古村治彦(ふるむらはるひこ)の政治情報紹介・分析ブログ

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タグ:J・D・ヴァンス

 古村治彦です。

※2025年3月25日に最新刊『トランプの電撃作戦』(秀和システム)が発売になります。是非手に取ってお読みください。よろしくお願いいたします。
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『トランプの電撃作戦』←青い部分をクリックするとアマゾンのページに行きます。

 最新刊『トランプの電撃作戦』(秀和システム)で、私はヴィヴェック・ラマスワミについて書いた。彼は2024年の大統領選挙共和党予備選挙に立候補し、最初は無名候補だったが、弁舌の巧みさと鋭さと、トランプ支持を表明したことで、注目を浴びることになった。トランプもラマスワミを気に入っていたようだ。
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ラマスワミ(青いネクタイ)とヴァンス 
 ラマスワミの名前が再び注目されることになったのは、トランプが2024年の大統領選挙でカマラ・ハリス(とジョー・バイデン)を破り、大統領返り咲きが決まった後に、イーロン・マスクと共に、政府効率化省(Department of Government EfficiencyDOGE)を率いる責任者として名前が挙がった時だ。その後、ラマスワミは来年に実施される故郷オハイオ州知事選挙に出馬するために、責任者就任を辞退した。私は『トランプの電撃作戦』の中で、ラマスワミはヴァンスを助けて再び中央政界を目指すと書いた。

 ラマスワミとJD・ヴァンス米副大統領はイェール大学法科大学院(ロースクール)の同級生であり、それ以来の盟友だ。彼らは共にオハイオ州出身という共通点もある。そして、彼らは学生時代に既にピーター・ティールに見いだされている。詳しくは『トランプの電撃作戦』をお読みいただきたい。

 ラマスワミは保守派のネットワークに入れてもらえた。それは。保守派の重鎮で、第一次トランプ政権で大統領顧問を務めたレナード・レオの知己を得たからだ。ラマスワミは、2014年に設立した製薬業界に特化した企業ロイヴァントが成功して巨額の資産を手にすることになった。ラマスワミについては、「無名の新人」「アウトサイダー」という評価があったが、実際にはシリコンヴァレーの億万長者たちや保守派のネットワークの人々が支援している人物ということになる。この点もまた、ヴァンス副大統領とよく似ている。ラマスワミもまた、自分は主流派ではないと主張し、庶民の代表をアピールしているが、同時に、テック産業や保守派のネットワークの内部にいる人物ということになり、ハイブリッドということになる。ヴァンスとラマスワミという共通点の多い2人が2028年以降のアメリカ政治において、存在感を増していき、重要な役割を果たすことになる。

(貼り付けはじめ)

「彼はインサイダーだ」:ラマスワミ氏と右翼の中心的重要人物との深いつながりが明らかになった(‘He’s an insider’: Ramaswamy’s deep ties to rightwing kingpins revealed

-共和党候補は自らを「アウトサイダー」と位置づけているが、著名人レナード・レオやピーター・ティールと密接なつながりがある。

マーティン・ペングリー筆

2023年8月25日

『ザ・ガーディアン』紙(イギリス)

https://www.theguardian.com/us-news/2023/aug/25/vivek-ramaswamy-rightwing-elite-close-ties-leonard-leo-peter-thiel

ヴィヴェック・ラマスワミは、共和党の大統領候補指名争いのライヴァルたちが寄付者や特別利益団体(special interests)に「買収され、資金を提供されている(bought and paid for)」と非難し、自らを「アウトサイダー(outsider)」と形容している。

しかし、38歳のオハイオ州を拠点とするヴェンチャー・キャピタリストのラマスワミは、押しの強い、怒りを前面に押し出した様子を今秋開催された最初の共和党候補者討論会で見せた。ラマスワミは政治の2つのサイドの影響力を持つ人物たちと深い関係を持っている。

こうしたつながりで有名なのは、テクノロジー大手ペイパルとパランティアの共同創業者で右派の大口寄付者であるピーター・ティールと、連邦裁判所に保守派判事を配置する運動で前例のない額を集めた活動家レナード・レオだ。

ラマスワミは、ベストセラーの回想録『ヒルビリー・エレジー』の著者で、政界入りする前に金融業界で成功を収めたJD・ヴァンスのイェール大学法科大学院時代の友人だ。イェール大学法科大学院在学中、ヴァンスとラマスワミは、ティールが主催した「選ばれた学生のための親密なランチセミナー(intimate lunch seminar for select students)」と『ニューヨーカー』誌が形容したセミナーに出席した。昨年、ヴァンスはティールの支援を受け、極右のトランプ支持の考えを唱え、オハイオ州選出の連邦上院議員の座を獲得した。

ティールはその後、政治献金から手を引いたと述べている。『ニューヨーカー』誌が「高齢者のメディケア利用を支援するベンチャー(a venture helping senior citizens access Medicare)」と呼ぶ企業を支援し、昨年は、企業投資家の環境・社会・ガバナンス(environmental, social and governanceESG)方針を攻撃するためにラマスワミが立ち上げたファンドであるストライヴ・アセット・マネジメントを支援した。ヴァンスも支援者だ。

ラマスワミの主な成功手段は、2014年に設立された製薬業界に特化した投資会社ロイヴァントである。

ロイヴァントの顧問会には、共和党と民主党の両党の人物が名を連ねている。キャスリーン・セベリウス(オバマ政権の保健福祉長官)、トム・ダシュル(サウスダコタ州選出の元連邦上院民主党指導者)、オリンピア・スノー(メイン州選出、共和党所属の元連邦上院議員)などだ。

ラマスワミとレオとのつながりは数多くある。レオは最近、実業家のバレ・セイドから16億ドルの寄付を受けており、これは過去最大の寄付金とされているが、現在ワシントンDC地区の検事総長による捜査の対象になっていると報じられている。

「プロパブリカ」と「ドキュメンティッド」が報じたところによると、ラマスワミは、レオが議長を務めるテネオが主催するリトリートで講演している。この団体は、有力な保守派を結びつけ、アメリカ社会における「リベラルの優位を打ち砕く」ことを目指している。

テネオの他の講演者には、共和党予備選挙でラマスワミに先行しているフロリダ州知事のロン・デサンティスや、ミルウォーキーのステージでラマスワミと衝突したサウスカロライナ州元知事のニッキ・ヘイリーも含まれていると報じられている。

「プロパブリカ」はまた、ティールをテネオ・グループの創設に結び付けた。本紙が調べた文書によると、ラマスワミは2021年にテネオのメンバーになった。

他には、ラマスワミはレオとつながりのある慈善団体「ラウンドテーブル」の理事であり、レオ主導で裁判所に保守派の判事を就任させる運動を行っている団体「フェデラリスト協会」のメンバーでもある。

ラマスワミは、共和党所属の各州財務長官(state treasurers)の団体である「州財務官財団(State Financial Officers FoundationSFOF)」でも講演し、賞も受けている。

6月、サウスカロライナ州において、『ポスト・アンド・クーリエ』紙は、昨年大統領選に出馬する前に、ラマスワミ氏が「[共和党の]コネを利用して[ストライヴに]有利な年金基金管理契約へのアクセスを与えようとした・・・[資産総額は]396億ドルに上る」と報じた。

ポスト・アンド・クーリエはミズーリ州とインディアナ州でも同様の圧力がかけられたと伝えた。サウスカロライナ州の財務長官カーティス・ロフティスはポスト・アンド・クーリエに対し、こうしたアプローチは「何ら不適切ではない(nothing improper)」と語った。

右翼の寄付者、活動家、体制側の人物とのつながりを踏まえてラマスワミがアウトサイダーであると主張していることについて質問された選挙運動のスポークスマンは本紙に「ヴィヴェックはアメリカンドリームを実現し、ビジネスで大成功を収めた」。と述べた

選挙運動関係者たちは「裕福な人々と友人関係やビジネス関係を持つ人と、スーパーPACの寄付者を喜ばせるために政策や立場を変える政治家との間には、大きな違いがある」と付け加えた。

ウィスコンシン州の討論会では、91件の刑事告発に直面しているものの、共和党の世論調査で圧倒的な差をつけてリードしている元米大統領ドナルド・トランプが不在だったため、ラマスワミは活躍した。

ラマスワミがトランプの副大統領候補になるかもしれないとの憶測が広がる中、共和党の活動家から反トランプの「リンカーン・プロジェクト」の共同創設者に転身したリード・ガレンは、ラマスワミを「2020年代の典型的なアメリカのテック産業系のでたらめ芸能人・・・21世紀のトランプ」と呼んだ。

ガレンによると、ラマスワミが自分をアウトサイダーであると主張したのは、ラマスワミの「根本的な理解の一部だ。・・・MAGA派(トランプ支持の共和党内の支持基盤)は、予備選の残りの人たちは政治家だと示してほしいと思っている。ラマスワミはショーマン、つまりアウトサイダー、反主流派になることを厭わない。『もし何かあれば、それがそこにあって嫌だ』。つまり、『私はこれで楽しもう。あなたたちは下手くそで悪党の集まりだから、真剣には受け止めない』という訳だ」。

しかし、別の意味では、ラマスワミとレオやティールのような人物とのつながりについて、ガレンは「彼はインサイダーだと思う」と語った。

「彼はレオナルド・レオと一緒に部屋に入ってきて、『私に何をしてほしいですか?』と言う。すると彼らは、『これが私たちがあなたにしてもらいたいことだ。これが私たちがあなたにしてもらいたいことです』と言う」。これは正しいのか?

