古村治彦(ふるむらはるひこ)の政治情報紹介・分析ブログ

SNSI研究員・愛知大学国際問題研究所客員研究員の古村治彦(ふるむらはるひこ)のブログです。翻訳と評論の分野で活動しています。日常、考えたことを文章にして発表していきたいと思います。古村治彦の経歴などについては、お手数ですが、twitter accountかamazonの著者ページをご覧ください 連絡先は、harryfurumura@gmail.com です。twitter accountは、@Harryfurumura です。よろしくお願いします。

タグ:BYD

 古村治彦です。

 2023年12月27日に『バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる』(徳間書店)を刊行しました。『週刊現代』2024年4月20日号「名著、再び」(佐藤優先生書評コーナー)に拙著が紹介されました。是非手に取ってお読みください。よろしくお願いいたします。

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

 電気自動車分野の動きに関して、ここ数回、このブログでもご紹介している。アメリカは中国製の電気自動車に対して、関税100%を課す決定を下した。この措置は、アメリカの国内市場で、中国製の電気自動車がシェアを広げており、アメリカ政府としては、経済問題と安全保障上の問題として、懸念を持っていることを示している。世界最大の電気自動車メーカーであるテスラにしてれば、ありがた迷惑な措置であることは前回の記事で書いた。

 アメリカは、電気自動車に必要不可欠なバッテリー分野で重要な存在となっているインドネシアとの間での自由貿易協定を結ぶことを躊躇している。インドネシア政府が、精錬されていないニッケル(バッテリーにとって必要な鉱物資源)の輸出を禁止したことで、インドネシアにニッケル精錬工場や、バッテリー製造工場を建設するために、各国が投資を行っているが、その中心は中国である。中国が関連しているニッケル精錬工場からのニッケルや、バッテリー製造工場からのバッテリーを、アメリカ国内に入れることに、バイデン政権は躊躇しているようだ。「インドネシアはいつまでもはアメリカを待っていられないよ」とルフット・ビンサル・パンジャイタン海洋・投資調整担当大臣名で『フォーリン・ポリシー』誌に掲載した論稿についてもこのブログで既にご紹介している。

そうした中で、イーロン・マスクがインドネシアを訪問し、ジョコ大統領とルフット大臣と会談を持ったということ、インドネシア国内にバッテリー製造工場を作ると発言したことは重要だ。イーロン・マスクはアメリカ政府の意向に反するような動きをしているが、これはマスクからすれば当然の動きだ。テスラは、中国市場が最大の得意先であり、中国の上海で製造している。中国が既に進出しているインドネシアに進出して、バッテリー工場を作るというのは、これもまた当然のことだ(中国資本の精錬工場からのニッケルを使うだろう)。アメリカが中国とインドネシアを排除している中で、テスラが入って、電気自動車分野に関して、三角形を形成している。そこにアメリカが入れないというのは、アメリカにとって大きな痛手である。

 インドネシア政府の海洋・投資調整府(Coordinating Ministry for Maritime and Investment Affairs)が、インドネシアにおける電気自動車関連、最終的な電気自動車の生産と輸出を担当している重要な部署となっている。ジョコ・ウィドド大統領就任直後の2014年10月27日に設置された(ジョコ大統領就任は10月20日)。ジョコ政権下、海洋・投資調整大臣はルフット・ビンサル・パンジャイタンが一貫して務めてきた。大統領交代のため、ルフット大臣が退任し、エリック・トヒル国有企業大臣が後任大臣に就任するという予測が出ている。大きな政策変更はないということのようだ。以下に紹介している論稿では、東南アジア地域では、タイが最大の電気自動車市場になっており、輸出量も地域で最大になっているということだ。これは世界の巨大自動車メーカーがタイに進出しているということもあるだろうが、インドネシアにとっては手強い競争相手になる。また、ヴェトナムもヴィンファスト社という会社があって、既に電気自動車を輸出しているとのことだ。これは、おそらく、中国からの支援や協力があってのことだろう。こうやって、アメリカの影響力を削いでいる。

 電気自動車分野は、国際政治の最前線ということになる。ここでも、米中対立が起きているが、アメリカは中国に対して、既に劣勢に立っている。最先端分野でのアメリカの衰退は、アメリカの世界帝国としての終わりを告げている。

(貼り付けはじめ)

マスク氏、インドネシア大統領と会談 EV電池工場の建設検討へ

By Stefanno Sulaiman

ロイター通信 2024520日午後 3:04 GMT+92時間前更新

インドネシアのルフット海洋・投資担当調整大臣は20日、ジョコ大統領とこの日面会した米電気自動車(EV)大手テスラのイーロン・マスク最高経営責任者(CEO)が同国にEV電池工場を建設する案を検討すると明らかにした。

