古村治彦(ふるむらはるひこ)の政治情報紹介・分析ブログ

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タグ:Western

 古村治彦です。

 ドナルド・トランプ大統領は、ジェイムズ・モンロー大統領が1823年に提唱した、ヨーロッパとアメリカによる西半球をめぐる相互不干渉主義であるモンロー主義(Monroe Doctrine)をもじって、「ドンロー主義(Donroe Doctrine)」を標榜している。モンロー主義は「ヨーロッパの争いにアメリカは干渉しないので、ヨーロッパ諸国は西半球に介入しないように」というものであり、「西半球(Western Hemisphere)」は、アメリカの勢力圏(Sphere of Influence)であるということを宣言したものである。20世紀はアメリカが超大国として世界を支配してきたが、アメリカの国力の低下(decline)もあり、アメリカの一極支配構造は崩れている。そして、米中二極構造になりつつある。G2体制と呼ばれることもある。また、ロシアを入れて、「ヤルタ2.0」とも言われる。アメリカの一極支配の終焉に続くものとして、「アメリカは西半球、南北アメリカ大陸の支配を続ける」ということが、「ドンロー主義」である。世界の他の地域については、「アメリカは撤退する」ということになる。そうなれば、頼るのは中国ということになる。実際に中国が進出している。
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 アメリカにとって問題は、ラテンアメリカに中国が進出し、地歩を固めているということだ。2000年頃は貿易額で見ても分かる通り、中国の影響力は小さかった。しかし、今や南米諸国のほとんどにとって中国は最大の貿易相手国となっている。また、中国から多くの投資が行われている。その間にアメリカは何もしなかった。それが今になって急に、「南米はアメリカの勢力圏、属国だ。昔からそうだった」と言われて、「はい、その通りでございます」とは言わないし、言えない。「ヤンキー帝国主義(Yankee Imperialism)で酷い目に遭った。アメリカが行ったり、支援したりした選挙干渉や内戦などで酷いことになった」という反感がある。投資や経済協力は歓迎するが、アメリカが今になって、宗主国気取りでやって来て「言うことを聞け」は通用しない。
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 トランプ政権はヴェネズエラを攻撃し、キューバに厳しい経済制裁を科している。新中国派の牙城であるこれらの国々を崩して、中国の影響力を削ごうとしている。これはアメリカにとって非常に簡単な仕事だ。しかし、その効果は一過性でしかなく、これらの国々の国民はキューバ革命とシモン・ボリヴァルの独立革命の誇りを維持している。アメリカからの攻撃がかえって国民に反米意識と団結を生み出してしまうという逆効果になってしまう。この点はイランに似ている。中国は「民間企業がビジネスでやっていることなので」という建前で粛々と進出を続けていく。アメリカがやるべきことは「長期的な経済面を中心とした投資や経済協力」である。こうした長期的な仕事はアメリカにとっては苦手な分野である。どかーん、ぼこーんと一気に壊してしまえということになってしまう。そうして、世界に反米の種をまき続けてきた。もうすでに中国の存在感を簡単などかーん、ぼこーんで排除することはできないし、短期間で、中国に取って代わることもできない。それでも、地道に続けていけばまだ良いのであるが、それは今のアメリカには極めて困難であり、ほぼ不可能なことであろう。

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アメリカはラテンアメリカから中国を排除することはできない(The U.S. Can’t Exclude China From Latin America)

-ワシントンは中国をラテンアメリカから排除しようとするのではなく各国に対してより優れた戦略的選択肢を提示すべきである。

ブライアン・フォンセカ筆

2026年6月8日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2026/06/08/latin-america-us-china-national-security-strategic-displacement/

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ペルーのチャンカイにあるチャンカイ港の様子(2025年9月30日)

アメリカのジェイムズ・モンロー大統領がヨーロッパ列強に対し、西半球(the Western Hemisphere)への介入を戒める警告を発してから2世紀近くが経過した今、アメリカはこの地域における地政学的な課題に再び直面している。過去20年間で、中国は中南米およびカリブ海地域において、経済、技術、戦略面でのプレゼンスを劇的に拡大させてきた。しかし、今日の状況はモンロー・ドクトリンが掲げられた当時とは根本的に異なっている。

