古村治彦(ふるむらはるひこ)の政治情報紹介・分析ブログ

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タグ:NATO

 古村治彦です。

 第二次ドナルド・トランプ政権になり、アメリカは西半球、南北アメリカ大陸支配に対する欲望を隠さなくなった。ヴェネズエラに対しては奇襲攻撃を行い、ニコラス・マドゥロ大統領を拘束した(ヴェネズエラ政府内部の最高クラスに協力網ができていたのは想像できる)キューバに対する支配を明言し、経済制裁を実施している。そして、デンマーク領のグリーンランドの僚友の使途を明確にしている。NATOという集団的自衛権(collective self-defense)に基づいた同盟関係の中で、同盟国同士であるアメリカとデンマークが戦争状態になる場合、他の同盟諸国は、侵略側になるアメリカを自国への攻撃とみなし反撃として、攻撃するのか、大いに懸念される。アメリカが同盟国を攻撃するということはこれまで想定されてこなかった(学術研究としてはそういうシミュレーションはあっただろうが)。「アメリカと同盟関係を結んでも安心できない」ということになれば、同盟関係の意味はなくなってしまう。

 さて、下記論稿では「集団安全保障(collective security)」という言葉が使われている。論稿の著者スティーヴン・M・ウォルトは以下のように書いている。

(引用貼り付けはじめ)

伝統的な集団安全保障は、各国が平和的に意見の相違を解決し、この原則に違反する国を阻止するために協力することを約束することで、パウア・ポリティックス(power politics)を超越すること(to transcend power politics by committing states to settle their differences peacefully and to work together to stop any country that violates this principle)を求めてきた。残念ながら、これは危険な侵略者を容易に特定でき、他の全ての国々がその正体について合意していることを前提としている。さらに、全ての大国が、たとえ自国の利益が直接関わっていない場合でも、強力な侵略者を阻止するために協力する意思があることを前提としている。これは、多大な費用と危険を伴う。必然的に、傍観して他者に問題を処理させたいという誘惑に駆られるプレイヤーもいるだろう。つまり、この集団安全保障のヴィジョンは、世界政治において稀にしか見られない、あるいは全く存在しないレヴェルの信頼と無私の精神(a level of trust and selflessness that is rare to non-existent in world politics)にかかっている。
(中略)

戦争の可能性を低減することを目的とした協定、あるいは共通の脅威を抑止または撃退するために一部の国家が力を合わせる軍事同盟だ(as agreements intended to make war less likely or as military alliances where a subset of states join forces to deter or defeat a common threat)。歴史はそのような例を数多く残している。残念ながら、こうした比較的控えめな形態の集団安全保障でさえ、それほど効果的ではなく、その効果は低下しつつあり、将来の世界は近年よりも危険なものとなるだろう。

(引用貼り付け終わり)

 私たちは良く「集団安全保障」と「集団的自衛権(collective self-defense)」という言葉を目にし、耳にする。スティーヴン・M・ウォルトはこの2つの言葉を区別して使っていない。しかし、これら2つの言葉は厳密に違いがある。「集団安全保障(collective security)」と「集団的自衛権(collective self-defense)」は違う。集団安全保障は、国連などの国際的な枠組みにおいて、侵略を行った国家に対して、加盟国が全体で制裁や軍事行動を行うことを指す。全体で平和維持を目指す。集団的自衛権は、自国と密接な関係ある国、例えば、同盟国が攻撃を受けた場合に、自国が攻撃を受けたと見なし、対処することを指す。同盟国、パートナーの防衛を指す。NATOは集団的安全保障ではなく、集団的自衛権の枠組みということになる。細かい話になってしまうが、これらには違いがあるということを私は知っておくと、報道を見聞きする際に、気を付けるようになる。

 話を元に戻すと、世界の超大国であるアメリカは「やりたい放題(Do whatever you want)」ができ、そこには理屈をつけて「正当化(justification)」することが可能だ。しかし、そうしたことを続けていれば、国力が低下していくと、他国からの離反や反撃を招くことになる。現在でいえば、アメリカとイスラエルはこの「やりたい放題」をやりながら、「世界の平和のため」「自衛のため」という正当化を行っている。しかし、それをいつまでも続けることはできない。世界でアメリカとイスラエルに対する反感の声が高まっており、それを力で抑えられるということはもうできない。

 「アメリカに頼れない」「アメリカを信用できない」という考えが世界に蔓延していけば、現在の国際社会の構造は大きく変化していくことになる。渡したが日々目撃している世界の大きな動きはそのことを示している。

(貼り付けはじめ)

「集団安全保障」は生命維持装置に繋がれている(‘Collective Security’ Is on Life Support

-国際関係の基本概念の1つがこれまでにないほどの危機に瀕している。

スティーヴン・M・ウォルト筆

2025年12月16日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2025/12/16/nato-collective-security-alliances-nato-life-support/

collectivesecurityus001

ドイツ南部のホーエンフェルス訓練場で行われたNATO演習中、アメリカとアルメニアの兵士たちが負傷したとみられる兵士を医療装甲車両から陸軍移動外科病院(mobile army surgical hospitalMASH)に搬送している(2023年9月14日)

脆弱な世界秩序を考えると、「集団安全保障(collective security)」という概念はもはや消滅してしまったのではないかという疑問について考えてしまう。その答えは、この言葉が何を意味するかによって異なる。もし集団安全保障が、世界の複数の主要大国が現状変更のために武力を用いることを放棄し、この誓約に違反する国を阻止するために結束することに同意するシステムを意味するのであれば、それは死んではいない。それは単純な理由からだ。それは、そもそも存在しなかったからだ。

第一次世界大戦後に設立された国際連盟(the League of Nations)に最もよく見られるように、伝統的な集団安全保障は、各国が平和的に意見の相違を解決し、この原則に違反する国を阻止するために協力することを約束することで、パウア・ポリティックス(power politics)を超越すること(to transcend power politics by committing states to settle their differences peacefully and to work together to stop any country that violates this principle)を求めてきた。残念ながら、これは危険な侵略者を容易に特定でき、他の全ての国々がその正体について合意していることを前提としている。さらに、全ての大国が、たとえ自国の利益が直接関わっていない場合でも、強力な侵略者を阻止するために協力する意思があることを前提としている。これは、多大な費用と危険を伴う。必然的に、傍観して他者に問題を処理させたいという誘惑に駆られるプレイヤーもいるだろう。つまり、この集団安全保障のヴィジョンは、世界政治において稀にしか見られない、あるいは全く存在しないレヴェルの信頼と無私の精神(a level of trust and selflessness that is rare to non-existent in world politics)にかかっている。

しかし、集団安全保障には別の定義が存在する。それは、戦争の可能性を低減することを目的とした協定、あるいは共通の脅威を抑止または撃退するために一部の国家が力を合わせる軍事同盟だ(as agreements intended to make war less likely or as military alliances where a subset of states join forces to deter or defeat a common threat)。歴史はそのような例を数多く残している。残念ながら、こうした比較的控えめな形態の集団安全保障でさえ、それほど効果的ではなく、その効果は低下しつつあり、将来の世界は近年よりも危険なものとなるだろう。

しかしながら、過去に存在した比較的現実的な集団安全保障体制は、なぜ現在は生命維持装置に頼っているのかを理解するだけでも、今日、より深く検討する価値がある。

集団安全保障体制の限定的な形態の1つに「安全保障レジーム(security regime)」がある。これは、競争相手が狭く具体的な方法で競争を制限することに合意するものだ。SA​​LT条約やSTART条約といった軍備管理協定(arms control agreements)はその好例であり、これらの措置のいくつかは確かに戦争のリスクをわずかに軽減するのに役立った。しかし、これらの協定は、超大国が数千もの核兵器を製造したり、その威力を高めるために数十億ドルもの資金を費やしたりするのを阻止することはできていない。また、ソ連と西側諸国間の激しい対立に終止符を打つこともなかった。

こうした種類の軍備管理協定の見通しは、参加すべき国の数が増えていることもあって、今日では明るくない。世界は冷戦時代の二極構造(bipolar)ではなく、多極構造(multipolar)となっている。つまり、大国間の軍備管理を機能させるには、中国を巻き込む必要があるということだ。北京、モスクワ、ワシントンを巻き込んだ軍備管理協定を締結するための努力は行われておらず、中国は他の米露2カ国に追いつくまでは軍備制限に関心がない。それどころか、中国をはじめとする一部の国は核兵器を増強しており、ロシアとアメリカはこれに対抗して自国の軍事力を近代化している。さらに、他のいくつかの国も独自の核戦力の取得を検討している。人工知能やサイバー兵器に関するガードレールを設ける取り組みは行き詰まっているが、これは、関係国全てに意味のある制限について合意させることが困難な作業であることを考えると、驚くべきことではない。

集団安全保障の限定的な形態の2つ目は平和維持活動(peacekeeping)だ。2つかそれ以上の交戦国(warring parties)が和平(make peace)を決定した場合、中立の平和維持部隊が派遣され、合意内容を監視し、双方の安心感を与えることになる。しかし、この仕組みは、以前交戦していた集団が真に戦闘を停止し、その決定を堅持する意思がある場合にのみ有効だ。なぜなら、平和維持部隊は通常、再び武装蜂起する国家や軍閥(a warlord)を阻止するには弱すぎるからだ。平和維持活動は有用な手段だが、それだけでは戦争を防ぐことはできない。

集団安全保障の最終形態であり、より正確には「集団防衛(collective defense)」と呼ばれる形態は軍事同盟(a military alliance)だ。共通の脅威に直面している国々は、相互防衛に協力し、脅威となる国家からの攻撃を抑止し、あるいは攻撃を受けた場合には撃退するために軍事準備を調整することで、より安全な体制を築くことができる。同盟は、強力で十分な武装を備えた国家が近隣にあり、現状変更のために武力行使に踏み切る意思があるように見える場合に最も形成されやすいだろう。このような状況では、潜在的な侵略者による脅威は他の国々にとって明確であり、その危険に対抗するために団結する十分な理由となる。この論理は、1949年にNATOが結成された理由、冷戦期にアメリカが日本、韓国、その他のアジア諸国と同盟を結んだ理由、そして第一次湾岸戦争においてイラクをクウェートから追い出すために大規模な連合軍が結成された理由を説明している。

国家が外部からの脅威に対して力を合わせる傾向は、2022年2月のロシアによるウクライナ侵攻後、アメリカとヨーロッパ諸国の多くが結集して支援を行ったことにも表れている。しかし、これはまた、戦争が長引く中で中国と北朝鮮がロシアに多大な支援を提供してきた理由も説明している。ウクライナの事例はまた、集団防衛体制が必ずしも戦争を阻止できる訳ではないことを改めて認識させてくれる。抑止力(deterrence)が機能しないこともあるからだ。

冷戦期には集団防衛協定が非常にうまく機能した。なぜなら、ヨーロッパで武力行使すれば、2つの強力な同盟国間の大規模で破壊的な戦争(a vast and destructive war between two powerful alliances)につながることは、両陣営にとって明らかだったからだ。この悲惨な見通しを踏まえ、両陣営は賢明にも戦闘を回避した。

残念なことに、今日ではどの国が最大の脅威であるか、またそれらにどう対処するのが最善かについて、コンセンサスがはるかに乏しいため、冷戦期と同様の予測可能性と安定性は期待できない。例えばヨーロッパでは、ロシアをかつての帝国を再建し、ヨーロッパ大陸を支配しようとする容赦ない侵略者と見なす国もあれば、そうした警戒的な見方を共有しない国もある。南半球のほとんどの国はロシアを恐れておらず、モスクワとの取引を続けている。また、トランプ政権のロシアに対する立場は毎週のように変化しているようだ。NATOは依然としてウクライナがいつか加盟すると主張してるすが、NATO加盟諸国で自国の兵士をウクライナのために戦い、命を落とすことを望む国は1つもない。

さらに言えば、アメリカの政策立案者たちは、アメリカがアジアにおける中国の力の封じ込め(containing Chinese power in Asia)に集中できるようにするため、ヨーロッパは自らの安全保障に責任を持つべきだとますます確信を深めている。ヨーロッパはインド太平洋地域で戦略的な役割を果たすことについて時折口にするが、そこで変化をもたらすだけの軍事力を持つヨーロッパの国は存在しない。また、ヨーロッパはそうすることに重大な利益を持ってはいない。これは、アメリカとヨーロッパの戦略的利益が乖離していることを意味しており、たとえ同盟が形式上は維持されていたとしても、NATOは必然的に弱体化するだろう。

しかし、中国の台頭と野心は、アジアの近隣諸国、そして言うまでもなくアメリカにも明らかである。しかしながら、バランスをとる連合体を形成する努力は、アメリカの地域政策の不安定さ、多くのアジア経済にとって中国が重要であることから中国との友好関係を維持しようとする姿勢、様々なアジア大国間の対立、そして各国が傍観者となり、他国に対中国対策の重労働を担わせようとする姿勢(each state’s desire to get others to do the heavy lifting against China while they sit on the sidelines)によって阻まれてきた。その結果、危機に際して誰が何をするのかということに関して不確実性が高まり、誤算(miscalculation)の可能性が高まっている。例えば、中国による攻撃があった場合、オーストラリア、日本、アメリカ、その他いくつかの国が台湾を支援する可能性は十分にあるが、一部あるいは全員が傍観者となる可能性もある。つまり、アジアには中国を標的としたバランスをとる連合体が存在するものの、中国による地域覇権(regional hegemony)獲得への試みを抑止するのに十分な一貫性と信頼性を備えていない可能性があるのだ。

最後に、国家が同盟を結ぶのは主に外的脅威(external threats)への対応策だが、こうした取り決めは、国家が同様の価値観、特に自由主義的民主政治体制(liberal democracy)の中核となる価値観を共有している場合により強固なものとなる。残念ながら、かつて西側諸国を一つにまとめていた共通の価値観は消えつつある。冷戦終結時には、自由主義的民主政体こそが未来の潮流だと多くの人が信じていた。しかし、20年近くにわたり自由主義的民主政体は着実に後退を続け、エジプト、ハンガリー、インド、ロシア、トルコ、そしておそらくはアメリカでさえも、独裁者による支配(strongman rule)に基づく政府が台頭している。イギリスはヨーロッパ連合(EU)を離脱し、ハンガリーとスロバキアはEUの多くの原則に反対している。さらに、最近発表されたホワイトハウスの「国家安全保障戦略(National Security Strategy)」は、トランプ政権がEUの自由主義的原則と多くのヨーロッパ諸国政府に積極的に敵対していることを極めて明確にしている。

さらに、ヨーロッパとアメリカは中東情勢をめぐってますます対立を深めている。アメリカは、ガザ地区で大量虐殺作戦を展開するイスラエルに対し、220億ドル以上の追加軍事援助を行った。国際刑事裁判所(the International Criminal CourtICC)がイスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相とヨアブ・ガラント前国防相、そして複数のハマス指導者を戦争犯罪で起訴した際、アメリカは複数の国際刑事裁判所の関係者に制裁を科した。一方、イギリスやノルウェーを含む多くのヨーロッパ諸国は、パレスティナ国家を正式に承認し、イスラエル当局者の戦争犯罪責任を問うことを誓約している。こうした異なる対応のどこに、人権や国際正義への共通の関与があるか? 長年にわたりアメリカの最も緊密な同盟国であり、情報機関のパートナーであったイギリスが、トランプ政権によるカリブ海における小型船舶への違法かつ残虐な攻撃への関与を懸念し、アメリカとの特定の情報共有を停止したことも、示唆に富んでいる。これは小さな問題かもしれないが、どのような行為が正当か、あるいは西洋の核心的価値観に合致しているかについての合意が減少しつつあることのもう1つの兆候だ。

残念ながら、私が言いたいのは、共通の価値観は、勢力均衡(balance-of-power)を理由とした同盟関係を強化する、もしくは加盟諸国が相反する戦略的利益を克服する助けにはならないということだ。

この確かに悲観的な分析から、どのような結論を導き出すことになるか? 3つ提案したい。第一に、より野心的な集団安全保障に未来への希望を託すべきではない。それは過去に一度も機能したことがなく、将来も機能しないだろう。第二に、私たちは依然として、個々の国家が生き残り繁栄するために自国の資源に頼らざるを得ない世界に生きている。しかし、共通の危険に対処するために信頼できるパートナーを持つことで、安全保障を向上させることができないということはない。外交の任務は、こうした危険が何であるかを明らかにし、どのように対応するかについて幅広い合意を形成することだ。残念ながら、現在、このような外交は不足している。

第三に、自国の能力を強化し、強固な同盟関係を築くことは、既存の紛争の解決、ライヴァルとの緊張緩和、あるいは特定のリスクの最小化に向けた真剣な努力を妨げるものではない。こうした課題は、素人による密室取引(backroom deals conducted by amateurs)ではなく、経験と知識が豊富な当局者たちが規律ある透明性のある方法で敵対国と交渉することによって最も効果的に達成される。

しかし、誤ってはならない。集団安全保障へのより現実的なアプローチでさえ、戦争のリスクや、国家がその可能性に備える必要性を排除することはできない。集団安全保障は死んではいないかもしれないが、良好な健康状態にあるとは言えない。

※スティーヴン・M・ウォルト:ハーヴァード大学ロバート・アンド・レニー・ベルファー記念国際関係論教授。Blueskyアカウント:@stephenwalt.bsky.socialXアカウント:@stephenwalt

(貼り付け終わり)

(終わり)

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める

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 古村治彦です。

 アメリカのドナルド・トランプ政権がドンロー主義を基盤として、西半球をアメリカの勢力圏として固める意向を示し、ヴェネズエラ攻撃やグリーンランド領有希望の公表など動きを強めている。そうした中で、カナダはアメリカを脅威と見なし、懸念を深めている。アメリカとカナダの関係について、私たちは深く学ぶ機会を持たない。正直なことを言えば、「どっちも似たようなものだろう」「カナダはフランス語を使用する地域があるな」というくらいのことしか思わない。しかし、考えてみれば、あれだけの長い国境線で接している、アメリカとカナダの関係は改めて知っておくことは有益であろう。

