古村治彦(ふるむらはるひこ)の政治情報紹介・分析ブログ

SNSI研究員・愛知大学国際問題研究所客員研究員の古村治彦(ふるむらはるひこ)のブログです。翻訳と評論の分野で活動しています。日常、考えたことを文章にして発表していきたいと思います。古村治彦の経歴などについては、お手数ですが、twitter accountかamazonの著者ページをご覧ください 連絡先は、harryfurumura@gmail.com です。twitter accountは、@Harryfurumura です。よろしくお願いします。

タグ:BRICS

 古村治彦です。

 私は、「西側諸国(the West、ジ・ウエスト)」対「それ以外の国々(the Rest、ザ・レスト)」の対立構造が世界を変化させると主張している。グローバルノースとグローバルサウスという分裂もこれに似ているが、地理に関する言葉が入っているため、ロシアや中国といった北半球に位置する国々がグローバルサウスに入っていることに違和感を持つ人がいるだろうと考え、これらの言葉を使う際には気を付けている。しかし、マスメディアでは、グローバルノース対グローバルサウスという言葉が良く使われている。

西潟諸国対それ以外に国々という分裂が明らかになったのがウクライナ戦争だった。ウクライナ戦争が発生し、ロシア非難決議について、強制力を持つ国連安保理決議はロシアが拒否権を持っているので、そもそも可決成立しないことは分かっていた。強制力を持たない国連総会決議では、反対5カ国、棄権35カ国、意思を示さずが12カ国となった。人口比で言えば「賛成15対反対85」ということで、世界の大きな分断が明らかになった。以前であれば、西側・欧米諸国の意向に唯々諾々と従っていた国々が、ある程度自分たちの意向で動けるようになっている。それだけ欧米諸国の力が落ちているということが明らかになっている。

その代表格がBRICS(ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカ)であり、G20のうちの、西側諸国のG7加盟諸国以外の13カ国である。この13カ国は、BRICS以外では、アルゼンチン、オーストラリア、インドネシア、メキシコ、韓国、サウジアラビア、トルコである。これらの地域大国・二番手国がこれから重要になってくる。以下の論稿では、

ブラジル、インド、インドネシア、サウジアラビア、南アフリカ、トルコを重要な「どちらにも肩入れしない国々(swing states)」「中規模大国(middle powers)」と規定している。これらの国々は、地域のリーダーとしての役割を果たし、国際政治においても重要な役割を果たしている。トルコとサウジアラビアは中東地域の大国であり、地域の安定において重要な存在である。トルコは東西をつなぐ地理的な位置、ロシアとの関係もあり、ウクライナ戦争において和平の仲介を行おうとしている。ブラジルやインドネシア、南アフリカは資源大国としての存在感を示しているが、工業化を目指している。
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 西側諸国の衰退とそれ以外の国々の台頭は大きな世界の流れである。私たちは、そのことをしっかりと理解して、世界の変動に備えねばならない。日本にとって、最も馬鹿らしいのは、アメリカと心中する覚悟で、中国に突っかかり、戦争をしてしまうことだ。

(貼り付けはじめ)

6つのどちらにも肩入れしない国々が地政学の将来を決定する(6 Swing States Will Decide the Future of Geopolitics

-これらのグローバルサウスの中規模大国がアメリカの政策の焦点となるべきだ。

クリフ・カプチャン筆

2023年6月6日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2023/06/06/geopolitics-global-south-middle-powers-swing-states-india-brazil-turkey-indonesia-saudi-arabia-south-africa/

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2018年7月27日、南アフリカのヨハネスブルグで開催されたBRICS首脳会議で挨拶するロシアのウラジーミル・プーティン大統領、インドのナレンドラ・モディ首相、トルコのレジェップ・タイップ・エルドアン大統領

先月、ウクライナのウォロディミール・ゼレンスキー大統領は異例の形でウクライナを飛び出し、サウジアラビアのジッダと日本の広島でほぼ1週間を過ごした。彼の目標は、ロシアのウクライナ戦争を擁護する4大国であるブラジル、インド、インドネシア、サウジアラビアの支持を獲得することだった。これらおよびその他のグローバルサウス(global south)の主要諸国は今日、かつてないほど大きな力を持っている。彼らが新たに発見した地政学的影響力(geopolitical heft)の理由は、彼らがより多くの主体性(agency)を持ち、地域化(regionalization)の恩恵を受け、そして米中間の緊張を利用できることだ。

今日の中規模大国(middle powers)は、第二次世界大戦後、これまで以上に多くの主体性を持っている。これらの国々は、地政学(geopolitics)において大きな影響力を持っているが、世界の2つの超大国であるアメリカと中国ほど強力ではない。グローバルノースには、フランス、ドイツ、日本、ロシア、韓国などが含まれる。ロシアを除いて、これらの国々は米国と幅広く連携しているため、権力と影響力の変化についてはあまり語られていない。

もっと興味深いのは、ブラジル、インド、インドネシア、サウジアラビア、南アフリカ、トルコというグローバルサウスの主要な中規模大国6カ国だ。グローバルサウスのこれらどちらにも肩入れしない国々(swing states)は、米中どちらの超大国とも完全に連携していないため、自由に新たな権力関係を生み出すことができる。これら6カ国は、G―20のメンバーであり、地政学と地経学(geoeconomics)の両方の面で活発に活動している。これら6つの国は、グローバルサウスにおけるより広範な地政学的傾向を示す、良いバロメーターとしても機能している。

これら6つの国の重要性が高まっている理由は多くあるが、長期的な歴史的発展と、より最近の世界的な傾向という2つの要素に分類できる。最初のバケツに関しては、冷戦(Cold War)以来の発展により、これらの中規模大国は、国際関係においてより多くの主体性を得ることができるようになった。冷戦により、対立するブロックへのより厳格な分離が必要となり、今日のどちらにも肩入れしない国々の一部が取り込まれた。その後のアメリカの一極支配(unipolarity)の時代では、ほぼ全ての国がワシントンに対して一定の忠義(fealty)を示す必要があった。今日の中国とアメリカの二極性(bipolarity)は弱まり、全ての中規模大国はより自由に行動できるようになった。

歴史のバケツの2つ目は次の通りだ。過去20年間、世界は重要な形で脱グローバル化(deglobalizing)し、その結果、地域レヴェルで新たな地政学的・地経済的関係が形成されつつある。その結果、地域レヴェルで新たな地政学的・地理経済的関係が形成されつつある。どちらにも肩入れしない中規模大国は全て、地域のリーダーであり、力が地域に委譲されるにつれて、その重要性は増していく。ニア・ショアリング [near-shoring](サプライチェインを自国の近くに移動させること)やフレンド・ショアリング [friend-shoring](敵対国から志を同じくする国へと移動させること)の過程で、一部の企業や貿易関係は中国から他の地域(主にグローバルサウス)へと徐々に移動している。グローバルサウスの、どちらにも肩入れしない中規模大国のいくつかは、地域貿易のハブとして、更に忙しくようになるだろう。インドがその最たる例で、アメリカ企業の一部は、インドに生産拠点を置き、新たなサプライチェインを構築している。エネルギー市場はより地域的なものになりつつあり、サウジアラビアに利益をもたらしている。同様に、サウジの首都リヤドは地域金融のハブとして台頭しつつある。また、国際通貨基金(International Monetary FundIMF)は、世界は分断化(fragmenting)しつつあり、分断化した世界では地域の中規模大国が論理的により重要な役割を果たすと強調している。

第三に、冷戦時代、インドとインドネシアは植民地支配から脱したばかりだった。そのため、米ソ冷戦二極時代の世界的な役割は限られていた。今日、どちらにも肩入れしない中規模大国6カ国は完全に自立したアクターである。しかし、彼らは、非同盟運動(Non-Aligned Movement)や、G―77やBRICS(ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカ)のようなグローバルサウスが支配する他のグループの新しい姿ではない。これらのグループは全て、イデオロギー的な親和性(ideological affinity)を持っているか、あるいは持っている。イデオロギー的な親和性がないため、これらの国家は外交政策において強硬な取引主義的アプローチ(hard-core transactional approach)をとることができ、その結果、国際情勢への影響力を高めている。

どちらにも肩入れしない中規模大国の力を高めるその他の要因は、最近の世界的な傾向から生じている。どちらにも肩入れしない中規模大国の力は、米中関係を明確に特徴づける競争と対立(competition and confrontation)から得られる影響力によって強化される。それぞれの超大国は、どちらにも肩入れしない中規模大国が自国に同調することを望んでおり、どちらにも肩入れしない中規模大国が他方を翻弄する機会を作り出している。例えば、中国のバランスをとるための、アメリカ主導の最も重要な取り組みである日米豪印四極安全保障対話(Quadrilateral Security DialogueQuad)に参加して以来、インドの力と影響力は劇的に増大した。ブラジルとインドネシアは、特にリチウム、ニッケル、アルミニウムといった重要な鉱物資源に関する取引を封じ込めようとする中国の熱意から利益を得ている。最近の調査によると、6カ国は、それぞれ特定の問題で、アメリカや中国に傾斜することはあっても、そのほとんどは比較的バランスの取れた忠誠を保っている。今のところ、6カ国は多くの分野で大国を翻弄する自由を手にしている。半導体(semiconductors)、人工知能(artificial intelligence)、量子技術(quantum technology)、5G通信(5G telecommunications)、バイオテクノロジー(biotechnology)などの基盤技術は唯一の例外である。

同様に、グローバルサウスのどちらにも肩入れしない中規模大国は、経済規模が大きく成長しており、国際的な気候政策の影響力を持っている。これらの国々の参加なしに、汚染や気候への影響による課題を解決することはできない。炭素市場(carbon markets)は、排出量への実際の影響に関係なく、これらの中規模大国に更に資源をもたらすことになるだろう。なぜなら、西側企業はネットゼロの地位を追求する際にオフセットを購入する必要があるからである。より広範に、森林破壊と脱炭素化に関する政策には、森林破壊に関してはブラジルとインドネシア、脱炭素化、特に石炭の利用に関する脱炭素化に関しては主にインドとインドネシアといった激戦州の建設的な参加が必要である。最後に、「ジャスト・エネルギー・トラン十ション・パートナシップス」は、気候変動目標に資金を提供するための創造的な解決策を見つけることに重点を置いており、南アフリカとインドネシアが最初の資金提供先となる。このプログラムの結果は今のところまちまちだが、これは2つの中規模大国が気候政策において指導的役割を担う例である。

