古村治彦(ふるむらはるひこ)の政治情報紹介・分析ブログ

SNSI研究員の古村治彦(ふるむらはるひこ)のブログです。翻訳と評論の分野で活動しています。日常、考えたことを文章にして発表していきたいと思います。古村治彦の経歴などについては、お手数ですが、twitter accountかamazonの著者ページをご覧ください 連絡先は、harryfurumura@gmail.com です。X accountは、@Harryfurumura です。ブログ維持のために、著作のお買い上げもよろしくお願いします。

タグ:G7

 古村治彦です。

 アメリカのドナルド・トランプ政権がドンロー主義を基盤として、西半球をアメリカの勢力圏として固める意向を示し、ヴェネズエラ攻撃やグリーンランド領有希望の公表など動きを強めている。そうした中で、カナダはアメリカを脅威と見なし、懸念を深めている。アメリカとカナダの関係について、私たちは深く学ぶ機会を持たない。正直なことを言えば、「どっちも似たようなものだろう」「カナダはフランス語を使用する地域があるな」というくらいのことしか思わない。しかし、考えてみれば、あれだけの長い国境線で接している、アメリカとカナダの関係は改めて知っておくことは有益であろう。

 アメリカは建国してしばらくの間、カナダの領土に対して野心を持っていた。1776年にアメリカはイギリスから独立したが、北方には、カナダが存在した。そこには当たり前のことだがイギリスが存在した。イギリスはアメリカにとって脅威である。従って、アメリカの北方にいるイギリス勢力に懸念を持ち、カナダの領土を欲するということもあった。イギリスの勢力に対する懸念は、アメリカの外交政策の原理原則である、モンロー主義(イギリスの影響力を排除する)に通底する。そうした動きは20世紀に入るまで続いた。カナダが自治領となり、独立国家となることで、アメリカの懸念は減少した。

 今回、トランプ大統領がカナダをアメリカの51番目の州と呼ぶなどの行為から、カナダ側の懸念が高まった。そして、アメリカとカナダの間に歴史的にある緊張関係に注目が集まっている。NATO加盟国であり、G7の一角であるカナダをアメリカが攻撃することは考えにくい。たとえカナダ攻撃の命令が出ても、アメリカ軍は「違法な命令である」として、動かない可能性が高い。しかし、このような緊張関係を生み出してしまったことは、国際関係に大きな影響を及ぼす。アメリカは同盟国でも攻撃するかもしれないという懸念を世界各国に持たせてしまうことは、アメリカの国益にとって大きなマイナスである。そして、それを注視しながらほくそ笑んでいるのは中国とロシアである。

(貼り付けはじめ)

アメリカは再びカナダにとって最大の脅威となっている(The United States Is Once Again Canada’s Biggest Threat

-ドナルド・トランプは北隣国カナダとの伝統的に緊張関係にあった関係を取り戻した。

ケイシー・ミシェル筆

2026年2月3日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2026/02/03/us-canada-threat-trump-carney-history/

ここ数週間、アメリカが国境を強制的に拡大することはない、NATO加盟国が他の加盟国を侵略することはないといった基本的な地政学的事実が、ドナルド・トランプ米大統領によるグリーンランドへの継続的な脅威によって、突如として揺らぎ始めた。カナダのマーク・カーニー首相が最近述べたように、これは「断絶(a rupture)」であり、古い秩序が崩壊し、新しい秩序が生まれようともがく瞬間である。

大西洋横断関係の亀裂に注目が集まっている一方で、その断絶の多くはカーニー首相にとってはるかに身近な問題、すなわち米加関係に集中している。トランプ政権下のワシントンが今や脅威となっていることに、デンマークやグリーンランドだけが突然気づいた訳ではないからだ。カナダもまた、今やアメリカ政府がカナダの主権(sovereignty)だけでなく、カナダという国家そのものを公然と脅かしているのを目の当たりにしている。トランプ大統領自身もカナダを幾度となく脅迫し、アメリカによるカナダ併合を要求し、両国の国境を撤廃すべきだと繰り返し示唆している。これは単なるおしゃべりではない。先週、トランプ政権当局者がアルバータ州の分離独立派と直接会談を開始したことが明らかになった。彼らはアルバータ州をカナダから分離し、アメリカに併合しようと躍起になっている。

カナダをアメリカの51番目の州にするというトランプの脅しを一笑に付した時代はとうに過ぎ去った。新たな現実が突如カナダ全土に波紋を広げている。トランプ政権下のアメリカは、受け入れがたい現実かもしれないが、突如としてカナダにとって最大の国家安全保障上の脅威となった。