[ラマスワミ][中絶の制限などの]問題に関心があると思いますか? いいえ、特にそうではない。彼がそれについて確固とした信念を持っているとは思えない。しかし、それが彼の助けになると考え、それと引き換えにレオナルド・レオが、老人から彼に与えられた16億ドルのうちのほんの少しの金額を与えて彼を助けるとしたらどうだろうか?」何ということだ?

ガレンは「彼はここまでやれるとは思っていなかった。だから現在、彼はできる限りそれを押し進めようとしているのだ」と述べている。

ラマスワミは、レオが 「確かに中心にいる(certainly at the center)」献金者や非営利団体の世界と密接に結びついているとガレンは述べている。ガレンは更に「この動きは1つの方向にしか進まない。それは暗黒(darkness)に向かう。それは権威主義(authoritarianism)の方向だ。それは、ラマスワミのような人物を見つけるためだ。そして、他の候補者たちが彼(ラマスワミ)を攻撃すればするほど、彼らは彼をますますそのような人々の腕の中に追い込んでいくだろう」と述べている。

(貼り付け終わり)

(終わり)
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『トランプの電撃作戦』
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世界覇権国 交代劇の真相 インテリジェンス、宗教、政治学で読む

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める

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 古村治彦です。

※2025年3月25日に最新刊『トランプの電撃作戦』(秀和システム)が発売になります。是非手に取ってお読みください。よろしくお願いいたします。
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『トランプの電撃作戦』←青い部分をクリックするとアマゾンのページに行きます。

 最新刊『トランプの電撃作戦』(秀和システム)では、JD・ヴァンス副大統領が次の2028年米大統領選挙でトランプ大統領の後継者として共和党候補者となると書いた。そして、ヴァンスとシリコンヴァレーの大立者で、2016年の大統領選挙でトランプを支持し続けた、ピーター・ティールが、ヴァンスを見出したことを紹介した。ヴァンスはティールの弟子ということになる。今回は、『トランプの電撃作戦』では使わなかったが、ヴァンスとシリコンヴァレーの大物たちとの関係を詳しく分析している論稿を紹介する。内容を要約すると次のようになる。
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盟友同士のヴィヴェック・ラマスワミ(青いネクタイ)とJ・D・ヴァンス

ドナルド・トランプの副大統領候補にJD・ヴァンスが浮上する数週間前、テクノロジー業界の著名な人物たちが彼を推す動きが始まった。特に、テクノロジー起業家や資本家たちからヴァンスを副大統領候補にするように強く求めた。

ティールの投資会社の共同経営者デリアン・アスパロウホフは、ヴァンスがホワイトハウスの職に就くことが自分たちの代表がホワイトハウスに入ることを意味すると述べた。また、ヴァンスはその背景からシリコンヴァレーのエリートと将来の連携を生み出す人材として注目されている。

一方で、ヴァンスの過去の社会問題に対する姿勢や商業界とのつながりから批判も受けており、彼とティールの関係がビジネス上の駆け引きになる可能性が指摘されている。さらに、彼はシリコンヴァレーにおけるエリート主義と、一般市民を置き去りにする姿勢を意識し、影響を持とうとしていることがある。

ティールは過去のトランプの選挙に対して、巨額の寄付をしたものの、政権の混乱に失望しつつも、ヴァンスへの支援を続けている。トランプは最近、電気自動車や人工知能に対する積極的な姿勢を示している。テクノロジー業界の不満を受けて、トランプとヴァンスの最近の集まりには多くのテクノロジー企業の幹部が集まり、大規模な資金集めの場となった。

ヴァンスはより小規模なスタートアップ企業を支援する意義を持つことで支持を広げ、テクノロジー業界の変革を目指している。また、彼は過去の経歴を活かし、地域経済の問題にも取り組んできた。

最後に、ヴァンスがテクノロジー業界の影響力の高まりを象徴する存在となっていることが指摘されている。彼は新たなデジタル社会への対応を模索しながらも、政治的なロビー活動に関しては複雑な立場に立たされている。彼の副大統領候補への道筋は、アメリカの今後に向けての新たな枠組みを指し示すものとなるだろう。

 ヴァンスはトランプのポピュリズムを体現する人物である。詳しくは『トランプの電撃作戦』に書いたが、シングルマザーの貧しい家庭から身を起こし、副大統領にまで上り詰めた。彼はトランプを支持する貧しい白人労働者の代表という面がある。同時に、シリコンヴァレーでの経験や知識から、テック産業の代表という側面を持つ。彼はその点でハイブリッドということになる。アメリカ政治の大きな潮流を示し、体現する人物がヴァンスということになる。

(貼り付けはじめ)

JD・ヴァンスを指名した強力なピーター・ティールのネットワークの内部(Inside the powerful Peter Thiel network that anointed JD Vance

-右派の技術者による小規模で影響力のあるネットワークが、シリコンヴァレーでのヴァンスの台頭、そして共和党での台頭を画策した。彼がホワイトハウスを勝ち取れば、業界は利益を得る立場にある。

エリザベス・ドゥオスキン、キャット・ザクロウスキー、ニターシャ・ティク、ジョシュ・ダウジー筆

2024年7月28日

『ワシントン・ポスト』紙

https://www.washingtonpost.com/technology/2024/07/28/jd-vance-peter-thiel-donors-big-tech-trump-vp/

ドナルド・トランプ前大統領が副大統領候補を発表する数週間前、テクノロジー業界の大物たちが、自分たちの仲間であるオハイオ州選出の連邦上院議員JD・ヴァンスを推す静かなキャンペーンを開始した。

トランプ元大統領は、テクノロジー起業家のデイヴィッド・サックス、パランティア社顧問のジェイコブ・ヘルバーグ、そして、ヴァンスの元雇用主で師(mentor)でもある億万長者のヴェンチャー・キャピタリストであるピーター・ティールから、かつてのシリコンヴァレーにいる投資家を候補に加えるよう何度も懇願をうけたと、懇願に詳しい3人が匿名を条件にプライベートな会話について語った。

ヴァンスの最も強力なシリコンヴァレーにいる支持者たちは、元ネヴァー・トランプ派の人物であるヴァンスが共和党内で台頭していることに大喜びしている。彼らは、ヴァンスをワシントンにいる自分たちの使者と見なしており、政府やグーグルからロッキード・マーティンに至るまでの定着した大企業が技術革新(innovation、イノヴェーション)を阻害し、機敏で大胆な考えを持つスタートアップ企業、特に自分たちのスタートアップ企業が国益を推進できるという教義を広めている。ハリス副大統領の大統領就任は多くの左派テクノロジーリーダーを活気づけたが、ティールのネットワークの一部は、ヴァンスがホワイトハウスに入ることで恩恵を受ける立場にある。ヴァンスは最近までワシントンを避けていたヴェンチャー・キャピタリストにとって新たな資産だ。

ティールの投資会社ファウンダーズ・ファンド社の共同経営者であるデリアン・アスパロウホフはXに「地球上で最も偉大な国のホワイトハウスに元テックヴェンチャーキャピタルにはいることになるんだぜ(WE HAVE A FORMER TECH VC IN THE WHITE HOUSE GREATEST COUNTRY ON EARTH BABY)」と投稿した。

ティールにとって、ヴァンスが共和党候補に名を連ねるのは、ラストベルト出身のイェール大学法科大学院(ロースクール)卒業生を弟子(protégé)として迎え入れた10年前の先見の明のある賭けの成果であり(the payoff on a prescient bet placed a decade ago)、Meta社のCEOのマーク・ザッカーバーグやOpenAI創設者のサム・アルトマンを含むメンバーに加わった。

特に2016年に自叙伝『ヒルビリー・エレジー』を出版した後、ヴァンスは多岐にわたる知性、温厚な物腰でありながら、実はオハイオ州の労働者階級で育ったアウトサイダーの物語を通じて、シリコンヴァレーのティールの高尚な仲間たちに強い印象を与えた。この物語は2016年の大統領選挙後、テクノロジー界のエリートたちが、未来を築くことへの執着がいかに多くのアメリカ人を置き去りにしているのかを理解しようとしたときに共感を呼んだ。

ティールは彼自身を裕福にし、MAGA層に人気となった企業に投資する環境を整えた。彼は他のシリコンヴァレーの寄付者とともに、ヴァンスの政界進出を後押しし、2022年の米連邦上院選挙で彼の出馬を成功させた。