どちらにも肩入れしない中規模大国6カ国は、制裁(sanctions)とウクライナ戦争の構図作りにおいて重要な役割を果たしてきた。彼らは当初から、西側諸国によるウクライナへの軍事援助や対ロシア制裁に同調することを拒否してきた。彼らは、この戦争は、ヨーロッパのみに影響を及ぼし、世界の安全保障には影響を与えず、開発(development)、債務削減(debt reduction)、食料安全保障(food security)、エネルギー安全保障(energy security)などの分野における国益を促進するものではないと主張している。

しかし、これらの国々が戦争に与えた最も重要な影響は、西側諸国の対ロシア制裁に反対し、場合によってはそれを弱体化させるというリーダーシップの役割を果たしたことである。トルコは、大量の軍需品のロシアへの輸出に関与しており、西側諸国の制裁の精神に違反し、おそらくはその規定にも違反している国の一つである。こうした活動に対し、アメリカは既にトルコ企業4社に制裁をしている。南アフリカはロシアに傾いているものの、他の中規模大国のほとんどは断固として中立を保っている。6カ国はいずれも、戦争開始以来、ロシアとの貿易その他の関係を維持または強化してきた。

国際通貨基金の予測によれば、ロシア経済の今年の成長率は0.7%で、西側諸国が期待していたような、経済を完全に麻痺させる影響はほとんどない。どちらにも肩入れしない中規模大国が、ロシアが経済制裁の影響を弱め、それを続けるために支援をしている。この数字は、クレムリンが、貿易を南と東に向けることで生計を立てられると信じている理由の一つでもある。

グローバルサウスの中規模大国の影響力が大幅に増していることは、彼らの調停イニシアティヴにも表れている。トルコは、ウクライナ戦争に関して最も影響力のある唯一の対外勢力である。トルコのレジェップ・タイップ・エルドアン大統領は、穀物取引の主要な交渉者であり、戦争開始時の和平交渉にも関与した。ブラジルのルイス・イナシオ・ルラ・ダ・シルヴァ大統領は、自らのイニシティヴで名乗りを上げた。一方、インドはより静かに、将来の和平を仲介する立場にある。これらの国家は現在、他の紛争も調停できる立場にある。この点でのインドの地位は特に高く、2月の時点ですでに国連平和維持活動(U.N. peacekeepers)の8%を担っているからだ。インドネシアや南アフリカも調停役や平和維持要員として活躍している。

最後に、これらの国々に見られる科学や工学の専門知識は、将来の核拡散リスクを高めている。仮に次に核兵器が拡散するとすれば、それはグローバルサウスの国々である可能性が高い。近い将来、特にサウジアラビアとの和解が実現した後は、その可能性は低いものの、イランは依然として世界で最も危険な核拡散リスクである。イランが潜在的な核保有国になるには、技術的にあと数歩のところまで来ている。リヤドとの関係が急激に崩壊し、テヘランがダッシュで爆弾製造に乗り出すというシナリオでは、サウジやおそらくトルコも爆弾(核兵器)を求める可能性がある。サウジアラビアがイスラエルとの国交樹立と引き換えに、アメリカに核保証を要求したとされるのはそのためである。

西側支配に対抗する主役として、BRICS諸国が注目されることは、グローバルサウスの興味深い点の多くを見えにくくしている。なぜなら、BRICSに中国とロシアが加わることで、どちらにも肩入れしない中規模大国の重要な台頭が覆い隠されてしまうからだ。

中国とロシアが拡大したBRICSを、そしてBRICSを通じてグローバルサウスを共同支配することは、対処すべき真の脅威である。

中国は今日、二極化した世界における2つの大国のうちの1つである。中国をグローバルサウスの一員と考えるのは大げさだが、それは中国の経済力と広範な地政学的野心が、中国を異なるタイプの国家にしているからである。ロシアは中規模大国だが、衰退しつつある。ロシアはまた、世界へのアプローチにおいて高度修正主義的(hyper-revisionist)であり、これは、グローバルサウスのどちらにも肩入れしない中規模大国にはない見方である。そのため、地政学的に最も活発なBRICSの2カ国の政策は、どちらにも肩入れしない中規模大国とは異なる論理で説明する必要がある。

しかしながら、BRICS諸国が中国の指導の下、グローバルサウスを代表すると主張する、より正式な機関になるのかどうかという疑問は残る。特に、他の19カ国がすでにBRICSへの加盟に関心を示していることを考えれば、この見通しは西側諸国に対する明確な挑戦ということになる。しかし、その脅威が現実のものとなる可能性は低い。インドはBRICSの有力国であり、BRICSを共同支配しようとする中国の動きに断固として反対するだろう。サウジアラビア、ブラジル、トルコ(NATO加盟国)、インド、そして南アフリカでさえも、安全保障や貿易の面で、アメリカやその他の主要な西側諸国と重要な関係を保っている。これらの国々は、アメリカから離れているかもしれないが、それは中国が主導し、ロシアが支援する、アメリカに積極的に反対する組織に参加することとは異なる。現在のところ、BRICSは共通のアジェンダを策定し、実施する能力を示していないため、中国が共闘するための組織的な力はほとんどない。最後に、BRICSはコンセンサスに基づいて運営されている。独自の利害を持つ新メンバーが加わる可能性が高いため、コンセンサスを得るのはさらに難しくなるだろう。

これら6つのどちらにも肩入れしない中規模が注目すべき大国であるという考えに同意しない人もいるかもしれない。これらはいずれもまだ新興市場(emerging markets)であり、近年は世界経済のその部分にとっては好ましい状況ではない。インドを除いて、どちらにも肩入れしない中規模大国の成長率は予想を下回っている。このグループは法の支配(rule of law)を支える制度の発展が遅れている。AIを含む技術革命は、先進工業民主政体諸国(advanced industrialized democracies)よりもグローバルサウスに大きな打撃を与えるだろう。前者は生成型AIの政治的に危険な影響に対抗するためのリソースが少ないからだ。そして、気候目標によって激戦州に影響力が与えられるとしても、気候関連の影響はこれらの国々の一部に重大な損害と苦痛を与えることになる。

しかし全体として、これらの勢力は地政学的にますます強力になっており、今後もさらに強力になるだろうという主張は依然として強い。彼らは最も強力な世界的トレンドの一部から影響力を引き出すことができ、彼らの新たな力はすでに明確に現れている。

最も重要な政策的意味は、世界の力の均衡における、アメリカの地位の大幅な弱体化を防ぐために、ワシントンは、6つのどちらにも肩入れしない中規模大国に対するゲームをアップする必要があるということである。ロシア・ウクライナ戦争や中国との競争において、どちらにも肩入れしない中規模大国がアメリカの後ろ盾になることを拒否しているため、これらの主要国の多くは既に離れつつある。拡大したBRICS、そしてそれを通じたグローバルサウスと中露両国が共闘するという脅威は現実であり、それに対処する必要がある。

ワシントンは、主要6カ国それぞれに対してだけでなく、より広くグローバルサウスに対して、練り上げられた外交戦略を持つ必要がある。先日のG7にどちらにも肩入れしない中規模大国の大半を招待したことは有益なスタートであったが、もっと多くのことが必要となる。より良い戦略は、アメリカの主要外交官によるハイレヴェルの訪問を増やすことから始まるだろう。政策の改善には、アメリカ市場へのアクセスという難題を解決する、より機敏な貿易戦略も含まれる。より広く言えば、アメリカは、アメリカの重要な政策決定に対する、6つのどちらにも肩入れしない中規模大国とグローバルサウスの反応をよりよく予測できるようになる必要がある。例えば、ロシアの戦争に対する西側の政策がグローバルサウスに疎外感(alienation)をもたらした度合いは、ワシントンを驚かせた。2022年2月の侵攻開始以来、アメリカは、追いつ追われつを繰り返している。このような予測能力を持つには、グローバルサウスの多くの国々における感情やエリートの信条をよりよく理解する必要がある。

第二に、米中間の緊張が劇的に高まり、冷戦型の対立に発展した場合、どちらにも肩入れしない中規模大国、更には全ての中堅国の力と影響力は打撃を受けるだろう。デカップリング(decoupling)は拡大し、どちらにも肩入れしない中規模大国はどちらか一方により接近せざるを得なくなるだろう。

最後に、どちらにも肩入れしない中規模大国の台頭により、地政学的な結果に対して影響力を持つ国が世界に増えた。こうした国々の間では、自国の国益を集中的に追求する以上の明確な行動パターンは見られない。地政学上のあらゆる問題で、より多くのドライヴァーが存在するようになった。そのため、ただでさえ困難な地政学的結果の予測がさらに難しくなっている。

※クリフ・カプチャン:ユーラシア・グループ会長。

(貼り付け終わり)

(終わり)

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる
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ビッグテック5社を解体せよ

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める

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 古村治彦です。

 中国が主導する多国籍機関がうまく機能していない、という指摘がある。そもそも、中国が主導する多国籍機関は、上海協力機構(Shanghai Cooperation OrganizationSCO)やブリックス(BRICS)といったところは知られているが、その他は、あまり知られていない。しかし、これらの枠組み以外にも、「ユーラシア地域の問題について話し合う機関(talk shop)であるアジア交流信頼醸成対策会議(Conference on Interaction and Confidence Building Measures in AsiaCICA)がそうした組織である。過去3年間で、この中国中心の国際組織壮絶プロジェクトのアルファベットのスープ(訳者註:頭字語や略語)に、更に多くのイニシアティヴが追加されてきた。世界安全保障イニシアティヴ(Global Security InitiativeGSI)、グローバル文明イニシアティヴ (Global Civilization InitiativeGCI)、およびグローバル開発イニシアティヴ (Global Development InitiativeGDI) 」といった枠組みが存在する。しかし、これらの諸機関がうまく機能していないというのが下記論稿の趣旨である。

下記論稿では、以下のような主張がなされている。中国が提案する多国間主義構想に多くの国々が注目しているが、中国中心の組織やイニシアティヴは成果を上げていない。アメリカ主導のシステムの崩壊に伴い、中国の提案には賛同する声が広がっているが、実際には中国の行動に疑問符がつくこともある。中国は一帯一路構想を通じて世界経済に影響を与えているが、その取り組みには批判も多い。ブリックスや中国の新たな金融秩序構築に期待する声もあるが、実際には、西側手動の枠組みの方が現在ではまだ、信頼性が高い。中国が新たな秩序を築くには、ソフトパワーや文化面での魅力を高める必要があり、その過程で外交的課題や経済問題に直面する可能性がある。