 アメリカは建国してしばらくの間、カナダの領土に対して野心を持っていた。1776年にアメリカはイギリスから独立したが、北方には、カナダが存在した。そこには当たり前のことだがイギリスが存在した。イギリスはアメリカにとって脅威である。従って、アメリカの北方にいるイギリス勢力に懸念を持ち、カナダの領土を欲するということもあった。イギリスの勢力に対する懸念は、アメリカの外交政策の原理原則である、モンロー主義(イギリスの影響力を排除する)に通底する。そうした動きは20世紀に入るまで続いた。カナダが自治領となり、独立国家となることで、アメリカの懸念は減少した。

 今回、トランプ大統領がカナダをアメリカの51番目の州と呼ぶなどの行為から、カナダ側の懸念が高まった。そして、アメリカとカナダの間に歴史的にある緊張関係に注目が集まっている。NATO加盟国であり、G7の一角であるカナダをアメリカが攻撃することは考えにくい。たとえカナダ攻撃の命令が出ても、アメリカ軍は「違法な命令である」として、動かない可能性が高い。しかし、このような緊張関係を生み出してしまったことは、国際関係に大きな影響を及ぼす。アメリカは同盟国でも攻撃するかもしれないという懸念を世界各国に持たせてしまうことは、アメリカの国益にとって大きなマイナスである。そして、それを注視しながらほくそ笑んでいるのは中国とロシアである。

(貼り付けはじめ)

アメリカは再びカナダにとって最大の脅威となっている(The United States Is Once Again Canada’s Biggest Threat

-ドナルド・トランプは北隣国カナダとの伝統的に緊張関係にあった関係を取り戻した。

ケイシー・ミシェル筆

2026年2月3日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2026/02/03/us-canada-threat-trump-carney-history/

ここ数週間、アメリカが国境を強制的に拡大することはない、NATO加盟国が他の加盟国を侵略することはないといった基本的な地政学的事実が、ドナルド・トランプ米大統領によるグリーンランドへの継続的な脅威によって、突如として揺らぎ始めた。カナダのマーク・カーニー首相が最近述べたように、これは「断絶(a rupture)」であり、古い秩序が崩壊し、新しい秩序が生まれようともがく瞬間である。

大西洋横断関係の亀裂に注目が集まっている一方で、その断絶の多くはカーニー首相にとってはるかに身近な問題、すなわち米加関係に集中している。トランプ政権下のワシントンが今や脅威となっていることに、デンマークやグリーンランドだけが突然気づいた訳ではないからだ。カナダもまた、今やアメリカ政府がカナダの主権(sovereignty)だけでなく、カナダという国家そのものを公然と脅かしているのを目の当たりにしている。トランプ大統領自身もカナダを幾度となく脅迫し、アメリカによるカナダ併合を要求し、両国の国境を撤廃すべきだと繰り返し示唆している。これは単なるおしゃべりではない。先週、トランプ政権当局者がアルバータ州の分離独立派と直接会談を開始したことが明らかになった。彼らはアルバータ州をカナダから分離し、アメリカに併合しようと躍起になっている。

カナダをアメリカの51番目の州にするというトランプの脅しを一笑に付した時代はとうに過ぎ去った。新たな現実が突如カナダ全土に波紋を広げている。トランプ政権下のアメリカは、受け入れがたい現実かもしれないが、突如としてカナダにとって最大の国家安全保障上の脅威となった。

カナダ国民はようやくこの現実を受け入れ始めている。しかし同時に、これはカナダが直面するアメリカの危機の、はるかに長く、はるかに根深い部分を浮き彫りにする現実でもある。実際、過去80年ほど続いた米加友好関係、世界最長の国境線は概ね平和裡に保たれ、ワシントンとオタワはおそらく世界で最も緊密な同盟国となったが、もはや時代錯誤(anachronism)、アメリカが北米におけるはるかに広範な拡大の歴史において単に立ち止まっただけの例外的な出来事のように思えるかもしれない。

トランプ政権下のアメリカ合衆国は、むしろ北の隣国を威嚇し、安定した同盟関係よりも野蛮な拡大(brutish expansion)を志向し、カナダを地図から完全に消し去ろうとする、伝統的な立場に戻ろうとしていると言える。この歴史はアメリカ合衆国ではほとんど見過ごされているが、ワシントンが再び信頼できるパートナーになるために、そして再び安定した北アメリカ大陸を見るために、検討する価値がある。

アメリカ合衆国がカナダの領土を欲しがる歴史は、アメリカ合衆国建国初期にまで遡る。1774年、フィラデルフィアで開かれたばかりの大陸会議(Continental Congress)は、カナダ国民に書簡を送り、彼らは「小さな人々(small people)」であると主張し、イギリスの支配を打破するための、芽生えつつある取り組みに加わるよう呼びかけた。この呼びかけには脅迫的な言葉が込められており、カナダ国民は「北アメリカの他の全ての国を揺るぎない友とするのか、それとも根深い敵とするのか」を考えるべきだと述べている。書簡には、もしカナダ人がアメリカ植民地人(American colonists)への参加を拒否した場合、彼らは「征服されて自由になる(conquered into liberty)」だろうと付け加えられていた。

これは決して少数派の立場ではなかった。「大陸の一致した意見は、カナダは私たちの領土でなければならないというものだ」と、後のアメリカ大統領ジョン・アダムズは1776年に書いた。「ケベックは奪取されなければならない」とベンジャミン・フランクリンも同様に、カナダを将来のアメリカ領土と見なしていた。カナダの歴史家マデリーン・ドロハンが明らかにしたように、フランクリンは当時アメリカがイギリス領北アメリカ全域を支配していた状況下で、フランス系カナダ人(当時カナダのヨーロッパ系植民地人口のほぼ全員を占めていた)の強制同化(forced assimilation)、あるいは全面的な追放(outright eviction)を主張した。

もちろん、こうした初期の立場は全て無駄になった。アメリカ軍はケベックへの壊滅的な攻撃を開始したが、戦略のまずさと天然痘の蔓延によって頓挫した。その後のイギリスとの交渉において、フランクリンがカナダを占領しようとした試みも失敗に終わった。アダムズ自身が記したように、「ああ、カナダよ! あの一帯は不幸と恥辱に満ちていたことを私たちは発見した(Alass Canada! We have found Misfortune and disgrace in that Quarter)」ということになる。

しかし、これらの失敗によって、アメリカのカナダに対する計画が終わることはなかった。米英戦争中、アメリカ軍は再びイギリス領カナダを視野に入れ、ある将軍はカナダを「アメリカの一部になる(one of the United States)」だろうと発言した。カナダ併合(Canadian annexation)は、この戦争全体の明確な目標ではなかったかもしれないが、この戦争自体、北アメリカ中部の大部分からイギリスの要塞を追放し、アメリカの拡張主義に対するイギリスの障壁を事実上終わらせたが、アメリカが大陸の覇権へと急速に突き進む、押しつけがましく、奪い取る大国であるというイメージを確固たるものにした。

その現実は、アメリカの大陸帝国主義(United States’ continental imperialism)が頂点に達した19世紀半ばに表面化した。当時、英米共同所有地として管理されていたオレゴン準州をめぐる紛争が続く中、米大統領候補ジェームズ・ポークの支持者たちは、太平洋岸北西部の北緯54度線までの全域に対する主権を放棄するよう英領カナダを説得する手段として、「54か40か、さもなくば戦え!(Fifty-Four Forty or Fight!)」と繰り返し叫んだ。ポークは最終的に全面戦争を諦め、北緯49度線までのアメリカの主権を確保した(その代わりにメキシコの分割に注力した)。それでも、ポークの帝国主義的支持者たちは止まらなかった。「明白な運命(Manifest Destiny)」という言葉の生みの親とされるジョン・オサリバンが書いたように、カナダの領土を含む「神の摂理によって割り当てられた大陸に広がることは、依然として明白な運命である(manifest destiny to overspread the continent allotted by Providence”—including Canadian territory.)」ということになる。

南北戦争(the Civil War)はアメリカを分裂させ、数十万人ものアメリカ人の虐殺を招いたが、それでもアメリカのカナダに対する計画を阻止することはほぼできなかった。戦争終結直後、アメリカはアラスカ購入を確定させ、帝政ロシア(tsarist Russia)から領土を獲得した。しかし、この購入は地政学的な空白の中で行われた訳ではない。購入を主導した国務長官ウィリアム・スワードは、アメリカが支配するアラスカがブリティッシュコロンビア、ひいてはそれ以上の領土を獲得する鍵となると見ていた。「自然は、この大陸全体が遅かれ早かれ、・・・アメリカ合衆国の魔法の輪の中に入るように設計している(Nature designs that this whole continent … shall be, sooner or later, within the magic circle of the American Union)」とスワードは1867年に聴衆に語った。ヴァージニア大学のアラン・テイラーが、この時代に関する傑出した歴史書の中で述べているように、「アメリカ人は(アラスカの)獲得をカナダに対する締め付けとして歓迎した」。彼らがすべきことはただ待つことだけだった。そうすれば、カナダは彼らのものになるはずだったのだ。

しかしながら、カナダ人は異なる方向へと進んだ。アメリカのアラスカ購入は、カナダを分裂させるどころか、主権国家としてのカナダと完全に独立したカナダのアイデンティティの確立に直接つながった。ジョン・マクドナルドをはじめとする指導者たちの指導の下、カナダ人は全国規模の連邦を発足させ、その後数年間で次々と州を新たなカナダ自治領に加えた。アメリカの併合論者(U.S. annexationists)の餌食になるのではなく、カナダは統合を進め、アメリカのさらなる拡大を鈍らせ、150年以上続く独立した国家としての地位を確固たるものにした。

建国の父たち(the Founding Fathers)のカナダに対する領有権主張、北の隣国に対するアメリカの脅威の一貫性、アメリカの脅威に直面したカナダの統合といった要素は全て、ごく最近まで、魅力的な歴史の脚注、より激動の時代を捉えたスナップショットだった。1890年代にアメリカの政治家たちが潜在的な戦争を警告し、1910年代には「カナダのあらゆる場所に星条旗を掲げる」よう求め続け、1930年代にはワシントンがカナダに対する有事の戦争計画を策定したにもかかわらず、カナダの主権に対するアメリカの実際の脅威は大幅に減少した。実際、米加関係は非常に緊密になり、良好な関係は最終的に当然のことと見なされるようになった。ワシントンが維持した最も緊密なパートナーシップは、安定した北アメリカの安全保障体制によってアメリカの世界的な支配力の拡大が可能になり、背景の雑音のようなものへと薄れていった。

そして、全ては崩壊した。トランプのグリーンランドに対する脅しは、カナダに対する脅しと並行して行われてきた。実際、グリーンランド危機のピーク時でさえ、NBCニューズはトランプがカナダへの「密かに関心を強めている(privately ramping up his focus)」と報じ、カナダの地図にアメリカ国旗を掲げた地図を見せたほどだった。さらに、カナダ国民がよく認識しているように、トランプのグリーンランドに関する言説、つまりグリーンランドを守れるのはアメリカだけであり、そもそもデンマークにはグリーンランドに対する権利はないという言説は、カナダの北極圏の島々にも容易に当てはまり得る。その多くはグリーンランドに隣接している。

トランプだけではない。MAGAのイデオローグであるスティーヴ・バノンは、カナダに対するアメリカの宗主権を幾度となく声高に訴えてきた。バノンは最近、「かつてカナダにとって大きな障壁であった北極圏北部が、今や最大の脅威となっている」と述べ、カナダの「弱点(soft underbelly)」だと主張した。さらにバノンは、カナダは「次のウクライナになる可能性がある」と述べた。ウクライナには「アメリカに敵対する人々」が溢れているそうだ。そして、これは北極圏だけではない。今週、『フィナンシャル・タイムズ』紙は、トランプ政権当局者がアルバータ州の極右分離主義者と複数回直接会談したと報じた。彼らはアメリカへの加盟の熱意を隠そうともしていない。

国境を拡大し、近隣の分離主義運動を煽り立てようとする新帝国主義大国(a neoimperialist power)である。これは全て、地域的支配を主張し、近隣諸国を分裂させる手段だ。実際、カナダとウクライナの類似点は、不快なほどに緊密になっている。しかし、カナダ国民は、かつてウクライナ国民であったのと同様に、この事態を黙って受け入れるつもりはない。カナダ国防省は新たな文民・民間人防衛軍(a new civilian defense force)の構想を練り始めており、オタワ政府は1世紀ぶりに、アメリカの侵略への対応をモデル化した軍事演習の計画を開始した。

そしてカナダ当局はついに、そして公に警鐘を鳴らし始めた。元カナダ国連大使のボブ・レイは『グローブ・アンド・メール』紙に対し、カナダに対するアメリカの脅威は「存亡の危機」(U.S. threats against Canada are “existential)に瀕していると語り、元カナダ国防長官はトランプ大統領の行動はカナダを警戒態勢に追い込むことになると述べた。あるカナダの紛争研究者は『ガーディアン』紙に次のように語った。「私たちはアメリカの友好と寛大さ(the friendship and benignness of the United States)に大きく依存してきたのに、突然、その両方が消えてしまった。消滅してしまった。今になってようやくカナダ国民がこの意味を真に理解し始めたのではないかと危惧している」。これはまさに衝撃的な出来事であり、かつて北アメリカに存在していた安定がもはや当然のこととは考えられなくなったことを示している。NORAD(北アメリカ航空宇宙防衛司令部)から砕氷船団、情報収集に至るまで、あらゆるものが突如として未解決の問題となり、カナダの領土保全さえも疑問視されるようになった。

しかし、トランプ大統領は恐らく気づいていないだろうが、カナダはカナダ国外のほとんどの人々が知るよりもはるかに長く、アメリカの計画を撃退してきた歴史を持っている。その歴史は、ここ一世紀よりも今の方がはるかに意味を持つ。それは全て、始まったばかりの断絶(a rupture)のおかげだ。

※ケイシー・ミシェル:ヒューマン・ライツ財団の「クレプトクラシー対策プログラム」の責任者。『アメリカのクレプトクラシー:アメリカはいかにして史上最大のマネーロンダリング計画を作り上げてきたのか(American Kleptocracy: How the U.S. Created the World’s Greatest Money Laundering Scheme in History)』の著者。Xアカウント:@cjcmichel

(貼り付け終わり)

(終わり)

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世界覇権国 交代劇の真相 インテリジェンス、宗教、政治学で読む

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める

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 古村治彦です。

 アメリカとヨーロッパの関係が悪化している。デンマーク領であるグリーンランド領有を目指す発言をドナルド・トランプ大統領や側近たちが行い、ヨーロッパ諸国は不安感を高めている。大西洋を挟み、北アメリカ大陸とヨーロッパ大陸の各国で構成している北大西洋条約機構(NATO)は旧ソ連と衛星諸国と対峙するために結成され、その後は、対ロシア同盟となっているが、NATOの枠組みにも緊張感が漂っている。アメリカが米軍をグリーンランドに派遣するとなると、デンマークの主権が侵害されることになり、NATOはアメリカと交戦状態になる。こうした事態はだれも望まないが、第二次ドナルド・トランプ政権の「狂人戦略」はヨーロッパをざわつかせている。

 こうした中で、ヨーロッパ諸国の中の大国であるドイツのフリードリヒ・メルツ首相は、アメリカとヨーロッパとの関係改善を訴えた。BRICS(ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカ)を中核とし、その他の様々な枠組みで重層的につながっている、西側以外の国々(the Rest、ザ・レスト)と西側諸国(the West、ジ・ウエスト)の分裂構造に世界はなりつつある。そうした中で、西側諸国の中で分断が起きることは、ヨーロッパ諸国にとって望ましくない。また、トランプ大統領が、ヤルタ2.0体制(米中露)、G2体制(米中)に傾きかねないとなると、ヨーロッパは孤立してしまう可能性がある。

 トランプのヴェネズエラ攻撃とグリーンランド領有希望は、「アメリカ・ファースト外交」に基づくドンロー主義(西半球を影響圏・勢力圏とする)の表れである。アメリカが世界の管理者であることを辞め、西半球を押さえるだけで良いとなり、他は中国(とロシア)に任せるとなれば、ヨーロッパは「捨てられる」ということになる。アメリカと中露を天秤にかけて、アメリカを選ぶということになるだろうが、アメリカは既に世界帝国であるための力を失っている。以下の記事で、メルツ首相は、「中国軍の伸長」に対抗するために、ヨーロッパとアメリカは協力しなければならないと述べている。ここがポイントである。ヨーロッパ連合(EU)とNATOにとって、中国は主敵とはならない。あくまでもロシアである。それでも、ヨーロッパ諸国が国防予算の増額を行い、アジア地域に出てくるというのは、アメリカの意向に沿うための動きである。しかし、トランプはヨーロッパのそうした意向をあっさり無視してしまう。トランプは中国と対立を深刻化させる意向はない。ヨーロッパと日本がトランプと側近たちの意向を「忖度」して、勝手にいきり立っているということになる。

 ヨーロッパの不安感は理解できる。世界構造の転換で自分たちが世界の中心でなくなる時代が再びやってくる。その対処の苦痛を和らげたいということもあるだろう。しかし、世界は大きく動いている。

(貼り付けはじめ)

ドイツ首相フリードリヒ・メルツがアメリカの指導力が「失われた」と発言し関係の修復を求める(German Chancellor Merz says US leadership ‘lost,’ calls for repair of relations

ロウラ・ケリー筆

2026年2月13日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/policy/international/5737485-us-leadership-challenged-merz/

ドイツ首相フリードリヒ・メルツは金曜日、世界舞台におけるアメリカの指導者としての役割は「失われた(lost)」と発言し、ドナルド・トランプ大統領に対し、中国とロシアの脅威に対抗するため、大西洋関係(the transatlantic relationship)の修復を促した。