カナダ国民はようやくこの現実を受け入れ始めている。しかし同時に、これはカナダが直面するアメリカの危機の、はるかに長く、はるかに根深い部分を浮き彫りにする現実でもある。実際、過去80年ほど続いた米加友好関係、世界最長の国境線は概ね平和裡に保たれ、ワシントンとオタワはおそらく世界で最も緊密な同盟国となったが、もはや時代錯誤(anachronism)、アメリカが北米におけるはるかに広範な拡大の歴史において単に立ち止まっただけの例外的な出来事のように思えるかもしれない。

トランプ政権下のアメリカ合衆国は、むしろ北の隣国を威嚇し、安定した同盟関係よりも野蛮な拡大(brutish expansion)を志向し、カナダを地図から完全に消し去ろうとする、伝統的な立場に戻ろうとしていると言える。この歴史はアメリカ合衆国ではほとんど見過ごされているが、ワシントンが再び信頼できるパートナーになるために、そして再び安定した北アメリカ大陸を見るために、検討する価値がある。

アメリカ合衆国がカナダの領土を欲しがる歴史は、アメリカ合衆国建国初期にまで遡る。1774年、フィラデルフィアで開かれたばかりの大陸会議(Continental Congress)は、カナダ国民に書簡を送り、彼らは「小さな人々(small people)」であると主張し、イギリスの支配を打破するための、芽生えつつある取り組みに加わるよう呼びかけた。この呼びかけには脅迫的な言葉が込められており、カナダ国民は「北アメリカの他の全ての国を揺るぎない友とするのか、それとも根深い敵とするのか」を考えるべきだと述べている。書簡には、もしカナダ人がアメリカ植民地人(American colonists)への参加を拒否した場合、彼らは「征服されて自由になる(conquered into liberty)」だろうと付け加えられていた。

これは決して少数派の立場ではなかった。「大陸の一致した意見は、カナダは私たちの領土でなければならないというものだ」と、後のアメリカ大統領ジョン・アダムズは1776年に書いた。「ケベックは奪取されなければならない」とベンジャミン・フランクリンも同様に、カナダを将来のアメリカ領土と見なしていた。カナダの歴史家マデリーン・ドロハンが明らかにしたように、フランクリンは当時アメリカがイギリス領北アメリカ全域を支配していた状況下で、フランス系カナダ人(当時カナダのヨーロッパ系植民地人口のほぼ全員を占めていた)の強制同化(forced assimilation)、あるいは全面的な追放(outright eviction)を主張した。

もちろん、こうした初期の立場は全て無駄になった。アメリカ軍はケベックへの壊滅的な攻撃を開始したが、戦略のまずさと天然痘の蔓延によって頓挫した。その後のイギリスとの交渉において、フランクリンがカナダを占領しようとした試みも失敗に終わった。アダムズ自身が記したように、「ああ、カナダよ! あの一帯は不幸と恥辱に満ちていたことを私たちは発見した(Alass Canada! We have found Misfortune and disgrace in that Quarter)」ということになる。

しかし、これらの失敗によって、アメリカのカナダに対する計画が終わることはなかった。米英戦争中、アメリカ軍は再びイギリス領カナダを視野に入れ、ある将軍はカナダを「アメリカの一部になる(one of the United States)」だろうと発言した。カナダ併合(Canadian annexation)は、この戦争全体の明確な目標ではなかったかもしれないが、この戦争自体、北アメリカ中部の大部分からイギリスの要塞を追放し、アメリカの拡張主義に対するイギリスの障壁を事実上終わらせたが、アメリカが大陸の覇権へと急速に突き進む、押しつけがましく、奪い取る大国であるというイメージを確固たるものにした。

その現実は、アメリカの大陸帝国主義(United States’ continental imperialism)が頂点に達した19世紀半ばに表面化した。当時、英米共同所有地として管理されていたオレゴン準州をめぐる紛争が続く中、米大統領候補ジェームズ・ポークの支持者たちは、太平洋岸北西部の北緯54度線までの全域に対する主権を放棄するよう英領カナダを説得する手段として、「54か40か、さもなくば戦え!(Fifty-Four Forty or Fight!)」と繰り返し叫んだ。ポークは最終的に全面戦争を諦め、北緯49度線までのアメリカの主権を確保した(その代わりにメキシコの分割に注力した)。それでも、ポークの帝国主義的支持者たちは止まらなかった。「明白な運命(Manifest Destiny)」という言葉の生みの親とされるジョン・オサリバンが書いたように、カナダの領土を含む「神の摂理によって割り当てられた大陸に広がることは、依然として明白な運命である(manifest destiny to overspread the continent allotted by Providence”—including Canadian territory.)」ということになる。