[デンパサール(インドネシア 20日 ロイター] - インドネシアのルフット海洋・投資担当調整大臣は20日、ジョコ大統領とこの日面会した米電気自動車(EV)大手テスラ(TSLA.O), opens new tabのイーロン・マスク最高経営責任者(CEO)が同国にEV電池工場を建設する案を検討すると明らかにした。

マスク氏からコメントは得られていない。

同氏とジョコ大統領は20日にインドネシアのバリ島で開催された世界水フォーラムに出席後、会談を開いた。

また、ジョコ大統領はマスク氏にインドネシアの人工知能(AI)センターへの投資を検討するよう求めたほか、マスク氏の宇宙開発企業スペースXがパプア州ビアク島にロケット発射場を建設することを改めて提案した。

インドネシア政府は同国の豊富なニッケル資源を活用してEV産業を振興しようとしており、何年もテスラの工場誘致に力を入れてきた。

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インドネシアは電気自動車に大きく賭けている(Indonesia Bets Big on Electric Vehicles

-ジャカルタの最新の開発ギャンブルはグリーン転換にかかっている。

ジョセフ・ラックマン筆

2024年5月8日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2024/05/08/indonesia-electric-vehicle-green-transition-china-tariffs/

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ジャカルタで開催されたインドネシア国際モーターショーで、ヴェトナムの電気自動車ブランド「ヴィンファスト(VinFast)」が電気自動車VF7を展示(2024年2月24日)。

インドネシアの投資・海事担当調整担当(coordinating minister for investment and maritime affairs)副大臣ラフマト・カイムディンは、「中国は工業化するには40年から50年かかった。私たちはもっと速くする必要があるかもしれない」と述べた。インドネシア政府は、2045年までに先進国になるという野心的な目標を設定している。その一環として、電気自動車生産の世界的なハブ(global hub)となるという大きな賭けが行われている。

ジャカルタは、世界的なグリーン転換の中で、国内に埋蔵している莫大なニッケルとコバルトを成長の原動力にするチャンスに目をつけた。これらの鉱物はバッテリー生産に不可欠であり、鉱山から自動車ユーザーまでの国内サプライチェーン構築の基盤として利用できる。

今のところ、この賭けはうまくいっているようだ。インドネシアは現在、世界のニッケル生産の51%を占めており、コスト競争を圧倒し、コンゴ民主共和国に次ぐ世界第2位のコバルト生産国となっている。韓国のヒュンダイ、日本の三菱自動車、中国の五菱、奇瑞、DFSKの5社がインドネシア国内で既に、少数ではあるが、電気自動車を生産しており、今後更に多くの電気自動車が生産することが期待されている。大手電池メーカーや電池材料メーカーもこれらの企業と一緒にインドネシアに進出している。

この電気自動車という新興産業分野は、国内問題、地政学的保護主義、環境問題、技術革新など、無数の仕掛け線(tripwire)に直面しているが、楽観できる理由もある。ビジネス情報会社「ベンチマーク・ミネラル・インテリジェンス」のバッテリー・電気自動車担当主任アナリストのルーク・ギアは、「控えめに見積もっても、インドネシアは2030年までに年間50万台の電気自動車を生産できるようになるだろう」と述べている。

インドネシアの開発アジェンダ全体が電気自動車に懸かっており、その前途は険しいからだ。2045年までに政府の開発目標を達成するためには、インドネシアの成長率を平均5%前後から6~7%に引き上げる必要がある。最も基本的なレヴェルでは、インドネシアが望ましい商品を生産し、労働者が生産性の高い仕事に従事できるような産業からこれらの商品が生まれるようにし、これらの産業を構築するために必要な大規模な海外直接投資(foreign direct investmentFDI)を誘致できるようにする必要がある。もしそれができなければ、若い労働者と消費者からなるインドネシアの現在の人口ボーナスは、足かせに変わるだろう。希望は、今垣間見えるチャンスの窓がいつ閉じるのかという静かな不安と混ざり合っている。

電気自動車産業は、これらの条件を全て満たしているように見える。電気自動車市場は今後、猛烈な勢いで拡大すると予想されている。国際エネルギー機関(International Energy AgencyIEA)は、2035年までに販売される全ての自動車が電気自動車になると予測している。生産の大幅な増加によって生み出される雇用の多くは工場での仕事であり、工業化は労働者を農業や小規模サーヴィスなどの生産性の低い部門から生産性の高い部門に移動させる典型的な方法となる。これがインドネシアで起きることになる。

インドネシアは、莫大な重要鉱物資源を活用することで、海外企業にインドネシアへの投資を促し、鉱業に必要な直接投資を確保することを惜しまない。ニッケル鉱石の輸出禁止により、多くの中国企業がインドネシアでの精錬を開始した。2023年、中国企業はインドネシアの金属・鉱業プロジェクトに42億ドルを投じた。