「アメリカの指導力の追求は挑戦を受け、おそらくは失われつつある」と、メルツ首相はミュンヘン安全保障会議に集まった各国の首脳、政治家、軍指導者たちに語った。

メルツ首相の演説は、先月スイスのダヴォスで開催された世界経済フォーラムで、カナダ首相マーク・カーニーがアメリカ主導の世界秩序の「断絶(rupture)」を指摘した発言と重なるものだった。カーニー首相は、トランプ大統領によるグリーンランド占領の脅し、制裁措置としての関税、そしてNATOへのアメリカの関与に関する疑念をめぐるヨーロッパの不安に訴えた。

しかし、カーニー首相が米中両国による卓越に挑戦するため、新たな中堅国連合(a new coalition of middle powers)の結成を呼びかけている一方で、メルツ首相はトランプ大統領に対し、中国軍の伸長に対する最善の防衛策として、ヨーロッパとの関係修復を訴えた。

メルツ首相は、「大国間競争(great power rivalry)の時代では、アメリカでさえ単独では立ち向かえないだろう」と述べ、ドイツ語から英語に切り替え、ワシントンとアメリカ国民に直接語りかけた。

メルツ首相はアメリカとヨーロッパの関係修復を訴え、NATOへの共通の関与こそが脅威に対する最善の防衛策だと述べた。

メルツ首相は「親愛なる友人の皆さん、NATOに加盟することは、ヨーロッパの競争優位性であるだけでなく、アメリカの競争優位性(competitive advantage)でもある。だからこそ、共に大西洋間の信頼を修復しよう」と述べた。

メルツ首相はまた、アメリカが敵対的になる中でヨーロッパ諸国が連携するよう訴え、「新たな大西洋横断パートナーシップ」を求めた。

メルツ首相は、2025年のミュンヘン安全保障会議におけるJD・ヴァンス副大統領の演説に言及し、大量移民に直面してヨーロッパが報道の自由を抑圧し、歴史的文化を失っていると厳しく批判した。

メルツ首相は、「ヨーロッパとアメリカの間には分断が生まれており、JD・ヴァンス副大統領は1年前のミュンヘン安全保障会議でこのことを非常に率直に述べており、彼の言う通りだった」と述べた。

メルツ首相は「アメリカにおけるMAGAのような文化間の争いは、私たちの問題ではない。言論の自由は、人間の尊厳と私たちの基本法に反する言葉が発せられた時点で終わる」と続けて述べた。

メルツ首相は「私たちは関税や保護主義ではなく、自由貿易を信じている。気候変動に関する協定や世界保健機関(WHO)の方針を堅持するのは、地球規模の課題は共に解決しなければならないと確信しているからだ」と続け、トランプ大統領の政策に言及した。

「私たちのパートナーシップに未来があるのであれば、新たな方法でそれを築き上げ、それを理性的に理解する必要がある」。

マルコ・ルビオ国務長官は今週末、ミュンヘン安全保障会議で演説を行う予定だ。演説の予告として、ルビオ長官は記者団に対し、「私たちが目指すところ、彼らと共に目指すところ」について説明すると述べた。

ルビオ長官は「古い世界は過ぎ去った。率直に言って、私が育った世界は過ぎ去った。私たちは地政学の新たな時代に生きている。私たち全員が、そのあり方、そして私たちの役割とは何かを再検討する必要があるだろう」と述べた。

(貼り付け終わり)

(終わり)

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シリコンヴァレーから世界支配を狙う新・軍産複合体の正体 
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『トランプの電撃作戦』
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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める

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 古村治彦です。

 ドナルド・トランプ大統領が2025年12月に発表した「国家安全保障戦略(National Security StrategyNSS)」は、アメリカによるヴェネズエラ攻撃が実施されたことで、注目度を増している。この文書にはアメリカの「西半球回帰」、モンロー主義(ヤンキー帝国主義)への回帰が明らかになった。第二次トランプ政権の外交政策が「国家安全保障戦略」を基盤にして進むとすれば、この文書に注目するのは当然のことだ。

 「国家安全保障戦略」において、トランプ政権はヨーロッパの「文明の消失(civilizational erasure)」を危惧している。トランプ政権が考える「ヨーロッパ文明」は「白人文明」であある。非白人、非キリスト教徒の移民を多く受け入れることでヨーロッパらしさがなくなっているということである。また、ヨーロッパが安全保障分野において、アメリカに「ただ乗り(free-ride)」をしているという批判も継続している。更には、厳しい規制のために創造性と工業力が低下したために経済力の低下も起きているという指摘もしている。NATO加盟諸国は防衛費の対GDP比を5%(そのうちの1.5%はインフラ整備)にまで引き上げるとしている。アメリカ(トランプ政権)はヨーロッパに対して、移民を制限し、防衛費の増額を求めている。アメリカはヨーロッパに対して厳しい要求を突きつける形で介入をしている。

 こうした中で、ヴェネズエラ攻撃が発生した。また、トランプ大統領自身からグリーンランドについての言及もあった。ヨーロッパ諸国は対応に苦慮している。ヴェネズエラ攻撃に関しては主語を曖昧にして、「国際法は遵守されるべき」と生ぬるい対応をしていれば良いが、グリーンランドで何か起きれば、そうも言っていられない。ヨーロッパ諸国のほぼ全てがNATOに加盟し、集団的自衛権の義務を負う。アメリカ軍がグリーンランドに侵入すれば、当事国デンマークと共にアメリカ軍の排除に出動しなければならない。対ソ連(現在は対ロシア)の防衛同盟であったはずのNATOという枠組みで、そのリーダーであるアメリカが脅威となるという異常事態である。

 トランプのアイソレイショニズム(Isolationism)は、アメリカを国内に戻すということではなかった。世界の警察官(World Police)の役割を放棄して、自身が切り取り強盗になるということであった。そして、全ては「アメリカ・ファースト」という言葉をお題目にして、正当化するというものであった。私は「国家安全保障戦略」を読んで、「何でもアメリカ・ファーストと言えば万事OK、全てがうまくいくと思っているな」という感想を持った。「アメリカ・ファースト」は「世界の諸問題ではなく、アメリカ国内の諸問題を解決することを優先する」ということであったはずだ。トランプ本人が「トランプ革命」を裏切った。いつの時代も革命の指導者が革命を裏切るものであるがそれが世の習いというものだろうか。

(貼り付けはじめ)

ドナルド・トランプ大統領の「国家安全保障戦略」は西側諸国の崩壊に向けた青写真だ(Trump’s National Security Strategy Is a Blueprint for the Demise of the West

-ホワイトハウスの政策は一貫性に欠けるかもしれないが極めて危険だ。

ハワード・フレンチ筆

2025年12月11日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2025/12/11/trump-national-security-strategy-blueprint-west-demise/

かつて、アメリカの著名な保守派の人物たちは、西ヨーロッパの同盟諸国に対する数々の使い古された不満に固執していた。

冷戦期のアメリカのイデオローグたちによれば、ヨーロッパ諸国は過剰な税金を課し、その資金を過度に手厚い社会保障制度に費やし、それがヨーロッパを弱体化させ、技術革新と成長を阻害しているという。ヨーロッパは、かつて資本主義の砦であった自由で競争的な市場の精神を放棄し、着実に、しかし幾分静かに、社会主義の行き詰まりへと突き進んでいるという警告が頻繁に発せられた。

少なくともリチャード・ニクソン大統領の政権時代まで遡る、もう一つの定型的な不満は、ヨーロッパが慢性的に自国の防衛費を不足させているというものだ。これは、ヨーロッパ、ひいては西側諸国自身を、最大の存亡の危機であるソ連から守るために設計された、アメリカによる国防総省への多額の支出(予算)にただ乗り(free riding)しているだけなのだ。

ヨーロッパに対するこうした古くからの不満の一部、例えばヨーロッパ大陸の防衛費が倹約的だとされる点などは、ドナルド・トランプ米大統領政権が先週発表した新たな国家安全保障戦略にも依然として残っている。しかし、多くの評論家たちが指摘するように、この文書は共和党の世界観を数十年ぶりに抜本的に刷新するものだ。ヨーロッパに関する主要な前提に関して言えば、ほぼ全てが、近年の共和党の主要人物―ニクソン元大統領、ロナルド・レーガン大統領、そしておそらく1964年の大統領選挙で落選した超保守派のバリー・ゴールドウォーターでさえも―が認識できないほどに歪められている。

ロシアがアメリカとヨーロッパにとって共通の安全保障上の大きな懸念事項であるという前提は、ほぼ完全に消え去った。これは主に省略や行間から読み取れる情報を通して明らかだが、トランプ大統領が今年、アメリカの外交政策をモスクワに有利な方向に転換しようとした数々の行動からも見て取れる。そして、このことを最もよく表しているのはロシア自身だ。ロシアは、ワシントンの方針転換の中で、自らの幸運を信じられないかもしれない。ロシアのメディアは即座に、ワシントンの「国家安全保障戦略」はロシア自身の世界観と概ね一致していると断言した。

ウクライナで進行中の戦争が2022年のロシア侵攻によるものでなければ、これは別問題だろう。しかし、トランプ政権の安全保障関係者たちがロシアの拡張主義に関心を示していないという事実は、トランプとその顧問たちがまだ明確に表明する勇気も率直さも持ち合わせていない、真に急進的な何かを示唆している。

誤解のないようにしよう。ホワイトハウスの新たな戦略文書は、西洋―少なくとも第二次世界大戦以降、世界が西洋という言葉で理解してきたもの―の崩壊を企てる青写真であり、その出発点は、ヨーロッパとアメリカの間に緊密に結びついた共通の利益である。

トランプのシナリオは、名目上は白人社会が有色人種、つまりかつて熱狂的な白人パニック小説のジャンルを席巻した黒人、褐色人種、黄色人種の大群によって徐々に乗っ取られていくという暗い幻想を描いている。これは、1920年代の人気作家ロトロップ・ストッダードのような人物に最もよく例えられる。ストッダードは、影響力のある著書『白人の世界至上主義に抗う有色人種の高まる潮流(The Rising Tide of Color Against White World-Supremacy)』の中で、「有色人種の移民は普遍的な危機であり、白人世界のあらゆる部分を脅かす(colored migration is a universal peril, menacing every part of the white world)」と記している。(ストッダードへの薄っぺらな言及は、20世紀で最も高く評価されているアメリカ小説の一つ、F・スコット・フィッツジェラルドの『グレート・ギャツビー(The Great Gatsby)』にも見受けられる。)

一方、トランプの「国家安全保障戦略」は、移民によってヨーロッパはもはやヨーロッパではなくなる危機に瀕しており、それは明らかに白人によって定義されることを意味すると警告している。これがこれほど重要な文書に含まれるに値する理由は、トランプにとって、アメリカとヨーロッパが共に「白人のままでいる(“remain” white)」ことが、緊密な同盟関係を維持するための根本条件だからだと直感的に理解できる。言い換えれば、トランプにとって、白人であることへのこだわりを維持することは、長きにわたり普遍的かつ疑問の余地なく用いられてきた「西洋(the West)」という呼称に値し続けるための条件なのだ。

アメリカ政府の白人性への執着は憂慮すべきものだが、トランプ政権の政策に少しでも一貫性があると想像するのは間違いだろう。非白人移民の流入が主な原因でヨーロッパがそのアイデンティティを失う危険に晒されていると警告するトランプの発言には、あまりにも明白な論理的欠陥があり、問題となっているのは人種問題だけではない、むしろ根底には、おそらくもっと深刻な別の問題が潜んでいることを示唆している。

この欠陥は、アメリカの移民率をヨーロッパの主要国や最も裕福な国々の移民率と比較すると明らかになる。そうすることで、ヨーロッパがこの点で際立っているわけではないことが分かる。

ドイツの人口の約19%は移民であり、これは米国の15%をわずかに上回っている。これは、アンゲラ・メルケル首相時代にドイツの人口減少を冷静に評価した結果と言えるだろう。メルケル首相の在任中、ドイツは中東の破綻国家シリアから数十万人の人々を受け入れた。これほど多くの新規移民を受け入れるには、必然的に文化的な適応が必要となり、受け入れ側の住民と移民の双方にストレスをもたらす。しかし、多くのドイツ有権者が少なくとも一時的には大規模な移民受け入れに反対しているとはいえ、シリア人などの流入が、ドイツの深刻な人口減少、高齢化、そしてそれに伴う労働力不足(crisis of population decline, aging, and the associated problem of too few workers)という危機を食い止めることができれば、歴史はメルケル首相の政策を寛大に評価することになるかもしれない。

ヨーロッパの他の二大大国フランスとイギリスの外国生まれの人口は、それぞれ全人口の約14%と16%で、アメリカ合衆国とほぼ同程度だ。挙げた3つの例のいずれも統計的に例外的な数値ではないという事実は、ヨーロッパが自らの人種的抹消に向かって急速に進んでいるというトランプの見解を明確に反証している。そして、はっきり言って、アメリカ合衆国もそうではない。

ヨーロッパの国防費に対するアメリカの不満も同様に根拠に乏しい。『ワシントン・ポスト』紙の最近の論説が指摘したように、アメリカ合衆国はヨーロッパ諸国に対し、GDPの5%を国防費に充てることを要求しているにもかかわらず、2025年度にGDPの3%を国防費に充てるという基準をかろうじて上回る見通しだ。

ヨーロッパが何らかの形でアメリカの先導に従うべきだという考えは、ヨーロッパの生活水準がトランプ政権下のアメリカよりも高いという現実、そして今日多くのヨーロッパ諸国が、大西洋を挟んだ新たな曖昧な長年の同盟国であるアメリカよりも、より活気に満ちた民主政体国家であると広く認識されているという事実によっても裏付けられていない。

何が起こっているのかをより深く理解するには、トランプが2016年の政権獲得当初、外国人嫌悪と人種・民族に基づく脅しを主要な戦術として用いたことを思い出す必要がある。アイデンティティ問題で多数の有権者を煽動することは、支持を集める確実な手段であるだけでなく、近年のいかなる前例からも大きく逸脱する彼の政策要素から目を逸らす効果的な手段でもあった。

これは、トランプのヨーロッパに対する真の狙いを示唆しているように思われる。それは、より大規模で広範な急進的な保守政策を支持することであり、人種に基づくナショナリズムはその槍の先ではあるものの、単なる一要素に過ぎない。

事実、トランプ自身も、国家安全保障声明において、ヨーロッパにおける極右政党の推進に対するワシントンの関心を表明することで、このことを自ら明らかにしたのだ(不器用な表現だと言いたいところだが)。トランプが人種的排外主義に訴えたことは、ヨーロッパの論評家たちから困惑と憤りを招いたが、それほど驚くことではなかった。なぜなら、これらは既に長らく彼の国内政治の中核を成していたからである。

トランプはこれまでもヨーロッパ諸国の国内政治に介入しようと試みてきたが、これほど大胆な介入はかつてなかった。ヨーロッパ大陸の極右勢力への全面的な協力を明確かつ公式に表明したのだ。極右勢力の政党の多くは、反ユダヤ主義に加担し、ファシズムに影響を受けている。このような大胆な介入は、ヨーロッパの多くの方面から激しい抗議を引き起こしている。

もしトランプがこれほどまでに急進的な政治転換に基づく政策を実行に移すならば、そして何よりも、非常に過激な見解を声高に推進してきたJD・ヴァンス副大統領のような人物が後継者となるならば、こうした展開は単なる白人性の強調にとどまらず、古い西洋の終焉を正式にもたらすことになるだろう。

アメリカ独立戦争中、ベンジャミン・フランクリンは「私たちは私たち自身の自由を守ることで、彼ら(ヨーロッパ人)の自由のために戦っているのだ」と述べ、フランスなどのヨーロッパ列強に支援を訴えた。

もちろん、西側諸国の民主政体の記録には欠点がつきものだ。しかし、自由を中心とする共通の価値観というこの理念こそが、アメリカとヨーロッパ諸国の同盟関係を支えてきた核心であり続けた。トランプがこれまで以上に露骨に権威主義(authoritarianism)を信奉する中、アメリカがこの価値観から乖離していることこそが、世界が「西側(the West)」と呼ぶものの常識を最終的に覆す可能性がある。

もしフランクリンが今日生きていたら、彼は自分の定式を逆転させ、「ヨーロッパ人は私たちの自由を守ることで、アメリカ人が自らの自由を守るよう鼓舞することを望んでいる」と表現したかもしれない。

※ハワード・フレンチ:『フォーリン・ポリシー』誌コラムニスト。コロンビア大学ジャーナリズム大学院教授。長年海外特派員を務めた。最新作に『第二の解放:エンクルマ、汎アフリカ主義、そして最高潮の世界的な黒人性(The Second Emancipation: Nkrumah, Pan-Africanism, and Global Blackness at High Tide)』がある。Blueskyアカウント:@hofrench.bsky.socialXアカウント:@hofrench

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 古村治彦です。

※2025年3月25日に最新刊『トランプの電撃作戦』(秀和システム)が発売になりました。是非手に取ってお読みください。よろしくお願いいたします。
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 以下のスティーヴン・M・ウォルトの論稿は、ヨーロッパ諸国に向けた内容であるが、日本にとっても参考になる内容である。特に、現在、トランプ関税で厳しい交渉を続けている赤澤亮正経済再生担当大臣に読んでもらいたい内容だ。

 第二次ドナルド・トランプ政権との交渉を行う際には、アメリカの利益と自国の利益に配慮しつつ、引きすぎてはいけない。あまりにも過剰な要求をしてくるのであれば、交渉材料を持って、アメリカに抵抗する。引きすぎた時点で、トランプ政権は与しやすい相手と見て、さらに過大な要求をしてくる。逆に、強く出つつ、妥協をすれば、骨のある相手ということで、一定の配慮をする。付け入られないようにすることが重要だ。赤澤大臣は短期間に何度も日米間を往復し、ワシントンでの交渉に臨んでいる。妥協は成立していないようだが、それだけタフな交渉をしているのだろうと考えられる。

