古村治彦(ふるむらはるひこ)の政治情報紹介・分析ブログ

SNSI研究員の古村治彦(ふるむらはるひこ)のブログです。翻訳と評論の分野で活動しています。日常、考えたことを文章にして発表していきたいと思います。古村治彦の経歴などについては、お手数ですが、twitter accountかamazonの著者ページをご覧ください 連絡先は、harryfurumura@gmail.com です。X accountは、@Harryfurumura です。ブログ維持のために、著作のお買い上げもよろしくお願いします。

タグ:UAE

 古村治彦です。

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ザ・フナイ vol.225(2026年7月号)

 アメリカとイスラエルによる攻撃から始まったイラン戦争は正式な最終和平が達成されずに3カ月が過ぎようとしている。4月7日にパキスタンの仲介により、2週間の一時停戦が合意され、4月22日からは停戦が継続しているが、お互いにホルム海峡を封鎖し合い、にらみ合っている状況だ。5月24日には、60日間の停戦合意間近という報道が出た。アメリカのドナルド・トランプ大統領は再攻撃を検討しているが、ペルシア湾岸諸国が攻撃をしないように依頼しているという報道も出ているが、アメリカはウクライナ戦争も抱え、思うように武力行使ができない状況にある。
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 イラン戦争に関しては、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相がアメリカのドナルド・トランプ大統領に戦争を「売り込んで」、トランプをやる気にさせて始まったことは、このブログですでにご紹介した。イスラエルにとっての最大の利益は「イランを弱体化させること」であり、中東地域を一種の混乱状態にすることで、自分たちに攻撃を向けないようにして、「目立たない」うちに、「パレスティナ処分」を行うということだ。それが現在はうまくいっている。アメリカを中東地域から撤退させないで、泥沼に足を取られるようにするということにも成功した。さらには、「保険」として、ペルシア湾を挟んでのイランの隣国UAEを味方に引き入れ、依存させ、イランと敵対させることで、「喉に刺さった魚の小骨」のようにすることにも成功した。イスラエルはペルシア湾に対イラン橋頭保(bridgehead)を確保したと言える。

※古村治彦(ふるむらはるひこ)の政治情報紹介・分析ブログ:UAE(アラブ首長国連邦)のOPEC離脱は中東地域の不安定化を助長する↓ https://suinikki.blog.jp/archives/90508844.html

 しかし、アメリカと中東諸国にとっては良い迷惑である。平和と安定がなければ、ビジネスもうまくできない。石油が輸出できなければ、他に主要な産業がないは干上がってしまう。他の産業として、金融や観光を発展させようとしてきたが、これらの産業分野こそは平和と安定が必須条件となってくる。危険な場所に投資はしないし、人は観光に行こうとは思わない。中東諸国が石油を売って儲けたお金(ドル)でアメリカへの投資も行われていた訳だが(ペトロ・ダラー体制)、この投資の流れが細くなれば、アメリカの利益にもならない。このように考えると、イラン戦争はアメリカの国益には適わない。そのことを痛感し、じりじりとしているのがトランプ大統領だろう。一日も早い停戦と和平達成こそがイスラエル以外の世界にとって望ましいことだ。

(貼り付けはじめ)

イラン内戦はアメリカの国益にはならない(An Iranian Civil War Is Not in America’s Interest

-イスラエルは政権崩壊(regime collapse)による混乱を歓迎するかもしれない。しかし、アメリカとその同盟諸国は歓迎できない。

ファリード・ザカリア筆

2026年3月6日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2026/03/06/iran-civil-war-united-states-allies-regime-collapse/

「ジャズの即興演奏による政権転覆(Regime change by jazz improvisation)」。イラン研究の権威であるカリム・サジャドプールは、トランプ政権がイランとの戦争で用いた戦略をこう評した。残念ながら、これはワシントンから発せられる、散漫で、変化に富み、不確実なアプローチを最も的確に表現した言葉と言えるだろう。

トランプ大統領はこの戦争を、イラン国民に政府打倒を呼びかけることで開始した。おそらく彼は、政権が即座に崩壊すると想定していたのだろう。しかし、そうならなかったため、わずか1、2日で方針転換した。政権内部の潜在的な指導者への対処を検討し始め、ヴェネズエラへのアメリカの介入を模範とすべき「完璧な(perfect)」事例だと称賛した。なぜなら、ヴェネズエラへの介入は政権転覆とは程遠く、逮捕したのはたった2人だったからだ。ピート・ヘグセス国防長官は、この戦争が「政権転覆[体制転換]戦争(regime change war)」であることを明確に否定し、側近のエルブリッジ・コルビーも同様の見解を示した。両者とも、目標はイランの軍事力を弱体化させることだけだと述べていた(昨年6月、ステルス爆撃機を含む12日間の爆撃で、イラン軍の多くはすでに「壊滅(obliterated)」していた)。しかしその後、事態は一転し、ドナルド・トランプ大統領はイランとイラクのクルド人指導者に接触し、イランの軍事力を弱体化させるためではなく、テヘラン政権の転覆、ひいてはイランの国境線の変更さえも視野に入れ、戦闘に参加するならば支援を約束した。トランプ大統領は現在、イランの「無条件降伏(UNCONDITIONAL SURRENDER)」なしには合意はあり得ないと宣言している。

つまり、目標は政権交代ではない―ただし、時折そうなることもある。

しかし、この戦争で最も危険な要素は、主役がサックス奏者のように即興で行動していることではない。戦争を遂行する2国が、それぞれ異なる、そしておそらく相容れない目的を持っていることだ。イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相にとって、この戦争の目的は明らかにイスラム共和国の破壊である。彼は、この戦争が40年来の夢の集大成であることを認めた。また、この機会を利用してヒズボラを根こそぎ排除しようとしている。

イスラエルの軍事戦略は、的確かつ巧みに実行され、その目標に完全に合致している。イスラエルの攻撃は、イラン指導部を壊滅させ、軍事力を弱体化させ、指導部施設を攻撃し、さらには警察施設までも標的にしている。『ウォール・ストリート・ジャーナル』紙が報じたように、イスラエルはイランの抑圧的な国家体制を組織的に破壊し、政権崩壊の危機をもたらしている。そして、現状のままでは、イスラエルは目的を達成する可能性が高い。そうなれば、イラン国内に権力の空白が生じ、反乱を招く恐れがあるが、ほぼ確実に内戦へと発展するだろう。誰が権力を握ろうとも、この政権は必ず抵抗するだろう。ここで適切な具体例は、10年以上内戦に苦しみ、数十万人が死亡し、数百万人が難民となったシリアである。