現在、焦点はバッテリーと電気自動車生産の詳細を構築することに移っている。ここでインドネシア政府はムチよりもアメを投入している。補助金の対象となるには、インドネシアで製造された電気自動車が一定レヴェルの現地コンテンツ要件を満たす必要があり、この要件は時間の経過とともに増加している。しかし、その代わりに、これらの 電気自動車に対する付加価値税はわずか1% だ。この分野の主要投資家たちも10年間の納税猶予を受けている。インドネシアで生産を展開する際に、出荷する電気自動車には輸入税や奢侈税が課されない。

アメリカやヨーロッパの大手メーカーの多くはまだ参入を表明していないが、これは必ずしも問題になる訳ではない。その多くは世界的な電気自動車移行を呆然と見つめるだけで(caught flat-footed)、中国や新たな生産拠点の新興企業がチャンスを得ている。

しかし、この移行の裏返しとして、象徴的(totemic)な国家産業を保護したいという願望が、インドネシアの輸出への期待を台無しにする可能性のある先進国の保護主義を生み出しているということだ。ジョー・バイデン政権の電気自動車補助金には多くの条件が付けられており、インドネシアで組み立てられた電気自動車は排除されている。ヨーロッパ連合もまた、安価な中国製電気自動車が市場に流入することにパニックを起こし、ますます保護主義的な方向に進んでいる。インドネシアでは大量の石炭が燃焼されているため、同国の電気自動車は比較的炭素集約的である。

問題の1つは、グリーン・サプライチェーンにおける中国の支配に対する恐れである。しかし、これはほとんどの西側諸国の自動車メーカーが技術シフトについていけなかったことと表裏一体の関係にある。ステランティスはそれなりの業績を上げている。しかし、GM、フォード、フォルクスワーゲンは後塵を拝している。

競争力はないが政治的に重要な産業に対する保護主義について、長年にわたり発展途上国に説教してきた、西側諸国は、逆の立場になるとその姿勢を変えようとしている。保護主義や西側メーカーが採算の取れない電気自動車の撤退を遅らせていること、加えて、世界経済が不安定であることが、電気自動車の販売台数は伸び続けているものの、その伸び率は鈍化しており、下方修正されているとUBSの電気自動車バッテリー調査担当エグゼクティブ・ディレクターのティモシー・ブッシュは指摘する。

インドネシアの計画に対するもう一つの脅威は、更なる技術革新である。インドネシアの魅力の多くは、NCM電池に必要なニッケルとコバルトの豊富さにかかっている。しかし、過去5年間で、ニッケルもコバルトも使用しないLFP電池は、ニッチな製品から、電気自動車電池市場の40%以上を供給するまでになった。皮肉なことに、高価だが航続距離が長いNCM電池は、消費者が豊かで、世界的に見ても大変長距離を走る米国市場に最適かもしれない。しかし、インドネシアはその市場から締め出されている。

インドネシアはまた、電気自動車製造ブームに乗ろうとする他の国々との厳しい競争にも直面する可能性がある。ブルームバーグNEFのアナリスト、コマル・カレールは、「電気自動車に対する強い国内需要の欠如は、より多くの現地生産を誘致するためのハードルとなり得る。通常、バッテリーメーカーや自動車メーカーは、エンドユーザー層が厚い市場を好むものだ」と言う。実際、インドネシアは既にタイとの競争に直面している。タイは東南アジア諸国連合(ASEAN)最大の自動車輸出国であり、この地域最大の電気自動車市場を持っている。

この文脈では、インドネシアが長い間苦労してきた電気自動車分野に特化しない問題が特に重要になる。最近の改革は、外国人投資家の生活をより容易にしようとしている。しかし、非関税障壁は依然として大きな問題である。また、多くの企業にとって、この国の不透明な規制をナビゲートするための権力ブローカーとの関係が必要なのは、まさに生活の現実である。ニッケル部門における中国の主要投資は、海事・投資担当調整大臣であるルフート・ビンサール・パンジャイタン(インドネシアの便利屋[Mr. Fix It.])が指導している。

また、インドネシアの教育制度にはまだ多くの課題が残っており、競争相手の国々と比較しても一貫して悪い成績が続いている。電気自動車企業にとって、有能な労働者を見つけることは難題かもしれない。この問題をより深刻にしているのは、技術開発によって製造業の技能や資本集約度が高まり、労働吸収力が低下するという明らかな傾向である。電気自動車製造が熟練度の低い労働者の雇用を生み出す代わりに、インドネシアは少数の専門職のために適切な訓練を受けた労働力を提供するのに苦労することになるかもしれない。