モンロー・ドクトリンは排除の戦略(a strategy of exclusion)であった。すなわち、西半球において外部勢力が領土的・政治的な支配権を確立することを阻止しようとするものだった。しかし、そうした枠組みは21世紀の競争の現実を反映していない。中国は征服や占領(conquest or occupation)によって中南米での影響力を拡大しているわけではない。むしろ中国は、中南米のインフラ、貿易ネットワーク、エネルギー・システム、デジタル・エコシステム、そして戦略的産業の内部へと深く入り込んでいる。

中国が行使する影響力は、武力によるものではなく、経済的な統合、技術への依存、そして構造的な優位性を利用したものだ。中国は今や、中南米における主要な貿易相手国であり、重要な資金提供元であり、さらには一次産品や農産物輸出の重要な市場となっている。インフラの慢性的な不足、低成長、長年にわたる投資不足に直面する多くの中南米諸国にとって、中国との関わりはイデオロギーの問題ではなく、経済的な必要性に基づいているのである。

アメリカが現実的に中国を中南米から排除することは不可能である。また、中南米の各国政府に対し、ワシントンか北京かの二者択一を迫るようなこともすべきではない。西半球に位置する国々の大半が求めているのは、単に多角化された経済関係(diversified economic relationships)と、より大きな戦略的自律性(greater strategic autonomy)なのである。

中国による関与の全てが、同レヴェルの戦略的重要性を有するということはない。アメリカは、ラテンアメリカおよびカリブ海地域における中国のあらゆる商業活動に反射的に反対するのではなく、地政学的および国家安全保障上の影響が最も大きい分野において、中国の影響力を置き換える(displace)ために選択的に競争すべきだ。アメリカにとってこれは、「戦略的拒否(strategic denial)」から、私が「戦略的置換(strategic displacement)」と呼ぶアプローチへと転換することを意味する。

第一に、アメリカは戦略的インフラを優先事項とすべきである。中国企業は、ラテンアメリカ全体にわたり、港湾、物流回廊、輸送ハブ、エネルギー・システムといった分野でその存在感を拡大してきた。これらの資産は単なる商業事業にとどまらない。それらは貿易の流れ、サプライチェインへのアクセス、海上輸送の接続性、そして戦略的な機動力を左右するものだ。重要インフラや通商を支配することは、永続的な政治的・経済的影響力を行使する手段となり得る。

2024年に開港したペルーのチャンカイ港は、こうした力学を如実に示している。中国の海運大手である中遠海運(Cosco)が主導して開発されたこの港は、南アメリカとアジア市場をより直接的に結びつけると同時に、太平洋の貿易回廊や地域のサプライチェインにおける中国の役割を強化するよう設計されている。アメリカは単にこうしたプロジェクトに反対するのではなく、より競争力のある資金調達手段やインフラ整備の代替案をラテンアメリカ諸国に提示しなければならない。

第二に、アメリカはラテンアメリカ全域において、デジタル・インフラ、通信、データ・ガヴァナンスの分野で、より積極的に競争を展開する必要がある。ファーウェイ(Huawei)やZTEといった中国のハイテク企業は、通信インフラ、クラウド・システム、監視技術、スマートシティ構想、デジタル決済プラットフォームなど、ラテンアメリカのあらゆる分野に深く浸透している。

これらのシステムは政治的に中立なものではない。それらはデータ・ガヴァナンスの基準を形成し、サイバーセキュリティ上の脆弱性を生み出すほか、将来的には中国による情報収集や政治的影響力工作の機会を拡大させる恐れもある。ZTEの支援を受けて開発されたヴェネズエラの「祖国カード(fatherland card)」システムは、デジタル・システムがいかにして政治的監視や社会統制の手段へと変貌し得るかを示す極端な事例である。