南北戦争(the Civil War)はアメリカを分裂させ、数十万人ものアメリカ人の虐殺を招いたが、それでもアメリカのカナダに対する計画を阻止することはほぼできなかった。戦争終結直後、アメリカはアラスカ購入を確定させ、帝政ロシア(tsarist Russia)から領土を獲得した。しかし、この購入は地政学的な空白の中で行われた訳ではない。購入を主導した国務長官ウィリアム・スワードは、アメリカが支配するアラスカがブリティッシュコロンビア、ひいてはそれ以上の領土を獲得する鍵となると見ていた。「自然は、この大陸全体が遅かれ早かれ、・・・アメリカ合衆国の魔法の輪の中に入るように設計している(Nature designs that this whole continent … shall be, sooner or later, within the magic circle of the American Union)」とスワードは1867年に聴衆に語った。ヴァージニア大学のアラン・テイラーが、この時代に関する傑出した歴史書の中で述べているように、「アメリカ人は(アラスカの)獲得をカナダに対する締め付けとして歓迎した」。彼らがすべきことはただ待つことだけだった。そうすれば、カナダは彼らのものになるはずだったのだ。

しかしながら、カナダ人は異なる方向へと進んだ。アメリカのアラスカ購入は、カナダを分裂させるどころか、主権国家としてのカナダと完全に独立したカナダのアイデンティティの確立に直接つながった。ジョン・マクドナルドをはじめとする指導者たちの指導の下、カナダ人は全国規模の連邦を発足させ、その後数年間で次々と州を新たなカナダ自治領に加えた。アメリカの併合論者(U.S. annexationists)の餌食になるのではなく、カナダは統合を進め、アメリカのさらなる拡大を鈍らせ、150年以上続く独立した国家としての地位を確固たるものにした。

建国の父たち(the Founding Fathers)のカナダに対する領有権主張、北の隣国に対するアメリカの脅威の一貫性、アメリカの脅威に直面したカナダの統合といった要素は全て、ごく最近まで、魅力的な歴史の脚注、より激動の時代を捉えたスナップショットだった。1890年代にアメリカの政治家たちが潜在的な戦争を警告し、1910年代には「カナダのあらゆる場所に星条旗を掲げる」よう求め続け、1930年代にはワシントンがカナダに対する有事の戦争計画を策定したにもかかわらず、カナダの主権に対するアメリカの実際の脅威は大幅に減少した。実際、米加関係は非常に緊密になり、良好な関係は最終的に当然のことと見なされるようになった。ワシントンが維持した最も緊密なパートナーシップは、安定した北アメリカの安全保障体制によってアメリカの世界的な支配力の拡大が可能になり、背景の雑音のようなものへと薄れていった。

そして、全ては崩壊した。トランプのグリーンランドに対する脅しは、カナダに対する脅しと並行して行われてきた。実際、グリーンランド危機のピーク時でさえ、NBCニューズはトランプがカナダへの「密かに関心を強めている(privately ramping up his focus)」と報じ、カナダの地図にアメリカ国旗を掲げた地図を見せたほどだった。さらに、カナダ国民がよく認識しているように、トランプのグリーンランドに関する言説、つまりグリーンランドを守れるのはアメリカだけであり、そもそもデンマークにはグリーンランドに対する権利はないという言説は、カナダの北極圏の島々にも容易に当てはまり得る。その多くはグリーンランドに隣接している。

トランプだけではない。MAGAのイデオローグであるスティーヴ・バノンは、カナダに対するアメリカの宗主権を幾度となく声高に訴えてきた。バノンは最近、「かつてカナダにとって大きな障壁であった北極圏北部が、今や最大の脅威となっている」と述べ、カナダの「弱点(soft underbelly)」だと主張した。さらにバノンは、カナダは「次のウクライナになる可能性がある」と述べた。ウクライナには「アメリカに敵対する人々」が溢れているそうだ。そして、これは北極圏だけではない。今週、『フィナンシャル・タイムズ』紙は、トランプ政権当局者がアルバータ州の極右分離主義者と複数回直接会談したと報じた。彼らはアメリカへの加盟の熱意を隠そうともしていない。

国境を拡大し、近隣の分離主義運動を煽り立てようとする新帝国主義大国(a neoimperialist power)である。これは全て、地域的支配を主張し、近隣諸国を分裂させる手段だ。実際、カナダとウクライナの類似点は、不快なほどに緊密になっている。しかし、カナダ国民は、かつてウクライナ国民であったのと同様に、この事態を黙って受け入れるつもりはない。カナダ国防省は新たな文民・民間人防衛軍(a new civilian defense force)の構想を練り始めており、オタワ政府は1世紀ぶりに、アメリカの侵略への対応をモデル化した軍事演習の計画を開始した。