それでも、こうした潜在的な問題が死刑宣告となる必然性はない。電気自動車の販売台数の伸び率が鈍化しているにもかかわらず、アナリストの多くは依然として強気で、世界市場は依然として力強く拡大していると指摘している。前述のベンチマーク社のギアは、インドネシアが魅力的なのは、その鉱物資源だけでなく、ASEAN最大の巨大な国内自動車市場があるからだ、と述べている。現在、国内の電気自動車普及率は低いが、需要は急速に伸びると予想される。強力な国内市場は、輸出に移行する企業をサポートするのに役立つだろう。

自動車メーカーが代替拠点としてインドネシアに目を向ければ、反中の保護主義がインドネシアに有利に働く可能性さえある。メイバンク・インベストメント・バンキング・グループの持続可能性調査責任者であるジガー・シャーは、「このような状況では、中国の自動車メーカーが採用する可能性のある最善の政策は、多くの拠点で現地に根ざした事業を立ち上げることだ」と語る。

有力な有力者たちとの関係が必要なため、物事が厄介になることもあるが、適切なコネクションを築いた企業にはレッドカーペットが敷かれる可能性がある。電気自動車メーカーに対する様々な優遇措置は、メーカーとの協議の上で決定されたものであり、投資を行う企業は、インドネシア政府が直面する問題を解決しようとしていることを期待できるだろう。また、プラヴウォ新大統領が誕生する一方で、ジョコ・ウィドド政権の主要人物が新政権で活躍することが期待されている。その中には、ルフット海洋・投資調整相の後任として一部で期待されている、大富豪のエリック・トヒル国有企業相も含まれている。

技術面では、LFPバッテリーの台頭が問題となる可能性があるが、対処可能な問題である。BMIの自動車アナリスト、コケッツォ・ツォアイは「LFPバッテリーはかなり大きなリスクだ」と述べている。しかし、ニッケルリッチ電池の市場シェアは、一時的な縮小の後、2026年に向けて回復すると予想している。エネルギー密度に関して、ニッケル電池の優位性は、様々な用途でニッケル電池が存在し続けることを保証するはずだ。また、先駆的なLFPブレード・バッテリーをほぼ独占的に使用するBYDによるインドネシアへの大規模な投資計画も、インドネシアがニッケル資源だけではない魅力を持っていることを示唆している。

また、製造における技術的な方向性も明確に定められたものではない。最近の研究では、電気自動車の労働集約性が低いかどうかが再評価され、ほぼ同じであるか、実際にはより多くの労働者が必要である可能性が示唆されている。特に市場シェアを拡大させている、BYDは労働集約的な生産モデルを開発しており、創業者は実際に自動車の製造には特に複雑な技術の習得が必要であることをきっぱりと否定している。

技術、市場、地政学がますます急速に変化する中、インドネシアが行う政策的な賭けは確実なものではない。ラフマット副調整相は次のように述べている。「私たちは成功するだろうか? その答えは時間が出してくれるだろう。私たちが知っているのは、立ち止まってはいられないということだ」。

※ジョセフ・ラックマン:インドネシアと東南アジアをカヴァーするフリーランス・ジャーナリスト。ツイッターアカウント:@rachman_joseph

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(終わり)
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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める
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 古村治彦です。

 2023年12月27日に『バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる』(徳間書店)を刊行しました。『週刊現代』2024年4月20日号「名著、再び」(佐藤優先生書評コーナー)に拙著が紹介されました。是非手に取ってお読みください。よろしくお願いいたします。

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

 電気自動車(electric vehicles)分野は米中の競争になっている。アメリカのテスラモータース(Tesla Motors)と中国のBYD(比亜迪)の争いになっている。電気自動車はこれから伸びていく分野だと考えられている。アメリカはこの分野で世界シェアの拡大を図り、中国は国内市場をまずは固めるという状況になっている。
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 電気自動車にとって重要なバッテリーに欠かせないのが、ニッケルだ。ニッケルの産出量、埋蔵量共に世界のトップとなっているのは、インドネシアである。インドネシアでは、未加工、未精錬のニッケルの輸出をジョコ・ウィドド政権下の2020年に禁止した。その結果、中国企業や韓国企業がニッケル加工に進出している。インドネシアとしては、更なる技術移転を求めており、将来的にはバッテリーの自国内の生産(国産化)を推進している。
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 下に紹介する論稿は、インドネシア海洋・投資担当調整大臣のルフット・ビンサル・パンジャイタン(Luhut Binsar Pandjaitan)の名前で出されたものだ。その内容は、一言で言えば、「アメリカもインドネシアのニッケルに投資しないと、電気自動車分野での未来はない。私たちはいつまでも気長にアメリカが投資してくるのを待つつもりはない」というものだ。ルフット大臣は、インドネシア軍の将官の出身であり、現役時代には、アメリカ軍特殊部隊での教育、トレーニングを複数回にわたって受けてきた人物だ。また、ワシントンDCにあるジョージワシントン大学で修士号を取得している。スハルト時代のエリート軍人であり、現在もスハルト体制時代の与党だったゴルカルに属している。アメリカとは不快コネクションがある人物だ。その人物がアメリカに半分脅しをかけるような、半分誘いをかけるような内容の論稿を発表した。