第三に、アメリカ政府は、重要鉱物(critical materials)に対する高まる関心を、持続的な対米州戦略へと転換しなければならない。ラテンアメリカは、先端製造業、半導体、エネルギー技術、防衛システムに不可欠なリチウム、銅、レアアース(希土類)などの鉱物資源を豊富に埋蔵している。中国はすでに、これらの資源に関連する採掘、加工、輸送の各ネットワークにおいて、特にアルゼンチン、ボリヴィア、チリからなる「リチウム・トライアングル(lithium triangle)」を中心に、強固な地位を築いている。

アメリカは、アルゼンチンやチリのように市場環境がパートナーシップの構築に適した国々において、融資可能な(bankable)プロジェクトへの資金提供に注力すべきだ。同時に、加工、精錬、およびオフテイク(offtake、生産物の引き取り)に関する取り決めを支援し、ヴァリューチェインのより多くの部分を西半球内に留めるようにすべきである。目指すべきは単なる原材料の確保ではなく、中国が支配する加工・物流への依存を低減させる、強靭な鉱物サプライチェインの構築である。

第四に、アメリカは西半球におけるエネルギーの強靭性を戦略的優先事項と位置づけるべきである。中国の国営・政府系企業は、西半球全域で送電、再生可能エネルギー、石油生産、および広範なエネルギーインフラへの投資を拡大してきた。例えばペルーのリマでは、中国企業が発電、送電、配電の各システムにおいて支配的な地位を占めている。

これらのプロジェクトの多くは、個々に見れば商業的に合理的であるかもしれないが、それらが複合的に組み合わさることで、国家の強靭性や長期的な経済発展にとって極めて重要な分野における中国の関与を深めることになっている。

第五に、アメリカは西半球全域における宇宙関連およびデュアルユース(dual-use、軍民両用)のインフラに対し、より一層の注意を払う必要がある。衛星システム、航空宇宙分野での協力、人工知能(AI)、高度な通信技術に関連する中国の投資は、正当な商業目的を支えるものであると同時に、中国による戦略的なアクセスや情報収集能力を拡大させる可能性も秘めている。

アルゼンチンのネウケンにある中国運営の深宇宙探査施設は、こうしたプロジェクトの多くを取り巻く不透明さを象徴する事例である。表向きは民生用とされているものの、この施設の透明性の欠如や、中国の軍事関連宇宙機関とのつながりは、アメリカや地域の当局者の間で根強い懸念を招いている。

ラテンアメリカにおける米中間競争は、本質的にイデオロギー的なものではなく、構造的なものだ。アメリカはこの地域に対し、長きにわたり「放置(neglect)」と「過剰な警戒(alarmism)」の間で揺れ動いてきた。そのアプローチは一貫性を欠いており、中国の活動のほぼ全てを脅威と見なす一方で、信頼に足るアメリカの経済的代替案を十分に提示できていない。こうした戦略は、中国の国家運営のあり方や、ラテンアメリカの各国政府が直面している経済・開発上の切迫した課題を誤解している。

例えば、ボゴタで建設中の中国製地下鉄システムを見てみよう。アメリカはこのプロジェクトを地政学的な競争という観点から捉えてきた。しかし、このプロジェクトと中国との関わりが、西半球の勢力均衡を決定づける可能性は低いと言える。ワシントンは、こうした個別の商業的案件を戦略的な勝利であるかのように扱う一方で、長期的により大きな影響を及ぼす分野を疎かにすることも多い。

アメリカは、中国が支援する象徴的なインフラ・プロジェクトを阻止することに固執するのではなく、長期的な戦略的強靭さを形作る分野において、より積極的に競争を展開すべきだ。

西半球における中国の優位性は、単にコストの低さやインフラ建設のスピードに由来するものではない。それは、中国政府が長期的な地政学的目標の達成に向けて、金融、外交、産業政策、そして企業活動を一体化させる能力を持っていることに起因している。アメリカが中国の国家資本主義モデル(state-capitalist model)を模倣する必要はないが、国家安全保障上、戦略的に重要な意味を持つ分野でアメリカ企業が競争できるよう促すための、組織的かつ統合された枠組みは必要だ。