 中国が多国籍機関を主導するようになっての歴史はまだ浅い。大国として台頭してきたのは21世紀に入ってからだ。中国は大国として、まだ経験が浅い。そうした中で、中国主導の多国籍機関が、歴史と経験を持つ西側諸国の枠組みよりも信頼を勝ち得ていないのは仕方がない。しかし、これから、中国が更に台頭し、米中二国による世界支配・管理体制が構築されていく中で、中国自身の経験が蓄積され、中国が主導する枠組みも洗練されていくだろう。

(貼り付けはじめ)

中国は発展途上世界を騙している(China Is Gaslighting the Developing World

-北京の平等に関する約束は、覇権のための偽装である。

ロバート・A・マニング筆

2024年4月5日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2024/04/05/china-developing-world-bri-global-development-initiative-hegemony/?tpcc=recirc062921

昨年12月の習近平国家主席のヴェトナム訪問中に、ハノイが中国の提案する「運命共同体(community of shared destiny)」に対しての支持を表明したとき、中国政府はこれを歓迎した。中国は独自に設計するポスト・アメリカの世界秩序(post-American world order of its own design)を望んでおり、習近平国家主席のヴィジョンは野心的であると同時に曖昧ではあるが、中国政府は主に、現在不安定になっている、1兆ドル規模の融資を含む公共財という名目でそのプロジェクトを構築している。

習近平が政権を掌握して以来、時にはまだ初期段階にあるとはいえ、既存の中国中心の組織を構築してきた。上海協力機構(Shanghai Cooperation OrganizationSCO)、ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカ、そして現在他の4カ国で構成されているBRICSグループ。そして、ユーラシア地域の問題について話し合う機関(talk shop)であるアジア交流信頼醸成対策会議(Conference on Interaction and Confidence Building Measures in AsiaCICA)がそうした組織である。過去3年間で、この中国中心の国際組織壮絶プロジェクトのアルファベットのスープ(訳者註:頭字語や略語)に、更に多くのイニシアティヴが追加されてきた。世界安全保障イニシアティヴ(Global Security InitiativeGSI)、グローバル文明イニシアティヴ (Global Civilization InitiativeGCI)、およびグローバル開発イニシアティヴ (Global Development InitiativeGDI) がそれに当たる。

しかし、これらのプログラムの多くは、グローバルサウス(global south)にとって魅力的かもしれないが、これらの国々が本当にポスト・アメリカの未来、ましてや北京主導の未来を望んでいるのかどうかは不明である。中国の多国間主義構想(China’s vision of multilateralism)は自らの覇権的野望をカモフラージュするものであり、心からの目標ではない。

現在のアメリカ主導のシステムは崩壊しつつある。購買力平価(purchasing power parity)に基づくG7のGDPは世界のGDPの約30%に低下し、BRICSよりわずかに小さく、気候変動から貧困削減に至るまで多くの公約は果たせなかった。そのため、各国は「民主的多国間主義(democratic multilateralism)」、つまり、アメリカ主導の秩序へのアンチテーゼに基づく協力の感覚を育むと主張する中国の提案を受け入れやすくなっている。軍事同盟は冷戦の遺物として否定され、人権は経済中心で、政治的権利、少数民族の権利、独立した司法、言論の自由は結果として制限されている。北京は、非西洋的な発展の道(non-Western path to development)を提供すると主張し、代替案として中国の国家主導モデル(China’s state-driven model)を示唆している。偶然の一致ではないが、中国がアメリカの統治から離れようとしていることは、北京の構想が描く想像上の偽ユートピア(faux utopia)にはない。

しかし、これまでのところ、これらは全て願望的なものだ。上海協力機構(SCO)、BRICS、アジア交流信頼醸成対策会議(CICA)は、話し合いの場ではあるが、決定の場ではない(talking shops)という役割を果たしているが、大きな成果は出ていない。カザフスタンで危機が起きたとき、介入したのは、上海協力機構ではなくロシアだった。ロシアのウラジーミル・プーティン大統領がウクライナに侵攻したとき、中国政府は主権(sovereignty)と不干渉(noninterference)という自国の核心原則に対する違反を無視した。

習近平の行き過ぎにも関わらず、中国政府の指導力とグローバルサウスにおける多大な連携とヘッジには需要と供給の両方が不足している。習近平は、2014年のCICA会議で行ったように、「アジア人のためのアジア(Asia for Asians)」演説をするかもしれないが、その反応を決定づけたのは、南シナ海における中国の侵略と、韓国のTHAADのようなプロジェクトをめぐる近隣諸国へのいじめだった。アメリカの同盟関係は強化されており、これに対応してアジア内の協力も深まっている。

経済が低迷し、中国という債権者に対する発展途上諸国の債務が増大する(そして一帯一路の融資と投資が減少する)にもかかわらず、北京は依然として巨大な世界経済の足跡を残している。しかし、多極同盟のグローバルサウスに対する習近平の訴えは薄れるのだろうか? 一帯一路構想(Belt and Road InitiativeBRI)については、ジンバブエやスリランカといった債務者に、主権の尊重についてはフィリピンの海事当局者に、世界最大の温室効果ガス排出国については気候活動家に聞いてみて欲しい。ピュー・リサーチ・センターによる2023年の世論調査によると、調査対象となった24カ国のうち、中央値の3分の2がブラジル、インド、韓国を含む中国に対して否定的な見方をしていた。2017年のピュー世論調査では、インドネシア、フィリピン、ヴェトナムでは中国の台頭が脅威と見なしていることが多かった。

しかし、中国政府は、世界安全保障イニシアティヴ(GSI)が、100カ国以上から「支持と評価(support and appreciation)」を得ていると述べている。世界安全保障イニシアティヴは、「全ての国の主権と領土一体性の尊重(respecting the sovereignty and territorial integrity of all countries)」、「共通、包括的、協力的かつ持続可能な安全保障(common, comprehensive, cooperative and sustainable security)」、「国連憲章の目的と原則(the purposes and principles of the U.N. Charter)」、そして「対話と助言を通じた国家間の相違と紛争の解決(resolving differences and disputes between countries through dialogue and consultation)」に対する関与を進めている。

世界安全保障イニシアティヴ(GSI)は、中印協定締結後の1954年に周恩来が導入して以来、中国の公式外交政策の柱となっている平和共存5原則の再利用版である。

それでは、表面的に、何が良くないこととなるだろうか? グローバルサウスの多くの人々にとって、習近平国家主席の取り組みを支持することには、具体的な費用や約束は伴わないが、それらを拒否すれば中国を怒らせるリスクがある。しかし、現実の世界では、他の国よりもより平等に扱われる国もある。その例外がパキスタンであり、中国政府はパキスタンに対して、安全保障を提供していない。また、中国の取り組みのほとんどが、アメリカのパワーの正当性を拒絶し、その地位を奪うことを目的としているという内実もまったく感じられない。ワシントンの庇護下にある国々は、アメリカのパワーについて、不満を言いたくなるかもしれないが、必ずしも、アメリカのパワーが消滅することを望んでいる訳ではない。

理論的には、不侵略(nonaggression)、不干渉(noninterference)、主権の尊重(respect for sovereignty)、紛争の平和的解決(peaceful resolution of disputes)は、小国が大国からいじめられたり、強要されたりしないという希望を与える。実際には状況は異なる。中国の経済力と軍事力が増大するにつれ、それは中国の特徴をもった不干渉(noninterference with Chinese characteristics)へと変化してきた。ウクライナの主権に対する大規模な侵害であるロシアの戦争に対する中国の沈黙、現在はトーンダウンした「戦狼」外交(“wolf warrior” diplomacy)、そしてオーストラリア、リトアニア、フィリピン、台湾などが、中国を少しでも批判すると輸出品の多くが突然歓迎されなくなるような経済的強制を見れば分かるだろう。

中国政府は、リスクの低い調停の役割(low-risk mediation roles)を果たしている。しかし、主要な世界問題に関しては、中国のしばしば活動的な外交は、人を欺くごまかし(smoke and mirrors)であり、問​​題解決ではない。2023年2月、中国は、ウクライナに対する12項目の和平案を発表したが、本格的な外交フォローアップもなく、白紙となった。中東特使の翟隽は、10月下旬に中東地域各国を歴訪し、翌月には中国が北京でアラブ・イスラム指導者たちの会合を主催し、イスラエル・ハマス戦争の終結を訴えた。繰り返しになるが、こうした試みの効果はない。

習近平の外交は、現実的な問題解決よりも、グローバルサウスに対するパフォーマンス的な要素が強いように思われる。よく引き合いに出される、2023年のサウジアラビアとイランの脆弱な緊張緩和(détente)を中国が促進したことはその例外である。北京での式典は、湾岸諸国との経済関係の結びつきを強める中国の影響力の高まりを反映したものだった(そしてサウジアラビアは、ジョー・バイデン米大統領に対する影響力を高めようとしていた)。

もう1つの習近平派プロジェクトである、グローバル文明イニシアティヴ (GCI)は、「文明の多様性(diversity of civilizations)」の尊重を反映した対話を呼びかけており、言論の自由、表現の自由、民主政治体制といった普遍的価値観に関する、アメリカの概念の正当性を拒絶することを目的としているようだ。理解を深めるために対話をする。繰り返しになるが、グローバルサウスの国々がこれに同意することにはリスクはないが、ほとんど意味はない。

3番目の計画であるグローバル開発イニシアティヴ GDI)は、中国政府の取り組みの中で最も深刻であり、おそらく最も正当なものである。概念的には、これは本質的に、貧困緩和、食糧安全保障、グリーン開発、気候変動対策などの国連の持続可能な開発のための「2030アジェンダ」を再パッケージ化したものである。一帯一路構想は、中国が産業の過剰生産能力を輸出する傾向を制度化した。150カ国が参加する中国の大規模な一帯一路インフラ・プロジェクト(グローバルサウスでは少なくとも90のプロジェクト)と、ある程度の独自の開発経験を考慮すると、中国にはある程度の信用がある。2022年以来、中国政府はグローバル開発イニシアティヴ目標を追求する「南・南協力(South-South cooperation)」に関する一連の会議を開催している。