ティールの考えを知るある人物は「ピーターにとって、ヴァンスは一世一代の賭け(a generational bet)だ」と語った。

しかし、ヴァンスのビジネス界での人脈、そして中絶や同性婚などの社会問題に対するスタンスは、批判にもさらされている。批判者たちはヴァンスを「シリビリー(shillbilly 訳者註:シリコンヴァレーとヒルビリーの合成語)」と呼び、ティールのネットワークとの関係が金銭授受のシナリオ(a pay-to-play scenario)になる可能性があると主張している。

投資家のデル・ジョンソンはXに次のように投稿した。「彼らがエリート主義的な計画と反動的な見解を[導入する]ための最良の方法は、規制の捕捉だ(regulatory capture)」。これは民間セクターによる規制プロセスのコントロール(private sector’s control of the regulatory process)を表す用語を使っての投稿だ。続けて「ヴェンチャー・キャピタル階級に大統領職を任せても何も起きない」と書いた。

この記事は、シリコンヴァレーでのヴァンスの台頭、ティールとの関係、そして彼がアメリカで2番目に高い政治職に就いた場合のテクノロジー業界の野望に詳しい17人の人物へのインタヴューに基づいており、その多くは関係を保護するために匿名を条件に話してくれた。

ティールはコメントを拒否した。ヴァンスはコメントの要請に応じなかった。

ティールは2016年の選挙運動においてトランプに対して巨額の寄付を行ったが、彼の考えを知る複数の人物によると、最終的には政権の混乱と科学と技術革新への焦点の欠如に失望したという。

しかし、ヴァンスの指名は、ティールがトランプに好意的になるのに役立っている。また、トランプの共和党大統領候補指名は、テクノロジー業界にとって極めて重要な問題に新たに焦点を絞ったことと一致する。トランプ元大統領は、電気自動車、仮想通貨(cryptocurrency)、人工知能に関する業界に好意的なメッセージを受け入れてきた。トランプは先月、サックスのポッドキャスト「オールイン(All-In)」に出演し、シリコンヴァレーの寄付者たちを「天才たち(“geniuses)」と呼んだ。また、最近の選挙集会では、電気自動車のパイオニアであるイーロン・マスクを称賛し、「私たちは賢い人々の生活を良くしなければならない(We have to make life good for our smart people)」と発言した。

『ワシントン・ポスト』紙が確認した出席者リストによると、サックスが6月にトランプとヴァンスをサンフランシスコの自宅に招いて開催した、高額な資金集めパーティーの場で、2人は50人以上のテクノロジー企業の幹部や他の裕福な寄付者たちと会った。

共和党全国委員会で、サックスがトランプの専用ボックスでヴァンスと話している姿が見られた。出席者たちは、寄付者やロビイスト、テクノロジー業界の関係者らがこれほど集まったイヴェントは見たことがないと語った。

対照的に、バイデン政権は、暗号通貨業界を妨害し、人工知能を規制しようとし、スタートアップ創業者が金儲けするための重要な道である企業買収に異議を唱えることで、テクノロジー業界のリーダーたちを激怒させている。サックス、マスク、パランティア社共同創業者のジョー・ロンズデール、セコイア・キャピタル社のダグ・レオーネ、著名なヴェンチャー・キャピタル企業アンドリーセン・ホロウィッツ者の創業者たちは、トランプに同調し、トランプ支持のPACに多額の寄付を行っている。

トランプがホワイトハウスを奪還すれば、ヴァンスは、イデオロギー的に一致した技術面のリーダーたちを政府要職に就かせ、テクノロジー業界を政治的サンドバッグから資本主義の原動力へと変える一助となるかもしれない。ヴァンス自身の防衛スタートアップ企業アンドゥリルへの名ばかりの投資を含め、ティールと関係のあるスタートアップ企業のネットワークは、数十億ドル規模の契約をめぐって競争している。

一方、ヴァンスを指名する際のトランプへの売り込みは非介入主義外交政策(noninterventionist foreign policy)だったサックスの友人たちは、ヴァンスは国務長官を狙っているのだとよく冗談を言っていた。

ヴァンスの支持者たちは、ビッグテック企業の独占的慣行(Big Tech’s monopolistic practices)を非難する一方で、より機敏なスタートアップ企業(「リトルテック(Little Tech)」と名付けられている)を支援する姿勢が、ヴァンスを説得力のある特使(persuasive envoy)にしていると語った。

アリゾナ州で連邦下院議員選挙に立候補しているティール・キャピタル社の元上級幹部ブレイク・マスターズは、ヴァンスとシリコンヴァレーとのつながりが、技術革新の新時代を先導するのに役立つだろうと語った。

マスターズは「金儲けが目的ではない」と述べている。マスターズは、ティールがヴァンスに『ヒルビリー・エレジー』の宣伝文をレビューするよう依頼したことで、ヴァンスと友人になった。「マンハッタン計画のような大きな取り組みをかつて行っていた政府が、もはや作ることができないようになっている、新しい技術を作ることが目的だ。これから起こる問題をほとんど直感的に理解している人物のようだ」。

●「私たちのネットワークに欲しい人」(‘Someone we want in our network’

トランプが当選する2カ月前、ヴァンスはサンフランシスコで、テクノロジー業界で最も裕福で影響力のある人々とサロンディナーに出席した。出席者にはティール、アンドリーセン、アルトマン、セールスフォースのCEOマーク・ベニオフ、当時スタンフォード大学ビジネススクールの学部長だったジョン・レヴィンが含まれ、新たに重要なテーマ「アメリカの労働者階級の困難と仕事の未来(The difficulties of working class America and the future of work)」について話し合うために集まっていた。

幅広い会話はすぐに政治の話になった。当時はネヴァー・トランプ派だった若き回想録作家は、トランプの見込みのない選挙運動と民主社会主義者のバーニー・サンダース連邦上院議員(ヴァーモント州選出、無所属)の選挙運動を牽引したポピュリストの怒りを翻訳し、自分の言葉で主張した。

「そこにいた誰もがその瞬間を理解しようとしていた」と、その夜のことを知る人物は、プライベートな集まりだったため匿名を条件に語った。当時32歳だったヴァンスは「これらの素晴らしい知性に負けず、自分の力を発揮した・・・。彼はその場にいた全員の尊敬を集めていた」ということだ。

ティールがヴァンスのために道を切り開いたのは、約10年前、ヴァンスがこの億万長者にシリコンヴァレーでの機会を模索するようメールを送った後だった。ヴァンスは、2011年にティールがイェール大学法科大学院で行ったスピーチに触発された。そのスピーチは、技術の停滞を嘆き、競争の激しい仕事に対するエリートの執着が技術革新を潰していると主張した内容だった。ヴァンスは、そのスピーチをイェール大学在学中の「最も重要な瞬間(the most significant moment)」と表現した。

ヴァンスはティールに強い印象を残したとティールの投資会社ミスリル社の元マネージングディレクターのコリン・グリーンスポンは語っている。

グリーンスポンは後にヴァンスと共にヴェンチャー企業ナリヤを創設している。グリーンスポンは次のように述べている。「この男は、私たちのネットワークに100%欲しい人物だと分かっていた。ピーター・ティールの世界の利益は、常に興味深い人物が出入りすることであり、JDは私たちが親しくしたいと望む人物だと分かっていた」。

ティールの仲間が、ヴァンスがバイオテクノロジー企業サーキット・セラピューティクスに就職するのを支援した。ヴァンスはサーキット・セラピューティクスの専門分野であるオプトジェネティクスについては全く知らなかったが、勉強熱心な学生だった。彼はすぐに、スタートアップ企業への投資についてミスリルにアプローチした。

ミスリルはアプローチを断った。しかし、ヴァンスのアプローチ、つまり「適切なタイミングで連絡を取る才覚(knack for checking in at the right time)」はグリーンスポンに非常に感銘を与え、グループは「彼を雇う必要がある(we needed to hire him)」と結論付けた。

2016年にミスリルに入社したヴァンスは、投資家たちが企業を評価する方法を吸収し、技術革新が社会進歩の原動力として尊重される環境に身を置いた。オハイオ州ミドルタウン出身のヴァンスは、回想録の中で、白ワインが1種類以上あることを知らなかったと書いていて、そんな彼が億万長者とのディナーに出席するようになった。現在は新興企業と政府との連携を支援しているヴェンチャー・キャピタリストのキャサリン・ボイルは、サンフランシスコの自宅アパートでヴァンスのためにピザを用意して本の出版パーティーを開いた。

専門家たちは既に「ヒルビリー・エレジー」を選挙のための本と呼んでいたが、ワシントンに懐疑的なシリコンヴァレーでヴァンスが政治的野心について語ることはほぼなかった。

2016年にサロンディナーを企画してヴァンスを社交界に紹介したことで友人になったスタートアップ企業セーフグラフのCEO、オーレン・ホフマンは「彼は脚光を浴びよう(trying to get the limelight)としているようには見えなかった。彼の政治についての考えは知らなかった」と語った。

ヴァンスをもっと打算的な(calculating)人物と見る人たちもいた。ティールの仲間と交流していたある人物は、ヴァンスは同じような経歴を持つ人々と知り合う努力をせず、自分のキャリアに役立つ影響力のある人々に引き寄せられるだけだったと述べている。

