戦終結後のどの年よりも多くのロシア軍のアラスカ沖での飛行に対応した。

モスクワの好戦的な姿勢は2021年に入っても続いているようで、バイデン大統領に政権初期の外交政策上の課題を与えている。

先月、ロシアのプーティン大統領を「殺人者」だと思うかと問われたバイデンは「思う」と答え、ロシアの指導者は2020年の選挙を狙った影響力行使やその他のサイバー攻撃で「代償を払う」ことになるだろうと付け加えた。

強硬姿勢を裏付けるように、バイデンは2月下旬、ロシアから国境を守るため、ウクライナにさらに1億2500万ドル相当の安全保障支援を承認した。この資金は、クリミア併合以来、米国政府が同国に送った20億ドルを超える殺傷力の高い武器支援に追加される。

ウクライナ東部での戦闘が激化するかどうか、NATOがどう対応するかはまだ分からないが、国防総省は警戒態勢に入っていることを明らかにした。

国防総省のカービー報道官は木曜日、「私たちはウクライナ軍からの国境沿いにロシア軍を配置し、部隊を配置しているという報告に関して、状況を非常に注意深く監視している」と述べた。

カービー報道官は続けて「しかし、私たちは苦い歴史から、ロシアが主張する意図を額面通りに受け取ってはいけないことを学んできた」とも語った。

(貼り付け終わり)

(終わり)※6月28日には、副島先生のウクライナ戦争に関する最新分析『プーチンを罠に嵌め、策略に陥れた英米ディープ・ステイトはウクライナ戦争を第3次世界大戦にする』が発売になります。


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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める
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 古村治彦です。

 ウクライナ戦争勃発直後、ほぼ同じ日に書かれた論稿をご紹介する。昨年末からウクライナ国境にロシア軍が集結していたこともあり、この論稿は戦争勃発のかなり前から準備されていたものだろうと思う。また、ロシアとウクライナの戦争についてはシミュレーションがなされていて、それをそのまま論稿にしたのだろうとも思われる。この論稿を書いたセス・クロプセイは元海軍士官で、海軍次官補を務めた人物である。軍事の専門家で、恐らく作戦の担当でもあったであろう人物だろう。アメリカがどのようなシミュレーションをしていたのかを知るのに便利な論稿である。そのシミュレーションは次の通りである。

(1)ルーマニア、ブルガリア、ポーランド、バルト海諸国に師団級の戦闘部隊を迅速に前方展開(ハンガリーが入っていない)、即応部隊であるアメリカ第18空挺団の派遣。

(2)NATO諸国はウクライナ国内における補給拠点の確保(リヴィウ)、旅団レベルの限定的な部隊と航空および情報支援を準備。

(3)NATO諸国によるはロシア対する大規模なサイバー対応(攻撃、ルーマニアに展開するアメリカ空軍と陸軍の電子戦(electronic warfareEW)部隊の作戦実行。

(4)アメリカ海軍の大規模な水上艦艇演習の実施、オホーツク海やバレンツ海に潜入しての秘密作戦。

(5)アメリカ軍による東地中海に誘導弾潜水艦の配備。

(6)、アメリカ軍による戦略爆撃機を中央ヨーロッパに前方展開

 アメリカ軍は戦略爆撃機、誘導弾潜水艦、水上艦艇、即応地上部隊をバルト海から黒海に至る地域に派遣するということだ。アメリカがこれらを派遣しただけで、ロシアが「こりゃどうも失礼しました」とウクライナから撤退するということはないというのは誰でも分かることだろう。ウクライナ侵攻の決断とは、そう言ったことも考慮しての決断である。こういった措置を行うのは戦争が勃発する前までは有効であろうが、それ以降はウクライナ戦争を停めるには有効ではない。ウクライナ以外のNATO加盟諸国を防衛する意思を示すということにはなる。

 現状ではウクライナ戦争は膠着し(落ち着き)、アメリカは大規模な資金援助と武器・物資援助を行っている。アメリカ・ウクライナ連合軍対ロシア軍という様相になりつつある。ヨーロッパ諸国は自分たちでは実質的に何もしないで、アメリカに守ってもらいながら、口先だけで威勢の良いことを言っている。それもだんだん元気がなくなっている。皆、戦争にうんざりなのだ。私は早い段階、特にウクライナがキエフ防衛を成功した時点で、有利な条件で停戦をすべきとこのブログで書いてきた。しかし、あの時に勢いづいた「正義派」の声は大きくどうしようもなかった。あの正義派の人々は現状をどう思っているのか。拳をどうおろそうかと迷っているならまだ良い方で、「あれそんなことありました?」とでも思っているなら救いようがない。