 ヨーロッパ諸国が中心となっているNATOでは、トランプ政権の要求を受け入れて、国防負の対GDP比5%実現を発表した。これは何とも解せない話だ。ヨーロッパの仮想敵(既に仮想ではないだろうが)はロシアだ。ロシアを恐れるあまりにこのようなことになったと考えられるが、そもそも、GDPで見ても、国防費で見ても、ヨーロッパはロシアを大幅に上回っている。フランスもイギリスも核兵器を保有している。ロシアを過剰に恐れる必要はない。ロシアとの関係を少しでも改善すればそれで済む話だ。ヨーロッパ諸国は国防費の対GDP比5%などやってしまったら、社会が大きく混乱し、不安定となる。それこそ、ローマ帝国は過剰な軍事費負担のために衰亡したではないか。その轍を踏むことになる。
 私はここまで書いて、ヨーロッパが恐れているのはロシアではないのではないかと考えついた。ヨーロッパが恐れているのは、「西側以外の国々(the Rest)」の「復讐」ではないかと考えた。日本人から見れば、今更そんなことは起きるはずはないと考えるが、ヨーロッパが500年近くにわたり行った残虐な植民地支配の記憶が、宗主国であったヨーロッパ諸国を苦しめているのではないかと思う。「自分たち(ヨーロッパ)が衰退して、立場が逆転した場合に、彼らはきっと復讐するだろう、なぜなら、自分たちが同じ立場だったらそうするからだ」という思考になっているのだろう。世界構造の大変化、大転換に際し、ヨーロッパはそのような不安感と恐怖に取りつかれているのではないか。
 筆がだいぶ横に滑って脱線してしまった。話を戻す。私は下記論稿を読んで、論稿の要諦は「最善を望み、最悪に備える(Hope for the best; plan for the worst)」であると主張する。そして、これは、外交をはじめとする政治の要諦でもあると思う。是非記憶しておきたい言葉だ。

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ヨーロッパはトランプ大統領にどう対処すべきか(How Europe Should Deal With Trump

大国間政治(great-power politics)を真剣に考えるべき時が来た。

スティーヴン・M・ウォルト筆

2025年5月7日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2025/05/07/europe-trump-us-defense-nato-china-technology/

ヨーロッパは岐路に立たされている。環大西洋安全保障協力(trans-Atlantic security cooperation)の全盛期は過去のものとなり、ドナルド・トランプ政権はヨーロッパの大半を侮蔑、軽蔑、あるいは敵対視(contempt, disdain, or outright hostility)している。少なくとも、ヨーロッパの指導者たちはもはやアメリカの支援と保護を当然視することはできない。最善を望むことはできるが、最悪の事態に備えなければならない(They can hope for the best, but they must plan for the worst)。そしてそれは、世界政治において独自の道を歩むことを意味する。

公平を期すなら、この状況はドナルド・トランプ大統領の責任ばかりではない。仮にトランプ大統領が当選していなかったとしても、大西洋間の関係の根本的な見直しはとっくに終わっていた。地球儀を見れば、その理由を理解できる。アメリカはヨーロッパの大国ではないし、そこに永続的にアメリカ軍がコミットするのは歴史的にも地政学的にも異常なことだ。この種のコストのかかる関与は、明確な戦略的必要性(clear strategic necessity)によってのみ正当化される。アメリカが第一次世界大戦と第二次世界大戦に参戦したのも、冷戦時代にヨーロッパにかなりの兵力を駐留させたのも、この戦略的目的(strategic objective)が主な理由である。

これらの政策は以前であれば理に適っていた。しかし、冷戦が30年以上前に終結し、アメリカの一極時代(the unipolar moment)も数年前に終わった。中国は今やアメリカの主要な大国のライヴァルであり、潜在的な地域覇権国(a potential regional hegemon)である。アメリカはアジアにおける中国の覇権を阻止するために、限りある資源とエネルギーを集中させる必要がある。良いニュースは、現在、ヨーロッパを支配できるほど強力な国はないということだ。ロシアであってもヨーロッパを支配することは不可能だ。これが意味するところは、アメリカはもはやヨーロッパ防衛の負担を負う必要はなくなったということだ。ヨーロッパの人口はロシアの3倍以上、GDPはロシアの9倍であり、NATOのヨーロッパ加盟諸国は防衛費でもロシアを上回っている。もしヨーロッパの潜在的な力が適切に動員されれば、アンクルサム(訳者註:アメリカ)からの直接的な援助がなくても、ヨーロッパはロシアからの直接的な挑戦を抑止し、打ち負かすことができるだろう。

理想的には、アメリカはヨーロッパと協力して新たな分担を交渉し、この移行を可能な限り円滑かつ効率的に進めるべきだ。6月に開催されるNATO首脳会議は、特にアメリカが建設的な役割を果たすことを選択した場合、このプロセスを加速させる絶好の機会となるだろう。

残念ながら、トランプ政権はヨーロッパを貴重な経済パートナーや有用な戦略的同盟諸国とは考えていない。誇張しすぎているかもしれないが、トランプ政権はヨーロッパを、トランプとMAGA運動が拒絶するリベラルな価値観に傾倒する、堕落し、分裂し、衰退する国家の集合体(a set of decadent, divided, and declining states committed to liberal values that Trump and the MAGA movement reject)と見なしている。トランプは、主流派のヨーロッパの政治家たちよりも、ロシアのウラジーミル・プーティン大統領やハンガリーのヴィクトル・オルバン首相のような独裁者との方が安心感があり、政権はドイツのAfDやフランスのマリーヌ・ル・ペン率いる国民連合のような極右グループに共感的だ。トランプはブレグジットを支持し、ヨーロッパ連合(EU)は「アメリカを困らせる」ために設立されたと考えており、ヨーロッパ全体を代表するEU当局者と交渉するよりも、個々のヨーロッパ諸国と個別に交渉することを望んでいる。彼は、グリーンランド併合やカナダをアメリカ合衆国の一部とするという自身の夢を阻害する可能性のある規範や規則を拒否している。そして、トランプが始めた関税戦争にヨーロッパを巻き込むことで、トランプが望んでいるとされる国防費目標をヨーロッパが達成することを困難にしている。

ヨーロッパの観点からすれば、これらは全て十分に憂慮すべき事態だが、ヨーロッパの指導者たちはトランプ政権の根深い無能さも受け入れる必要がある。混沌とした貿易戦争はこの問題の最も明白な具体例であるが、政権による不適格な人事、恥ずべきシグナルゲート事件、科学界や大学への継続的な攻撃、ロシアやイランとの素人同然の交渉、そして国防長官室から生じる度重なる混乱も忘れてはいけない。もしヨーロッパの指導者たちが、アメリカは自分たちのやり方を理解していると思い込み、アメリカの先導に従うことに慣れきっているのであれば、今こそ考え直す時だ。

それでは、彼らはどうすべきだろうか?

もちろん、ヨーロッパの人々が私の助言を無視するのは自由だが、もし私が彼らの立場だったら、第一に、

現在の問題の責任をワシントンに明確に負わせることから始めるだろう。彼らはアメリカと争うつもりはなく、協力的な精神で新たな安全保障・経済協定について交渉することには喜んで応じるということを強調すべきだ。しかし、ワシントンが戦いを挑むことに固執するのであれば、ヨーロッパの利益を守るためならどんな犠牲を払っても構わないという覚悟があることを明確にすべきだ。

第二に、もしヨーロッパ諸国が非友好的な米政権と対峙しなければならないのであれば、声を合わせて、アメリカによる分断工作に抵抗する方がはるかに賢明である。ヨーロッパは、最近のドラギ総裁報告書で提言された経済改革の大半を実施し、反対派加盟諸国が必要な行動を阻止できる拒否権を廃止すべきである。もしこれがハンガリーのような反対派の国をEU離脱に導いたとしても、残りの加盟諸国はより有利な状況になる可能性は高い。

第三に、大国間政治(great-power politics)が復活し、ヨーロッパはより多くのハードパワーを必要としている。これは国防予算の増額という問題ではなく(一部のヨーロッパ諸国は増額を必要としているものの)、ユーロを効果的に使い、アメリカの支援に大きく依存しない持続可能な戦場能力を構築するという問題である。ジェームズ・マティス元国防長官が掲げた「フォー・サーティーズ(Four Thirties)」(30個大隊、30個航空隊、30隻の艦艇を30日以内に配備可能)という目標は良い出発点だが、アメリカの支援に大きく依存しない信頼性の高いヨーロッパ軍を構築するには、それ以上のものが求められる。バリー・ポーゼンが最近『フォーリン・アフェアーズ』誌で警告したように、ヨーロッパは戦後ウクライナにおける費用のかかる平和維持活動に巻き込まれることを避け、必要とされる場所であればどこでも介入できる強力な諸兵科連合能力(developing a robust combined arms capability that can intervene wherever it is needed.)の構築に注力すべきだ。

第四に、アメリカの「核の傘(nuclear umbrella)」がますます信頼できなくなりつつあることから、ヨーロッパは地域の安全保障における核兵器の役割について、真剣かつ持続的な議論を行う時期に来ている。もちろん、この問いにどう答えるかはヨーロッパの人々次第だが、これ以上無視することはできない。私の考えでは、信頼できるヨーロッパの抑止力には、アメリカやロシアの核兵器保有量に匹敵するようなものは必要ない。ヨーロッパの政府高官や戦略専門家がこうした問題について議論し始めていることは朗報である。

第五に、ヨーロッパ諸国は、アメリカが敵対的あるいは信頼できない態度を取り続けるのであれば、自分たちには選択肢があり、中国を含む他国と協力することをワシントンに思い知らせる必要がある。EUは中国との貿易について独自の懸念を持っているが、トランプ大統領がアメリカ国内の関税引き上げを主張するのであれば、北京との経済関係を維持し、場合によっては拡大することが必要かもしれない。このような理由から、EU首脳が7月に北京を訪問することは、ワシントンに自分たちを当然視しないよう念を押すためであるとしても、理にかなっている。

ヨーロッパ諸国はこれまで、たとえ多大なコストがかかったとしても、先端技術分野の重要分野においてアメリカの先導に進んで従ってきた。例えば、オランダはジョー・バイデン政権の要請に応じ、オランダ企業ASMLによる中国への先端リソグラフィー装置の販売を禁止した。また、EU諸国の中には、代替技術よりも安価で優れているにもかかわらず、ファウェイの5G技術を禁止する国もいくつかある。しかし、トランプ政権が他の問題でもヨーロッパに対して強硬な姿勢を崩さないのであれば、ヨーロッパは今後、この種の要求にはるかに慎重に対処べきだ。

最後に、長期的には、ヨーロッパ諸国はロシアとの関係を緩和する方法を模索すべきだ。特にプーティン大統領が依然としてロシアを支配している場合、これは容易なことではないが、現在の深刻な相互疑念、対立、そして混乱の状態は、ヨーロッパにとって利益にはならない。ヨーロッパ諸国のハードパワーが高まり、安全保障が向上するにつれて、各国は双方の正当な安全保障上の懸念に対処するための信頼醸成措置を受け入れる姿勢を維持すべきだ。ヘルシンキ・プロセスやヨーロッパ安全保障協力機構などの過去の取り組みは、ライヴァル国間でも緊張緩和(デタント、détente)が可能であることを私たちに思い出させてくれるものであり、将来のヨーロッパの指導者たちはこの可能性に心を開いておくべきだ。

これは野心的なアジェンダであり、大きな政治的障害に直面するだろう。ヨーロッパの戦略的自立性を高めるための過去の取り組みは常に失敗に終わったが、今日のヨーロッパはこれまでとは全く異なる状況に直面している。アメリカの大学や法律事務所が学んだように、トランプ政権を宥めようとすれば、要求がさらに強まるだけだ。一方、政権に抵抗すれば、他国も追随し、時にはホワイトハウスが自らの立場を再考することになる。今こそそうであることを願うしかない。いずれにせよ、ヨーロッパが自立を維持し、脆弱性を最小限に抑えたいのであれば、アメリカがもはや信頼できるパートナーではなくなった世界に備える以外に選択肢はない。最善を望み、最悪に備えるのだ(Hope for the best; plan for the worst)。

※スティーヴン・M・ウォルト:『フォーリン・ポリシー』誌コラムニスト。ハーヴァード大学ロバート・アンド・レニー・ベルファー記念国際関係論教授。Blueskyアカウント: @stephenwalt.bsky.socialXアカウント:@stephenwalt
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『トランプの電撃作戦』
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世界覇権国 交代劇の真相 インテリジェンス、宗教、政治学で読む

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める

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 古村治彦です。

※2025年3月25日に最新刊『トランプの電撃作戦』(秀和システム)が発売になりました。是非手に取ってお読みください。よろしくお願いいたします。
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 2025年6月21日、ドナルド・トランプ大統領はアメリカ軍に命じて、アメリカ空軍の戦闘機にイラン国内の核関連施設3カ所を攻撃させた。中東情勢は緊迫化を増すが、イランがアメリカを攻撃する力はない。イスラエルに対するミサイル攻撃が反撃の柱になるだろう。アメリカとイスラエルは中東地域において完全な敵役となった。イスラエルのイラン攻撃には、中国やロシアが

ヨーロッパ(ウクライナ)、中東(イスラエル、イラン)ときな臭くなっているが、アジア地域は安定し、世界経済のエンジンとなっている。アメリカのトランプ政権は、日本をはじめとするアジア諸国に防衛費の増額を求めている。日米間では、日本の国防費の対GDP比をアメリカ並みの3.5%にせよと求めたという報道が出た。そして、ついには、5%にせよという無茶苦茶な要求まで出た。現在が1.8%程度だが、その2倍、3倍にせよという要求だ。日本の国民生活や経済のことなど何も考えていない。それは当然のことで、アメリカの属国である日本からは搾り取れるだけ搾り取るのがアメリカの国益だ。正確には、アメリカにとって唯一の「競争力のある」製造業である軍事産業の利益である。現在でも重税で苦しんでいるが、日本国民はさらに増税で苦しめられることになる。
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 アメリカは世界最大の防衛費を誇り、最強の軍隊を保有している。防衛費の対GDP比を見てみると、最近になって減少させている。4%を切って、3%台になっている。防衛費もアメリカにとって重い負担になっている。この負担を他に押し付けようというのがアメリカの魂胆でもある。そのターゲットが日本である。日本を中国に対する「番犬」にしようということになる。米国防総省序列第3位の国防次官(政治担当)のエルブリッジ・コルビーの著書は日本でも翻訳が出ているが、日本に「大軍拡」を求めている。それは中国に対する抑止のためだが、アメリカと中国が直接廠とすることは想定しない。ウクライナやイランに比べて、中国は国際社会における存在感が桁違いだ。そこは伸長にならねばならないが、日本に「汚れ仕事」をやらせることで、いざとなれば、「日本が暴走しただけで、自分たちは関係ない、それどころか、日本は米中両国で抑えねばならない」ということになって、日本は切り捨てられることになるだろう。

日本は戦争をしてはいけない。戦争につながる動きにも敏感にならねばならない。アメリカは日本を戦争に巻き込もうとしている、いや、正確には日本を捨て駒にしようとしている。そもそも防衛費を現在の3倍、4倍ににしたら、国民生活は困窮の度を深める。庶民からはこれ以上搾り取れないとなったら、後は富裕層や大企業から取るしかない。「皆さんが安心して金儲けができるためのショバ代ですよ」ということで、増税することになるだろう。海外に逃げることも許されないだろう。私たちは戦後体制についてよくよく再考しなければならない。
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防衛費GDP比5%要求 米政権、日本含むアジア同盟国に

時事通信 外信部202506220747分配信

https://www.jiji.com/jc/article?k=2025062200115&g=int

 【ワシントン時事】トランプ米政権は日本を含むアジア太平洋の同盟国に対し、防衛費を国内総生産(GDP)比5%に増やすよう要求した。国防総省のパーネル報道官が21日、取材に明らかにした。日本政府は2027年度に防衛費をGDP比2%に引き上げる方針だが、トランプ政権は大幅な積み増しを迫った格好で、日本国内でも増額に関する議論が熱を帯びそうだ。

 パーネル氏は、北大西洋条約機構(NATO)加盟諸国がGDP比5%の防衛費目標を協議していると指摘。「中国の大規模な軍事力増強、北朝鮮の核・ミサイル開発を考慮すると、アジア太平洋地域の同盟国が欧州の水準とペースに迅速に追いつくべきなのは当然だ」と強調した。

 また、「これはアジア太平洋地域の同盟国の安全保障上の利益だ。アジアの同盟国とのより均衡の取れた、より公平な負担分担は米国民にとっても利益となる」と主張。「トランプ大統領のアプローチは、この常識的な考えに基づくものだ」と理解を求めた。

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●「トランプ米政権が日本に防衛費GDP35%要請か 英紙報道、3%から引き上げ」

産経新聞 2025/6/21 06:40

https://www.sankei.com/article/20250621-EVLR2GBOLFIJHE7ABJZUI7V6F4/

【ワシントン=坂本一之】英紙フィナンシャル・タイムズ(電子版)は20日、トランプ政権が日本の防衛費に関し国内総生産(GDP)比で35%に引き上げることを求めたと報じた。日米関係筋は35%への引き上げ要請について「聞いていない」としている。トランプ政権は北大西洋条約機構(NATO)加盟国にGDP5%を求めていて、オーストラリアには35%を要求するなどアジア太平洋地域の同盟国にも増額を求めている。

同紙によると米側は当初、日本の防衛費に関しGDP3%を主張していたが、最近になって増額規模を引き上げて35%を要請。国防総省ナンバー3として政策立案を担うコルビー政策担当次官のアイデアという。

日本側は、71日に米国で予定していた日米外務・防衛担当閣僚による安全保障協議委員会(2プラス2)開催を取りやめたとしている。

コルビー氏は3月、議会の公聴会で日本の防衛費について「少なくともGDP3%を可及的速やかに支出すべきだ」と主張していた。

ヘグセス国防長官は5月末にシンガポールで開かれたアジア安全保障会議(通称シャングリラ対話)で、NATO5%を「新たな模範」としアジア太平洋地域の同盟国にも増額を呼び掛けていた。同会議に合わせて開いた米豪防衛相会談では、オーストラリアに35%への引き上げを求めている。