しかし、中国の金融危機と発展途上国の債務が増大するにつれて(中国は発展途上国の債務総額の約37%を保有している)、一帯一路の融資は90%以上減少し、規模を縮小した一帯一路は、IT接続とグリーンテクノロジーに重点を置いている。しかし、現在の一帯一路融資の58%は中国の債務者に対する救済融資の形となっている。世界最大の二国間債権者であるにもかかわらず、中国は発展途上国の債務再編に関して、G7を中心とするパリクラブ(Paris ClubClub de Paris)に参加しておらず、G20共通枠組みに関与しているにもかかわらず、協力することはたまにしかない。むしろ、中国政府は債務者に対して二国間的に行動し、他の債権者の債務救済の取り組みをしばしば妨害してきた。それにもかかわらず、債務危機を軽減するためにIMFや世界銀行のリソースを改革して拡大したり、グローバルサウスに同等のインフラを提供したりしていないアメリカとG7にとっての問題は、何も持たずに何かを打ち負かすことはできないということだ。

一帯一路と、米ドルに象徴されるアメリカ・G7の優位性に対する憤りが、BRICSの推進力となっている。他の全ての加盟国を合わせたよりも経済規模が大きい中国は、拡大するBRICSを中国中心のネットワークとして、ブレトンウッズ体制とは言わないまでも競争相手として構想している。多くの加盟国は、G7に対抗する新たな多極性を実証するためのプラットフォームとして捉えているが、驚くほど異なる議題を持っている。例えば、インドとブラジルには、グローバルサウスの代弁者になるという独自の野望があり、それは習国家主席が初めて欠席した昨年のニューデリーでのG20会議で明らかだった。ニューデリーは中国政府を支援することにほぼ関心を持っていない。

新たな金融秩序と脱ドル化(de-dollarization)に対する期待に関して言えば、BRICS新開発銀行(BRICS New Development Bank)は取るに足らない存在である(small beer)。脱ドル化の目標にもかかわらず、330億ドルのプロジェクト融資の約3分の2は、米ドルで行われている。同グループの新規メンバーの一部(エジプト、エチオピア)は債務不履行(debt defaults)の有力候補となっている。人民元や他の現地通貨との通貨スワップ(currency swap)は、新たな世界金融危機の際にある程度の断熱効果をもたらす可能性があるが、中国が通貨管理を維持する限り、ドルに取って代わることは遠い夢にとどまるだろう。

まとめると、BRICS の人気は、アメリカ・G7の内向性と経済ナショナリズム(inwardness and economic nationalism)は、に正比例して高まっている。BRICSの人気は、グローバルサウスから西側諸国に対しての、代替案というよりは、頭痛の種として見られている。発展途上国の多くは、BRICSが低コストで、ある程度の利益をもたらす可能性があり、加えて、アメリカに対して、もっと自分たちに注意を払うよう信号を送る梃子(てこ)としても同様に重要であると考えている。

第二次世界大戦後に、アメリカが設計したブレトンウッズ経済・政治システムは、アメリカの安全保障の傘と比較的開かれた市場へのアクセスによって促進され、当初は主にヨーロッパと日本に限定されていたものの、前例のない成長と安定を促進する秘密のソースとなった。しかしソ連崩壊後、その恩恵は世界中に広がり、ブラジル、中国、インドなどで数億人が貧困から救い出され、世界規模の中流階級(global middle class)が育成された。

アメリカが主導する自由主義秩序は、アメリカの世界的優位性を強化したが、全ての参加者(他ならぬ中国)に利益をもたらし、合意に基づくものであり、アメリカの力を正当化するのに役立った。しかし、2008年の金融危機と現在高まっている、アメリカの経済ナショナリズム、そしてイラク戦争からガザ危機に至る出来事により、西側諸国とグローバルサウスの信頼性の格差(credibility gap)は拡大し、その正統性の感覚は失われつつある。

中国は、安全保障や核の傘(nuclear umbrella)をほとんど提供しておらず、外交的な問題解決にはあまり役立たない。中国政府による公共財の提供は、アメリカの戦略を参考にしている。しかし、発展途上諸国の中国に対する負債、貿易ルールの欠如、経済的強制、あまり開かれていない市場などの理由から、経済的な代替案は実行可能ではない。これまでのところ、中国政府が着手しつつある取り組みは、中国中心の秩序における平和と繁栄を約束する体制には至っていない。

更に言えば、中国は偽善(hypocrisy)においてアメリカに匹敵し始めている。このことは、世界貿易機関(WTO)の制度を利用したゲームから、経済的強制や保護主義、そして疑わしく信用できない主権主張に基づくヒマラヤ山脈から東シナ海や南シナ海に至るまでの軍事的主張に至るまで、その公言する原則、姿勢、そして実際の行動との間のギャップに明らかになりつつある。

新秩序の構築に関して言えば、中国には、第二次世界大戦以来、アメリカの支配力を支えたようなソフトパワーや文化、開放性、機会といった魅力がない。米中間に緊張があるにもかかわらず、毎年約30万人の中国人学生がアメリカに留学しているが、中国に残っているアメリカ人学生はわずか350人に過ぎない。他のアジア諸国とは異なり、中国にはボリウッド、K-POP、韓国映画、ポケモンや近藤麻理恵のような日本のポップカルチャーに相当するものはまだ存在しない。検閲が強化され続けている文化は、世界に広がる可能性が存在しないことを意味する。

中国は、せいぜい、未熟な大国であるように見え、その願望は、その把握力や魅力をはるかに超えている。中国政府が目指す、ポスト・アメリカ秩序(post-U.S. order)は正統性の欠如に直面している。世界がIMFの呼ぶところの「地経学的分断(geoeconomic fragmentation)」に耐えている中、米中競争でどちらの国がどのようにして「勝つ(wins)」のかは明らかではない。

※ロバート・A・マニング:スティムソンセンター・リイマジニング大戦略プログラム名誉上級研究員。ツイッターアカウント:@Rmanning4
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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる
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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める

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 古村治彦です。

 2023年12月27日に『バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる』(徳間書店)を刊行しました。『週刊現代』2024年4月20日号「名著、再び」に拙著が紹介されました。是非手に取ってお読みください。よろしくお願いいたします。

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

 「有志連合(coalitions of the willing)」という言葉を聞くようになって久しい。このことを別名では「ミニラテラリズム(minilateralism)」とも言う。この言葉は比較的新しい言葉だ。一極主義(unilateralism)、二極主義(bilateralism)、多極主義(multilateralism)と似たような言葉があるが、二極主義と多極主義の間に入るのがミニラテラリズムだ。ミニラテラリズムは、簡単に言えば、3から6の国が集まって枠組みを作って、世界で起きる様々な問題に対処するということだ。アメリカのジョー・バイデン政権はこうしたミニラテラリズムに基づいた数カ国からなる有志連合を外交政策の中心に据えている。それは、国連は既に機能不全に陥っており、国際問題への効果的な対処が難しい状況になっているからだ。そして、これは、戦後の世界構造が変化しつつあることも関係している。
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 国連において最重要期間は国連安全保障理事会(国連安保理)である。その中でも、安保理常任理事国5カ国、アメリカ、イギリス、フランス、中国、ロシアが意思決定において優越的な地位を占めている。これらの国々には拒否権(veto)が認められている。国際連合(the United Nations)は、第二次世界体制の戦勝側である、連合国(the United NationsAllies)が国連なのである。戦時中の下のポスターを見て欲しい。ここには「The United Nations Fight for Freedom(連合国は自由のために戦う)」と書かれている。国連とは、第二次世界大戦の戦勝側が優越的な地位を占めるための国際的な枠組みなのである。そして、戦争で大きな犠牲を払った主要諸大国(powers)が世界の方向を決めるという仕組みになっている。
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 しかし、米ソ対立から冷戦が始まり、国連は協調の場ではなく、米ソ対立を基にした争いの場になってきた。そして、現在は、米英仏対中露、西側諸国対それ以外の国々、ザ・ウエスト(the West)対ザ・レスト(the Rest)の争いの場に変容しつつある。

 国連では何も決められない。問題にも対処できない。アメリカの国力がダ充実していたころは、一極的な行動もできたが、今はそれも難しい。だから、「ある程度お金や力を持っている気の合う仲間」を誘い合わせて、有志連合を形成する方向に進んでいる。パートナーは、西側の仲間内で見つけるということになる。各地域で有志連合を作り、それを重層的なネットワーク化しようとしている。こうした動きはザ・レスト側にもあり、その基本がブリックス(BRICS)ということになる。戦後世界構造の変化の中で、国際的な枠組みにも変化が起きている。

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バイデンの「有志連合」外交ドクトリン(Biden’s ‘Coalitions of the Willing’ Foreign-Policy Doctrine

-アメリカ外交の最新の動きは、大統領がいかに「ミニラテラリズム(minilateralism)」を重視しているかを示している。

ロビー・グラマー筆

2024年4月11日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2024/04/11/biden-minilateralism-foreign-policy-doctrine-japan-philippines-aukus-quad/

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2023年3月13日、オーカス(AUKUS)の三カ国首脳会談の後の記者会見でのオーストラリアのアンソニー・アルバニージー首相、ジョー・バイデン米大統領、リシ・スナク英首相

ジョー・バイデン米大統領が今週、ワシントンで日本とフィリピンの両国首脳を招き、史上初の3カ国首脳会議を開催する一方で、バイデン政権のアントニー・ブリンケン米国務長官は来週、イタリアで開催されるG7外相会議の準備を進めている。何千キロも離れており、議題も大きく異なっているにもかかわらず、この2つの会議はいずれもバイデン外交のドクトリンの特徴となっているミニラテラリズム(minilateralism)の一環である。

ミニラテリズムとは、本誌フォーリン・ポリシーの複数の記事で最初に広まった、奇妙な用語で、国連や世界貿易機関(WTO)のような大規模で動きの遅い伝統的な多国間機関ではなく、共通の利益を持つ、より小規模でよりターゲットを絞った国々のグループが関与する国際協力の一形態を指す。および。これはまさにバイデン政権が追求してきたアプローチであり、冷戦後の世界秩序がいかに崩壊しつつあるかを示すこれまでで最も明らかな兆候を表している。