この戦略的な置換には必然的に制約が伴う。ブラジル、メキシコ、コロンビア、チリといった国々は、大国間競争の受動的な競技場(passive arenas)ではない。それらの国々は独自の国益や開発の優先順位、そして「戦略的自律性(strategic autonomy)」に対する独自の考え方を持っている。ラテンアメリカ諸国の政府の多くは、二者択一的な地政学的陣営への参加を強いるように見えたり、アメリカの「パターナリズム(paternalism、父権的干渉主義)」に対する懸念を再燃させたりするような枠組みには抵抗感を示している。

例えば、ブラジルは、北京とワシントンの双方と多角的なパートナーシップを追求する、自立したグローバルな主体としての自意識を強めている。中国はブラジルにとって最大の貿易相手国であり、農業、エネルギー、インフラ、技術といった各分野における主要な投資国でもある。

南アメリカの多くの国でも同様の状況が見られる。中国を全面的に排除することを軸にしたアメリカの戦略は、政治的にも経済的にも失敗に終わるだろう。さらに、中国が戦略的な足場を簡単に明け渡すことはない。中国はこの地域全体で、長年にわたり商業関係の構築、金融面での依存関係の形成、外交的影響力の拡大、そして制度的なプレゼンスの確立に投資を続けてきたからだ。

アメリカ企業がラテンアメリカの重要分野でより効果的に競争できるよう望むのであれば、ワシントンはこの地域への長期投資に伴う財務的・政治的リスクを低減させる必要がある。つまり、民間部門の関与を促進するために、アメリカ国際開発金融公社(the U.S. International Development Finance Corporation、USIDFC)や輸出入銀行(the Export-Import Bank)、その他の公的金融メカニズムといった機関をより積極的に活用すべきだ。

何よりも重要なのは、アメリカが真剣かつ一貫した姿勢で、経済面からこの地域との関わりを再構築することだ。ラテンアメリカの多くの国において中国の影響力が拡大したのは、アメリカが不在であったり、対応に一貫性がなかったり、あるいは地域へのアプローチにおいて安全保障上の懸念を過度に重視しすぎたりしたためだった。この地域の国々は、地政学的な争いの場となることを望んではいない。彼らが求めているのは、投資(investment)、近代化(modernization)、そして信頼できる長期的なパートナーシップ(reliable long-term partnerships)だ。

ラテンアメリカおよびカリブ海地域において、アメリカは依然として中国に対して圧倒的な優位性を保っている。地理的な近接性、深い文化的つながり、教育ネットワーク、民間部門の技術革新、金融の厚み、そして長年にわたる民主政治体制に基づくパートナーシップなどがその強みだ。こうした優位性を活かすには、単なる反応的なレトリック(rhetoric)ではなく、競争力のある国家統治術(statecraft)が求められる。

※ブライアン・フォンセカ:フロリダ国際大学の国防・国家安全保障研究担当副アカデミック責任者(provost)兼ジャック・D・ゴードン公共政策研究所所長。ワシントンDCを拠点とするシンクタンク「ニュー・アメリカ」国際安全保障フェロー。Xアカウント:@BrianPFonseca

(貼り付け終わり)

(終わり)

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『世界は「宗教戦争」に突入した 「神に選ばれた」支配者の使命と論理』

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シリコンヴァレーから世界支配を狙う新・軍産複合体の正体 
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『トランプの電撃作戦』
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『世界覇権国 交代劇の真相 インテリジェンス、宗教、政治学で読む』

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 古村治彦です。

 2025年11月21日に『シリコンヴァレーから世界支配を狙う新・軍産複合体の正体』 (ビジネス社)を刊行します。是非手に取ってお読みください。よろしくお願いいたします。
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シリコンヴァレーから世界支配を狙う新・軍産複合体の正体 
 最新刊の刊行に連動して、最新刊で取り上げた記事を中心にお伝えしている。各記事の一番下に、いくつかの単語が「タグ」として表示されている。「新・軍産複合体」や新刊のタイトルである「シリコンヴァレーから世界支配を狙う新・軍産複合体の正体」を押すと、関連する記事が出てくる。活用いただければ幸いだ。