そしてカナダ当局はついに、そして公に警鐘を鳴らし始めた。元カナダ国連大使のボブ・レイは『グローブ・アンド・メール』紙に対し、カナダに対するアメリカの脅威は「存亡の危機」(U.S. threats against Canada are “existential)に瀕していると語り、元カナダ国防長官はトランプ大統領の行動はカナダを警戒態勢に追い込むことになると述べた。あるカナダの紛争研究者は『ガーディアン』紙に次のように語った。「私たちはアメリカの友好と寛大さ(the friendship and benignness of the United States)に大きく依存してきたのに、突然、その両方が消えてしまった。消滅してしまった。今になってようやくカナダ国民がこの意味を真に理解し始めたのではないかと危惧している」。これはまさに衝撃的な出来事であり、かつて北アメリカに存在していた安定がもはや当然のこととは考えられなくなったことを示している。NORAD(北アメリカ航空宇宙防衛司令部)から砕氷船団、情報収集に至るまで、あらゆるものが突如として未解決の問題となり、カナダの領土保全さえも疑問視されるようになった。

しかし、トランプ大統領は恐らく気づいていないだろうが、カナダはカナダ国外のほとんどの人々が知るよりもはるかに長く、アメリカの計画を撃退してきた歴史を持っている。その歴史は、ここ一世紀よりも今の方がはるかに意味を持つ。それは全て、始まったばかりの断絶(a rupture)のおかげだ。

※ケイシー・ミシェル:ヒューマン・ライツ財団の「クレプトクラシー対策プログラム」の責任者。『アメリカのクレプトクラシー:アメリカはいかにして史上最大のマネーロンダリング計画を作り上げてきたのか(American Kleptocracy: How the U.S. Created the World’s Greatest Money Laundering Scheme in History)』の著者。Xアカウント:@cjcmichel

(貼り付け終わり)

(終わり)

sillionvalleykarasekaishihaiwoneraugunsanfukugoutainoshoutai001
シリコンヴァレーから世界支配を狙う新・軍産複合体の正体 
trumpnodengekisakusencover001
『トランプの電撃作戦』
sekaihakenkokukoutaigekinoshinsouseishiki001
世界覇権国 交代劇の真相 インテリジェンス、宗教、政治学で読む

bidenwoayatsurumonotachigaamericateikokuwohoukaisaseru001

バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

akumanocybersensouwobidenseikengahajimeru001

 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める

このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック

 古村治彦です。

 2023年12月27日に『バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる』(徳間書店)を刊行しました。是非手に取ってお読みください。よろしくお願いいたします。

bidenwoayatsurumonotachigaamericateikokuwohoukaisaseru001

バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

 日本で、「もしトラ」という言葉が流行っている。このことはワシントン・ポストでも報じられている。「もしもトランプが大統領に返り咲いたらどうなるか」ということを述べる際に使われる言葉だ。昔、「経営学者ピーター・ドラッカーの経営理論を高校野球のマネージャーが学んだら、その高校野球のティームは甲子園に行けるのか」という題材の小説がアニメ化、ドラマ化され、「もしドラ」という言葉が流行ったが、その言葉を真似たものが「もしトラ」ということになる。

 「もしトラ」を心配しているのは、日本だけではないようだ。先進国首脳会議(G7)に加盟している先進諸国全体で心配しているようだ。「トランプが再び大統領になったら、自分たちにどんな要求をしてくるか分からない」ということで戦々恐々だ。トランプが訴えていた、各国の軍事費増額は、バイデン政権でも継続して要求され、先進諸国でその動きが出ている。日本も国防予算の倍増が決められ、そのための増税も行われている。トランプは各国にGDP比2%までの増額を求めていたが、その数字を上げてくるかもしれない。更に言えば、アメリカはNATOから脱退し、「お前ら、対ロシアはお前らの力だけでやれ」ということになるかもしれない。トランプがロシアのウラジーミル・プーティンとヨーロッパの頭を飛び越えて勝手に仲良くなって、「NATOは抜けるから後はよろしく」となったら、ヨーロッパ各国は恐慌状態になるだろう。そして、「やはりロシアとは仲良くしなくては」「資源を買うことで顧客になって仲良くしよう」という「新しい東方外交に舵を切る」だろう。

 問題は中国である。トランプは対中国強硬姿勢を見せるだろう。しかし、もちろん、「中国がアメリカに投資をして雇用を作り出してくれるならウエルカムだ」という交渉条件を付ける。中国はトランプを懐柔するために、投資をする。もちろん、アメリカがどんどん衰退していくことは織り込み済みだから、致命的にならない程度に、共倒れにならない程度に、「少しは延命策になるか」程度の投資をするだろう。そうなれば、中国との関係も良くなって、「ヤルタ2.0(米中露=トランプ・習近平・プーティン)三帝体制」ということになる。