この戦略は、民主党の外交政策の伝統的な理念からの大幅な転換を示している。バラク・オバマ政権時代、ワシントンは国連システムや他の主要な多国間ブロック(multilateral blocs)を通じて主要な外交政策の取り組みを推進することに重点を置いていた。2011年のNATOによるリビアへの介入については、最初は国連安全保障理事会のゴーサインを得ようと努力したし、バラク・オバマ大統領の気候変動への取り組みについても、主要な国連内部の会議を通して行おうとした。

その代わりに、バイデン・ティームは、主要な危機に関する特定の政策課題を推進するために、より小規模で目的に合った「有志連合」(smaller, fit-for-purpose “coalitions of the willing”)にますます頼るようになっている。

ヨーロッパでは、G7を利用してウクライナ戦争に対するロシアへの徹底的な経済制裁を実施し、ウクライナへの軍事援助を数十カ国間で調整するための暫定的な新組織、いわゆるラムシュタイン・グループ(Ramstein group、訳者註:ウクライナ防衛のための40カ国以上が参加した国際会議)を設立した。アジアでは、中国の台頭を食い止めようと、日米豪印戦略対話(Quadrilateral Security DialogueQuad)、AUKUS、そして日本とフィリピンとの三国間イニシアティヴ(今週首脳会談が実施された)など、重複する小さなグループのパッチワークをバイデン政権は採用している。

新アメリカ安全保障センター上級研究員リサ・カーティスは、「このような3、4カ国によるミニラテラルな会合(minilateral meetings)は、安全保障関係の緩やかなネットワーク(a loose network of security relationships)を発展させるというバイデン政権の戦略の特徴となっている」と述べている。

カーティスは、バイデンが2期目を勝ち取るかどうかにかかわらず、ミニラテラリズムのアプローチはバイデン政権が終わってからも、より長続きする可能性が高いと述べた。インド太平洋に関するバイデンとトランプのドクトリンは、驚くほどよく似ていると指摘している。加えて、中国に対抗するためのAUKUSのような構想は、ワシントンの政治的スペクトルを超えて広く普及しており、ドナルド・トランプの共和党にしても、国連と政界貿易機関(WTO)のシステムに深い懐疑的な見方をしている。

この戦略が功を奏しているかどうかはまだ明らかになっていない。バイデン政権は、インド太平洋地域でこうした外交的イニシアティヴの「格子細工(latticework)」と呼ばれるものを立ち上げ、一定の勝利を収めたが、それらが実際に中国を地政学的に制限できるかどうかはまだ分からない。

しかし、ワシントンが注意深くなければ、こうしたミニラテラルな取り組みも暗礁に乗り上げる可能性がある。「ASEANウォンク・ニュースレター」の発行人であるラシャンス・パラメスワランは次のように述べている。「もし将来の米政権が、気候や経済といった分野での各国のニーズも認識した、より包括的なアジェンダを維持するのではなく、アメリカ主導のミニラテラリズムの焦点を中国への対抗だけに絞った場合、アメリカは北京に対して僅かな勝利を得ることはできても、この地域の多くを失うリスクがある」。

パラメスワランは続けて次のように述べている。「ミニラテラルに参加する国々は、物事を成し遂げるために、より柔軟な連合を構築する。しかし、ミニラテラルは、二国間(bilateral)、もしくは多国間(multilateral)での関与を調整したときにこそ最も効果を発揮するため、既存の制度を弱体化させる一連の排他的なクラブのようには見えない。中国はじしんが発するメッセージの一部を使って、ミニラテラルを厄介者のように印象付けようとしている」。

いずれにせよ、バイデン政権の内部関係者たちによれば、新しいミニラテラリズム(minilateralism)のアプローチは、アメリカが何十年にもわたって築き上げ、維持してきた第二次世界大戦後の国際システムが、もはや目的にそぐわなくなっていることを端的に反映したものだという。

あるバイデン政権幹部は匿名上条件に、次のように率直に意見を述べた。「私たちが80年間構築し、依存してきた多国間秩序(multilateral order)は、あまりにも時代遅れ(old-timey)で扱いにくくなっている(unwieldy)。国連やその他の大きな機関における絶え間ない行き詰まりに対する回避策を見つけなければならない」。

新しい方策のために、バイデン政権は熱狂的なペースで取り組んでいる。政権の高官たちとこの問題に詳しい複数の外交官たちによれば、バイデンは来週イタリアで開かれるG7外相会議に続いて、6月にイタリアで開かれるG7サミットと、今年後半にペルーで開かれるアジア太平洋経済協力サミット(Asia-Pacific Economic Cooperation summit)に出席する予定だという。複数のバイデン政権関係者はまた、11月下旬か12月上旬にニューデリーで開催される日米豪印戦略対話首脳会議(Quad Summit)のためのインド訪問の可能性も視野に入れ、その下準備を進めている。この計画はバイデンが再選されるかどうかにかかっている。

この言葉は比較的新しいかもしれないが、国連のような組織における外交的膠着状態を回避する方法としてのミニラテラリズムという考え方は、決して新しいものではない。たとえばG7はもともと、1973年の石油危機をきっかけにして、フランス、ドイツ、日本、イギリス、アメリカの主要先進工業国が、世界貿易機関(WTO)や国際通貨基金(IMF)の厳格なシステムの枠外で、主要な金融問題に取り組むためのフォーラムとして1970年代初頭に設立された。後にイタリアとカナダが加盟し、ヨーロッパ連合(EU)も「数に挙げられていないメンバー(non-enumerated member)」として加わった。

しかし、近年ワシントンの一部では、ロシアのウクライナ紛争をめぐる行き詰まり、ミャンマー紛争への対応の失敗、国際機関における中国の影響力拡大に対する不信感、スーダンが内戦に突入した際の不手際など、注目される国際機関の失敗や失策が後を絶たないため、ミニラテラリズムはさらに魅力的なものとなっている。こうしたことから、民主党内の伝統的な制度の熱心な支持者でさえ、解決策を他に求めるようになっている。

経済面では、アメリカはG7レヴェルにおいて、対ロシア制裁を調整することを選択した。ウクライナ戦争の主要な侵略者が常任理事国(permanent member)であり、拒否権(veto)を持つ国連安全保障理事会(U.N. Security Council)では、そのような努力は効果を上げないと予測していたからだ。バイデン政権はまた、世界貿易機関(WTO)や国際通貨基金(IMF)などの機関ではなく、G7という場を利用して世界的な法人税制の見直しを行い、中国の「一帯一路」構想(Belt and Road Initiative)に対抗して、国際インフラ投資プログラム(international infrastructure investment program)を立ち上げて注目を集めた

インターナショナル・クライシス・グループの国連担当部長のリチャード・ゴーワンは、「ホワイトハウスは世界をよく観察し、多くの制度が綻びを見せているのを見て、かなり重要な問題に関して国連から望むものを引き出すのは非常に難しいと見ている」と述べている。

現在世界で最も大きな地政学的引火点の2つ、ウクライナ戦争とインド太平洋の緊張には、いずれも国連安全保障理事会の常任理事国であるロシアと中国が関与しており、それらの緊張に対処するための国連の取り組みを阻止するために、中露両国は拒否権を行使することに何の躊躇もしない。(つい先月、ロシアは、ウクライナ戦争を支援するための武器供与と引き換えに北朝鮮との関係を強化する中、成立すると広く考えられていた対北朝鮮制裁を監視する15年間の計画を頓挫させた。)

アメリカはまた、世界で3番目に大きな地政学的火種であるイスラエルとハマスの戦争に対処する努力において、国連から距離を置いている。先月、ようやく1つの決議が可決されたが、アメリカが棄権したため、緊密なパートナーであるイスラエルは怒ったが、イスラエルの戦争戦略に全く変更は行われなかった。

2022年の歴史的な国連総会の投票では、世界の圧倒的多数がロシアのウクライナ侵攻を非難したが、それまでと同様にモスクワの戦争に関する計算を変えさせることはできなかった。

そして今週、アメリカがイランによるイスラエル攻撃の可能性に警告を発した時、アントニー・ブリンケン米国務長官は、イランが常設の外交拠点を持つ国連にその懸念を持ち込まず、むしろ従来のシステムを回避してトルコ、中国、サウジアラビアの外相に電話をかけ、緊張緩和のためにテヘランに水面下で働きかけを行うように促した。

インド、南アフリカ、ブラジルなどの中堅・新興大国(middle and rising powers)は、国連安全保障理事会は時代遅れであり、いわゆるグローバル・サウス(global south)が国際問題で果たす役割の高まりを反映していないと主張しているが、制度改革の努力は全てが失敗に終わっている。

表向きは大国(列強)間競争(great-power competition)に関与していない問題、たとえばハイチの安全保障危機やエチオピアとスーダンの戦争でさえ、バイデン政権は国連に可能な役割は存在しないと見ている。2021年にバイデン政権の国連大使に就任したリンダ・トーマス=グリーンフィールドは、エチオピア北部ティグライ地方での致命的な戦争に安保理が正式に対処するよう強く働きかけた。しかし、この危機に関する公開会合が開かれるまでに数カ月が必要だった。

前述のゴーワンは、このため、当初はバイデン政権がトランプ政権後の世界機構に大きな再投資を行うことを期待していた国連外交官たちは、バイデン政権のミニラテラリズムへの軸足移動(Biden’s pivot to minilateralism)に失望することになった、と主張している。

ゴーワンは次のように述べている。「バイデン政権は、大多数の国にウクライナの主権に対するリップサービスを求めたいときには国連は役に立つが、実際に何かを成し遂げたいときには、別の場所に行く方が賢明だと考えている。国連では、『トランプの嵐を乗り切って、バイデンが晴れをもたらしてくれると思ったのに、代わりに霧雨が降ってきた』という感覚があるようだ」。

※ロビー・グラマー:『フォーリン・ポリシー』誌外交・国家安全保障担当記者。ツイッターアカウント:@RobbieGramer

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 古村治彦です。

 2023年12月27日に最新刊『バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる』(徳間書店)を刊行しました。世界は大きく「ザ・ウエスト(the West、西側諸国)対ザ・レスト(the Rest、西峩々以外の国々)」に分裂していく、構造変化が起きています。そのことを詳しく分析しました。是非手に取ってお読みください。よろしくお願いいたします。