 2025年11月にドナルド・トランプ大統領は「国家安全保障戦略(National Security Strategy、NSS)」を発表した。「国家安全保障戦略」は、アメリカの歴代政権(ジョージ・H・W・ブッシュ政権から)が出す、国家安全保障に関する重要なテーマとその対処について述べる文書である。各政権の外交政策や安全保障政策の基盤となる文書であり、それぞれに特徴がある。今回、2025年版の「国家安全保障戦略」のテーマは、トランプが掲げる「アメリカ・ファースト(America First)」である。何度も書いているが、これは子供じみた「アメリカが何でも一番、何でも最初」という意味ではない。「アメリカ国内に山積する諸問題の解決を最優先になる、世界の諸問題については優先しない」という意味である。

 今回の「国家安全保障戦略」において重要なのは「西半球(Western Hemisphere)」という言葉であり、「モンロー主義を補完するトランプの系譜(Trump corollary)」である。西半球とは具体的には南北アメリカ大陸を意味し、モンロー主義のトランプの系譜とは、モンロー主義に返るということだ。1830年代のモンロー主義は、「南アメリカはアメリカの勢力圏であり、ヨーロッパ諸国の介入を許さない、その代わりにアメリカはヨーロッパ諸国には介入しない」という外交政策の原理であるが、現在のモンロー主義は、「南アメリカに対して、中国とロシアが介入するのを許さない」ということになる。これは裏を返せば、「西半球以外のことには手を出さない」ということである。「アメリカは世界の警察官を辞める」という宣言でもある。そして、「国内に数多くある深刻な問題を解決することに注力する」ということになる。

 「西半球(南米)の勢力圏確保」と「国内問題解決優先」を掛け合わせると出てくる答えが「ヴェネズエラへの圧力」である。ヴェネズエラの反米政権であるニコラス・マドゥロ政権は中露からの支援を受けている。南米から中露の影響力を排除したいトランプ政権としては、マドゥロ政権に圧力をかけて、地上軍を投入するなどのコストをかけずに追い落としたい。そして、そのための大義名分が「国内に蔓延する麻薬問題を解決するために、麻薬密輸を行っているヴェネズエラに圧力をかける」ということになる。

 トランプは狂人で、めちゃくちゃな政策施行だという印象を持つ人も多いだろう。しかし、それではアメリカの大統領にはなれない。やはりきちんとした論理構成が必要である。「国家安全保障戦略」という文書はその論理構成を示している。

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トランプ大統領の新たな「国家安全保障戦略」は「アメリカ・ファースト」を全面的に打ち出す(Trump’s New National Security Strategy Goes Full ‘America First’)

-長らく待たれたこの計画は、米大統領の世界観を世界中に選択的に押し付けることを狙っている。

リシ・イエンガー、クリスティナ・リウ筆

2025年12月5日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2025/12/05/trump-national-security-strategy-america-first/

ドナルド・トランプ政権は木曜日の夜遅く、長く待たれた新しい国家安全保障戦略を発表し、アメリカの世界的な優位性と、数十年にわたる世界的な役割の多くの側面からの撤退を両立させようとするヴィジョンを示した。

この戦略の唯一の貫徹線は、介入主義(interventionism)を推奨し、同時に非難する点もいくつかあるが、ワシントンの野望を推進することだ。

ドナルド・トランプ米大統領は、この「国家安全保障戦略」の序文で、「私たちはあらゆる行動においてアメリカ・ファーストを掲げている」と書き、今回の戦略を「アメリカが人類史上最も偉大で成功した国家であり続けるためのロードマップ」と表現した。

しかし、この戦略の冒頭の段落は、「目的と手段の本質的な関連性を説明する具体的かつ現実的な計画」という教科書的な定義で始まるが、冷戦後のアメリカ主導の世界秩序を激しく非難し、そこからの明確な離脱を前面に出している。

「国家安全保障戦略」には次ように書かれている。「アメリカの外交政策エリートたちは、アメリカが全世界を恒久的に支配することが我が国の最善の利益であると確信していた。しかし、他国の動向は、その活動が我が国の利益を直接脅かす場合にのみ、私たちの関心事となる。我が国のエリートたちは、アメリカ国民が国益と何の関係もないと考えるような、世界規模の負担をアメリカが永久に担う意思があるかどうかについて大きく誤算していた」。