トム・フリードマンが指摘したように、イランは容易に崩壊する可能性のある国だ。クルド人、アルメニア人、アゼルバイジャン人など、近隣諸国と繋がりを持つ民族集団が多数存在する。彼らはこれまで平和的に共存してきたが、歴史が示すように、バルカン半島からイラクに至るまで、秩序が崩壊し力の空白(a power vacuum)が生じると、人々は部族集団に引きこもり、他者への信頼を失う。そして、こうして内戦が始まるのだ。この戦争を煽る要因は、イラン政府が、いかなる新政府や新勢力に対しても戦う覚悟のある、武装した献身的な兵士を多数擁しているという事実である。革命防衛隊は推定20万人規模で、さらに数十万人規模の準軍事組織であるバシジも存在する。そして、約40万人の正規軍も存在する。サダム・フセインの軍隊がアメリカの侵攻後に崩壊し、その多くが反乱軍として再び姿を現したように、革命防衛隊も別の装いで戦い、いかなる新政府も国を支配できないようにするだろうと想像できる。リビアでは、カダフィ政権崩壊から14年以上経った現在もなお、国全体を掌握する単一の勢力は存在しない。国家を破壊することは、再建するよりもはるかに容易なのだ。

イスラエルにとって、これはおそらく受け入れられる結果だろう。最大の敵を排除できたのだから、イラン(とレバノン)に混乱が生じても仕方がない。シリア内戦は、イスラエルが、イスラエルと戦うことを使命とする主要なアラブ国家と対峙しなくてよくなったため、実際にはイスラエルの安全保障を向上させた。しかし、イラン内戦はアメリカの国益にはならず、石油、物資、資金、そして人々の自由な往来を可能とするために、地域の安定と予測可能性に依存しているアメリカの最も緊密なアラブ同盟国にとっても国益にはならない。

ワシントンは、イランを内戦に陥れることなく、この戦争で得た成果―武装解除され、牙を抜かれたイラン―を確実に維持する方法を見つけ出す必要がある。

成果を強化し、この戦争を終結させる方法はまだ残されている。いつものように、カタールは仲介者として有益な役割を果たすことができるだろう。しかし、時間は刻々と過ぎている。いずれこの戦争は転換点(a tipping point)に達し、誰もその波及効果(the spillover)を制御できなくなるだろう。

※ファリード・ザカリア:CNNの番組「ファリード・ザカリアGPS」の司会者であり、最近では『革命の時代(Age of Revolutions)』を著した。彼は『ワシントン・ポスト』紙に週刊コラムを執筆しており、そのコラムは『フォーリン・ポリシー』誌にも配信されている。Xアカウント:@FareedZakaria

(貼り付け終わり)

(終わり)
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ザ・フナイ vol.225(2026年7月号)
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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める

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 古村治彦です。

 昨日に続いて、UAEをテーマにした文章を掲載する。UAEOPECを離脱したことを昨日ご紹介した。UAEはイランに対して強硬な姿勢を保ち、イスラエルに近づいている。その象徴が、2026年5月13日のイスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相のUAE公式訪問である。UAE側はネタニヤフ首相訪問を否定しているが、これは事実としてすでに報道されている。イランはUAEを厳しく非難している。
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 イスラエルは対空防衛システム「アイアンドーム」をUAEに供与しているということだ。これは、UAEにイスラエルの軍事要員が駐留していることを示している。アイアンドームの効果は限定的であろうが、アメリカ軍の役立たずぶりよりはだいぶお役に立ったということになるだろう。UAEは対イラン強硬姿勢が転じて、親イスラエルとなっている。イスラエルに接近している。そして、親イスラエルであることで、アメリカからの支援を受けようとしている。中東地域のイスラム教国の団結は崩れつつある。
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ムハンマド・ビン・ザイドUAE大統領

 イスラエル側からすれば、UAEを手駒として使えるようになる。UAEはイランの隣国である。UAEにアイアンドームを配備することができれば、更に「UAEの安全のためにイスラエル製のミサイルも配備しましょう」ということになる。このミサイルはイラン攻撃に使える。UAEがイスラエル製のミサイル攻撃をすれば、イランの報復はUAEに向かう。UAEもそこまで馬鹿ではないから、ミサイル配備は断るだろう。しかし、アイアンドームという「防御」システムで発射された迎撃ミサイルがペルシア湾を超えて、イランに着弾するということはある。「迎撃に失敗して、そのままイランに飛んでいってしまった」ということもできる。
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 イランを抑え、イスラム教国を分断し、中東地域を不安定化させるというのがイスラエル、正確にはネタニヤフ首相が望む姿である。そのためにUAEを利用している。中東知己の不安定化は世界にとって不幸である。石油価格が安定しない、石油自体を確保しにくいということになれば経済にも悪影響が出る。イスラエルの好戦的、独善的な姿勢が改められない限り、世界の不幸は続く。

(貼り付けはじめ)

イランとの戦争の中、UAEはイスラエルとの関係強化を選択し、サウジアラビアとの関係悪化のリスクを冒している(UAE chooses to deepen ties with Israel amid war with Iran, risking rift with Saudis

-専門家たちは、UAEはイスラエルを「他の国と同様(like any other country)」と捉え、安全保障上のパートナーと見なす現実的な見方をしている一方、リヤドをはじめとする湾岸諸国はイェルサレムをならず者国家(a rogue state)と見ている。

AFP通信、『ザ・タイムズ・オブ・イスラエル』紙スタッフ

2026年5月15日

『ザ・タイムズ・オブ・イスラエル』紙

https://www.timesofisrael.com/uae-chooses-to-deepen-ties-with-israel-amid-war-with-iran-risking-rift-with-saudis/

アラブ首長国連邦ドバイ発-イランからのミサイル攻撃によって経済的未来が脅かされたアラブ首長国連邦(UAE)は、イスラエルとの関係を強化し、かつての同盟国でありライヴァルとなったサウジアラビアとの溝を深め、テヘランに対して強硬な姿勢を取っている。

この賭けにより、人口の9割が外国人である観光大国UAEは、2800機以上のドローンとミサイルを迎撃するためのイスラエル製防空システムへのアクセスを得た。アナリストたちは、これは安定を基盤とした国家モデルを維持するために、防衛を最優先事項としたことを意味すると指摘する。