 アメリカ連邦議会は、ニッケルの分野でインドネシアの競争相手である、オーストラリアの働きかけを受けて、インドネシアからのニッケル輸入を制限している。その理由に、インドネシアでのニッケル精錬に石炭が使われており、炭素排出を行っていること、既に中国企業が多数進出していることを挙げている。これに対して、ルフット大臣は、「そんなことを言っていて大丈夫?」というような内容の論稿を出している。

インドネシアは、「西側以外の国々(the Rest)」の中で存在感を高めている。東南アジアの地域大国となっている。ジョコ大統領の下で、経済発展を進めている。2050年には、GDPの面で、日本を抜いて、世界第4位になるという予測も出ている(日本は第8位と予測されている)。そのスタートとなるのが、自国から算出する資源の有効活用だ。日本はインドネシアと良好な関係をこれまで継続して築いてきた。中国も歴史上、様々なことがあったが、現在はやはりインドネシアとの友好関係を保っている。アメリカがインドネシアとの関係を重視しないとなれば、それは、アメリカの衰退のスピードが加速するだけのことだ。

(貼り付けはじめ)

インドネシアのニッケルなしでは、EVにアメリカの未来はない(Without Indonesia’s Nickel, EVs Have No Future in America

-ジャカルタとの自由貿易協定に反対するIRAと連邦上院は、アメリカのグリーン転換を台無しにしている。

ルフット・ビンサル・パンジャイタン筆

2024年5月1日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2024/05/01/indonesia-nickel-green-energy-ev-fta-congress/

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インドネシア南東スラウェシの採掘現場で、ニッケル鉱石を積んだダンプトラックの様子(2023年8月3日)

インドネシア産ニッケルがなければ、アメリカの電気自動車(Electric VehiclesEV)市場は低迷するだろう。我が国は、電気自動車用バッテリーの中核的金属であるニッケルの世界最大の埋蔵量を誇っている。2023年、インドネシアは世界のニッケル加工品の半分以上を輸出した。今後数年間で、このシェアは拡大すると予測されている。

しかし、米連邦議会議員の中には、インドネシアの海外の競争相手と協力して、我が国からの精製ニッケル(refined nickel)の輸入を阻止することを決意している。これまでのところ、彼らは成功している。しかし、企業にガソリン車の販売からの転換を強制する、3月に可決された措置と併せて導入するということになると、最終的に損をするのはアメリカの自動車労働者たちということになる。

ジョー・バイデン米大統領のインフレ削減法(Inflation Reduction ActIRA)は、競争条件を根本的に変えてしまった。アメリカの製造業者たちは、アメリカが自由貿易協定を結んでいる国(インドネシアは結んでいない)からのインプットでない限り、その補助金を利用することができない。

アメリカの自動車メーカーに必要なニッケルの供給を確保するため、昨年(2023年)、私が大臣を務める政府は、重要鉱物を対象とした限定的な貿易協定をアメリカ側に提案した。しかし、超党派の米連邦上院議員グループとオーストラリアなどニッケル生産国の企業による頓挫を狙ったキャンペーンが展開され、今のところ合意には至っていない。

連邦上院議員たちの反対は、環境への懸念に集中する傾向がある。インドネシアのニッケル製錬所の多くは石炭を燃料としている。一部の人々にとっては、内燃機関を道路から撤去すること(ガソリン自動車を減少させること)が炭素削減につながるにもかかわらず、その精製されたニッケルを含むバッテリーが信用されていないことを意味する。このような気候の純粋性は惰性を生み、結局は自滅する。環境とのトレードオフは、ニッケルがその動力源となるバッテリーにとって重要であるのと同様に、グリーン転換にとっても重要である。

アメリカが炭素の排出量を大幅に削減するためには、より多くの電気自動車が道路を走る必要がある。運輸部門は、アメリカ最大の排出源であるにもかかわらず、電気自動車の割合は1%にも満たない。電気自動車の普及は、購入しやすい価格に左右される。投入資源が安くなれば、バッテリーも安くなる。人為的な貿易障壁のないインドネシア産の精製ニッケルは、石炭が豊富にあるため競争力がある。

それは理想的ではないかもしれない。しかし、再生可能エネルギーは、インドネシアの製錬所の電力を賄う費用対効果の高い選択肢をまだ提供していない。技術が進歩するのを待つよりも、私たちは今、重要な金属を精製するために自由に使える資源を使わなければならない。