 このように書くと、「もしトラ」といって怖がっているのは馬鹿らしくなる。「もしトラ」と言って怖がっているのは、ヨーロッパと日本の親米エスタブリッシュメントたち(アメリカの民主・共和両党のエスタブリッシュメント・エリートたちとつながっている売国者たち)である。トランプが大統領だった4年間に、核ミサイルは飛ばなかったし、アメリカが大規模な海外戦争を仕掛けもしなかった。そのことをよくよく考えねばならない。

(貼り付けはじめ)

G7はトランプに備えねばならない(The G-7 Must Prepare Now for Trump

-今夏のサミットは、単なる50周年記念式典以上のものにならねばならない。

ロビン・ニブレット筆

2024年3月19日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2024/03/19/g-7-trump-biden-election-prepare/

イタリアのジョルジア・メローニ首相が6月13日から15日にかけて主催するG7サミットの計画を立案している。世界をリードする民主政治体制国家のクラブであるG7の50回目のサミットということで、祝賀ムードが高まるだろう。

当然らそうなるだろう。 G7にはカナダ、フランス、ドイツ、イタリア、日本、イギリス、アメリカ、そして、1981年以降はヨーロッパ連合(EU)が加盟しており、現在、世界のGDPの54%、世界の国防支出の55%以上を占めている。 G7加盟諸国は何十年にもわたって、民主社会(democratic societies)や開かれた市場(open markets)の保護など、共通の外交政策上の優先事項を追求するために各国の経済力を調整することで、世界の舞台での重要性を更に高めてきた。

しかし、今度のサミットの重要性は、画期的な記念回以上のところにある。G7の未来、そして世界的な民主政治体制の結束の未来が今、危機に瀕している。

共和党の大統領候補ドナルド・トランプによる最近のNATO蔑視発言は、アメリカの同盟国に対する関与の信頼性を疑問視する声につながっている。トランプのNATOに対する不満の一因は、他のNATO加盟諸国の国防費が、アメリカに比べて歴史的に低いことにある。なぜアメリカ人がヨーロッパの防衛費に、ヨーロッパ人が進んで支出する以上の支出をしなければならないのだろうか?

しかし、G7はトランプ2期目の気まぐれに対して、より脆弱であることが判明するかもしれない。トランプ大統領にとって、アメリカの外交政策を他国と調整することは、アメリカの行動の自由に対する無意味な制約である。

ここに問題がある。アメリカは現在、イギリスを除くG7の全ての相手国との間の貿易で赤字を出している。2023年には、これらの赤字は3370億ドルに達し、アメリカの対中赤字(2790億ドル)を上回る。商品の貿易赤字は、トランプにとって外交政策の赤信号だ。だからこそ、彼は、アンゲラ・メルケルのドイツをウラジーミル・プーティンのロシアよりも大きなライバルとして扱い、アメリカの保護主義(protectionism)に対抗した、2018年のG7首脳会議の成果を台無しにした。

G7首脳たちは米大統領選挙について沈黙を守っている。現職の米大統領ジョー・バイデンの2期目の実現を期待できる可能性がある。しかし、現時点では、その可能性はせいぜい五分五分だ。その代わりに、彼らは今後3カ月を利用して、2期目のトランプ大統領誕生の打撃に耐えることがで、バイデン2期目の綱領としても機能する政策課題を策定すべきだ。

バイデンの1期目におけるG7の成果は印象的だった。2022年2月にプーティンがウクライナに本格的に侵攻して以来、G7はロシアに対して前例のない制裁措置を実施してきた。ロシア中央銀行がG7諸国の通貨で保有する約3000億ドルの準備金の凍結から、ロシア産原油が1バレルあたり上限60ドルを超えて販売された場合のタンカーへの保険提供の禁止まで、多岐にわたる。このようなことができるのは、世界の外貨準備の93%以上がG7各国の通貨で保有され、世界の外航船舶の90%以上がG7に本社を置く企業によって発行された損害保険でカバーされているからである。

中国の台頭に対する共通の懸念と、北京とモスクワの緊密な連携を反映し、G7は過去3年間、緊密な同盟国である韓国とオーストラリアとも、将来の経済成長の中心となる半導体や再生可能エネルギー投入のための「フレンドシェアリング(friendshoring)」サプライチェーンを開始するための努力を一貫して行ってきた。