クライナー・パーキンスの元投資家で非営利団体プロジェクト・インクルードの共同創設者のエレン・パオは「ヴァンスは、シリコンヴァレーで注目を集める、ホレイショ・アルジャー(Horatio Alger)のような、自力で起業する気骨のある白人男性創業者(bootstrap-pulling White male founder)の典型に当てはまるようだ」と語った。パオはヴァンスを直接知らないとしながらも、「彼の成功は、風に合わせて変化する意志、つまり、資金提供した新興企業を軌道に乗せるために政府の支援を求める場合に役立つ柔軟性と結びついているのではないか」と疑問を呈した。

ミスリルに入社してから1年後、ヴァンスはオハイオ州に戻った。2017年の『ニューヨーク・タイムズ』紙の「なぜ故郷に戻るのか(Why I’m moving home)」という見出しの論説で、ヴァンスはシリコンヴァレーでの時間を「高学歴の移住者たちに囲まれて(surrounded by other highly educated transplants)」「不快だった(jarring)」と表現した。別のインタヴューでは、西海岸の人々は「政治的・経済的権力とある種の恩着せがましさを併せ持っている(wield political-financial power in combination with a certain condescension)」と述べ、エリートのテクノロジー集団を冷笑したように見えた。

論説が掲載された数日後、ヴァンスは新しい仕事に就いたことも発表した。それは、前回の選挙でヒラリー・クリントンを支持した無所属のAOL共同創設者スティーヴ・ケースとともに、沿岸部のテクノロジー首都(シリコンヴァレー)以外のスタートアップの人材育成に重点を置いた取り組みである「ライズ・オブ・ザ・レスト(Rise of the Rest)」に取り組むことだった。

2018年、ヴァンスはオハイオ州ヤングスタウンで高級バスに乗り込み、政治家が主催する同様の取り組みであるカムバック・シティーズ・ツアーに参加した。ヴィーガン・ドーナツ、コンブチャ(昆布茶)、そして西海岸のヴェンチャー・キャピタリストに囲まれながら、ヴァンスは地元のスタートアップシーンと、オピオイド危機によるこの地域の課題について語った。ヴァンスは成人してからの人生の大半を、衰退する鉄鋼の町(the declining steel town)から遠く離れた場所で過ごしたが、訪問者たちは彼を、サンフランシスコの洗練されたオフィスとオハイオの間の溝を埋めるのに適した大使(as an ambassador well-positioned to close the gulf between their sleek San Francisco offices and Ohio)とみなした。

バスに乗っていた投資家の1人だったパトリック・マッケナは「この状況で、JDと会って人々が気づいたのは、シリコンヴァレーには賢い人がいっぱいいるが、賢い人が全員シリコンヴァレーにいる訳ではないということだった」と語った。

翌年、グリーンスポンとヴァンスはオハイオ州を拠点とする自分たちのファンドであるナリヤを立ち上げた。ナリヤは『ロード・オブ・ザ・リング』に登場する火の輪(a ring of ire)にちなんで名付けられた。(ティールの「ミスリル」と「パランティア」もJRR・トールキンの叙事詩に由来する)。ティールは資本金の少なくとも15%を提供し、密接に関与し続けた。

ヴァンスは、シリコンヴァレーは「駐車場のUberUber for parking)」のような、模倣的な、その時々の流行に乗った企業(flavor-of-the-moment companies)で「飽和状態(oversaturated)」だと潜在的な支援者に語った。ヴァンスは、ナリヤは大きなアイデアと、ロボット工学やバイオテクノロジーなどの「ディープ・テクノロジー(deep technology)」の調達に注力すると語った。(AIや暗号は誇張されすぎていると当時彼は言っていた)。

ナリヤ・キャピタルの投資が全て利益を上げた訳ではなかった。ナリヤ・キャピタルは、昨年破産申請した農業新興企業AppHarvestに2800万ドルの投資を行った。

匿名を条件に取材に応じた人物は「ディープテック(deep tech)」の売り文句に飛びついた初期の投資家たちは、ナリヤのイデオロギーに基づいた賭けとみなして驚いたと語った。この人物はこの投資について公に議論する権限がなかったため匿名で語った。

ナリヤはティールとともに、右派の視聴者に人気のYouTubeの競合企業ランブルの大口投資家となった。ナリヤとティールはカトリックの祈祷アプリ「ハロウ」にも資金提供している。

2021年のナリヤの会合に、オハイオ州副知事ジョン・アレン・ハステッド(共和党)と、当時は製薬会社の元幹部で「意識高い(woke)」資本主義を攻撃するベストセラー本の著者だったヴィヴェック・ラマスワミが出席した。ハロウの創設者は「タブーな夕食の話題(taboo dinner topics)」をテーマとしたセッションで政治と宗教について語った。

ナリヤの共同創設者グリーンスポンは、ナリヤの目標は「投資家に可能な限り最高の利益をもたらすこと」だと述べた。

2021年に米連邦上院議員選挙への出馬を発表した頃には、ヴァンスはネヴァー・トランプ派からMAGA共和党員に変貌していた。これはティールやマスターズらとの長年の対話の結果だ。

マスターズによると、2021年、長年連邦上院議員を務めたロブ・ポートマン(オハイオ州選出、共和党)が引退を発表した日に、彼とヴァンスは電話で話したということだ。マスターズはポートマンから聞いた、「私はすぐにJDに電話し、おい、君はオハイオ州で立候補する必要があると思うと言ってやった。・・・私たちは2人とも、このためにビジネスキャリアを捨てる必要があると感じていた」という話を紹介した。

2022年の中間選挙の期間、ティールは彼の弟子である候補者2人に3000万ドル以上を投入した。これはティールにとって過去最大の寄付であり、その選挙期間の唯一の大口寄付だった。

1つの賭けは失敗した。もう1つは彼の予想を上回るものだった。

●彼らの仲間の1人(One of their own

ヴァンスは、主要政党の大統領候補に選ばれた最初の著名なテクノロジー・ヴェンチャーキャピタリストであり、テック業界の影響力が高まっている兆候である。

シリコンヴァレーは1950年代にまで遡る政府の支援の上に築かれたが、その指導者たちはここ数十年、ワシントン、特に防衛契約(defense contracts)を避けてきた。しかし、新型コロナウイルス感染拡大以降、財務収益(financial returns)が減少し、中国と世界の不安定さがより大きな脅威となったため、政府は引く手あまたの顧客(a sought-after customer)となった。

ヴァンスは、グーグルの分割を主張する一方で、暗号通貨などの新興技術には介入しない姿勢を主張してきた。彼は、シリコンヴァレーが一枚岩としてロビー活動を行っていないことを理解している数少ない政治家の1人として、テクノロジー業界内で広く見られている。

第1次トランプ政権の連邦通信委員会委員長アジット・パイの下で働いた経験を持つ、アメリカ技術革新財団の上級フェローであるエヴァン・シュワルツトラウバーは、ヴァンスが副大統領に当選すれば、「リトルテックとミディアムテックに誰かが入ることになる」と述べ、この議論は「最大手企業群に支配されすぎている」とも述べた。

いくつかの著名な「小規模」および「中規模」の防衛技術企業(several prominent “little” and “medium” defense tech companies)は、偶然にもティールの緊密な関係にある企業から資金提供を受けている。アメリカの兵器システムに人工知能を組み込むことを目指すアンドゥリル社は、ティールのネットワークであるアンドリーセンの支援を受けており、ヴァンスの寄付者であるパルマー・ラッキーが共同設立者となっている。パランティア社はヘルバーグが代表を務め、ティールとロンズデールが共同設立した。ロンズデールは投資家であり、ヴァンスとマスクの友人で、シリコンヴァレーの企業を結集してトランプ支持のPACに寄付するよう支援した。ヴァンスについて楽観的な投稿をしたティールのファウンダーズ・ファンド社の共同経営者であるアスパロウホフは、政府からの資金提供を求めているヴァルダ・スペース・インダストリーズ社の共同設立者でもある。

ポッドキャスト「オールイン」の最近のエピソードで、共同司会者のジェイソン・カラカニスは、民主党が献金者に虜(とりこ)になっていると批判したサックスをからかい、ヴァンス指名の「事業計画者(architect)」と呼んだ。

サックスはポッドキャストで、自身の関与を過小評価した。サックスは「私はおそらく、(トランプに)意見を述べた1000人、いや少なくとも数百人のうちの1人だった」と語った。

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(終わり)
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『トランプの電撃作戦』
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世界覇権国 交代劇の真相 インテリジェンス、宗教、政治学で読む

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める

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 古村治彦です。

※2025年3月25日に最新刊『トランプの電撃作戦』(秀和システム)が発売になります。是非手に取ってお読みください。よろしくお願いいたします。
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『トランプの電撃作戦』←青い部分をクリックするとアマゾンのページに行きます。

 第2次ドナルド・トランプ政権が発足し、直後からスピード感を持って物事が動いている。是非最新刊『トランプの電撃作戦』(秀和システム)を読んで、トランプとトランプ政権の行動原理について知っていただければ幸いだ。