グレート・リプレイスメント陰謀論(Great Replacement conspiracy theory)に関連する白人至上主義的ないくつかの考え(white nationalist ideas)を反映するレトリックも、この戦略全体に浸透しており、ある箇所ではヨーロッパにおける「文明の消滅(civilizational erasure)」を警告し、ヨーロッパ大陸における「西洋アイデンティティ(Western identity)」の回復を訴えている。また、この戦略はトランプ政権が持つ出生率低下への懸念にも言及し、「健全な子供を育てる、強く伝統的な家族の増加」が「アメリカの精神的・文化的健全性の回復と再活性化」に不可欠であることを強調している。

今回の戦略は、トランプ政権の世界観を5つの領域に分割し、それぞれの領域における同盟諸国、パートナー、敵対諸国、そしてその他全ての人々に向けた処方箋と原則(prescriptions and principles)を示している。

●西半球(Western Hemisphere)

トランプ大統領がアメリカの影響力を近隣地域に再集中させるという戦略(Trump’s refocusing of U.S. influence on its immediate vicinity)は、この戦略の第一の、かつ最も重要な部分の1つであり、数カ月前から予告されていた。例えば今週初めには、トランプ政権が1823年のモンロー主義を補完する「トランプの系譜(Trump corollary)」を発表し、「アメリカ国民は、外国やグローバリスト機関ではなく、常に西半球における自らの運命を握る」と述べている。

今回の戦略は、この再編(realignment)がトランプ大統領の最重要課題の1つ、すなわち、アメリカ国境を越えた人間と麻薬の流れを食い止めることに大きく貢献していることを明確にしている。「国家安全保障戦略」では、「私たちは、西半球における既存の友好諸国と協力して、移民を抑制し、麻薬の流入を阻止し、陸海上の安定と安全を強化する」と述べている。これには、「西半球における喫緊の脅威に対処するための世界的な軍事プレゼンスの再調整」と「国境の安全確保と麻薬カルテルの壊滅のための、必要に応じて致死的な武力の使用を含む、的を絞った展開」が含まれる。

また、トランプ政権が既に実践しているように、アメリカの安全保障、外交、そしてビジネスの利益の境界線も曖昧にする。「全てのアメリカ大使館は、自国における主要なビジネスチャンス、特に主要な政府契約について認識していなければならない。これらの国々と交流する全てのアメリカ政府関係者たちは、アメリカ企業の競争と成功を支援することが職務の一部であることを理解すべきである」と「国家安全保障戦略」と述べている。

今回の戦略はまた、中国について明示的に言及することなく、ラテンアメリカにおける中国の進出に対抗することを目指しており、「この地域で、あるいはこの地域で活動する全てのアメリカ政府関係者は、有害な外部影響の全体像を把握すると同時に、パートナー諸国に圧力をかけ、私たちの西半球を守るようインセンティヴを与えなければならない」と述べている。

●アジア(Asia)

一方、中国の事実上の裏庭では、アメリカの戦略は同盟諸国やパートナーを結束させ、ワシントンの最大の対抗勢力である中国を抑止することを目指している。「国内で繁栄するためには、現地で競争に勝利しなければならない、-そして我々は勝利している」と述べ、トランプ大統領が10月の地域訪問中に日本、韓国、その他の東南アジア諸国と結んだ協定について強調している。

中国に対抗するための二本柱は経済再均衡と軍事抑止(economic rebalancing and military deterrence)であり、いずれも戦略が地域(およびその他の地域)の同盟諸国に対し、中国の影響力を弱める支援を促す分野である。「東南アジア、ラテンアメリカ、中東だけでは中国の膨大な過剰生産能力を吸収しきれないため、ヨーロッパ、日本、韓国、オーストラリア、カナダ、メキシコ、その他の主要諸国に対し、中国経済を家計消費へ再均衡させる貿易政策の採用を促さねばならない」と記されている。さらに、「ヨーロッパやアジアの輸出諸国も、中所得国を輸出先として限定的ながら成長する市場と見なせる」とも書かれている。