(貼り付けはじめ)

プーティン対西側世界:ウクライナを支援しより拡大した戦争に備えるための6つのステップ(Putin vs. the West: Six steps to help Ukraine and prepare for a wider war

セス・セス・クロプセイ筆

2022年2月24日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/opinion/national-security/595686-putin-vs-the-west-six-steps-to-help-ukraine-and-prepare-for-a-wider/

ウラジミール・プーティンによるウクライナに対するいわれのない攻撃は、80年にわたるアメリカの外交・安全保障政策の対象であった国際秩序の独立と主権を脅かすものである。崩壊した国際秩序は、世界中の同盟諸国やパートナーの安全保障、航行の自由、人権、自由な企業活動を危険にさらす。この紛争は、アメリカにとって直接的な関心事である。

本日正午の時点で、ウクライナにおける戦術状況は流動的である。しかし、ロシア軍はドンバスで「接触線(Line of Contact)」を越え、オデッサやマリウポリに上陸し、ハリコフ付近でロシア・ウクライナ国境を越えた模様である。更に、ロシアは民間・軍事インフラに対する事前攻撃を相次いで行っており、ドニプロ、キエフなどでの爆発が報告されている。

今後数時間、ロシアの空爆が続くだろう。ハリコフが攻撃され、残酷な市街戦が展開されるだろう。マリウポリに対するロシアの水陸両用攻撃は、ドンバスからの地上攻撃と、クリミアからの空からの攻撃と相まって行われる可能性が高い。ロシアのオデッサへの攻撃は、その意図の広範さを示している。今後数日のうちに、プーティンはキエフへの攻撃を命ずるかもしれない。

バイデン大統領は、NATOの同盟諸国とともに、ウクライナの防衛のために地上軍を投入しないことを決めてから長いが、ウクライナ人だけがウクライナを防衛することになるだろう。NATOの制裁措置は、ロシア経済がもともと脆弱であることと、経済的圧力が明らかに協調的であることから、影響を与えるだろう。しかし、制裁が効果を発揮するまでには時間がかかり、行動と罰の間に時差が生じる。抑止力は、特にロシアのような核保有国にとっては、紛争が始まれば終わりというものではないことを覚えておく必要がある。西側諸国は、大西洋同盟の領土の安全を確保し、ロシアの軍事的利益を制限し、必要であれば反エスカレーションに備えるために行動しなければならないのである。

更に言えば、ロシアの明らかに最大主義的な領土目標を考えると、抑止力は極めて重要である。昨日行われたプーティンの演説は、ほぼ間違いなく事前に録音されたもので、ウクライナ側が要請した国連安保理での会合と重なった。プーティンはウクライナを占領する計画を否定し、その代わりに非武装化を希望している。これは政治的な二枚舌(dobule-speak)である。ウクライナを非軍事化するには、キエフの独立した選挙で選ばれた政府を倒し、友好的な政権を樹立するしかない。加えて、プーティンは、介入を望むいかなる勢力に対しても、厳しく、即座に結果を出すと明確に脅した。プーティンが何をもって「介入(intervention)」と見なすかは分からないが、大西洋同盟は、軍事的な動きや援助の提供でさえ、ロシアの反応を誘発しかねないことを考慮しなければならない。

従って、西側諸国は、この危機がエスカレートする中で同盟諸国の利益と安全を確保し、将来のエスカレーションを抑止するために、6つのステップを踏む必要がある。

第一段階として、アメリカと同盟諸国は、ルーマニア、ブルガリア、ポーランド、バルト海に師団級の戦闘部隊を迅速に前方展開しなければならない。NATOにとって最大のリスクは、ロシアの水平方向の拡大、すなわちバルト海や黒海での攻勢である。ロシアの地上軍はウクライナ国境に圧倒的に集中しており、バルト海への即時攻勢の可能性は限定的である。しかし、ロシア海軍は黒海と東地中海に、複数の水上戦闘部隊、巡航ミサイルと防空システムを装備した少なくとも6隻の潜水艦を配備し、強力なプレゼンスを確立している。