 早速、「トランプに3期目を!」という声が出ている。アンディ・オグルズ連邦下院議員 (テネシー州選出、共和党)が、大統領の任期制限(term limits)を定めた、憲法修正第22条の例外条項設定に向けて動き出している。保守系の団体でも「第3期プロジェクト(Third Term Project)」がオグルズ議員支援のために動き出している。

 アメリカ大統領は任期制限がある。2期8年までしかできない。これは、初代大統領ジョージ・ワシントン以来の「不文律(unwritten rules)」であったが、1947年に米連邦議会が憲法の修正条項として任期制限を設定した。この憲法修正条項の修正は連邦上下両院それぞれでの3分の2以上の賛成と、4分の3以上の州の賛成が必要であり、現実的には不可能である。

 しかし、以下の論稿にある通り、「トランプが3期目を目指す」「トランプなら3期目を実現するかもしれない」という思惑がアメリカ政界で広がることで、トランプの影響力行使に大きなプラスになる。トランプの力はそれほどのものだ。トランプが3期目を目指すことはないが、次の大統領選挙において、トランプが誰を後継者として指名するか、もしくは支持するかが重要になってくる。トランプから支持を得られた人物が共和党の候補者になることは確実だ。現在の最側近であるイーロン・マスクは南アフリカ生まれであるので、大統領になる資格を持たない。現在のところ、最も自然なのは、JD・ヴァンス副大統領が後継者になることだ。それはどのようなことからそのように考えられるのかについては、最新刊『トランプの電撃作戦』で書いているので、是非読んで欲しい。このブログでも紹介したが、公開している目次を読めば、このブログの読者で、勘の良い皆さんならば、どういうことかをたちどころに理解されるだろう。

 「トランプが3期目も大統領になれるか」ということが重要ではない。憲法修正という高いハードルを越えられのではないかという思い(支持者には期待と反対者には恐れ)を人々に持たせることが重要だ。それによって政治の世界で行使できる力も変わってくる。これは好き嫌いの問題ではなく、現実の問題である。

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トランプの3期目の予告は見事な政治戦略だ(Trump’s third-term tease is a brilliant political strategy

ミラ・アダムス筆

2025年3月7日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/opinion/campaign/5180505-trumps-third-term-tease-is-a-brilliant-political-strategy/

先月開催された保守政治行動会議(Conservative Political Action ConferenceCPAC)は、第47代大統領を祝う「トランプルーザ(Trumpalooza 訳者註:paloozaは「宴」や「パーティー」の意味)」の愛の祭典となった。イーロン・マスクがチェーンソーを振り回す舞台上の芝居や、スティーヴ・バノンのナチス式敬礼に加え、注目を集める心配な「第3期プロジェクト(Third Term Project)」のデビューもあった。

プロジェクトのリーダーであるシェーン・トレホは、「草の根レヴェルでトランプが正当に第3期目を獲得できるよう支援を推進している。2020年、トランプは務めるはずだった任期を盗まれたと私たちは考えている」と語った。

「第3期プロジェクト」の使命は、トランプ大統領就任の3日後にアンディ・オグルズ連邦下院議員 (テネシー州選出、共和党) が提出した憲法修正案(proposed constitutional amendment)を支持することだ。オグルズ議員は、トランプ大統領が3期目を務めることを可能にする例外条項を憲法修正第22条(22nd Amendment)に設けたいと考えている。実質的には、これは完全にトランプ大統領に特化した提案であり、連続しない 2期の任期を務めた大統領にのみ適用される。

「第3期プロジェクト」のCPACデビューはおかしなもので、歴史的な皮肉なものとなった。バナーには、トランプ大統領の横顔の胸像が、古典的な古代ローマ様式で描かれていた。これは、2069年前の3月、政敵に暗殺されるまで「終身独裁者(dictator for life)」の地位に就いた将軍であり政治家であったジュリアス・シーザー(Julius Caesar)の象徴的な彫刻を模倣したものだ。

2023年12月まで話を進めると、当時のトランプは、もし当選しても「第一日目を除いて(except for day one)」独裁者(dictator)にはならないと誓った。その後、一般投票ではわずかに1.5パーセントポイント、選挙人投票では312対226というより説得力のある票差で勝利した後、トランプは鉄拳(iron fist)で統治し、アメリカを「アメリカの黄金時代(America’s Golden Age)」に導く圧倒的な権限を得たと信じているように見える。

就任式(Inauguration Day)のその日から、トランプは大統領の権限を戦略的に拡大することを止めていない。彼は、憲法で義務付けられた行政府、立法府、司法府間の連邦権力の分離と均衡(separation and balance of federal powers between the executive, legislative and judicial branches)を覆そうとすることに大きな誇りを持っているようだ。

建国の父たち(the Founders)は、独立を宣言した相手のような、全能の独裁的な支配者(all-powerful, despotic ruler)から身を守るために、特に力が同等の諸政府機関を設けた。トランプはこの微妙なパワーバランス(delicate power balance)を試すことに熱心で、連邦最高裁は根本的な影響を伴う判決を下し続け、トランプが従わなければならない行政権をチェックしている。

これは、トランプが2028年の大統領選挙に合法的に再出馬できるよう、オグルズが修正を夢見ている憲法修正第22条に私たちを戻してくれる。

この修正案が連邦下院と連邦上院で3分の2以上の多数で通過する可能性はゼロで、ましてや4分の3の州で批准される可能性はない。しかし、ショーマンであるトランプが、3期目について熱烈な支持者たちに対して予告することを止めることはないだろう。今年2月、ホワイトハウスで行われた黒人歴史月間を祝うイヴェントで、トランプは友好的な集まりに「再出馬すべきか? 君たちが教えてくれ(Should I run again? You tell me.)」と質問した。そして、「そこにあなたたちの論争がある(There’s your controversy right there,)」と付け加えた。この言葉に続いて、「更に4年(four more years)」の掛け声が続いた。

これより前、大統領の2期目が始まる1週間前、トランプは、自身が所有するドラル・ゴルフリゾートで行われた共和党の祝賀会で、連邦下院議長マイク・ジョンソン議員(ルイジアナ州選出、共和党)に再選の質問をした。挑発的に、大統領は「私には再選は認められていないと思う。よく分からない。再選は認められているのか、マイク? 君を巻き込まない方がいいな」と述べた。

しかし、トランプが自ら関与してくることは間違いない。なぜなら、3期目についてのほのめかしは、マキャベリ的な戦略を後押しし、権力拡大への飽くなき追求を後押ししているように見えるからだ。トランプが期限付きのレームダックであるという政治的現実を考えると、3期目の見通しは、2029年1月に避けられない彼の政治キャリアの期限を軽視するのに役立つ。その間、トランプ氏は恐怖による統治(to rule through fear)を続け、敵味方(friends and foes)に絶対的な忠誠を要求する。

トランプは、3期目の見通しをできるだけ長く利用して、自身の政策への支持を集め、「仕事を完了する(finish the job)」ことができるだろう。これは、「3期目プロジェクト」のスローガンだ。しかし、2026年の中間選挙後は、結果にかかわらず、レームダック状態となり、2028年の空席のある大統領選挙戦が始まる。では、トランプはどう行動するだろうか?

もし彼が健康を維持して、有権者の少なくとも45%から支持され続ければ、82歳で再出馬する勇気はあるだろうか? MAGAのインフルエンサーであるスティーヴ・バノンが推進する疑わしい非連続任期論(non-consecutive term argument)を使って、憲法修正第22条を試すだろうか? バノンは最近のCPACスピーチで、再びトランプの2028年出馬を主張した。

3期目の話は2028年の共和党の大統領選挙出馬希望者たちを動揺させ、トランプの権力をさらに強めさせる。最も注目すべきは、野心的で率直で目立つ存在になりつつある彼の自然な後継者であるJD・ヴァンス副大統領に対するトランプのコントロールを助けることだ。

更に言えば、トランプはいつでも政治劇(political theater)に加わることができる。「再出馬(run again)」という質問をして見せびらかすこともできる。友好的な群衆が「更に4年!」と叫ぶことは彼にとって嬉しいことだ。報道の見出しはそれに従う。認識は現実だ(Perception is reality)。人々は次の任期を「要求(demand)」している。トランプの行動は、2028年の大統領候補者全員を圧倒する可能性がある。

トランプは報道の見出しを確保する論争を起こすのが大好きなので、違法な3期目、あるいは少なくともその曖昧さはぴったりだ。彼は、あらゆるプラットフォームでのMAGAメディアの増幅によって「正常化(normalized)」されるまで、嘘を繰り返したり、とんでもない政策や人事を主張したりする技術を完璧に身に付けている。彼は2028年の大統領選を「正常化(normalize)」するだろうか?