さらに「ヨーロッパ、日本、韓国などが保有する7兆ドルの純対外資産」と、国際開発銀行などの国際金融機関が保有する1.5兆ドルの資産を動員し、中国に対抗しようとしている。しかし、ここでも計画は明らかにアメリカ・ファーストだ。「トランプ政権は指導的立場を活用し、アメリカの利益に資する改革を実施することに尽力する」と「国家安全保障戦略」は述べている。

トランプ大統領は中国との貿易協定の締結と維持に熱心であり、「国家安全保障戦略」では、「バランスを保ち、非センシティヴな要素に焦点を当てる」必要があるとされているものの、中国の2つの最大の軍事的野望については譲歩していない。「国家安全保障戦略」では、「台湾をめぐる紛争を抑止すること、理想的には軍事力の優位性を維持することが優先事項である。また、長年にわたる台湾に関する宣言政策を維持する。これは、アメリカが台湾海峡の現状の一方的な変更を支持しないことを意味する」と書かれている。

同時に、トランプ政権は日本や韓国といった国々に軍事的負担をさらに押し付けようとしている。「これらの国々に対し、敵対勢力を抑止するために必要な能力、特に新たな能力に焦点を当て、国防費の増額を促さなければならない」と「国家安全保障戦略」は述べている。

これらの目標には、トランプ政権下でアメリカとインドとの関係が20年ぶりの低水準に近づいたにもかかわらず、インドが重要な役割を果たすことも含まれている。「オーストラリア、日本、米国(「クアッド(the Quad)」)との継続的な4カ国協力を含め、インド太平洋安全保障へのインドの貢献を促すため、インドとの商業(およびその他の)関係を継続的に改善する必要がある」と「国家安全保障戦略」は述べている。

●ヨーロッパ(Europe)

新しい「国家安全保障戦略」におけるヨーロッパへのアプローチにおいて、負担の転嫁と政策の規範性は特に顕著である。

2月にミュンヘン安全保障会議で行われたJ・D・ヴァンス副大統領の悪名高い演説を彷彿とさせるこの戦略は、ヨーロッパにおける「文明の消滅という厳しい見通し」を嘆き、その原因の一部は「言論の自由の検閲と政治的反対勢力の弾圧、出生率の急落、国民的アイデンティティと自信の喪失」、そして大陸の移民政策にあるとしている。「私たちは、ヨーロッパがヨーロッパであり続け、文明への自信を取り戻し、規制による窒息という失敗した焦点を放棄することを望んでいる」と「国家安全保障戦略」は述べている。

そして、トランプ政権のアメリカ・ファースト政策の目標にもかかわらず、この戦略は、ワシントンは「ヨーロッパ諸国内で抵抗を育む(cultivating resistance … within European nations)」ことを含め、「ヨーロッパが現在の軌道を修正するのを支援しなければならない(help Europe correct its current trajectory)」と述べている。「国家安全保障戦略」は、「ヨーロッパ諸国の愛国主義的な政党の影響力拡大(the growing influence of patriotic European parties)」を「大きな楽観の根拠(cause for great optimism)」として挙げている。

ヨーロッパとロシアの関係において、さらなる介入を求める声が上がっている。今回の戦略では、ウクライナにおけるロシアの戦争終結に向けたアメリカ主導の交渉が、「ユーラシア大陸全体における戦略的安定の条件を再構築し、ロシアとヨーロッパ諸国間の紛争リスクを軽減するために必要」であると主張している。

この戦略は、「ウクライナにおける敵対行為の迅速な停止(an expeditious cessation of hostilities in Ukraine)」と「ウクライナが存続可能な国家として存続できるようにする(enable its survival as a viable state)」ための「敵対行為後の復興(post-hostilities reconstruction)」を求めているものの、敵対行為停止の条件については詳細をほとんど示していない。むしろ、「戦争に対して非現実的な期待を抱いているヨーロッパ諸国の政府当局者たち」を非難し、彼らが国民の願いを無視していると主張している。「ヨーロッパ諸国の大多数は平和を望んでいるが、その願いが政策に反映されていないのは、主に各国政府が民主的なプロセスを破壊しているためだ」と「国家安全保障戦略」では述べている。