しかし、イスラエルとの協力強化は、UAEが最大の脅威と見なすイランをさらに刺激するリスクを孕み、湾岸諸国の多くと同様にイスラエルを地域における重大な存在のならず者と見なすサウジアラビアとの関係をさらに悪化させる恐れがある。

●安全保障協力(Security cooperation

UAEは将来を見据えており、経済復興を支える最良の安全保障パートナーとしてイスラエルを位置づけている」と英チャタムハウスの中東・北アフリカプログラム責任者サナム・ヴァキルは述べた。

安全保障と防衛の面において、この判断は功を奏したようだ。

火曜日、マイク・ハッカビー駐イスラエル米大使は、イスラエルが戦争中にアイアンドーム防空システムと人員をUAEに派遣したことを認めた。

戦争中、UAE当局は、攻撃が降り注ぐ中で空虚な連帯(hollow solidarity)を示すアラブ諸国を名指しこそしなかったものの、激しく非難してきた。

「建国以来、これほど深刻な脅威に直面したことはないのに、危機感が足りなかった」とUAE政府に近いレバノン系UAE人のメディア幹部で政策顧問のナディム・コテイチは語っている。

「しかし、この戦争では、イスラエルは必要な時にUAEのために姿を見せた」。

イスラエル軍やイスラエルの指導者たちは、アメリカと共同でイランに対する作戦を開始した目的は、イラン政権の軍事力を弱体化させ、核兵器や弾道ミサイル計画を含むイランの脅威を遠ざけ、イラン国民が政権を打倒するための「条件を生み出す(create the conditions)」ことだったと述べている。

トランプ大統領が4月に宣言した停戦は、戦争の主要な目標をほぼ達成しないまま終わった。

●微妙な問題が残り続けている(Sensitivities remain

UAE当局者は、戦後の湾岸地域におけるイスラエルとの協力関係を模範として挙げることがある。

先月、UAE大統領顧問のアンワル・ガルガシュは、イランの地域戦略の結果、湾岸地域におけるイスラエルとアメリカの影響力は増大する一方だと述べた。

しかし、今のところ、イスラエルと国交を正常化した湾岸諸国はバーレーンとアラブ首長国連邦(UAE)のみであり、アラブ諸国にとってこれは非常にデリケートな問題である。

水曜日、ベンヤミン・ネタニヤフ首相は、イラン戦争中にUAEを秘密裏に訪問したと述べたが、アブダビ側はこれを即座に否定した。

アブラハム合意は当初、国交正常化の動きに勢いを与えたものの、2023年10月7日にハマス主導のテロリストがガザ地区で虐殺事件を起こし、戦争が勃発したことで、その流れは急停止した。この事件はアラブ世界全体に怒りを巻き起こし、ネタニヤフ首相はその怒りの対象となった。

キングス・カレッジ・ロンドンのアンドレアス・クリーク教授によると、ネタニヤフ首相がUAE訪問を公表したのは、イスラエルにおける、「選挙を控えた政治家としての力と才能(statesmanship in the run-up to the elections)」をアピールするためだったという。

前述のヴァキルはAFP通信に対して、「イスラエル側は両国関係を過剰に宣伝しようとしている。これはどちらかというと、実質的な安全保障と経済のパートナーシップに近い」と述べた。

ヴァキルはまた、UAEは今後もパートナーシップの多様化を進め、防衛と経済にとって重要なヨーロッパおよびアジアの同盟諸国との関係を拡大していくと述べた。

UAEとサウジアラビアの分裂(UAE-Saudi rift

中東地域での戦争勃発以来、UAEとイスラエルの関係は、この湾岸諸国サウジアラビアにとって課題となっている。

国際的な金融ハブとしての地位と、アメリカ軍の拠点を擁しイスラエルとの関係も深いアメリカにとっての主要同盟国としての地位のために、UAEはイランにとって格好の標的となっているとアナリストは指摘する。

イスラエルとの関係強化は、湾岸地域の安定に対する脅威としてイスラエルとイランのどちらがより大きいかをめぐるUAEとサウジアラビアの意見の相違を浮き彫りにし、昨12月のイエメン問題での対立以来、両国間の溝をさらに深めている。

アブダビは、たとえそれが伝統的な同盟関係を断ち切ることを意味するとしても、独自の道を歩む姿勢を示している。今月、サウジアラビア主導のOPECから離脱し、以前にはアラブ連盟(the Arab League)を激しく非難した。

また、イランに対してはより強硬な姿勢を取り、イランを敵とみなし、いかなる和平合意においても最大限の要求を表明している。

コテイチはUAEの立場について、「イスラエルの卓越性という考えに固執する人もいれば、より現実的で、イスラエルを他の国と同様に捉え、・・・地域に統合できると考える人もいる」と述べた。

サウジアラビアはアブラハム合意後、イスラエルとの関係正常化を検討していたが、ガザ戦争によってその努力は突然頓挫した。

現在、サウジアラビア王国は、湾岸諸国の多くと同様に、イスラエルをならず者とみなしている。

イスラエルは、2023年10月7日にハマスがガザ地区で約1200人を殺害し、251人を人質に取った虐殺事件を受けて、ガザ戦争を開始した。その後、イランの代理勢力であるレバノンのヒズボラ、イエメンのフーシ派とも戦闘を繰り広げた。両組織はイランを支援するために戦闘に参加した。

イスラエルはさらに、イランの核・ミサイル脅威を排除するため、イランとの二度の戦争も経験している。

しかしながら、イスラエルが自国の存立に対する脅威を受け入れようとしない姿勢は、地域の一部の国々から強い反発を招いている。

最近の論説で、元情報機関長官のトゥルキ・アル・ファイサル王子は、イスラエルが「地域に自国の意思を押し付ける(to impose “its will on the region”)」ために、サウジアラビアとイランの間で「戦争を引き起こそうとしている(planning to “ignite war”)」と非難した。

=====

ベンヤミン・ネタニヤフ首相がイスラエルとUAEの関係を強調する一方で、UAEの指導者たちは慎重な姿勢を崩さない(As Netanyahu spotlights Israel’s ties to the UAE, its rulers prefer to be discreet

ジュリア・フランケル筆

2026年5月16日

『ワシントン・ポスト』紙

https://www.washingtonpost.com/world/2026/05/16/israel-uae-netanyahu-gaza-palestinians/9fa7ffea-50e4-11f1-97e7-22c6c29ff0d8_story.html