トランプ新政権が、フリーライダーであることを理由にして、最も親密な同盟諸国を罰することに戻れば、こうした重要な仕事も全て終わりを迎えることになりかねない。しかし、G7メンバーの対米貿易不均衡を是正することは、短期的には不可能である。だからこそ、今度のG7サミットでは、敵対的なトランプ大統領の復活の可能性に備えることを優先しなければならない。

第一に、G7加盟諸国は、ウクライナの主権を守るための支援には期限を設けないという明確なシグナルをモスクワに送る必要がある。支援をめぐる紛いは現在、どちらの側が政治的、経済的に他方を上回ることができるかを示す激しい競争の陰に隠れている。アメリカの新たな支援が現在連邦議会で阻止されている中、欧州諸国とEUは既に、キエフに対する今後の複数年間の財政・軍事支援として約750億ユーロに加えて、更に770億ユーロの供出を約束することで、決意を示す重要な一歩を踏み出している。彼らは戦争が始まって以来すでに割り当てを行っている。

G7サミットではまた、凍結されたロシアの外貨準備から得られる利益を、G7の全メンバーがどのように引き出すかを決定する必要がある。これまでの障害は、これらの外貨準備の大部分がEUの銀行によって保有されていることである。一部の政府とヨーロッパ中央銀行は、稼いだ利子(昨年は44億ユーロ)を分配するという控えめなステップでさえ、確固たる法的根拠を欠いており、また世界的な基軸通貨としてのユーロの信頼性を損ないかねないと懸念している。こうした懸念を克服することは、G7の決意を強調することになる。トランプ大統領が誕生すれば、ウクライナを支援するためにアメリカが負担した費用の一部に充足させる取り決めを反故にすることを考えるかもしれない。

第二に、G7メンバーは韓国とオーストラリアを正式にグループに招待すべきである。もしバイデン政権2期目が発足すれば、韓国とオーストラリアの加盟はハイテクと再生可能エネルギーにおけるG7の総合力を強化するだろう。もし2期目のトランプ大統領が誕生しても、G7に入っておけば、この2つの民主的同盟諸国はトランプ大統領の重商主義的脅威の前に孤立することはなくなるだろう。

第三に、バイデン政権、EU首脳、サウジアラビア、アラブ首長国連邦、インドが昨年発表した、インドから湾岸諸国とイスラエルを経てヨーロッパに至る、鉄道によるエネルギー供給システムとデータの回廊を建設する計画に、G7メンバーは初期の資金を割り当てるべきである。中国の「一帯一路」構想に対抗するこの遅ればせながら重要なプロジェクトは、インドと湾岸諸国の、若く急成長する経済と、ヨーロッパの裕福だが高齢化が進む市場をつなぐものだ。

ガザでの戦争はこの計画に疑問を投げかけているが、イスラエルにとってのメリットは、ネタニヤフ後の政権がパレスチナ人と持続可能な和平を築くための重要な追加的インセンティヴとなる。同時に、トランプ大統領の外交政策上の主要な成果である、イスラエルとアラブ諸国との関係を正常化した2020年のアブラハム合意を支援することになる。

G7は、中国やロシアとの新たな冷戦が長期化しそうな状況において、貴重な地政学的経済調整機関である。バイデン大統領の成果を確固たるものにするためであれ、トランプ大統領の世界的リスクを軽減するためであれ、G7の50周年記念サミットはその名に恥じないものでなければならない。

※ロビン・ニブレット:チャタム・ハウス特別研究員・元最高経営責任者。著書に『新しい冷戦:アメリカと中国との間の争いは如何にして私たちの世紀を形作るか(The New Cold War: How the Contest Between the U.S. and China Will Shape Our Century)』である。ツイッターアカウント:@RobinNiblett

(貼り付け終わり)

(終わり)
bigtech5shawokaitaiseyo501
ビッグテック5社を解体せよ

akumanocybersensouwobidenseikengahajimeru001

 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める
20211129sankeiad505

このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック

 古村治彦です。

 2021年5月29日に最新刊『悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める』が発売になりました。是非手に取ってお読みください。よろしくお願いいたします。

akumanocybersensouwobidenseikengahajimeru001
悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める

 先週のG7会合はイギリス南部のコーンウォール半島で開催された。対中政策、インド太平洋地域における中国の動きを以下にけん制するか、ということが話されたが、拙著『悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める』で書いている通り、中国は着々と準備を進めている。この対中強硬路線を推進しているのは、「バイデン政権のアジア政策のツァーリ(Asia Tsar)」と評されるカート・キャンベル国家安全保障会議インド太平洋調整官である。そして、バイデン政権の対中強硬姿勢の中心にいるのは、アントニー・ブリンケン国務長官である。