しかし、この声明は、ウクライナのNATO加盟に関するロシアの主張と重なり、「NATOが永続的に拡大する同盟であるという認識を終わらせ、その現実を阻止すること」をアメリカの主要目標として挙げている。

●中東(Middle East)

対照的に、この戦略における中東へのアプローチは、世界中で民主政治体制を促進するというアメリカの長年の目標からの大きな逸脱を反映している。この地域の国々と連携するためには、「これらの国々、特に湾岸諸国の君主制国家に対し、伝統と歴史的な統治形態を放棄するよう圧力をかけるという、アメリカの誤った試みを放棄する必要がある。私たちは、改革が自然発生的に生じる時と場所において、それを奨励し、称賛すべきであり、外部から押し付けるべきではない」と述べている。

この政策は、戦略の冒頭で示されている「柔軟なリアリズム(flexible realism)」というより広範な原則を反映している。「国家安全保障戦略」では「私たちは、世界の国々との良好な関係と平和的な通商関係を追求するが、彼らの伝統や歴史から大きく異なる民主政治体制やその他の社会変革を押し付けることはない」と言及されている。

トランプ政権は、この地域における長引く紛争は「見出しで信じられているほど深刻な問題ではない」と主張する。「国家安全保障戦略」は、イランはイスラエルとアメリカの攻撃によって「大きく弱体化」し、イスラエルとパレスティナの紛争は「依然として厄介な問題」ではあるものの、「より恒久的な平和に向かう」道筋にあり、シリアは「潜在的な問題を抱えたままではあるが、安定し、地域における不可欠かつ前向きなプレーヤーとしての正当な地位を取り戻す可能性がある」と主張している。

一方、前述の湾岸諸国は、今年初めにトランプ大統領がこの地域を訪れたことで確固たる地位を築いた「アメリカの優れたAI技術への支援」の重要な供給源となっている。

全体として、「国家安全保障戦略」では、「中東がアメリカの外交政策の長期計画と日常的な実行の両面で支配的だった時代は、ありがたいことに終わった。中東がもはや重要ではなくなったからではなく、かつてのように常に人々を苛立たせ、差し迫った大惨事の潜在的な原因ではなくなったからだ」と宣言されている。さらに「むしろ、中東はパートナーシップ、友情、そして投資の場として台頭しつつあり、この傾向は歓迎され、奨励されるべきである」と述べている。

●アフリカ(Africa)

トランプ政権は29ページにわたる戦略のうち、長らくワシントンの政策立案者からほとんど注目されてこなかったアフリカ地域に、わずか3段落を割いただけだった。この新たな戦略は露骨に取引中心であり、アメリカ企業の利益を高め、投資収益を生み出すパートナーシップの構築に明確に焦点を合わせている。

「国家安全保障戦略」では、「あまりにも長い間、アメリカのアフリカ政策は、リベラルなイデオロギーの提供、そして後にその普及に重点を置いてきた」と明言されている。今後、アメリカは援助重視のアプローチから、「アメリカの製品とサービスへの市場開放にコ関与した」国々との貿易と投資に重点を置くアプローチへと転換しなければならないと述べている。

戦略によれば、差し迫った投資機会はエネルギーと重要な鉱物セクター分野に存在し、「高い収益が見込める」上、「アメリカ企業に利益をもたらす」可能性がある。この戦略では、アメリカは進行中の紛争の解決交渉を支援し、紛争予防にも貢献できるとしているが、ワシントンは「イスラム過激派テロ活動の再燃を警戒し続けなければならない」とし、「アメリカの長期的な駐留や関与」を避けなければならないとしている。

※リシ・イエンガー:『フォーリン・ポリシー』スタッフライター。Blueskyアカウント:@iyengarish.bsky.social、Xアカウント:@Iyengarish Instagram: @iyengar.rishi

※クリスティナ・リウ:『フォーリン・ポリシー』誌記者。Blueskyアカウント:@christinalu.bsky.social X: @christinafei

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シリコンヴァレーから世界支配を狙う新・軍産複合体の正体 

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『トランプの電撃作戦』
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『世界覇権国 交代劇の真相 インテリジェンス、宗教、政治学で読む』

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める

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