イェルサレム発(AP通信)-イスラエルとアラブ首長国連邦(UAE)の緊密な関係は、通常は秘密裏に管理されている。しかし今週、その関係が公になり、イラン核戦争が地域全体を巻き込む中で、同盟関係の根底にある緊張が浮き彫りになった。

イスラエルとUAEの関係強化に最初に注目を集めたのは、マイク・ハッカビー駐イスラエル米大使だった。イスラエルがUAEをイランの攻撃から守るため、アイアンドーム防空システムと運用要員を派遣したことを明らかにした。

その後、ネタニヤフ首相は、戦争中にUAEを密かに訪問していたと発言。これに対し、UAEは慌てて公式に否定した。

ネタニヤフ首相とトランプ政権は、地域における反イラン勢力を強化する一環として、両国間の同盟関係を大々的に宣伝しているが、湾岸諸国はこうした関係を控えめに扱う傾向にある。これは、イスラエルとの公的な関係が、この地域において依然として大きな論争の的となっていることを示している。

イスラエルとUAEの関係について知っておかねばならないことを如何に掲載する。

UAEは何故ネタニヤフ首相の訪問を否定したのか?(Why would the UAE deny Netanyahu’s visit?

ネタニヤフ首相が戦時中にアブダビを訪問していたことを明らかにしたことは、特にハッカビー大使がイスラエルとUAE両国間の軍事協力を確認した直後だったこともあり、波紋を呼んだ。イスラエルの治安責任者も訪問したとの報道が飛び交った。

UAEの国営通信社WAMは、訪問に関する「流布している報道(reports circulating)」を否定する記事を掲載した。WAM通信社は、イスラエルとの関係は「周知の、公式に宣言されたアブラハム合意の枠組みの中で行われており、不透明な、あるいは非公式な取り決めに基づくものではない」と述べた。

また、この記事では、イスラエル軍代表団がUAEを訪問したという事実も否定した。

「この件は、アブダビの戦時体制という姿勢を公然と覆すことになり、事態を複雑化させる。だからこそ、否定声明はこれほど迅速に、そして慎重に言葉を選んで発表されたのだ」とマルコム・H・カー・カーネギー中東センターに所属するサウジアラビア在住の研究員ヘシャム・アルガナムは述べた。

アラブ首長国連邦(UAE)は2020年にイスラエルとの国交を正常化したが、UAEの指導者たちはこの同盟関係をある程度秘密にしておきたいと考えている。

中東地域のアラブ諸国やイスラム諸国では、ユダヤ国家に対する反感が根強く残っている。こうした反感は、イランの支援を受けた武装組織ハマスが2023年10月7日にイスラエルを攻撃し、約1200人を殺害、251人を人質に取ったガザ紛争によってさらに増幅された。

イスラエルによるガザ地区への攻撃は、ガザ地区の大部分を壊滅させ、ガザ保健省によると7万2700人以上のパレスティナ人を殺害した。ガザ保健省は民間人と戦闘員の死者を区別していない。この紛争は地域全体に波及し、イスラエルはレバノンとイエメンでイランの支援を受けた武装勢力に対し、死傷者と甚大な被害をもたらす作戦を展開し、カタールとシリアの武装勢力の標的を攻撃した。

「私たちは中東地域の醜いアヒルの子(the ugly duckling)だ」と、イスラエルの保守系シンクタンクであるイェルサレム安全保障外交センターのダン・ディカー所長は述べた。

アブラハム合意加盟国と広範な協議と関係を築いてきたディカーは、自身が頻繁に交渉する地域当局者は常に、物事を秘密裏に進めるよう求めたと語った。

●イスラエルとUAEの同盟関係はどのような基盤に基づいているのか?(What is the Israel-UAE alliance based on?

イスラエルとUAEは、イランとの戦争中に軍事的に協力した。イスラエルは、宿敵イランに地理的に近い国家であるUAEに防衛拠点を確保できたことで恩恵を受けた。一方、アラブ首長国連邦(UAE)は、アイアンドーム防空システムなどのイスラエル製軍事技術へのアクセスを得た。

この同盟は両国の経済にも恩恵をもたらしており、2020年以降、両国間の貿易は着実に増加している。

中東地域で長らく孤立していたイスラエルは、アラブ諸国とのパートナーシップによって正当性を獲得した。そしてUAEはワシントンにおける影響力を強めた。

UAEは、エジプト、ヨルダンに次いで、イスラエルと正式な外交関係を樹立した3番目のアラブ国家となった。

●ネタニヤフ首相は何故今回の訪問を公表したのか?(Why did Netanyahu publicize his visit?

ネタニヤフ首相は、イスラエルで選挙シーズンを控え、国内で激しい反対に直面している。中東地域における影響力のある仲介者(power broker)としての地位を支持層に示すことができれば、自身のイメージ向上につながると考えている。

イラン戦争は、ネタニヤフ首相の国内支持率向上にはほとんど貢献しなかった。支持率向上につながり、同時にトランプ大統領との緊張感のある関係を強化する可能性のある要因の1つは、アラブ首長国連邦(UAE)に倣って、より多くの地域大国がUAEに加わることだろう。イスラエルは現在、アブラハム合意への参加を目指し、アゼルバイジャンと協議中である。

しかし、ネタニヤフ首相がイスラエルとUAEの緊密な関係を公表することで、他国にとって模範となることを期待していたとしたら、あまり期待しない必要があるかもしれない。

アブラハム合意への参加を拒否してきた地域の大国であるサウジアラビアは、イラン戦争を通して異なるアプローチを採用してきた。サウジアラビア在住の学者アルガナムによると、サウジアラビアはテヘランとの対話ルートを維持し、パキスタンによる両国間の仲介を支持してきたという。

「その目的は、イスラエルに対して明確な立場を示すことではない。リヤドが主導権を握っておらず、制御もできない戦争に巻き込まれることを拒否することだ」とアルガナムは述べた。

アルガナムは更に次のように述べた。「リヤドがパートナー国とあらゆる選択肢をオープンに議論し、一つの路線に固執しないこと自体が戦略的なシグナルだ。地域安全保障体制は、ワシントンとテヘランが二国間交渉で合意した内容から引き継ぐのではなく、地域レヴェルで構築されるべきだ」

※イェルサレムを拠点とするフランケルは、イスラエル全土とイスラエル占領下のヨルダン川西岸地区から報道を行っている。彼女の報道は、戦争、人権、避難民問題、刑事司法に焦点を当てている。