 しかしながら、バイデン政権は対中強硬一辺倒ではない、というのが私の見立てだ。それは、対中強硬ではない、ジェイク・サリヴァンが国家安全保障問題担当大統領補佐官として政権内に入っているからだ。サリヴァンは中国との競争は破滅に向かわない方向で行うべきという論文も書いている。

 そして、重要なのは、サリヴァンが「産業政策(industrial policy)」に注目している点だ。日本では経済産業省が2021年6月4日「経済産業政策の新機軸」という構想を発表したが、その中にサリヴァンの発言も引用されている。今回のG7会合で、「コーンウォール・コンセンサス」メモという文書が配布されたそうだが、この肝いりはサリヴァンであり、日本の経産省からの人員もメモ作成にかかわったと考えられる。国家とビジネスの関わるの部分はそのまま産業政策のことを示唆している。

 産業政策研究と言えば、古典的業績であるチャルマーズ・ジョンソン(Chalmers Johnson、1931-2010年、79歳で没)の『通産省と日本の奇跡-産業政策の発展 1925-1975(MITI And the Japanese Miracle: The Growth of Industrial Policy, 1925-1975)』(1982年)だ。新自由主義が隆盛となったここ30年ほど、産業政策について顧みられることはなかった。しかし、時代は産業政策の時代となりつつあるようだ。

 チャルマーズ・ジョンソンについては拙著『アメリカ政治の秘密 日本人が知らない世界支配の構造 (四六判上製)』(2012年)で詳しく取り上げたが、チャルマーズ・ジョンソンに再びスポットライトが当たる日が来るのかもしれない。

(貼り付けはじめ)

「コーンウォール・コンセンサス」はこちらです(The ‘Cornwall consensus’ is here

G7で集まっている世界の首脳たちはグローバライゼーションが効率性と同時に脆弱性も生み出しているという主張を受け入れている。

ジリアン・テット筆

『フィナンシャル・タイムズ』紙

2021年6月11日

https://www.ft.com/content/aa45eccb-5e0e-477a-8278-db7df959e594

 

30年前、イギリス人の経済学者ジョン・ウィリアムソンは「ワシントン・コンセンサス(Washington consensus)」という言葉を作り出した。この言葉は、自由市場、グローバライゼーション推進に基づく様々な考えの集合体である。これらの考えをアメリカの指導者たちをはじめ世界各国の指導者たちは世界中で促進していた。

しかし、現在、新しい言葉が出てきている。それは「コーンウォール・コンセンサス(Cornwall consensus)」だ。

笑わないで聞いて欲しい。この言葉は、金曜日のコーンウォールでのG7各国の指導者たちによる会合に先立ち、アドヴァイザリーメモとして配布された文書のタイトルなのである。これは本当だ。7か国の学者と政策担当者たちが集まってつくられた委員会によって書かれた文書で、「新型コロナウイルス感染拡大からより良い未来を構築するための野心的な政策集」とされている。

このメモの内容はいささか曖昧で、大袈裟な考えを含んでいる。「世界規模の衛生上の問題についての対応におけるより広範な平等と団結」といった大仰な言葉が使われている。しかし、より詳細な提案も同時になされている。例えば、「金融安定理事会(Financial Stability Board)」と同様の「データとテクノロジー理事会(Data and Technology Board)」を創設し、世界規模でインターネットを監視すること、気候関連テクノロジーに関連する「ヨーロッパ原子力研究組織(CERNEuropean Organization for Nuclear Research)」の創設などが提案されている。

どちらにしても、このメモが示しているのは、「G7諸国は企業法人税を巡り一致協力して動く」という細心の動向が、新しいイデオロギーに沿って、西洋諸国が協力するという新しい段階に入ったということである。

投資家たちはどのように結論付けるだろうか?投資家の多くは冷ややかな笑いを送るだろう。結局のところ、G7での様々な会合は儀式の枠から出るものではなく、そこで出されるメモも儀式的な省庁の意味しか持たない。そして、「コーンウォール・コンセンサス」提案は、何かしら意味があるように思われるが、これからすぐに採用されるということもない。

しかし、この儀式的な表現を無視するのは、いかなるビジネスや投資家にとっても馬鹿げたこととなるだろう。多くの人類学者が指摘しているように、象徴は重要なのだ。それが「空っぽ(empty)」であったり、現実離れしたりしていても、象徴は、あるグループがどのように機能するかについての前提を反映し、補強しているものなのだ。そのため、今回の「コーンウォール・コンセンサス」メモは、前提がどのように変化しつつあるかを示す、示唆に富むスナップ写真ということになる。