その場合、民主党と不満を抱く共和党は、1947年に共和党が支配する連邦下院と連邦上院が、憲法修正第22条の非常に明確な制限「大統領職に2回以上選出される者はいない(No person shall be elected to the office of the President more than twice)」を可決したことを有権者に思い出させるべきだ。その後、4分の3の州で批准されるまで1951年までかかった。この修正は、民主党のフランクリン・ルーズヴェルト大統領が1932年から1944年までの4回の選挙で勝利したことに対する共和党の回答だった。

戦後の共和党は任期制限によって大統領の権力を抑制しようとした。現在、オグルズ連邦下院議員と「第3期プロジェクト」の旗は「トランプ2028年・・・そしてその先も!」と叫んでいる。

フランクリン・ルーズヴェルトの4度の大統領選挙勝利は、大恐慌(Great Depression)との戦い、そして第二次世界大戦中のリーダーシップの結果だったことを思い出して欲しい。

逆に、アメリカ人はトランプの攻撃的な行動と政策が、意図せずして新たな恐慌や中国との戦争を誘発しないことを祈るべきなのである。

※ミラ・アダムス:論説記者、2004年と2008年の2回の大統領選挙で共和党側陣営のクリエイティヴティームに参加した。

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(終わり)
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『トランプの電撃作戦』
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世界覇権国 交代劇の真相 インテリジェンス、宗教、政治学で読む

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める

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 古村治彦です。

 現在、第二次ドナルド・トランプ政権の「スター」となっているのは政府効率化省(Department of Government EfficiencyDOGE)を率いるイーロン・マスクだ。しかし、副大統領であるJ・D・ヴァンスもまた副大統領として順調に仕事のスタートを切り、トランプの後継者の地位を固めようとしている。イーロン・マスクは目立っており、トランプの後継者になれそうであるが、彼は南アフリカ生まれであるため、アメリカ大統領になる資格がない。トランプ運動(MAGA運動)を主導することはできるだろうが、アメリカ大統領になれない。トランプの次の大統領になれるのはJ・D・ヴァンスだ。

 そうした中で、ヴァンスが順調に力をつけているという内容の論稿が出ている。この論稿の内容をご紹介したい。
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(左から)イーロン・マスク、ドナルド・トランプ、J・D・ヴァンス

JD・ヴァンス副大統領の影響力は増大しており、ホワイトハウスや国際舞台で重要な役割を果たしている。特に、ウクライナのウォロディミール・ゼレンスキー大統領との会談では、強硬な姿勢を見せ、ゼレンスキーに対して、ゼレンスキーの無礼な態度を指摘し、アメリカからの支援に感謝を求めた。

ヴァンスは攻撃的な姿勢を持っているが、これはトランプ大統領の支持層にフレッシュな印象を与えるものとなった。ヴァンスがトランプ支持者の中で重要な地位を築いたという声もある。また、ヴァンスは国境の移民問題に関与し、南部国境を訪問するなど政治活動も活発に行っている。

ヴァンスは、トランプ大統領のアジェンダを支持し、反対派に対峙する姿勢を示すことで、政権内部での権力を強化している。その一方で、トランプ自身がヴァンスの将来に対する支援に消極的な姿勢を見せたことにより、ヴァンスが後継者になるのかということについて、疑問も出ている。

ヴァンスはトランプ政権での様々な任務に取り組み、特にTikTokの売却問題についても監督する役割を担っている。このような活動は、トランプ大統領が彼に対して深い信頼を寄せていることを示しているという分析もある。

ヴァンスは、トランプの意向を受けつつ党内の影響力を増しているが、その立ち位置は他の政治家との関係や選挙の結果によって変わりうる。彼の活動や行動は、今後のトランプ支持者としての彼の運命に大きく影響する可能性が高い。

 ヴァンスは第二次トランプ政権の閣僚の連邦上院での人事承認でも舞台裏で交渉を行ってうまく進めている。このような裏回し的な仕事をして成功しているのは大きい。トランプ政権の屋台骨を支えるということになれば、トランプの後継者としての地位を固めることになる。アメリカ大統領選挙は2028年に実施されるが、2027年にはスタートする。そう考えると、時間があるようでない。ヴァンスはトランプ政権を支える仕事をしっかりやって基盤を固めていくこと、これに尽きることになる。国務長官であるマルコ・ルビオも大統領選挙に色気を持っているだろうが、マスクとの衝突などをしているようでは、漁夫の利をヴァンスにさらわれることになる。ヴァンスの動きにこれから注目していかねばならない。

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ヴァンスがトランプ世界での影響力を増大させている(Vance ramps up his clout in Trump world

アレックス・ガンギターノ筆
2025年3月8日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/homenews/administration/5183327-vanec-clout-trump-world/

JD・ヴァンス副大統領の影響力は上昇を続けており、ホワイトハウスや世界の舞台で鍋をかき回す(状況をかき回す、トラブルを起こす、挑発する)役割を担っている。

ヴァンスの攻撃犬としての役割は、ウクライナのウォロディミール・ゼレンスキー大統領との米大統領執務室での会談中に完全に発揮された。ヴァンスは外国の指導者であるゼレンスキーと対峙し、彼を無礼だと非難し、ロシアとの戦争中にアメリカがウクライナに提供した数十億ドルの援助に対する感謝を要求した。

ヴァンスのより攻撃的な姿勢は、ヨーロッパで波紋を呼び、南部国境を訪問するなどして、数週間にわたってテクノロジー業界の億万長者イーロン・マスクが注目を浴びた後のことだ。マスクは注目度でトランプ大統領を上回ることさえある。

ホワイトハウスの意向に詳しい情報筋は次のように語った。「ヴァンスは指名されて以来、最高の1週間を過ごした。トランプとMAGAワールドの得点源の花形プレイヤー(go-to player)として確固たる地位を築いた」。

ヴァンスは副大統領として、連邦議会合同演説の際に連邦下院本会議場でトランプの後ろの席に座り、共和党議員と一緒になってアル・グリーン議員(テキサス州選出、民主党)に野次を飛ばし、抗議のためにトランプの演説を妨害したグリーンの退場を主張した。

その後、ヴァンスは閣僚とともにアメリカ南部国境を訪れ、移民問題を強調し、パトロール隊員の許を訪問し、グレッグ・アボット州知事とともに関税と国境の壁について記者会見を開いた。

しかし、ヴァンスが本当に注目を集めたのは先週金曜日、ウクライナのウォロディミール・ゼレンスキー大統領との会談が軌道から外れ、記者たちの質問に答えて、ゼレンスキー大統領にロシアのウラジーミル・プーティン大統領との外交交渉を提案した時だった。

そのため、ゼレンスキーはヴァンスに尋ねた後、過去10年間にプーティンがウクライナに対して行った侵略のリストを読み上げた。ゼレンスキーはヴァンスに「JD、どのような外交について話しているのか?」と質問した。

ゼレンスキーが口をはさもうとすると、ヴァンスは次のように語った。「私は、あなたの国の破壊を終わらせるような外交について話している。大統領、大統領、失礼ながら、あなたがアメリカの大統領執務室までやってきて、アメリカのメディアの前でこの件を争おうとするのは無礼だと思う」。

この会談について本紙の取材に答えた共和党員の中には、ヴァンスが不必要に会談を燃え上がらせたと言う者もいた。しかし、ウクライナへの資金援助に懐疑的な姿勢を強め、トランプの「アメリカ第一」のアジェンダに同調するMAGA世界でも、ヴァンスの行動は新鮮さを感じたという。

共和党の献金者であるダン・エヴァーハートは「トランプ大統領のアジェンダを全面的に擁護し、反対派に直接戦いを挑むことで、ヴァンスは政権の最高執行者(administration’s top enforcer)としての役割を確固たるものにしている。これは単なる忠誠心についてではない。それは力についてだ。トランプ大統領のためにパンチを繰り出すたびに、ヴァンス自身の支持基盤が強化され、真のMAGA戦士としての資格が強化される」と述べた。

エヴァーハートは加えて、「明確にしておきたいのは、これは今日だけの問題ではないということだ。ヴァンスはトランプ運動の未来に自らの権利を主張し、トランプが退任した後の後継者として自らを位置づけている」と述べた。

米大統領執務室でのゼレンスキーとの口論により、ヴァンスはトランプが1月に大統領に就任して以来、一度も経験したことのない形で脚光を浴びることになった。その代わりに政権の注目を浴びているのはマスクで、マスクが率いる政府効率化局(Department of Government EfficiencyDOGE)が思いつきで政府機関を丸ごと解体するなど連邦政府の急進的な改革に関与したことで、しばしば物議を醸す形で注目を集めている。

トランプ陣営に近い情報筋は次のように語った。「ヴァンスやマスクは、制限を受けずに自由に、穴を突ける権限を持っている人がいるという印象があるが、このような人たちは今まで見たことがない。トランプは自由に動くこと(freelancing)に対してある程度寛容だ。トランプは成果を出す人が好きなのだと思う」。

しかし、トランプの口調は今週、少なくともマスクに関しては少し変わった。2回目の閣僚会議でトランプは、マスクではなく閣僚たちが各省庁の予算削減を主導すべきだと主張したが、彼らが必要なことをしなければマスクがやるという但し書きを付け加えた。

『ニューヨーク・タイムズ』紙の報道によると、マスクとマルコ・ルビオ国務長官の間でも緊張が高まっていると報じられている。ルビオ国務長官は、マスクのティームが米国国際開発庁(United States Agency for International DevelopmentUSAID)を閉鎖して以来、数週間にわたってマスクに激怒していると報じられている。