国防総省のパーネル報道官は20日、アジア太平洋地域の同盟国の防衛費について「中国の大規模な軍事力増強や北朝鮮の核・ミサイル開発を考えると、欧州の防衛費の水準に追いつくよう迅速に対応することは常識的だ」と述べた。

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米、日本に防衛費3.5%要求 反発で2プラス2見送りか―英紙報道

時事通信 外信部202506210839分配信

https://www.jiji.com/jc/article?k=2025062100227&g=int

 【ワシントン時事】英紙フィナンシャル・タイムズ(電子版)は20日、トランプ米政権が日本に対し、防衛費を国内総生産(GDP)比3.5%に引き上げるよう要求したと報じた。もともとの要求は3%だったため、日本側は反発し、7月1日で調整していた外務・防衛担当閣僚による安全保障協議委員会(2プラス2)の開催を見送ったという。

 報道によると、米国防総省ナンバー3のコルビー国防次官(政策担当)が最近、3.5%目標を求めた。要求拡大が日本側の「怒りを買った」とされる。

 7月20日に参院選の投開票が見込まれることも、2プラス2開催見送りの一因となった。日本側は2プラス2開催が参院選に与える影響を懸念した。

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 ロバート・D・カプランと言えば、地政学の専門家として日本でも著書が翻訳されている著名な文化人である。カプランはトランプについて、アメリカ史上初の本を読まない大統領と呼んでいる。そして、本を読まないので歴史の知識もない、だからNATOの解体などを簡単に述べるのだと批判している。NATOは確かに、ナチス・ドイツがもたらした惨禍と第二次世界体制後の冷戦期のソ連の脅威の時代には現実感をもって受け入れられた。しかし、現在ではその存在意義は薄れている。ウクライナ戦争があったではないかという反論もあるだろうが、アメリカや西側諸国が火遊びをしなければ、ロシアを挑発しなければ戦争は起きなかった。カプランはトランプがNATOの歴史的な意義を全く理解していないと述べているが、NATOの意義はどこにあるのか逆に聞きたいほどだ。

ロバート・D・カプラントランプ政権のアプローチは、北米大陸の自給自足的な視点に偏っており、近隣諸国に求める期待などなく、国家間の連携が求められている現代のリーダーシップとは乖離していると指摘している。更に、ヨーロッパは、ロシアの脅威や中東情勢も絡む複雑な背景の中、トランプの施策により軽視されていると感じる面もある。彼が指導者としての歴史的な視点を欠いていることで、ヨーロッパからの期待とアメリカの対応には乖離が生まれている。トランプが主導する政治の中で、NATOの重要性が失われていく可能性があり、その結果としてヨーロッパの安定に悪影響を及ぼす状況が懸念されるとカプランは述べている。

 カプランは「北米大陸の自給自足的な視点に偏っており」と述べているのが重要だ。私はこの点を、最新刊『トランプの電撃作戦』(秀和システム)で、「トランプのモンロー主義」と形容した。トランプと彼を支持するアメリカ人たちはヨーロッパから、そして世界から撤退したいのだ。そして、南北アメリカ大陸を勢力圏にして生きていくということにしたい。世界帝国になるなんてまっぴらごめんということだ。存在意義のないNATOにいつまでも入っていても意味はない。お金の無駄だということになる。それを歴史的な意義を理解できない、本を読まない大統領などと批判するのは愚の骨頂だ。

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トランプの新しい地図(Trump’s New Map

-アメリカ初の本を読まない(post-literate)大統領は地理にだけ頼ることになるだろう。

ロバート・D・カプラン筆

2025年2月25日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2025/02/25/trump-america-panama-greenland-canada-nato-europe-geography/

2011年6月、当時のロバート・M・ゲイツ米国防長官はブリュッセルで予言的な演説を行った。その中で、ゲイツは、アメリカのヨーロッパの同盟諸国に対し、自国の安全保障のために大幅な負担増を始めなければ、NATOはいつの日か過去のものとなるかもしれないと警告を発した。ゲイツ国防長官は、「NATOが合意した国防支出の基準を満たすよう、同盟諸国に対して、非公式にも公式にも、しばしば苛立ちを露わにして促してきた、歴代の米国防長官の中で、自分は最新の人物に過ぎない」と発言した。

当時、NATO加盟28カ国のうち、2006年に誓約したように年間防衛費をGDPの2%以上支出していたのは、アルバニア、イギリス、フランス、ギリシャ、アメリカの5カ国だけだった。この状況が劇的に変化しない限り、「アメリカの政治体制全体(American body politic writ large)」の間でヨーロッパを防衛しようという「意欲は減退していくだろう(dwindling appetite)」とゲイツは語った。

ヨーロッパに変化は訪れたが、おそらくそのスピードは十分ではないだろう。現在、NATO加盟国の3分の2は2%という基準を満たしている。しかし、ロシアのウクライナ戦争やドナルド・トランプ米大統領による同盟諸国への5%への増額要求などを考慮すると、ヨーロッパにはまだ長い道のりが待っている。トランプ大統領は以前からNATOを軽蔑してきた。昨年は、防衛費を増やさないNATO諸国に対しては、ロシアに「やりたい放題(do whatever the hell they want)」を奨励すると発言した。一方、JD・ヴァンス副大統領は、ヨーロッパ連合(EU)がイーロン・マスクのビジネスプラットフォームを規制しようとすれば、アメリカはNATOへの支援を取りやめる可能性があると述べた。

予算配分をめぐる意見の相違は、より深遠な問題を指し示している: トランプやヴァンスのポピュリスト的なレトリックに見られるように、あまりにも多くのアメリカ人が、ヨーロッパを守ることに深い関心を持たなくなっている。

アメリカのヨーロッパに対する態度の変化は驚くべきことではない。NATOは80年近く存続している。情報、経済、空の旅、移民パターン、そしてアイデンティティ自体に影響を与えた急速な技術革新の時代にあってはなおさらだ。

第二次世界大戦直後にNATOが設立された当時、アメリカは世界の製造能力全体(all global manufacturing capacity)の半分以上を占め、世界を支配していた。この数字は、現在では16%にまで減少している。結局のところ、当時のヨーロッパの各都市は空爆で煙を上げており、ヨシフ・スターリンのソ連は西ヨーロッパにとって致命的な脅威として迫っていた。数十年の間に、この力学は進化した。ヨーロッパは、その安全保障の大部分をアメリカが賄い、羨望を集める社会福祉国家を建設し、市民は豊かな生活を享受した。スターリンが死に、西側諸国はソビエトとのデタント(detente)を達成した。ソビエト連邦は後に崩壊した。

NATOが冷戦とロシア帝国主義の再興後の数十年間を生き延びたのは、西側諸国におけるポピュリズム(populism)とアイデンティティ政治(identity politics)の台頭を含むが、NATOが第二次世界大戦と冷戦初期を強く記憶しているか、あるいは記憶している人々とともに育ち、尊敬している人々によって率いられていたからである。しかし、その生きた歴史的記憶(living historical memory)は蒸発しつつある。その過程でアメリカ人は、ヨーロッパ人があまりにも長い間軽視してきた、自国のアイデンティティのもっと古く、古風な側面を再発見した。ヨーロッパは、アメリカが大西洋だけでなく太平洋にも面する大陸であることを常に知っていたが、自らの行動に影響を与えるほどその知識を十分に内面化したことはなかった。

少なくとも20世紀初頭以来、アメリカのアイデンティティは、地理的なものとウィルソン的なものの2つの現象によって形成されてきた。1つは地理的なもので、もう1つはウィルソン的なものである。地理的なものは自明のことのように思えるが、多くの人々(特にヨーロッパのエリート)にとってはそうではない。

アメリカ合衆国の大部分を占める北アメリカの温帯地域は、東海岸沿いの深水港(deep-water ports)や、アパラチア山脈を抜けて広大な大草原の肥沃な土壌に至る航路など、国家として完璧な配分となっている。現在グレートプレーンズ(the Great Plains)として知られる、水不足のグレートアメリカンデザート(the water-starved Great American Desert)は、まさに自然の障壁として出現したが、大陸横断鉄道(a transcontinental railroad)が建設され、ロッキー山脈を抜けて太平洋まで人口を運ぶことができた。地理が、2つの海で外界から隔てられた団結している国家(a cohesive nation)を作り上げ、その内部では多くの問題や可能性が渦巻いており、世界の他の部分は不明瞭なままであった。

しかし、ひとたび太平洋に到達すれば、フロリダとテキサス間のメキシコ湾岸は言うに及ばず、海岸線は1本ではなく2本になる。これによってヨーロッパとアジアの両方に大きな海上連絡路が開かれ、外界との活発な貿易が可能になった。

ここで、アメリカのアイデンティティのもう1つの側面であるウィルソン主義(Wilsonianism)が登場する。これは、アメリカの領土をはるかに超えた場所での自由の達成の実現がアメリカ自体の安全保障にとって不可欠である(seeing the achievement of freedom far beyond U.S. shores as essential to the country’s own security)と考えるイデオロギーの略称である。第28代米大統領ウッドロー・ウィルソンは、第一次世界大戦後にアメリカを国際秩序(an international order)に組み込むことはできなかったが、蒸気船や航空機の登場でアメリカがヨーロッパにかなり近づき始めたちょうどその頃、アメリカが目指すべき目標を作った。ヨーロッパ大陸の大部分に自由と民主政治隊の砦を築くこと(establishing a bastion of freedom and democracy)というウィルソンの理想が実現したのは、第二次世界大戦とその後の混乱を経て、ワシントンが世界有数の大国となったときだった。

戦後、これら全てが明確で望ましいと考えられたが、地理的にはまったく自然ではなかった。アメリカがより良い世界のために払った犠牲についての知識と、ワシントンのヨーロッパのルーツに基づく歴史的親族関係[historical kinship](血や土地よりも哲学的なルーツ)が必要だった。これら全ては必読だったが、エリートたちはそれを当然のこととして受け止めているが、そうすべきではない。80年が経過した今、この伝統は書籍と教育を通じてのみ評価できる。大西洋同盟(the Atlantic alliance)の設立の生きた記憶(lived memory)は消え、冷戦(the Cold War)も人々の意識から消えつつあるからだ。

トランプはこの伝統の継承者(an heir to this tradition)ではない。彼は実際に本を読まない(He doesn’t really read)。彼は読まない(post-literate)のだ。つまり、ソーシャルメディアとスマートフォンの世界に生きているが、表面的にも、物語の歴史の研究(the study of narrative history)に没頭していないのだ。

したがって、トランプは西側諸国の戦後の物語を理解していない。NATOは彼にとって単なる頭字語の集まった単語でしかなく、ナチス・ファシズムとの戦いから生まれた人類史上最大の軍事同盟の意味合いを知らない。彼は、1941年8月にカナダのニューファンドランド沖でフランクリン・D・ルーズベルト米大統領とウィンストン・チャーチル英首相が署名した大西洋憲章(the Atlantic Charter)において、戦後世界に対する刺激的なヴィジョンを示したことや、アヴェレル・ハリマンやジョージ・ケナンなどの偉大なアメリカの外交官や政治家たちによる戦後秩序の構築について、おそらく何も知らない。

アメリカの外交政策エリートは、そのような刺激的な歴史で経験を積んできた。トランプと彼の支持者たちは、おそらくその多くを知らない。そして、テクノロジーの進化により、彼は彼のようなタイプの大統領の最後ではないかもしれない。

トランプは歴史に疎い(ahistorical)ので、彼にとって頼りになるのは地理だけだ(he has only geography to fall back upon)。彼はアメリカを独立した大陸として想像し、グリーンランドやパナマなどの比較的近い場所を、獲得すると誓った場所として認識している。トランプの考えでは、グリーンランドとパナマ運河は、特に北極圏での海軍活動が増えるであろう時代に、アメリカの地理の論理の有機的な延長である。

考慮すべきもう1つの要素は、テクノロジーが地理自体を縮小していることである。これは非常に緩やかであるため、見逃しやすい変化である。世界のある地域の危機は、これまでにないほど他の地域の危機に影響を与える可能性がある。博学で歴史に詳しい人は、この進展をアメリカが世界中で同盟を強化する理由と見なす。しかし、トランプ大統領のより原始的で決定論的な世界観では、永久に紛争が続く閉塞的な世界において、地域的な影響圏(regional spheres of influence)を強化する時なのだ。

トランプが頭の中に置いているであろうと考えられるのは、パナマ運河からグリーンランドまで、カナダがアメリカに従属する広大な北米大陸であるようだ。トランプの神話によれば、明白な運命(Manifest destiny)が今や完成し始めている。かつては北米の温帯地域を東から西まで征服することを意味していたものが、今では北から南まで征服することを意味している。トランプがメキシコ湾を「アメリカ湾」と改名しようとしていることが全てを物語っている。

ヨーロッパにとっては、東のロシアの脅威と、南の中東やアフリカからの移民に対する政治的混乱に脅かされ、弱体化し、分裂が進んでいる。2018年の著書『マルコ・ポーロの世界の復活(The Return of Marco Polo’s World)』の中で私が書いたように、「ヨーロッパが消えるにつれ、ユーラシアは一体化する([a]s Europe disappears, Eurasia coheres)」。ヨーロッパは最終的にユーラシアの勢力システムと融合すると私は説明した。ロシアを中国、イラン、北朝鮮との同盟関係を深めたウクライナ戦争は、この理論を裏付けている。今日の小さな世界では、ヨーロッパはアフロ・ユーラシアの激動から切り離すことができず、トランプの新しい地図の中では価値が下がっている。ウィルソン主義が死ぬと、このようなことが起こる。

長年にわたり、ヨーロッパの人々は、アメリカが中国やその他の東アジア諸国に過剰な関心を寄せていることを懸念してきた。問題はそれよりも深い。トランプ大統領は中国をアメリカと同じように独自の大陸、勢力ブロック(power bloc)と見なしているようだ。トランプ米大統領は中国と貿易戦争(a trade war)をするかもしれないし、しないかもしれない。北京との関係を改善しようとするかもしれない。NATOやヨーロッパ連合(EU)があるにもかかわらず、ヨーロッパが十分に結束していないのとは対照的だ。

トランプはエリートとそのプロジェクトも嫌っている。そして、NATOは究極のエリートプロジェクトだ。NATO加盟国が2011年にゲイツの叱責を真摯に受け止め、もっと早く防衛予算を増額していれば、トランプの今の気持ちは違っていたかもしれない。たとえそうしなかったとしても、少なくともNATO同盟諸国に対して使える比較的小規模なヨーロッパの防衛予算という武器は持たず、トランプの主張は著しく弱まるだろう。

一方、アメリカ初の本を読まない(post-literate)大統領は、1941年にワシントンがヨーロッパを救出して以来、ヨーロッパが直面したことのない課題を示唆している。冷戦と、かつての捕虜だった中欧・東欧諸国がNATOに加盟した冷戦の余波は、将来、平穏な時代として立ちはだかるかもしれない。

※ロバート・D・カプラン:『荒地:永続的な危機に瀕した世界(Waste Land: A World in Permanent Crisis)』の著者。外交政策研究所(Foreign Policy Research Institute)ロバート・シュトラウス・フーペ記念地政学部門長を務める。

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※2024年10月29日に佐藤優先生との対談『世界覇権国 交代劇の真相 インテリジェンス、宗教、政治学で読む』(←この部分をクリックするとアマゾンのページに飛びます)が発売になります。予約受付中です。よろしくお願いいたします。

 ドナルド・トランプの主張は突き詰めれば、「アメリカ・ファースト(America First)」だ。このブログでも何度も書いているが、これは「アメリカが一番!」という単純な話ではない。「アメリカ国内の抱える深刻な諸問題を解決することを最優先しよう」ということであり、「アメリカ国内(問題解決)優先主義」と訳すべき言葉だ。これに関連して、「アイソレイショニズム(Isolationism)」という言葉もあるが、これも「孤立主義」と簡単に訳すのは間違っている。アメリカが完全に孤立することはできない。こちらもやはり「国内優先主義」と訳すべきだ。だから、「アメリカ・ファースト」と「アイソレイショニズム」はほぼ同じ意味ということになる。

 「アメリカ国内優先主義」ということになれば、アメリカが現在、世界中に派遣しているアメリカ軍をアメリカ国内に戻す、世界経営から手を引くということになる。これに困ってしまうのはヨーロッパである。ヨーロッパは第一次世界大戦、第二次世界大戦と20世紀の前半で二度の破壊を極めた戦争を経験した。戦後ヨーロッパは統合と、アメリカによる安全保障への関与という方向に進んだ。ヨーロッパ諸国はお互いが戦わないように、調停者・仲裁役・抑え役・お目付け役としてアメリカを必要とした。そして、対外的には、具体的には、ソ連、そしてロシアに対しては、アメリカ軍の存在を前提とした軍事力の軽度の整備(軽い負担で済んできた)を行ってきた。それが、アメリカが手を引くということになったらどうなるか。ヨーロッパ域内での調和は乱れ、ロシアに対しては足並みが乱れ、各国の判断で、より軍事力を強化する方向に進む国と、ロシアとの友好関係を重視する国に分かれるだろう。

 ヨーロッパは戦後の制度設計をアメリカの存在を前提にして築いてきた。そして、協調が進み、繫栄することができた。しかし、その良い面とは裏腹に、アメリカの力が衰えた場合、アメリカが手を引く場合の備えができていなかった。そして、現在は、アメリカの国力の衰退が現実のものとなっている。アメリカが手を引けばヨーロッパは混乱状態になる。私たちがヨーロッパから学ぶべきことは、アメリカを関与させない、対等な地域統合組織を作ること、そして、それをアジアで実現することだ。時代と状況の変化はここまで来ている。いつまでも、世界一強のアメリカ、超大国のアメリカということをのんきに信じ込んでいる訳にはいかない。

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ドナルド・トランプの復帰はヨーロッパを変貌させることになるだろう(Trump’s Return Would Transform Europe