インドネシアのニッケルは、より環境に優しいものになるだろう。しかし、そのためには経済発展が不可欠である。輸出収入や海外からの直接投資があって初めて、エネルギーシステムの再構築を始めることが可能となる。例えば、インドネシア最大のニッケル生産者であるハリタ・ニッケル(Harita Nickel,)は、その経済的成功の上に立って初めて、自社施設に自然エネルギーを導入することができる。

当然のことながら、政府のイニシアティブも助けになる。今年導入される予定の炭素排出量規制と税制は、石炭からの脱却を促進するのに役立つだろうし、石炭発電所の新設は禁止されている。しかし、インドネシアにおける真のグリーン転換は、最終的には資本次第ということになる

途上国を化石燃料から引き離すための、気候変動資金調達メカニズムであるジャスト・トランジション・パートナーシップの下で約束された、西側諸国からの資金だけでは、約束が実際に履行されるかどうかにかかわらず、十分ではない。これは何の見返りもなく、ただ金を出せと言っているのではなく、事実を言っているだけのことだ。

大幅な資金不足を補うためには、途上諸国が既存の天然資源で繁栄し、世界のグリーン転換に積極的な役割を果たせるようにしなければならない。私たちは、慈悲深い諸大国からの施しに頼るだけの傍観者に成り下がることはできないし、そうなる意図もない。

一方、インドネシア国内でグリーン転換が国民の支持を維持するためには、国民の雇用と繁栄を実現しなければならない。2020年、インドネシア政府は、ヴァリューチェーンをより拡大するため、未加工のニッケル原鉱石の輸出を禁止した。それ以来、インドネシアには投資が殺到している。

インドネシアからのニッケル加工品の輸出額は飛躍的に増加し、年間300億ドル(約46500億円)に達している。今年、インドネシア初のバッテリー発電所が、韓国メーカーとの合弁でオープンする。この工場はインドネシア人に何千もの高生産性雇用を創出し、技術移転を促進し、インドネシアの輸出を更に押し上げることになるだろう。

同様に、インフレ削減法は、アメリカの雇用を促進し、グリーンエネルギーのコストを削減し、重要鉱物のサプライチェーンを確保することを目的としていた。それどころか、移行が依存する商品やインフラを提供するために、アメリカの製造業者が必要とする重要物資の参入を事実上妨げている。

考えられる最悪のシナリオは、アメリカのインフレ削減法は、アメリカを世界の電気自動車市場から完全に締め出す可能性がある。S&Pグローバル社は、2035年までに世界のニッケル供給の90%が、アメリカの自由貿易協定によってカヴァーされなくなると予想している。今後数十年の経済関係を形成するサプライチェーンが現在構築されつつあるのに、これではアメリカを拠点とするメーカーが需要を満たすことが不可能になりかねない。簡単な解決策は、重要鉱物を対象とするアメリカとインドネシアの限定協定(limited agreement)にある。

提案されている自由貿易協定に対するアメリカの連邦議員たちの環境問題への懸念は、北京とワシントン間の緊張によっても裏付けられている。インドネシアのニッケル精錬には中国企業が進出している。しかし、韓国企業やアメリカ企業も同様に進出している。アメリカの製造業者は、米財務省の指導に反しない企業から重要な鉱物を調達することができる。実際、自由貿易協定が結ばれれば、アメリカのインドネシアへの投資が促進され、サプライチェーンの安全が確保されるだろう。

しかしながら、アメリカのサプライチェーンの確保には、他国がニッケル産業に参入しているという理由だけで、アメリカがインドネシア産ニッケルの実質的な全面禁止を決定しない限り、という条件が付く。しかし、そのような動きは、アメリカのインド太平洋地域の同盟諸国が中国かアメリカかの二者択一を迫られるべきではないというイエレン米財務長官の再保証と矛盾することになる。結局のところ、インドネシアのニッケルはどこかに輸出されることになる。

インドネシアは全ての国との提携に手を差し伸べている。その手を握ってより環境に優しい未来を創造するかどうかは、ワシントン次第である。しかし、我が国はいつまでも気長に待つつもりなどない。

※ルフット・ビンサル・パンジャイタン:インドネシア海洋・投資担当調整大臣

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(終わり)
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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める
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 古村治彦です。

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

 2023年12月27日に最新刊『バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる』(徳間書店)を刊行しました。BRICS(ブリックス)を中心とする非西洋諸国(the Rest、ザ・レスト)の台頭と重要性について書きました。是非手に取ってお読みください。

 世界規模で電気自動車の需要が高まる中(電気自動車の有効性については疑問がある)、電気自動車の肝となる電池(バッテリー)に使われるニッケルでは、世界最大の埋蔵量(約23%)を占め、鉱石生産量の約半分(約48%)を占めるのがインドネシアだ。