一方、トランプはヴァンスの政治的将来について厳しい立場に置いている。フォックス・ニューズのインタヴューで、トランプ大統領はヴァンスが共和党の次期リーダーになることを全面的に支持しなかったため、トランプの戦略は何だったのかと多くの人が疑問に思った。専門家の一部は、それがヴァンスの姿勢を強めることにもつながったと指摘している。

トランプ世界に近いある情報筋は次のように語った。「ヴァンスはマスクとは違った形でMAGA教義の解釈者としてかなり長いリードを持っている。そのため、ヴァンスは間違いなくより積極的な姿勢を取るだろう。彼は後継者になりたいからだ」。

ヴァンスは、トランプのより物議を醸す閣僚候補の支持を舞台裏で働きかけ、共和党所属の連邦上院議員たちやホワイトハウスの注目を集めた。ヴァンスは、現在承認されている国家情報長官トゥルシー・ギャバ―ドと保健福祉長官ロバート・F・ケネディ・ジュニアに賛成票を投じられるところまで彼らを説得したとされている。

ヴァンスはまた、4月5日の期限を前に人気アプリTikTokの売却の可能性を監督するようトランプに任された。

ヴァンスの仕事に詳しい情報筋は本誌に対して次のように述べた。「ヴァンス副大統領は、トランプ大統領の明確な指示のもと、TikTokや連邦上院人事承認の支援などのプロジェクトを引き受けてきた。トランプ大統領は明らかに、副大統領が困難な任務を任せて、それを実行することについて信頼している」。

一方、ヴァンスがトランプの明確な後継者で大統領選挙の有力候補(Trump’s heir apparent and presidential hopefuls)であることに懐疑的な連邦上院議員もいる。連邦上院の大統領候補たちは、ある時点で将来のポジショニングを独自に作り始めるだろうと、トランプ世界に近い情報筋は述べた。

「トランプがヴァンスは自分の後継者かと聞かれたとき、すぐに認めなかったことは、人々の記憶に残っていないと思う」とこの情報筋は語った。

一方、ヴァンスは2028年の党の未来を担えることを示すため、多方面からその役割を固めつつある。彼は、支持を拒否したトランプを擁護し、時期尚早だと主張さえしている。

第一次トランプ政権で広報補佐官を務めたジョーダン・ウッドは次のように語った。「ヴァンスはトランプをソフトにさせるためにいるのではなく、運動全体を前進させる(entire movement forward)ためにいる。トランプにとって、ヴァンスはトランプ自身が始めたことの産物であり、若く、攻撃的で、その未来に完全に関与している」。

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 古村治彦です。

 2025年2月28日、ウクライナのヴォロディミール・ゼレンスキー大統領がホワイトハウスを訪問し、ドナルド・トランプ大統領と会談を持った。そして、記者たちがいる前で、JD・ヴァンス副大統領も入って、口論となった。その様子は日本でも報道された。その口論の内容について、一部(後半部)をご紹介する。

 この口論の内容を見て、私は、「ゼレンスキーという人物はシンプルに頭が悪い人だ」と感じた。トランプと会談を持つとなれば、このようなことになる可能性が高いことは誰でも分かることだ。それでも、うまく対処するために準備をすることが重要なのに(石破茂首相は訪米前の週末に事前準備勉強会を開いていた)、そのような準備の跡が見られない。ウクライナをどのように導くか、戦争をどのように終わらせるかということについて、側近たちも含めて策もなく略もないということのようだ。側近たちのレヴェルもまたゼレンスキーのレヴェルを示している。つまり、頭が悪いのである。

 更に問題は、アメリカ側を「脅した」ことだ。「ゼレンスキーがアメリカは『将来それ(外国から攻められる恐怖)を感じるかもしれない』と示唆するとトランプが激怒」という項目がある。これは、ゼレンスキーが「アメリカは攻められる危険がないから、私たちの感じていることは分からない。しかし、将来は感じることになるだろう」という趣旨の発言を行い、トランプが激怒したということである。これは、「アメリカはいつまでも世界一の超大国ではいられない。すぐに弱体化して、私たちと同じ苦しみを味わうぞ」ということである。ゼレンスキーのこの見立ては説得力がある。しかしながら、それを、メディアを前にして言うべきではなかった。アメリカ国民も聞いているのである。アメリカからのお金と武器がなければ、ウクライナは戦争継続ができないのである。ゼレンスキーはアメリカからの支援継続を獲得するのが最重要の目的である。しかし、この目的達成を危険に晒すようなことをしてしまうというのは頭が悪い人物であり、このようなリーダーを持ってしまったのはウクライナにとっての最大の不幸である。日本も他山の石として注意しなければならない。

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彼らが発言したこと:米大統領執務室でのトランプ、ゼレンスキー、そしてヴァンスの熱を帯びたやり取り(What they said: Trump, Zelenskyy and Vance’s heated argument in the Oval Office

アドリアナ・ゴメス・リコン筆

2025年3月1日

AP通信

https://apnews.com/article/trump-zelenskyy-vance-transcript-oval-office-80685f5727628c64065da81525f8f0cf

フロリダ州フォートローダーデール(AP)発。ドナルド・トランプ大統領とJD・ヴァンス副大統領は金曜日、ウクライナ戦争に関してウクライナのヴォロディミール・ゼレンスキー大統領を非難した。ゼレンスキーがロシアのウラジーミル・プーティンとの外交問題についてヴァンス大統領に異議を唱えた後、感謝の意を示していないと非難した。

米大統領執務室での口論は世界的に放送された。ゼレンスキーの残りのホワイトハウス訪問はキャンセルされ、2022年のロシアの侵攻に対するウクライナの防衛において、アメリカがこれからどの程度支援するのか疑問が起きる事態になった。

以下は、このやりとりの重要な瞬間の文字起こしである。

■ゼレンスキーがヴァンスに対して、ロシアと外交について挑戦(Zelenskyy challenges Vance on Russia and diplomacy

・ヴァンス:「4年間にわたり、アメリカ合衆国、私たちは記者会見に立ち、ウラジーミル・プーティンについて強い調子で話す(talk tough)大統領を有してきた。そして、プーティンはウクライナに侵攻し、ウクライナの大きな部分を破壊した。平和の道筋(path to peace)と繁栄への道筋(path to prosperity)は、おそらく、外交への関与ということになる。私たちはジョーバイデンの考える道筋を試した。胸を張り、大統領の言葉が大統領の行動よりも重要であるかのように装った。アメリカを良い国にする(What makes America a good country)のは、アメリカが外交に関与することだ。それがトランプ大統領のやっていることだ」。

・ゼレンスキー:「あなたに質問しても良いか?」。

・ヴァンス:「もちろん、どうぞ」。

・ゼレンスキー:「それでは。彼(プーティン)はウクライナの大きな部分、東部とクリミア半島を占領した。彼は2014年に占領した。そして、それから長い期間、占領した。私はバイデン政権下での話だけをしているのではない。その時期は、(バラク・)オバマ大統領、トランプ大統領の時代だった。そして、バイデン大統領の時代になり、今はトランプ大統領だ。そして神のご加護のもと、トランプ大統領が彼を止めるだろう。しかし、2014年の間は誰も彼を止めなかった。彼はただ占領し、奪った。人を殺した。お分かりの通りに・・・」。

・トランプ:「2015年?」

・ゼレンスキー:「2014年」。

・トランプ:「おや、2014年? 私はいなかった」。

・ヴァンス:「それは正しい」。

・ゼレンスキー:「そう。しかし、2014年から2022年まで、接触線で人が死んでいる状況は変わらない。誰も彼を止められなかった。私たちが彼と会話をしたことはご存知だろう。そして私たちは彼と、私、あなた、大統領、2019年に私は彼と協定に署名した。私は彼、(フランスのエマニュエル・)マクロン大統領、(ドイツのアンゲラ・)メルケル前首相と署名した。私たちは停戦(ceasefire)に署名した。停戦だ。しかしその後、彼は停戦を破り、同胞を殺し、捕虜交換も行わなかった。私たちは捕虜交換に署名した。でも、彼はそれをしなかった JD、あなたの言う外交とは何か? どういう意味なのか?」。

・ヴァンス:「私は、あなたの国の破壊を終わらせる外交について話している。大統領、失礼ながら、あなたが米大統領執務室に入ってきて、アメリカのメディアの前でこの問題を訴えようとするのは失礼だ(disrespectful)と思う。今、あなた方は人員の問題(manpower problems)を理由に徴兵(conscripts)をして、人々を前線に押し出している。あなたは、この争いを終わらせようと努力している大統領に感謝すべきだ」。

・ゼレンスキー:「あなたはウクライナに来たことはあるか? 私たちにはどんな問題があるとおっしゃりたいのか?」。

ヴァンス:「貴国を訪問したことがある」。

ゼレンスキー:「一度だけ」。

・ヴァンス:「私は実際に様々なニューズを見て、何が起きているのか知っている。大統領、人々をプロパガンダツアー(propaganda tour)に連れて行く。軍隊に人々を参加させることに問題があったことにあなたは反対か?」