-ワシントンが掌握しなければ、ヨーロッパ大陸は無政府的で非自由主義的な過去に逆戻りする可能性がある。

ハル・ブランズ筆

2024年6月26日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2024/06/26/europe-security-eu-nato-alliances-liberal-democracy-nationalism-trump-us-election/

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どっちが本当のヨーロッパだろうか? 過去数十年間、ほぼ平和で民主的で統一された大陸? それとも、それ以前に何世紀にもわたって存在していた、断片化され、不安定で、紛争に満ちたヨーロッパ(fragmented, volatile, and conflict-ridden Europe)? 11月の米大統領選挙でドナルド・トランプが勝利すれば、こうした疑問の答えはすぐに分かるかもしれない。

トランプは大統領としての最初の任期中に、アメリカをNATOから離脱させることに執心した。彼の元側近の中には、もし二期目に当選したら本当にやってくれるかもしれないと信じている人もいる。そして、このように語っているのはトランプ大統領だけではない。アメリカ・ファーストの有力信奉者の一人であるJD・ヴァンス連邦上院議員は、「ヨーロッパが自立する時が来た([The] time has come for Europe to stand on its own feet)」と主張している。アメリカ・ファーストの精神に明確に賛同していない人々の間でも、特にアジアにおいて、競合する優先事項への影響力はますます強くなっている。ポストアメリカ(アメリカ後)のヨーロッパについてより考慮されるようになっている。それがどんな場所になるかを聞いてみる価値はある。

楽観主義者たちは、たとえ7月にワシントンで開催されるNATO加盟75周年記念首脳会議で、NATO首脳たちが祝賀するアメリカの安全保障の傘を失ったとしても、ヨーロッパが繁栄し続けることを期待している。この見方では、アメリカは自国に引き上げることになるかもしれないが、過去80年間で豊かになり、安定し、確実に民主政治体制を築いてきたヨーロッパは、多極化した世界において建設的で独立した勢力として行動する用意ができている。

しかし、おそらくポスト・アメリカのヨーロッパは、直面する脅威に対抗するのに苦労し、最終的には過去のより暗く、より無秩序で、より非自由主義的なパターンに逆戻りする可能性すらある。「今日の私たちのヨーロッパは死に向かっているようだ。死に至る可能性がある」とフランスのエマニュエル・マクロン大統領は4月下旬に警告した。アメリカ・ファーストの世界では、そうなるかもしれない。

第二次世界大戦後、ヨーロッパは劇的に変化したため、多くの人々、特にアメリカ人は、この大陸がかつてどれほど絶望的に見えたかを忘れている。古いヨーロッパは、歴史上最も偉大な侵略者や最も野心的な暴君を生み出した。帝国の野心と国内の対立が紛争を引き起こし、世界中の国々を巻き込んだ。飛行家で、著名な孤立主義者でもあったチャールズ・リンドバーグは1941年、ヨーロッパは「永遠の戦争(eternal wars)」と終わりのないトラブルの土地であり、アメリカは、そのような呪われた大陸に近づかないほうが良いと述べた。

根本的な問題は、限られたスペースにあまりにも多くの強力なプレイヤーたちが詰め込まれている地理にあった。この環境で生き残る唯一の方法は、他者を犠牲にして拡大することだった。この力関係により、ヨーロッパは壊滅的な紛争のサイクルに陥ることになった。 1870年以降、この地域の中心部に、産業と軍事の巨大企業としての統一ドイツが出現したことにより、このビールはさらに有毒なものになった。ヨーロッパ大陸の政治は、ヨーロッパ大陸の地政学と同じくらい不安定だった。フランス革命以来、ヨーロッパは、自由主義と歴史上最もグロテスクな形態の暴政(tyranny)の間で激しく揺れ動いた。

1940年代後半、第二次世界大戦によって、こうした争いのサイクルが壊れたと考える理由はなかった。古い対立が残ったままとなった。フランスは、ドイツが再び蜂起して近隣諸国を破壊するのではないかと恐れていた。ソ連とその支配下のヨーロッパ共産主義者という形で、新たな急進主義が脅威に晒される一方、ポルトガルとスペインでは右翼独裁政権が依然として力を持っていた。多くの国で民主政治体制が危機に瀕していた。経済的貧困が対立と分裂(rivalry and fragmentation)を加速させた。

新しいヨーロッパの誕生は、決して必然ではなかった。長い間大陸間の争いを避けようとしていた同じ国(アメリカ)による、前例のない介入(unprecedented intervention)が必要だった。この介入は冷戦によって引き起こされ、遠く離れた超大国にとってさえヨーロッパにおける均衡(European equilibrium)の更なる崩壊が耐え難いものになる恐れがあった。1940年代後半から1950年代前半にかけて、しばしば混乱した状況の中、ヨーロッパは徐々に統合されていった。そして、それは革新的な効果をもたらす一連の連動した取り組みを特徴としていた。

最も重要なのは、NATOを通じたアメリカの安全保障への取り組みと、それを裏付ける軍隊の派遣であった。アメリカ軍による保護は、西ヨーロッパをモスクワから、そして西ヨーロッパ自身の自己破壊的な本能から守ることで、暴力の破滅のループを断ち切った。アメリカがこの地域を保護することで、宿敵同士はもはや互いを恐れる必要がなくなった。1948年に、あるイギリス政府当局者は、NATOが「ドイツとフランスの間の長年にわたるトラブルは消滅するだろう」と述べた。西ヨーロッパ諸国はついに、他国の安全を否定することなしに、安全を達成することができるようになった。その結果、この地域を悩ませていた政治的競争や軍拡競争が回避され、NATO加盟諸国が共通の脅威に対して武器を確保できるようになった。

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マーシャル・プランのポスターには、ヨーロッパ各国の国旗をシャッターに、アメリカ国旗を舵に見立てた風車が描かれている

こうしてアメリカの政策は、前例のない経済的・政治的協力という第二の変化を可能にした。マーシャル・プランを通じて、アメリカは復興支援の条件としてヨーロッパ域内の協力を積極的に推し進め、後にヨーロッパ経済共同体(European Economic CommunityEEC)やヨーロッパ連合(European UnionEU)となる国境を越えた構造を生み出した。アメリカ軍の存在は、かつての敵同士が安全保障を損なうことなく資源を出し合うことを可能にし、この協力を促進した。1949年、西ドイツのコンラート・アデナウアー首相は「アメリカ人は最高のヨーロッパ人だ」と述べた。言い換えれば、ワシントンの存在によって、ヨーロッパの同盟諸国は過去の対立関係を葬り去ることができたのである。

第三の変化は政治的なものであった。侵略が独裁政治に根ざしているとすれば、ヨーロッパの地政学を変革するには、その政治を変革する必要があった。その変革は、連合諸国の占領下にあった西ドイツの強制的な民主化(forced democratization)から始まった。この変革には、脆弱な民主政治体制国家を活性化させ安定させるためにマーシャル・プランによる援助が用いられた。この変革もまた、アメリカの軍事的プレゼンスによって可能になった。アメリカの軍事的プレゼンスは、ヨーロッパの民主政治体制を消し去ろうとするソ連の覇権(hegemony)を食い止めると同時に、急進的な左派や右派を疎外する寛大な福祉プログラムに投資することを可能にした。

これは、ヨーロッパの問題に対するアメリカ独自の解決策だった。アメリカだけが、ヨーロッパを敵から守るのに十分な力を持ち、しかもヨーロッパを征服して永久に従属させるという現実的な脅威をもたらさないほど遠い存在だった。アメリカだけが、荒廃した地域の再建を支援し、繁栄する自由世界経済をもたらす資源を持っていた。民主的自由を守りながら、そしてより強化しながら、ヨーロッパの対立を鎮めることができるのはアメリカだけであった。実際、西ヨーロッパにおけるアメリカのプロジェクトは、冷戦が終結すると、単純に東へと拡大された。

アメリカの介入は、歴史家マーク・マゾワーがヨーロッパを「暗黒の大陸(dark continent)」と呼んだように、拡大する自由主義秩序の中心にある歴史後の楽園(post-historical paradise)へと変えた。それは世界を変えるほどの偉業であったが、今ではそれを危険に晒すことを決意したかのようなアメリカ人もいる。

アメリカのヨーロッパへの関与は、決して永遠に続くものではなかった。マーシャル・プランを監督したポール・ホフマンは、「ヨーロッパを自立させ、私たちの背中から引き離す(get Europe on its feet and off our backs)」ことが彼の目標だったと口癖のように語っていた。1950年代、ドワイト・D・アイゼンハワー米大統領は、ワシントンが 「腰を落ち着けていくらかリラックスできる(sit back and relax somewhat)」ように、ヨーロッパがいつ一歩を踏み出せるかと考えていた。アメリカは何度も、駐留部隊の削減、あるいは撤廃を検討した。

これは驚くべきことではない。ヨーロッパにおけるアメリカの役割は、並外れた利益をもたらしたが、同時に並外れたコストも課した。アメリカは、核戦争の危険を冒してでも、何千マイルも離れた国々を守ることを誓った。対外援助を提供し、広大な自国市場への非対称的なアクセスを可能にすることで、アメリカはヨーロッパ大陸を再建し、外国がアメリカ自身よりも速く成長するのを助けた。

フランスのシャルル・ド・ゴール大統領など、アメリカが提供した保護に対して積極的に憤慨しているように見える同盟諸国の指導者を容認した。そしてワシントンは、最も尊敬されてきた外交の伝統の1つである邪魔な同盟への敵意を捨てて、長らく問題でしかなかったヨーロッパ大陸の管理者となった。

その結果、両義的な感情が冷戦の必要性によって抑えられ、また批評家たちがアメリカ抜きで実行可能なヨーロッパ安全保障の概念を提示できなかったからである。しかし今日、古くからの苛立ちが根強く、新たな挑戦がワシントンの関心を別の方向へと引っ張っているため、アメリカのヨーロッパに対する懐疑論はかつてないほど強まっている。その象徴がトランプである。

トランプは長い間、ワシントンがNATOで負担している重荷を嘆いてきた。彼は、ただ乗りしているヨーロッパの同盟諸国に対して、襲撃してくるロシアに「やりたいことを何でもやらせる(whatever the hell they want)」と脅してきた。トランプは明らかにEUを嫌っており、EUを大陸統一の集大成としてではなく、熾烈な経済的競争相手として見ている。非自由主義的なポピュリストとして、彼はヨーロッパの自由民主主義の運命に無関心である。私たちの間には海があるのに、なぜアメリカ人がヨーロッパの面倒を見なければならないのか? トランプがアメリカ・ファーストの外交政策を謳うとき、それはアメリカが第二次世界大戦以来担ってきた異常な義務を最終的に放棄する外交政策を意味している。

はっきり言って、トランプ大統領が就任後に何をしでかすかは誰にも分からない。NATOからの全面的な脱退は、共和党に残る国際主義者たち(Republican internationalists)を激怒させるだろうし、政治的代償に見合わないかもしれない。しかし、トランプが大統領の座を争い、彼の信奉者たちが共和党内で勢力を伸ばしていること、そして中国がアジアにおけるアメリカの利益に対する脅威をますます強めていることから、アメリカがいつか本当にヨーロッパから離脱するかもしれないという可能性を真剣に受け止め、次に何が起こるかを考える時期に来ている。

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2023年5月16日、アイスランドのレイキャビクで開催されたヨーロッパ評議会首脳会議で演説するウクライナのヴォロディミール・ゼレンスキー大統領

楽観的なシナリオでは、ヨーロッパは民主政治体制を維持し、結束し、敵に対抗するために団結する。アメリカが撤退すれば、EUは現在の戦争中もウクライナを支援し、和平後もキエフに意味のある安全保障を与え、ロシアや、これまでアメリカが防いできたその他の脅威を撃退するために、自らを世界的な軍事的主体へと変貌させることができる。こうしてヨーロッパは、自由主義的な世界秩序の強力で独立した柱として台頭することになる。ワシントンは他の優先事項に集中することができ、民主政体世界においてより効率的な分業が構築される。

ヨーロッパには自活するだけの資源がある。1940年代後半のような脆弱で没落した場所ではなく、民主政治体制と協力が規範となった、豊かで潜在的な力を持つ共同体なのだ。EUGDPはロシアの約10倍である。2022年以降、EU諸国は共同してアメリカを上回る軍事援助やその他の援助をウクライナに与えており、冷戦後に萎縮した防衛産業への再投資もようやく進みつつある。さらに、ヨーロッパの指導者たちは、ポーランドがそうであるように、自国を本格的な軍事大国へと変貌させたり、パリで長年の優先事項となっているヨーロッパの戦略的自立を再び推し進めることを提唱したりして、すでにポスト・アメリカの未来に備えている。「より団結し、より主権があり、より民主的な」大陸を構築する時期は過ぎたとヨーロッパのポスト・アメリカの展望について最も強気であると思われる指導者マクロンが4月に宣言した。

楽観的なシナリオの問題点は、簡単に見出せる。マクロンは、アメリカのリーダーシップに代わるものとしてヨーロッパ統合を喧伝しているが、ヨーロッパが統一され、まとまってきたのは、まさにワシントンが安心感を与えてきたからだということを忘れているようだ。例えば、1990年代初頭のバルカン戦争の始まりのように、アメリカが一歩引いてヨーロッパ勢力の前進を許した過去の例では、その結果、戦略的な結束よりもむしろ混乱が生じることが多かった。EUは2022年2月まで、ロシアの侵略をどう扱うかについて深く分裂していた。この教訓は、利害や戦略文化が異なる数十カ国の間で集団行動を調整するのは、誰かが優しく頭を叩いて覇権的なリーダーシップを発揮しない限り、非常に難しいということだ。

独立した、地政学的に強力なヨーロッパが素晴らしく聞こえるとしても、誰がそれを主導すべきかについては誰も同意できていない。フランスは常に自発的な活動に積極的だが、パリに自国の安全を扱う傾向や能力があるとは信じていない東ヨーロッパ諸国を不快にさせている。ベルリンには大陸をリードする経済的素養があるが、その政治指導者階級は、そうすればドイツの力に対する恐怖が再び高まるだけだと長年懸念してきた。おそらく彼らは正しい。冷戦後のドイツ統一が近隣諸国にとって容認できたのは、アメリカとNATOに抱きしめられたベルリンがヨーロッパの優位性を追求することは許されないと彼らが保証されていたからだ。アメリカがヨーロッパの一員ではないからこそ、ヨーロッパ人たちがアメリカのリーダーシップを容認してきたという結論から逃れるのは難しい。アメリカはヨーロッパの一員ではないため、かつて大陸を引き裂いた緊張を再び高めることなく権力を行使できるのだ。

このことは、最後の問題と関連している。自国の安全保障問題を処理できるヨーロッパは、現在よりもはるかに重武装になるだろう。国防支出は多くの国で2倍、3倍に増加せざるを得ないだろう。ヨーロッパ各国は、ミサイル、攻撃機、高度な戦力投射能力など、世界で最も殺傷力の高い兵器に多額の投資を行うだろう。アメリカの「核の傘(nuclear umbrella)」が失われることで、ロシアを抑止したいと願う最前線の国々、とりわけポーランドは、独自の核兵器を求める可能性さえある。

仮にヨーロッパが本格的な武装を行ったとしよう。アメリカの安全保障という毛布がなければ、ヨーロッパ諸国が外からの脅威に立ち向かうために必要な能力を開発するという行為そのものが、域内での軍事的不均衡が生み出した恐怖を再び呼び起こす可能性がある。別の言い方をすれば、アメリカの力に守られたヨーロッパでは、ドイツの戦車は共通の安全保障に貢献するものである。ポスト・アメリカのヨーロッパでは、ドイツの戦車はより脅威的に映るかもしれない。

二つ目のシナリオは、ポスト・アメリカのヨーロッパが弱体化し、分裂するというものである。このようなヨーロッパは、無政府状態(anarchy)に戻るというよりは、無気力状態(lethargy)が続くということになるだろう。EUはウクライナを解放し、自国の東部前線国家を守るための軍事力を生み出すことができないだろう。中国がもたらす経済的・地政学的脅威に対処するのに苦労するだろう。実際、ヨーロッパは攻撃的なロシア、略奪的な中国、そしてトランプ大統領の下では敵対的なアメリカに挟まれることになるかもしれない。ヨーロッパはもはや地政学的対立の震源地ではなくなるかもしれない。しかし、無秩序な世界では影響力と安全保障を失うことになる。

これこそが、マクロンや他のヨーロッパ各国の首脳を悩ませるシナリオだ。既に進行している、または検討中のヨーロッパの防衛構想の多くは、これを回避するためのものである。しかし、短期的には、ヨーロッパが弱体化し分裂することはほぼ確実だろう。

なぜなら、アメリカの撤退はNATOの根幹を引き裂くことになるからだ。NATOは、その先進的な能力の大部分を有し、その指揮統制体制を支配している国である最も強力で最も戦いを経験した加盟国アメリカを失うことになる。実際、アメリカは NATO の中で、ヨーロッパの東部戦線やその先の戦線に断固として介入できる戦略的範囲と兵站能力を備えている唯一の国だ。このブロックに残るのは、主にアメリカ軍と協力して戦うように設計されており、アメリカ軍なしでは効果的に活動する能力に欠けているヨーロッパ各国の軍隊の寄せ集めとなるだろう。これらは、脆弱で断片化した防衛産業基盤によって支えられることになる。ヨーロッパのNATO加盟諸国は、170を超える主要兵器システムを重複して寄せ集めて配備している。この基盤は、迅速かつ協調的な増強を支援することができない。

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ポーランドのノヴァ・デバで多国籍軍の訓練に参加するポーランド兵(2023年5月6日)

アメリカの撤退後、軍事的に弱体化したヨーロッパは、ここ数十年のどの時期よりも高い動員ピッチに達したロシアと対峙することになるが、ヨーロッパがすぐに弱体化を是正する選択肢はほとんどない。