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

 「デカップリング(decoupling)」「脱ドル化(de-dollarization)」という言葉を聞くようになった。特に昨年、BRICS(ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカ)の総会で、「BRICS通貨の創設が発表されるのではないか」という予測が出て、ドルに代わる世界通貨になるかもしれないということで、話題になった。結局、インドの反対もあり、今回は見送りとなったが、ドルが世界の基軸通貨(key currency)の地位を失う可能性が取り沙汰されるきっかけとなった。このことは、最新刊『バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる』でも取り上げた。脱ドル化、デカップリングとは、西側世界への経済的な依存を減らすことである。その先頭を走っているのは中国である。下の論稿には、中国が行ってきたデカップリングと脱リスク化について、脱ドル化、技術依存度(technological dependence)を下げる努力、国内の金融部門に外国が関与することを制限することが挙げられている。これらは、20世紀末から西側諸国を中心に進められてきた、グローバライゼーション(Globalization)に逆行する動きであるが、グローバライゼーションに対する逆行こそが、国家を救う道である。

 現在の日本を見てみると、自国通貨である円の価値の低下によって、諸外国から見て、「なんでも安い国」となった。しかも高品質というおまけがつくので、「なんともおいしい」区になっている。現在、バブルを超える勢いで、株式市場が上昇を見せているが、これは、外国からの投資が増大し、それに国内の資金が流れているということである。外国からの資金はいつか日本株を打って出ていく。株高に誘惑されて株式を買ったり、NISA投資をしたりしている日本の人々には損がかぶせられる。そうして国力が奪われていき、日本の衰退は加速していく。グローバライゼーションで利益を得るのは国境を軽々と超えるエリートたちや資産家たちだけである。日本は30年以上、グローバライゼーションによって国力を毀損させられてきた。

 世界の構造が大きく変化しようとしている時期になっている。グローバライゼーションと世界構造の大変化に備えるためにも、デカップリングと脱ドル化を真剣に検討し、議論するべき時だ。しかし、既にアメリカ国債を買いまくり、外貨準備もドルに偏重している日本はこのようなことはできないかもしれない。アメリカと一緒に心中をするしかないということになるだろう。

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西側諸国がデカップリングを発明したのではない-中国が発明したのだ(The West Did Not Invent Decoupling—China Did

-北京は長い間、経済を西側諸国から切り離すことで自由裁量(free hand)を手にしようとしてきた。

アガーテ・デマライス筆

2024年2月1日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2024/02/01/china-decoupling-derisking-technology-sanctions-trade-us-eu-west/

クレムリン・ウォッチャーたちの間で語り継がれている話がある。2014年のロシアによるクリミア侵攻と併合に対して、西側諸国が初めてロシアに制裁を課した直後、ロシアのウラジーミル・プーティン大統領は経済補佐官たちを呼び出した。彼の質問は単純だった。「ロシアの食料自給率はどのような状況なのか?」。補佐官たちはあまり良くないという答えが返ってきた。ロシアは国民に提供する食糧は輸入に頼っていた。プーティンは顔をあ納めさせて、制裁によってモスクワの主食へのアクセスが制限されることを恐れ、何とかするよう命じた。

2022年にロシアが本格的にウクライナに侵攻する時点にまでテープを早送りすると、プーティンはもはや食料の心配をする必要がなくなった。わずか8年で、ロシアは食糧をほぼ自給自足できるようになり、肉、魚、そして、まあまあの品質のチーズまで生産できるようになった。

ロシアが食糧自給を目指したのは、現在流行している経済的デカップリング[economic decoupling](最近では脱リスク[de-risking]と言い換えられている)をめぐる議論よりもずっと以前のことである。政治的言説(political discourse)が示唆するところとは逆に、西側諸国がこうした政策を考案したわけではない。ロシアの例が示すように、西側の民主政治体制国家と対立する国々は、潜在的な敵国から自らを守るために、長い間リスク回避政策(de-risking policy)を追求してきた。

ロシアに比べ、中国は技術、貿易、金融の面で西側諸国への経済的依存(economic reliance)を減らしてきた実績がある。デカップリング(decoupling)とデリスク(de-risking)の発明者であり、世界のリーダーでも存在がいるとすれば、それはどう見ても北京である。

近年、アメリカが中国へのハイテク輸出を次々と規制するずっと以前から、中国の指導者たちはテクノロジーを脱リスクの最初の柱としてきた。例えば、北京の半導体分野への最初の投資計画は、1980年代まで遡るが、当時の中国が基本的なチップを生産する域にも達していなかったことを考えると、その結果は成功と失敗が入り混じったものであったことは間違いない。

中国の計算はシンプルだ。テクノロジーは経済的・軍事的優位性のバックボーンである。したがって、北京にとって技術的な自給自足は、生き残り、繁栄するために必要不可欠なことなのだ。

中国の技術依存度(technological dependence)を下げる努力は過去10年間で推進された。ドナルド・トランプ前米大統領が中国との関係断絶を自慢し始める2年前の2015年、北京は半導体(semiconductors)、人工知能()artificial intelligence、クリーンテクノロジー(clean tech)などの主要技術分野で、自給自足を目指す「メイド・イン・チャイナ2025(Made in China 2025)」の青写真を発表した。

中国は技術的な自給自足を自国が生存し続けるための必須条件と考え、わずか数年で目覚ましい進歩を遂げた。多くのハイテク分野では、中国企業や研究者たちは揺るぎない世界的リーダーであるか(特にクリーン技術分野では、中国企業がソーラーパネル[solar panels]、風力タービン[wind turbines]、電気自動車[electric vehicles]の市場を独占している)、あるいは西側諸国の競合相手とほぼ肩を並べている(人工知能、量子コンピューター[quantum computing]、バイオテクノロジー[biotech]を含む)。

半導体は例外だ。マイクロチップに関して言えば、西側諸国の政策立案者たちは、中国は最先端チップ(cutting-edge chips)の生産において、アメリカ、台湾、韓国に大きく遅れをとっていると指摘し、自らを安心させたがっている。確かにその通りだが、北京はアメリカの輸出規制が危機感を煽ることを歓迎しているのかもしれない。

中国指導部はまた、輸出管理が容易に裏目に出る可能性があることを知っている。歴史が示しているように、長期的には、アメリカの一方的な輸出管理は、ほとんどの場合、輸出収入を制限することでアメリカ企業に損害を与え、その結果、最先端を維持するための研究開発に費やすことができる額も抑制されることになる。言い換えれば、中国政府は長期戦を繰り広げており、アメリカ政府の積極的な戦略が最終的には裏目に出て、西側諸国の技術への依存を減らすという中国の取り組みを更に支援することを期待しているのだ。

金融分野は、北京のリスク回避戦略の2本目の柱であり、長い歴史を持つ。この分野でも、西側諸国経済との関係を断ち切ろうとする中国の努力は、北京からのリスクを取り除くというアメリカとヨーロッパの計画に先行していた。最も明白な例は、北京が国内の金融部門に外国が大きく関与することを認めてこなかったことだ。中国の金融市場は閉鎖的で、外国人投資家は中国株の4%、中国国債の9%しか保有していない。中国独自の銀行システムは、国際金融からほぼ完全に遮断されており、中国人以外の投資家が中国の銀行資産の2%未満しか所有していない。また、国内外への資金移動を厳しく制限する資本規制は、いまだ解除されていない。

しかし、金融分野における北京のリスク回避努力は、外国人を遠ざけるだけではない。中国の指導者たちは不都合な真実に直面している。西側諸国の金融チャネルへの依存は、北京のアキレス腱になるかもしれない。西側諸国は世界の支配的な通貨を所有し、世界の全ての銀行を結ぶ世界的な決済システムであるSWIFTや、世界で最も重要な証券保管機関であるユーロクリア(Euroclear)など、グローバルな金融インフラへのアクセスを支配している。

西側諸国の金融支配が制裁を強力なものにしている。ドルやSWIFTへのアクセスを失うことは、ほとんどの銀行や企業にとって事実上の死刑宣告である。2012年に西側諸国がイランのSWIFTへのアクセスを遮断する決定を下した後、北京はその結果を目撃した。

金融制裁に対抗するための先制攻撃として、中国は3つの戦略を展開している。

第一に、人民元による国境を越えた決済の整備を進めている。世界貿易におけるドルとユーロの優位性を考えれば、その道のりは険しい。しかし、中国の脱ドル化計画(China’s de-dollarization plans)は進展している。人民元で決済される世界的な決済の割合は、2023年にはほぼ倍増し、約4%にまで達した。重要なのは、中国の対外貿易の3分の1が人民元建てになっていることで、中国企業は西側諸国の制裁からある程度身を守ることができる。ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカ、そして最近加わった5カ国からなるBRICS圏の通貨の可能性が取り沙汰されているが、人民元がロシアと中国の貿易で最も使用されている通貨になったように、北京もBRICS諸国間の貿易で人民元が選択される通貨になることを望んでいる。

SWIFTに代わる中国の決済システムCIPSthe Cross-Border Interbank Payment System)は、北京の金融リスク軽減の2つ目の礎石となる。2015年に開始されたこの決済ネットワークは、SWIFTよりもはるかに規模が小さい。しかし、SWIFTは世界中のほとんどの銀行を接続している中で、SWIFTが中国の銀行を切断した場合のバックアップとなるだろう。最後に、中国はアラブ首長国連邦やタイなどともデジタル通貨を使った国境を越えた取引を試験的に行っている。中国のデジタル通貨がグローバルになる道のりはまだまだ遠い。しかし、優位性は重要ではないかもしれない。中国の目標は、保護手段として代替金融チャネルを持つことであり、そのためには運用が可能であることが必要なだけなのだ。

中国のリスク回避戦略の3つ目のそして最後の柱は、貿易および中国の投資先としての非友好国への依存を減らすことを伴う。その論拠は、2014年にプーティン大統領がロシアの食糧安全保障を懸念したときの論拠と似ている。紛争、感染症拡大、地政学的な緊張によって経済関係が阻害されたり、サプライチェインが混乱したりする可能性があるため、中国政府は貿易の流れをどこかの国に過度に依存することが弱点だと見なしている。中国のような輸出指向の経済にとって、重要な原材料の輸入や主要な輸出先として特定の国に過度に依存することは致命的となる可能性がある。

中国の貿易におけるリスク回避の努力は、ハイテクや金融のそれよりも最近のもので、2018年の最初の米中貿易戦争が起きた際に始まった。しかし、中国の税関が発表した最新の統計を見てみると、中国は最近、一見非友好的に見える西側諸国との関係を分散させるための明確な努力をもって、貿易のリスク回避を加速させている。