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 古村治彦です。

 2026年5月1日、アラブ首長国連邦(UAE)が石油輸出国機構(OPEC)から離脱を表明した。OPECは1960年に設立された石油の生産量や価格を石油関連巨大資本(メジャー)から守るための国際組織であり、現在は9カ国で構成されている。OPECを主導しているのはサウジアラビアである。UAEOPEC内では2位の生産量を誇っていたが、離脱した。これによって、生産量や輸出先などを決定する自由裁量が増加することになる。
 UAEは経済多様化を進めており、石油以外の金融、観光、運輸、再生可能エネルギー、不動産などの石油以外の経済分野がGDPの約75%を占めるまでになっている。その象徴がドバイである。現在のイラン戦争ではイランからの攻撃に晒されてしまったが、世界を代表する金融センターとなっている。UAEは石油に頼る必要がない経済になっているので、OPECの「ご近所づき合い」をしなくても済むことになった。

 OPECの「ご近所づきあい」をしなくてよくなったことで、OPECは石油生産に関して、自身で決められる自由裁量を欲するようになった。OPECを支配しているのはサウジアラビアであり、サウジアラビアの意向で物事が決まる。そうなると、UAEの望むとおりにならないことも出てくる。UAEは豊富な埋蔵量を背景にして現在よりも生産量を増やすことを望んでいるが、サウジアラビアは価格の高値維持を望む。ここで利害が一致しないことで、サウジアラビアとの対立ということまで起きている。
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 そして、今回のイラン戦争である。UAEはイスラエルとの国交正常化を行っており、アメリカ軍基地も存在するために、イランからの攻撃の標的となった。ホルムズ海峡封鎖の影響も大きい。UAEはホルムズ海峡の外側にフジャイラという石油積み出し港があり、ここからホルムズ海峡封鎖の影響を受けずに、石油を輸出することができる。イラン側はフジャイラを攻撃したが、これはUAEを反イラン、親イスラエルへと動かすことになった。中東地域において新たな火種ということになる。しかも、UAEはイランとペルシア湾を挟んでの隣国である。ペルシア湾とホルムズ海峡における不安定な状況が新たに起きるということになれば、たとえイラン戦争が停戦となっても、中東地域における不安定状況が残り続ける。そうなれば、アメリカ軍は容易に撤退することはできない。UAEをイランから守るという役割を放棄することはできない。中国に肩代わりということも現在のところ考えにくい。
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 UAEが石油を増産して、石油価格が低下してくれればありがたいが、UAEとイランの関係の悪化は気がかりだ。もちろん、UAEは馬鹿ではないので、ドバイを危険に晒すようなことはしないだろうが、イランとの関係悪化はペルシア湾、ホルムズ海峡、中東地域における緊張と不安定化をもたらす。それを歓迎する国がある。イスラエルだ。イスラエルはUAEをイランに対する抑えの駒として使えることになる。イスラエルがUAEに接近しているという内容の記事を明日、ご紹介する。中東情勢は複雑怪奇、である。

(貼り付けはじめ)

UAEOPEC離脱の真の意味(The Real Meaning of the UAE’s OPEC Exit

-地政学的な再編は、石油市場だけにとどまらない、はるかに深い意味を持つ。

アミール・ハンジャニ筆

2026年5月1日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2026/05/01/uae-opec-exit-meaning-oil-middle-east/

アラブ首長国連邦(UAE)が5月1日にOPECOrganization of the Petroleum Exporting Countries、石油輸出国機構)を脱退する際、それは単に組織を放棄するのではなく、もはやOPECが自国の利益に合致しないと宣言することを意味する。この違いは重要である。アブダビの脱退は、単一の不満に対する反応ではなく、3つの要因が重なり合った結果である。すなわち、イラン・イラク戦争、サウジアラビアとの対立の激化、そして長年にわたり進められてきたワシントンとの戦略的再編である。

アメリカとイスラエルによるイラン戦争は、UAEを予想もしなかった形で最前線国家(a front-line)へと押し上げた。イランは、アブダビが数十年にわたりワシントンと戦略的に連携してきたことを理由に、UAE領土への攻撃を正当化した。この連携は、2024年にアメリカがUAEを「主要防衛パートナー(major defense partner)」に指定したことで正式なものとなった。イランの攻撃はフジャイラの工業地帯を直撃し、ジェベル・アリ港を揺るがし、ドバイのスカイラインを煙で覆った。UAEはこの打撃をほぼ単独で受け止めた。湾岸協力会議(GCC)加盟国は連帯を示したが、アラブ首長国連邦(UAE)大統領顧問のアンワル・ガルガシュが月曜日の湾岸諸国影響力フォーラムで指摘したように、彼らの政治的・軍事的対応は「歴史上最も弱いもの(the weakest historically)」だった。OPECの発表前夜に公に表明されたこの不満は、不吉な兆候となった。

イランとの紛争は、歴史的な規模のエネルギーショックを引き起こした。イランによる湾岸諸国のインフラへの攻撃とホルムズ海峡の航行への脅威によってサプライチェーンが寸断されたため、OPECの総生産量は3月に27%減の1日あたり2079万バレルにまで落ち込んだ。その結果生じた供給量の減少は、わずか1ヶ月で1日あたり788万バレルにも達し、1973年の石油禁輸措置や1991年の湾岸戦争をも上回った。世界の原油と液化天然ガスの約5分の1が通過するホルムズ海峡は、現在、激しい攻防にさらされる要衝となっている。このような状況下で、相当な余剰生産能力を保有し、長年にわたりその拡大に投資してきたアラブ首長国連邦(UAE)は、極めて重要な地政学的価値を持つ資産を保有している。生産割当制と合意形成型のガヴァナンスを特徴とするOPECに留まることは、もはやアブダビの利益を適切に代表できない集団的枠組みに、その資産を従属させることを意味する。こうした観点からすれば、離脱の論理は合理的であると言える(The logic of exit is, in that light, rational)。

しかしながら、今回の離脱のタイミングと方法は、より根深い問題、すなわちサウジアラビアとの長年にわたる対立の結果をも反映している。湾岸地域の安定の要と称されるリヤドとアブダビの関係は、石油の支配権をめぐる根本的な問題をめぐり、長年にわたり静かに亀裂を生じさせてきた。