アメリカの力なしでロシアと均衡を図るには、ヨーロッパの軍事費の膨大で財政的に負担の大きい増額が必要となるだろうが、ロシアがウクライナを制圧し、その人口と経済をクレムリンの軍事機構に統合することに成功すれば、更にその必要性は高まるだろう。巨額の赤字を永久に続けるという米国政府の「法外な特権(exorbitant privilege)」がなければ、ヨーロッパ諸国は不人気な巨額の増税を課すか、社会福祉プログラムを削減しなければならないだろう。ポーランドやバルト三国などの一部の国は、独立を維持するためにその代償を払うかもしれない。また、軍事的な準備は社会契約を破る価値はなく、攻撃的なロシアに従う方が賢明だと判断する人もいるかもしれない。

あるいは、ヨーロッパ諸国はどのような脅威に対抗すべきかについて意見が対立するだけかもしれない。冷戦時代でさえ、ソ連は西ドイツを、たとえばポルトガルを脅かすよりもはるかに厳しく脅していた。EUが成長するに従って、脅威に対する認識の相違という問題はより深刻になっている。東部と北部の国々は、プーティン率いるロシアを当然恐れており、互いに防衛のために力を合わせるかもしれない。しかし、西や南に位置する国々は、テロや大量移民など非伝統的な脅威のほうを心配しているかもしれない。ワシントンは長い間、NATO内のこのような紛争において誠実な仲介役を果たし、あるいは単に、大西洋を越えた多様な共同体が一度に複数のことを行えるような余力を提供してきた。このようなリーダーシップがなければ、ヨーロッパは分裂し、低迷しかねない。

それは酷い結果だが、最も醜い結果ではない。三つ目のシナリオでは、ヨーロッパの未来は過去によく似ているかもしれない。

このヨーロッパでは、弱さは一時的なものであり、EUの安全保障のような集団行動(collective-action)の問題を克服できないのは、その始まりに過ぎない。ワシントンの安定化への影響力が後退するにつれ、長い間抑圧されてきた国家間の対立が、最初はゆっくりとかもしれないが、再燃し始めるからである。ヨーロッパ大陸における経済的・政治的主導権をめぐって争いが勃発し、ヨーロッパ・プロジェクトは分裂する。国内のポピュリストや外国の干渉に煽られ、離反主義的な行動(revanchist behavior)が復活する。穏健な覇権国が存在しないため、古くからの領土問題や地政学的な恨みが再び表面化する。自助努力の環境の中で、ヨーロッパ諸国は自国の武装を強め始め、核兵器だけが提供できる安全保障を求める国も出てくる。非自由主義的で、しばしば外国人嫌いのナショナリズムが暴走し、民主政治体制は後退する。数年、あるいは数十年かかるかもしれないが、ポスト・アメリカのヨーロッパは、急進主義と対立の温床(hothouse of radicalism and rivalry)となる。

これは、1990年代初頭に一部の著名な専門家たちが予想していたことである。バルカン半島での民族紛争、ドイツ再統一をめぐる緊張、ソ連圏崩壊後の東ヨーロッパにおける不安定な空白地帯(vacuum of instability)の全てが、このような未来を予期していたのである。冷戦終結後、アメリカはヨーロッパの影響力を縮小させるどころか拡大させた。ボスニアとコソヴォに介入して民族紛争を消し去ると同時に、EUが東方拡大(eastward expansion)について逡巡し遅滞する中で、東ヨーロッパをNATOの傘下に収めたからだ。しかし、だからといってヨーロッパの悪魔が二度と戻ってこない訳ではない。

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2019年11月7日、ブダペストでハンガリーのヴィクトール・オルバン首相と会談するトルコのレジェップ・エルドアン大統領(左)

今日、バルカン半島では激しいナショナリズムの炎が揺らめいている。トルコやハンガリーでは、修正主義的な不満(revisionist grievances)と独裁的な本能(autocratic instincts)が指導者たちを動かしている。2009年のヨーロッパ債務危機とそれに続く数年にわたる苦難と緊縮財政(austerity)は、ドイツの影響力(この場合は経済的影響力)に対する恨みが決して深く埋まらないことを示した。ウラジーミル・プーティンがヨーロッパ諸国に協力するあらゆる理由を与えている今日でさえ、ウクライナとポーランド、あるいはフランスとドイツの間に緊張が走ることがある。

懸念すべき政治的傾向もある。ハンガリーのヴィクトール・オルバン首相は何年もかけてハンガリーの民主主義を解体し、「非自由主義国家(illiberal state)」の台頭を喧伝してきた。トルコのレジェップ・タイイップ・エルドアン大統領も自国で同様のプロジェクトを進めている。フランスの国民連合(National Rally)のような政党は世論調査で上昇し、何世紀にもわたる歴史的不満が覚醒する準備を整え、ゼロサムの地政学的思考に陥りやすい硬直したナショナリズムを売りにしている。極右の「ドイツのための選択肢(Alternative for GermanyAfD)」は、より過激になりながらも、政治的な競争者であり続けている。こうした運動の勝利は、ヨーロッパ諸国を互いに対立させようと躍起になり、政治戦争を繰り広げるロシアによって助長されるかもしれない。

分裂したヨーロッパが古代の悪魔(ancient demons)に支配されるというのは悪夢のシナリオであり、悪夢は通常、実現しない。しかし、理解すべき重要なことは、ポスト・アメリカのヨーロッパは、私たちが知っているヨーロッパとは根本的に異なるということである。アメリカのパワーとヨーロッパに対する傘によってもたらされた地政学的ショックアブソーバーはなくなる。地位と安全保障をめぐる不安定な不確実性が戻ってくる。各国はもはや、以前の時代を特徴づけていたような行動(軍備増強や激しい対立)に頼らなくても、自分たちの生存を確保できるという自信を持つことはないだろう。今日のヨーロッパは、アメリカが作り上げた歴史的にユニークで前例のないパワーと影響力の構成の産物である。75年もの間、旧態依然とした悪習を抑制してきた安全策が撤回されれば、旧態依然とした悪習が再び姿を現すことはないと、私たちは本当に言い切れるのだろうか?

ヨーロッパが今日の平和なEUへと変貌を遂げたことは、決して元に戻せないと考えてはいけない。

ヨーロッパが今日の平和なEUへと変貌を遂げたが、決して以前の状態に戻らないと考えてはいけない。結局のところ、ヨーロッパは1945年以前、例えばナポレオンが敗北した後の数十年間、比較的平和な時期を過ごしたが、勢力均衡(balance of power)が変化すると平和は崩壊した。見識を持ったように見える大陸に悲劇が起こることはあり得ないと考えてはならない。アメリカが関与する以前のヨーロッパの歴史は、世界で最も経済的に先進的で、最も近代的な大陸が、自らを引き裂くことを繰り返してきた歴史であった。実際、ヨーロッパの過去から学ぶことがあるとすれば、それは、現在想像できるよりも早く、そして険しい転落が訪れる可能性があるということだ。

1920年代、自由主義の勢力が台頭しているように見えた。しかし、イギリスの作家ジェイムズ・ブライスは、「民主政治体制が正常かつ自然な政治形態として普遍的に受け入れられた(universal acceptance of democracy as the normal and natural form of government)」と称賛した。新しく創設された国際連盟(League of Nations)は、危機管理のための斬新なメカニズムを提供していた。それからわずか10年後、大陸が再び世界大戦に突入する勢いを作り出したのはファシズム勢力だった。ヨーロッパの歴史は、物事がいかに早く完全に崩壊するかを物語っている。

アメリカ第一主義者(America Firsters)たちは、アメリカはコストを負担することなく、安定したヨーロッパの恩恵を全て受けることができると考えているかもしれない。現実には、彼らの政策は、ヨーロッパにはもっと厄介な歴史的規範があることを思い起こさせる危険性がある。それはヨーロッパにとってだけでなく、災難となる。ヨーロッパが弱体化し、分裂すれば、民主政体世界がロシア、中国、イランからの挑戦に対処することが難しくなる。暴力的で競争過剰な(hypercompetitive)ヨーロッパは、世界的な規模で影響を及ぼす可能性がある。

ここ数十年、ヨーロッパが繁栄する自由主義秩序の一部であることで利益を得てきたとすれば、その自由主義秩序は、平和的で徐々に拡大するEUを中核とすることで利益を得てきた。ヨーロッパが再び暗黒と悪意に染まれば、再び世界に紛争を輸出することになるかもしれない。アメリカが大西洋を越えて後退する日、それはヨーロッパの未来以上のものを危険に晒すことになるだろう。

※ハル・ブランズ」ジョンズ・ホプキンズ大学国際高等大学院(SAIS)ヘンリー・A・キッシンジャー記念特別国際問題担当教授兼アメリカン・エンタープライズ研究所上級研究員。ツイッターアカウント:@HalBrands

(貼り付け終わり)

(終わり)

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる
bigtech5shawokaitaiseyo501
ビッグテック5社を解体せよ

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める

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 古村治彦です。
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※2024年10月29日に佐藤優先生との対談『世界覇権国 交代劇の真相 インテリジェンス、宗教、政治学で読む』(←この部分をクリックするとアマゾンのページに飛びます)が発売になります。予約受付中です。よろしくお願いいたします。
ウクライナ戦争は2022年2月24日に始まってからいまだに停戦を迎えていない。このまままた冬を迎え、年を越していくことになる。現在、中東情勢が緊迫の度合いを深めている中で、注目も薄れているように感じる。大きな動きもなく、戦況は膠着状態に陥っている。そうした中で、犠牲者だけが増えている。私は2年前から訴えているが、一日も早い停戦を望む者である。

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ウクライナの最大の支援国であるアメリカは大統領選挙期間中、しかも現職の大統領は再選を目指さないということでレイムダック状態になり、大きなことはできにくい状態にあり、選挙が終わって、新政権ができてからしばらくの間は、アメリカは動けない。そうした中で、停戦のきっかけをつかむのは難しい。ウクライナの国内状況が変わらねば、早期停戦は望めない。具体的にはヴォロディミール・ゼレンスキー大統領の交代だ。

 そうした中で、「ウクライナのNATO加盟」という話も出ている。私は、ウクライナのNATO加盟には反対する。ウクライナのNATO加盟は紛争の火種を残すことになる。それならば、EU加盟を目指すべきだ。ロシアのウラジーミル・プーティン大統領は多少の皮肉も込めながら、ウクライナのEU加盟には反対しない姿勢を示した。ウクライナの腐敗度や財政赤字をEU諸国で面倒を見られるのか、どうなんだという皮肉を示しているが、ウクライナにとっては、EU加盟は経済を向上させるには良いきっかけとなる。

EU諸国にとっては逆で、ウクライナを支援する負担を考えるとEUには加盟させたくない。しかし、ロシアをこれからも挑発する存在としては味方につけておきたい。それで、NATO加盟という話も出ている。しかし、それはあまりにも危険だという慎重論ももちろんある。自分たちからわざわざ危険を高めてしまう行為であるからだ。現在のウクライナ戦争もヨーロッパ諸国にとっては大きな負担である。そうした状況がこれからも続く上に、ロシアからの核攻撃の脅威に晒されるという危険が継続するということはヨーロッパ諸国、更にはアメリカの人々にとっては耐えがたい苦痛だ。

 アメリカと西側諸国の火遊びがロシアによるウクライナ侵攻を招いた。そうした中で、将来に火種を残すような、ウクライナのNATO加盟、NATO軍のウクライナ国内駐留という話は状況を不安定化させるだけだ。

=====

ウクライナはNATOへの「河川湖沼横断(渡河作戦)」を必要としている(Ukraine Needs a ‘Wet Gap Crossing’ to NATO

-ウクライナに戦時中の橋渡しをするために、アメリカ軍の戦略(playbook)を使う時が来た。

アン・マリー・デイリー筆

2024年6月18日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2024/06/18/ukraine-nato-bridge-biden-usa/

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NATO首脳会議中の2009年4月4日に撮影された、ドイツのケールとフランスのストラスブールを繋ぐパセレル・ミムラム歩道橋の一帯。

バイデン政権は時に、ウクライナのNATO加盟への「橋(bridge)」を築く必要性に言及する。これは適切な比喩だが、支持者たちが考えるような方法ではない。

橋について言えば、単なる希望の象徴(symbol of hope)と思うかもしれない。しかし、軍事的な文脈で使われる橋は、戦時中のインフラとしての役割を最もよく示している。なぜなら、戦時中の橋の建設は、軍事プランナーが「ウェット・ギャップ・クロッシング(河川湖沼横断、wet gap crossing)」と呼ぶ、とてつもなく困難で複雑な作戦だからである。2022年5月にウクライナがシヴェルスキー・ドネツ川を渡ろうとしたロシア軍大隊を壊滅させたように、河川湖沼横断の実施は危険を伴うが、戦略的な見返りは大きい。1944年、ジョージ・S・パットン将軍率いる第3軍はナンシーでモーゼル川を渡り、ドイツ軍の防衛ラインを転換させ、バルジの戦いのための戦略的位置を開いた。

ウクライナをNATOに加盟させることは、河川湖沼横断と同じようにリスクとコストがかかるが、戦略的な成功につながる可能性がある。もしNATO諸国がウクライナをNATOに加盟させることを本当に真剣に考えているのであれば、NATOへの架け橋を作ることは単に巧みな外交的比喩であってはならないし、シヴェルスキー・ドネツ川のロシア軍のように単に向こう側に行くためだけに試みるべきではない。困難で、洗練された、多面的な作戦のように取り組まなければならないし、第二次世界大戦中のモーゼル川横断のように、戦後のヨーロッパ・大西洋安全保障のためのより広範な戦略の一部でなければならない。

7月にワシントンで開催されるNATO首脳会議で、ウクライナのNATOにおける将来的な役割を計画する外交官や政治家たちは、河川湖沼横断に対するアメリカ軍独自のアプローチを理解するのがよいだろう。その教訓は示唆に富んでおり、身の引き締まる思いがする。

ステップ1:迂回を試みる(Step 1: Try to go around

河川湖沼横断は非常に困難であるため、可能であれば完全に回避することが望ましい。ウクライナをNATOに参加させるのはリスクが高すぎるから回避すべきだと言う人もいるだろう。しかし、それはウクライナにとってNATO加盟以外に良い選択肢がないという事実を無視しており、長期的に見ればウクライナをNATOに加盟させないリスクの方が大きい。軍事作戦でもそうだが、川を渡ることが目的地への最も早く効果的な方法であることはよくある。

コンバット・ブリッジング(戦闘中の架橋、combat bridging)に固有のリスクや困難が知られているにもかかわらず、軍隊がこの能力を維持しているのは、河川湖沼横断の成功によって得られる戦略的機会が、リスクや困難に見合うものである場合があることを知っているからである。また、時には迂回するという選択肢がないことも知っている。ロシアは近隣諸国を侵略し、核のサーベルを鳴らしているが、NATOを直接攻撃することはしていない。それは、NATOの第5条が依然として効果的な抑止力となっているからだ。それ以外には何も機能していないのだ。

ウクライナのNATO加盟に反対する人々は、ウクライナへの継続的な物資支援という「イスラエル・モデル(Israel model)」を選ぶべきかもしれない、あるいはG7諸国のような国々の組み合わせがウクライナに長期的な経済支援を提供することで、ロシアに勝ち目はないと確信させることができるだろうと主張する。それは、イスラエルには核兵器があり、ウクライナにはないからだ。実際、そこが重要だ。ウクライナは1994年、ウクライナの主権と領土の一体性を尊重することにロシアなどが同意したことで、核兵器を放棄した。同様に、すでにEUに加盟しているにもかかわらず、スウェーデンとフィンランドがNATOへの加盟を決定したことは、ウクライナをEUに加盟させ、EUの第42条7項の相互援助条項を与えるだけでは、ロシアの侵略を抑止するには不十分であることを示している。

ステップ2:計画とリハーサル(Step 2: Plan and rehearse

意図的な河川湖沼横断を行うことが決まったら計画が重要である。単に水際まで兵力を移動させ、水際に到達してから横断方法を考えようとしても、大惨事になることは確実だ。渡河地点の候補を偵察し、地形や敵味方の長所・短所を考慮して、どれが成功しそうかを判断し、複数の渡河地点を準備しなければならない。

ウクライナをNATOに加盟させるための選択肢はいくつかあり、いずれも検討されるべきだが、有望と思われるものばかりではない。最初の選択肢は、敵対行為が続いている間にウクライナをNATO加盟国にするというもので、理論的には可能だが、新加盟国を受け入れるには32カ国の同盟国の全会一致が必要であることから、政治的には実現不可能な可能性が高い。地理的に恵まれ、軍事的にも先進国であるスウェーデンを同盟に加入させるのに1年もかかったという事実は、この厳しい事実を裏付けている。仮に、これが政治的に実現可能になった場合、NATOは第5条の保証を単なるリップサービス以上のものにするために、速やかにウクライナに軍を展開しなければならなくなる。

2つ目の選択肢は、停戦または敵対行為の停止をめぐる交渉中の保証の一環として、ウクライナをNATOに加盟させることだ。つまり、停戦が成立次第、ウクライナはNATOに加盟することになる。ロシアはウクライナのNATO加盟のきっかけとなった戦闘停止に同意せずに戦闘を続けることが考えられるため、これはおそらくうまくいかないだろう。

3つ目の選択肢は、停戦後のウクライナの主権と領土の一体性を保証するために、NATO諸国がウクライナ領内に部隊を展開することである。これには、ウクライナに具体的な安全保障を提供する一方で、ウクライナ加盟に懐疑的なNATO諸国を味方につける時間を確保できるという利点がある。

ウクライナの将来の姿は未知数であり、ウクライナのNATO加盟のスケジュールも不明である。NATOはウクライナ加盟に対するNATO諸国の政治的支持の一致を達成するために、また、ウクライナの主権と領土の一体性を保証するために、NATO諸国の軍隊をいつ、どこで、どのように使用するかを決定するために、今すぐ作業を開始すべきである。どちらの選択肢が最も信頼できると判断されるかにかかわらず、どちらの措置も避けられないだろう。