2023年の最初の11か月間で、中国のアメリカへの輸出は2022年の同時期と比較して8.5%減少し、ヨーロッパ連合(EU)への輸出は5.8%減少した。一方、インド、ロシア、タイ、ラテンアメリカ、アフリカを含むほとんどの新興市場への中国の輸出は増加した。西側経済への貿易依存度を減らす中国の努力は功を奏しており、2023年には東南アジア諸国連合(ASEAN)加盟諸国向けの輸出が、アメリカやEUを抑え、中国の最大の輸出先となった。

中国のリスク回避努力は投資分野にも及んでいる。アメリカン・エンタープライズ研究所のデータによると、2014年までの10年間、G7諸国とオーストラリア、ニュージーランドは、「一帯一路」構想の資金を除いた中国の対外投資フローの半分近くを吸収していた。2022年までに、この割合はわずか15%にまで低下し、インドネシア、サウジアラビア、ブラジルなどの新興諸国が中国からの直接投資の最大の流入を引き寄せている。

中国の他の取り組みと同様、新興国市場への投資促進も、西側諸国のリスク回避策が発明される以前から行われていた。この変化は2017年のデータで顕著になったが、投資プロジェクトは通常、実現までに数年かかるため、開始はもっと早かったと考えられる。

これらのことから、中国のリスク回避の動きは、アメリカやヨーロッパの取り組みよりもはるかに古く、広範囲に及んでいることが分かる。しかし、中国自身のリスク回避戦略に関する議論は、西側諸国の議論の中ではかなり少ない。

これは重大な欠陥である。北京から見ると、中国への依存を減らそうとする西側諸国の圧力は、アメリカの最先端技術への依存から技術的自給自足の優先、西側の銀行チャネルよりも自国の金融インフラへの依存、西側経済よりも新興市場の優先という、中国の長年確立された計画を加速させるもう1つの理由となる。北京の長期にわたる組織的なアメリカやヨーロッパからの離脱は、中国の経済政策の顕著な特徴であり、それは大きな影響を持つ。

リスク回避は双方向である。協力と平和を導く、経済的相互依存(economic interdependence)という考えは、ロシアのウクライナ侵攻で崩れ去ったと主張する人々もいるが、経済的結びつきはアメリカとヨーロッパに対して、北京への大きな影響力を与えている。しかし、現在進行中の中国と西側諸国との関係を断ち切るプロセスは、西側諸国の制裁脅威の抑止効果を弱めることは避けられず、世界、特に台湾海峡をより危険なものとするだろう。

これはまさに中国の戦略であり、そもそも中国が自給自足を目指す基底には、台湾併合という野望がある。アメリカやヨーロッパがリスク回避を発明したのではなく、中国が発明したのである。そして中国は、この分野で最も熟練した実践者のようである。

※アガーテ・デマライス:『フォーリン・ポリシー』誌コラムニスト。ヨーロッパ外交評議会上級政策研究員。著書に『逆噴射:アメリカの利益に反する制裁はいかにして世界を再構築するか』がある。ツイッターアカウント:@AgatheDemarais
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 古村治彦です。

 ブラジル、ロシア、インド、中国、南アメリカから構成されるブリックス(BRICS)という国際グループは、2001年にその概念が提出されたものだ。その後、21世紀を通じて、具体的な国際グループとして存在感を増してきた。先日、ブリックスの首脳会談が南アフリカで開催され、新たに6カ国がブリックスに参加することが認められた。その6カ国とは、イラン、サウジアラビア、エジプト、アラブ首長国連邦、エチオピア、アルゼンチンである。地図で見ていただくと分かるが、ペルシア湾と紅海(スエズ運河)、アラビア海、南大西洋、喜望峰、マゼラン海峡をがっちり抑えている。このブログでは、中国がアフリカ西部各国の港湾に投資を行っていることを既にご紹介した。中国の資源確保のための航路づくり、中国の大航海時代の始まりということになる。
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 今回参加を認められた6カ国以外にも加盟申請を行っている国々もあるようだ。これらの国々はブリックスだけにとどまらず、上海協力機構(Shanghai Cooperation OrganizationSCO)、一帯一路計画(One Belt, One Road Initiative)にも参加している。様々な国際機関、国際機構に重層的に参加することで、非西側・非欧米諸国の関係が深まり、強固になっていく。今回。ブリックス通貨(BRICS currency)の導入は行われなかったが、脱ドル化(dedollarization)の流れは変わらない。非欧米諸国は金を購入しており、新たに金本位制を導入するかもしれない。アメリカという国家の「信用(脅し)」で持っているドルの価値が揺らいでいくことになるだろう。
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 中国が今年に入ってイランとサウジアラビアの国交正常化を仲介したというニューズがあった。今回のブリックス拡大に向けた動きであることが明らかになった。ヨーロッパと北米を南半球から、グローバル・サウス(Global South)が圧迫していくという構図が出来上がりつつある。

(貼り付けはじめ)

イラン、サウジアラビア、エジプトが新興国グループに参加(Iran, Saudi Arabia and Egypt Join Emerging Nations Group

-アルゼンチン、エチオピア、アラブ首長国連邦もブリックス(BRICS)に招待され、欧米主導のフォーラムに代わるグループとしての役割が強化された。

スティーヴン・エルランガー、デイヴィッド・ピアーソン、リンゼイ・チャテル筆

2023年8月24日

『ニューヨーク・タイムズ』紙

https://www.nytimes.com/2023/08/24/world/europe/brics-expansion-xi-lula.html

今回の拡大は、グループの主要メンバー2カ国にとって重要な勝利と見なされている。中国の政治的影響力が増大し、ロシアの孤立を軽減するのに役立っている。しかし、ロシアと中国は、両国が利益を促進していると主張している、国々の経済を損なう可能性のある経済的な逆風に直面している。

中国、ロシア、インド、ブラジル、南アフリカに加え、サウジアラビアを筆頭とする中東の3カ国と、ロシアのウクライナ侵攻を強固に支持する反米色の強いイランが参加した。

開催国である南アフリカは、テヘランと長年にわたって関係があり、イランの加盟を支持したが、インドやブラジルのような、いわゆる「グローバル・サウス(Global South)」のリーダーであり、ワシントンと北京の間で行動の自由を守りたい国にとっては、厄介な結果となった。

今回の決定は、現在のグローバルな金融・統治システムを、よりオープンで多様性に富み、制限の少ない、そしてアメリカの政治やドルの力に左右されにくいものに作り変えたいという願望を除いては、多種多様な(heterogenous)、明確な政治的一貫性をもたないこのグループの奇妙な性質を浮き彫りにした。

11カ国を合わせた人口は約37億人だが、5つの民主政体国家(democracies)、3つの権威主義国家(authoritarian states)、2つの独裁的君主制国家(autocratic monarchies)、1つの神政国家(theocracy)で構成されており、なかでもサウジアラビアとイランは数ヶ月前まで宿敵(sworn enemies)だった。

グループを支配し拡大を急ぐ中国を除けば、彼らの経済的影響力は比較的小さい。サウジアラビアとアラブ首長国連邦の参加は、特にブリックス・グループが独自の小規模な開発銀行(development bank)の規模と影響力を拡大しようとしているため、財政的により大きな重みをもたらすことになる。

エジプト、エチオピア、イランが加わったことで、北京はロシアとの「無制限のパートナーシップ(no-limits partnership)」や主権国家ウクライナへの侵攻を黙認したことで、先進諸国の多くの国々を遠ざけてきたにもかかわらず、そのアジェンダへの支持が高まっていることを示そうとしている。

「チャイナ・グローバル・サウス・プロジェクト」のコブス・ファン・スタデン研究員は、「イランは明らかに複雑な選択だ。他の加盟国の中には、欧米諸国との地政学的な緊張を高めるのではないかと懸念している国もあるだろうと想像できる」と述べている。

中国の習近平国家主席は木曜日、「今回の加盟国拡大は歴史的なものだ」と宣言し、「ブリックス諸国が、より広い発展途上国のために団結と協力を目指す決意を示した」と付け加えた。

それでも、中国にとって成功の様相を呈したことは、首脳会談から得られる最も重要な収穫となるかもしれない。さもなければ、米ドルの覇権(hegemony of the U.S. dollar)に匹敵するブリックス通貨(BRICS currency)を確立するという長年の目標を達成できなかったからだ。ブリックス・グループは代わりに、貿易に現地通貨を使用することをメンバーに奨励した。

ブリックス・ブロックの限界のもう1つの象徴は、ロシアのウラジーミル・V・プーティン大統領の欠席だった。プーティン大統領は、西側主導の国際機関である国際刑事裁判所(International Criminal Court)の発行した令状に基づき、ウクライナでの戦争犯罪で指名手配されているため出席できなかった。南アフリカは国際刑事裁判所の決定を無視したくないと考えた。

加えて、今週は、ロシアの傭兵部隊(mercurial mercenary)のリーダーであるエフゲニー・V・プリゴジンが、アメリカや他の西側当局の発表によれば、プライヴェートジェット機内で爆発に巻き込まれ、墜落死したことが明らかになり、クレムリンのイメージは更に悪化した。

今週のサミットで導入された変更が、各国が期待しているような影響を与えるかどうかはまだ分からない。2001年にBRICsという言葉を作った元ゴールドマン・サックスのエコノミストであるジム・オニールは、歴史的な記録は安心できるものではないと言う。

オニールは、BRICs首脳会議は「象徴的なものでしかない」と語り、「BRICs首脳会議が何かを成し遂げたとは私には思えない」と付け加えた。

そして、首脳会議からしばしば発せられる高尚な美辞麗句(lofty rhetoric)は、今後数年間にBRICsメンバーに重くのしかかるであろう重大な問題を隠蔽している。

アジア・ソサエティ政策研究所の中国専門家フィリップ・ル・コレは、「不動産スキャンダル、原因不明の外交部長更迭、中国人民解放軍の将軍の突然の解任など、中国経済が低迷するなか、習近平は自国に誇示するための政治的勝利を必要としていた」と指摘する。