・ゼレンスキー:「私たちは複数の問題を抱えている」。

・ヴァンス:「そして、アメリカ大統領の執務室にやってきて、自国の破壊を防ごうとしている政権を攻撃することが敬意を表する行動だと考えるのか?」。

・ゼレンスキー:「多くの疑問がある。最初から始めよう」。

・ヴァンス:「もちろん」。

■ゼレンスキーがアメリカは「将来それ(外国から攻められる恐怖)を感じるかもしれない」と示唆するとトランプが激怒(Trump erupts when Zelenskyy suggests the U.S. might ‘feel it in the future’

・ゼレンスキー:「第一に、戦争中は誰もが問題を抱えている。しかし、あなた方には素敵な海があり、今は感じていない。しかし、あなた方は将来それ(外国から攻められる恐怖)を感じるだろう。神のご加護がありますよういに」。

・トランプ:「あなたは知らない。あなたは知らない。私たちがこれから何を感じるかなんて言わないように。私たちは問題を解決しようとしている。私たちが何を感じようとしているかなんて言うな」。

・ゼレンスキー 「あなたに対して言っているのではない。私はこれらの疑問に答えている」。

・トランプ:「あなたはそれを指示する立場にないからだ」

・ヴァンス:「それはまさにあなたがやっていることだ」。

・トランプ:「あなたは私たちが何を感じるかを決める立場にはない。私たちはとてもいい気分だ」。

・ゼレンスキー:「影響されていると感じるだろう」。

・トランプ:「私たちはとても良い、とても強いと感じるだろう」。

・ゼレンスキー:「私はあなた方に断言する。影響されていると感じるだろう」。

・トランプ:「あなたは今いい位置にいない。あなたは非常に悪い立場にいることに甘んじている」。

・ゼレンスキー:「戦争が始まってすぐの段階から・・・」。

・トランプ 「あなたは良い立場にいない。あなたは今カードを持っていない。我々と一緒なら、カードを持ち始めることができる」。

・ゼレンスキー:「私はカード遊びをしているのではない。大統領。私は非常に真剣だ」。

・トランプ:「あなたはカード遊びをしているではないか。あなたは数百万の人々の命を使ってギャンブル遊びをしている。あなたは第三次世界大戦を引き起こすようなギャンブル遊びをしている」。

・ゼレンスキー:「あなたは何を言っているのか? 何を言いたいのか?」。

・トランプ:「あなたは第三次世界大戦に賭けている。そして、あなたがやっていることは、多くの人々が言うべきことをはるかに超えてあなたを支援してきたこの国という国に対して、非常に失礼なことだ」

・ヴァンス:「一度でも感謝を述べたことがあるか?」

・ゼレンスキー:「多くの機会で。本日も」。

・ヴァンス:「ノー。今回の会談の全体を通して言っていない。あなたは昨年10月にペンシルヴァニア州に行き、私たちのライヴァルの候補者のために選挙活動を行った」。

・ゼレンスキー:「いいえ、していない」。

・ヴァンス:「アメリカ合衆国と、あなたの国を救おうとしている大統領に感謝の言葉を述べるように」。

・ゼレンスキー:「どうかもう止めて欲しい。あなたは戦争について、何か声を荒げたら・・・」。

・トランプ:「彼は声を荒げてなどいない。大声で話していない。あなたの国が大きな困難、問題の中にあるのだ」。

・ゼレンスキー:「答えても・・・」。

・トランプ:「いやいや、あなたは既に多く話している。あなたの国が大きな困難、問題の中にある」。

・ゼレンスキー:「分かっている」。

・トランプ:「あなたは勝てない。あなたはこの戦争に勝てない。私たちのおかげで、あなたは無事に切り抜けられる可能性が大いにある」。

・ゼレンスキー:「大統領、私たちは国に留まり、強くあり続ける。戦争が始まった当初から、私たちは孤独だった。そして、私たちは感謝している。私はありがとうと感謝を述べた」。

■トランプはゼレンスキーに対して停戦を受け入れるように求める(Trump demands Zelenskyy accept a ceasefire

・トランプ:「もしあなた方が私たちの供与した軍事装備を持っていなかったら、この戦争は2週間で終わったことであろう」。

・ゼレンスキー:「3日間だ。私はプーティンからその言葉を聞いた。3日間だ」。

・トランプ:「それよりも短かったかもしれない。このようなビジネスをするのは非常に難しいことだ」。

・ヴァンス:「ただありがとうと述べるべきだろう」。

・ゼレンスキー:「私はこれまで多くの機会で述べてきた。ありがとうとアメリカ国民に対して述べてきた」。

・ヴァンス:「意見の相違があることを受け入れ、自分が間違っているときにアメリカのメディアを使って争うのではなく、その意見の相違を訴訟について徹底的に話そうではないか。私たちは、あなたが間違っていることを知っている」。

・トランプ:「しかし、アメリカ国民が、今何が起きているのかを知るのは良いことだと私は思う。とても重要なことだと思う。だからこそ私はこうした話を長い間続けてきた。あなたは感謝しなければならない」。

・ゼレンスキー:「私は深く感謝している」。

・トランプ:「あなた方はカードを持っていない。あなた方はそこに埋もれている。人々は死んでいる。兵士は不足している。停戦はとてもよいことだ。そしてあなた方は私たちに『停戦は望んでいない。停戦は望んでいない。私は進みたい。そしてこれを望んでいる』と言う。よろしいか、もし今すぐ停戦が実現できるなら、そうするべきだ。そうすれば銃弾が飛び交うのを止め、兵士が殺されるのを止められる」。

・ゼレンスキー:「もちろん、私たちは戦争を止めたいと望んでいる。しかし、私があなたに申し上げたように、保証(guarantees)が必要だ」。

・トランプ:「あなたは停戦を望まないと言うのか? 私は停戦を望む。なぜなら、合意(agreement)よりも早く停戦が実現するからだ」

・ゼレンスキー:「停戦について国民に聞いてみては、彼らがどう考えるか」。

・トランプ:「それは私との話ではない。それはバイデンという男との話だ。彼は賢い人間ではない」。

・ゼレンスキー:「彼はあなた方の大統領だった。あなた方の大統領だった」。

・トランプ:「失礼だが、それはオバマ大統領があなた方にシーツを渡し、私がジャヴェリンを渡した時の話だ。私は戦車を全部破壊するためのジャヴェリンを渡した。オバマ大統領はあなた方にシーツを渡しました。実際、オバマ大統領はシーツを渡し、トランプ大統領はジャヴェリンを渡したと発表されている。あなた方はもっと感謝しなければならない。なぜなら、あなた方にはカードがないからだ。私たちがいればカードを持つことができるが、私たちがいなければ、あなた方にはカードがないということになる」。

■トランプはプーティンが自分を尊敬している、それは第一次政権についての捜査のためだと発言(Trump says Putin respects him due to the investigations of his first term

・ヴァンス(記者たちからの質問を再開):「彼女はロシアが停戦を破ったらどうすると質問している」。

・トランプ:「もし何かあったらどうする? 今あなたの頭の上に爆弾が落ちたらどうする? いいだろう、もし彼らがそれを破ったら? 分からない、彼らはバイデンとの約束は破った、なぜなら彼らはバイデンを尊敬していなかったからだ。彼らはオバマを尊敬していなかった。彼らは私を尊敬している。言っておくが、プーティンは私と一緒に大変な目に遭った。彼は偽りの魔女狩り(phony witch hunt)を経験した。・・・私が言えるのはこれだけだ。彼はオバマやブッシュとの取引(deals)を破ったかもしれないし、バイデンとの取引を破ったかもしれない。彼はそうしたかもしれない。おそらくそうした。何が起こったのかは分からないが、彼は私との取引を破らなかった。彼は取引をして合意を取り付けたいのだ。あなた(ゼレンスキー)が取引できるかどうかは分からない」。

「問題は、私があなた(ゼレンスキーに向かって)にタフガイ(tough guy)になる力を与えたことだ。アメリカなしではあなたはタフガイにはなれないと思う。あなたの国民は非常に勇敢だ。しかし、あなたは取引をするか、私たちは出て行くかだ(But you’re either going to make a deal or we’re out)。そして、もし私たちが出て行ったら、君たちは戦うことになる(And if we’re out, you’ll fight it out)。いい結果にはならないと思うが、君たちは戦うことになる。だが、君たちはカードを持っていない(But you don’t have the cards.)。私たちがその契約に署名すれば、君たちはずっと有利な立場になるが、君たちは感謝の気持ちをまったく示さない( But once we sign that deal, you’re in a much better position, but you’re not acting at all thankful)。それはいいことではない。正直に言うと、いいことではない。

「よし、もう十分見たと思う。どう思う? これは素晴らしいテレビ番組になるだろう。そう言わせてもらう」。

(貼り付け終わり)

(終わり)

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世界覇権国 交代劇の真相 インテリジェンス、宗教、政治学で読む

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