この対立の根源は、2016年にロシアとOPECプラスが結成されたことに遡る。当時、UAEは自国に割り当てられた生産枠が、急速に拡大する生産能力を反映していないと感じ始めた。2020年の新型コロナウイルス感染症による価格競争では、サウジアラビアが主導して大幅な減産を実施し、この溝はさらに深まった。アブダビは、生産量増加に多額の投資を行ってきたにもかかわらず、サウジアラビアの減産は不当な負担だと考えた。2021年までに、UAEはサウジアラビアが支援する生産量拡大を公然と拒否するようになり、最終的にアブダビに日量365万バレルというより高い基本生産枠を与えることで決着がついた。この妥協は意見の相違を表面化させただけで、根本的な解決には至らなかった。

その後、緊張関係はより構造的なものへと発展した。サウジアラビアは、財政均衡と「ビジョン2030」プロジェクトの実現のために、ブレント原油価格が1バレル80ドル近辺で推移することを必要としており、供給管理と高価格維持に強い関心を持っている。一方、ドバイが金融、物流、航空のグローバルハブとして機能し、経済の多角化をはるかに積極的に進めてきたアラブ首長国連邦(UAE)は、高価格の底値への依存度が低い。アブダビが石油部門に求めるのは価格管理ではなく、生産量の最大化、つまりアブダビ国営石油会社(ADNOC)の生産能力拡大に投資された数十億ドルの収益である。これらは単なる政策嗜好の違いではなく、経済モデルの違いと言える。UAEのエネルギー大臣は火曜日、アブダビが離脱を発表する前にリヤドに相談すらしていなかったことを認めた。この事実こそが、両国関係の現状を如実に物語っている。 OPECの絶対的なリーダーであるリヤドは、プレスリリースを通じてこの離脱を知った。

この物語におけるワシントンの役割も同様に重要である。アブラハム合意、イスラエルとの安全保障パートナーシップの深化、アブダビを湾岸諸国にとって不可欠な同盟国として位置づけること、これらは全て、アメリカがUAEから手を引いた場合に政治的にも戦略的にも大きな代償を払うことになるよう仕向けるためのものだ。この賭けは今まさに試されており、ワシントンは対応策を講じたようだ。スコット・ベセント米財務長官は、OPECの発表に先立ち、アブダビへの緊急ドルスワップ協定を公に支持した。長年、OPECはアメリカ軍の保護を悪用していると批判してきたドナルド・トランプ米大統領は、事実上、アブダビが離脱するための外交的後ろ盾を与えたことになる。UAEが自由に生産したいという願望と、トランプ政権がより多くの石油を低価格で世界市場に供給したいという願望が一致しているのは偶然ではない。構造的に言えば、これはワシントンとアブダビの間で何年も前から進められてきた利害の一致なのだ。

UAEはまた、中国との関係を巧みに利用してきた。アブダビのハリド・ビン・ムハンマド・アル・ナヒヤーン王太子の最近の北京訪問は、数々の経済協定を生み出した。また、UAE当局は、ドル流動性が逼迫した場合、一部の石油取引を人民元建てで価格設定する可能性を示唆している。これは、2023年にサウジアラビアが行った戦略と同様のもので、アメリカがリヤドとの外交関係を加速させるきっかけとなった。アブダビは中国に軸足を移しているのではなく、中国を利用してワシントンからより有利な条件を引き出そうとしている。UAEの政府系ファンドは依然として、アメリカとヨーロッパの資産に圧倒的に偏っている。北京のシグナルは、軸足の転換ではなく、ワシントンに対し、アブダビとのパートナーシップを当然のことと考えてはならないという警告として、慎重に調整された交渉材料と解釈するのが適切だろう。

それでは、OPEC自体にとって、今回の離脱は何を意味するのだろうか? その損失は深刻であり、中期的には存続に関わる可能性もある。UAEは、今回の離脱以前はOPEC全体の供給量の12%を占める、OPEC3位の産油国だった。アンゴラは割当量をめぐる争いを理由に2024年に離脱した。カタールは2019年に脱退した。それぞれの離脱は特異な事例として捉えられたが、その累積的なパターンは、アブダビをも巻き込んだ戦略的乖離という同じ力によって、カルテルが内部から空洞化していく様相を呈している。サウジアラビアはOPECの組織構造と、それを主導する政治的意思を維持しているが、歴史的な供給混乱の時期に、規模が縮小し能力が低下した組織を率いることは、控えめに言っても困難だろう。リヤドは今後、構造的に弱体化したOPECを率いていくことになる。

イラン核戦争は湾岸諸国を統一するどころか、むしろ既存の断層線(fault line)に沿って分裂させた。イエメン政策、経済競争、そしてワシントンとテヘランとの関係管理に関する異なる判断など、様々な面で意見の相違が加速している。この分裂は、湾岸諸国がイランに対して取った全く異なる姿勢にも表れている。戦前のアメリカとイランの核交渉を主催し、地域で最も一貫した仲介役を務めてきたオマーンは、イランの攻撃が自国領土を直撃しているにもかかわらず、外交を呼びかけ続けている。イランと広大なガス田を共有し、歴史的にテヘランとの関係を維持してきたカタールは、共存を強調し、外務省は両国が「人類の未来において隣人となる(will be neighbors for the future of humankind)」と述べている。サウジアラビアも、イランの攻撃を受けているにもかかわらず、同様に緊張緩和を望む姿勢を示しており、サウジアラビアの経済変革計画を脅かす戦争を警戒している。

アラブ首長国連邦(UAE)は単独で強硬路線(the hard line)を貫き、賠償(reparations)、ホルムズ海峡の無条件再開(he unconditional reopening of the Strait of Hormuz)、そしてイランの国力の全面的な縮小を要求している。OPECからの離脱は、アブダビをリヤドだけでなく、より広範な湾岸諸国の合意からも切り離す地政学的姿勢の結果である。UAEは、カルテルの一員としてではなく、主権国家として行動することが自国の利益に最も資すると結論付けた。この判断が正しかったかどうかは、戦争がどのように終結し、そこからどのような地域構造が生まれるかにかかっている。OPECの決定が明確に示しているのは、共通の制度と統一された利益という虚構の上に築かれた旧来の湾岸諸国間の協定はもはや存在しないということだ。

※アミール・ハンジャニ:クインシー責任ある国家運営研究所の理事であり、ニューヨークに拠点を置く戦略アドバイザリー会社KARVのパートナーである。Xアカウント:@ahandjani

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ザ・フナイ vol.225(2026年7月号)
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シリコンヴァレーから世界支配を狙う新・軍産複合体の正体 
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世界覇権国 交代劇の真相 インテリジェンス、宗教、政治学で読む