即応部隊であるアメリカ第18空挺団が最も合理的な配備部隊である。これと並行して、防空と地表発射型対地・対艦ミサイルを優先的に配備する必要がある。さらに、アメリカは地中海のロシア海軍部隊に対抗し、軍艦を派遣し、潜水艦を追跡し、防空網を構築すべきだ。これらは、ロシアの現在の作戦能力を混乱させるとともに、NATOの同盟諸国に対するロシアの水平的なエスカレーションのコストを引き上げることになる。

第二段階として、NATOはウクライナに補給しようとする部隊に対するロシアの嫌がらせに備えるべきである。アメリカ大使館がリヴィウに移転し、必要であれば第二の首都として使用される可能性が高いことから、最も可能性の高い中継地点はリヴィウである。地上部隊は今のところ問題外だが、アメリカは展開する人員の引き抜きに備えなければならない。この作戦のために、旅団レベルの限定的な部隊と航空および情報支援を準備する必要がある。

第三段階として、もしまだ実行していないのであれば、NATOはロシアの侵攻に対して大規模なサイバー対応を実行すべきである。ロシアは、銀行、政府サイト、緊急サービスなどの重要な公共インフラに対するサイバー作戦を標準的な作戦としている。ロシアが水平方向にエスカレートしない限り、これは正当化されないだろう。しかし、それ以前に、アメリカはロシアの国家機関やロシア軍に対してサイバーや電子的な圧力をエスカレートさせることを検討すべきだ。ルーマニアに展開するアメリカ空軍と陸軍の電子戦(electronic warfareEW)部隊は、特に空挺部隊の場合、ロシアの通信を妨害し、ロシアの航空作戦を混乱させることができる。アメリカのサイバー司令部は、ロストフとウクライナの間のロシアの通信を妨害し、必要であれば社会全体に攻撃を拡大することができる。

第四段階として、アメリカ海軍は大規模な水上艦艇演習を通じて公に、またオホーツク海やバレンツ海に潜入して密かに、ロシア海軍基地の近くで活動することである。これらの基地は、ロシアの海軍戦略にとって極めて重要である。ロシアに必要な第二撃の保険を提供するのである。冷戦時代、ロシアが最も恐れていたのは、アメリカの先制攻撃を促すような核のアンバランスであった。このような恐怖がプーティンを突き動かすのである。これらのロシア海軍基地に圧力をかけることは、プーティンがNATO加盟諸国を攻撃することを決めた場合、アメリカは長期的な紛争に備える用意があることをクレムリンに伝えることになる。

第五段階として、アメリカ海軍は東地中海に誘導弾潜水艦を配備することである。オハイオ級SSGNは156発の巡航ミサイルを搭載しており、ロシアの複数の標的を無警告で攻撃するのに十分な兵装である。1月にキプロス付近に配備されたUSSジョージアは、その場所に戻して待機させるべきである。

第六段階として、アメリカ空軍はバルト海や黒海でのスタンドオフ攻撃に備え、あるいはロシアがエスカレートした場合に信頼できる追加の核抑止力を提供するため、戦略爆撃機を中央ヨーロッパに前方展開することを検討すべきである。これと並行して、アメリカ海軍はヨーロッパの抑止パトロールに参加する潜水艦の数を増やすべきであるが、この事実はロシアに知られることがないように公表する必要はない。

プーティンは戦争をしている。彼は私たちと戦争をすることはないだろうが、彼は今戦争をしている。ロシアの様々な行動に対するいかなる対応も、それが将来のエスカレートを抑制することに失敗すれば、それはアメリカと同盟諸国、パートナー諸国の安全保障にリスクとなる。

※セス・クロプセイ:ワシントンDCにあるシンクタンク「ヨークタウン研究所」創設者兼所長。元海軍士官で米海軍次官補を務めた。

(貼り付けおっわり)

(終わり)
※6月28日には、副島先生のウクライナ戦争に関する最新分析『プーチンを罠に嵌め、策略に陥れた英米ディープ・ステイトはウクライナ戦争を第3次世界大戦にする』が発売になります。


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