このメモは極めて重要だ。投資家や企業の経営陣の多くが時代精神の絶え間ない大きな変化への対応に苦闘している。こうした人々はワシントン・コンセンサスが隆盛を極めた時代にキャリアをスタートさせた。私たち人類は、常に自分たちを取り巻く文化的環境に影響される生物であり、自分たちの信条を、思考のための「自然な」方法だとして取り扱っている。

ここに5つの取り上げるべき重要な点がある。第一に、今日の指導者たちは、政治上の、予想外の出来事の発生を恐れている。30年前、マーガレット・サッチャーやロナルド・レーガンといった政治上の最重要人物たちは、自由市場に基づいたグローバライゼーションは全ての人間に利益をもたらすと当たり前のように考えていた。今日の指導者たちは、自由市場の果実は人々の間に均等に行きわたらず、そのために人々からの反撃を誘発している(これがポピュリズムだ)。「包摂(Inclusion)」は新しく人々の間で頻繁に使われる言葉になっている。

第二に、G7各国の指導者たちは、グローバライゼーションと自由市場に基づいた競争は公立を生み出すと同時に脆弱性を生み出すということに気付いている。以前であれば、個別の各企業のインセンティヴによって、最適化された国境を越えた供給チェインを作ることができるだろうと指導者たちも考えた。現在では、世界規模のサプライ・チェインは、集合行為問題によって脅威に晒されているということを指導者たちは認識している。ビジネスにおいては、各企業が個別で利益が最大になるようにするため、ある中心点に集中する行動を取る傾向がある。しかし、そうした中心点とシステムが壊れると、大混乱に陥ってしまう。結果として、「回復力(Resilience)」という言葉もまたよく聞かれるようになっている。

第三に、G7での議論は中国の脅威によって活発化させられている。「コーンウォール・コンセンサス」メモの中に中国の名前は直接出ていない。しかし、先進的なテクノロジーのためだけではなく、医療資源と天然資源のためでもある世界規模でのサプライ・チェインの多角化を求める内容がメモには書かれている。遅ればせながら、西洋諸国の各政府は、世界規模でのチップの生産を台湾を中心としたハブに集中させたことが深刻な間違いであったことを認めるようになっている。西洋諸国の各政府はこの間違いを繰り返したくないと考えている。

第四に、微妙だが、根深いものとして、ビジネスと政府との相互関係がリセットされている真っ最中ということがある。ワシントン・コンセンサス隆盛時代、各企業はお互いに競争し合う独立したアクターと見られていた。そこに政府の関与はないとされた。現在は、政府とビジネスの間の「パートナーシップ」について語られている。

政府からの鑑賞が最小限の自由企業体制(Free enterprise)は現在でも重要視されている。しかし、「パートナーシップ」は、現在の社会的に重大な諸問題に対応するための枠組みとなっている。ワクチンの獲得、気候変動対応、中国とのテクノロジー上の競争といったものが現在の重大な問題となっている。

最後に、経済学は、バイデンのホワイトハウスやその他あらゆる場所で、現在再定義の中にある。経済学は狭い範囲の数理モデルに集中してきたが、現在は、「外部性(externalities)」として片づけられてきた諸問題に関心が集まっている。環境、医療衛生、社会的な諸要素がそれらにあたる。

皮肉屋たち(もしくは熱心な自由市場信奉者たち)は、これら全てはアメリカ政治における一時的な左傾化、もしくは新型コロナウイルス感染拡大に対する短期的な反応を反映しているに過ぎないと述べるだろう。

その可能性は否定しない。しかし、私はそうではないと考えている。結局のところ、このイデオロギー上の移行を引き起こしているのは、新型コロナウイルスだけではなく、中国の台頭、気候変動の脅威、そして、ソヴィエト連邦崩壊以降に西洋で蔓延した自由市場に関連する思い上がりの消滅、といった要因である。そして、この新しいシステム構築を目指す人々は政治上のあらゆる立場の人々の中で見ることができる。「コーンウォール・コンセンサス」メモを生み出した諮問グループを組織したのは、保守党が率いるイギリス政府だったのだ。

新しい時代精神(zeitgeist)を好ましいと思うか、よくないと思うか、それはどちらも起きるだろうが、これを無視することは誰にもできない。歴史が示しているのは、知的な前提が変化する場合、それは緩慢に進む。楕円型の振り子は長期間にわたって揺れ続ける。儀式的な人工産物は時に重要性を持つ。「コーンウォール・コンセンサス」メモはそうしたものの一つとなるだろう。

(貼り付け終わり)

(終わり)

amerikaseijinohimitsu019
アメリカ政治の秘密
harvarddaigakunohimitsu001
ハーヴァード大学の秘密 日本人が知らない世界一の名門の裏側
このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック

このページのトップヘ