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める

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 2020年8月13日、イスラエルとアラブ首相国連邦(UAE)が外交関係樹立に向けて動くことに合意したということをアメリカのドナルド・トランプ大統領がホワイトハウスの大統領執務室で発表した。トランプ大統領の後ろには、ジャレッド・クシュナー(トランプ大統領の娘イヴァンカの夫)上級補佐官、スティーヴン・ミュニーシン財務長官が並んで立っていた。このことから、今回の合意を主導したのは、トランプ政権内の関与政策派(現実主義派、穏健派)だということが分かる。
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 今回の合意で、中東地域に「対話」の必要性が認識されるということが述べられている。中東地域では、2つの大国、サウジアラビアとイランが軸となり、そこにイスラエルが絡んで複雑な様相を呈している。加えて、歴史的な経緯から対話など望むべくもない状況であるが、そこにUAEとイスラエルの外交関係樹立というニュースが飛び込んできた。「イスラエルの存在を認めるのか」「イスラエルとの共存を認めるのか」という根本的な問題はある。しかし、現実的に見て、イスラエルを地上から消し去ることはできない。だが、イスラエルがあまりに傲慢に、かつ自己中心的過ぎるほどの行動を続けていくならば、そのことが存在を危うくしてしまうことは考えられる。

 イスラエルによるヨルダン川西岸地区の一部併合は、今回の合意の中では触れられていない。この併合計画はイスラエルの現実主義的なイスラエル労働党の流れではなく、中道から右派、現在のベンヤミン・ネタニヤフ政権による強行的過ぎる計画で、凍結することになるのではないかと私は考える。ジャレッド・クシュナー上級補佐官は、イスラエルの存立のために強硬な計画を凍結させ、その代償でUAEとの関係樹立を進めたということになるのだろうと思う。

 アメリカ大統領選挙に関連しては、今回の合意はあまり大きな影響は与えないだろう。アメリカ国民の関心は完全に内向きになっており、国際関係で言えば、対中脅威論に同調するという程度のことだろう。それでも、今回の合意は大統領選挙で争う、民主党のジョー・バイデンも賛意を示したことでも分かる通り、一歩前進ということになる。

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イスラエルとアラブ首長国連邦の外交関係樹立についての5つの論点(5 takeaways from Israel and UAE opening diplomatic ties

ロウラ・ケリー筆

2020年8月13日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/policy/national-security/511944-5-takeaways-from-israel-and-uae-opening-diplomatic-ties

トランプ大統領は、イスラエルとアラブ首長国連邦(UAE)が正式な国交を樹立すると発表した。これは歴史的な外交上の前進である。

しかし、専門家の間では中東地域の変動に対する影響について意見が分かれている。一部の専門家は、これはイランに対抗するための試みの一環として現実を承認した動きだと主張し、別の専門家たちは長期的な戦略というよりも短期的な政治的目標の反映だと述べている。

一方、批判的な人々は、イスラエルがヨルダン川西岸地区の一部の併合計画を凍結することをアメリカが支持していることについて、トランプ大統領のイスラエルとパレスチナとの間の和平プランの重要な部分を損なうものだとして重大な関心を持っている。

これから中東の外交における今回の新しい進展に関する5つの論点を見ていく。

(1)トランプ大統領は外交政策面からの再選に向けた促進材料を獲得(Trump gets pre-election foreign policy boost

トランプ大統領は大統領選挙まで3カ月を切った段階で、外交政策上の勝利を売り込むことができるようになっている。イスラエルとUAEの関係正常化に向けた動きは、イスラエル・パレスチナ紛争の解決のための、トランプ政権の掲げる「繁栄のための平和(Peace to Prosperity)」枠組みの重要は要素となる。

右派、左派両派に属する多くの人々がこの動きを称賛した。その中には大統領選挙でトランプ大統領と戦う民主党の大統領候補者ジョー・バイデンも含まれている。バイデンは声明の中で、今回の合意は、オバマ政権を含む「これまでの複数の政権の努力」の積み重ねの結果だと主張している。バイデンは、合意の発表を受けて「喜ばしい」と述べた。更に、彼自身と副大統領候補であるカマラ・ハリス連邦上院議員(カリフォルニア州選出、民主党)は今年の11月に当選した暁には、「この前進の上に更に成果を築き上げるために努力する」と述べた。

イスラエル・パレスチナの和平計画はトランプ大統領の外交政策公約の礎石であり、義理の息子で上級補佐官のジャレッド・クシュナーの2年間の努力の成果である。

UAEは今年1月に和平計画が初めて明らかにされた時に、国際社会とアラブ世界の多くの国々が拒絶を表明する中で、積極的に支持を表明した国の一つだった。

しかし、その支持も、イスラエルのベンジャミン・ネタニヤフ首相が今年6月にヨルダン川西岸地区を併合しようとした際に、ほぼ取り消される事態となった。これはトランプ大統領による計画に基づいたものであった。

木曜日のアメリカ、イスラエル、UAEの間での発表では、併合については議論をしていないと特に言及された。

ワシントンDCにあるシンクタンク「ファウンデーション・フォ・ディフェンス・オブ・デモクラシーズ(FDD)」の研究担当の副所長を務めるジョナサン・シャンザー「今回の発表は、クシュナー・アプローチにとっての決定的な勝利だと考えられます。地域の利益と地域の平和はヨルダン川西岸地区の一部の併合よりも優先されたということなのです」と述べた。

しかし、ワシントンDCにあるシンクタンク「アラブ・センター」の上級部長ハリリ・ジャウシャンは、今回の合意は、アブダビ(UAE政府)からの強力なプッシュによるもので、それはUAE自身がトランプ大統領への支持を促進することで利益を得ようとする動きの一環であると述べている。

「公開の合意はUAEによる公の試みということが言えるでしょう。UAEはトランプ大統領が危機に瀕していると考えており、それを何とかしようと考えたのでしょう。UAEはトランプに大統領の地位にとどまって欲しいと考えているのです」。

(2)UAEによる前進は他のペルシア湾岸諸国とアラブ諸国についての疑問を持たせることになった(A step forward by the UAE raises questions for other Gulf and Arab states

イスラエルと実効的な平和条約を結んでいるのはエジプトとヨルダンだけだ。その他の全てのアラブ諸国は2002年に、パレスチナ紛争と主権を持つパレスチナ国家樹立の話し合いによる解決が実現するまでイスラエルを承認しないことで合意した。