ステップ3:戦場を準備する(Step 3: Prepare the battlespace

コンバット・ブリッジング(戦闘中の架橋、combat bridging)においては、車列を組んで橋を架けたい場所に直接車を走らせ、水中に物を置き始めるようなことはしない。それは自殺行為だ。計画を立て、リハーサルを行い、戦力を整え、有利な条件を整えるための準備を行う。同様に、何の計画も準備もせずにウクライナのNATOへの橋渡しを宣言するだけでは、ウクライナは、2008年のブカレスト宣言後に直面したのと同じ戦略的手詰まり(strategic limbo)の状態に置かれるだけであり、同様に、NATOに加盟できるようになる前にウクライナの主権を弱体化させようとするモスクワの努力を更に倍増させることになる。

NATOにとって、これは加盟諸国が今すぐウクライナのNATO加盟に賛成する票を集め始める必要があることを意味する。外交官たちは、同盟の誰が既にウクライナをNATOに加盟させることに賛成しているのか、そしてどのような条件のもとで加盟させることに賛成しているのかを理解する必要がある。「絶対的に」あるいは「戦争が終わるまでは」加盟させないという立場の人々に対しては、より創造的な解決策を提案し、議論し、内輪で固めていかなければならない。これは一時的な議論では済まない。最終的なウクライナ加盟に向けて戦場を準備するための絶え間ないキャンペーンでなければならない。

ウクライナが1991年の国境を取り戻して戦争が終結するにしても、キエフがそれを下回る形で決着するにしても、NATO加盟諸国の軍隊をウクライナ国内に駐留させ、NATOへの橋渡しに必要な時間、空間、安全を提供する必要がある。この軍隊には、NATOの核保有3カ国(英、仏、米)を含む主要同盟諸国の連合体を含めることが理想的であり、第5条の安全保障がないにもかかわらず、NATOの核保有諸国が合意された国境を守ることを約束していることを示す必要がある。ちょうど、第二次世界大戦の終結から西ドイツがNATOに加盟するまでの数年間、東ドイツのソ連軍を抑止するためにNATO軍が西ドイツに駐留した前例を真似る必要がある。

休戦または停戦後、短期間でこれらの軍隊をウクライナに移動させることは、論理的にも政治的にも極めて困難だ。したがってNATO加盟諸国は、ウクライナを包囲するNATOの防空網がNATO領内を攻撃する軌道にあるロシアのミサイルや、一方向攻撃ドローンの撃墜を開始することを宣言し、ウクライナに少人数のNATO将兵を派遣してウクライナ人に訓練を提供し、民間船舶を保護するために黒海にNATO海軍の能力を認めることについてトルコと交渉することによって、そのような動きの舞台を今すぐ整え始めるべきだ。

ステップ4:関与する(Step 4: Commit

河川湖沼横断作戦は大規模な作戦である。アメリカ陸軍では軍団レヴェルの作戦とされている。空軍、宇宙軍、サイバー資産も重要な支援を提供するように想定されている。困難でリスクが高く、コストもかかるが、適切に行えば戦略的突破口(strategic breakthrough)につながる。

リスクが大きいからこそ、作戦指揮官は関係するリスクを評価し、作戦を危険に晒すことなく、可能な限りリスクを軽減するが、同時に全てのリスクを軽減することは不可能であることを受け入れなければならない。これは極めて重要なステップだ。なぜならば、ひとたび河川湖沼横断が始まれば、指揮官はその計画に全面的に関与し、利用可能な全ての戦力を活用して成功させなければならないからだ。この種の作戦において中途半端な対策は失敗を招く。

NATOがウクライナを加盟させることを真剣に考えているのなら、そしてそうでなければならないのなら、リスクについて明確な認識を持たなければならない。この計画は、より広範な戦略を支えるものでなければならない。そして最も重要なことは、成功を約束することである。もしそうしなければ、最終的に失敗に終わる可能性が高い。

※アン・マリー・デイリー:ランド研究所政策研究員、大西洋評議会スコウクロフト記念戦略・安全保障センター大西洋横断安全保障イニシアティヴ非常駐上級研究員、米陸軍予備役将校。ランド研究所入所以前は、国防長官室でロシア戦略上級顧問およびウクライナ担当デスクを務めた。本書に含まれる見解、意見、発見、結論、提言は筆者個人のものであり、ランド研究所やその研究スポンサー、クライアント、助成機関のものではない。

(貼り付け終わり)

(終わり)

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる
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ビッグテック5社を解体せよ

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める

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 古村治彦です。

 NATO(北大西洋条約機構、North Atlantic Treaty Organization)は、1949年に北米大陸にあるアメリカとカナダと西ヨーロッパ諸国で結成された軍事同盟気候である。加盟国のいずれかに対する攻撃を全加盟国への攻撃と見なして対処するとする集団的自衛権(right of collective self-defense)を行使する同盟である。具体的には、東西冷戦が激化する中で、ソ連からの侵略にアメリカが率いる西側諸国で対処するというものであった。ソ連を中心とする東ヨーロッパ諸国は、NATOに対抗して、1955年にワルシャワ条約機構(Warsaw Treaty Organization)を結成した。冷戦終了後の1991年にワルシャワ条約機構は解体された。しかし、冷戦で勝利し、仮想敵であるソ連が消滅して以降も、NATOは存続し、加盟国を増加させていった。その様子は以下の通りだ。このいわゆる「東方拡大(eastward expansion)」は、対ロシア封じ込めのために実施された。ソ連時代に比べて、国力を大きく落としたロシアを「挑発(provocation)」し、ロシアを虐める行為だった。

1949年:アイスランド・アメリカ・イギリス・イタリア・オランダ・カナダ・デンマーク・ノルウェー・フランス・ベルギー・ポルトガル・ルクセンブルク(原加盟国、12か国)

1952年:ギリシャ・トルコ

1955年:西ドイツ(1990年に東西ドイツ統一)

1982年:スペイン

1999年:チェコ・ハンガリー・ポーランド

2004年:ブルガリア・エストニア・ラトビア・リトアニア・ルーマニア・スロバキア・スロベニア  

2009年:アルバニア・クロアチア   

2017年:モンテネグロ

2020年:北マケドニア

2023年:フィンランド

2024年:スウェーデン
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そして、NATO東方拡大の焦点は、ウクライナとなった。ウクライナはNATOにもEU(ヨーロッパ連合、European Union)にも加盟申請をしながら長年にわたってほったらかしされながら、同時にアメリカを中心とする西側諸国から軍事援助を受けて、ロシアとの衝突要因として育成されてきた。ロシアは昔の勢力圏であった東ヨーロッパのNATO加盟までは隠忍自重してきたが、ウクライナの軍事力強化は自国の安全保障に対する深刻な脅威と判断し、緩衝地帯を作るということもあり、2022年2月にウクライナに侵攻した。ウクライナ戦争は、ロシアにとっての「自存自衛(self-sufficiency and self-defense」のための戦争である。私がこの言葉を使うのは、太平洋戦争の開戦となった、日本軍によるハワイ州パールハーバーの奇襲攻撃と同じだと言いたいためだ。太平洋戦争はアメリカの圧力のために開戦にまで追い込まれた訳だが、当時の日本とロシアは同じであり、攻撃に誘い込まれたと言いたいためだ。当時の日本とロシアの違いは、ロシアは戦争に引き込まれて苦境に陥りながら、中国やインドなどの間接的な支援を受けて、持ち直しているというところだ。

NATOはロシアがいてくれて、暴れてくれなければ存在意義はない。そして、新たな存在意義を求めて、アジア太平洋地域に進出しようとしている。イギリスやドイツなどが対中国のために、選管などを派遣する動きを見せている。また、NATOの事務所を東京に設置しようとして、フランスのエマニュエル・マクロン大統領の反対にあった。こうした動きは、対中国封じ込めをアメリカ単独では不可能なので、防衛費をGDP2%まで増加させるように厳命した、NATO諸国を使って、手伝わせようということである。

 しかし、NATOとは文字通り、北大西洋地域の軍事同盟だ。その主敵はロシアである。中国を仮想敵として想定しないし、そのための組織構成にはなっていない。NATOはロシアの暴発(攻撃)を抑えるための組織でありながら、ロシアを挑発したことで、かえって、状況を悪化させる結果になった。NATOこそがヨーロッパの安全保障にとっての不安定要因になっている。そして、NATOがアメリカのための下働き組織になっていることが露(あら)わになっている。NATOの存在意義は薄れている。そして、この動きは止められない。それでも、一度できて、ここまで肥大化した官僚組織としてのNATOは存続していくために、危機をこれからも演出し続けることになる。これが世界にとっての大きな危険ということになる。

(貼り付けはじめ)

今回は、NATOは本当に危機的状況に陥っている(This Time, NATO Is in Trouble for Real

-長年にわたる誤った警告が発せられた末に、西側の軍事同盟はついに崖っぷちに立たされてしまうようになっている。

スティーヴン・M・ウォルト筆
2024年78

『フォーリン・ポリシー』誌

Stephen M. Walt

July 8, 2024, 4:19 PM

https://foreignpolicy.com/2024/07/08/nato-75-anniversary-washington-summit-trouble/

大学、企業、シンクタンク、あるいは夫婦など、どのような機関であれ、創立75周年を迎えると、その支援者たちはその功績や美徳、目覚ましい長寿など、バラ色の要素を列挙するのを耳にすることになる。ワシントンで開催されるNATOサミットも例外ではない。 NATOの過去の実績を称え、大西洋横断関係の礎石としての役割を称賛するスピーチが数多く行われるに違いない。

しかしながら、NATOのラブ・フェスティバルに不吉な影を落とす暗雲を無視することはできない。ドナルド・トランプは、2025年に米大統領に返り咲く可能性が高い。フランスの極右である国民連合(National Rally)は今やフランスで最も強力な政治運動となり、ハンガリーのヴィクトール・オルバンは、依然として破壊的な力を持っている。イスラエルとハマスの戦争、中国、デジタル技術の規制、苦境を深めるウクライナを助ける最善の方法などをめぐってヨーロッパ人とアメリカ人の意見は分かれている。

ヨーロッパ人とアメリカ人の意見の違いについては、今に始まったことではないと言う人もいるだろう。米欧同盟はその歴史を通じて深刻な危機に直面してきたし、(私自身を含め)その終焉が差し迫っているという見立ては、常に時期尚早であることが判明してきた。1956年のスエズ危機は深刻な亀裂だったし、ヴェトナム戦争もそうだった。軍事ドクトリン(特に核兵器の役割)をめぐる論争は、冷戦期を通じて米欧同盟を緊張させた(ユーロ・ミサイル論争を覚えているだろうか)し、1999年のコソヴォをめぐる戦争では、同盟内の不和が明らかになった。ドイツとフランスは、2003年のジョージ・W・ブッシュ政権のイラク侵攻決定に公然と反対し、ドワイト・D・アイゼンハワーからトランプまで歴代のアメリカ大統領は、ヨーロッパのアメリカの保護にただ乗りする傾向(Europe’s tendency to free-ride on U.S. protection)に対して、苦言を呈してきた。今日の問題は同じことの繰り返しに過ぎず、2029年にまた盛大な誕生日を迎えるために、皆で計画を立て始めるべきなのかもしれない。

こうした見方を軽々しく否定すべきではない。一度創設された機関は、その創設時の状況が消滅した後も長く存続することが多い。イギリスとフランスが今でも国連安全保障理事会の常任理事国であるのはそのためだ。 NATOの継続性は、ブリュッセルの大規模で確立された官僚組織と、あらゆる場面でNATOを擁護する元当局者、親大西洋主義の専門家、そして潤沢な資金を集めたシンクタンクからなる、周辺部からの支援によって強化されている。幅広いエリート層の支持を考えると、来週のサミットがNATO最後のサミットとならないことは間違いない。

しかし、今日の状況は、これまでの同盟内緊張の瞬間とは著しく異なり、NATOの将来を脅かす勢力は、トランプやマリーヌ・ルペンといった個々の指導者の個人的な傾向を超えている。実際、彼らの見解 (そしてそれらの受け入れの広がり) は、独立した原因であると同時に、これらのより広範な勢力の兆候でもある。

緊張の最も明白な原因は、世界における力の分布の変化である。NATOが1949年に設立されたとき、ヨーロッパの加盟国は第二次世界大戦からの回復途上にあり、ソ連は、アメリカの積極的な支援なしでは、ヨーロッパ単独が対処できない脅威であると考えられた。ヨーロッパは世界の工業力の重要な中心地の一つでもあったため、特に戦略的に価値のある存在であった。各国は主に共通の脅威に対処するために同盟を形成しており、アメリカがヨーロッパの防衛に専念し、そこで大規模な軍事プレゼンスを維持することは理にかなっているものとなった。

そんな日々はもう遠い昔のことになった。ソ連とワルシャワ条約機構はもはや存在せず、ロシアにはもはやヨーロッパ大陸を征服し征服する能力はない。確かに、ロシアはウクライナで違法な戦争を仕掛けており、いつかバルト三国の小国を脅かすかもしれないが、ロシア軍がポーランドに電撃戦(blitzkrieg)を仕掛けて英仏海峡まで進もうとしているという考えは滑稽だ。たとえ、ウラジーミル・プーティン大統領がそのような野心を抱いていたとしても、小さくて弱いウクライナに対して手いっぱいのロシア軍では、急速な領土拡大の手段にはならないだろう。

一方、中国はアメリカ(およびプーティン率いるロシアのシニア・パートナー)と肩を並べる競争相手、手強い技術的挑戦者、そして世界最大の貿易国として台頭してきた。現在、世界経済に占めるアジアの割合(54%)は、ヨーロッパ(17%)を大幅に上回り、世界経済成長への貢献度も高くなっている。中国はまた、安全保障環境を根本的に変える可能性のある領有権の主張を強めている。したがって、純粋に構造的な理由から、今日、アメリカが注目する割合はアジアに対して賀高く、ヨーロッパが低くなっているのは当然だ。ヨーロッパがもはや重要でないということはないが、アメリカの戦略的関心の中で、ヨーロッパが占める位置はもはや高いとは言えない。最近、NATOがインド太平洋地域でより大きな役割を担うという話がよく聞かれ、今回のNATOサミットにはアジア諸国からもオブザーバーが出席するが、NATOの欧州加盟国がアジアの勢力均衡(balance of power)に影響を与えようと思っても、それほどのことはできないだろう。

NATOの目的についての疑問は、ソ連が崩壊するとすぐに始まり、年が経つにつれて新たな理論的根拠と使命を考え出した加盟諸国を称賛しなければならない。しかし、問題は、これらの新しい試みのほとんどがそれほどうまくいかなかったことだ。 NATOの拡大により、新たな安全保障要件が追加されたが、それらを満たすための追加の能力は追加されず、費用がかからなかったのは、ロシアが弱く、従順であり続ける限りのことであった。東方への際限のない拡大(pen-ended expansion eastward)が「完全で、自由で、平和な(whole, free, and at peace)」ヨーロッパをもたらすだろうという予測は、ウクライナで激化する残忍な戦争と極度の凍結状態にあるロシアとの関係により、今日ではかなり空虚に見える。NATOは、1999年のコソヴォ戦争で部分的な成功を収めたと主張できるが、あの戦いは同盟内の結束を証明するものではなく、バルカン半島の政治は依然として微妙な状態にある。 NATO加盟国は911のテロ攻撃後、初めて第5条を発動して、アメリカを支持するために結集したが、その後のアフガニスタンにおけるいわゆる国家建設における同盟の取り組みは多大な犠牲を払いながらも、失敗に終わった。NATOは2011年にリビアに介入したが、その目的は民間人保護であったが、同時にリビアの指導者ムアンマル・アル・カダフィの打倒を支援することでもあった。しかし、その結果は再び国家の破綻を招いた。NATOが、ウクライナが初期のロシア侵攻から生き残り、領土の大部分を防衛できるよう支援してきたことは明らかだが、明らかな勝利で戦争が終わり、NATOがそれを祝福できる可能性は低い。こうした実績を考えれば、ヨーロッパの安全保障環境が悪化しているにもかかわらず、NATOの価値に対する疑問が高まっているのも理解できるだろう。

最終的に、NATO が苦境に陥っているのは、まさにそれがあまりにも長く続いており、共通の価値観や大西洋を越えた連帯に関するよく知られた常套句が、特に若い世代にとってかつてほど強力に響いていないためである。ヨーロッパ系アメリカ人の割合は減少しており、「故国(old country)」との感情的なつながりはより薄れており、第二次世界大戦、ベルリン空輸、ベルリンの壁崩壊などの出来事は、成人した若者にとっては古い歴史となっている。テロとの世界的な戦争や2008年の金融危機のさなか、その政治意識は権力政治よりも気候変動に集中していた。当然のことながら、若いアメリカ人は、これまでの世代ほどアメリカの例外主義の主張に説得力を持たず、積極的な国際主義者(internationalist)の役割を支持する傾向が低い。これらはいずれも、池の向こうで問題が発生するたびに、アメリカが初期対応者として行動することに依然として大きく依存している安全保障パートナーシップにとって良い兆しではない。

繰り返しになるが、たとえトランプが再び大統領になり、より多くのNATO懐疑論者がヨーロッパで権力を握ったとしても、NATOが崩壊するということに私は疑いを持っている。しかし、ヨーロッパとアメリカを徐々に引き離す強力な構造的力が存在しており、11月にアメリカで、そして、ウクライナで、あるいはヨーロッパ自体で何が起きようと、こうした傾向は続くだろう。よって、NATO結成75周年を祝うのは良いが、大西洋を越えた団結に関する充実した声明を耳にしても、それについてあまり真剣に受け止めない方が良い。ヨーロッパとアメリカは、徐々に離れて言っているが、唯一重要な問題は、その乖離がどれくらいのスピードで起こり、どこまで広がるかということだ。

※スティーヴン・M・ウォルト:『フォーリン・ポリシー』誌コラムニスト。ハーヴァード大学ロバート・アンド・レニー・ベルファー記念国際関係論教授。ツイッターアカウント:@stephenwalt
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