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 インドネシア成否はニッケルの重要性を理解しており、精製していないニッケルの輸出を禁じている。国内に精製工場を建設し、精製済みのニッケルの輸出が必要となっている。世界の電気自動車競争において、電池(バッテリー)が重要だ。インドネシアは電池を製造するところまではいっていないが、精製する段階までは来ている。そのために、電気自動車分野で世界をけん引する中国企業がインドネシアに投資を行っている。インドネシア国内への産業投資の約3分の1は金属部門に流れているが、その多くはニッケル分野だ。

インドネシア政府はこれから電池製造に進もうとしているが、まずはニッケル精製を行っている。これは、2000年代のユドヨノ政権から始まり、2010年代のジョコ政権と続き、今年の選挙で当選したプラヴウォ政権でもこの動きは続く。

 日本ではパナソニックが電気自動車用の電池(バッテリー)を製造している。日本にとって重要なのは、テスラだけではなく、中国電気自動車企業BYDにも電気自動車用の電池(バッテリー)を供給することである。そのために、インドネシアとの友好関係をしっかりと固めることである。日本からも積極的に投資を行うべきだ。それこそは日本の経済だけではなく、安全保障にとっても重要である。

(貼り付けはじめ)

インドネシアはニッケル産業に大きな野望を抱いている(Indonesia Has Grand Ambitions for Its Nickel Industry

-同国が今週投票に向かう中、ジャカルタの大統領府の将来により焦点が当てられることになる。

クリスティナ・ルー筆

2024年2月13日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2024/02/13/indonesia-election-nickel-economy-energy-jokowi-prabawo/

世界中でエネルギー転換の機運が高まるずっと以前から、ニッケル大国(powerhouse)インドネシアは、豊富な鉱物資源を活用して自国の経済を変革し、国際市場においてより大きな影響力を行使することを夢見てきた。

化石燃料からの世界規模での脱却と、グリーン・テクノロジーの原動力となる重要鉱物の需要の高まりが、ジャカルタの野心を加速させている。ニッケルは電気自動車用バッテリーの主要部品に使用される。インドネシアは世界最大級のニッケル埋蔵量を誇り、2022年には世界供給量の半分を採掘したインドネシアほど、世界のニッケル分野で大きな権益を主張できる国はない。

現在、水曜日には1億人以上の有権者たちが10年ぶりのインドネシアの新しい大統領を選出するために投票所に向かうことが予想されており、ジャカルタの大統領府の将来により焦点が当てられることになる。現在のジョコ・ウィドド大統領(通称ジョコウィ)は、許容される最長任期である10年間権力を握った後、2024年10月に退任する予定であり、彼の後継者が国の急成長するセクターを具体的にどのように形成し続けるのかについて疑問が生じている。

ベンチマーク・ミネラル・インテリジェンス社の政策アナリストであるアレックス・ベッカーは、「インドネシアが、世界の他の地域でより価値の高い原料を生産することを望んでいる訳ではないことは明らかだ。本格的な電池とまではいかなくても、少なくとも精製ニッケルを生産することで、自分たちの世界での価値を高めたいのだろう」と述べた。

こうした野望は、ジョコ政権下で具体化され、ジョコウィは世界的な投資を呼び込み、インドネシアを地域の電池製造大国に作り変える努力を強め、一時はOPECと同様の、ニッケルカルテルの設立を提案したこともあった。より付加価値の高い製造能力(川下化[downstreaming]として知られるプロセス)を構築することに熱心なジョコウィは、2020年に未加工ニッケルの輸出を禁止した。この動きは、主に中国企業など、関心を持つ投資家たちに対して、代わりにインドネシアで製錬所を開発し、国内で鉱物を加工するよう促した。ジョコウィは大統領在任中、ジャカルタはボーキサイト、パーム油、石炭の輸出を様々な時点で制限してきた。5月には銅鉱石の輸出の禁止が実効化される予定だ。

ジョコウィの後継者をめぐる競争は始まっている。 3人の候補者が大統領の地位を争っている。その3人は、残忍な独裁者スハルトの親族であり、人権侵害を行ったとして告発されている現国防大臣プラヴウォ・スビアント、元中部ジャワ知事ガンジャール・プラノウォ、元ジャカルタ知事アニエス・バスウェダンだ。

プラヴウォは、ジョコウィの実の息子であるギブラン・ラカブミン・ラカを副大統領候補としているが、最近の世論調査では、水曜日に50%以上の票を獲得すると予測されており、現在のところ最有力視されている。どの候補者も50%以上の得票を得られなかった場合、選挙は6月の決選投票に持ち越される。2人はジョコウィの政策の継続を誓い、経済的繁栄への道を歓迎しており、ギブランはライヴァルたちを「反ニッケル(anti-nickel)」だと非難している。