しかし、特に中国とロシアの経済については、挫折が積み重なっているようだ。

ピーターソン国際経済研究所のエコノミスト、ジェイコブ・ファンク・キルケゴールは次のように述べている。「中国が主要な経済的比重(main economic weight)と貿易上の優位性(trading advantages)を提供しているため、ブリックスは常に中国プラス4である。しかし、中国経済は深刻な危機に陥っている。中国経済の不振は中国への一次産品輸出に依存しているブラジルや南アフリカなどの国にとっても困難をもたらす」。

キルケゴールは「ロシア経済自体が制裁の重みで崩壊しつつあり、他のブリックス諸国はロシアを搾取し、安い石油を買いあさり、石油精製品をヨーロッパに送っている」と述べた。

厳重に管理された会議では、表向きは結束をアピールしていたものの、ブリックスのメンバーたちは、経済拡大に関して対立する見解を持ち寄っていた。中国は、ブリックスがアメリカのパワーに対抗するためのプラットフォームであると考え、急速な拡大を推し進めた。しかし、何人かの首脳は、冷戦時代を彷彿とさせるような分裂的な世界秩序への回帰を警告を発し、反発した。

ブリックス諸国は西側の覇権(Western hegemony)に対抗して結束を固めたとはいえ、その目標は依然としてバラバラだ。インドのタクシャシラ研究所中国アナリストであるマノジ・ケワラマーニは、「ブリックスは、様々な利害関係を持つ新たなアクターたちによって、未知の道を進んでいる。ブリックスは扱いにくくなり、あえて言えば、より非効率になるだろう」と述べている。

ブリックス関係者の中には、これに同意しない人たちもいた。

ブリックス交渉の南アフリカ代表であるアニル・スークラルは、西側が支配している各機関の構造は時代とともに変化する必要があると述べた。スークラルは「ブリックスが言っているのは、『もっと包括的になろう(Let’s be more inclusive)』ということだ。BRICSは反西洋ではない」と発言した。

対照的に、キルケゴールは、この組織が拡大しても、致命的に多様であり、「反西洋感情によって何とかまとめられた人為的な創造物」に過ぎないと見ている。

サウジアラビアと並ぶイランの加盟は、ロシアの侵攻軍への供給におけるテヘランの重要な役割と、リヤドのアメリカとの長期的な安全保障同盟を考えれば、おそらく最大の驚きとなった。

サウジアラビアはいまだに兵器のほとんどをアメリカから調達しており、複数のアナリストによれば、アメリカの安全保障の傘をすぐに放棄する意図はないという。しかし、サウジアラビア当局者たちは、ワシントンが本当に中東に関与しているのかについて懐疑的であり、今年初めに北京でテヘランとの和解を交渉し、中国の外交的地位を高めた。

テヘランは決してワシントンのファンではない。そして、北京とは意外にも親密になっている。北京は、国際的な制裁を無視して、大幅に値引きされた石油を購入することで、テヘランを浮揚させる手助けをしてきた。

木曜日、イランの政治担当副大統領であるモハマド・ジャムシディは、イランのブリックス加盟を「歴史的な偉業と戦略的勝利(historic achievement and a strategic victory)」と呼んだ。イランの加盟は、一種の世界的な門番としてワシントンがテヘランに対して持っていた影響力を弱めるものでもある、と「クインシー・インスティテュート・フォー・レスポンシブル・ステートクラフト」のトリタ・パルシは述べた。

デリーに本拠を置くオブザーヴァー・リサーチ財団の副理事長で、キングス・カレッジ・ロンドンのインド研究所で国際関係論を教えるハーシュ・V・パント教授は、インドは重大な懸念を抱きながらも、悪役を演じたくなかったため、この拡大に協力した、と語った。更に、ニューデリーは「このプラットフォームの性質が、地理経済的(geoeconomic)なものから地政学的(geopolitical)なものへと変化する」ことに警戒を怠らないだろうと付け加えた。

木曜日、米国務省はイランの参加については触れず、代わりにホワイトハウスのジェイク・サリヴァン国家安全保障問題担当大統領補佐官が週明けに述べた、バイデン政権が「ブリックスがアメリカや他の国々に対する地政学的ライバルのような存在に進化するとは考えていない」という発言を紹介した。

アナリストの中には、ブリックスへの加盟に関心を示した数十カ国は、西側諸国への警鐘(wake-up call)になるはずだと述べた。

アジア・ソサエティ政策研究所中国分析センターで中国政治を研究するニール・トーマスは、「多くの発展途上国がブリックスへの加盟に熱意を示しているのは、中国の価値中立的なグローバリゼーションの魅力だけでなく、西側諸国がより包括的な国際秩序の構築に失敗していることを反映している」と指摘している。

ワシントンのエドワード・ウォン、ロンドンのイザベル・クワイ、ベルリンのポール・ソンヌ、ニューデリーのスハシニ・ラジがこの記事の作成に貢献した。

※スティーヴン・エルランガー:『ニューヨーク・タイムズ』紙外交担当特派員チーフ、ベルリンを拠点としている。以前はブリュッセル、ロンドン、パリ、イェルサレム、ベルリン、プラハ、ベルグラード、ワシントン、モスクワ、バンコクで取材活動を行った。

※デイヴィッド・ピアーソン:中国外交政策と中国経済と文化の世界とのかかわりを取材している。

※リンゼイ・チャテル:本紙ヨハネスブルク支局を拠点に南アフリカを取材している。本紙インターナショナル・モーニング・ニューズレターでアフリカについて記事を書いている。チャテルは『フォーリン・ポリシー・クアーツ』誌とAP通信に勤務していた。

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ブリックス(Brics)、新たに6カ国を加盟させ2倍以上に拡大(Brics to more than double with admission of six new countries

-ロシアと中国を含む経済圏の大規模な拡大がアメリカと西側の同盟諸国への対抗軸を提供しようとしている。

ジュリアン・ボーガー筆(ワシントン発)

2023年8月24日

『ガーディアン』紙

https://www.theguardian.com/business/2023/aug/24/five-brics-nations-announce-admission-of-six-new-countries-to-bloc

新興経済大国で構成されるブリックス・グループ(Brics group)は、6カ国の新メンバーの加盟を発表した。今回の拡大は、グローバルな世界秩序を再構築し、アメリカとその同盟諸国に対抗しようとしてのことだ。

来年初め、イラン、サウジアラビア、エジプト、アルゼンチン、アラブ首長国連邦(UAE)、エチオピアが、現在の5カ国(ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカ)に加わることが、木曜日にヨハネスブルグで開催された首脳会談の席上で発表された。

中国の習近平国家主席は、この拡大について「歴史的」と表現した。習近平国家主席は、新メンバー加入の重要な推進者であり、ブリックスの拡大がグローバル・サウス(global south)が世界情勢でより強い発言力を持つための方法であると主張してきた。

しかし、この拡大が世界の舞台でブリックスの影響力をどの程度高めることになるのかは不明だ。アナリストたちは、影響力の拡大は、これらの国々がどこまで一致団結して行動できるかにかかっており、新メンバーの加入によって、強力な独裁国家と中所得国や発展途上の民主政治体制国家が混在する、よりバラバラのグループとなった。

「米州対話(Inter-American Dialogue)」でアジア・ラテンアメリカ・プログラムのディレクターを務めるマーガレット・マイヤーズは、「ブリックスの新メンバーが、このブロックに加盟することで何を得ることになるかはまったく明らかではない。少なくとも現時点では、この動きは何よりも象徴的なものであり、世界秩序の再調整に対するグローバル・サウスからの広範な支持を示すものだ」と述べた。

ウラジーミル・プーティンは、国際刑事裁判所(international criminal court)からウクライナでの戦争犯罪の逮捕状が出されている。プーティンは3日間のサミットに直接出席することはなかったが、ブリックスの拡大は、プーティンにとって象徴的な後押しとなる。現在、プーティン大統領は、アメリカが主導する、ロシア軍の撤退と先勝の終結を強いるための努力と企てに対して戦っている。

制裁を回避する方法を探していたイランを加盟させるという決定は、プーティンと習近平の勝利を意味し、グループに反欧米的、非民主的な色合いを与えることに貢献した。彼らは、グループを非同盟(non-aligned)として表現することを好む他のメンバーのより慎重なアプローチに勝った。

厳しい経済問題に直面しているアルゼンチンにとって、加盟は深刻化する危機から脱出するための生命線となりうる。アルベルト・フェルナンデス大統領は、アルゼンチンにとって今回の加盟はアルゼンチンにとっての「新しいシナリオ(new scenario)」となると述べた。

フェルナンデス大統領は「新市場への参加、既存市場の強化、投資の拡大、雇用の創出、輸入の増加の可能性が開ける」と語った。

エチオピアはグループ唯一の低所得国となった。アビイ・アーメド首相は、自国にとって「素晴らしい瞬間(great moment)」だと述べた。

10以上の国々が正式に加盟を申請しているが、加盟候補国が加盟するには、オリジナルの5カ国の間でコンセンサスを得る必要がある。

南アフリカ大統領のシリル・ラマフォサは、加盟諸国が「ブリックス拡大プロセスの指導原則、基準、手順」に合意したと述べた。しかし、これらの基準は説明されなかった。例えば、2億7400万人の人口を持ち、アジアで強力な力を持つインドネシアは、加盟を申請したが今回は認められなかった。

戦略国際問題研究センター(Centre for Strategic and International Studies)の米州プログラム責任者であるライアン・バーグは次のように述べている。「中国とロシアにとって、今回の拡大は勝利だ。中国にとっては、自分たちが望む北京中心の秩序を構築し続けることができる。来年、首脳会議を主催するロシアにとっては、孤立が深刻化している現在、これは大きなチャンスである」。

「ブラジルやインドの立場から見ると、たとえ美辞麗句を並べ立てたとしても、中国のような世界的な大国を含む組織の一員としての力を弱めてしまうため、その拡大にはあまり乗り気ではないだろう」とバーグは述べている。

既に中国と広範な二国間関係を結んでいる加盟諸国にとって、加盟による経済的利益がすぐに得られるとは思えない。ブリックス・グループの新開発銀行(New Development Bank)はまだ比較的小規模だ。しかし、マイヤーズは、この動きは象徴的なものではあるが、重要でないことを意味するものではないと述べた。

マイヤーズは次のように語っている。「これは重要なことであり、G7や他の北半球のグローバル・アクターたちが否定すべきではない。これらの新メンバー(特に主要産油国)が加わったことで、ブリックスの構成は、世界経済と世界人口に占める割合がはるかに大きくなった」。

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