ジャウシャンは、今回の合意は、UAEによるイスラエル不承認という考えを損なうものだと述べている。

ジャウシャンは次のように述べている。「二国共存による解決という死体を埋葬してくれる人を探してきたようなものなのです。誰もそんなことをしてくれそうにありませんでした。これはもう一つの機能不全に陥った考えにも同様なことなのです。そのもう一つの考えとはアラブ諸国がイニシアティヴを取るというものです」。

「ワシントン・インスティテュート・フォ・ニア―・イースト・ポリシー」の上級研究員ガイス・アル=オマリは、UAEによる大胆なステップはしかしながら、他の湾岸諸国とアラブ諸国からすぐに追随者が出ることはないだろうと述べている。

オマリは次のように述べた。「この種の新たな展開は広範囲の準備と裏での根回しを必要とします。UAEはペルシア湾岸諸国の中で最も活発な外交を展開している国でしょう。そして、リスクを取ることを厭いません」。

オマリは続けて次のように述べている。「今回の動きはリスクがあります。パレスチナ人の多く、カタール、トルコ、そしてイランからの攻撃に晒されることもあるでしょう。その他の湾岸諸国は事態がどのように進展するかを様子見するでしょう。より長期で見れば、追随する2国が出るでしょう。それはバーレーンとオマーンでしょう」。

(3)中東地域の政治的なダイナミクスが変化(A shifting political dynamic in Middle East

オマリは、イスラエルとの関係を樹立するというUAEの決定は、アラブ諸国間に存在する緊張関係を深めることになるだろうが、新しい関係を作り出すことはないだろうと述べた。

オマリは次のように述べている。「実質的にイランの影響を受けた国々(シリアとレバノン)、カタール、アフリカ北部の国々を含む一部のアラブ諸国は、アラブ連合におけるUAEの会員資格をはく奪、もしくは凍結することを目指す可能性があります。しかし、UAEはサウジアラビア、エジプト、ヨルダンなどのアラブの大国グループの一部です。これらの国々は同盟関係が崩れることを望まないでしょう。パレスチナ自治政府は、UAEの動きに対する怒りに任せて動くのではなく、UAEのアラブ諸国中の同盟国に反感を持たせないようにすることが重要です」。

FDDのシャンザーは、UAEの動きは、イスラエルとヨルダンの関係を強める可能性があると述べている。ヨルダンはヨルダン川西岸地区の併合が進められれば大きな圧力を感じている。

シャンザーは「UAEがイスラエル国内でのヨルダン川西岸地区の併合についての議論を明確に止めたという事実は、ヨルダンとイスラエルの緊張関係を取りぞくことを意味します」とも述べている。

(4)イランはトランプ大統領、アメリカの同盟諸国の動きによって決断する方向に向かう(Iran drives decisions for Trump, allies

イスラエルとUAEの正式な関係樹立はトランプ政権がイランに対する圧力を強める中で起きた。トランプ政権はオバマ政権下でのイランとの核開発をめぐる合意の最後の部分を破壊しようと圧力をかけている。これはイラン政府に対してアメリカが圧力を強めていることを示すシグナルである。

ワシントン・インスティテュートのオマリは「イランは、イスラエルとUAEの間の利益の転換の真ん中にいます。両国はイランを自国の存在に関わる根本的な脅威と見なしています。今回の動きは対イラン枢軸の形成を促すことになるでしょう」と述べている。

大西洋協議会の「フューチャー・オブ・イラン・イニシアティヴ」のディレクターを務めるバーバラ・スラヴィンは、新たな正式な関係は、外交と対話の力を示すものであり、イラン政府はそのことを認識すべきだと述べている。

スラヴィンは次のように述べている。「イランは今回の合理について非難するでしょう。しかし、テヘランにいるイランの最高指導者層は、イスラエルを承認しないことがいかに時代遅れで、非生産的なことかを考えさせられることになるでしょう。中東地域に存在する全ての国々は、すぐに対話を持つ必要があります。特に長年にわたり敵対してきた国々の間での対話は必要です。つまり、今回のUAEとイスラエルの動きを単に“反イラン的”と形容するのは、地域の和解を更に困難にするでしょう」。

(5)しかし今回の合意は有権者の共感と支持を得られるだろうか?(But will it resonate with voters?

木曜日の発表は、ワシントンの外交政策エスタブリッシュメントから興奮をもって受け入れられた。しかし、大統領選挙に対する影響は最小限度のものとなるだろう。

エモリー大学政治学教授アラン・アブラモビッツは「外交政策は現状ではほぼ注目されていません」と述べた。

有権者たちの関心は新型コロナウイルス感染拡大、経済の危機的状況、ジョージ・フロイド殺害事件から人々の意識が高まった人種に関する正義問題に集まっている。

アブラモビッツは「今回の大統領選挙に関しては、外交政策問題は関心リストのかなり下に位置することになります」と述べた。

UAEとイスラエルの関係強化はトランプ大統領の支持基盤を強めることになるだろう。支持基盤の有権者にとって、トランプ大統領はイスラエルにとって最良の米大統領ということになる。しかし、新型コロナウイルス感染拡大と経済状態について関心を持っている、様子見の有権者たちを動かすことはほとんどないだろう。

共和党系の世論調査専門家であるウィット・アイレスは次のように述べている。「イスラエルと近隣諸国との関係についての問題はそれらに関心を持っている人々にとっては重要なのです。しかし、より多くの人々にとって、本当に関心を持っている問題は新型コロナウイルス感染拡大とその結果としての景気後退なのです。それらに加えて、人種をめぐる不正義と都市部での暴動なのです」。

トランプに対する反対者たちにとって、ヨルダン川西岸地域の併合の凍結は歓迎すべき動きだと考えられるが、トランプ大統領が独自のもしくは卓越した外交技術を持つことを示すものではない。更に言えば、進歩主義派は、併合の凍結は、併合という政策自体が破綻していることをトランプ大統領が認めたということになると考えるだろう。進歩主義派は長年にわたり、併合はパレスチナ側との交渉とアラブ諸国との関係改善いう希望を葬り去るものだと主張してきた。

「イスラエル・ポリシー・フォーラム」の政策部長マイケル・コプロウは次のように述べている。「トランプ政権とネタニヤフ首相は併合を推進してきました。しかし、徐々にではあるが、併合はイスラエルと近隣諸国との間の関係正常化を妨げる障害物だということを認識しつつあります。併合を政策から外すことこそがやらねばならないことなのです」。

(貼り付け終わり)

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アメリカ政治の秘密
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ハーヴァード大学の秘密 日本人が知らない世界一の名門の裏側
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