プラヴウォは投票を前の声明で次のように宣言した。「この粘り強さこそ、私たちが維持しなければならないものだ。私たちは電気自動車のバッテリーや電気自動車を輸出した方がいいのであって、他国に加工してもらうために生のニッケルを輸出した方がいいということはない」。

オーストラリア国立大学インドネシア研究所所長で『インドネシアの資源ナショナリズム』の著者イヴ・ウォーバートンは、「彼らの主張は、私たちは鉱物の下流部門で多くのことを達成しており、プラヴウォ・ギブラン政権の任期中も同じ道を歩み続けるだろう、ということだ。この特定の政策介入に関して、他の候補者たちがプラヴウォやギブランと差別化を図るのは困難なことだった。なぜなら、政府および政府の数字によれば、それは大成功だったからである」と述べた。

例えば、2014年にジョコウィ政権が誕生した当時、インドネシアのフェロニッケル(ニッケルの加工品)の輸出額は8300万ドルだったが、2022年には58億ドルにまで膨れ上がった。輸出だけでなく、インドネシアでは現在、外国直接投資(foreign direct investment)が記録的な水準に達しており、その約3分の1が同国の金属・鉱業部門に注ぎ込まれている。

インドネシアのニッケル産業育成への取り組みは、ジョコウィの在任期間よりも10年以上前に遡る。当時のスシロ・バンバン・ユドヨノ大統領は2009年、企業に国内の鉱山労働者たちを雇用するよう命じる法律を導入し、全ての鉱山への取り組みは国益の増進に焦点を当てるべきだと強調した。外国からの投資を誘致するために、ユドヨノ大統領は2014年にインドネシア初のニッケル未加工品の輸出禁止も課したが、その制限は2017年に緩和された。

ウォーバートンは、「インドネシアのニッケル部門に対する野望は、ユドヨノ時代と2009年の鉱山法にまでさかのぼる。それ以来、インドネシアは鉱物からより多くの価値を引き出すべきだと法律で定められている」と述べた。

しかし、その後数年間、この業界は多くの課題に直面し、特に製錬所の爆発やその他の死亡事故の報告を受けて業界の汚染、環境への被害、安全上の問題に対する懸念が高まっている。最も致命的な事件の1つとして、12月に中国のニッケル工場で爆発があり、21人が死亡、数十人が負傷した。

インドネシアの政治リスク分析コンサルタント会社リフォルマシ・インフォメーション・サーヴィス代表ケヴィン・オルークは、「ニッケル川下政策の本当の問題は、セーフガードが全くないように見えることだ」と言う。

ニッケル部門の将来には、他の課題も立ちはだかる。中国の大手投資家たちやBYDを含むEVメーカーが数十億ドルの投資をインドネシアに集めている一方で、ジャカルタのアプローチは他の有望なパートナーたちやアメリカを含む国際市場からインドネシアを遠ざける危険性がある。

ジャカルタはワシントンとともに、インドネシア企業がインフレ抑制法を通じて多額の税額控除を利用できる限定的重要鉱物貿易協定の締結を推進していた。しかし、この入札はワシントンで激しい反発を引き起こし、昨年10月には9名のアメリカ連邦上院議員がそのような協定に反対する書簡を書いた。

アメリカ連邦上院議員たちは書簡の中で、「私たちは、インドネシアの労働権、環境保護、安全性、人権に関する基準に懸念を抱いている」と書いている。また、中国企業のインドネシアへの投資やジャカルタのニッケル鉱石輸出禁止に対する懸念も書簡の中で挙げられていた。結局、貿易協定は実現しなかった。

エネルギー転換の需要が新型EVバッテリーの開発を後押しする中、専門家たちによると、技術状況の変化もジャカルタの将来計画を複雑にする可能性があるという。ニッケルは、現在普及している強力なニッケル・マンガン・コバルト(NMC)電池の重要な構成要素だが、企業の一部はニッケルを使用しない新型電池に目を向けている。

ピーターソン国際経済研究所のシニアフェローであるカレン・ヘンドリックスは昨年11月、「インドネシアのニッケル埋蔵量と産業への野心は、電池化学の変化によって価値が低下する恐れがある。NMCバッテリーの優位性はつかの間かもしれない」と書いている。

その一例がテスラだ。ジャカルタは数年にわたりテスラからの投資誘致に努めてきたが、テスラはインドネシアへの投資に難色を示し、代わりにインドネシアの豊富な鉱物資源を必要としないバッテリーを採用している。

オーストラリア国立大学のウォーバートンは次のように述べている。「その多くは、技術の進化の早さにかかっている。当初の計画では、ニッケルがこの産業を本格的に立ち上げるために必要な主成分であるという考えに長い間基づいていた。市場は、それが転換する可能性を示唆しているようだ」。

※クリスティナ・ルー:『フォーリン・ポリシー』誌特派員。ツイッターアカウント:@christinafei
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ビッグテック5社を解体せよ

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